(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025840
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220203BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 D
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128954
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】390010917
【氏名又は名称】ヨネックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 悟
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA08
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】装用者の呼吸時に生地部が鼻孔や口に吸着されるのを抑制すること。
【解決手段】マスク(1)は、少なくとも装用者の鼻孔と口を覆うとともに鼻孔の直下及び口の前方に空間(S)が形成されるように、中央縦方向(CV)に沿って凸状に湾曲する湾曲部(13)を含む立体形状を持つ生地部(10)と、湾曲部に取り付けられ、湾曲部に沿った湾曲形状を有する第1の芯部材(20)と、を備える。立体形状は、湾曲部に取り付けられた第1の芯部材によって保持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも装用者の鼻孔と口を覆うとともに前記鼻孔の直下及び前記口の前方に空間が形成されるように、中央縦方向に沿って凸状に湾曲する湾曲部を含む立体形状を持つ生地部と、
前記湾曲部に取り付けられ、前記湾曲部に沿った湾曲形状を有する第1の芯部材と、を備え、
前記立体形状は、前記湾曲部に取り付けられた前記第1の芯部材によって保持される、マスク。
【請求項2】
前記第1の芯部材は、前記生地部の中央縦方向の略全長に亘って延びた形状を有する、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記第1の芯部材は、第1の曲げ剛性を持つ複数本の棒体と、前記第1の曲げ剛性よりも低い第2の曲げ剛性を持つ糸と、を備え、前記棒体の間に通されて編立てられた前記糸によって前記複数本の棒体を一本の芯部材として結合したものである、請求項1又は請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記第1の芯部材は、前記生地部に縫い付けられている、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のマスク。
【請求項5】
前記生地部の上端部に沿って第2の芯部材が取り付けられ、
前記第2の芯部材は、前記生地部の上端部を、前記生地部の上端部中央で前方凸に屈曲した形状に保持する、請求項1から請求項4の何れか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
装用者の鼻及び口を覆うマスクが知られている。例えば特許文献1に、この種のマスクの具体的構成が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のマスクは、装用者の鼻及び口を覆うとともに装用者が呼吸する空間を確保するため、生地部に取り付けられたワイヤを塑性変形させることで、生地部を部分的に変形させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のマスクは、平面形状の生地部をワイヤによって部分的に変形させる構造であるため、実質的にワイヤが取り付けられた生地部分以外では、変形後の形状を維持することが難しい。例えば運動時は、装用者の呼吸が通常時よりも激しくなる。特許文献1に例示されるこれまでのマスクでは、ワイヤが取り付けられていない生地部分が呼吸の度に鼻孔や口に吸着されて、装用者が息苦しさを感じることがあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、装用者の呼吸時に生地部が鼻孔や口に吸着されるのを抑制することができるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の一形態に係るマスクは、少なくとも装用者の鼻孔と口を覆うとともに鼻孔の直下及び口の前方に空間が形成されるように、中央縦方向に沿って凸状に湾曲する湾曲部を含む立体形状を持つ生地部と、湾曲部に取り付けられ、湾曲部に沿った湾曲形状を有する第1の芯部材と、を備える。立体形状は、湾曲部に取り付けられた第1の芯部材によって保持される。
