IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブイ・テクノロジーの特許一覧

特開2022-25960焼成メタルインク配線製造方法および焼成メタルインク配線製造方法で製造された製品
<>
  • 特開-焼成メタルインク配線製造方法および焼成メタルインク配線製造方法で製造された製品 図1
  • 特開-焼成メタルインク配線製造方法および焼成メタルインク配線製造方法で製造された製品 図2
  • 特開-焼成メタルインク配線製造方法および焼成メタルインク配線製造方法で製造された製品 図3
  • 特開-焼成メタルインク配線製造方法および焼成メタルインク配線製造方法で製造された製品 図4
  • 特開-焼成メタルインク配線製造方法および焼成メタルインク配線製造方法で製造された製品 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025960
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】焼成メタルインク配線製造方法および焼成メタルインク配線製造方法で製造された製品
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/12 20060101AFI20220203BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H05K3/12 610D
H05K3/00 N
B05D7/24 303C
B05D3/06 Z
B05D3/02 E
B05D7/24 301M
B05D5/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129181
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田ノ岡大輔
(72)【発明者】
【氏名】杜忠雷
(72)【発明者】
【氏名】裴克
(72)【発明者】
【氏名】伊藤行男
【テーマコード(参考)】
4D075
5E343
【Fターム(参考)】
4D075BB37Z
4D075BB48Z
4D075BB93Z
4D075CA22
4D075CB38
4D075DC24
4D075EA10
4D075EA33
4D075EC10
5E343AA02
5E343AA34
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB75
5E343DD12
5E343ER32
5E343ER44
5E343ER45
5E343FF05
5E343FF11
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】焼成時の熱の影響を低減させること。
【解決手段】本発明は、次の工程を含む焼成メタル配線製造方法。(工程1)基板に配線状にメタルインクを塗布する工程。(工程2)次いで、前記メタルインクの一部領域に焼成用レーザを照射し前記メタルインクを焼成する工程。(工程3)次いで、少なくとも前記一部領域を含む広範囲な領域に赤外光を照射し、前記焼成用レーザよりも低温で焼成を行い、焼成メタルインク配線とする工程。とすることで課題を解決できた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む焼成メタル配線製造方法。
(工程1)基板に配線状にメタルインクを塗布する工程。
(工程2)次いで、前記メタルインクの一部領域に焼成用レーザを照射し前記メタルインクを焼成する工程。
(工程3)次いで、少なくとも前記一部領域を含む広範囲な領域に赤外光を照射し、前記焼成用レーザよりも低温で焼成を行い、焼成メタルインク配線とする工程。
【請求項2】
次の工程を含む製品の製造方法。
(工程1)基板に配線状にメタルインクを塗布する工程。
(工程2)次いで、前記メタルインクの一部領域に焼成用レーザを照射し前記メタルインクを焼成する工程。
(工程3)次いで、少なくとも前記一部領域を含む広範囲な領域に赤外光を照射し、前記焼成用レーザよりも低温で焼成を行い、焼成メタルインク配線とする工程
(工程4)次いで、焼成された前記焼成メタルインク配線を含む基板を他の部材と共に組立てて、製品を製造する工程。
【請求項3】
請求項1の焼成メタルインク製造方法で製造された焼成メタルインク配線。
【請求項4】
