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  • 特開-試料導入用アダプタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025961
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】試料導入用アダプタ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/18 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
G01N30/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129182
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099841
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 恒彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 寛之
(57)【要約】
【課題】樹脂等の可撓性材料を用いて形成されかつ処理材が充填されたカラムに対し、試料を注入するための注射器を簡単にかつ安定に接続できるようにする。
【解決手段】カラム30の片端31に対して装着可能な試料導入用アダプタ1は、片端31を挿入可能でありかつ片端31の外周面に当接可能な隆起15を内周面に有する筒状の第1部材10と、片端31からカラム30内に挿入するに従って片端31の径を徐々に拡大するようカラム30の内周面に当接可能なテーパー部23を備えた、注射器先端の排出管を挿入可能でありかつテーパー部23を貫通する案内孔24を有する第2部材20とを備えている。第2部材20は、その螺子部22を第1部材10側の螺子溝14にねじ留めすることで、テーパー部23と隆起15との間に片端31を挟んだ状態で第1部材10に対して固定される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料を用いて形成されかつ処理材が充填されたカラムの片端に対して装着可能な、前記処理材により処理する試料を管体を通じて前記カラム内へ注入するときに前記管体を案内するための試料導入用アダプタであって、
前記片端を挿入可能でありかつ前記片端の外周面に当接可能な隆起を内周面に有する筒状の第1部材と、
前記片端から前記カラム内に挿入するに従って前記片端の径を徐々に拡大するよう前記カラムの内周面に当接可能なテーパー部を備えた、前記管体の先端部を挿入可能でありかつ前記テーパー部を貫通する案内孔を有する第2部材と、
を備え、
前記第2部材は、前記テーパー部と前記第1部材の前記隆起との間に前記片端を挟んだ状態で前記第1部材に対して固定可能である、
試料導入用アダプタ。
【請求項2】
前記第2部材は、前記第1部材に対してボルト・ナット関係のねじ留めにより固定可能である、請求項1に記載の試料導入用アダプタ。
【請求項3】
前記隆起は、前記第1部材と同心の環状に形成されており、前記片端の挿入側の傾斜角度が反対側の傾斜角度よりも小さく設定されている、請求項1または2に記載の試料導入用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料導入用アダプタ、特に、可撓性材料を用いて形成されかつ処理材が充填されたカラムの片端に対して装着可能な、処理材により処理する試料を管体を通じてカラム内へ注入するときに管体を案内するための試料導入用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
処理材を用いて分析対象となる種々の液状の試料の精製処理等の前処理をする場合において、処理材をカラム内に充填し、当該カラムへ試料を注入することで処理材と試料とを接触させる方法を採用することがある。この場合、注入器を用いて試料をカラムへ注入することになるが、試料を安定にかつ安全にカラムへ注入するために、カラムの端部に対して注入器を安定的に接続する必要がある。
【0003】
注入器として注射器を用いる場合、例えば、非特許文献1等に規定されたルアーコネクタといわれる形態が採用される。オス型のルアーコネクタの場合、通常、カラムの端部に試料導入用のねじ孔を設けるとともに、注射器先端の排出管部分の外周にねじ溝を設け、カラム側のねじ孔に対して排出管側のねじ溝をねじ留めすることでカラムに対して注射器の排出管を接続するものである。これによれば、カラムに対して注射器が固定されることから、注射器からの試料をカラム内へ安定に注入することができる。
【0004】
上述のように試料を処理するためのカラムは、再利用が困難であって使い捨てにされるものが一般的であることから、通常は特許文献1(本文献ではルアーコネクタを「ルアーロック」と表現している。)に記載のようにポリプロピレン樹脂などの比較的に安価な樹脂製のものが求められる。しかし、そのような樹脂製のカラムであっても、ルアーコネクタに対応する必要があると、注射器の排出管などの試料注入用の管体側の形状に適応した多種類の専用品を用意する必要があることから、結果的に高価なものとなる。また、ルアーコネクタは、注射器とカラムとの接続部分に試料の一部が付着しやすく、それが分析結果の信頼性を損なう可能性もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ISO 594-1:1986 注射器、注射針及び他の医用機器の6%(Luer)テーパ付き円錐フィッティング-第1部:一般要求事項
