(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026010
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】金属蒸着層を有する紙容器用原紙
(51)【国際特許分類】
B32B 15/12 20060101AFI20220203BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20220203BHJP
B32B 1/02 20060101ALI20220203BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B32B15/12
B32B29/00
B32B1/02
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129270
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】沓名 稔
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
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3E086BA13
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3E086BB51
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3E086BB74
3E086CA01
3E086CA11
3E086DA08
4F100AA08A
4F100AB01B
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4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、プラスチックの使用量を低減することができる紙容器であって、特に、保温性と保冷性に優れた包装用紙を提供することにある。
【解決手段】
基紙の表面に直接形成された真空蒸着金属層を有し、前記基紙の密度が0.55~1.25g/cm
3の範囲であり、前記真空蒸着金属層の表面電気抵抗率が4.0Ω/sq以上の範囲である紙容器用原紙。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の表面に直接形成された真空蒸着金属層を有し、前記基紙の密度が0.55~1.25g/cm3の範囲であり、前記真空蒸着金属層の表面電気抵抗率が4.0Ω/sq以上の範囲であることを特徴とする紙容器用原紙。
【請求項2】
前記真空蒸着金属層の上に水系ヒートシール性樹脂を含むヒートシール層を設け、前記ヒートシール層の塗工量が0.5~10g/m2の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の紙容器用原紙。
【請求項3】
前記真空蒸着金属層に用いられる金属がアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の紙容器用原紙。
【請求項4】
前記水系ヒートシール性樹脂がアイオノマーであることを特徴とする請求項2に記載の紙容器用原紙。
【請求項5】
請求項1~4に記載の紙容器用原紙を前記真空蒸着金属層が内側面となるように形成してなる紙容器。
【請求項6】
基紙を用意する工程と、真空蒸着に用いる金属を用意する工程と、前記金属を用いて前記基紙表面に真空蒸着で真空蒸着金属層を直接形成する工程とを有し、前記基紙の密度が0.55~1.25g/cm3の範囲であり、前記真空蒸着金属層の表面電気抵抗率が4.0Ω/sq以上の範囲であることを特徴とする紙容器用原紙の製造方法。
【請求項7】
前記真空蒸着金属層の上に水系ヒートシール性樹脂を含む塗工液を0.5~10g/m2の範囲で塗工、乾燥してヒートシール層を形成する工程を有することを特徴とする請求項6に記載の紙容器用原紙の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4に記載の紙容器用原紙を前記真空蒸着金属層が内側面となるように形成する工程を有する紙容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸着層が設けられ、保冷性、保温性を有する紙容器用原紙に係り、特に、製品そのものに加えて製造工程におけるプラスチック使用量も低減した紙容器用原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量は4億トン/年を超えると言われ、その中でも包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックゴミの原因の一つになっている。包装容器に使用されるプラスチックとしては、飲料のボトル等に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)、レジ袋、容器のラミネートに使用されるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が特に多く使用されている。
【0003】
