(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025818
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】配筋計測用の三次元配筋データ作成方法及び三次元配筋データ作成システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/245 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
G01B11/245 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128914
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000156204
【氏名又は名称】株式会社淺沼組
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】591169490
【氏名又は名称】北野建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207872
【氏名又は名称】大末建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510065067
【氏名又は名称】▲高▼松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000231198
【氏名又は名称】日本国土開発株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】株式会社ピーエス三菱
(71)【出願人】
【識別番号】591214804
【氏名又は名称】株式会社松村組
(71)【出願人】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】八代 成美
(72)【発明者】
【氏名】安武 祐太
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 一秀
(72)【発明者】
【氏名】村川 昌広
(72)【発明者】
【氏名】村井 克綺
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】市川 達也
(72)【発明者】
【氏名】赤星 博仁
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢二郎
(72)【発明者】
【氏名】上原 誠
(72)【発明者】
【氏名】田野井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高井 茂光
(72)【発明者】
【氏名】林 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】上田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】築城 寛行
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB12
2F065CC14
2F065DD06
2F065FF05
2F065FF09
2F065MM06
2F065PP03
2F065QQ31
2F065QQ38
(57)【要約】
【課題】本発明は、作業効率に優れると共に、立体的な鉄筋の配置を計測することができる配筋計測用の三次元配筋データ作成方法及び三次元配筋データ作成システムを提供する。
【解決手段】配筋計測用の三次元配筋データ作成方法は、所定間隔で配置された2つのカメラで同時に撮影して得られる一組の配筋画像を所定時間内に複数組取得し(S10)、配筋画像の中から配筋ラインを推定し(S12)、各配筋ラインの三次元座標を計算し(S16)、計算して得られた各配筋ラインの三次元座標に基づいて、基準三次元座標系に配筋ラインを配置して三次元配筋データを合成する(S18)。複数組の配筋画像は、配筋に対して複数の異なる撮影位置にあるカメラで撮影することで得られる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で配置された2つのカメラで同時に撮影して得られる一組の配筋画像を所定時間内に複数組取得し、
前記配筋画像の中から配筋ラインを推定し、
各配筋ラインの三次元座標を計算し、
計算して得られた各配筋ラインの三次元座標に基づいて、基準三次元座標系に配筋ラインを配置して三次元配筋データを合成し、
前記複数組の配筋画像は、配筋に対して複数の異なる撮影位置にある前記カメラで撮影することで得られる、配筋計測用の三次元配筋データ作成方法。
【請求項2】
請求項1において、
それぞれの前記撮影位置にある前記2つのカメラの各レンズと前記配筋における撮影対象の鉄筋との距離は、0.5m以上2.5m以下であり、
