(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025814
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】車両用バッテリパックの支持装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20220203BHJP
B62D 21/02 20060101ALI20220203BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220203BHJP
【FI】
B60K1/04
B62D21/02 Z
H01M2/10 S
H01M2/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128910
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】レディ グル プラサッド
(72)【発明者】
【氏名】小此木 茂
(72)【発明者】
【氏名】ラジャクティ マハガネッシュ
(72)【発明者】
【氏名】グナセカラン ビグネシュア
(72)【発明者】
【氏名】ラジ マニカンダン
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D203AA13
3D203AA31
3D203AA33
3D203BA03
3D203BA06
3D203BA07
3D203BC31
3D203CA25
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3D203CB19
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3D203DB05
3D203DB07
3D235AA06
3D235BB05
3D235BB18
3D235DD37
3D235EE64
3D235FF05
3D235HH26
5H040AA01
5H040AA37
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040CC25
5H040CC30
5H040CC59
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】側突時のバッテリパックの保護性能を高めつつ、支持ブラケットの大型化及び高重量化を抑制する。
【解決手段】車両のラダーフレーム40を構成するサイドレール41間に配置される車両用バッテリパック30の支持装置10は、フレーム側接続部1と突出部2と弾性連結部6とを含む。フレーム側接続部1は、サイドレール41のウェブ41aの車幅方向外側における端面41dと、ウェブ41aの下端から車幅方向内側に延びるフランジ41cの下面41eとに接する。突出部2は、フレーム側接続部1から車高方向下方に延在し、車幅方向外側に突出するように設けられる。弾性連結部6は、突出部2に連結され、車両用バッテリパック30をラダーフレーム40に懸架する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のラダーフレームを構成するサイドレール間に配置される車両用バッテリパックの支持装置であって、
前記サイドレールのウェブの車幅方向外側における端面と、前記ウェブの下端から車幅方向内側に延びるフランジの下面と、に接するフレーム側接続部と、
前記フレーム側接続部から車高方向下方に延在し、車幅方向外側に突出するように設けられる突出部と、
前記突出部に連結され、前記車両用バッテリパックを前記ラダーフレームに懸架する弾性連結部と、を含む、車両用バッテリパックの支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両用バッテリパックを支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境への負荷を低減する観点から、駆動用のバッテリの電力をモータに供給することで走行する電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両の開発が進んでいる。近年では、トラックなどの商用車の分野においても電動車両の開発が行われている(例えば特許文献1参照)。ラダーフレームを備える電動車両においては、側突時にバッテリパックを保護する観点から、ラダーフレームを構成する一対のサイドレール間にバッテリパックを搭載することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイドレール間に配置されるバッテリパックは、サイドレールの車幅方向外側部分に連結された支持ブラケットを介してサイドレールに連結される。サイドレール及びバッテリパックよりも車幅方向外側に配置された支持ブラケットは、側突時にバッテリパックを保護する観点から、剛性及び強度の要求が高くなるため、大型化や高重量化する虞がある。