プラスチックは自然環境下に放置しても半永久的に分解しないことに加え、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化して生態系に深刻な悪影響を与えている。特にプラスチックゴミによる海洋の汚染は著しく、その回収は不可能と言われている。今後、地球環境のためにもプラスチックの使用量を低減することが求められている。
【0004】
アルミニウムなどの金属膜は赤外線を反射することが知られており、このような性質から保温性容器や保冷性容器にも用いられる。アルミニウムなどの金属膜を用いることで、容器内部の赤外線が外部に逃げない、もしくは容器外部の赤外線が内部に入らず、これにより容器に保温性や保冷性を持たせることが可能となる。このような保温性容器や保冷性容器の素材としては、PETフィルムなどのプラスチック製フィルムに、アルミニウムなどの金属の真空蒸着処理を行うことで金属膜を設けたフィルムを用いることが一般的である(特許文献1参照)。この種のフィルムは、その手軽さからレジャーや土産品用の包装、日常の食料品の包装などに多量に使用され廃棄されている。
【0005】
プラスチックゴミ問題に対する即効性のある対策手段の一つとして、金属膜を設ける基材をプラスチック製フィルムから紙に変更することが提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、当該文献では紙に金属薄膜層を設ける手段としては、PETフィルムに金属の真空蒸着処理を行い金属薄膜層を設けて紙の外表面に転写させた後にPETフィルムのみを剥離することで紙の表面に金属薄膜層を設けて樹脂でラミネートする手法を採用している。このため、最終製品におけるプラスチック使用量は減少しているものの、製造工程においては未だ多量のプラスチックを使用しており、依然としてプラスチックの使用量は十分に低減されておらず、早急且つ直接的にプラスチックの使用を低減する手段が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-089545号公報
【特許文献2】特開2000-335629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、最終製品及び製造工程におけるプラスチック使用量を低減することができ、保冷性及び保温性を有する紙容器用原紙を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的とするところは、最終製品及び製造工程におけるプラスチック使用量が低減され、保冷性及び保温性を有する紙製箱容器、及び紙製袋容器を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る紙容器用原紙は、基紙の表面に直接形成された真空蒸着金属層を有し、前記基紙の密度が0.55~1.25g/cm3の範囲であり、前記真空蒸着金属層の表面電気抵抗率が4.0Ω/sq以上の範囲であることを特徴とする。ここで真空蒸着金属層を設けるのは片面・両面のいずれでもよい。
【0011】
そして、このような構成によれば、プラスチックフィルム等を用いずに基紙の表面に直接金属膜を設けるため、従来のプラスチックフィルムに金属蒸着層を設けるタイプの紙容器用原紙や、プラスチックフィルムに金属蒸着層を設けた後に基紙に転写させるタイプの紙容器用原紙と比較すると、製品及び製造段階でのプラスチック使用量を大幅に削減することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記真空蒸着金属層の上に水系ヒートシール性樹脂を含むヒートシール層を設け、前記ヒートシール層の塗工量が0.5~10g/m2の範囲であってもよい。このような構成とすることで、ポリエチレンやポリプロピレンなどのヒートシール性フィルムを用いずにヒートシール性を付与することができ、プラスチックの使用量を大幅に削減することができる。また、真空蒸着金属層と水系ヒートシール樹脂のヒートシール層を組み合わせることで、各層を単独で設けた場合と比べて保温性、保冷性、耐水性、耐油性により優れた紙容器用原紙となる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記真空蒸着金属層に用いられる金属がアルミニウムであってもよい。このような構成とすることで、より保温性、保冷性に優れた紙容器用原紙となる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記水系ヒートシール性樹脂がアイオノマーであってもよい。このような構成とすることで、よりヒートシール性、耐水性、耐油性に優れた紙容器用原紙となる。
【0015】
本発明は、紙容器、及び紙容器の製造方法に関する発明としても捉えることができる。本発明に係る紙容器は、前述の各紙容器用原紙を前記真空蒸着金属層が内側面となるように形成したものである。このような構成とすることで、製造工程や製品におけるプラスチック使用量が低減されながらも、保温性や保冷性に優れた紙容器が得られる。
【0016】
なお本発明の紙容器においては、紙容器にプラスチックフィルムを含まないことが好ましい。このような構成とすることで、プラスチックの使用量を大幅に削減することができる。また一般的に、紙はプラスチックに比べて熱を伝えにくい性質を有するため、プラスチックフィルムを使用する場合に比べて、同じ厚みの容器であっても保温性、保冷性により優れた紙容器となる。
