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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025835
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】作業車のジャッキ作動制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60S 9/12 20060101AFI20220203BHJP
   B60T 7/12 20060101ALN20220203BHJP
   B60T 17/22 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
B60S9/12
B60T7/12 A
B60T17/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128946
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】町田 朝
【テーマコード(参考)】
3D026
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D026EA06
3D026EA26
3D026EA38
3D026EA44
3D026EA49
3D026EA50
3D049BB00
3D049CC02
3D049HH08
3D049HH09
3D049HH41
3D049HH42
3D049HH45
3D049HH47
3D049HH51
3D049KK09
3D049RR04
3D049RR13
3D246AA14
3D246BA02
3D246CA03
3D246DA01
3D246EA00
3D246GB21
3D246GC09
3D246GC11
3D246HA02A
3D246HA06A
3D246HA33A
3D246HA44A
3D246HA48A
3D246HA51A
3D246JB02
3D246JB11
3D246JB37
3D246JB43
3D246LA02Z
3D246LA04Z
3D246LA05A
3D246LA08Z
3D246LA32A
3D246LA33Z
3D246MA37
(57)【要約】
【課題】補助制動装置を作動させることが必要となる回数の割合を低減して、作業効率を高めることのできる高所作業車のジャッキ作動制御システムを提供する。
【解決手段】ジャッキ作動制御システムは、踏込操作が可能なブレーキペダル71と、ブレーキペダル71の踏込操作に応じてタイヤ車輪3を制動するブレーキ74,75と、タイヤ車輪3の制動状態を保持する作業用補助制動装置80と、アウトリガジャッキ11の作動を制御し、設置路面の傾斜角度を測定するコントローラ30とを備える。コントローラ30は、測定した路面傾斜角度が基準判定角度を下回る場合には、アウトリガジャッキ11を作動可能とし、路面傾斜角度が基準判定角度を上回る場合には、作業用補助制動装置80が作動している場合に限り、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を備えて走行可能な車両と、前記車両の車体の前後左右に設けられ、下方に伸長作動して接地した状態で前記車体を支持する複数のジャッキと、前記車体に設けられた作業装置と、前記車両の運転室内に設けられて制動操作が可能な制動部材と、前記制動操作に応じて前記走行装置を制動する主制動装置と、前記主制動装置とは別に作動して前記走行装置を制動する補助制動装置と、前記複数のジャッキの作動を制御するジャッキ作動制御装置と、を有する作業車のジャッキ作動制御システムであって、
前記車両が位置する路面の傾斜角度を求める路面傾斜角度測定装置を備え、
前記ジャッキ作動制御装置は、前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が所定角度以下の場合には、前記複数のジャッキを作動可能とし、前記路面傾斜角度が前記所定角度を越える場合には、前記補助制動装置が作動している場合に限り、前記複数のジャッキを作動可能とするように構成されることを特徴とする作業車のジャッキ作動制御システム。
【請求項2】
前記車体の傾斜角度を検出する車体傾斜角度検出装置を備え、
前記路面傾斜角度測定装置は、前記複数のジャッキが前記車体を支持せず前記走行装置が接地している状態において、前記車体傾斜角度検出装置により検出した前記車体の傾斜角度を路面の傾斜角度として求めるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の作業車のジャッキ作動制御システム。
【請求項3】
前記複数のジャッキが前記車体を支持している状態での前記複数のジャッキの各伸長量を検出可能なジャッキ伸長量検出装置を備え、
前記路面傾斜角度測定装置は、前記複数のジャッキが前記車体を支持している状態において、前記車体傾斜角度検出装置により検出された車体傾斜角度と、前記ジャッキ伸長量検出装置により検出された前記複数のジャッキの各ジャッキ伸長量とに基づき、路面の傾斜角度を求めるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の作業車のジャッキ作動制御システム。
【請求項4】
前記補助制動装置が作動しているときに作動中であることを示す補助制動信号を出力する補助制動信号出力装置を備え、
前記ジャッキ作動制御装置は、前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が所定角度以下の場合には、前記補助制動信号出力装置からの補助制動信号の如何に拘わらず前記複数のジャッキを作動可能とし、前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が前記所定角度を越える場合には、前記補助制動信号出力装置から前記補助制動信号を受けている場合に限り、前記複数のジャッキを作動可能とするように構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の作業車のジャッキ作動制御システム。
【請求項5】
前記補助制動装置が作動しているときに作動中であることを示す補助制動信号を出力する補助制動信号出力装置と、
前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が所定角度以下の場合に、前記補助制動装置が作動していなくても前記補助制動装置が作動中であることを擬似的に示す疑似補助制動信号を出力する疑似補助制動信号出力装置と、を備え、
前記ジャッキ作動制御装置は、前記補助制動信号出力装置から前記補助制動信号を受けている場合、もしくは、前記疑似補助制動信号出力装置から前記疑似補助制動信号を受けている場合には、前記複数のジャッキを作動可能とするように構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の作業車のジャッキ作動制御システム。
【請求項6】
前記ジャッキ作動制御装置は、前記複数のジャッキが前記車体を支持せず前記走行装置
が接地している状態のときに前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が前記所定角度以下である場合に前記複数のジャッキを作動可能として前記複数のジャッキが前記車体を支持した後、前記複数のジャッキが前記車体を支持している状態のときに前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が前記所定角度を越えた場合には、前記補助制動装置が作動していることを条件として、前記複数のジャッキの作動を許容するように構成されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の作業車のジャッキ作動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置の制動状態を保持する補助制動装置を備えた作業車のジャッキ作動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な作業車である高所作業車は、例えば、前後輪を有して走行可能な車両と、この車両の車体上に起伏、伸縮および旋回自在に配設されたブームと、このブームの先端部に設けられた作業者搭乗用の作業台とを備え、作業台に搭乗した作業者が作業台上に設けられた操作装置を操作してブームを作動させることにより、作業台を任意の高所位置へ移動自在に構成されている。このような高所作業車においては、ブームを起伏動等させて作業台を高所に位置させることにより重心位置が高くなるため、作業中における安定した作業姿勢を維持すべく、地面に接地させて車体を持ち上げ支持する複数のジャッキが備えられている。
【0003】
ところで、高所作業車は、傾斜地においても使用されることがある。そのため、高所作業車には、ブレーキペダルを踏み込んだ状態で前後輪を制動状態にする通常のホイールブレーキや、パーキングブレーキレバーを操作すると後輪が制動状態に保持されるパーキングブレーキに加えて、ブレーキペダルを踏み込んだ状態で所定の操作スイッチを操作することで、その後にブレーキペダルの踏み込みを止めても前後輪を制動状態に保持して、傾斜地での車両の逸走を防止する補助制動装置(ブレーキロック装置)が取り付けられている(例えば、特許文献1を参照)。それにより、高所作業車を用いて傾斜地等で作業を行う場合には、パーキングブレーキを効かせたうえで、補助制動装置を作動させて前後輪に対する制動状態を保持した状態で、ジャッキの張出操作及び格納操作が行われるようになっている。
【0004】
ここで、補助制動装置を長時間に亘り連続使用すると、ブレーキペダルが踏み込まれた状態に保持するための空気圧が時間の経過とともに低下したり、その構成部品に大きな負担がかかって当該構成部品(主にゴム部品)の劣化を早めたりするなど、制動力を低下させる原因となり得る。そこで、補助制動装置を作動させてから所定時間が経過したときに、周囲に向けて警報音を発生させることで、作業者に対して補助制動装置が所定時間連続して使用されている旨を知らしめる技術が実用化されている。それにより、作業者は補助制動装置を一旦停止させて警報音を止めてから、作業を継続させることができるが、作業の終了時には、補助制動装置を再度作動させて(前後輪に対する制動力を保持させた状態で)、ジャッキの格納操作を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005‐324671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
補助制動装置を備えた作業車では、逸走の虞のないような場所、例えば水平な路面上に停車設置して作業を行う場合であっても、補助制動装置を作動させて前後輪に対する制動状態を保持した状態としなければ、ジャッキの張出操作及び格納操作を行うことができないようになっている。そのため、逸走の虞がないような場所に作業車を設置して作業を行う場合であっても、作業者は、補助制動装置を作動させてからジャッキの張出操作を行う必要がある。また、逸走の虞がないような場所での作業であっても、作業中に補助制動装
置を停止させた場合には、作業者は、補助制動装置を再度作動させてからジャッキの格納操作を行う必要がある。このように、補助制動装置を備えた作業車では、補助制動装置を頻繁に作動させる必要があり、その結果、作業効率が低下するという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、補助制動装置を作動させることが必要となる回数の割合を低減して、作業効率を高めることのできる作業車のジャッキ作動制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業車のジャッキ作動制御システムは、走行装置(例えば、実施形態におけるタイヤ車輪3)を備えて走行可能な車両と、前記車両の車体の前後左右に設けられ、下方に伸長作動して接地した状態で前記車体を支持する複数のジャッキ(例えば、実施形態におけるアウトリガジャッキ11)と、前記車体に設けられた作業装置(例えば、実施形態における高所作業装置9)と、前記車両の運転室内に設けられて制動操作が可能な制動部材(例えば、実施形態におけるブレーキペダル71)と、前記制動操作に応じて前記走行装置を制動する主制動装置(例えば、実施形態におけるフロントブレーキ74及びリアブレーキ75)と、前記主制動装置とは別に作動して前記走行装置を制動する補助制動装置(例えば、実施形態における作業用補助制動装置80)と、前記複数のジャッキの作動を制御するジャッキ作動制御装置(例えば、実施形態におけるジャッキ作動制御部31)と、を備えた作業車のジャッキ作動制御システムであって、前記車両が位置する路面の傾斜角度を求める路面傾斜角度測定装置(例えば、実施形態における路面傾斜角度測定部32)を備え、前記ジャッキ作動制御装置は、前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が所定角度以下の場合には、前記複数のジャッキを作動可能とし、前記路面傾斜角度が前記所定角度を越える場合には、前記補助制動装置が作動している場合に限り、前記複数のジャッキを作動可能とするように構成される。