【0005】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、側突時のバッテリパックの保護性能を高めつつ、支持ブラケットの大型化及び高重量化を抑制することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本適用例に係る車両用バッテリパックの支持装置は、車両のラダーフレームを構成するサイドレール間に配置される車両用バッテリパックの支持装置であって、前記サイドレールのウェブの車幅方向外側における端面と、前記ウェブの下端から車幅方向内側に延びるフランジの下面と、に接するフレーム側接続部と、前記フレーム側接続部から車高方向下方に延在し、車幅方向外側に突出するように設けられる突出部と、前記突出部に連結され、前記車両用バッテリパックを前記ラダーフレームに懸架する弾性連結部と、を含む。
【0007】
車両の側突時の衝撃力は、車幅方向外側に突出するように設けられた突出部に入力され、突出部からフレーム側接続部を通じてサイドレールに伝達される。ここで、フレーム側接続部は、サイドレールのウェブの車幅方向外側における端面とフランジの下面とに接するため、衝撃力はフレーム側接続部からサイドレールのウェブとフランジとの双方に伝達される。これにより、サイドレールへの衝撃力の伝達性が向上するため、衝撃力がサイドレールでより吸収されることで、バッテリパックへの衝撃力の伝達が抑制される。よって、バッテリパックの保護性能が向上する。
【0008】
また、サイドレールへの衝撃力の伝達性が高められることで、バッテリパックを支持する支持ブラケット(フレーム側接続部及び突出部)の変形が抑制されるため、支持ブラケットに要求される剛性及び強度の確保が容易となる。よって、支持ブラケットの大型化及び高重量化を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本件によれば、側突時のバッテリパックの保護性能を高めつつ、支持ブラケットの大型化及び高重量化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態としての車両用バッテリパックの支持装置が適用された車両の全体構成を概略的に示す上面図である。
【
図2】
図1の支持装置及びその周辺を前方から視た模式的な断面図(
図1のII-II矢視断面図)である。
【
図3】
図1の支持装置及びその周辺の斜視図(車幅方向外側かつ前方から視た図)である。
【
図4】
図1の支持装置に設けられたフレーム側ブラケットを単体で示す斜視図である。
【
図5】
図1の支持装置の側突時における作用を説明するための模式的な断面図(
図2と同様の断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、実施形態としての車両用バッテリパックの支持装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
[1.構成]
[1-1.全体構成]
本実施形態に係る車両用バッテリパックの支持装置10(以下、単に「支持装置10」という)は、
図1に示す車両20に適用されている。以下、車両20の前進方向を前方(FR)とし、この反対方向を後方とし、前後方向を車長方向ともいう。また、車両20の前方を向いた状態を基準にして左方(LH)及び右方を定め、左右方向を車幅方向ともいう。さらに、車長方向及び車幅方向のいずれにも直交する方向を車高方向ともいい、車高方向に沿って上方(UP)及び下方を定める。
【0013】
本実施形態の車両20は、駆動用のバッテリパック30(車両用バッテリパック)と、このバッテリパック30を支持する上記の支持装置10とを備えた電動車両である。ここでは、トラック(電動トラック)である車両20を例示する。
車両20は、梯子型をなすラダーフレーム40と、バッテリパック30の電力で車両20を走行させる駆動装置50とを備えている。なお、
図1には、運転席が設けられるキャブ21と、キャブ21の後方に配置される荷箱22とを二点鎖線で示す。
【0014】
ラダーフレーム40は、バッテリパック30,駆動装置50,キャブ21及び荷箱22といった重量物を支持する構造体である。ラダーフレーム40は、車長方向に延在する一対のサイドレール41と、車幅方向に延在する複数のクロスメンバ42とで構成される。一対のサイドレール41は、車幅方向に互いに離間して配置される。各クロスメンバ42は、一対のサイドレール41間に配置され、サイドレール41同士を連結する。