請求項2の製品の製造方法で製造された製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルインクを用いた焼成メタルインク配線の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムなどを主材料とする配線など、配線の素材には様々な材料が用いられてきた。近年、回路の微細化に伴い、より低抵抗の金属を主材料とする配線にシフトしつつある。特許文献1のように配線を基板上に形成するのに適した、銀、金、銅といった金属ナノ粒子を溶剤に分散したメタルインクが開発されている。そして、メタルインクを用いた場合、焼成工程が伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-43346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属はナノ粒子となることにより融点が劇的に下がることが知られている。その性質を利用して、メタルインクを焼成し、溶剤を蒸発させ、金属ナノ粒子をバルク化することで導電性を有する配線となる。しかしながら、融点が低いとはいえ、焼成工程により基板や接点・電極に対する熱の影響が懸念されてきた。
本発明は、焼成時の熱の影響を低減させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の工程を含む焼成メタル配線製造方法。
(工程1)基板に配線状にメタルインクを塗布する工程。
(工程2)次いで、前記メタルインクの一部領域に焼成用レーザを照射し前記メタルインクを焼成する工程。
(工程3)次いで、少なくとも前記一部領域を含む広範囲な領域に赤外光を照射し、前記焼成用レーザよりも低温で焼成を行い、焼成メタルインク配線とする工程。
とすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、基板や接点・電極に与える焼成時の熱の影響を低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】メタルインクの焼成工程の説明図(A)焼成用レーザの走査による焼成メタルインク配線の焼成工程概念図(B)メタルインクの拡大図(C)焼成メタルインクの拡大図
図2】焼成工程の説明図
図3】焼成メタルインク配線抵抗値と基板温度の関係を示すグラフ
図4】実施例2の説明図(A)TFT液晶パネルの正面図(B)、図4(A)の枠内の拡大図
図5図4(B)A-A間の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における
同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
以下、焼成前のメタルインクは単に「メタルインク2」といい、焼成後のメタルインクは「焼成メタルインク23」や「焼成メタルインク配線27」などということで区別する。
【0010】
実施例を説明する前に、一般的なメタルインクの焼成工程にいて説明する。
[メタルインクの焼成工程]
図1はメタルインク2の焼成工程の説明図であり。図1(B)メタルインク2の拡大図である。メタルインク2は、金、銀、銅などの導電性の高い金属をナノ粒子化し、有機溶媒26に溶かしたものである。金属はナノ粒子化することにより融点が劇的に下がる。金属ナノ粒子24の表面には、有機物25が吸着されており、この有機物25により、金属ナノ粒子24同志が凝集することなく有機溶媒26中に分散される。図1(A)は焼成用レーザ3の走査による焼成メタルインク配線27の焼成工程概念図である。メタルインク2に焼成用レーザ3を当てて加熱すると、有機溶媒26が蒸発するとともに、金属ナノ粒子24表面の有機物25が脱離し、金属ナノ粒子24同志が凝集し、溶融することで金属となり導電性を持つようになる。図1(C)は焼成メタルインク23の拡大図であり、互いに融着し金属塊となっていることが分かる。焼成用レーザ3が照射された部位のみが、焼成され焼成メタルインク23となり、導電性を有する焼成メタルインク配線27となる。焼成用レーザ3は、矢印で示すようにメタルインク2に沿って左右に走査され、メタルインク2を焼成し、焼成メタルインク配線27を作ってゆく。
【0011】
メタルインク2の吸収波長は、金属の種類と粒径によって異なるが実施例1で用いる20nm粒径の銀を主成分とする金属ナノ粒子24を含むメタルインク2では、400nm付近である。そのため、焼成用レーザ3は、当該吸収波長付近の波長を有する連続発振半導体レーザである。焼成用レーザ3からのレーザ光はメタルインク2の表面21に当たり、表面21から焼成が始まる。(図5参照)
ところが、基板7や有機膜71は熱の影響を受けやすく、熱の影響を受けないように焼成用レーザ3の照射を制御することが難しかった。また、前述したようにメタルインク2は表面から焼成が開始されるため、接点112や電極とメタルインク2が接触する接触面1121まで焼成が進んでいるか判断することが難しい。熱が十分伝わっていないと、メタルインク2が接触面1121で不十分な焼成状態となり、抵抗値が上がることや、断線状態となることもあり得る。
【0012】
(実施例1)
実施例1は、TFT液晶パネル1を用いるものである。TFT液晶パネル1は、基板7の上に有機膜71が設けられており、熱に対して脆弱である。
まず、本発明のメタル配線製造方法の概略を説明する。図2は、焼成工程の説明図であり、図2(A)は、メタルインク2を塗布する前の状態を示している。
【0013】
(工程1)
工程1は、基板に配線状にメタルインク2を塗布する工程である。