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-80042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、樹脂等の可撓性材料を用いて形成されかつ処理材が充填されたカラムの片端に対し、試料を注入するための管体を簡単にかつ安定に接続できるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、可撓性材料を用いて形成されかつ処理材が充填されたカラムの片端に対して装着可能な、処理材により処理する試料を管体を通じてカラム内へ注入するときに管体を案内するための試料導入用アダプタに関するものである。この試料導入用アダプタは、カラムの上記片端を挿入可能でありかつ当該片端の外周面に当接可能な隆起を内周面に有する筒状の第1部材と、上記片端からカラム内に挿入するに従って上記片端の径を徐々に拡大するようカラムの内周面に当接可能なテーパー部を備えた、管体の先端部を挿入可能でありかつテーパー部を貫通する案内孔を有する第2部材とを備えている。第2部材は、テーパー部と第1部材の隆起との間に上記片端を挟んだ状態で第1部材に対して固定可能である。
【0009】
第1部材内にカラムの片端を挿入すると、当該片端の外周面が第1部材の内周面の隆起に当接する。この状態でカラムの片端内に第2部材のテーパー部を挿入すると、当該テーパー部がカラムの片端の内周面に当接し、片端を内部から外方向へ徐々に押圧する。これにより、片端は径が徐々に拡大するように変形し、外周面が隆起15に圧接する。この結果、カラムは、片端が第2部材のテーパー部と第1部材の隆起との間に挟まれた状態になり、試料導入用アダプタに対して固定される。このようにカラムの片端が装着された試料導入用アダプタの第2部材の案内孔に管体を挿入し、この管体を通じてカラム内に試料を注入すると、この試料はカラム内の処理材に接触し、処理される。
【0010】
本発明に係る試料導入用アダプタにおいて、第2部材は、例えば、第1部材に対してボルト・ナット関係のねじ留めにより固定可能である。
【0011】
また、第1部材の隆起は、例えば、第1部材と同心の環状に形成されており、上記片端の挿入側の傾斜角度が反対側の傾斜角度よりも小さく設定されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る試料導入用アダプタは、可撓性材料を用いて形成されかつ処理材が充填されたカラムの片端に対して装着すると、カラムに対して試料を注入するための管体を簡単にかつ安定に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の一形態に係る試料導入用アダプタの分解斜視図。
図2】前記形態に係る試料導入用アダプタの第1部材の縦断面図。
図3図2のIII部拡大図。
図4】前記形態に係る試料導入用アダプタの第2部材の縦断面図。
図5】前記カラムに対して前記第1部材を装着した状態の縦断面斜視図。
図6】前記カラムに対して前記第1部材および前記第2部材を装着した状態の縦断面斜視図。
図7図6のVII部拡大図。
図8】前記形態に係る試料導入用アダプタを装着したカラムに対して注射器を用いて試料を注入する状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図を参照し、本発明に係る試料導入用アダプタの一形態を説明する。試料導入用アダプタ1は、カラム30内に充填された処理材32により処理する液状の試料を管体を通じてカラム30内へ注入するときに管体を案内するためのものである。
【0015】
試料は、例えば、環境試料(大気、土壌、海水、河川、湖沼水または浚渫土等)、産業廃棄物(焼却施設で発生する焼却灰や飛灰または工場廃水等)または農水産品などからヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いてダイオキシン類を抽出した溶液である。このような抽出溶液をダイオキシン類分析用の試料とする場合、処理材32の例としては当該抽出溶液を精製処理するための精製材が挙げられる。精製材としては、抽出溶液に含まれる夾雑成分を分解して吸着除去可能なものであり、例えば、国際公開2010/073818号に記載された硫酸シリカゲル層と硝酸塩シリカゲル層との積層体が挙げられる。
【0016】
試料導入用アダプタ1を適用可能なカラム30は、樹脂材料、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂またはフッ素樹脂からなるものであって可撓性を有するものであり、通常は円筒状のものであるが、図1に示すように、少なくとも片端31側が円筒状に開口するように形成されているものであればよく、他端側が他の所要形状に形成されていてもよい。なお、上述のようなダイオキシン類の抽出溶液を硫酸シリカゲル層と硝酸塩シリカゲル層とを積層した精製材により処理するような場合、カラム30は抽出溶液と精製材との化学反応に対して安定なフッ素樹脂を用いて形成されたものが好ましい。カラム30内に試料を注入するための管体は、特に限定されるものではないが、例えば、注射器先端の排出管部分や送液ポンプから延びる送液用のチューブが想定される。
【0017】
試料導入用アダプタ1は、図1に示すように、第1部材10と第2部材20とを備えている。第1部材10および第2部材20は、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂または繊維強化プラスチックなどの硬質樹脂やステンレス鋼、アルミニウム合金または真鍮などの合金材料を用いて形成されたものである。
【0018】
第1部材10は、筒状の部材であり、図2に示すように内周面から中心方向へ水平に伸びる、第1部材10と同心の環状に形成された突出部11により内部が上部12と下部13とに区画されている。上部12は、内周面に螺子溝14が設けられ、ナット状に形成されている。下部13は、下端側からカラム30の片端31を挿入可能であり、突出部11の近傍の内周面において、第1部材10と同心の環状に形成された隆起15が設けられている。隆起15は、図3に示すように、下部13の下方側(カラム30の片端31の挿入側)の傾斜角度θが反対側の傾斜角度θ’よりも小さく設定されている。
