(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025823
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】デッキプレート
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20220203BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20220203BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20220203BHJP
F16B 9/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
E04B5/40 J
E04B9/18 D
F16B1/00 A
F16B9/02 G
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128925
(22)【出願日】2020-07-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】591225394
【氏名又は名称】株式会社新富士空調
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】梶野 勇
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 智嗣
【テーマコード(参考)】
3J023
【Fターム(参考)】
3J023AA05
3J023BA01
3J023BB01
3J023CA10
3J023FA02
(57)【要約】
【課題】任意の位置に空調ダクトなどを配設可能なデッキプレートを提供する。
【解決手段】板材が折り曲げられて、平坦部2に対して略垂直に突出する谷部3が複数形成された波形のデッキプレート1であって、谷部3側に突出し谷部3と略平行に延びる中間リブ4が、谷部3と谷部3との間に形成され、吊りボルトを取り付けるためのボルト挿入孔41が、中間リブ4の長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材が折り曲げられて、平坦部に対して略垂直に突出する谷部が複数形成された波形のデッキプレートであって、
前記谷部側に突出し前記谷部と略平行に延びる中間リブが、前記谷部と谷部との間に形成され、
吊りボルトを取り付けるためのボルト取付部が、前記中間リブの長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられている、
ことを特徴とするデッキプレート。
【請求項2】
前記ボルト取付部がボルト挿入孔で構成され、前記ボルト挿入孔にボルトを挿入することで前記吊りボルトを吊り下げるための吊り金具を取付可能となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載のデッキプレート。
【請求項3】
前記中間リブは、前記板材が折り重ねられて形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のデッキプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形に形成された鋼板で、床材や屋根材などとして使用されるデッキプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、デッキプレートに空調ダクトを吊るして配設する場合、予めデッキプレートにインサートナットを取り付けてコンクリートを打設した後に、インサートナットに吊りボルトを取り付け(例えば、特許文献1参照。)、この吊りボルトで空調ダクトを吊るして配設していた。この際、設計上の空調ダクトの配設位置に合わせて、必要な箇所のみにインサートナットをデッキプレートに取り付けていた。また、インサートナットは、空調ダクトのみではなく、配線や配管などを配設する場合にも使用され、空調ダクトと同様に、設計上の配設位置に合わせて、必要な箇所のみにインサートナットをデッキプレートに取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際の施工現場においては、施工図の精度の悪さや、仕様の変更、空調ダクトなどの配設位置の変更などによって、予め取り付けられたインサートナットを使用できないケースが多く発生していた。例えば、その使用率は、50%にも満たない場合があった。このため、空調ダクトなどの配設に際して、正しい配設位置に合わせて、現場で各業者が後打ちアンカーをデッキプレートに打設しなければならず、多大な時間と労力、費用を要していた。
【0005】
しかも、デッキプレートにはコンクリートが既に打設されているため、後打ちアンカーの打設には多大な労力を要し、作業者の大きな負担となっていた。さらには、上方に向けて後打ちアンカーを打設しなければならないため、ローリングタワーなどを使用して安全性を確保する必要があり、多大な手間と費用を要していた。加えて、後打ちアンカーの打設によってコンクリートからの粉塵が飛散し、作業環境が悪化する、という問題があった。
【0006】
そこでこの発明は、任意の位置に空調ダクトなどを配設可能なデッキプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、板材が折り曲げられて、平坦部に対して略垂直に突出する谷部が複数形成された波形のデッキプレートであって、前記谷部側に突出し前記谷部と略平行に延びる中間リブが、前記谷部と谷部との間に形成され、吊りボルトを取り付けるためのボルト取付部が、前記中間リブの長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデッキプレートにおいて、前記ボルト取付部がボルト挿入孔で構成され、前記ボルト挿入孔にボルトを挿入することで前記吊りボルトを吊り下げるための吊り金具を取付可能となっている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のデッキプレートにおいて、前記中間リブは、前記板材が折り重ねられて形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、中間リブが谷部と谷部との間に形成され、ボルト取付部が中間リブに所定の間隔で複数設けられている。