【0009】
本発明に係る作業車のジャッキ作動制御システムにおいて、好ましくは、前記車体の傾斜角度を検出する車体傾斜角度検出装置(例えば、実施形態における車体傾斜計24)を備え、前記路面傾斜角度測定装置は、前記複数のジャッキが前記車体を支持せず前記走行装置が接地している状態において、前記車体傾斜角度検出装置により検出した前記車体の傾斜角度を路面の傾斜角度として求めるように構成される。
【0010】
また、本発明に係る作業車のジャッキ作動制御システムにおいて、好ましくは、前記複数のジャッキが前記車体を支持している状態での前記複数のジャッキの各伸長量を検出可能なジャッキ伸長量検出装置(例えば、実施形態におけるジャッキ伸長量センサ22)を備え、前記路面傾斜角度測定装置は、前記複数のジャッキが前記車体を支持している状態において、前記車体傾斜角度検出装置により検出された車体傾斜角度と、前記ジャッキ伸長量検出装置により検出された前記複数のジャッキの各ジャッキ伸長量とに基づき、路面の傾斜角度を求めるように構成される。
【0011】
また、本発明に係る作業車のジャッキ作動制御システムにおいて、好ましくは、前記補助制動装置が作動しているときに作動中であることを示す補助制動信号(例えば、実施形態におけるブレーキロック信号)を出力する補助制動信号出力装置(例えば、実施形態におけるブレーキロックセンサ21)を備え、前記ジャッキ作動制御装置は、前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が所定角度以下の場合には、前記補助制動信号出力装置からの補助制動信号の如何に拘わらず前記複数のジャッキを作動可能とし、前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が前記所定角度を越える場合には、前記補助制動信号出力装置から前記補助制動信号を受けている場合に限り、前記複数のジャッキを作動可能とするように構成される。
【0012】
また、本発明に係る作業車のジャッキ作動制御システムにおいて、好ましくは、前記補助制動装置が作動しているときに作動中であることを示す補助制動信号を出力する補助制動信号出力装置と、前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が所定角度以下の場合に、前記補助制動装置が作動していなくても前記補助制動装置が作動中であることを擬似的に示す疑似補助制動信号(例えば、実施形態における疑似ブレーキロック信号)を出力する疑似補助制動信号出力装置(例えば、実施形態における疑似信号出力部35)と、を備え、前記ジャッキ作動制御装置は、前記補助制動信号出力装置から前記補助制動信号を受けている場合、もしくは、前記疑似補助制動信号出力装置から前記疑似補助制動信号を受けている場合には、前記複数のジャッキを作動可能とするように構成される。
【0013】
また、本発明に係る作業車のジャッキ作動制御システムにおいて、好ましくは、前記ジャッキ作動制御装置は、前記複数のジャッキが前記車体を支持せず前記走行装置が接地している状態のときに前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が前記所定角度以下である場合に前記複数のジャッキを作動可能として前記複数のジャッキが前記車体を支持した後、前記複数のジャッキが前記車体を支持している状態のときに前記路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が前記所定角度を越えた場合には、前記補助制動装置が作動していることを条件として、前記複数のジャッキの作動を許容するように構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る作業車のジャッキ作動制御システムによれば、路面傾斜角度測定装置により求められた路面傾斜角度が所定角度以下の場合には、補助制動装置を作動させなくてもジャッキを作動させることができる。そのため、路面傾斜角度に関わらず、補助制動装置を作動させなければ、ジャッキを作動させることができない構成のものと比べて、補助制動装置を作動させることが必要となる回数の割合を減らすことができるので、補助制動装置を作動させるための作業負担を軽減して、作業効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】作業車の一実施形態としての高所作業車の側面図である。
図2】上記高所作業車におけるブーム及びアウトリガジャッキの作動系統を示すブロック図である。
図3】上記高所作業車におけるエンジンスイッチの外観を示す正面図である。
図4】第1実施形態のジャッキ作動制御システムの構成を示すブロック図である。
図5】第1実施形態のジャッキ作動制御システムにおけるコントローラの構成を示すブロック図である。
図6】第1実施形態のジャッキ作動制御システムにおける、車体不支持状態でのアウトリガジャッキの作動制御の概要を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態のジャッキ作動制御システムにおける、車体支持状態でのアウトリガジャッキの作動制御の概要を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態のジャッキ作動制御システムにおけるコントローラの構成を示すブロック図である。
図9】第2実施形態のジャッキ作動制御システムにおける、車体不支持状態でのアウトリガジャッキの作動制御の概要を示すフローチャートである。
図10】第2実施形態のジャッキ作動制御システムにおける、車体支持状態でのアウトリガジャッキの作動制御の概要を示すフローチャートである。
図11】第3実施形態のジャッキ作動制御システムにおけるコントローラの構成を示すブロック図である。
図12】第3実施形態のジャッキ作動制御システムにおける、車体支持状態でのアウトリガジャッキの作動制御の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1に作業車の一実施形態としての高所作業車1を示しており、まず、主に図1図3を参照して高所作業車1の全体構成について概要説明する。
【0017】
高所作業車1は、運転キャブ2a、車体2b及びタイヤ車輪3(前輪3aおよび後輪3b)を備えて運転キャブ2aから走行運転操作が可能なトラック式の車両2と、車体2b上に設けられた旋回台4と、この旋回台4の上部に基端部が支持された伸縮ブーム(以下、単に「ブーム」と称する)5と、このブーム5の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台8とを有して構成される。本実施形態では、旋回台4、ブーム5及び作業台8を主体として高所作業装置9が構成され、車体2bの後部に架装される。
【0018】
旋回台4は、車体2bの後部に上下軸回り360度回動自在に取り付けられている。車体2bの内部には旋回モータ51が設けられており、この旋回モータ51を回転駆動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台4を水平旋回動させることができる。ブーム5は、旋回台4側から順に、基端ブーム5a、中間ブーム5b及び先端ブーム5cが入れ子式に組み立てられた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ53の伸縮駆動により、基端ブーム5aに対して中間ブーム5b及び先端ブーム5cを相対的に移動させて、ブーム5全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム5aと旋回台4との間には起伏シリンダ52が跨設されており、この起伏シリンダ52を伸縮駆動させることによりブーム5全体を上下面内で起伏動させることができる。
【0019】
先端ブーム5cの先端部には、ブームヘッドを介して垂直ポスト6が上下方向に揺動自在に枢支されている。垂直ポスト6は、先端ブーム5cとの間に配設された上部レベリングシリンダ56bにより揺動制御される。上部レベリングシリンダ56bは、旋回台4と基端ブーム5aとの間に張り渡された下部レベリングシリンダ56aと連通する油路で結ばれて、いわゆる油圧閉回路式のレベリング装置が構成されており、ブーム5の起伏の如何に拘らず垂直ポスト6が常時垂直姿勢に保持される構成となっている。なお、車体2b上には、ブーム5を格納姿勢で支持するためのブーム受け20が設けられている。ここで、ブーム5の格納姿勢は、基端ブーム5aの中間部下面をブーム受け20に載置した姿勢であり、このときブーム5は先端部が車体2bの前方へ向き、ほぼ水平まで倒伏した状態となる。
【0020】
作業台8は、上端が開口した略箱形状を呈しており、その外部に突出して設けられたアーム7を介して垂直ポスト6の上端部に回動自在に取り付けられている。アーム7の内部には首振りモータ54が設けられており、この首振りモータ54を回転駆動させることにより、作業台8全体を垂直ポスト6まわりに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポスト6は、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台8の床面はブーム5の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0021】
作業台8には、これに搭乗した作業者が操作する上部操作装置10が設けられている。上部操作装置10には、旋回台4の旋回操作、ブーム5の起伏・伸縮操作、作業台8の首振り操作等を行うための操作レバー(図示せず)が設けられており、作業台8に搭乗した作業者が操作レバーを操作して、旋回台4やブーム5等の作動操作(これらを総称して「ブーム操作」ともいう)を行い得るように構成されている。なお、車体2bには、上部操作装置10と同様に、ブーム操作を行うための下部操作装置(図示せず)が取り付けられている。
【0022】
車体2bの前後左右には、車幅方向に拡縮可能で且つ上下に伸縮可能なアウトリガジャ
ッキ11が設けられている。このアウトリガジャッキ11は、内部に取り付けられたジャッキシリンダ55等により拡縮動及び伸縮動される。ブーム5等の高所作業装置9により高所作業を行うときは、周囲の障害物との相対位置関係に応じて作業者が4カ所のアウトリガジャッキ11をそれぞれ車幅方向に拡幅伸長させるとともに、下方に張り出させて車体2b(車両2)を持ち上げ支持する(車輪3を非接地状態とする)ことにより安定姿勢を確保する。車体2bの後部には、ジャッキ操作装置15(図2を参照)が設けられており、アウトリガジャッキ11の張出および格納等のジャッキ操作を個別に行えるように構成されている。なお、このジャッキ操作(浮上時の張出操作、地上降下時の格納操作)は、傾斜地等においては当該ジャッキ操作中に車両2が逸走するのを防止するため、パーキングブレーキ(図示せず)を効かせたうえで、後述の作業用補助制動装置80を作動させて行うようになっている。
【0023】
また、図2に示すように、車体2bに備えられたエンジンEの動力は、トランスミッションTMにより変速され、図示しないプロペラシャフトを介してタイヤ車輪3に伝達される。トランスミッションTMには、パワーテイクオフ機構PTOが組み込まれており、運転キャブ2a内にあるPTO操作レバー16をオフ位置からオン位置へ傾動させる操作(オン操作)がなされたときに、パワーテイクオフ機構PTOの機構部が作動され、エンジンEによる駆動先をタイヤ車輪3から後述の油圧供給ユニット40に切り換えることができる。なお、PTO操作レバー16の近傍には、PTOスイッチ17が設けられており、PTO操作レバー16がオン操作される(オフ位置からオン位置に操作される)と、このPTOスイッチ17がオン作動してエンジンEの駆動力の取り出し状態が検出される。なお、エンジンEには、エンジン各部を制御する電子制御ユニットであるECU60(図4を参照)が接続されている。
【0024】