【0019】
第2部材20は、第1部材10と同心の円柱状の部材であって、抓み部21、抓み部21の直下に形成された螺子部22および螺子部22の直下に形成されたテーパー部23を有している。また、第2部材20は、中心部において厚み方向に貫通する案内孔24を有している。
【0020】
抓み部21は、第1部材10と直径が略同じに設定されており、案内孔24に頂点部分が連絡する逆円錐状に形成された凹部25が設けられている。この凹部25は、試料を注入するための管体の先端部を案内孔24内へ円滑に案内するためのものである。螺子部22は、第1部材10の螺子溝14に対応する螺子溝が外周面に形成されたボルト状のものであり、下端部22aが第1部材10の突出部11に当接するよう抓み部21よりも小径に設定されている。テーパー部23は、螺子部22側の基部から下端にかけて径が緩やかに縮小しており、下端部の外径がカラム30の片端31内に挿入可能なようにカラム30の内径と略同じに設定されている。
【0021】
試料導入用アダプタ1を用いてカラム30内へ試料を注入するときは、カラム30の片端31に対して試料導入用アダプタ1を装着する。ここでは、先ず、図5に示すように、第1部材10の下部13内にカラム30の片端31を挿入し、その先端部を突出部11に当接させる。片端31の先端部は、下部13内への挿入途上で隆起15に突き当たるが、隆起15の下方側の傾斜角度θが小さく設定されていることから隆起15の表面上を滑らかに移動し、突出部11に到達し得る。
【0022】
次に、カラム30に装着された第1部材10に対し、第2部材20を装着する。ここでは、第2部材20の抓み部21を手で保持し、テーパー部23側をカラム30の片端31内に挿入するよう、図6に示すように第1部材10の螺子溝14に対して螺子部22をねじ留めする。これにより、第1部材10と第2部材20とが一体化する。螺子溝14に対して螺子部22をねじ留めする際、テーパー部23は、カラム30の内周面に当接し、片端31を内部から外方向へ徐々に押圧する。この結果、片端31は、径が徐々に拡大するように変形し、図7に示すように、隆起15に圧接する。このようにテーパー部23と隆起15との間に挟まれた片端31は、隆起15の突出部11側の傾斜角度θ’が下方側の傾斜角度θよりも大きく設定されていることから第1部材10の下部13から滑り抜ける方向へ移動しにくく、下部13内で安定に固定される。
【0023】
試料導入用アダプタ1が装着されたカラム30内に注射器40を用いて液状の試料を注入するときは、図8に示すように、試料を吸引した注射筒41の先端から突出する試料の排出管42を試料導入用アダプタ1の案内孔24内に挿入する。排出管42は、その先端が案内孔24を通過してカラム30内に到達し得るよう、案内孔24内へ十分に押し込むのが好ましい。押子43を注射筒41内へ押し込むことで排出管42から排出された試料は、カラム30内の処理材32に浸透し、所要の処理がされる。注入した試料が処理材32と反応するような場合、例えば、既述のようなダイオキシン類の抽出溶液を硫酸シリカゲル層と硝酸塩シリカゲル層との積層材料により精製処理するような場合、試料と処理材32との反応により試料の注入中にカラム30の内圧が高まることがある。また、試料の粘性が高い場合等、処理材32側で目詰まりが生じたときは、押子43の押し込み圧を高める必要があることからカラム30の内圧が高まることがある。これらの場合、カラム30の内圧は試料導入用アダプタ1をカラム30からの脱離方向、すなわち、試料導入用アダプタ1がカラム30から滑り抜ける方向に押圧することになる。内圧により試料導入用アダプタ1がカラム30から脱離すると、その際に飛散する試料により作業者が汚染を受ける危険性があるが、試料導入用アダプタ1は、第2部材20のテーパー部23と第1部材10の隆起15とでカラム30の片端31を挟んで安定に固定していることから、内圧が高まってもカラム30から脱離しにくい。
【0024】
カラム30から試料導入用アダプタ1を取り外すときは、第2部材20の抓み部21を逆転させることで螺子部22を第1部材10の螺子溝14から取り外し、第2部材20を第1部材10から分離する。そして、第1部材10の下部13に挿入されたカラム30の片端31を抜きとる。
【0025】
試料導入用アダプタ1は、Oリングやフェルールのような変形性のシール部材を消耗品として用いるものではないことから、カラム30から取り外した後に第1部材10および第2部材20を適宜洗浄することで繰り返し再利用することができる。
【0026】
上述の実施の形態に係る試料導入用アダプタ1は、第1部材10の下部13の内周面において隆起15が環状に設けられているが、隆起15は下部13の内周面の同一の円周上において断続的に形成されていてもよい。また、第2部材20は、その螺子部22を第1部材10の螺子溝14にねじ留めすることで第1部材10に対して固定されているが、第1部材10と第2部材20とは他の方法で固定することもできる。例えば、第2部材10の螺子部22に相当する部位および第1部材10の上部12の内周面において、それぞれ、嵌合片および嵌合溝を設け、第1部材10に対して第2部材20のテーパー部23を挿入して回転したときに嵌合片が嵌合溝に嵌合する構造を採用することができる。また、第2部材20は、クランプを用いて第1部材10に対して固定することもできる。
【符号の説明】
【0027】
1 試料導入用アダプタ
10 第1部材
14 螺子溝
15 隆起
20 第2部材
22 螺子部
23 テーパー部
24 案内孔
30 カラム
31 片端
32 処理材
42 排出管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8