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特開2022-25940ハイブリッド加熱成形機及びこれを用いたソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法
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  • 特開-ハイブリッド加熱成形機及びこれを用いたソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025940
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ハイブリッド加熱成形機及びこれを用いたソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20220203BHJP
   B29C 44/06 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B29C44/00 G
B29C44/06
B29C44/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129145
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】591209361
【氏名又は名称】DAISEN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】細澤 孝晃
【テーマコード(参考)】
4F214
【Fターム(参考)】
4F214AB02
4F214AE06
4F214AH17
4F214AK01
4F214AK02
4F214AP05
4F214UA21
4F214UB01
4F214UB22
4F214UC24
4F214UD11
4F214UD13
4F214UQ12
4F214UR21
(57)【要約】
【課題】金型を従来よりも高温の領域まで迅速に加熱することができるハイブリッド加熱成形機及びこれを用いたソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のハイブリッド加熱成形機は、熱可塑性発泡樹脂粒子を成形するための開閉可能な金型と、金型の加熱冷却手段と、プレス成形手段とを備え、金型の加熱冷却手段の加熱源として、蒸気と加熱オイルを併用したものである。また本発明の製造方法は、開閉可能な金型の内部に熱可塑性発泡樹脂粒子を充填し、金型を蒸気で加熱して発泡成形し、金型を加熱オイルで更に加熱したうえ、成形体の少なくとも一部をプレスして溶融させ、ソリッド部を成形する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性発泡樹脂粒子を成形するための開閉可能な金型と、金型の加熱冷却手段と、プレス成形手段とを備え、
金型の加熱冷却手段の加熱源として、蒸気と加熱オイルを併用したことを特徴とするハイブリッド加熱成形機。
【請求項2】
金型の加熱冷却手段の冷却源として、減圧冷却と冷却オイルを併用することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド加熱成形機。
【請求項3】
開閉可能な金型の内部に熱可塑性発泡樹脂粒子を充填し、金型を蒸気で加熱して発泡成形し、金型を加熱オイルで更に加熱したうえ、成形体の少なくとも一部をプレスして溶融させ、ソリッド部を成形することを特徴とするソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
蒸気による加熱領域を80℃から170℃までの低温領域とし、加熱オイルによる加熱領域を150℃以上の高温領域としたことを特徴とする請求項3に記載のソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造技術に関するものであり、特に、ハイブリッド加熱成形機及びこれを用いたソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂成形体は、開閉可能な一対の金型により形成されるキャビティの内部に、熱可塑性発泡樹脂粒子を充填し、加熱することにより発泡させて製造されている。その加熱源としては専ら蒸気(水蒸気)が用いられており、特許文献1に示されるように、キャビティの内部に水蒸気を直接吹き込む方法と、特許文献2に示されるように、金型の背面に形成されたチャンバに水蒸気を吹き込む方法があり、両者を併用することも行われている。
【0003】
しかし一般の工場で用いられている水蒸気の圧力は0.8MPa以下であるから、水蒸気による加熱は最高でも150~170℃程度であり、それよりも高温に加熱することは不可能であった。
【0004】