また、運転キャブ2a内には、エンジンEを始動させたり停止させたりする際に操作されるエンジンスイッチ27が設けられている(図3を参照)。このエンジンスイッチ27は、エンジンキー(図示せず)を抜き差し可能に構成された差込口27aと、差込口27aに差し込まれたエンジンキーによって回転可能に構成されたキーシリンダ27bとを備えている。キーシリンダ27bは、LOCK位置、ACC位置、ON位置及びSTART位置の4位置の間を回動可能となっている。LOCK位置は、エンジンキーの抜き差しが可能となる位置で、このLOCK位置にキーシリンダ27b(エンジンキー)があるときは、エンジンEが停止状態となるとともに、車両2に備えられた各種電装品が電源オフ状態となる。ACC位置は、エンジンEは停止状態であるが、電装品は電源オン状態となる位置である。START位置は、停止したエンジンEを始動させる際にキーシリンダ27bを回動させる位置である。ON位置は、エンジンEを始動させるためにキーシリンダ27bをSTART位置に回動させた後で、エンジンキーを離すと、自動的にキーシリンダ27bが回動する位置である。このようにしてキーシリンダ27bがON位置にある場合は、エンジンEは作動状態であり、電装品は電源オン状態となる。また、LOCK位置またはACC位置からキーシリンダ27bをSTART位置まで回動させずにON位置に直接回動させることもできる。この場合は、電装品は電源オンの状態であるが、エンジンEは停止状態となる。なお、後述の作業用補助制動装置80は、キーシリンダ27bがON位置にあるときに限り(エンジンEが作動中か停止中かは問わない)、作動させることができるようになっている。
【0025】
このように構成される高所作業車1にあって、旋回モータ51、起伏シリンダ52、伸縮シリンダ53、首振りモータ54、及びジャッキシリンダ55には、作動油圧で駆動される油圧モータや油圧シリンダ等の油圧アクチュエータが用いられている。以下では、旋回モータ51、起伏シリンダ52、伸縮シリンダ53、首振りモータ54、及びジャッキシリンダ55等を総称して、油圧アクチュエータ50と称する。
【0026】
この高所作業車1には、図2に示すように、上部操作装置10やジャッキ操作装置15からの操作信号に基づいて油圧アクチュエータ50の駆動を制御するコントローラ30と、油圧アクチュエータ50を駆動させるための作動油を供給する油圧供給ユニット40と、高所作業装置9等を作動させるための動力源(エンジンEとは別の動力源)としてのバッテリユニット45等を備えて構成される。
【0027】
コントローラ30は、上部操作装置10やジャッキ操作装置15が操作されたとき、これら操作装置10,15から出力される操作信号を受けて、この操作信号に応じた制御信号を油圧供給ユニット40に出力して油圧アクチュエータ50に作動油を供給させ、旋回台4、ブーム5、作業台8及びアウトリガジャッキ11の作動を制御する。このコントローラ30は、電源スイッチ18を介して電源がオン・オフ制御されるようになっている。この電源スイッチ18は、PTO操作レバー16からの操作信号に基づいてスイッチ接点を閉とする上記のPTOスイッチ17等を有して構成されており、PTO操作レバー16がオン操作されてPTOスイッチ17のスイッチ接点が閉状態となったときに、コントローラ30と、エンジンEを始めとする車体側電気装置に電力を供給する走行制御用のシャーシバッテリ19とを繋いで、コントローラ30の電源をオンにする構成となっている(すなわち、電源スイッチ18は、PTOスイッチ17に連動作動する)。なお、シャーシバッテリ19は、例えば、電圧24[V]の直流電源として構成され、その容量(バッテリ容量)は後述する架装部バッテリ48に比して低容量となっており、エンジンEの回転駆動によって発電する発電機(オルタネータ)に接続され、その発電電力が供給されることで充電されるようになっている。
【0028】
油圧供給ユニット40は、コントローラ30からの制御信号に基づいて油圧アクチュエータ50への作動油の供給制御をする。この油圧供給ユニット40は、作動油を貯留するオイルタンクTと、前述したパワーテイクオフ機構PTOにより取り出されたエンジンEの動力を受けて駆動される第1油圧ポンプP1と、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2と、コントローラ30によって開閉制御される制御バルブ(電磁比例制御弁)SVとを備えて構成される。このように油圧供給ユニット40には、高所作業装置9を作動させるための2つの油圧ポンプ(第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2)が備えられ、後述する動力源選択スイッチ(図示せず)の操作位置に応じていずれか一方が選択的に駆動されるようになっており、オイルタンクTから作動油が第1油圧ポンプP1もしくは第2油圧ポンプP2によって吸い上げられて制御バルブSVへ供給される。油圧アクチュエータ50に導入される作動油の給排制御は、コントローラ30からの制御信号に応じて、制御バルブSVのスプール(図示しない)を電磁駆動して、これらのバルブ開度を制御することで行われる。なお、各油圧ポンプP1,P2と制御バルブSVとの間の油路上には逆止弁CVがそれぞれ介装されている。
【0029】
バッテリユニット45は、第2油圧ポンプP2に接続される電気モータ46と、電気モータ46の駆動を制御するモータ制御装置47と、電気モータ46を駆動するための電力を蓄える架装部バッテリ48とを備えて構成される。
【0030】
架装部バッテリ48は、複数の電源バッテリからなり、各電源バッテリが相互に直列に接続されて、例えば電圧48[V]の所定の電圧で且つ1日の高所作業を行うのに十分な電力量を充電保持可能な直流電源を構成する。架装部バッテリ48は、上記複数の電源バッテリが車体2bの後方下部(後輪3bの後方)に左右に分けて搭載され、図示しない電力ケーブルで接続されている。
【0031】
モータ制御装置47は、例えば、昇圧DC-DCコンバータ回路、インバータ回路、及びこれらの回路の作動を制御する制御回路などから構成され、架装部バッテリ48から供給される直流電力をコントローラ30からの制御信号に応じた交流電力に変換して電気モ
ータ46に供給し、この電気モータ46の回転数(すなわち第2油圧ポンプP2の回転数)を制御して、第2油圧ポンプP2から吐出される作動油の吐出圧及び流量を制御する。
【0032】
上部操作装置10には動力源選択スイッチ(図示せず)が設けられている。この動力源選択スイッチは例えば前後いずれかの位置に傾動させておくことが可能なトグルスイッチから構成され、その操作位置に応じて、高所作業装置9およびアウトリガジャッキ11を、第1油圧ポンプP1から供給される作動油により駆動させるか、第2油圧ポンプP2から供給される作動油により駆動させるかを選択することができる。
【0033】
このとき、動力源選択スイッチが第1油圧ポンプP1の側に選択されている場合は、その信号を受けてコントローラ30は、バッテリユニット45のモータ制御装置47にモータ駆動信号を出力せず、第2油圧ポンプP2を駆動させないとともに、上部操作装置10からの操作信号に対応したエンジン回転数でエンジンEを作動させ、パワーテイクオフ機構PTOによりこのエンジン回転数に応じた回転数で第1油圧ポンプP1を駆動させる。一方、動力源選択スイッチが第2油圧ポンプP2の側に選択されている場合には、その信号を受けてコントローラ30は、エンジンEを停止させて第1油圧ポンプP1を停止させるとともに、上部操作装置10からの操作信号に対応したモータ駆動信号をバッテリユニット45のモータ制御装置47へ出力して、このモータ駆動信号に応じた回転数で第2油圧ポンプP2(電気モータ46)を駆動させる。よって、コントローラ30は、このように第1油圧ポンプP1もしくは第2油圧ポンプP2から供給される作動油に対して、上部操作装置10やジャッキ操作装置15からの操作信号に応じたバルブ開度で制御バルブSVを開閉制御し、これに応じた作動速度および作動方向で高所作業装置9やアウトリガジャッキ11の作動を制御する。
【0034】
<第1実施形態>
次に、第1実施形態に係るジャッキ作動制御システムについて図4及び図5を追加参照して説明する。第1実施形態に係るジャッキ作動制御システムは、図4に示すように、コントローラ30、ECU60、車両制動装置70及び作業用補助制動装置80を備えて構成されている。なお、コントローラ30とECU60とは互いに信号の送受信が可能である。また、このジャッキ作動制御システムは、ブレーキロックセンサ21と、ジャッキ伸長量センサ22と、ジャッキ接地センサ23と、車体傾斜計24とを備えている。なお、ジャッキ伸長量センサ22は、各アウトリガジャッキ11に対応して4個(22a~22d)設けられ、同様にジャッキ接地センサ23も4個(23a~23d)設けられている。
【0035】
ブレーキロックセンサ21は、作業用補助制動装置80が作動している場合に作業用補助制動装置80が作動していることを示す検出信号(「ブレーキロック信号」と称する)を出力するセンサである。ジャッキ伸長量センサ22は、各アウトリガジャッキ11の伸長量を示す検出信号(「ジャッキ伸長量信号」と称する)を出力するセンサである。ジャッキ接地センサ23は、各アウトリガジャッキ11が接地したことを示す検出信号(「接地信号」と称する)を出力するセンサである。車体傾斜計24は車体2(車両2)の傾き(車体傾斜角度)を示す検出信号(「車体傾斜角度信号」と称する)を出力するように構成されている。ブレーキロックセンサ21、ジャッキ伸長量センサ22、ジャッキ接地センサ23及び車体傾斜計24から出力された各検出信号はコントローラ30に入力される。
【0036】
コントローラ30は、図5に示すように、ジャッキ作動制御部31と、路面傾斜角度測定部32と、路面傾斜角度記憶部33と、ジャッキ作動可否判定部34とを備えている。これらは、コントローラ30が有する機能を模式的に表したものである。ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15が操作されたとき、ジャッキ操作装置15から出力さ
れる操作信号を受けて、この操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11の作動を制御する。また、ジャッキ作動制御部31は、所定の条件(「ジャッキ作動許可条件」と称する)が満足されないときは、ジャッキ操作装置15からの操作信号を受けても、アウトリガジャッキ11を作動させない(アウトリガジャッキ11の張出操作及び格納操作が規制される)ように制御する。
【0037】
路面傾斜角度測定部32は、高所作業車1が停車して設置された位置の路面の傾斜角度(「設置路面傾斜角度」と称する)を求める。ここで、設置路面傾斜角度とは、設置路面自体の傾斜角度ではなく、車体2bがアウトリガジャッキ11により支持されずタイヤ車輪3が接地している状態(「車体不支持状態」と称する)で高所作業車1が停車している場合の車体2bの傾斜角度を意味する。路面傾斜角度測定部32は、車体傾斜計24からコントローラ30に入力される車体傾斜角度信号により算出される車体傾斜角度を、設置路面傾斜角度として求めるようになっている。
【0038】
路面傾斜角度記憶部33は、路面傾斜角度測定部32により求められた設置路面傾斜角度を記憶する。ジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されているか否かを判定する。
【0039】
車両制動装置70は、ブレーキペダル71、マスターバック(ブレーキ倍力装置)72、マスターシリンダ73、フロントブレーキ74及びリアブレーキ75を主体に構成されている。
【0040】
この車両制動装置70は、運転キャブ2aに乗り込んだ作業者によりブレーキペダル71が踏込操作されると、その力がエンジンEで発生する負圧を利用してマスターバック72でより大きな力に変換され、マスターシリンダ73により油圧(制動力)に変換されて、フロントブレーキ74に伝達されて前輪3aを制動し、また、リアブレーキ75に伝達されて後輪3bを制動するように構成されている。なお、ブレーキペダル71の踏込操作が解放されると、前後輪3a,3bに対する制動状態は解かれる。この車両制動装置70には、フットブレーキセンサ76が設けられており、ブレーキペダル71が踏み込まれたことを検出してECU60に検出信号を出力するように構成されている(例えば、この検出信号によりブレーキランプを点灯するために用いられる)。
【0041】
一方、作業用補助制動装置80は、バキュームポンプ81、バキュームタンク82、バキュームスイッチ83、パワーチャンバ84、ブレーキロックバルブ85、フロントブレーキコントロールバルブ86、リアブレーキコントロールバルブ87、ブレーキ圧スイッチ88、ブレーキロックスイッチ89及び警報装置90を主体に構成されている。