【0015】
駆動装置50は、バッテリパック30の電力で作動するモータユニット51と、モータユニット51から回転力が伝達されるギアユニット52とを有する。ここでは、一対のサイドレール41の間に配置された駆動装置50を例示する。
ギアユニット52は、周知の減速機構や差動機構を含み、モータユニット51から伝達される回転力を、必要に応じて減速したうえで、リアアクスル23を介して左右の後輪(駆動輪)24に伝達する。車両20は、このように駆動装置50から後輪24に回転力が伝達されることにより走行する。
【0016】
バッテリパック30は、比較的大型かつ大容量の二次電池であり、駆動装置50よりも前方において一対のサイドレール41間に配置される。
図2に示すように、バッテリパック30は、車高方向に並ぶ第1バッテリ収容部31及び第2バッテリ収容部32と、第1バッテリ収容部31及び第2バッテリ収容部32の各々に収容された複数のバッテリ33とを有する。
【0017】
本実施形態では、第1バッテリ収容部31及び第2バッテリ収容部32がいずれも直方体形状であるバッテリパック30を例示する。第1バッテリ収容部31は、一対のサイドレール41間である第1スペースS1に配置される。一方、第2バッテリ収容部32は、第1スペースS1よりも下方の第2スペースS2に配置されると共に、第1バッテリ収容部31と連続する。
【0018】
ここで、第1スペースS1とは、車両20の側面視(車幅方向視)でサイドレール41に隠れる空間である。また、第2スペースS2とは、サイドレール41よりも下方の空間であって、車両20の側面視でサイドレール41に隠れない空間である。
本実施形態の第1バッテリ収容部31は、少なくとも一部が第1スペースS1に配置されており、車両20の側面視で少なくとも一部がサイドレール41と重複する。また、本実施形態の第2バッテリ収容部32は、その全体が第2スペースS2に配置されており、車両20の側面視でその全体が各サイドレール41と重複しない。
【0019】
本実施形態の第1バッテリ収容部31は、第2バッテリ収容部32上に載置されている。第1バッテリ収容部31と第2バッテリ収容部32とは、互いに固定されている。
本実施形態では、第1バッテリ収容部31の車幅方向寸法W1よりも、第2バッテリ収容部32の車幅方向寸法W2が大きく設定されている。ここでは、第1バッテリ収容部31の車幅方向寸法W1が一対のサイドレール41間の距離Xよりも小さく(W1<X)、第2バッテリ収容部32の車幅方向寸法W2が上記の距離Xよりも大きい(W2>X)例を示す。
【0020】
一対のサイドレール41間の距離Xは、詳細には、各サイドレール41において、車長方向かつ車高方向に沿う板状のウェブ41aの上端及び下端から車幅方向内側へ延びるフランジ41b,41cの先端(突出端)を基準とした距離である。したがって、上記の距離Xとは、左のサイドレール41におけるフランジ41b,41cの右端と、右のサイドレール41におけるフランジ41b,41cの左端との間の車幅方向の長さに相当する。
以下、各サイドレール41に設けられた上下のフランジ41b,41cのうち、下側のフランジ41cを「下フランジ41c」ともいう。
【0021】
第1バッテリ収容部31及び第2バッテリ収容部32は、車幅方向の中心線(
図2中の一点鎖線参照)が互いに一致するように配置されている。これにより、バッテリパック30は、正面視(車長方向視)において、上下を逆転させたT字形状(逆T字形状)をなす。
複数のバッテリ33は、直列に接続されており、車両20の駆動用のエネルギー源として機能する。なお、バッテリ33の個数や配置は特に限定されず、車両20を駆動させるために求められる電力量やバッテリ33の寸法及び特性等に応じて適宜変更することができる。
【0022】
[1-2.要部構成]
以下、支持装置10について詳述する。
支持装置10は、ラダーフレーム40に結合された支持ブラケットとしてのフレーム側ブラケット4と、バッテリパック30に結合されたバッテリ側ブラケット5と、これらのフレーム側ブラケット4及びバッテリ側ブラケット5を弾性的に連結する弾性連結部6とを含む。支持装置10は、このようにフレーム側ブラケット4及びバッテリ側ブラケット5が弾性連結部6を介して連結される構成により、ラダーフレーム40に対してバッテリパック30を弾性的に支持し、ラダーフレーム40からバッテリパック30に伝わる振動を低減する。
【0023】
