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特開2022-25772デヒドロローズオキシドからなる飲みごたえ感増強剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025772
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】デヒドロローズオキシドからなる飲みごたえ感増強剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20220203BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20220203BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20220203BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20220203BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20220203BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/56
A23L2/00 T
A23L2/02 C
A23F3/16
A23F5/24
C12C5/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128844
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒向 秀行
(72)【発明者】
【氏名】力武 茉莉花
(72)【発明者】
【氏名】福井 康大
(72)【発明者】
【氏名】小西 俊介
【テーマコード(参考)】
4B027
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FB24
4B027FC01
4B027FC02
4B027FK02
4B027FP85
4B027FQ19
4B117LC03
4B117LG03
4B117LG05
4B117LG17
4B117LK04
4B128CP16
(57)【要約】
【課題】飲料について評価するのに重要な要素として、「飲みごたえ感」があり、「飲みごたえ感」を有する飲料を調製するための、飲料の飲みごたえ感増強剤を提供する。
【解決手段】デヒドロローズオキシドを、飲料、特に炭酸飲料、ビールテイスト飲料、ニアウォーター飲料、りんご果汁飲料、紅茶飲料またはコーヒー飲料に一定量添加することにより、飲料の飲みごたえ感を増強し、また、飲料へ後半の厚味のある味を増強する効果を有し、消費者の嗜好に合うバラエティーに富んだ飲料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デヒドロローズオキシドからなる飲料の飲みごたえ感増強剤。
【請求項2】
請求項1に記載の飲料が、炭酸飲料、ビールテイスト飲料、ニアウォーター飲料、りんご果汁飲料、紅茶飲料またはコーヒー飲料から選択される飲みごたえ感増強剤。
【請求項3】
請求項1または2から選択される飲みごたえ感増強剤を、香料組成物中に0.5ppb~10%の濃度含有する飲みごたえ感増強用香料組成物。
【請求項4】
請求項1または2から選択される飲みごたえ感増強剤を飲料中に0.05ppt~10ppmの濃度含有する飲料。
【請求項5】
請求項1または2から選択される飲みごたえ感増強剤を飲料中に0.05ppt~10ppmの濃度添加する飲料の飲みごたえ感増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデヒドロローズオキシドからなる飲みごたえ感増強剤および該飲みごたえ感増強剤を含有する飲みごたえ感増強用香料組成物もしくは飲みごたえ感が増強された飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の多様化する嗜好、例えば、飲食品業界においては消費者の嗜好に合うおいしさや、天然感を有する香気・香味を有する飲食品へのニーズに応じるため様々な技術開発が求められている。
【0003】
健康志向による低糖化や透明な飲料の流行など、飲料中に糖質をはじめとした固形分の配合を少なくした製品が増えてきている。これらの飲料では、カロリーの低減や、外観等を優先させるあまり、風味の点を犠牲にしているものが少なくない。この問題を解決するために種々の方法が開発されているが、いずれも十分ではない。
【0004】
飲料について評価するのに重要な要素として、「飲みごたえ感」がある。これは飲料が備える初期的な風味ではなく、飲料を飲んだ後に残る風味について示している。
【0005】
飲料の飲みごたえ感については、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、インドール及び3-メチルノナン-2,4-ジオンを茶飲料に任意の割合で添加することにより、茶飲料の飲みごたえ感を増強する方法(特許文献1)、2,3-ジエチル-5-メチルピラジンと、2-メチルピラジン、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン及び2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンからなる群から選ばれる1種以上の化合物を茶飲料に任意の割合で添加することにより、茶飲料の飲みごたえ感を増強する方法(特許文献2)、A)有機酸、B)イソアミルアルコールおよびC)イソ酪酸、カプロン酸および2-フェネチルアルコールから選ばれる1種以上を任意の割合で含有する、醸造酒様の飲みごたえが付与されたアルコール飲料(特許文献3)が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの発明は、茶飲料やアルコール飲料といった、特定の飲料において飲みごたえ感の付与または増強についての効果を謳ったものにすぎず、一般的かつ様々な飲料について効果を示したものではない。