【0008】
本発明の実施の一形態において、第1の芯部材は、生地部の中央縦方向の略全長に亘って延びた形状を有するものとしてもよい。
【0009】
本発明の実施の一形態において、第1の芯部材は、例えば、第1の曲げ剛性を持つ複数本の棒体と、第1の曲げ剛性よりも低い第2の曲げ剛性を持つ糸と、を備え、棒体の間に通されて編立てられた糸によって複数本の棒体を一本の芯部材として結合したものである。
【0010】
本発明の実施の一形態において、第1の芯部材は、例えば生地部に縫い付けられている。
【0011】
本発明の実施の一形態では、例えば、生地部の上端部に沿って第2の芯部材が取り付けられており、第2の芯部材は、生地部の上端部を、生地部の上端部中央で前方凸に屈曲した形状に保持する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マスクにおいて、装用者の呼吸時に生地部が鼻孔や口に吸着されるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の一形態に係るマスクの正面図である。
【
図2】本発明の実施の一形態に係るマスクの装用状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施の一形態に係るマスクにおける生地部の構成の説明図である。
【
図4】本発明の実施の一形態に係るマスクが有する芯部材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の一形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0015】
図1は、本発明の実施の一形態に係るマスク1の正面図である。
図1に示すように、マスク1は、生地部10、第1の芯部材20、第2の芯部材30及び耳掛け部40を備える。なお、第1の芯部材20及び第2の芯部材30は、後述するように、二層構造を有する生地部10内で生地部10に縫い付けられているため、外観上不可視である。
図1では、便宜上、これら不可視の第1の芯部材20及び第2の芯部材30を、ハッチングをかけて示す。
【0016】
なお、以下の説明において、
図1の紙面に平行でかつ互いに直交する二方向をX方向、Y方向とし、
図1の紙面に直交しかつX方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。また、説明の便宜上、X方向の矢じりの指す側を右側とも呼び、その反対側を左側とも呼ぶ。また、Y方向の矢じりの指す側を上側とも呼び、その反対側を下側とも呼ぶ。また、Z方向の矢じりの指す側を前側とも呼び、その反対側を後側とも呼ぶ。なお、これらの方向の呼称は、構成要素の相対的な位置関係を説明するために便宜上用いる呼称であり、絶対的な方向を示すものではない。例えば、Y方向は、必ずしも
図1や
図2の上下方向(鉛直方向)とは限らず、例えば水平方向であってもよい。
【0017】
図2は、マスク1の装用状態を示す図である。
図2では、便宜上、生地部10を透明で示す。
【0018】
生地部10は、少なくとも装用者Wの鼻孔と口を覆える大きさを備えている。一例として、生地部10は、顔面の大きさが平均的な成人男性である装用者Wの鼻から顎にかけた顔面下半分を覆う適度の大きさを持つ。
【0019】
図3は、本発明の実施の一形態に係るマスクにおける生地部の構成の説明図である。
図3に示すように、生地部10は、第1生地11と第2生地12とを重ね合わせたものである。なお、本実施形態では、装用時に前側に位置する生地を第1生地11とし、装用時に後側に位置する生地を第2生地12とする。
【0020】
第1生地11、第2生地12は、例えば、布帛(「平織り」「綾織り」「朱子織」等を含む織物、ジャカード織り等)、ニット(「横編み」「経編み」「丸編み」等を含む編物、ジャカード編み等)、通気性を有するフィルム、ボンディングである。第1生地11と第2生地12は、互いに縫い付けられている。なお、この縫い付けは、第1生地11と第2生地12の素材に応じて、他の固定手段(例えばホットメルト接着剤による接着、超音波融着等)に代えてもよい。
【0021】