【0042】
バキュームポンプ81は、エンジンEにより駆動されてバキュームタンク82内の圧力を所定の負圧に保持するように構成されている。このバキュームポンプ81は、ブレーキロックバルブ85を介してパワーチャンバ84と接続されており、ECU60からの制御信号によりブレーキロックバルブ85が開放されると、バキュームポンプ82の負圧によりパワーチャンバ84を作動させる。フロントブレーキコントロールバルブ86及びリアブレーキコントロールバルブ87は、ECU60からの作動信号により油路を開閉するように構成されており、ブレーキ圧スイッチ88は、油路が所定の圧力以上になったときにオンするように構成されている。
【0043】
この作業用補助制動装置80は、ブレーキペダル71が踏み込まれた状態で、運転キャブ2a内に配設されたブレーキロックスイッチ89がオン操作されると、その検出信号がECU60及びコントローラ30に出力される。また、ECU60及びコントローラ30には、車両2に配設されたパーキングブレーキレバー(図示せず)が操作されてパーキン
グブレーキ(図示せず)が作動状態のときにオンするパーキングブレーキセンサ63からの信号が入力されている。また、ECU60には、ブレーキ圧スイッチ88からの信号やフットブレーキセンサ76からの信号が入力されている。そのため、ECU60は、フットブレーキセンサ76がオン状態で、且つ、ブレーキ圧スイッチ88がオン状態のとき、すなわち、ブレーキペダル71が踏み込まれて所定の油圧(制動力)がフロントブレーキ74及びリアブレーキ75に供給されるときに、フロントブレーキコントロールバルブ86及びリアブレーキコントロールバルブ87を閉止して油圧を保持することにより、前後輪3a,3bを制動する。また同時に、ECU60は、ブレーキロックスイッチ89及びパーキングブレーキセンサ63の両方がオン状態のときに、ブレーキロックバルブ85を開放して、バキュームタンク82とパワーチャンバ84とを連通させ、このパワーチャンバ84の作動によりブレーキペダル71が踏み込まれた状態を保持する。そのため、ブレーキペダル71の踏込操作を止めても、この作業用補助制動装置80により、該ブレーキペダル71が踏み込まれた状態、すなわち、フロントブレーキ74及びリアブレーキ75による前後輪3a,3bに対する制動力が保持された状態(「ブレーキロック状態」と称する)となるように構成されている。
【0044】
ここで、作業用補助制動装置80は、予め設定された所定時間以内(連続1時間以内)での使用が義務付けられている。その理由としては、所定時間を越えて作業用補助制動装置80を連続使用した場合には、作業用補助制動装置80の各部品に過大な負担をかけるとともにゴム部品の劣化を早めて、制動力の低下の原因となり得るからである。そのため、警報装置90は、ブレーキロック状態が設定されてから所定時間が経過したときに警報音を発生して、作業者に対して注意(ブレーキロック状態を解除すること)を促すようになっている。これに対して、作業者は、ブレーキロックスイッチ89をもう一度操作してオフにすることで、作業用補助制動装置80を停止させてブレーキロック状態を解除できるとともに、警報装置90の警報音を停止させることができる。なお、アウトリガジャッキ11が張り出されて高所作業車1が持ち上げ支持されている間は、ブレーキロック状態を解除してもよい。そこで、アウトリガジャッキ11により高所作業車1を持ち上げ支持した後に、作業用補助制動装置80を停止させることにより、警報装置90から警報音が発生しないようにすることができる。
【0045】
ところで、かかる構成の作業用補助制動装置80は、アウトリガジャッキ11を作動させる際に、高所作業車1が逸走するのを防止するために設けられている。すなわち、高所作業車1を傾斜地等に停車設置してアウトリガジャッキ11の操作を行う場合には、タイヤ車輪3が確実に制動されていないと高所作業車1が逸走する虞がある。そのため、アウトリガジャッキ11を作動させる際に、作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態とすることにより、高所作業車1が逸走するのを防止できるようになっている。しかし、高所作業車1を設置する場所が水平路面のような場合は、作業用補助制動装置80を作動させずにアウトリガジャッキ11を作動させても、高所作業車1が逸走する虞がない。それにも関わらず、作業用補助制動装置80を作動させなければアウトリガジャッキ11を作動できないようにすると、作業用補助制動装置80を作動させる回数が必要以上に増え、その結果、作業効率が低下する虞がある。
【0046】
そこで、第1実施形態のジャッキ作動制御システムでは、高所作業車1(車両2)が設置される路面(設置路面)が水平面であるような場合には、作業用補助制動装置80を作動させずにアウトリガジャッキ11を作動させることができるようになっている。一方、設置路面が傾斜面であるような場合には、作業用補助制動装置80を作動させなければ、アウトリガジャッキ11を作動させることができないようになっている。以下、この点について、図6および図7を追加参照して説明する。
【0047】
第1実施形態のジャッキ作動制御システムでは、アウトリガジャッキ11が車体2bを
支持せずタイヤ車輪3が接地している車体不支持状態において、設置路面傾斜角度を路面傾斜角度測定部32により求める(図6のステップS1)。次いで、この求められた設置路面傾斜角度(「第1の測定路面角度」と称する)が所定角度(「判定基準角度」と称する)以下であるか否かを、ジャッキ作動可否判定部34が判定する(ステップS2)。ここで、第1の測定路面角度が判定基準角度以下の場合(ステップS2:YES)、ジャッキ作動可否判定部34は、作業用補助制動装置80の作動の如何に拘らず、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。そして、この場合、ジャッキ作動制御部31は、作業用補助制動装置80が作動していない場合(ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されていない場合)でも、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS3)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を伸長作動させる。
【0048】
一方、路面傾斜角度測定部32により求められた第1の測定路面角度が判定基準角度を越える場合(ステップS2:NO)には、ジャッキ作動可否判定部34は、作業用補助制動装置80が作動している(ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されている)か否かを判別する(ステップS4)。そして、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されている場合(ステップS4:YES)には、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。ジャッキ作動可否判定部34がこのように判断した場合、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS3)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を伸長作動させる。これに対し、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されていない場合(ステップS4:NO)には、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11の作動を規制する(ステップS5)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号には応じない。そのため、作業者がジャッキ操作装置15を操作してもアウトリガジャッキ11を張り出すことはできない。なお、判定基準角度は、所定の角度範囲(例えば、0~10度の範囲)内の任意の角度に設定される。例えば、5度、好ましくは3度、より好ましくは1度に設定される。また、設置路面の状況や天候等に応じて、判定基準角度の設定値を変更できるようにしてもよい。
【0049】
また、第1実施形態のジャッキ作動制御システムでは、アウトリガジャッキ11の作動が可能となり、アウトリガジャッキ11の作動が開始された後は、次のように制御される。まず、車体不支持状態において路面傾斜角度測定部32により求められた設置路面傾斜角度が、路面傾斜角度記憶部33に記憶される。上述の第1の測定角度を記憶するようにしてもよいが、本例では、アウトリガジャッキ11の張出中において、1つのアウトリガジャッキ11のみが接地したタイミングにおいて、路面傾斜角度測定部32が設置路面傾斜角度を求め(図7のステップS11)、この求められた設置路面傾斜角度(「第2の測定路面角度」と称する)を路面傾斜角度記憶部33に記憶する(ステップS12)。そして、アウトリガジャッキ11により車体2bが持ち上げ支持された後は、アウトリガジャッキ11により車体2bが持ち上げ支持された状態(「車体支持状態」と称する)におけるアウトリガジャッキ11の作動の可否が、路面傾斜角度記憶部32に記憶された第2の測定路面角度に基づき制御される。すなわち、高所作業の終了等において、路面傾斜角度記憶部33に記憶された第2の測定路面角度が判定基準角度以上であるか否かが判定される(ステップS13)。ここで、第2の測定路面角度が判定基準角度以下の場合(ステップS13:YES)、ジャッキ作動可否判定部34は、作業用補助制動装置80の作動の如何に拘らず、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。そして、この場合、ジャッキ作動制御部31は、作業用補助制動装置80が作動していない場合(ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されていない場合)でも、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS14)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を縮小
作動させる。
【0050】
一方、路面傾斜角度記憶部33に記憶された第2の測定路面角度が、判定基準角度を越える場合(ステップS13:NO)には、ジャッキ作動可否判定部34は、作業用補助制動装置80が作動している(ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されている)か否かを判別する(ステップS15)。そして、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されている場合(ステップS15:YES)には、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。ジャッキ作動可否判定部34がこのように判断した場合、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS14)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を縮小作動させる。これに対し、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されていない場合(ステップS15:NO)には、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11の作動を規制する(ステップS16)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号には応じない。そのため、作業者がジャッキ操作装置15を操作してもアウトリガジャッキ11を格納することはできない。
【0051】
次に、第1実施形態に係るジャッキ作動制御システムの理解を容易なものとするため、その特徴的な作用について説明する。なお、前述したように、高所作業装置9やアウトリガジャッキ11等への作動油は、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEの動力を取り出して第1油圧ポンプP1を駆動して供給する方法と、バッテリユニット45から電力を得て第2油圧ポンプP2を駆動して供給する方法とがある。以下では、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEの動力を用いて第1油圧ポンプP1を駆動してアウトリガジャッキ11を作動させ、第2油圧ポンプP2を駆動して高所作業装置9を作動させる場合を例示して説明する。