また、発泡樹脂成形体の特定部位にソリッド部(非発泡部)を形成したいとの要求があり、特許文献3では同一の金型を用いて発泡部と非発泡部を2段階で成形している。しかしこの方法では原料の充填、成形、溶融、別原料の充填、成形という複雑な工程を必要とするうえ、溶融のために蒸気を利用しているので高温で速やかに溶融させることができず、生産性を高めることが難しいという問題があった。
【0005】
なお、金型に電熱ヒータや電磁加熱装置を組み込んでより高温に加熱することも考えられるが、金型への熱伝達にやはり時間がかかるうえに、金型の形状が変わる毎に熱源の配置を変更しなければならず、実用化は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-53763号公報
【特許文献2】特開平11-309734号公報
【特許文献3】特開2019-1011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決して、金型を従来よりも高温の領域まで迅速に加熱することができるハイブリッド加熱成形機及びこれを用いたソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明のハイブリッド加熱成形機は、熱可塑性発泡樹脂粒子を成形するための開閉可能な金型と、金型の加熱冷却手段と、プレス成形手段とを備え、金型の加熱冷却手段の加熱源として、蒸気と加熱オイルを併用したことを特徴とするものである。
【0009】
なお、金型の加熱冷却手段の冷却源として、減圧冷却と冷却オイルを併用することができる。
【0010】
また上記の課題を解決するためになされた本発明のソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法は、開閉可能な金型の内部に熱可塑性発泡樹脂粒子を充填し、金型を蒸気で加熱して発泡成形し、金型を加熱オイルで更に加熱したうえ、成形体の少なくとも一部をプレスして溶融させ、ソリッド部を成形することを特徴とするものである。
【0011】
なお、蒸気による加熱領域を80℃から170℃までの低温領域とし、加熱オイルによる加熱領域を150℃以上、300℃程度までの高温領域とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハイブリッド加熱成形機は、金型の加熱源として、水蒸気と加熱オイルとを併用する。加熱オイルは発火点、蒸発点以下であれば高温に加熱することができ、例えばシリコーンオイルを用いれば170℃を大きく上回る300℃程度にまで安全に加熱することができる。このため本発明によれば金型を従来よりも従来よりも高温の領域まで迅速に加熱することができる。
【0013】
また本発明のソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法によれば、加熱オイルによる加熱とプレスを組み合わせることによって、成形体の少なくとも一部を溶融させ、ソリッド部を成形することができ、成形時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のハイブリッド加熱成形機を示す断面図である。
図2】実施形態のハイブリッド加熱成形機を示す断面図である。
図3】成形体の断面図である。
図4】他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1図2は、実施形態のハイブリッド加熱成形機を示す断面図である。10は下部固定プレート、11は上部固定プレート、12はそれらの間を結ぶ複数本の垂直支柱、13は垂直支柱12に沿って昇降可能な移動プレートである。上部固定プレート11の上部にはモータ14、減速機15、軸受16が配置されており、送りねじ17を正転・逆転させることができる。移動プレート13にはこの送りねじ17と螺合するナットが設けられており、送りねじ17によって移動プレート13を昇降させることができる。これらはプレス成形手段を構成するものである。
【0016】
移動プレート13の下面には上部チャンバ18を介して金型の一方である上型19が取り付けられている。図1に示すように、この上部チャンバ18には蒸気供給用の配管20が設けられており、加熱源として、蒸気を供給することができる。このほか上部チャンバ18には、ドレン用配管、バキューム用配管、空気供給用配管等も接続することができる。さらに上型19を貫通して、熱可塑性発泡樹脂粒子(原料ビーズ)の供給管(図示略)が設けられている。上部チャンバ18は金型(上型19)の加熱冷却手段を構成するものであるが、上記の構造は従来と同様である。
【0017】
下部固定プレート10の上には、下部チャンバ21を介して他方の金型である下型22が取り付けられている。これらの上型19と下型22とは開閉可能な一対の金型を構成し、それらの間にキャビティが形成される。なおこの実施形態では下部チャンバ21は下部の固定枠23と上部の移動枠24とから構成され、下型22を移動枠24とともに紙面に垂直方向に移動可能となっているが、この点は本発明の要部ではなく、下部チャンバ21を一体型とし、下型22を固定型としても差し支えない。
【0018】