【0007】
2-(2-メチル-1-プロペニル)-4-メチレンテトラヒドロピラン(以下デヒドロローズオキシドと記す)は、香料化合物として有用なローズオキシドの合成原料として開示されている(特許文献4、特許文献5、特許文献6)。また、デヒドロローズオキシドそれ自体の有用な合成方法が開示されている(特許文献7)。さらに、デヒドロローズオキシドが香料化合物として有用であることが開示されている(特許文献8、特許文献9)。
しかしながら、デヒドロローズオキシドが飲料の飲みごたえ感を増強することについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4843474号公報
【特許文献2】特許第4777869号公報
【特許文献3】特開2016-136882号公報
【特許文献4】特表昭54-500077号公報
【特許文献5】特表2011-506552号公報
【特許文献6】特表2015-504414号公報
【特許文献7】特表2016-519141号公報
【特許文献8】特開2019-94310特開2019-94310号公報
【特許文献9】WO2019/020691
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、飲料の飲みごたえ感増強剤ならびに、飲料の飲みごたえ感増強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行ってきた結果、デヒドロローズオキシドが飲料、特に炭酸飲料、ビールテイスト飲料、ニアウォーター飲料、りんご果汁飲料、紅茶飲料またはコーヒー飲料の飲みごたえ感を増強することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明は
(1)デヒドロローズオキシドからなる飲料の飲みごたえ感増強剤。
(2)(1)に記載の飲料が、炭酸飲料、ビールテイスト飲料、ニアウォーター飲料、りんご果汁飲料、紅茶飲料またはコーヒー飲料から選択される飲みごたえ感増強剤。
(3)(1)または(2)から選択される飲みごたえ感増強剤を、香料組成物中に0.5ppb~10%の濃度含有する飲みごたえ感増強用香料組成物。
(4)(1)または(2)から選択される飲みごたえ感増強剤を飲料中に0.05ppt~10ppmの濃度含有する飲料。
(5)(1)または(2)から選択される飲みごたえ感増強剤を飲料中に0.05ppt~10ppmの濃度添加する飲料の飲みごたえ感増強方法。
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデヒドロローズオキシドは、飲料、特に炭酸飲料、ビールテイスト飲料、ニアウォーター飲料、りんご果汁飲料、紅茶飲料またはコーヒー飲料に一定量添加することにより、飲料の飲みごたえ感を増強し、また、飲料へ後半の厚味のある味を増強する効果を有し、消費者の嗜好に合うバラエティーに富んだ飲料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0014】
本発明において、%、ppm、ppb、pptの値は特に断りのない限り、それぞれ質量対質量の値を示す。
【0015】
本発明に記載の以下の式(1)に示される、デヒドロローズオキシドは、上述の特許文献7に記載する方法、すなわち、イソプレノールおよびプレナールを任意の触媒を用いて調製することができる。
【0016】
【化1】
【0017】
本発明において「飲料の飲みごたえ感」とは、飲料を飲んだ時の飲用後に感じる風味であり、特に厚味、呈味を示し、飲用した充実感を想起させるものである。
【0018】
本発明において「厚味」とは、飲料中に感じられる味が、飲料全体に広がることを意味する。
【0019】
本発明のデヒドロローズオキシドは、そのまま飲料に添加することにより、飲料の飲みごたえ感を増強することができるが、他の成分と混合して香料組成物を調製し、該香料組成物を用いて飲料の飲みごたえ感を増強することもできる。該香料組成物のデヒドロローズオキシドと共に含有し得る他の香料成分としては、各種の合成香料、天然香料、天然精油、動植物エキスなどを挙げることができる。
【0020】
上記の合成香料として、例えば、炭化水素化合物としてα-ピネン、β-ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5-ウンデカトリエンなどが挙げられる。
【0021】
アルコール化合物としてプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、2-ブタノール、3-メチルブタノールなどの直鎖・飽和アルカノール、プレノール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、(E)-2-ヘキセン-1-オール、2,6-ノナジエノールなどの直鎖・不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、ターピネオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0022】