【0052】
(A1)高所作業(例えば電線工事)を行うため、高所作業車1を運転して作業現場に到着した作業者は、作業位置において高所作業車1を停車させて設置する。このとき、エンジンEは駆動したままとする。
(A2)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、運転キャブ2a内に配設されたパーキングブレーキレバーを操作して、パーキングブレーキを作動させる。
(A3)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、運転キャブ2a内に配設されたPTO操作レバー16を操作する。それにより、パワーテイクオフ機構PTOの出力軸と連結された第1油圧ポンプP1がエンジンEの動力を受けて回転駆動されて作動油圧が発生されるとともに、PTOスイッチ17がオン状態となることでシャーシバッテリ19からコントローラ30へ電力が供給されて、コントローラ30の電源がオンとなる(高所作業装置9の作動操作が可能な状態となる)。
【0053】
(A4)エンジンEが駆動した状態において、コントローラ30の路面傾斜角度測定部32が、設置路面傾斜角度を測定し、その設置路面傾斜角度(第1の測定路面角度)が判定基準角度以上か否かをジャッキ作動可否判定部34が判定する。
(A5)第1の測定路面角度が判定基準角度以下の場合、ジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されていない場合でも、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(アウトリガジャッキ11の作動操作が可能な状態となる)。なお、このとき、運転キャブ2a内やジャッキ操作装置15等において、アウトリガジャッキ11の作動操作が可能な状態であることをスピーカや表示器(図示せず。以下「注意喚起器」と称する)を用いて音声や文字表示等により作業者に報知する。
【0054】
(A6)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを第1油
圧ポンプP1の側に選択操作する。これにより、第1油圧ポンプP1からの作動油供給により、アウトリガジャッキ11を作動させることができる。
(A7)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、ジャッキ操作装置15を操作して、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ車幅方向に拡幅伸長させるとともに下方に張り出させて接地させ、車体2b全体を持ち上げ支持する。
(A8)アウトリガジャッキ11の張出中において、路面傾斜角度記憶部33は、1つのアウトリガジャッキ11のみが接地したタイミングにおいて、路面傾斜角度測定部32により求められた設置路面傾斜角度(第2の測定路面角度)を取り込んで記憶する。
(A9)アウトリガジャッキ11により車体2bを持ち上げ支持した後、作業者は、エンジンキーによりキーシリンダ27bをLOCK位置に回動させ、エンジンEを停止させる。エンジンEを停止させることで、シャーシバッテリ19のバッテリ上りを防止できる。
【0055】
(A10)エンジンEが停止した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを操作してバッテリユニット45を作動させ、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2からの作動油供給によって、高所作業装置9を作動させ、高所作業を行う。
(A11)高所作業の終了後等において、作業者は、エンジンEが停止した状態において、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2からの作動油供給によって、高所作業装置9を格納する。
(A12)高所作業装置9の格納後、コントローラ30のジャッキ作動可否判定部34が、上記(A8)において路面傾斜角度記憶部33に記憶された第2の測定路面角度を読み出し、その第2の測定路面角度が判定基準角度以下であるか否かを判定する。
【0056】
(A13)このとき、記憶されている第2の測定路面角度が判定基準角度以下の場合には、ジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されていない場合でも、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。また、このとき、アウトリガジャッキ11の作動操作が可能な状態であることを注意喚起器により作業者に報知する。
(A14)作業者は、エンジンキーによりキーシリンダ27bをSTART位置に回動させてエンジンEを駆動させるとともに、動力源選択スイッチを第1油圧ポンプP1の側に選択操作する。これにより、第1油圧ポンプP1からの作動油供給により、アウトリガジャッキ11を作動させることができる。
【0057】
(A15)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、ジャッキ操作装置15を操作して、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ上方に縮小させて接地路面から離間させ車両2を設置路面に降ろすとともに、アウトリガジャッキ11を車幅方向に縮小させて格納する。4つのアウトリガジャッキ11が全て接地路面から離間すると、路面傾斜角度記憶部33に記憶されている第2の測定路面角度がクリアされる。
(A16)アウトリガジャッキ11の格納後、作業者は、PTO操作レバー16をオフ操作して、エンジンEによる駆動先をタイヤ車輪3に切り換え、一連の作業を終了する。
【0058】
(A17)一方、上記(A4)における判定において、第1の測定路面角度が判定基準角度を越えると判定した場合には、ジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていないと判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11の作動を規制するとともに、作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態とすることが必要であることを注意喚起器により報知する。
(A18)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、運転キャブ2a内にて、ブレーキペダル71を踏み込んだ状態で、ブレーキロックスイッチ89を操作し、これによ
り、車両制動装置70及び作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態に設定する。ブレーキロック状態に設定されることにより、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力され、コントローラ30に入力される。
【0059】
(A19)ブレーキロック信号が出力されると、コントローラ30のジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断し、この判断を受けてジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。
(A20)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを第1油圧ポンプP1の側に選択操作する。これにより、第1油圧ポンプP1からの作動油供給により、アウトリガジャッキ11を作動させることができる。
(A21)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、ジャッキ操作装置15を操作して、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ車幅方向に拡幅伸長させるとともに下方に張り出させて接地させ、車体2b全体を持ち上げ支持する。
【0060】
(A22)アウトリガジャッキ11の張出中において、路面傾斜角度記憶部33は、1つのアウトリガジャッキ11のみが接地したタイミングにおいて、路面傾斜角度測定部32により求められた設置路面傾斜角度(第2の測定路面角度)を取り込んで記憶する。
(A23)アウトリガジャッキ11により車体2bを持ち上げ支持した後、作業者は、エンジンキーによりキーシリンダ27bをLOCK位置に回動させ、エンジンEを停止させる。エンジンEが停止することにより、作業用補助制動装置80の作動が停止し、ブレーキロック状態が解除される。また、ブレーキロックセンサ21からのブレーキロック信号の出力も停止する。作業用補助制動装置80の作動が停止することにより、以降の高所作業中において、警報装置90から警報音が発生されることはない。
【0061】
(A24)エンジンEが停止した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを操作してバッテリユニット45を作動させ、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2からの作動油供給によって、高所作業装置9を作動させ、高所作業を行う。
(A25)高所作業の終了後等において、作業者は、エンジンEが停止した状態において、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2からの作動油供給によって、高所作業装置9を格納する。
(A26)高所作業装置9の格納後、コントローラ30のジャッキ作動可否判定部34が、上記(A22)において路面傾斜角度記憶部33に記憶された第2の測定路面角度を読み出し、その第2の測定路面角度が判定基準角度以下であるか否かを判定する。
【0062】
(A27)このとき、記憶されている第2の測定路面角度が判定基準角度を越えている場合、ジャッキ作動可否判定部34は、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されているか否かを確認する。このとき、ブレーキロック信号が出力されていない場合には、ジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていないと判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11の作動を規制するとともに、作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態とすることが必要であることを注意喚起器により報知する。
(A28)作業者は、運転キャブ2a内にて、エンジンキーによりキーシリンダ27bをSTART位置に回動させてエンジンEを駆動させるとともに、ブレーキペダル71を踏み込んだ状態で、ブレーキロックスイッチ89を操作して、車両制動装置70及び作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態に設定する。ブレーキロック状態に設定されることにより、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力され、コントローラ30に入力される。
【0063】
(A29)ブレーキロック信号が出力されると、コントローラ30のジャッキ作動可否
判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。
(A30)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを第1油圧ポンプP1の側に選択操作する。これにより、第1油圧ポンプP1からの作動油供給により、アウトリガジャッキ11を作動させることができる。
(A31)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ上方に縮小させて接地路面から離間させ車両2を設置路面に降ろすとともに、アウトリガジャッキ11を車幅方向に縮小させて格納する。4つのアウトリガジャッキ11が全て接地路面から離間すると、路面傾斜角度記憶部33に記憶されている第2の測定路面角度がクリアされる。
(A32)アウトリガジャッキ11の格納後、作業者は、PTO操作レバー16をオフ操作して、エンジンEによる駆動先をタイヤ車輪3に切り換え、一連の作業を終了する。
【0064】