それぞれの前記撮影位置における前記各カメラの光軸に直交する仮想平面と前記鉄筋の中心軸線とが成す角度は、0度~30度である、配筋計測用の三次元配筋データ作成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記三次元座標は、各組の配筋画像同士を比較して三角測量することで計算される、配筋計測用の三次元配筋データ作成方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項において、
前記三次元配筋データにおける配筋ラインは、前記2つのカメラの任意の前記撮影位置に近い正面内の配筋ラインと、前記撮影位置から遠い背面内の配筋ラインと、前記正面と前記背面とを接続する2つの接続面内の配筋ラインとを含む、配筋計測用の三次元配筋データ作成方法。
【請求項5】
所定間隔で配置された2つのカメラで撮影された一組の配筋画像を複数組取得する画像取得部と、
前記配筋画像の中から配筋ラインを推定する推定部と、
前記推定部で推定された各配筋ラインの三次元座標を計算する三次元座標計算部と、
前記三次元座標計算部によって得られた各配筋ラインの三次元座標に基づいて、基準三次元座標系に配筋ラインを配置して三次元配筋データを合成する合成処理部と、
を含み、
前記複数組の配筋画像は、配筋に対して複数の異なる撮影位置にある前記カメラで撮影することで得られる、配筋計測用の三次元配筋データ作成システム。
【請求項6】
請求項5において、
それぞれの前記撮影位置にある前記2つのカメラの各レンズと前記配筋における撮影対象の鉄筋との距離は、0.5m以上2.5m以下であり、
それぞれの前記撮影位置における前記各カメラの光軸に直交する仮想平面と前記鉄筋の中心軸線とが成す角度は、0度~30度である、配筋計測用の三次元配筋データ作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配筋計測用の三次元配筋データ作成方法及び三次元配筋データ作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造、鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄骨造等の建築物の工事現場では、配筋された柱や梁の配筋検査が行われる。このような配筋検査に用いる配筋検査システムとして、デジタルカメラで撮影された鉄筋の画像に基づいて検査対象の鉄筋の径、本数、ピッチの少なくとも一つを計測するシステムが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、鉄筋の径、本数、ピッチを算出するために、長手方向の両端にマーカーを設けた背景バーを計測対象の鉄筋の背景に設置して撮影しなければならない。そのため、背景バーの適切な配置等により作業効率が低く、しかも背景バー上の鉄筋を計測するため、立体的な鉄筋の配置を計測することができない。
【0005】
そこで、本発明は、作業効率に優れると共に、立体的な鉄筋の配置を計測することができる配筋計測用の三次元配筋データ作成方法及び三次元配筋データ作成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0007】
[1]本発明に係る配筋計測用の三次元配筋データ作成方法の一態様は、
所定間隔で配置された2つのカメラで同時に撮影して得られる一組の配筋画像を所定時間内に複数組取得し、
前記配筋画像の中から配筋ラインを推定し、
各配筋ラインの三次元座標を計算し、
計算して得られた各配筋ラインの三次元座標に基づいて、基準三次元座標系に配筋ラインを配置して三次元配筋データを合成する工程を含み、
前記複数組の配筋画像は、配筋に対して複数の異なる撮影位置にある前記カメラで撮影することで得られることを特徴とする。
【0008】
[2]上記配筋計測用の三次元配筋データ作成方法の一態様において、
それぞれの前記撮影位置における前記2つのカメラの各レンズと前記配筋における撮影対象の鉄筋との距離は、0.5m以上2.5m以下であり、
それぞれの前記撮影位置における前記各カメラの光軸に直交する仮想平面と前記鉄筋の中心軸線とが成す角度は、0度~30度であることができる。
【0009】
[3]上記配筋計測用の三次元配筋データ作成方法の一態様において、
前記三次元座標は、各組の配筋画像同士を比較して三角測量することで計算することができる。
【0010】
[4]上記配筋計測用の三次元配筋データ作成方法の一態様において、
前記三次元配筋データにおける配筋ラインは、前記2つのカメラの任意の前記撮影位置に近い正面内の配筋ラインと、前記撮影位置から遠い背面内の配筋ラインと、前記正面と前記背面とを接続する2つの接続面内の配筋ラインとを含むことができる。
【0011】
[5]本発明に係る配筋計測用の三次元配筋データ作成システムの一態様は、