本実施形態では、弾性連結部6を介して互いに連結されたフレーム側ブラケット4とバッテリ側ブラケット5とが、バッテリパック30の左右それぞれにおいて、車長方向に間隔をあけて三つずつ配置された支持装置10を例示する(
図1参照)。したがって、本実施形態のバッテリパック30は、六つのバッテリ側ブラケット5にそれぞれ固定された六つの弾性連結部6と、これらの弾性連結部6にそれぞれ連結された六つのフレーム側ブラケット4とを介して、ラダーフレーム40に取り付けられている。なお、本実施形態の支持装置10は、左右対称に形成されている。
【0024】
図3に示すように、本実施形態のフレーム側ブラケット4は、サイドレール41に接続されるフレーム側接続部1と、車幅方向外側に突出するように設けられて弾性連結部6が連結される突出部2とを有する。フレーム側接続部1は、フレーム側ブラケット4の上部をなし、突出部2は、フレーム側接続部1と連続して設けられてフレーム側ブラケット4の下部をなす。
【0025】
フレーム側接続部1は、サイドレール41の車幅方向外側に配置される側壁部1aと、サイドレール41の下方に配置される下壁部1bとを有する。側壁部1a及び下壁部1bは、L字状をなすように(互いに略直角に)配置される。
側壁部1aは、車長方向かつ車高方向に沿って延びる板状の部分であり、サイドレール41のウェブ41aの車幅方向外側における端面41dに接した状態で配置される。側壁部1aには、フレーム側ブラケット4をサイドレール41に固定するための図示しない締結具が挿通される複数の締結孔1cが貫設されている。締結孔1cは、ウェブ41aに形成された貫通孔41hと車幅方向に連通するように形成される。
【0026】
図4に示すように、下壁部1bは、車長方向かつ車幅方向に沿って延びる平面部1dと、平面部1dの車幅方向内側の端部において上方へ突設された凸部1eとを有する。下壁部1bは、凸部1eが下フランジ41cの下面41eに接した状態で配置されると共に、平面部1dが下フランジ41cの下面41eとの間に僅かな隙間をあけて配置される。
このように、フレーム側接続部1は、サイドレール41に対し、側壁部1aがウェブ41aの車幅方向外側における端面41dに接すると共に、下壁部1bが下フランジ41cの下面41eに接して設けられる。
【0027】
突出部2は、フレーム側接続部1から下方に延在し、フレーム側接続部1よりも車幅方向外側に突出する。ここでは、車幅方向外側への突出量が、フレーム側接続部1から下方へ行くにつれて次第に増大された突出部2を例示する。
突出部2は、フレーム側ブラケット4の底面をなすマウント部2aと、マウント部2aの車幅方向内側の端部とフレーム側接続部1の下壁部1bにおける凸部1eとの間に延びる内壁部2bとを有する。
【0028】
マウント部2aは、車長方向かつ車幅方向に沿って延びる板状の部分であり、フレーム側接続部1と離隔して配置される。マウント部2aには、弾性連結部6を配置するためのマウント孔2cと、マウント孔2cに配置された弾性連結部6をマウント部2aに固定するための第一固定具7(
図3参照)が挿通される複数の固定孔2dとが貫設されている。ここでは固定孔2dが、マウント孔2cの外周において、車幅方向内側(内壁部2b側)の位置と、車幅方向外側の位置とのそれぞれに二つずつ(合計四つ)設けられた例を示す。
【0029】
内壁部2bは、車長方向かつ車高方向に沿って設けられ、フレーム側ブラケット4の車長方向内側の端面をなす。内壁部2bには、車幅方向内側へ窪む凹部2eと、凹部2eの下方において車幅方向に貫通する貫通孔2f,2gとが形成されている。ここでは、二つの凹部2eが車長方向に並んで設けられた例を示す。また、貫通孔2f,2gとしては、固定孔2dへのアクセス孔として機能する三角形状の大貫通孔2fと、大貫通孔2fよりも小さい三角形状であって、大貫通孔2fの前方及び後方のそれぞれに配置された二つの小貫通孔2gとを例示する。
【0030】
本実施形態のフレーム側ブラケット4には、フレーム側接続部1と突出部2とにわたって車高方向に延びる前壁部4a及び後壁部4bが設けられている。前壁部4a及び後壁部4bはいずれも、車高方向かつ車幅方向に沿って延びる板状の部分であり、車長方向において互いに対向する。前壁部4aは、フレーム側ブラケット4の前面をなし、後壁部4bは、フレーム側ブラケット4の後面をなす。
【0031】
フレーム側ブラケット4は、前壁部4a及び後壁部4bの各々において車高方向に延在する縦リブ4cを有する。縦リブ4cは、前壁部4a及び後壁部4bから膨出した形状であって、フレーム側ブラケット4を補強する機能をもつ。
また、