TFT液晶パネル1上にメタルインク2を配線状に塗布する。メタルインク2を配線状に塗布する手段は様々あり、例えば、インクジェット印刷を利用する方法などがある。実施例1では、後述するように除去用レーザ(図示せず)でメタルインク2を配線状に塗布する手段を採用している。
メタルインク2は、分散剤である有機物25で修飾したAg(銀)金属ナノ粒子24をトルエン(有機溶媒26)に溶解したものを準備した。Agの平均粒子径は20nm、メタルインク2の重量濃度は40%である。上記メタルインク2を、ディスペンサにより滴下した。このとき位置決めはノズル先端付近を観察可能な顕微鏡ユニットを利用した
TFT液晶パネル1の上に滴下され広範囲に広がったメタルインク2は、除去用レーザ(図示せず)により不要な部分が弾き飛ばされて、配線状になって残る。除去用レーザは、226nmのフェムト秒パルスレーザであり、ガルバノスキャンミラーおよび20倍対物レンズにより走査し、不要なメタルインク2を弾き飛ばした。これにより、メタルインク2は、配線状になってTFT液晶パネル1の上に残った。
この状態を図示したのが図2(B)である。
【0014】
(工程2)
工程2は、工程1に次いで、前記メタルインク2の一部領域31に焼成用レーザ3を照射しメタルインク2を焼成する工程である。
焼成用レーザ3は、使用したメタルインク2が波長400nm近傍で吸収が大きいため、波長405nmの連続発振LD(半導体レーザ)を用いた。
メタルインク2の一部領域31は、メタルインク2の上であればどこでもよい。また、図2(C)では、説明のため一部領域31を1箇所にしたが、一部領域31は、メタルインク2上で離間して多数設けられることが好ましい。
一部領域31に向かって焼成用レーザ3を照射することで、メタルインク2にレーザ焼成領域231が作られる。メタルインク2は、表面から焼成が始まる。TFT液晶パネル1の有機膜71への熱の影響を極力避けるために、一部領域31の表面のみ(底部まで及ばない)にレーザ焼成領域231ができるように、焼成用レーザ3を照射した。ただし、レーザ焼成領域231が、TFT液晶パネル1に到達するまで焼成することを妨げるものではない。
【0015】
(工程3)
工程3は、工程2に次いで、少なくとも一部領域31を含む広範囲な領域に赤外光4を照射する工程である。赤外光4による焼成温度は、焼成用レーザ3よりも低温である。赤外光4によりメタルインク2は焼成され、焼成メタルインク配線27となる。
使用する赤外光4は、赤外光ランプを使用し、TFT液晶パネル1上の広い領域にわたり照射した。
図2(D)は赤外光4の照射を開始した直後を表している。赤外光4による加熱温度は、焼成用レーザ3よりも低温であるため、メタルインク2の表面からゆっくりと焼成が始まる。しかし、レーザ焼成領域231は既に金属化しているため、熱伝導率が非常に高くなっている。レーザ焼成領域231からあらゆる方向に向かって熱伝導41が起こる。これにより、メタルインク2の内部にも赤外光焼成領域232が拡大して行く。
赤外光焼成領域232が拡大して行く様子を示しているのが図2(E)である。レーザ焼成領域231から熱伝導41した熱により、赤外光焼成領域232が拡大して行くようすが良くわかる。
赤外光4による加熱温度は、焼成用レーザ3よりも低温であるため、TFT液晶パネル1の有機膜71に与える影響は少ない。また、熱伝導41により焼成が促進されるため、短時間で全領域が焼成メタルインク23となり、焼成メタルインク配線27が完成する。
焼成用レーザ3が照射される一部領域31を、メタルインク2の上に離散的に多数設けると、多数のレーザ焼成領域231を中心として多数の領域で同時に焼成が促進されるためより速く焼成が完了する。
【0016】
(工程4)
工程4は、工程3に続いて焼成メタルインク配線27を含む基板1を他の部材と共に組立てて、製品を製造する工程である。
工程3で製造された焼成メタルインク配線27を含むTFT液晶パネル1は、他の部材と共に組み立てられ、TFT液晶ディスプレイ(図示せず)となり、製品が製造される。
【0017】
(実験データ)
図3は実験データであって、焼成メタルインク配線抵抗値と基板温度の関係を示すグラフである。〇は焼成用レーザ3+赤外光4(本発明の実施例1)を表し、△は赤外光4のみによる焼成(比較例)を示す。このとき赤外光4の照射エリアはφ1mm程度であり、4つのサンプルを同様に加熱した。
赤外光4のみによる焼成(比較例)に対して、焼成用レーザ3+赤外光4(本発明の実施例1)による焼成はTFT液晶パネル1に与える温度の影響か小さく、また、焼成速度が上がっていることが分かるであろう。
【0018】
また、図3の実験とは別に焼成用レーザ3+赤外光4(本発明の実施例1)と赤外光4のみによる焼成(比較例)を対比する実験も行った。焼成用レーザ3+赤外光4(本発明の実施例1)では明らかに全体が白く金属化していることが分かった。比較例と実施例1の焼成メタルインク配線27は、プローブ抵抗測定器でそれぞれ抵抗値を測定された。焼成メタルインク配線27は、Cu配線を繋ぐように設けられており、抵抗測定プローブは、一方のプローブをCu配線に接触させ、他方のプローブを焼成メタルインク配線27と接触させ、Cu配線と焼成メタルインク配線27の接触抵抗を測定抵抗値に含むようにした。比較例では導電性なし(測定不可)であったのに対し、実施例1のものはいずれも抵抗値10[Ω]以下であった。これは本方法が短時間で、より小さな熱負荷で焼結できることを示している。