所定間隔で配置された2つのカメラで撮影された一組の配筋画像を複数組取得する画像取得部と、
前記配筋画像の中から配筋ラインを推定する推定部と、
前記推定部で推定された各配筋ラインの三次元座標を計算する三次元座標計算部と、
前記三次元座標計算部によって得られた各配筋ラインの三次元座標に基づいて、基準三次元座標系に配筋ラインを配置して三次元配筋データを合成する合成処理部と、
を含み、
前記複数組の配筋画像は、配筋に対して複数の異なる撮影位置にある前記カメラで撮影することで得られることを特徴とする。
【0012】
[6]上記配筋計測用の三次元配筋データ作成システムの一態様において、
それぞれの前記撮影位置における前記2つのカメラの各レンズと前記配筋における撮影対象の鉄筋との距離は、0.5m以上2.5m以下であり、
それぞれの前記撮影位置における前記各カメラの光軸に直交する仮想平面と前記鉄筋の中心軸線とが成す角度は、0度~30度であることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る配筋計測用の三次元配筋データ作成方法及び三次元配筋データ作成システムの一態様によれば、配筋検査の作業効率に優れると共に、立体的な鉄筋の配置を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る三次元配筋データ作成システムの概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る三次元配筋データ作成方法のフローチャートである。
【
図4】一組の配筋画像の中で推定された配筋ラインを説明する図である。
【
図5】配筋ラインを合成して得られる三次元配筋データを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0016】
1.三次元配筋データ作成システム
図1及び
図2を用いて本発明の一実施形態に係る配筋計測用の三次元配筋データ作成システム20について説明する。
図1は、一実施形態に係る三次元配筋データ作成システム20の概略構成図であり、
図2は、主筋1aとレンズ16との関係を説明する図である。
【0017】
図1に示すように、三次元配筋データ作成システム20は、鉄筋コンクリート造の建築物の工事現場において、柱や梁の配筋1を検査するために用いるシステムである。
図1では三次元配筋データ作成システム20はブロック図で示す。三次元配筋データ作成システム20は、その筐体にステレオカメラ10が一体に備えられていてもよい。三次元配筋データ作成システム20は、ステレオカメラ10で撮影された配筋1の配筋画像を取得する画像取得部22と、取得された配筋画像に基づいて各種処理を行う推定部24、マッチング部26、三次元座標計算部28及び合成処理部30と、合成処理された三次元配筋データを表示する表示部32と、を備える。
【0018】
配筋1は、三次元配筋データ作成システム20による計測対象となる複数の鉄筋を含む。配筋1は、例えば、複数本の主筋1aと、複数本のせん断補強筋1bと、複数本の腹筋1cとを備える。この場合、配筋検査における計測対象となるのは主筋1aとせん断補強筋1bと腹筋1cである。配筋1は、図示しない2段筋を備えてもよい。配筋1の上面は、本実施形態では正面2という。正面2は、例えば、複数の異なる撮影位置に配置されたステレオカメラ10と対向する面であることができ、すなわち、正面2の少なくとも一部は全ての配筋画像に表されることが好ましい。正面2は、配筋1におけるいずれの面であってもよいが、配筋1の一部が図示しない型枠によって覆われている場合には撮影可能な型枠に覆われていない面を正面2とする。配筋1における計測対象の鉄筋は、例えば、径がD10~D51の異形棒鋼または丸鋼である。
【0019】
三次元配筋データ作成システム20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体、高速データ通信を行う通信インターフェース、及びディスプレイ、タッチパネルやキーボードなどのユーザインターフェースを備えるノートパソコンやタブレット端末として構成されている。三次元配筋データ作成システム20は、工事現場において携帯可能な端末であることが好ましいが、必ずしも一台の装置により実現する必要はなく、例えばクライアントサーバ型コンピュータやクラウドコンピューティングに一部の処理部を分散してもよい。
【0020】
ステレオカメラ10は、所定間隔dで配置された2つのカメラ(第1カメラ12、第2カメラ14)を備える。ステレオカメラ10は、一つの筐体に所定間隔dで配置した第1カメラ12と第2カメラ14により配筋画像を撮影し、撮影した配筋画像を三次元配筋データ作成システム20の画像取得部22へ送信する。第1カメラ12と第2カメラ14との所定間隔dは、撮影する対象に応じて変更可能に構成してもよい。ステレオカメラ10で撮影された配筋画像は、2つの画像の視差から、三角測量の原理で距離を算出することができる。ステレオカメラ10は、例えば三次元配筋データ作成システム20の一部として機能してもよい。