図3に示すようにフレーム側ブラケット4は、前壁部4a及び後壁部4bの間において車長方向に延在する横リブ4d,4eを有する。横リブ4d,4eは、前壁部4a及び後壁部4bを互いに連結する板状の部分であって、フレーム側ブラケット4を補強する機能をもつ。ここでは、マウント部2aよりも上方において、車高方向に互いに離隔して配置された二つの横リブ4d,4eを例示する。
【0032】
下側の横リブ4eは、上側の横リブ4dよりも車幅方向外側に突出しており、半円形状に切り欠かれた欠成部4fを有する。欠成部4fは、弾性連結部6の軸心C上に配置される。
フレーム側ブラケット4は、鋳造により形成された一体ものである。すなわち、フレーム側ブラケット4の各部は一体で成型されている。したがって、フレーム側ブラケット4には、上記のフレーム側接続部1や突出部2等の各部を互いに連結するためのボルトやナットやボルト孔等が設けられていない。
【0033】
バッテリ側ブラケット5は、第2バッテリ収容部32の車幅方向外側における端面32aから車幅方向外側に突設され、フレーム側ブラケット4の下方に配置される。
弾性連結部6は、例えばゴムブッシュであり、略円柱又は略円錐台形状の弾性体6aを含んで構成される。弾性連結部6は、様々な方向(車長方向,車幅方向,車高方向及びこれらを組み合わせた複合的な方向)において入力される外力を吸収する。
【0034】
弾性連結部6は、マウント孔2cを貫通した状態でフレーム側ブラケット4の突出部2に連結される。弾性連結部6の上端部の軸心C上には、弾性連結部6を固定するための第二固定具8が取り付けられる。また、弾性連結部6の下端部は、図示しない固定具でバッテリ側ブラケット5に固定される。弾性連結部6は、このようにフレーム側ブラケット4とバッテリ側ブラケット5との各々に固定されることで、これらのフレーム側ブラケット4とバッテリ側ブラケット5とを弾性的に連結する。
【0035】
なお、支持装置10が車両20に組み付けられる際は、まず弾性連結部6がフレーム側ブラケット4に連結され、その後、フレーム側ブラケット4がサイドレール41に固定されると共に、弾性連結部6がバッテリ側ブラケット5に連結される。このように支持装置10が車両20に組み付けられた状態では、弾性連結部6がラダーフレーム40にバッテリパック30を弾性的に懸架する。
【0036】
[2.作用及び効果]
図5に示すように、車両20の側突(
図5の例では右側突)時、フレーム側ブラケット4には車幅方向外側から内側へ向けて衝撃力Fが入力される。この衝撃力Fは、フレーム側ブラケット4において最も車幅方向外側へ突出する突出部2に入力され、突出部2からフレーム側接続部1を通じてサイドレール41に伝達される。
【0037】
ここで、フレーム側接続部1は、サイドレール41のウェブ41a及び下フランジ41cの双方に接していることから、衝撃力Fはフレーム側接続部1からサイドレール41のウェブ41aだけでなく下フランジ41cにも伝達される。詳細にいえば、衝撃力Fは、フレーム側接続部1の側壁部1aからサイドレール41のウェブ41aに第一衝撃力F1として伝達されると共に、フレーム側接続部1の下壁部1bからサイドレール41の下フランジ41cにも第二衝撃力F2として伝達される。
【0038】
このように、支持装置10によれば、フレーム側接続部1からサイドレール41のウェブ41a及び下フランジ41cの双方に衝撃力Fを伝達できる。このため、衝撃力Fがフレーム側ブラケット4からウェブ41aのみに伝達される場合と比べて、サイドレール41への衝撃力Fの伝達性を高められる。これにより、衝撃力Fがサイドレール41でより吸収されるため、バッテリパック30への衝撃力Fの伝達を抑制できる。よって、バッテリパック30の保護性能を高められる。
【0039】
また、上記のようにサイドレール41への衝撃力Fの伝達性が高められることで、フレーム側ブラケット4の変形が抑制されるため、フレーム側ブラケット4に要求される剛性及び強度の確保が容易となる。よって、フレーム側ブラケット4の大型化及び高重量化を抑制できる。
なお、突出部2が衝撃力Fによって車幅方向内側へ変形した場合には、突出部2に連結された弾性連結部6によっても衝撃力Fが吸収される。このため、バッテリパック30に伝達される衝撃力Fを更に低減できる。
【0040】
フレーム側ブラケット4に設けられた縦リブ4cによれば、フレーム側ブラケット4において車高方向の荷重に対する剛性及び強度を高められる。このため、フレーム側ブラケット4の変形を更に抑制できると共に、フレーム側接続部1からサイドレール41への衝撃力Fの伝達性を更に高められる。よって、バッテリパック30の保護性能を更に高められる。
【0041】