図1及び
図2に戻り、生地部10は、中央縦方向CVに沿って凸状に湾曲する湾曲部13を含む。生地部10は、湾曲部13を境に左右対称形状となっている。そのため、生地部10の左右端に取り付けられた各耳掛け部40を装用者Wの各耳にかけると、鼻梁から顎にかけた顔の正中線の前方に湾曲部13が位置する。
【0022】
湾曲部13は、生地部10の中央縦方向CVの全長に亘っており、具体的には、生地部10の上端部中央UCから下端部中央DCに亘っている。
図2に示すように、湾曲部13は、上端部中央UCから装用者Wの鼻梁に沿うとともに前方に漸次突出するように緩やかに湾曲し、鼻孔の下方斜め前方に達する位置にて、装用者Wの顎に向かって漸次後退するよう緩やかに湾曲する湾曲形状を有する。この湾曲形状を持つ湾曲部13が装用者Wの鼻梁から顎にかけた顔の正中線の前方に位置することにより、生地部10と顔面との間であって、鼻孔の直下及び口の前方に空間Sが形成される。
【0023】
すなわち、生地部10は、少なくとも装用者Wの鼻孔と口を覆うとともに鼻孔の直下及び口の前方に空間Sが形成されるように、中央縦方向CVに沿って凸状に湾曲する湾曲部13を含む立体形状を持つ。附言するに、装用時に前側に位置する第1生地11の前面は、装用時に外周から中央に向かって前方に膨出する凸面状に湾曲し、装用時に後側に位置する第2生地12の後面は、装用時に外周から中央に向かって前方に陥没する凹面状に湾曲する。
【0024】
生地部10は立体形状を持つものの、上述したようにその素材がニット(編物)等である。そのため、生地部10には、装用時に湾曲部13の湾曲形状を保持できる剛性がない。
【0025】
そこで、本実施の形態では、湾曲部13に第1の芯部材20が取り付けられている。第1の芯部材20は、生地部10の中央縦方向CVの略全長に亘って延びた帯状または紐状に形成されており、湾曲部13に沿った湾曲形状を有する。
【0026】
図4は、第1の芯部材20の構成を示す図である。
図4に示すように、第1の芯部材20は、湾曲部13に沿った湾曲形状に形状記憶加工された複数本のポリエチレン製の棒体22を平行に並べ、平行に並べられた棒体22の間にポリエステル糸(糸)24を通して編立て、編立てられたポリエステル糸24によってこれら複数本の棒体22を一本の芯部材として結合したものである。ポリエチレン製の棒体22は、ポリエステル糸24よりも太くて曲げ剛性が高い。このような高い曲げ剛性を持つポリエチレン製の複数本の棒体22を母体とすることにより、第1の芯部材20は、湾曲部13に沿った湾曲形状を保持する剛性を持つこととなる。
【0027】
すなわち、第1の芯部材20は、第1の曲げ剛性を持つ複数本の棒体22と、第1の曲げ剛性よりも低い第2の曲げ剛性を持つ糸24と、を備え、棒体22の間に通されて編立てられた糸24によって複数本の棒体22を一本の芯部材として結合したものである。
【0028】
このような剛性を持つ第1の芯部材20により、湾曲部13の湾曲形状が保持されて、鼻孔直下及び口前方に空間S(
図2参照)を形成する生地部10の立体形状が保持される。例えば装用者Wが運動する場合にも、湾曲部13の湾曲形状が保持されて、空間S(
図2参照)が維持されやすい。装用者Wの呼吸時に生地部10が鼻孔や口に吸着されるのが抑制されて、装用者Wが息苦しさを感じにくくなる。
【0029】
図3に戻り、第1の芯部材20は、生地部10の第2生地12に縫い付けられている。第1の芯部材20が生地部10の第2生地12に縫い付けられているため、生地部10や第1の芯部材20に外的な負荷がかかる場合にも、第1の芯部材20は、生地部10に対してずれにくい。そのため、第1の芯部材20がずれて生地部10を損傷させたり、損傷個所から第1の芯部材20が生地部10の外部に突出したりするなどの不具合の発生が抑制される。
【0030】
なお、生地部10の第2生地12へ第1の芯部材20を縫い付けるには、例えばソーイングマシン(ミシン)が用いられる。ポリエチレン製の棒体22の間で編立てられたポリエステル糸24(何れも
図4参照)は、細くて柔軟である。そのため、ソーイングマシンの針は、隣り合う棒体22の間を通る。そのため、ソーイングマシンを用いて第1の芯部材20を生地部10の第2生地12へ縫い付けることが可能となっている。
【0031】
第2の芯部材30は、連続した1本の芯部材を上端部中央UCで湾曲した形状に形成され、生地部10の上端部に沿って取り付けられている。なお、第2の芯部材30は、左右で分離する一対の芯部材によって形成されるようにしてもよい。