【0017】
また本発明は、紙容器用原紙の製造方法としても捉えることができる。本発明に係る紙容器用原紙の製造方法は、基紙を用意する工程と、真空蒸着に用いる金属を用意する工程と、前記金属を用いて前記基紙表面に真空蒸着で真空蒸着金属層を直接形成する工程とを有し、前記基紙の密度が0.55~1.25g/cm3の範囲であり、前記真空蒸着金属層の表面電気抵抗率が4.0Ω/sq以上の範囲である。このような方法で製造することで、紙容器用原紙の製造工程と製品におけるプラスチック使用量が低減され、しかも保温性、保冷性に優れた紙用用原紙を製造することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記真空蒸着金属層の上に水系ヒートシール性樹脂を含む塗工液を0.5~10g/m2の範囲で塗工、乾燥してヒートシール層を形成する工を有していてもよい。このような方法で製造されることで、プラスチックの使用量を大幅に削減しながらも、より保温性、保冷性に優れた紙容器用原紙を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、プラスチック使用量が低減された紙容器を製造することが可能である。本発明の紙容器原紙を用いた容器製品であれば、仮に自然界にゴミとして不適切に放出された場合であっても、自然環境に与えるプラスチックゴミとしての悪影響を小さくすることが可能であり、プラスチックゴミ問題の解決の一助となる。なお、本発明における紙容器は、例えば、袋、包装紙、薄紙状包装紙、フィルム状包装紙、箱、トレイ、ケース、器、封筒等の包装容器全般に加工可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例及び比較例に係る紙容器の構成と物性を示す図表(その1)である。
【
図2】実施例及び比較例に係る紙容器の構成と物性を示す図表(その2)である。
【
図3】実施例及び比較例に係る紙容器の構成と物性を示す図表(その3)である。
【
図4】参考例に係る紙容器の構成と物性を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0022】
本発明の紙容器用原紙は、紙の表面に直接形成された真空蒸着金属層を有する。真空蒸着とは、金属や金属酸化物などの成膜材料を真空環境下で高周波誘導加熱、抵抗加熱、電子ビーム加熱などの方法で加熱することで溶融・蒸発または昇華させて、対象となる媒体(本願であれば紙)の表面に蒸発若しくは昇華した原子や分子を付着・堆積させることで薄膜を形成する方法である。真空蒸着に用いる金属、金属酸化物としては、アルミニウム、銀、金、銅、チタン、ニッケル、クロム、錫、インジウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタンなどが挙げられ、これらの中でも安価で赤外線反射に優れるという理由からアルミニウムが好ましい。
【0023】
ここで「紙の表面」とは、紙の原料として一般的に使用されている繊維、顔料、樹脂などが露出している表面をいう。または紙の表面とは、紙の繊維上に顔料と樹脂多孔性の塗工層を設けた面でもよい。前記「直接形成された」とは、紙の表面に真空蒸着層が接触する状態で形成された状態をいう。紙の表面に直接形成された真空蒸着金属層を有することで、保温性と透気性に優れた紙容器を提供することができる。前記金属層は赤外線反射性に優れる一方で、比較的に熱伝導率が高い。すなわち熱を伝えやすく、赤外線反射で保持している熱量以上に熱伝導による熱の損失が上回る恐れがあり、保温性、保冷性が低下する恐れがある。紙表面に塗工層がなく繊維が露出している面に金属蒸着層を直接形成することが好ましい。紙表面に露出している繊維表面に金属蒸着層が直接形成することで、金属層の容器外側方向、金属層の平面方向への熱伝導経路が比較的に少なくなり、熱伝導の影響が少なくなるため、より保温性、保冷性に優れると考えられる。また、紙の繊維はプラスチックフィルムに比べて熱伝導率が低いため、金属層からの熱伝導が抑えられるため、より保温性、保冷性に優れる。金属層の厚みとしては200~1000オングストロームの範囲であることが好ましく、400~600オングストロームの範囲であればより好ましい。金属層の厚みをこのような範囲とすることで、より保温性、保冷性に優れた紙容器用原紙となる。
【0024】
本発明の紙容器用原紙においては、真空蒸着金属層を有する基紙の密度を0.55~1.25g/cm3の範囲とする。基紙の密度がこの範囲であれば十分な保温性、保冷性が得られる。理由は定かではないが、密度が低下すると基紙の通気性が上がる一方で内部に貯えられる空気量が増加して空気が断熱材として働くため、密度を上述の範囲とすることで優れた保温性、保冷性が得られると考えられる。その一方で基紙の密度が低下し過ぎると、基紙内部の空気量が増加したことにより空気の熱対流が生じ、逆に保温性、保冷性が低下するおそれがある。基紙の密度が1.25g/cm3を上回った場合には、基紙内部の空気量が十分ではないために、紙容器用原紙の保温性、保冷性が低下するおそれがある。一方、基紙の密度が0.55g/cm3を下回った場合には、基紙の通気性が上がりすぎるために内部に貯えられる空気量は増加しても保温性、保冷性が低下するおそれがある。したがって、基紙の密度が0.55~1.25g/cm3の範囲であれば、基紙内部の空気層の断熱材としての効果と、空気の熱対流による熱の損失のバランスが最適に保たれて、保温性、保冷性に優れた基紙になると考えられる。基紙の密度は、0.65~1.25g/cm3であればより好ましく、0.75~1.20g/cm3であればさらに好ましい。なお、基紙の密度は、パルプの種類や配合割合、填料、内添薬品、パルプの叩解条件、ウェットプレス圧、キャレンダー圧、塗工層有無などによってコントロール可能である。