アルデヒド化合物としてアセトアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、デカナールなどの直鎖・飽和アルデヒド、(Z)-3-ヘキセナール、(E)-2-ヘキセナール、2,4-オクタジエナールなどの直鎖・不飽和アルデヒド、シトロネラール、シトラールなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピンなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0023】
ケトン化合物として2-ヘプタノン、2-ウンデカノン、1-オクテン-3-オンなどの直鎖・飽和および不飽和ケトン、アセトイン、ジアセチル、2,3-ペンタジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンなどの直鎖および環状ジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α-イオノン、β-イオノン、β-ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
【0024】
フラン・エーテル化合物としてフルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピランなどの環状エーテル類が挙げられる。
【0025】
エステル化合物として酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチルなどの脂肪族アルコールの酢酸エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリルなどのテルペンアルコール酢酸エステル、ギ酸エチル、ギ酸イソアミル、酪酸エチル、吉草酸エチル、吉草酸アミル、ヘキサン酸エチル、オクタン酸エチルなどの脂肪酸と低級アルコールエステル、酪酸ゲラニル、酪酸ネリル、イソ吉草酸ゲラニル、イソ吉草酸ネリル、ヘキサン酸ゲラニル、オクタン酸リナリルなどの脂肪酸とテルペンアルコールのエステル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸スチラリル、イソ酪酸フェニルエチル、イソ吉草酸シンナミル、サリチル酸メチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
【0026】
ラクトン化合物としてγ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、δ-ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7-デセン-4-オリド、2-デセン-5-オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
【0027】
酸化合物として酢酸、酪酸、2-メチル酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0028】
含窒素化合物としてインドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチルなどが挙げられる。
【0029】
含硫化合物としてメタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチオノール、メチオナール、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。
【0030】
天然精油としてはスイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
【0031】
天然香料としてはヒヤシンスアブソリュート、ローズアブソリュート、チュベローズアブソリュート、バニラアブソリュート、ガルバナムレジノイドなどが挙げられる。
【0032】
また、各種のエキスとしてハーブ・スパイス抽出物、コーヒー・緑茶・紅茶・ウーロン茶抽出物など、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼ・プロテアーゼなどの酵素分解物などが挙げられる。
【0033】
加えて、他の香料成分として、「特許庁、周知慣用技術集(香料)第II部食品香料、平成12年1月14日発行」または「合成香料、化学と商品知識、増補新版、化学工業日報発行」に記載されている合成香料、天然精油、天然香料、動植物エキス等を挙げることができる。
【0034】
なお、上記他の香料成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
【0035】
また、他の添加剤としては、特に制限されず、公知のものが使用できるが、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリアセチン、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド等の溶剤または香料保留剤を挙げることができる。なお、上記他の添加剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
【0036】