【0032】
第2の芯部材30の右半部は、上端部中央UCから右端部に向かって略直線状に(より詳細には極僅かな曲線状に)延びて形成されている。第2の芯部材30の左半部は、上端部中央UCから左端部に向かって略直線状に(より詳細には極僅かな曲線状に)延びて形成されている。
【0033】
第2の芯部材30は、全体として、上端部中央UCで前方凸に屈曲した形状となっている。そのため、生地部10の上端部は、上端部中央UCで前方凸に屈曲した形状に保持される。この屈曲形状は、装用者Wの鼻梁及び鼻の側面に沿った形状となっている。
【0034】
伸縮性のある耳掛け部40を伸ばして装用者Wの耳にかけると、自然長に戻ろうとする耳掛け部40の復元力により、生地部10の上端部全体が装用者Wの鼻及び頬の上部辺りに緩く押さえ付けられる。生地部10の上端部中央UC付近が鼻梁及び鼻の側面に沿った屈曲形状となっているため、上端部中央UC付近が装用者Wの鼻にフィットする。そのため、装用者Wの鼻孔や口からの飛沫の飛散を極力防ぐことができ、また、例えば運動時であっても、マスク1が顔面からずれにくい。
【0035】
図3に戻り、生地部10の縫製や、生地部10への第1の芯部材20及び第2の芯部材30の縫い付けについて説明する。
【0036】
第2生地12は、中央縦方向CVを通るYZ面を挟んで面対称となる右生地部12aと左生地部12bを有する。右生地部12aと左生地部12bは、対向する互いの端部が中央縦方向CVに沿って割り伏せ縫い(割縫い)で縫い付けられる。割り伏せ縫い後の右生地部12a及び左生地部12bの縫い代に沿って第1の芯部材20が置かれて、第1の芯部材20がこの縫い代に縫い付けられる。これにより、第1の芯部材20は、長手方向が中央縦方向CVに沿う向きで右生地部12a及び左生地部12bに固定される。なお、第1の芯部材20と右生地部12a及び左生地部12bとの縫い目が外観上目立たないように、割り伏せ縫いの際の右生地部12aと左生地部12bとの縫い目に合わせて、第1の芯部材20が縫い付けられる。
【0037】
上端部中央UCから右端部に向かう縫い代に沿って第2の芯部材30の右半部が置かれ、上端部中央UCから左端部に向かう縫い代に沿って第2の芯部材30の左半部が置かれて、これら縫い代に第2の芯部材30が縫い付けられる。
【0038】
第1生地11は、中央縦方向CVを通るYZ面を挟んで面対称となる右生地部11aと左生地部11bを有する。右生地部11aは右生地部12aと同一形状を有し、左生地部11bは左生地部12bと同一形状を有する。右生地部11aと左生地部11bは、面対称をなす向きで並べられて、対向する互いの縫い代が中央縦方向CVに沿って縫い付けられる。右生地部11aと左生地部11bは、例えばフラットシーム、3本針、2本針を使って縫い付け、あるいは、圧着テープ等でつなぎ合わせられる。
【0039】
第1生地11と第2生地12は、縁部の全周にとられた縫い代で縫い合わせられる。また、
図1に示すように、第1生地11と第2生地12(
図1では不図示)は、第1の芯部材20の左右両端より若干外側にて、中央縦方向CVと平行に縫い合わされる。
【0040】
上述のように、第1の芯部材20は、第2生地12に縫い付けられているため、生地部10に対する第1の芯部材20のずれは実質的に生じない。
【0041】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、向きなどについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0042】
上記実施の形態では、生地部10は第1生地11と第2生地12の二層構造であるが、生地部10をより多層の構造としたものの他、第1生地11または第2生地12の何れか一方を省略した一層構造とし、第1の芯部材20を縫い付けつつ圧着テープ等で隠した構成も本発明の範疇である。
【0043】
また、第1の芯部材20は、第2生地12に縫い付けられる場合を説明したが、第1生地11及び第2生地12の少なくとも一方に縫い付けられていればよい。
【0044】
また、第2の芯部材30を省略した構成としてもよいが、第2の芯部材30を設けた方が生地部10の上端部中央UC付近が装用者Wの鼻にフィットする等の上述した理由により有利となる。
【符号の説明】
【0045】
1 :マスク
10 :生地部
11 :第1生地
12 :第2生地
13 :湾曲部
20 :第1の芯部材
22 :棒体
24 :ポリエステル糸(糸)
30 :第2の芯部材
CV :中央縦方向