【0019】
本発明のメタル配線製造方法により製造された焼成メタルインク配線27は、焼成メタルインク配線27の表面から観ると分からないが、断面を観ると、焼成用レーザ3で焼成がなされたレーザ焼成領域231と赤外光4で焼成がなされた赤外光焼成領域232との境界面に微妙な色の差があり、他のメタル配線製造方法で焼成されたものと区別が付く。しかし、その色の変化は、使用するメタルインク2に含まれる金属粒子の種類や粒径等、焼成温度等により多種多様である。
【0020】
(実施例2)
図4は実施例1の説明図であり、図4(A)は、TFT液晶パネル1の正面図である。TFT液晶パネル1には、電界効果型トランジスタ12を結ぶ数々の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)が設けられており、図示はしていないが基板7の上には有機膜71などが設けられている。
図4(B)は、図4(A)の枠内の拡大図であり、説明のため電界効果型トランジスタ12などの部品を図示していない。前述したように、TFT液晶パネル1の基板7には有機膜71や電界効果型トランジスタ12などが設けられている。メタルインク2を配線として使用する場合、低温で焼成可能とはいえ近くに有機膜71や電界効果型トランジスタ12があるので、それらに影響を与える可能性があった。従来の焼成メタルインク配線製造方法において、温度の影響を避けるため焼成用レーザ3の照射時間を短くすることもできるが、焼成用レーザ3が照射された部位、すなわち、メタルインク2の表面から焼成が始まるため、一見すると焼成されているように見えても、内部は焼成されていない可能性が残る。
【0021】
実施例2は、LCD(液晶ディスプレイ)-TFT-Gate基板の例である。電界効果型トランジスタ12の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)付近に欠陥111(断線)が存在し、焼成メタルインク配線27で作成した迂回回路15で修復する例である。
図4(B)から観て取れるように、TFT液晶パネル1の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)には欠陥111(断線)がある。このままでは不良品として廃棄されてしまう。実施例2では、欠陥111を修復し製品歩留まりを良くするために、熱影響を受けやすい電界効果型トランジスタ12を避けるように、焼成メタルインク配線27による迂回回路15を設けることとした。欠陥111が生じた原因は色々とあり得るが、銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)を作成する際にゴミが付着したことによる場合があり得、欠陥111を直接繋ぐこともできるが、ゴミ等が残っている可能性があるためあえて迂回回路15としている。もちろん、直接欠陥111を直接繋いで配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)を修復してもよいことは言うまでもない。
メタルインク2を用いた迂回回路15は図示していない焼成用レーザ3で焼成され、焼成メタルインク配線27となっている。配線11(他の配線)は銅を主成分とする。
メタルインク2は、銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)を覆うように設けられる。これにより、焼成メタルインク配線27は、他の配線11との接点112を持つこととなる。
銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)と焼成メタルインク配線27との接点112は、焼成後確実に導電性が担保されるように、敢えて広い領域にわたって設けられている。接点112において、焼成メタルインク配線27の上には、凹部28が設けられており、下の銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)が見えるまで掘り下げられている。凹部28は、必ずしも下の配線11(他の配線)が露出するまで深く設けられる必要ない。凹部28の底部282にメタルインク2が残っている場合、接点112の面積が、銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)が見えるまで掘り下げられている場合より大きくなる。また、掘り下げられている分、銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)への熱伝導も、銅の配線11が見えるまで掘り下げたときと同様に期待できる。