【0025】
本発明の紙容器用原紙は、真空蒸着金属層の表面電気抵抗率が4.0Ω/sq以上の範囲である。金属蒸着膜の素材として一般的に用いられているアルミニウムなどの金属は導体であり電気抵抗率が非常に低いため、PETフィルム表面などの極めて平滑な面に真空蒸着金属膜を直接形成した場合には、その表面電気抵抗率は0.1Ω/sq以下になると考えられる。一方、基紙表面に真空蒸着金属膜を直接形成した場合には、紙の表面は繊維、顔料、樹脂などが露出していて平滑性が低いために真空蒸着金属膜は不連続に形成されるため、PETフィルムの場合よりも表面電気抵抗率が高くなるものと推測される。真空蒸着金属層の表面電気抵抗率が4.0Ω/sq以上の範囲であれば、保温性、保冷性に優れた紙容器用原紙となる。一方、表面電気抵抗率が4Ω/sqを下回ると、十分な赤外線遮蔽効果が得られずに保温性、保冷性の劣るものとなる。本発明において表面電気抵抗率は4.0~50.0Ω/sqの範囲であることが好ましく、10.0~50.0Ω/sqの範囲であればより好ましい。理由は定かではないが、表面電気抵抗率がこの範囲であれば保温性、保冷性により優れたものとなる。これは真空蒸着金属膜による赤外線反射による遮熱と、熱伝導による熱損失のバランスがとれるためではないかと考えられる。
【0026】
表面電気抵抗率の測定方法としては、JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に記載の測定方法によって測定が可能である。表面電気抵抗率は、真空蒸着金属層の厚み、基紙の平滑性、パルプの種類、填料、内添薬品、パルプの叩解条件、ウェットプレス圧、キャレンダー圧、塗工層の有無、などによってコントロール可能である。
【0027】
本実施形態の紙容器用原紙を用いて紙容器を作成する際には、真空蒸着金属層が容器の内側面となるように形成することが好ましい。容器の内側面とは包装によって保護する対象物が存在する側の面を言う。真空蒸着金属層が容器の内側面側となるようにを配することで、包装対象物から発生する赤外線や容器の外側からの赤外線が反射され、包装対象物の温度が保たれる。真空蒸着金属層はその原紙において容器の内面側にあればよく、例えば原紙が2重になった容器の場合には、外側の原紙の内面側に真空蒸着層があってもよいし、内側の原紙の内面側、即ち内側面に真空蒸着層があってもよい。
【0028】
本実施形態の紙容器は、プラスチックフィルムを含まないことが好ましい。ここで言うプラスチックフィルムとは、延伸フィルム、キャストフィルムなどの紙とラミネートして使用するプラスチックフィルムだけでなく、プラスチックペレットなどを溶融して紙の上に直接押し出して製造する溶融押し出しラミネート法によるプラスチックフィルムも含む。なお、プラスチックを水系に分散、溶解させた水系プラスチック樹脂を、コーターで塗工して製造された水系プラスチックフィルムは、ここで言うプラスチックフィルムに含まない。紙にバリア性、強度物性、耐水性、耐油性などの各種性能を付与するためにプラスチックフィルムをラミネートすることは一般的に行われているが、プラスチックフィルムは薄いものでも15μm程度の厚みを有している。プラスチックフィルムをラミネートした紙製品を離解する場合には通常の紙製品を離解する設備ではなく専用設備が必要となる場合があるため、これらのプラスチックフィルムは紙容器を紙原料として再利用する際に、主に離解する工程で障害になるおそれがある。最終製品である紙容器がプラスチックフィルムを含まないものであれば、紙容器の紙原料としての再利用性(リサイクル性)が向上する。なお、水系プラスチック樹脂をコーターで塗工して製造された水系プラスチックフィルムは、フィルムの厚みが1~10μm程度であり、紙原料として再利用する際に障害となるおそれは少ない。
「10μm」という値がプラスチックフィルムとコーター塗工で重複します。問題のない範囲(コーター塗工)と問題のある範囲(プラスチックフィルム)の数値は一致しない方がよいと考えます。可能であれば、いずれかの数値をご修正ください。
【0029】
本実施形態の紙容器用原紙は、透気度が50000秒以下であることが好ましく、3~30000秒の範囲であればより好ましく、3~10000秒の範囲であればさらに好ましい。透気度がこの範囲であれば、保温性、保冷性に優れ、かつ結露や蒸れによる内容物の劣化も防ぐことができる。透気度をこのような範囲とすることで上述の効果が得られる理由は定かではないが、基紙内部の空気量が適切になることで、紙容器内部の余剰な水蒸気を外部に逃がすことができるためであると推測される。
【0030】