以上、第1実施形態に係るジャッキ作動制御システムによれば、車両2が設置される位置の路面傾斜角度が判定基準角度を下回る場合には、ブレーキロック信号が出力されていない場合(作業用補助制動装置80が作動していない場合)でも、アウトリガジャッキ11を作動させることができる。そのため、作業用補助制動装置80を作動させることが必要となる回数の割合を減らすことができるので、作業用補助制動装置80を作動させるための作業負担を軽減して、作業効率を向上させることが可能となる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るジャッキ作動制御システムについて、図8図10を追加参照して説明する。この第2実施形態に係るジャッキ作動制御システムは、基本的には第1実施形態に係るジャッキ作動制御システムと同様の構成である。そのため、第1実施形態の図4を共用するとともに、第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を付して重複説明を省略し、主として第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0066】
第2実施形態に係るジャッキ作動制御システムは、全体的には第1実施形態と同様の構成であり、図4に示す、ブレーキロックセンサ21、ジャッキ伸長量センサ22(22a~22d)、ジャッキ接地センサ23(23a~23d)、車体傾斜計24、ECU60、車両制動装置70及び作業用補助制動装置80を備えて構成されている。図4のコントローラ30は、第2実施形態に係るジャッキ作動制御システムでは、コントローラ30A(図8を参照)に替わる。コントローラ30A以外の他の構成は、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0067】
コントローラ30Aは、図8に示すように、機能的な構成として、ジャッキ作動制御部31と、路面傾斜角度測定部32と、ジャッキ作動可否判定部34と、疑似信号出力部35とを備えている。ジャッキ作動制御部31、ジャッキ作動可否判定部34及び路面傾斜角度測定部32は、第1実施形態と同様の機能を有する。疑似信号出力部35は、路面傾斜角度測定部32により求められた設置路面傾斜角度が、判定基準角度以下の場合に、作業用補助制動装置80が作動していなくても前記補助制動装置が作動中であることを擬似的に示す信号(「疑似ブレーキロック信号」と称する)を所定期間出力する。疑似信号出力部35から出力された疑似ブレーキロック信号は、コントローラ30Aに入力され、ジャッキ作動可否判定部34により読み出される。
【0068】
第2実施形態のジャッキ作動制御システムでは、第1実施形態のジャッキ作動制御システムと同様、高所作業車1(車両2)の設置路面が水平面であるような場合には、作業用補助制動装置80を作動させずにアウトリガジャッキ11を作動させることができるようになっている。以下、この点について、図9および図10を参照して説明する。
【0069】
第2実施形態のジャッキ作動制御システムでは、アウトリガジャッキ11が車体2bを支持していない状態における設置路面傾斜角度を路面傾斜角度測定部32により求める(図9のステップS21)。次いで、この求められた設置路面傾斜角度(「第3の測定路面角度」と称する)が判定基準角度以下であるか否かを、ジャッキ作動可否判定部34が判定する(ステップS22)。ここで、この第3の測定路面角度が判定基準角度以下の場合(ステップS22:YES)、疑似信号出力部35が疑似ブレーキロック信号を所定期間出力する(ステップS23)。そして、この疑似ブレーキロック信号が出力されている場合、ジャッキ作動可否判定部34は、作業用補助制動装置80の作動の如何に拘らず、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。また、この場合、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS24)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を伸長作動させる。
【0070】
一方、路面傾斜角度測定部32により求められた第3の測定路面角度が、判定基準角度を越える場合(ステップS22:NO)には、疑似信号出力部35は疑似ブレーキロック信号を出力しない。この場合、ジャッキ作動可否判定部34は、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されているか否かを判別する(ステップS25)。そして、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されている場合(ステップS25:YES)には、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。ジャッキ作動可否判定部34がこのように判断した場合、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS24)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を伸長作動させる。これに対し、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されていない場合(ステップS25:NO)には、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11の作動を規制する(ステップS26)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号には応じない。
【0071】
また、第2実施形態のジャッキ作動制御システムでは、アウトリガジャッキ11により車体2bが持ち上げ支持された後は、アウトリガジャッキ11により車体2bが持ち上げ支持された車体支持状態におけるアウトリガジャッキ11の作動の可否が、疑似ブレーキロック信号もしくはブレーキロック信号が出力されているか否かに基づき制御される。すなわち、高所作業の終了等において、疑似ブレーキロック信号が出力されているか否かをジャッキ作動可否判定部34が判定する(ステップS31)。ここで、疑似ブレーキロック信号が出力されている場合(ステップS31:YES)、ジャッキ作動可否判定部34は、作業用補助制動装置80の作動の如何に拘らず、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。そして、この場合、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS32)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を縮小作動させる。
【0072】
一方、疑似ブレーキロック信号が出力されていない場合(ステップS31:NO)には、ジャッキ作動可否判定部34は、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されているか否かを判別する(ステップS33)。そして、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されている場合(ステップS33:YES)には、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。ジャッキ作動可否判定部34がこのように判断した場合、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS32)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を縮小作動させる。これに対し、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されていない場合(ステップS
33:NO)には、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11の作動を規制する(ステップS34)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号には応じない。そのため、作業者がジャッキ操作装置15を操作してもアウトリガジャッキ11を格納することはできない。
【0073】
次に、第2実施形態に係るジャッキ作動制御システムの理解を容易なものとするため、その特徴的な作用について説明する。なお、以下においても、第1実施形態と同様、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEの動力を用いて第1油圧ポンプP1を駆動してアウトリガジャッキ11を作動させ、第2油圧ポンプP2を駆動して高所作業装置9を作動させる場合を例示して説明する。
【0074】
(B1)高所作業を行うため、高所作業車1を運転して作業現場に到着した作業者は、作業位置において高所作業車1を停車させて設置する。このとき、エンジンEは駆動したままとする。
(B2)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、運転キャブ2a内に配設されたパーキングブレーキレバーを操作して、パーキングブレーキを作動させる。
(B3)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、運転キャブ2a内に配設されたPTO操作レバー16を操作する。それにより、パワーテイクオフ機構PTOの出力軸と連結された第1油圧ポンプP1がエンジンEの動力を受けて回転駆動されて作動油圧が発生されるとともに、PTOスイッチ17がオン状態となることでシャーシバッテリ19からコントローラ30Aへ電力が供給されて、コントローラ30Aの電源がオンとなる。
【0075】
(B4)エンジンEが駆動した状態において、コントローラ30Aの路面傾斜角度測定部32が、設置路面傾斜角度を測定し、その設置路面傾斜角度(第3の測定路面角度)が判定基準角度以下であるか否かをジャッキ作動可否判定部34が判定する。
(B5)第3の測定路面角度が判定基準角度以下の場合、ジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。また、疑似信号出力部25は、疑似ブレーキロック信号を所定期間(例えば、判定直後からアウトリガジャッキ11が格納されるまでの期間)に亘って継続的に出力する。
(B6)疑似信号出力部35から疑似ブレーキロック信号が出力されると、それによりジャッキ作動制御部31は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、疑似ブレーキロック信号が出力されている期間内において、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。さらに、アウトリガジャッキ11の作動操作が可能な状態であることを注意喚起器により作業者に報知する。
【0076】
(B7)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを第1油圧ポンプP1の側に選択操作する。
(B8)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、ジャッキ操作装置15を操作して、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ車幅方向に拡幅伸長させるとともに下方に張り出させて接地させ、車体2b全体を持ち上げ支持する。
(B9)アウトリガジャッキ11により車体2bを持ち上げ支持した後、作業者は、エンジンキーによりキーシリンダ27bをLOCK位置に回動させ、エンジンEを停止させる。
【0077】
(B10)エンジンEが停止した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを操作してバッテリユニット45を作動させ、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2からの作動油供給によって、高所作業装置9を作動させ、高所作業を行う。
(B11)高所作業の終了後等において、作業者は、エンジンEが停止した状態において、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2からの作動
油供給によって、高所作業装置9を格納する。
(B12)高所作業装置9の格納後、コントローラ30Aのジャッキ作動可否判定部34が、疑似信号出力部35からの疑似ブレーキロック信号の出力の有無を判定する。
【0078】
(B13)このとき、疑似ブレーキロック信号が出力されている場合には、ジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。さらにこのとき、アウトリガジャッキ11の作動操作が可能な状態であることを注意喚起器により作業者に報知する。