また、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、キラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの乳化剤を添加してもよい。かような乳化剤を添加することにより、本発明の一形態に係る香料組成物は、乳化香料として使用することができる。
【0037】
さらにまた、アラビアガムやデキストリンなどの乳化香料を添加してもよい。かような乳化香料を添加した後、さらに乾燥することで、本発明の一形態に係る香料組成物は、粉末香料として使用することができる。
【0038】
本発明のデヒドロローズオキシドを有効成分として含んでなる香料組成物は、上記のようにそれ自体単独で、またはデヒドロローズオキシドを含んでなる香料組成物を調製して、各種の飲料に添加することにより、飲料の飲みごたえ感を増強することができる。
【0039】
本実施形態に係る飲料としては、特に限定されないが、飲みごたえ感の増強を求められる飲料であることが好ましく、例えば、炭酸飲料、コーラ飲料、果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料などの炭酸飲料類;オレンジ果汁飲料、グレープフルーツ果汁飲料、レモン果汁飲料、りんご果汁飲料、ぶどう果汁飲料、ピーチ果汁飲料、パイナップル果汁飲料、マンゴー果汁飲料などの果汁飲料類;トマトジュース、ミックス野菜飲料、にんじんジュース、青汁などの野菜飲料類;スポーツドリンク、ニアウォーター飲料、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料、ビールテイスト飲料などのソフト飲料類;緑茶飲料、紅茶飲料、ウーロン茶飲料、ハーブティー、ミルクティー、コーヒー飲料などの嗜好飲料類;ビール、ワイン、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、日本酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類を挙げることができる。
【0040】
本発明の香料組成物におけるデヒドロローズオキシドの含有量は、混合される他の香料成分により異なり一概には言えないが、香料組成物の全体質量に対して下限値としては、0.5ppb、1ppb、5ppb、10ppb、20ppb、50ppb、100ppb、200ppbが例示でき、上限値としては、10%、5%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%、500ppbが例示でき、これら下限及び上限値の任意の組み合わせを挙げることができる。特に、0.5ppb~10%(本明細書においては「~」は上限値および下限値を含む範囲を意味する)、好ましくは、1ppb~5%、より好ましくは5ppb~1%、特に好ましくは10ppb~0.5%、より特に好ましくは50ppb~0.1%の範囲とすることができる。
【0041】
本発明の飲料におけるデヒドロローズオキシドの含有量は、飲料の種類や形態に応じて異なり一概には言えないが、通常、飲料の重量を基準として、飲料の全体質量に対して下限値としては、0.05ppt、0.1ppt、0.2ppt、0.5ppt、1ppt、5ppt、10ppt、20pptが例示でき、上限値としては、10ppm、5ppm、2ppm、1ppm、0.5ppm、0.2ppm、0.1ppm、50ppbが例示でき、これら下限及び上限値の任意の組み合わせを挙げることができる。特に、0.05ppt~10ppm、好ましくは0.1ppt~5ppm、より好ましくは0.5ppt~1ppm、特に好ましくは1ppt~0.5ppm、より特に好ましくは5ppt~0.1ppmの濃度範囲とすることができる。
【0042】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0043】
以下の実施例に示すデヒドロローズオキシドは、既知の方法、例えば、特許文献7の方法に従って調製を行った。
【0044】
参考例1:紅茶抽出物の製造
紅茶葉1000gをミキサーにて粉砕し、水(90℃)15kgおよびアスコルビン酸ナトリウム1.5gを添加し、40℃まで冷却した。これに、タンナーゼ1.5gを加えて40℃、8時間静置反応させ、90℃で10分間加熱して酵素失活した後、吸引濾過により茶葉とエキスを分離し、紅茶エキス13kgを得た。この抽出液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮し、紅茶抽出物620gを得た。この紅茶抽出物を実施例1に供した。
【0045】
実施例1:紅茶フレーバーへのデヒドロローズオキシドの添加
表1に示す紅茶フレーバー処方に基づき香料組成物を調製した。すなわち、デヒドロローズオキシド希釈液(デヒドロローズオキシドが1%となるようにエタノールで希釈:デヒドロローズオキシドが香料組成物中に10ppm)を含有するものを本発明品1、デヒドロローズオキシド希釈液を添加していないものを比較品1とした。
【0046】
【表1】
【0047】
それぞれの紅茶フレーバーについて、水に0.1%賦香し、よく訓練された13名のパネリストにより、飲みごたえ感について官能評価を行った、その結果、パネリスト13名中12名が本発明品1を添加した水の方が飲みごたえ感があるものと評価した。
【0048】
実施例2:デヒドロローズオキシドの添加濃度による比較