先にも述べたように、基紙内部の空気は断熱材として働いていると考えられるが、空気が過度に自由に動ける状態であると熱対流が発生しやすくなり保温性が低下するおそれがある。その一方で、基紙内部の空気が動けない状態になると、紙容器内部の余剰な水蒸気を外部に逃がすことができないため、結露や蒸れによる内容物の劣化が発生するおそれがある。紙容器の保温性、保冷性を保ちつつ、紙容器内部の余剰な水蒸気を外部に逃がすためには、透気度が上記範囲にあることが好ましい。透気度が50000秒を超えると、紙容器内部の余剰な水蒸気を外部に逃がすことができずに結露や蒸れにより内容物の劣化が発生するおそれがある。なお、ここで言う透気度はJIS P 8117:2009「透気度及び透気抵抗度試験方法」で規定されている王研式透気度試験機による透気度である。透気度は、パルプ種類、填料、内添薬品、パルプの叩解条件、ウェットプレス圧、キャレンダー圧、塗工層有無などによってコントロール可能である。
【0031】
本実施形態の紙容器用原紙においては、真空蒸着金属膜が形成される基紙表面の王研式平滑度が5000秒以下であることが好ましい。5~3000秒の範囲であればより好ましく、5~500秒の範囲であればさらに好ましい。この範囲とすることで、より保温性、保冷性に優れたものとなり、真空蒸着金属層を形成した後の透気度も適切な範囲となる。ここで言う透気度はJIS P 8117:2009「紙および板紙 平滑度試験方法 王研式」で規定されている王研式平滑度試験機による平滑度である。平滑度は、パルプ種類、填料、内添薬品、パルプの叩解条件、ウェットプレス圧、キャレンダー圧、塗工層有無などによってコントロール可能である。
【0032】
本実施形態の紙容器においては、熱伝導率が1.5W/m・K秒以下であることが好ましく、1.0W/m・K以下であればより好ましい。熱伝導率がこの範囲であれば、より保温性、保冷性に優れた紙容器となる。熱伝導率は、例えば迅速熱伝導率計(京都電子工業製、QTM-D3)で測定可能である。迅速熱伝導率計の測定方法としては、例えば精密工学会誌2004年70巻4号P.523に記載の方法によって測定が可能である。熱伝導率は、パルプ種類、填料、内添薬品、パルプの叩解条件、ウェットプレス圧、キャレンダー圧、塗工層有無などによってコントロール可能である。
【0033】
本発明の紙容器用原紙において真空蒸着金属層に用いる金属としては、従前より紙容器用に用いられる各種金属を用いることが可能であるが、これらの中でも安価で赤外線反射能に優れるためアルミニウムが好ましい。また、本発明において真空蒸着金属層は空気中の酸素などで酸化された層を含んでもよく、例えばアルミニウムが酸化され不動態となった酸化アルミニウム層を含んでもよい。また必要に応じて真空蒸着金属層上に高分子などで構成された保護層を設けてもよく、保護層とヒートシール層の双方を設ける場合には保護層の上にヒートシール層を設けることが好ましい。
【0034】
本発明の紙容器においては、真空蒸着金属層の上に水系ヒートシール性樹脂を含む塗工層(以降、「ヒートシール層」と表記することがある)を設けることが好ましい。ここで「水系ヒートシール性樹脂」とは、熱可塑性樹脂であって、水系に分散、溶解して、コーターで塗工可能なものを言う。また「ヒートシール性」とは、溶融、軟化することで同樹脂の間や異種物質との間で接着が可能な性質を言う。本発明で用いることができる水系ヒートシール性樹脂としては例えば、アイオノマー樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂などがあげられ、これらの中でもアイオノマー樹脂がヒートシール性や金属蒸着層への定着性が優れており好ましい。
【0035】
本発明において、ヒートシール層の塗工量は0.5~10.0g/m2とすることが好ましい。ヒートシール層の塗工量が0.5g/m2未満の場合には十分なヒートシール強度を満足できないおそれがある。逆にヒートシール層の塗工量が10g/m2を超える場合には、ヒートシール強度の面からは過剰品質であることに加え、プラスチック削減効果に乏しくなる。なお、本発明の包装用紙において、ヒートシール層は、例えば網状、島状、線状など、ヒートシールによる接着に必要な部分にのみ設けられていてもよいし、基紙表面の全面を覆うように設けられていても良い。
【0036】
ヒートシール層がアイオノマー樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂のいずれかを含むことで、ヒートシール性に加えて耐水性や撥水性に優れ、水分や油分を含んだ内容物を入れるために適した紙容器用原紙となる。またヒートシール層を2層以上とすることにより、さらに優れた撥水性と撥油性を付与することができ、プラスチックフィルムラミネート紙と同様かそれに近い特性を得ることができる。ヒートシール層を2層以上設ける場合には撥水性と撥油性が更に向上するため、基紙に最も近い最下層のヒートシール層の塗工量を他のヒートシール層の合計塗工量よりも多くなるように構成することが好ましい。
【0037】