【0021】
ステレオカメラ10で配筋1の全部または一部を同時に撮影することによって一組の配筋画像が得られる。各配筋画像には計測対象である鉄筋の画像(以下「撮影対象の鉄筋」という)が含まれていればよい。ステレオカメラ10は、所定時間内に複数組の配筋画像を撮影する。ここで所定時間とは例えば5秒~10秒であり、所定時間内にあらかじめ設定された短い時間間隔で複数回のシャッターが切られて複数組の配筋画像が撮影される。そして、その所定時間の撮影の間、ステレオカメラ10を移動させることにより、各組の配筋画像は、配筋1に対してそれぞれ異なる撮影位置にあるステレオカメラ10で撮影された画像となる。
【0022】
図2に示すように、それぞれの撮影位置にあるステレオカメラ10の各レンズ16と配
筋1における撮影対象の鉄筋との距離Dは、0.5m以上2.5m以下に設定されることが好ましい。距離Dは、レンズ16と撮影対象の鉄筋との最短距離である。本発明者らの実験によれば当該距離Dが0.5m未満になると左右のカメラで撮影された鉄筋の並びが異なるためマッチングが難しくなる。また、当該距離Dが2.5mを超えると、D10以下の細い鉄筋が検知できなくなるため実用的ではない。
【0023】
図2に示すように、それぞれの撮影位置にあるステレオカメラ10の各カメラ(
図2では第1カメラ12)の光軸L3に直交する仮想平面P1と撮影対象の鉄筋である主筋1aの中心軸線L1とが成す角度Aは、0度~30度であることが好ましい。また、
図2のように中心軸線L1に直交しかつ光軸L3に直交する方向から見たとき、中心軸線L1の垂線L2と、光軸L3との成す角度は、角度Aとなり、0度~30度の範囲にある。本発明者らの実験によれば当該角度Aが30度を超えると左右のカメラで撮影された鉄筋の特徴点が検出されにくくなるためマッチングが難しくなり、また処理速度も低下するため、実用的ではない。
【0024】
画像取得部22は、ステレオカメラ10で同時に撮影して得られる一組の配筋画像を所定時間内に複数組取得する。複数組の配筋画像は、配筋1に対して複数の異なる撮影位置にあるステレオカメラ10で撮影することで得られる。ステレオカメラ10による1回の撮影で得られる配筋画像は、第1カメラ12から得られる第1画像(右画像)と第2カメラ14から得られる第2画像(左画像)の一組である。ステレオカメラ10により複数回撮影を行うことで、複数組の配筋画像が得られる。そして、配筋1に対して複数の異なる撮影位置から撮影することで、配筋画像から推定できる配筋ラインを増やすことができる。すなわち、ステレオカメラ10に近い手前側にある鉄筋は写りやすく、奥側にある鉄筋は写りにくいが、異なる撮影位置から撮影することにより、奥側にある鉄筋も漏れなく撮影することができる。このように、ステレオカメラ10の移動は、配筋1における撮影対象の鉄筋の全てが撮影されるようにすることが好ましい。また、複数の異なる撮影位置は、配筋1の所定の平面(正面2)が配筋画像に含まれるように設定することが好ましい。
【0025】
配筋1の任意の面(例えば正面2)に立体マーカーを配置させた状態で配筋画像を取得してもよい。その場合、配筋1と立体マーカーとの位置関係が変わらないようにしつつ、すべての配筋画像内に立体マーカーが含まれるように撮影することが好ましい。これにより、複数組の配筋画像の間の相互位置関係を把握しやすくなるので、推定部24における配筋ラインの推定処理がより高速でより高精度になる。
【0026】
立体マーカーは、AR(Augumented Reality:拡張現実)マーカーである。立体マーカーは、例えば立方体の各表面に異なるパターンが印刷されたものを用いることができる。立体マーカーが撮影対象である配筋1と共に配筋画像に含まれるように撮影されることによって、配筋画像に含まれる立体マーカーの位置及び角度を認識することができ、その結果、配筋1に対するステレオカメラ10の姿勢を推定することができる。複数組の配筋画像はステレオカメラ10を移動させながら撮影されるので、各配筋画像における立体マーカーを基準にステレオカメラ10の姿勢をそれぞれ推定することができ、その推定された姿勢に基づいて後述する合成処理部30が三次元配筋データを合成してもよい。
【0027】
推定部24は、画像取得部22で取得した配筋画像の中から配筋ラインを推定する。配筋ラインは、第1画像または第2画像における鉄筋に沿って延びる仮想線であり、鉄筋上に重なるように推定され、好ましくは鉄筋の中心軸に沿うように推定される。配筋ラインの推定は、鉄筋の特徴(例えば直線性、節、色、交差部など)を利用して行うことができる。推定部24は、画像取得部22で取得した全ての配筋画像に対して、配筋1の検知及び配筋ラインの推定を行う。配筋ラインを推定する手法としては、例えば学習機能を有す
る形状検出アルゴリズムを利用することができる。