(B14)作業者は、エンジンキーによりキーシリンダ27bをSTART位置に回動させてエンジンEを駆動させるとともに、動力源選択スイッチを第1油圧ポンプP1の側に選択操作し、第1油圧ポンプP1からの作動油供給により、アウトリガジャッキ11を作動できるようにする。
【0079】
(B15)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、ジャッキ操作装置15を操作して、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ上方に縮小させて接地路面から離間させ車両2を設置路面に降ろすとともに、アウトリガジャッキ11を車幅方向に縮小させて格納する。4つのアウトリガジャッキ11が全て接地路面から離間すると、疑似信号出力部35からの疑似ブレーキロック信号の出力が停止される。
(B16)アウトリガジャッキ11の格納後、作業者は、PTO操作レバー16をオフ操作して、エンジンEによる駆動先をタイヤ車輪3に切り換え、一連の作業を終了する。
【0080】
(B17)一方、上記(B4)における判定において、第3の測定路面角度が判定基準角度を越えると判定した場合には、疑似信号出力部35から疑似ブレーキロック信号が出力されない。この場合、ジャッキ作動可否判定部34は、ブレーキロックセンサ21からのブレーキロック信号の出力の有無を判定し、出力されていない場合にはジャッキ作動許可条件が満足されていないと判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11の作動を規制するとともに、作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態とすることが必要であることを注意喚起器により報知する。
(B18)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、運転キャブ2a内にて、ブレーキペダル71を踏み込んだ状態で、ブレーキロックスイッチ89を操作し、これにより、車両制動装置70及び作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態に設定する。ブレーキロック状態に設定されることにより、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力され、コントローラ30Aに入力される。
【0081】
(B19)ブレーキロック信号が出力されると、コントローラ30Aのジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断し、この判断を受けてジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。
(B20)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを第1油圧ポンプP1の側に選択操作し、第1油圧ポンプP1からの作動油供給により、アウトリガジャッキ11を作動できるようにする。
(B21)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、ジャッキ操作装置15を操作して、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ車幅方向に拡幅伸長させるとともに下方に張り出させて接地させ、車体2b全体を持ち上げ支持する。
【0082】
(B22)アウトリガジャッキ11により車体2bを持ち上げ支持した後、作業者は、エンジンキーによりキーシリンダ27bをLOCK位置に回動させ、エンジンEを停止させる。エンジンEが停止することにより、作業用補助制動装置80の作動が停止し、ブレーキロック状態が解除される。また、ブレーキロックセンサ21からのブレーキロック信号の出力も停止する。作業用補助制動装置80の作動が停止することにより、以降の高所
作業中において、警報装置90から警報音が発生されることはない。
【0083】
(B23)エンジンEが停止した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを操作してバッテリユニット45を作動させ、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2からの作動油供給によって、高所作業装置9を作動させ、高所作業を行う。
(B24)高所作業の終了後等において、作業者は、エンジンEが停止した状態において、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2からの作動油供給によって、高所作業装置9を格納する。
(B25)高所作業装置9の格納後、コントローラ30Aのジャッキ作動可否判定部34が、疑似信号出力部35からの疑似ブレーキロック信号の出力の有無を判定し、出力されていない場合には、ブレーキロックセンサ21からのブレーキロック信号の出力の有無を判定する。このとき、ブレーキロック信号が出力されていない場合にはジャッキ作動許可条件が満足されていないと判断し、アウトリガジャッキ11の作動を規制するとともに、作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態とすることが必要であることを注意喚起器により報知する。
【0084】
(B26)作業者は、運転キャブ2a内にて、エンジンキーによりキーシリンダ27bをSTART位置に回動させてエンジンEを駆動させるとともに、ブレーキペダル71を踏み込んだ状態で、ブレーキロックスイッチ89を操作して、車両制動装置70及び作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態に設定する。ブレーキロック状態に設定されることにより、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力され、コントローラ30Aに入力される。
(B27)ブレーキロック信号が出力されると、コントローラ30Aのジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。
【0085】
(B28)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、動力源選択スイッチを第1油圧ポンプP1の側に選択操作する。これにより、第1油圧ポンプP1からの作動油供給により、アウトリガジャッキ11を作動させることができる。
(B29)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ上方に縮小させて接地路面から離間させ車両2を設置路面に降ろすとともに、アウトリガジャッキ11を車幅方向に縮小させて格納する。4つのアウトリガジャッキ11が全て接地路面から離間すると、疑似信号出力部35からの疑似ブレーキロック信号の出力が停止される。
(B30)アウトリガジャッキ11の格納後、作業者は、PTO操作レバー16をオフ操作して、エンジンEによる駆動先をタイヤ車輪3に切り換え、一連の作業を終了する。
【0086】
以上、第2実施形態に係るジャッキ作動制御システムによれば、車両2が設置される位置の路面傾斜角度が判定基準角度以下の場合には、疑似信号出力部35から疑似ブレーキロック信号が出力され、ブレーキロック信号が出力されていない場合(作業用補助制動装置80が作動していない場合)でも、アウトリガジャッキ11を作動させることができる。そのため、作業用補助制動装置80を作動させることが必要となる回数の割合を減らすことができるので、作業用補助制動装置80を作動させるための作業負担を軽減して、作業効率を向上させることが可能となる。
【0087】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るジャッキ作動制御システムについて、図11図12を追加参照して説明する。この第3実施形態に係るジャッキ作動制御システムは、基本的には第1実施形態に係るジャッキ作動制御システムと同様の構成である。そのため、第1実施形
態の図4を共用するとともに、第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を付して重複説明を省略し、主として第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0088】
第3実施形態に係るジャッキ作動制御システムは、全体的には第1実施形態と同様の構成であり、図4に示す、ブレーキロックセンサ21、ジャッキ伸長量センサ22(22a~22d)、ジャッキ接地センサ23(23a~23d)、車体傾斜計24、ECU60、車両制動装置70及び作業用補助制動装置80を備えて構成されている。図4のコントローラ30は、第3実施形態に係るジャッキ作動制御システムでは、コントローラ30B(図11を参照)に替わる。コントローラ30B以外の他の構成は、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0089】
コントローラ30Bは、図11に示すように、機能的な構成として、ジャッキ作動制御部31と、路面傾斜角度測定部32と、路面傾斜角度記憶部33と、ジャッキ作動可否判定部34と、疑似信号出力部35とを備えている。これらは、第1実施形態及び第2実施形態と同様の機能を有する。なお、コントローラ30Bの路面傾斜角度測定部32は、アウトリガジャッキ11が車体2bを持ち上げ支持した車体支持状態(ジャッキ接地センサ23により全てのアウトリガジャッキ11の接地が検知されている状態)における設置路面傾斜角度を、ジャッキ伸長量センサ22により検出された各アウトリガジャッキ11の伸長量、及び車体傾斜計24により検出された車体2bの傾斜角度に基づき算出して求めるようになっている。この車体支持状態において測定される設置路面傾斜角度は、車体2bを持ち上げ支持したアウトリガジャッキ11を縮小作動させて設置路面から離間させてタイヤ車輪3を接地させた場合における車体2bの傾斜角度に対応する。
【0090】
第3実施形態のジャッキ作動制御システムでは、第1実施形態のジャッキ作動制御システムと同様、高所作業車1(車両2)の設置路面が水平面であるような場合には、作業用補助制動装置80を作動させずにアウトリガジャッキ11を作動させることができるようになっている。なお、第3実施形態のジャッキ作動制御システムは、高所作業を終え、アウトリガジャッキ11を格納する際の作用に特徴を有する。以下、この点について、図12を参照して説明する。アウトリガジャッキ11を張り出す際の作用は、第1実施形態または第2実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0091】
第3実施形態のジャッキ作動制御システムでは、アウトリガジャッキ11が車体2bを支持している車体支持状態における設置路面傾斜角度を、路面傾斜角度測定部32が求める(図12のステップS41)。次いで、この求められた設置路面傾斜角度(「第4の測定路面角度」と称する)が判定基準角度以下であるか否かを、ジャッキ作動可否判定部34が判定する(ステップS42)。ここで、この第3の測定路面角度が判定基準角度以下の場合(ステップS42:YES)、疑似信号出力部35が疑似ブレーキロック信号を所定期間出力する(ステップS43)。そして、この疑似ブレーキロック信号が出力されている場合、ジャッキ作動可否判定部34は、作業用補助制動装置80の作動の如何に拘らず、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。そして、この場合、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS44)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を縮小作動させる。
【0092】
一方、路面傾斜角度測定部32により求められた第4の測定路面角度が、判定基準角度を越える場合(ステップS42:NO)には、疑似信号出力部35は疑似ブレーキロック信号を出力しない。この場合、ジャッキ作動可否判定部34は、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されているか否かを判別する(ステップS45)。そして、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されている場合(ステップ