本発明においてヒートシール層を設ける方法は特に限定するものではなく、一般に使用されている塗工装置が使用できる。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。また水系ヒートシール性樹脂を含む塗工液の乾燥方法としては、赤外線乾燥機、熱風乾燥機、ドラム型乾燥機等の公知の各種乾燥装置を用いることができる。熱源に直接接触する必要のない赤外線乾燥機、もしくは熱風乾燥機が好ましい。これらの装置を用いて真空蒸着金属層の上に水系ヒートシール性樹脂を含む塗工液を塗工する工程と、塗工液を乾燥して塗工層を形成する工程により製造されることが好ましい。
【0038】
本実施形態の紙容器においては、前記真空蒸着金属層を真空蒸着により紙表面に直接形成する工程を含む方法により製造されることが好ましい。真空蒸着により紙表面に直接形成する工程とは、真空蒸着装置内で紙基材へ真空蒸着処理を行う方法である。紙表面に露出している繊維表面に直接真空蒸着して真空蒸着層を形成することで、繊維表面に沿って金属層が付着、堆積するため、金属層の平面的な繋がりが少なくなるため通気性に優れ、かつ保温性と保冷性に優れた紙容器を製造することができる。プラスチックフィルムに真空蒸着金属層を形成し、接着剤を介して紙と真空蒸着層面を貼り合わせた後、プラスチックフィルムのみを剥離して真空蒸着金属層を紙へ転写する方法が一般的に用いられているが、この方法ではプラスチックを多量に消費するだけでなく、金属層の熱伝導率が大きく保温性、保冷性に劣る恐れがある。また透気度が著しく高くなり、内容物が劣化する恐れがある。
【0039】
真空蒸着金属層を形成する方法としては、特に限定するものではなく、一般に使用されている真空蒸着装置を用いることができる。例えば抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、電子ビーム加熱方式などの真空蒸着装置が挙げられる。スパッタリングや化学蒸着に比べて安価で、処理効率が高く、生産性に優れる。
【0040】
本実施形態において紙容器の赤外線透過率は5%以下であることが好ましい。保温性、保冷性に優れる。5%を超えると保温性、保冷性が低下する恐れがある。赤外線透過率は、
【0041】
本実施形態において用いる紙基材としては特に限定するものではなく、パルプを主成分とする公知の紙基材を用いることができる。紙基材の主成分となるパルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプを用いることができる。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。例えば、パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)をパルプ中90~100質量部使用することができる。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。また、例えば、適切なパルプの叩解度としては、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、200~700mlCSF、例えば、350~620mlCSFである。
【0042】
紙基材としては填料を含有するものも使用できる。填料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、焼成クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウムを例示できる。紙基材中の填料含有量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、例えば、1~30質量部である。例えば、パルプの乾燥質量100質量部に対して、軽質炭酸カルシウムを1~10質量部含むとよい。
【0043】
また、紙基材には、パルプと填料に加えて、各種公知の製紙用添加剤が含まれていてもよい。製紙用添加剤としては、例えば、サイズ剤、湿潤紙力増強剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などがある。また、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子が塗布されていてもよい。
【0044】
紙基材の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機で製造できる。また、本発明においては、紙基材としては単層抄きでも多層抄きでも、複数層の貼合品であってもよい。
【0045】
紙基材には、多孔質の塗工層が1層以上設けられていてもよく、例えば、顔料と接着剤を含有する顔料塗工層が設けられたものであってもよい。顔料塗工層中の顔料としては、一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の顔料を用いることができ、例えば、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等)、カオリン(クレーを含む)、焼成クレー、タルク、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料、又はアクリル、スチレン、塩化ビニル、ナイロンそのものや、これらを共重合して得られる有機顔料(いわゆるプラスチックピグメント)が挙げられる。例えば、顔料としては、20~40質量部のカオリンと60~80質量部の重質炭酸カルシウムの組み合わせを使用することができる。