【0028】
マッチング部26は、推定部24で推定された配筋ラインを各組の配筋画像ごとにマッチングする。マッチングは、2枚の画像を比較して「同じものを一致する」ことである。ここで、「もの」は画像中の「点」や「領域」である。マッチング部26は、推定部24で配筋ラインを推定する際に検知した鉄筋の特徴点をマッチングしてもよい。その場合、マッチングした鉄筋に対応する配筋ラインであることを判定することで配筋ラインをマッチングしてもよい。マッチングの手法としては、特徴点マッチングを採用することができる。マッチングを行う前に、予め各画像に対して前処理を施すことができる。
【0029】
三次元座標計算部28は、推定部24で推定された各配筋ラインの三次元座標を計算する。三次元座標は、初めにステレオカメラ10で撮影する、あらかじめ取得した鉄筋位置を三次元座標の基準点とするか、もしくは、配筋1に設置した立体マーカーを三次元座標の基準点として計算することで取得できる。配筋ラインは、マッチング処理で用いられた複数の特徴点上を通るため、各特徴点とステレオカメラ10との距離を計測して配筋ラインの三次元座標を計算することができる。
【0030】
合成処理部30は、三次元座標計算部28によって得られた各配筋ラインの三次元座標に基づいて、基準三次元座標系に配筋ラインを配置して三次元配筋データを合成する。すなわち、三次元座標が特定された全ての配筋ラインを共通の基準三次元座標系に関連付ける。これにより、配筋ラインを三次元データとして表現することができる。
【0031】
表示部32は、合成処理された三次元配筋データを表示する。表示部32に表示された三次元配筋データは、実際の配筋1と比較することができる。
【0032】
2.三次元配筋データ作成方法
図1~
図5を用いて本発明の一実施形態に係る配筋計測用の三次元配筋データ作成方法について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る三次元配筋データ作成方法のフローチャートであり、
図4は、一組の配筋画像の中で推定された配筋ライン(第1配筋ライン40、第2配筋ライン42)を説明する図であり、
図5は、配筋ライン(第1配筋ライン40、第2配筋ライン42)を合成して得られる三次元配筋データ60を説明する図である。なお、上述の三次元配筋データ作成システム20の説明と重複する部分については省略する。
【0033】
図3に示すように、配筋計測用の三次元配筋データ作成方法は、例えば、取得工程(S10)、推定工程(S12)、マッチング工程(S14)、計算工程(S16)、及び合成工程(S18)を含む。マッチング工程(S14)は、推定工程(S12)または計算工程(S16)の中で行われてもよい。推定工程(S12)とマッチング工程(S14)とは並列処理してもよい。各工程は、三次元配筋データ作成システム20の記憶媒体に記録された処理プログラムを用いて実行することができる。
【0034】
取得工程(S10):三次元配筋データ作成システム20の画像取得部22が所定間隔dで配置された2つのカメラで撮影して一組の配筋画像を複数組取得する。
図4では、ステレオカメラ10の第1カメラ12と第2カメラ14により配筋1を撮影する例について示す。右側の第1カメラ12によって撮影された第1画像50と左側の第2カメラ14によって撮影された第2画像52には配筋1の複数の主筋と複数のせん断補強筋が確認できる。
図4ではステレオカメラ10側を正面62(X-Y面)とする。
図4の配筋1では正面62以外の全ての面の横に型枠が配置される。第1画像50と第2画像52との視差により、配筋1は異なる角度で撮像される。
【0035】
図4では一組の配筋画像(第1画像50及び第2画像52)しか示さないが、配筋1に対して複数の異なる撮影位置にあるステレオカメラ10で撮影することで複数組の配筋画像が得られる。複数組の配筋画像は、少なくとも正面62にある鉄筋の画像が含まれることが好ましい。
図4では床の上に四角柱状の鉄筋コンクリート造の配筋1が置かれた状態であるが、本発明者等による実験によれば、正面62以外の5面が型枠内に収まった配筋1であっても型枠のない正面62からの配筋画像によって本発明の三次元配筋データ作成方法が実施可能であることが確認された。
図2に示すように、それぞれの撮影位置にあるステレオカメラ10の各レンズ16と配筋1における撮影対象の鉄筋との距離Dは、0.5m以上2.5m以下に設定される。また、撮影位置にあるステレオカメラ10の各カメラ(
図2では第1カメラ12)の光軸L3に直交する仮想平面P1と撮影対象の鉄筋である主筋1aの中心軸線L1とが成す角度Aは、0度~30度である。
【0036】