表1の紅茶フレーバーについて、表1のデヒドロローズオキシド希釈液に代えて希釈液に対するデヒドロローズオキシドの濃度が0.1ppm(香料組成物中に0.1ppb)、1ppm(香料組成物中に1ppb)、10ppm(香料組成物中に10ppb)、100ppm(香料組成物中に100ppb)、0.1%(香料組成物中に1ppm)、1%(香料組成物中に10ppm:本発明品1)、10%(香料組成物中に100ppm)、100%(無希釈:香料組成物中に0.1%)を調製した。
【0049】
比較品1を水に0.1%添加した飲料をコントロールとして、デヒドロローズオキシドを添加した紅茶フレーバーを水に0.1%添加し、コントロールを対照として飲みごたえ感について官能評価を実施した。官能評価は13名のよく訓練されたパネリストにより、以下の評価基準で評価を行った。パネリスト13名の平均的な評価点を含む官能評価結果を表2に示す。
【0050】
(評価基準)
1:コントロールと比較して飲みごたえ感は非常に弱い;
2:コントロールと比較して飲みごたえ感は弱い;
3:コントロールと比較して飲みごたえ感は変化なし;
4:コントロールと比較して飲みごたえ感は強い;
5:コントロールと比較して飲みごたえ感は非常に強い。
【0051】
【表2】
【0052】
デヒドロローズオキシドの紅茶フレーバー中の濃度が0.1ppbの場合は、コントロールと大差がないが、紅茶フレーバーに1ppb含有させると、飲みごたえ感が強くなる。さらに紅茶フレーバー中の濃度を高くすると、飲みごたえ感がさらに強くなった。
【0053】
実施例3:ビールフレーバーへのデヒドロローズオキシドの添加
表3に示す成分を使用しビールフレーバーを調製した。すなわち、表3のデヒドロローズオキシド希釈液に対するデヒドロローズオキシドの濃度が0.1ppm(香料組成物中に0.1ppb)、1ppm(香料組成物中に1ppb)、10ppm(香料組成物中に10ppb)、100ppm(香料組成物中に100ppb)、0.1%(香料組成物中に1ppm)、1%(香料組成物中に10ppm)、10%(香料組成物中に100ppm)、100%(無希釈:香料組成物中に0.1%)を調製した。また、デヒドロローズオキシド希釈液を添加していないものを比較品2とした。
【0054】
【表3】
【0055】
それぞれのビールフレーバーを水に0.1%添加し、比較品2を水に0.1%となるように添加した飲料をコントロールとし、コントロールを対照として飲みごたえ感について官能評価を実施した。官能評価は13名のよく訓練されたパネリストにより、実施例2と同様の評価基準で評価を行った。パネリスト13名の平均的な評価点を含む官能評価結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
デヒドロローズオキシドのビールフレーバー中の濃度が0.1ppbの場合は、コントロールと大差がないが、ビールフレーバーに1ppb含有させると、飲みごたえ感が強くなる。さらにビールフレーバー中の濃度を高くすると、飲みごたえ感がさらに強くなった。
【0058】
実施例4:アップルフレーバーへのデヒドロローズオキシドの添加
表5に示すアップルフレーバー処方に基づき香料組成物を調製した。すなわち、デヒドロローズオキシド希釈液(デヒドロローズオキシドが1%となるようにエタノールで希釈:デヒドロローズオキシドが香料組成物中に10ppm)を含有するものを本発明品17、デヒドロローズオキシド希釈液を添加していないものを比較品3とした。
【0059】
【表5】
【0060】
それぞれのアップルフレーバーについて、水に0.1%賦香し、よく訓練された13名のパネリストにより、飲みごたえ感について官能評価を行った、その結果、パネリスト13名全員が本発明品17を添加した水の方が飲みごたえ感があるものと評価した。
【0061】
実施例5:炭酸飲料へのデヒドロローズオキシドの添加
水1000mLに対して、果糖ぶどう糖液糖(Bx=75°)90g、クエン酸3.3gを溶解させ、クエン酸三ナトリウムを用いてpH3.5に調整後、レモンフレーバー(長谷川香料株式会社製)を1gおよびデヒドロローズオキシドを炭酸飲料中に表6に示す0.01ppt~10ppmの濃度になるように添加し、カーボネーション後65℃×10分間殺菌することにより本発明の炭酸飲料を調製した。
【0062】
上記の方法と同様に調製した、デヒドロローズオキシドを添加していない炭酸飲料を比較品4とし、これをコントロールとして飲みごたえ感について官能評価を実施した。官能評価は13名のよく訓練されたパネリストにより、以下の評価基準で評価を行った。パネリスト13名の平均的な評価点を含む官能評価結果を表6に示す。
【0063】
(評価基準)
1:コントロールと比較して飲みごたえ感は非常に弱い;
2:コントロールと比較して飲みごたえ感は弱い;
3:コントロールと比較して飲みごたえ感は変化なし;
4:コントロールと比較して飲みごたえ感は強い;
5:コントロールと比較して飲みごたえ感は非常に強い。
【0064】
【表6】
【0065】
デヒドロローズオキシドの炭酸飲料中の濃度が0.01pptの場合は、コントロールと大差がないが、炭酸飲料に0.1ppt含有させると、飲みごたえ感が強くなる。さらに炭酸飲料中の濃度を高くすると、飲みごたえ感がさらに強くなった。
【0066】
実施例6:ビールテイスト飲料へのデヒドロローズオキシドの添加