つまり、空調ダクトなどの配設位置に関わらず予め、縦横に所定の間隔で複数のボルト取付部がデッキプレートの全面・四方にわたって設けられている。このため、任意・所望のボルト取付部に吊りボルトを取り付けることで、任意・所望の位置に容易に空調ダクトなどを配設することが可能となる。この結果、現場で後打ちアンカーを打設する必要がなくなり、作業者の負担を軽減して時間と労力、費用を削減することができるばかりでなく、安全性が向上するとともに、作業環境を改善することが可能となる。しかも、ボルト取付部が設けられた中間リブを備えるだけであるため、簡易に低コストで構成することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ボルト取付部がボルト挿入孔で構成されているだけであるため、ボルト取付部を簡易に低コストで構成することが可能となる。従って、最終的に使用されないボルト取付部が生じたとしても、無駄な費用を抑制することが可能となる。また、ボルト挿入孔にボルトを挿入して吊り金具を取り付け、吊り金具で吊りボルトを吊り下げることで、容易かつ迅速に吊りボルトを配設することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、板材が折り重ねられて中間リブが形成されているため、中間リブの強度、剛性が高まり、吊りボルトおよび空調ダクトなどを強固に安定して配設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態に係るデッキプレートを示す斜視図である。
【
図2】
図1のデッキプレートの正面図(a)と底面図(b)である。
【
図4】
図1のデッキプレートに吊りボルトを配設した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説端明する。
【0015】
図1~
図4は、この発明の実施の形態を示し、
図1は、この実施の形態に係るデッキプレート1を示す斜視図である。このデッキプレート1は、波形に形成された鋼板で、コンクリートスラグの型枠、床材や屋根材などとして使用されるプレートであり、任意の位置に空調ダクトや配線、配管などを吊って配設可能な点で、従来のデッキプレートと異なる。
【0016】
このデッキプレート1は、従来のデッキプレートと同様に、鋼板(板材)が折り曲げられて、平坦部2に対して略垂直に突出する谷部3が複数形成された波形のプレートである。すなわち、
図2に示すように、この実施の形態では、平板が2つ折りされてT字状に形成されたT字部が、所定の間隔で複数形成されることで、平坦部2と谷部3とが連続的に形成されている。また、谷部3の先端側の断面が略三角形状に形成されて、筒状の三角部31が設けられている。ここで、図中符号3aは、鋼板が2つ折りされて形成された隙間部である。
【0017】
このような平坦部2と谷部3が、この実施の形態では、2つずつ形成され、一端側(図中左端)から順に、谷部3、平坦部2、谷部3、平坦部2が形成されている。また、一端側の谷部3に連接して、平坦部2と面一の接続面部21が形成されている。一方、他端側(図中右端)の平坦部2の自由端部は、平坦部2に対して略垂直に谷部3側に曲げられて接続部22が形成されている。そして、接続面部21に隣接する隙間部3aに、別のデッキプレート1の接続部22を挿入することで、複数のデッキプレート1が接続・連結されるようになっている。
【0018】
このようなデッキプレート1の板厚や平坦部2と谷部3の大きさ、高さは、デッキプレート1の上方(反谷部3側)に打設されるコンクリートの厚み・重量などに応じて、所定の強度、剛性が得られるように設定されている。また、この実施の形態では、それぞれ2つの平坦部2と谷部3を有する場合を例示しているが、打設されるコンクリートの厚みなどに応じて、異なる数の平坦部2と谷部3を有してもよい。
【0019】
このような谷部3と谷部3との間、つまり、各平坦部2の中央部に、谷部3側に突出し谷部3と略平行に延びる中間リブ4が形成されている。この中間リブ4は、鋼板が隙間なく折り重ねられて(2つ折りされて)I字状に形成され、平坦部2に対して略垂直に突出し、谷部3と並行して延びるように設けられている。この中間リブ4の平坦部2からの突出量(高さ)d1は、後述する吊り金具5を介して吊りボルト101を適正、容易に取り付けられるように設定され、例えば、谷部3の突出量よりもやや小さく設定されている。また、中間リブ4と中間リブ4との間隔(第1の間隔)d2は、谷部3間の間隔と同じに設定されている。
【0020】
このような中間リブ4には、吊りボルト101を取り付けるためのボルト挿入孔(ボルト取付部)41が、中間リブ4の長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられている。すなわち、
図3に示すように、中間リブ4の側面を貫通するボルト挿入孔41が、第2の間隔(所定の間隔)d3で複数形成されている。このボルト挿入孔41の径は、後述する吊り金具用ボルト(ボルト)51を挿入可能に設定されている。
【0021】
ここで、第1の間隔d2と第2の間隔d3は、ボルト挿入孔41がデッキプレート1の全面・四方にわたって略均等に配設され、任意・所望のボルト挿入孔41に吊りボルト101を取り付けることで、任意・所望の位置に空調ダクトなどを吊って配設できるように設定されている。例えば、第1の間隔d2は、200~300mm程度に設定され、第2の間隔d3は、200mm程度に設定されている。このような間隔d2、d3は、同寸法にしてもよいし異なる寸法にしてもよい。
【0022】
このようなボルト挿入孔41に吊り金具用ボルト51を挿入することで、吊りボルト101を吊り下げるための吊り金具5を取付可能となっている。すなわち、吊り金具5は、
図4に示すように、金属板がカエル股状(略U字状)に形成された金物で、対向する両自由端部5aに第1の孔(図示せず)が形成され、底面部5bに第2の孔(図示せず)が形成されている。
【0023】