【0022】
[凹部の機能]
凹部28は、焼成前のメタルインク2に対して、226nmのフェムト秒パルスレーザからなる除去用レーザ(図示せず)を用いて作成される。焼成前、メタルインク2は銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)との接点112の全面を覆うように銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)に付着されている。除去用レーザをガルバノスキャンミラーおよび20倍対物レンズにより走査し、メタルインク2を弾き飛ばし、くりぬくように凹部28を形成する。
図5は、図4のA-A間の断面図である。また、太い矢印は焼成用レーザ3のレーザ光を表している。波線の矢印は、熱伝導41を表している。焼成用レーザ3からのレーザ光はメタルインク2の表面21に当たり、表面21から焼成が始まる。加えて、凹部28の側壁281もレーザ光が当たり加熱されるため、当該側壁281からも焼成が始まる。さらに、凹部28の底部の銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)が露出した部分もレーザ光が当たり加熱されるため、熱伝導性の良い銅の配線11(他の配線)を伝わりメタルインク2と銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)の接触面1121も加熱され、焼成が始まる。
単に焼成メタルインク配線27とするだけなら、完全に焼成されなくとも表面付近が十分焼成されていれば、配線としての機能を果たし得る。しかし、接点112は、配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)とメタルインク2の接触面1121まで焼成が及ばないと、接点112として機能しなくなる。最悪の場合、断線状態となる。
最終的に、接点112を覆うメタルインク2は、満遍なく焼成が進み、良好な導電性を示すようになる。また、様々な方向から焼成が進むため、短時間で焼成が終了するので、基板7に与える熱負荷を軽減できる。さらに、焼成が終了した直後、凹部28があるため、即座に放冷され基板7への熱負荷を軽減できる。
【0023】
工程1によりにTFT液晶パネル1に迂回回路15となる形状にメタルインクを2塗布する。このとき、TFT液晶パネル1に形成されている銅の配線11(焼成メタルインク配線27ではない他の配線)との接点112となる部分の焼成前のメタルインク2に凹部28を形成する。
次いで工程2を行う。その際、一部領域31をメタルインク2と他の配線11との接点112とし、焼成用レーザ3を照射して焼成メタルインク23とする。工程2で接点112を完全に焼成してしまってもよいが、完全に焼成されていなくてもよい。
次いで、工程3を行い、一部領域31である接点112付近を含む広範囲な領域に赤外光4を照射して、迂回回路15となるメタルインク2を焼成メタルインク配線27となるよう焼成する。
以上のように、実施例2の焼成メタルインク配線27は、他の配線11を覆う接点112を有しており、接点112における焼成メタルインク配線27の表面に、特有の凹部28が形成された接点構造物9(接点112)となる。
【0024】
さらに、実施例2では凹部28を設けない場合より、銅の配線11(他の配線)とメタルインク2の接触面1121や凹部28の側壁281や底部282も加熱されるため、確実に焼成がなされる。
【0025】
最後に、工程4を行い、焼成メタルインク配線27を含むTFT液晶パネル1を他の部材と共に組立てて、ディスプレイ(製品)を製造する。
【0026】
また、これまで他の配線11との接点112について説明してきたが、電極(図示せず)との接点112にも適用できる。電極に適用した場合、焼成メタルインク配線27は、電極を覆う接点112が作られることとなる。
また、凹部28は、接点112や電極に限らず、メタルインク2の配線部分にも作ることができる。焼成メタルインク配線27の表面に凹部28が設けられたものが製造され、TFT液晶パネル1に与える熱の影響を軽減できる。さらに、焼成時間が短くなる。
【0027】
以上、本発明に係る実施例1及び実施例2を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施例は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 TFT液晶パネル
11 配線(他の配線)
111 欠陥
112 接点
1121 接触面
12 電界効果型トランジスタ
15 迂回回路
2 メタルインク
21 表面
23 焼成メタルインク
231 レーザ焼成領域
232 赤外光焼成領域

24 金属ナノ粒子
25 有機物
26 有機溶媒
27 焼成メタルインク配線
28 凹部
281 側壁
282 底部
3 焼成用レーザ
31 一部領域
4 赤外光
41 熱伝導
7 基板
71 有機膜
9 接点構造物
図1
図2
図3
図4
図5