水1000mLに対して、難消化性デキストリン8g、マルトース2g、乳酸0.15g、リン酸0.085g、カラメル(池田糖化工業社製)0.3g、L-アスコルビン酸0.1g、キラヤニン製剤(丸善製薬社製)0.1g、イソアルファー酸0.0015gを溶解させ、クエン酸三ナトリウムを用いてpH3.85に調整後、比較品2のビールフレーバー1gならびにデヒドロローズオキシドをビールテイスト飲料中に表7に示す0.01ppt~10ppmの濃度になるように添加し、カーボネーション後65℃×10分間殺菌することにより本発明のビールテイスト飲料を調製した。
【0067】
上記の方法と同様に調製した、デヒドロローズオキシドを添加していないビールテイスト飲料を比較品5とし、これをコントロールとして飲みごたえ感について官能評価を実施した。官能評価は13名のよく訓練されたパネリストにより、実施例5と同様の評価基準で評価を行った。パネリスト13名の平均的な評価点を含む官能評価結果を表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
デヒドロローズオキシドのビールテイスト飲料中の濃度が0.01pptの場合は、コントロールと大差がないが、ビールテイスト飲料に0.1ppt含有させると、飲みごたえ感が強くなる。さらにビールテイスト飲料中の濃度を高くすると、飲みごたえ感がさらに強くなった。
【0070】
実施例7:ニアウォーター飲料へのデヒドロローズオキシドの添加
水1000mLに対して、果糖25g、グラニュー糖20g、クエン酸1.4gを溶解させ、クエン酸三ナトリウムを用いてpH3.65に調整後、ピーチフレーバー(長谷川香料株式会社製)1gおよびデヒドロローズオキシドを飲料中10ppbの濃度となるように添加し、115℃×30秒間殺菌することにより本発明のニアウォーター飲料(本発明品37)を調製した。
【0071】
上記の方法と同様に調製した、デヒドロローズオキシドを添加していないニアウォーター飲料を比較品6とし、比較品6をコントロールとして本発明品37の飲みごたえ感について官能評価を実施した。官能評価は13名のよく訓練されたパネリストにより、実施例5と同様の評価基準で評価を行った。パネリスト13名の平均的な評価点を含む官能評価結果を表8に示す。
【0072】
【表8】
【0073】
上記の結果から、デヒドロローズオキシドを添加したニアウォーター飲料は、飲みごたえ感を向上させる効果を示した。
【0074】
実施例8:りんご果汁飲料へのデヒドロローズオキシドの添加
水1000mLに対して、果糖ぶどう糖液糖125g、クエン酸2.3gを溶解させ、りんご濃縮透明果汁(果香社製)を果汁20%になるように添加し、クエン酸三ナトリウムを用いてpH3.45に調整後、デヒドロローズオキシドを飲料中10ppbの濃度となるように添加し、115℃×30秒間殺菌することにより本発明のりんご果汁飲料(本発明品38)を調製した。
【0075】
上記の方法と同様に調製した、デヒドロローズオキシドを添加していないりんご果汁飲料を比較品7とし、比較品7をコントロールとして本発明品38の飲みごたえ感について官能評価を実施した。官能評価は13名のよく訓練されたパネリストにより、実施例5と同様の評価基準で評価を行った。パネリスト13名の平均的な評価点を含む官能評価結果を表9に示す。
【0076】
【表9】
【0077】
上記の結果から、デヒドロローズオキシドを添加したりんご果汁飲料は、飲みごたえ感を向上させる効果を示した。
【0078】
実施例9:紅茶飲料へのデヒドロローズオキシドの添加
80℃の湯285mLに対して、紅茶葉(三井農林社製)5.7gを添加し、5分間抽出を行った。抽出後固液分離を行い、これに、果糖ぶどう糖液糖20g、グラニュー糖20g、L-アスコルビン酸ナトリウム0.3gを添加し、水を加えて1000mLとし、炭酸水素ナトリウムを用いてpH6.0になるように調整後、デヒドロローズオキシドを飲料中10ppbの濃度となるように添加し、135℃×30秒間殺菌することにより本発明の紅茶飲料(本発明品39)を調製した。
【0079】
上記の方法と同様に調製した、デヒドロローズオキシドを添加していない紅茶飲料を比較品8とし、比較品8をコントロールとして本発明品39の飲みごたえ感について官能評価を実施した。官能評価は13名のよく訓練されたパネリストにより、実施例5と同様の評価基準で評価を行った。パネリスト13名の平均的な評価点を含む官能評価結果を表10に示す。
【0080】
【表10】
【0081】
上記の結果から、デヒドロローズオキシドを添加した紅茶飲料は、飲みごたえ感を向上させる効果を示した。
【0082】
実施例10:コーヒー飲料へのデヒドロローズオキシドの添加
コーヒー豆(ブラジル産・No.4/5・L値20,コロンビア産・EX・L値20を7:3で使用)を粉砕し、得られたコーヒー豆45gに、沸騰した湯でペーパードリップし、コーヒー抽出液360gを得た後、水を加えて1000mLとした(Brix1.2%)。炭酸水素ナトリウムを用いてpH6.5になるように調整後、デヒドロローズオキシドを飲料中10ppbの濃度となるように添加し、121℃×10分間殺菌することにより本発明のコーヒー飲料(本発明品40)を調製した。
【0083】
上記の方法と同様に調製した、デヒドロローズオキシドを添加していないコーヒー飲料を比較品9とし、比較品9をコントロールとして本発明品40の飲みごたえ感について官能評価を実施した。官能評価は13名のよく訓練されたパネリストにより、実施例5と同様の評価基準で評価を行った。パネリスト13名の平均的な評価点を含む官能評価結果を表11に示す。
【0084】
【表11】
【0085】
上記の結果から、デヒドロローズオキシドを添加したコーヒー飲料は、飲みごたえ感を向上させる効果を示した。