そして、吊り金具5の両自由端5aで中間リブ4を挟み、吊り金具5の第1の孔とボルト挿入孔41に金具用ボルト51を挿入し、金具用ボルト51に金具用ナット52を締め付けることで、吊り金具5が中間リブ4に取り付けられる。また、吊り金具5の第2の孔に吊りボルト101の上端部を挿入し、吊りボルト101に螺合した2つの吊りナット102を締め付けて、吊りナット102で底面部5bを挟持することで、吊りボルト101が吊り金具5つまりデッキプレート1に取り付けられる。
【0024】
このような構成のデッキプレート1は、例えば、床材や屋根材として使用する場合、水平面状に延びるようにして隙間なく複数配置された状態で、上方に鉄筋が配設されてコンクリートが打設される。この状態では、複数のデッキプレート1で構成される床や屋根の全面にわたって、所定の間隔d2、d3で多数のボルト挿入孔41が配設され(散りばめられ)ている。そして、床や屋根(デッキプレート1)に空調ダクトなどを吊って配設する場合には、上記のようにして、吊り金具5を介して所望のボルト挿入孔41に吊りボルト101を取り付ける。このようにして必要な数の吊りボルト101を必要な位置に取り付けて、空調ダクトなどを吊るものである。
【0025】
以上のように、このデッキプレート1によれば、中間リブ4が谷部3と谷部3との間に形成され、ボルト挿入孔41が中間リブ4に所定の間隔で複数設けられている。つまり、空調ダクトなどの配設位置に関わらず予め、縦横に所定の間隔d2、d3で複数のボルト挿入孔41がデッキプレート1の全面・四方にわたって設けられている。このため、任意・所望のボルト挿入孔41に吊りボルト101を取り付けることで、任意・所望の位置に容易に空調ダクトなどを配設することが可能となる。この結果、現場で後打ちアンカーを打設する必要がなくなり、作業者の負担を軽減して時間と労力、費用を削減することができるばかりでなく、安全性が向上するとともに、作業環境を改善することが可能となる。しかも、従来のデッキプレートに対して、ボルト挿入孔41が設けられた中間リブ4を備えるだけであるため、簡易に低コストで構成することが可能となる。
【0026】
また、ボルト取付部がボルト挿入孔41で構成されているだけであるため、ボルト取付部を簡易に低コストで構成することが可能となる。従って、最終的に使用されないボルト取付部が生じたとしても、無駄な費用を抑制することが可能となる。また、ボルト挿入孔41に吊り金具用ボルト51を挿入して吊り金具5を取り付け、吊り金具5で吊りボルト101を吊り下げることで、容易かつ迅速に吊りボルト101を配設することが可能となる。
【0027】
さらに、鋼板が折り重ねられて中間リブ4が形成されているため、中間リブ4の強度、剛性が高まり、吊りボルト101および空調ダクトなどを強固に安定して配設することが可能となる。また、鋼板が隙間なく折り重ねられているため、コンクリートを打設しても鋼板間にコンクリートが入りにくく、ボルト挿入孔41がコンクリートで埋まるのを防止することが可能となる。
【0028】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、中間リブ4がI字状に形成されているが、その他の形状でもよく、例えば、L字状に形成してもよい。この場合、L字の底辺部に孔(ボルト取付部)を形成し、この孔に吊りボルト101を挿入して吊りナット102で底辺部を挟持することで、中間リブ4に吊りボルト101を取り付けるようにしてもよい。また、谷部3の形状は、上記の形状に限らず、例えば、略等脚台形であってもよい。同様に、吊り金具5の構造、形状は、上記のものに限らず、例えば、L字状で底辺部に吊りボルト101を挿入可能な孔を備えるものでもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 デッキプレート
2 平坦部
3 谷部
4 中間リブ
41 ボルト挿入孔(ボルト取付部)
5 吊り金具
51 吊り金具用ボルト(ボルト)
101 吊りボルト
102 吊りナット
d2 第1の間隔
d3 第2の間隔(所定の間隔)
【手続補正書】
【提出日】2020-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材が折り曲げられて、平坦部に対して略垂直に突出し先端側の断面が略三角形状に形成された谷部が複数形成された波形のデッキプレートであって、
前記板材が折り重ねられてI字状に形成され前記谷部側に突出し前記谷部と略平行に延びる中間リブが、前記谷部と谷部との間に形成され、
吊りボルトを取り付けるためのボルト取付部が、前記中間リブの長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられている、
ことを特徴とするデッキプレート。
【請求項2】
前記ボルト取付部がボルト挿入孔で構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のデッキプレート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、板材が折り曲げられて、平坦部に対して略垂直に突出し先端側の断面が略三角形状に形成された谷部が複数形成された波形のデッキプレートであって、前記板材が折り重ねられてI字状に形成され前記谷部側に突出し前記谷部と略平行に延びる中間リブが、前記谷部と谷部との間に形成され、吊りボルトを取り付けるためのボルト取付部が、前記中間リブの長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられている、ことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデッキプレートにおいて、前記ボルト取付部がボルト挿入孔で構成されている、ことを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ボルト取付部がボルト挿入孔で構成されているだけであるため、ボルト取付部を簡易に低コストで構成することが可能となる。従って、最終的に使用されないボルト取付部が生じたとしても、無駄な費用を抑制することが可能となる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、請求項1に記載の発明によれば、板材が折り重ねられて中間リブが形成されているため、中間リブの強度、剛性が高まり、吊りボルトおよび空調ダクトなどを強固に安定して配設することが可能となる。