S45:YES)には、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断する。ジャッキ作動可否判定部34がこのように判断した場合、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする(ステップS44)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号に応じて、アウトリガジャッキ11を縮小作動させる。これに対し、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力されていない場合(ステップS45:NO)には、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11の作動を規制する(ステップS46)。すなわち、ジャッキ作動制御部31は、ジャッキ操作装置15から出力される操作信号には応じない。そのため、作業者がジャッキ操作装置15を操作してもアウトリガジャッキ11を格納することはできない。
【0093】
次に、第3実施形態に係るジャッキ作動制御システムの理解を容易なものとするため、その特徴的な作用について説明する。なお、以下においても、第1実施形態と同様、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEの動力を用いて第1油圧ポンプP1を駆動してアウトリガジャッキ11を作動させ、第2油圧ポンプP2を駆動して高所作業装置9を作動させる場合を例示して説明する。また、以下の説明では、高所作業を行った後の作用について説明する。高所作業を行うまでの作用は、第1実施形態または第2実施形態と同様である。
【0094】
(C1)高所作業の終了後等において、作業者は、エンジンEが停止した状態において、バッテリユニット45からの動力を受けて駆動される第2油圧ポンプP2からの作動油供給によって、高所作業装置9を格納する。
(C2)高所作業装置9の格納後、コントローラ30Bの路面傾斜角度測定部32が、アウトリガジャッキ11が車体2bを持ち上げ支持した車体支持状態における設置路面傾斜角度を測定し、その設置路面傾斜角度(第4の測定路面角度)が判定基準角度以下であるか否かをジャッキ作動可否判定部34が判定する。
(C3)第4の測定路面角度が判定基準角度以下である場合、疑似信号出力部35は、疑似ブレーキロック信号を所定期間(例えば、判定直後からアウトリガジャッキ11が格納されるまでの期間)に亘って継続的に出力する。
【0095】
(C4)疑似信号出力部35から疑似ブレーキロック信号が出力されると、それによりジャッキ作動可否判定部34は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断し、疑似ブレーキロック信号が出力されている期間内において、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。また、アウトリガジャッキ11の作動操作が可能な状態であることを注意喚起器により作業者に報知する。
(C5)作業者は、エンジンキーによりキーシリンダ27bをSTART位置に回動させてエンジンEを駆動させるとともに、動力源選択スイッチを第1油圧ポンプP1の側に選択操作し、第1油圧ポンプP1からの作動油供給により、アウトリガジャッキ11を作動できるようにする。
【0096】
(C6)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、ジャッキ操作装置15を操作して、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ上方に縮小させて接地路面から離間させ車両2を設置路面に降ろすとともに、アウトリガジャッキ11を車幅方向に縮小させて格納する。4つのアウトリガジャッキ11が全て接地路面から離間すると、疑似信号出力部35からの疑似ブレーキロック信号の出力が停止される。
(C7)アウトリガジャッキ11の格納後、作業者は、PTO操作レバー16をオフ操作して、エンジンEによる駆動先をタイヤ車輪3に切り換え、一連の作業を終了する。
【0097】
(C8)一方、上記(C2)における判定において、第4の測定路面角度が判定基準角度を越えると判定した場合には、疑似信号出力部35から疑似ブレーキロック信号が出力されない。この場合、ジャッキ作動可否判定部34は、ブレーキロックセンサ21からの
ブレーキロック信号の出力の有無を判定し、出力されていない場合にはジャッキ作動許可条件が満足されていないと判断する。また、ジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11の作動を規制するとともに、作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態とすることが必要であることを注意喚起器により報知する。
(C9)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、運転キャブ2a内にて、ブレーキペダル71を踏み込んだ状態で、ブレーキロックスイッチ89を操作し、これにより、車両制動装置70及び作業用補助制動装置80を作動させてブレーキロック状態に設定する。ブレーキロック状態に設定されることにより、ブレーキロックセンサ21からブレーキロック信号が出力され、コントローラ30Bに入力される。
【0098】
(C10)ブレーキロック信号が出力されると、コントローラ30Bのジャッキ作動制御部31は、ジャッキ作動許可条件が満足されていると判断し、この判断を受けてジャッキ作動制御部31は、アウトリガジャッキ11を作動可能とする。
(C11)作業者は、エンジンキーによりキーシリンダ27bをSTART位置に回動させてエンジンEを駆動させるとともに、動力源選択スイッチを第1油圧ポンプP1の側に選択操作し、第1油圧ポンプP1からの作動油供給により、アウトリガジャッキ11を作動できるようにする。
【0099】
(C12)エンジンEが駆動した状態において、作業者は、ジャッキ操作装置15を操作して、前後左右のアウトリガジャッキ11をそれぞれ上方に縮小させて接地路面から離間させ車両2を設置路面に降ろすとともに、アウトリガジャッキ11を車幅方向に縮小させて格納する。4つのアウトリガジャッキ11が全て接地路面から離間すると、疑似信号出力部35からの疑似ブレーキロック信号の出力が停止される。
(C13)アウトリガジャッキ11の格納後、作業者は、PTO操作レバー16をオフ操作して、エンジンEによる駆動先をタイヤ車輪3に切り換え、一連の作業を終了する。
【0100】
以上、第3実施形態に係るジャッキ作動制御システムによれば、アウトリガジャッキ11が車体2bを支持した車体支持状態における設置路面傾斜角度が路面傾斜角度測定部32により求められ、その設置路面傾斜角度(第4の測定路面角度)が判定基準角度以下の場合には、疑似信号出力部35から疑似ブレーキロック信号が出力される。そして、ブレーキロック信号が出力されていない場合(作業用補助制動装置80が作動していない場合)でも、疑似ブレーキロック信号が出力されている期間内において、アウトリガジャッキ11を格納作動させることができる。そのため、アウトリガジャッキ11の格納時において作業用補助制動装置80を作動させることが必要となる回数の割合を減らすことができるので、作業用補助制動装置80を作動させるための作業負担を軽減して、作業効率を向上させることが可能となる。また、第3実施形態に係るジャッキ作動制御システムによれば、アウトリガジャッキ11の張出後(車体2bの支持後)に設置路面の傾斜角度が変化したような場合においても、アウトリガジャッキ11を格納する際には、設置路面の傾斜角度を正しく把握することができる。そのため、アウトリガジャッキ11の張出後に設置路面の傾斜角度が変化して所定角度を越えたような場合において、作業用補助制動装置80を作動させずにアウトリガジャッキ11を格納作動させて、高所作業車1が逸走してしまうといった事態が生じることを確実に防止することが可能となる。
【0101】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0102】
上述の実施形態では、バキュームポンプ81やパワーチャンバ84等を備えた補助制動装置を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、他の形式の補助制動装置(例えば特開2003-95599号公報などを参照)を採用してもよい。また、ブレーキペダル71が踏み込まれた状態を保持する機能を有するのではなく、タイヤ車輪3の
制動を、フロントブレーキ74及びリアブレーキ75とは別に、直接的に制動する機能を有する補助制動装置であってもよい。
【0103】
また、上述の第3実施形態のジャッキ作動制御システムでは、車体支持状態において求められた設置路面傾斜角度が判定基準角度以下の場合に、疑似ブレーキロック信号が出力され、この疑似ブレーキロック信号が出力されている場合はジャッキ作動が可能となっているが、これに限定されるものではない。車体支持状態において求められた設置路面傾斜角度が判定基準角度以下の場合には、疑似ブレーキロック信号を出力することなく、ジャッキ作動を可能とするように構成してもよい。
【0104】
また、上述の実施形態では、コントローラから疑似ブレーキロック信号を出力する場合を例示し説明したが、この構成に限定されるものではなく、コントローラ以外の装置から疑似ブレーキロック信号を出力させることも可能である。
【0105】
また、上述の実施形態では、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEの動力を用いて第1油圧ポンプP1を駆動してアウトリガジャッキ11を作動させる場合を例示し説明したが、この構成に限定されるものではなく、第2油圧ポンプP2を駆動してアウトリガジャッキ11を作動させることも可能である。第2油圧ポンプP2を駆動してアウトリガジャッキ11を作動させる場合は、その際に、作業用補助制動装置80を作動させることが必要となる場合でもエンジンEを駆動させる必要はない。エンジンEの停止中に、キーシリンダ27bをON位置に回動させることにより、エンジンEを停止したままでも作業用補助制動装置80を作動させることが可能となる。
【0106】
また、上述の実施形態において、車載されたGPS装置により、設置された高所作業車1が移動していないかどうかを把握するようにしてもよい。そして、高所作業車1が移動している場合には、高所作業車1の逸走を防止するため、作業用補助制動装置80を作動させなければ、アウトリガジャッキ11を作動できないようにしてもよい。
【0107】
なお、上述の実施形態において、本発明に係る高所作業車として、伸縮ブーム式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、屈伸ブーム式の高所作業車、穴掘り建柱車、橋梁点検車、軌陸車等の他の高所作業車であってもよく、補助制動装置を備えた高所作業車であれば、本発明を適用可能である。また、上述の実施形態では、高所作業車の車体上に設けられる昇降装置として、起伏、伸縮及び旋回動可能な三段伸縮式のブームを例示して説明したが、この昇降装置は上記ブームのように作業台を三次元的に移動ができるものに限られず、シザースリンク式又はマスト式の昇降装置のように作業台の垂直昇降のみができるもの等であってもよい。さらに、高所作業車以外の作業車(例えば、レッカー車)であっても、補助制動装置を備えていれば、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 高所作業車
2 車両
2a 運転キャブ(運転室)
2b 車体
3 タイヤ車輪(走行装置)
9 高所作業装置(作業装置)
10 上部操作装置
11 アウトリガジャッキ(ジャッキ)
15 ジャッキ操作装置
21 ブレーキロックセンサ(補助制動信号出力装置)
22 ジャッキ伸長量センサ(ジャッキ伸長量検出装置)
23 ジャッキ接地センサ
24 車体傾斜計(車体傾斜角度検出装置)
30,30A,30B コントローラ
31 ジャッキ作動制御部(ジャッキ作動制御装置)
32 路面傾斜角度測定部(路面傾斜角度測定装置)
33 路面傾斜角度記憶部
34 ジャッキ作動可否判定部
35 疑似信号出力部(疑似信号出力装置)
50 油圧アクチュエータ
60 ECU
70 車両制動装置
71 ブレーキペダル(制動部材)
74 フロントブレーキ(主制動装置)
75 リアブレーキ(主制動装置)
80 作業用補助制動装置(補助制動装置)
E エンジン
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