フレーム側ブラケット4に設けられた横リブ4d,4eによれば、フレーム側ブラケット4において車長方向の荷重に対する剛性及び強度を高められる。このため、フレーム側ブラケット4の変形を更に抑制できると共に、フレーム側接続部1からサイドレール41への衝撃力Fの伝達性を更に高められる。よって、バッテリパック30の保護性能を更に高められる。
【0042】
下側の横リブ4eに設けられた欠成部4fによれば、第二固定具8を弾性連結部6に取り付けるときに、第二固定具8の横リブ4eとの干渉を回避しやすくなる。このため、突出部2への弾性連結部6の組付性を高められる。
内壁部2bに形成された大貫通孔2fは、内壁部2bに隣接する固定孔2dに第一固定具7を固定するときのアクセス孔として利用できる。すなわち、突出部2への弾性連結部6の組付時には、内壁部2bに隣接する固定孔2dに、大貫通孔2fを通じて第一固定具7を固定できる。これによっても、突出部2への弾性連結部6の組付性を高められる。
【0043】
また、内壁部2bに形成された小貫通孔2g及び凹部2eによれば、フレーム側ブラケット4を軽量化できる。このため、支持装置10の重量を抑制できる。
鋳造により形成された一体もののフレーム側ブラケット4によれば、フレーム側ブラケット4を組み立てるアセンブリ作業が不要となるため、支持装置10の組立負荷や組立コストを抑制できる。また、フレーム側ブラケット4の各部を互いに連結するためのボルトやナット等が設けられないことにより、フレーム側ブラケット4の構成が簡素化されるため、第一固定具7や第二固定具8の取付作業が容易となる。これによっても、突出部2への弾性連結部6の組付性を高められる。
【0044】
第2バッテリ収容部32の車幅方向寸法W2が第1バッテリ収容部31の車幅方向寸法W1よりも大きいため、車幅方向寸法がサイドレール41で制限される第1スペースS1に比べて制限の少ない第2スペースS2を有効活用して、バッテリパック30のバッテリ容量を増大できる。よって、バッテリパック30のレイアウト性を確保しつつ、バッテリ容量を増大できる。
【0045】
一方で、このように第1バッテリ収容部31よりも大きい車幅方向寸法W2をもつ第2バッテリ収容部32は、側突時に車幅方向外側からの衝撃力Fを受けやすくなるが、支持装置10によれば上記のように衝撃力Fをサイドレール41に伝達してサイドレール41で吸収させるため、バッテリパック30への衝撃力Fの伝達を抑制できる。よって、バッテリ容量の増大を実現しながらも、バッテリパック30の保護性能を高められる。
【0046】
[3.変形例]
上記のバッテリパック30は一例である。支持装置10は、正面視で矩形状をなすバッテリパックや、第1バッテリ収容部31又は第2バッテリ収容部32が省略されたバッテリパックに適用されてもよい。
上記のフレーム側ブラケット4及びバッテリ側ブラケット5の形状も一例である。支持装置10には、少なくとも、フレーム側接続部1と突出部2と弾性連結部6とが設けられればよく、凹部2e,貫通孔2f,2g,縦リブ4c及び横リブ4d,4e等は省略されてもよい。また、フレーム側接続部1の下壁部1bは、その全体が下フランジ41cの下面41eに接する平面状に形成されてもよい。
【0047】
支持装置10が適用される車両20は、駆動源として、上記のモータユニット51のみを備える電気自動車に限らず、エンジンを更に備えるハイブリッド自動車であってもよい。また、支持装置10は、ラダーフレーム40を備える種々の車両に適用可能であり、トラック以外の商用車に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 フレーム側接続部
1a 側壁部
1b 下壁部
1c 締結孔
1d 平面部
1e 凸部
2 突出部
2a マウント部
2b 内壁部
2c マウント孔
2d 固定孔
2e 凹部
2f 大貫通孔
2g 小貫通孔
4 フレーム側ブラケット
4a 前壁部
4b 後壁部
4c 縦リブ
4d,4e 横リブ
4f 欠成部
5 バッテリ側ブラケット
6 弾性連結部
6a 弾性体
7 第一固定具
8 第二固定具
10 支持装置(車両用バッテリパックの支持装置)
20 車両
21 キャブ
22 荷箱
23 リアアクスル
24 後輪
30 バッテリパック(車両用バッテリパック)
31 第1バッテリ収容部
32 第2バッテリ収容部
32a 端面
33 バッテリ
40 ラダーフレーム
41 サイドレール
41a ウェブ
41b フランジ
41c 下フランジ(フランジ)
41d 端面
41e 下面
41h 貫通孔
42 クロスメンバ
50 駆動装置
51 モータユニット
52 ギアユニット
C 軸心
F 衝撃力
F1 第一衝撃力
F2 第二衝撃力
S1 第1スペース
S2 第2スペース
W1 第1バッテリ収容部31の車幅方向寸法
W2 第2バッテリ収容部32の車幅方向寸法
X サイドレール41間の距離