推定工程(S12):推定部24が配筋画像(例えば、第1画像50、第2画像52)の中から配筋ラインを推定する。推定工程(S12)は、配筋画像から配筋1を検知し、検知された配筋1の直線部分に沿った仮想の配筋ラインを推定する。この配筋ラインは、二次元の配筋画像で認識できる鉄筋における中心を通るように推定される。配筋1の検知は、例えば、機械学習による形状検出アルゴリズムを用いて実行する。このアルゴリズムは、人間がタグ付けした教師データを用いて学習を行い、配筋画像の中の鉄筋の位置を検知するAI(artificial intelligence)を用いる。
【0037】
マッチング工程(S14):マッチング部26が第1画像50上の特徴点群と第2画像52上の特徴点群とをマッチングすることにより、これら一組の配筋画像間で対応する対応点群を検出する。検出された対応する特徴点群により、第1画像50上のある鉄筋と第2画像52上のある鉄筋とが対応することを特定できる。そして、第1画像50及び第2画像52における配筋ライン(第1配筋ライン40、第2配筋ライン42)が推定されていれば、これらの配筋ラインを配筋画像の各組ごとにマッチングさせることができる。
【0038】
計算工程(S16):三次元座標計算部28が各配筋ライン(第1配筋ライン40、第2配筋ライン42)の三次元座標を計算する。三次元座標は、各組の配筋画像同士を比較して三角測量することで各配筋ラインの三次元座標を計算することができる。各組の配筋画像は、ステレオカメラ10の所定間隔dとマッチング工程(S14)において対応する特徴点とが分かっているので、三角測量の原理に基づいて対応する特徴点とステレオカメラ10との距離を計算し、この距離を用いて逆投影手法を用いることで配筋上の特徴点ごとに三次元座標を算出することができる。したがって、配筋ラインは三次元座標が算出された特徴点を複数含むため、これらの特徴点の三次元座標に基づいて、各配筋ラインの三次元座標が算出される。
【0039】
合成工程(S18):合成処理部30が三次元座標計算部28で計算して得られた各配筋ライン(第1配筋ライン40、第2配筋ライン42)の三次元座標に基づいて、基準三次元座標系に配筋ラインを配置して三次元配筋データ60を合成する。
図5に示すように、例えばある一組の配筋画像に基づいて推定された複数の配筋ライン(A)と他の一組の配筋画像に基づいて推定された複数の配筋ライン(B)とを、各配筋ラインの三次元座標に基づいて、基準となる基準三次元座標系(X,Y,Z)にそれぞれを配置することにより、三次元配筋データ60を合成することができる。三次元配筋データ60には主筋の第1配筋ライン40とせん断補強筋の第2配筋ライン42が立体的に配置されており、これらの配置を実体のスケール(ミリメートル単位)に補正することで、立体的な鉄筋の配置を計測することができる。また、複数の異なる撮影位置で撮影することで三次元配筋データ60が得られるので、作業効率にも優れる。そして、三次元配筋データ60と例えば構造伏図や配筋リストとを比較することで、鉄筋の本数、間隔及び配置が設計通りであるか検査することができる。
【0040】
三次元配筋データ60における配筋ライン(第1配筋ライン40、第2配筋ライン42)は、2つのカメラ(第1カメラ12、第2カメラ14)の任意の撮影位置に近い正面62内の配筋ラインと、撮影位置から遠い背面64内の配筋ラインと、正面62と背面64とを接続する2つの接続面66,66内の配筋ラインとを含む。ステレオカメラ10により配筋1の立体的な形状が把握でき、しかも、異なる撮影位置で撮影することにより配筋1で検出される鉄筋に漏れがないため、正面62側から撮影したにもかかわらず背面64及び両接続面66,66における配筋データも作成することができる。また、各面よりも中心よりに配置された2段筋についても三次元配筋データ60として作成することができる。
【0041】
こうして作成された三次元配筋データ60に基づいて作業者は立体的な鉄筋の配置を計測することができ、この三次元配筋データ60はタブレット端末やノートパソコンなどに表示することができる。梁配筋検査時におけるスラブ筋や壁配筋、鉄筋組立用の段取り筋などの検知する必要のない鉄筋が三次元配筋データ60に含まれる場合にはそれらの鉄筋を作業者がタッチ操作等で個別に指定し、検知対象外とすることができる。また、三次元配筋データ60に検知されていない鉄筋がある場合には、検査者が指定して作業者に追加撮影を行うように促し、追加で計測を行い、三次元配筋データ60に合成する機能を有する。
【0042】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0043】
1…配筋、1a…主筋、1b…せん断補強筋、1c…腹筋、10…ステレオカメラ、12…第1カメラ、14…第2カメラ、16…レンズ、20…三次元配筋データ作成システム、22…画像取得部、24…推定部、26…マッチング部、28…三次元座標計算部、30…合成処理部、32…表示部、40…第1配筋ライン、42…第2配筋ライン、50…第1画像、52…第2画像、60…三次元配筋データ、62…正面、64…背面、66…接続面、d…所定間隔、A…角度、D…距離、L1…中心軸線、L2…垂線、L3…光軸、P1…仮想平面