下部チャンバ21は金型(下型22)の加熱冷却手段を構成するものであり、オイル供給用の配管25が設けられており、オイルタンク26から加熱オイルを供給できるようになっている。オイルの種類は特に限定されるものではないが、この実施形態では蒸発点、引火点が高く300℃程度まで安全に加熱できるシリコーンオイルを用いている。下型22の下面は下部チャンバ21内に供給された加熱オイルに接触することにより、150℃から300℃に加熱される。前記したように、蒸気による加熱領域は最高でも150~170℃程度であるが、加熱オイルによる加熱領域は150℃以上、300℃程度までの高温領域とすることができる。
【0019】
このように本発明のハイブリッド加熱成形機は、金型の加熱冷却手段の加熱源として、蒸気と加熱オイルを併用したものである。加熱オイルは蒸気よりも高温まで金型を加熱することができる。また加熱オイルは液体であるから、金型の形状にかかわらず金型表面に密着フィットさせることができ、熱伝達効率を高めることができる。なお、オイルタンク26におけるオイルの加熱は、シーズヒータやIHヒータ等の任意の加熱源を用いて行うことができる。
【0020】
次に上記のハイブリッド加熱成形機によるソリッド部を持つ発泡樹脂成形体の製造方法を説明する。
まず、従来と同様に上型19と下型22とを密着させてそれらの間にキャビティを形成し、熱可塑性発泡樹脂粒子(原料ビーズ)を充填する。そして上部チャンバ18に蒸気を供給して上型19を加熱し、熱可塑性発泡樹脂粒子を発泡させて図3に示すように発泡樹脂からなる成形体Wを成形する。この技術は従来と変わりがなく、必要に応じて下部チャンバ21にも蒸気、あるいは加熱オイルを供給して下型22を加熱することができる。この段階における加熱領域は80℃から170℃までの低温領域である。
【0021】
なお、下部チャンバ21に加熱オイルを供給しても下型22の温度は瞬時に上昇することはないので、この発泡成形に支障はない。しかしこの実施形態のように、下型22を移動枠24とともに移動可能とし、発泡成形を別のステーションで行うようにすれば、発泡成形用ステーションの下部チャンバ21を上部チャンバ18と同様、蒸気のみによって加熱することもできる。
【0022】
このようにして発泡樹脂からなる成形体Wを成形したうえ、下型22を加熱オイルで更に高温に加熱し、成形体Wの少なくとも一部をプレスして溶融させ、図3に示すようにソリッド部Sを成形する。この実施形態では送りねじ17によって移動プレート13を下降させ、図2に示すように成形体Wをプレスする。熱可塑性発泡樹脂粒子は高温領域まで加熱された下型22に押圧され、溶融してソリッド部Sが形成される。このように、本発明のハイブリッド加熱成形機を用いれば、金型の加熱冷却手段の加熱源として蒸気と加熱オイルを併用したことにより、金型をより高温まで加熱することができ、ソリッド部Sの成形時間を短縮化することができる。
【0023】
その後、金型を冷却したうえでソリッド部Sが形成された成形体Wを取り出す。上型19の冷却は従来と同様に上部チャンバ18内を真空とし、減圧冷却することができる。また下型22の冷却には、冷却された低温オイルを用いることもできる。このように減圧冷却と冷却オイルを併用することができるが、この実施形態のように、下型22を移動枠24とともに移動可能とした場合には、下部チャンバ21のないステーションに移動して空冷することも可能である。このように、加熱冷却手段の冷却源はオイルに限定されるものではない。
【0024】
以上に説明した実施形態では、上型19を下降させてプレス成形を行ったが、図4に示す他の実施形態のように、下部チャンバ21と下型22を押圧用移動プレート40上に搭載し、押圧用モータ41で送りねじ42を回転させて押圧用移動プレート40を上昇させ、下型22によって成形体Wをプレスすることも可能である。この実施形態ではプレス成形手段を下側に配置したが、下部チャンバ21に加熱オイルが供給される構成は、前記の実施形態と同様である。
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、金型の加熱冷却手段の加熱源として、蒸気と加熱オイルを併用したことにより、金型を従来よりも従来よりも高温の領域まで迅速に加熱することができる。また、加熱オイルによる加熱とプレスを組み合わせることによって、ソリッド部Sを持つ成形体Wを生産性よく製造することが可能となる。このようにして製造されたソリッド部Sを持つ成形体Wは、例えば吸音性を備えた自動車用部品などに用いられる。
【符号の説明】
【0026】
10 下部固定プレート
11 上部固定プレート
12 垂直支柱
13 移動プレート
14 モータ
15 減速機
16 軸受
17 送りねじ
18 上部チャンバ
19 上型
20 蒸気供給用の配管
21 下部チャンバ
22 下型
23 固定枠
24 移動枠
25 オイル供給用の配管
26 オイルタンク
40 押圧用移動プレート
41 押圧用モータ
42 送りねじ
W 成形体
S ソリッド部
図1
図2
図3
図4