また、接着剤も一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の接着剤を用いることができ、例えば、ブタジエン系共重合ラテックス、架橋剤変性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、等の合成樹脂類等を例示できる。顔料塗工層中の顔料と接着剤の配合割合は特に限定されるものではないが、顔料100質量部に対し接着剤5~50質量部とすることが好ましい。例えば、接着剤としては、顔料100質量部に対して、1~5質量部のリン酸エステル化澱粉と5~15質量部のスチレンブタジエンラテックスの組み合わせを使用することができる。顔料塗工層には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲で各種助剤を含んでもよく、例えば、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、耐水化剤、分散剤、流動変性剤、紫外線吸収剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、pH調節剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤が含まれていてもよい。また、このような顔料塗工層の塗工量としては、例えば、基紙の片面あたり、固形分換算で、2~40g/m2である。
【0046】
本実施形態において、紙容器の坪量は特に限定するものではないが、例えば10~1000g/m2である。バリア性、撥水性及び撥油性を高度に備え、軟包装にも使用できる紙容器の坪量としては、15~500g/m2が好ましく、15~300g/m2がより好ましい。
【0047】
本実施形態においては、紙基材の真空蒸着金属層を設ける紙の表面の平滑度が10秒以上であることが好ましい。より好ましくは10~5000秒である。紙の表面の平滑度がこの範囲にあると、紙の表面の微細な凹凸により、真空蒸着金属層の熱伝導を抑えることができるため、保温性、保冷性に優れる。紙基材の平滑度を高める方法は、特に限定するものではなく、例えば、スーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、シューニップキャレンダー、ソフトキャレンダーなどの公知のキャレンダー装置によるキャレンダー処理が挙げられる。
【実施例0048】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0049】
(実施例1)
(基紙の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス400mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ(図表においては「LBKP」とする)60部、550mlcsfの針葉樹晒クラフトパルプ(図表においては「NBKP」とする)40部、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP-121、奥多摩工業社製)5部、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック30T、日本食品加工社製)0.2部、中性ロジンサイズ(商品名:CC167、星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量48g/m2の原紙を作製した。この原紙にサイズプレスによって、酸化澱粉(商品名:MS3800、日本食品化工社製)を両面あたりの乾燥塗布量が2g/m2となるように塗布した。さらにキャレンダーによって、密度0.75g/cm3となるように処理し、坪量50g/m2の基紙を得た。
【0050】
(紙容器用原紙の作製)
上記で得られた基紙の片面に、真空蒸着機でアルミニウムを膜厚50nmとなるように真空蒸着処理を行い紙容器用原紙を得た。
【0051】
(紙容器の作製)
上記で得られた紙容器用原紙を、真空蒸着層が容器の内側になるように、袋状の紙容器に加工し、底面が3cm×5cm、高さ10cm、開口部が上部にある角柱型の袋状の紙容器を作製した。
【0052】
(実施例2)
実施例1においてカナディアンスタンダードフリーネス400mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ60部を90部に変更し、550mlcsfの針葉樹晒クラフトパルプ40部を10部変更した以外は実施例1と同様にして紙容器を作製した。
【0053】
(実施例3)
実施例1においてカナディアンスタンダードフリーネス400mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ60部を0部に変更し、550mlcsfの針葉樹晒クラフトパルプ40部を100部変更し、キャレンダーによって密度0.95g/cm3とした以外は実施例1と同様にして紙容器を作製した。
【0054】
(実施例4)
実施例2においてサイズプレスによる酸化澱粉(商品名:MS3800、日本食品化工社製)を両面あたりの乾燥塗布量を2g/m2から6g/m2に変更し、キャレンダー処理によって密度1.00g/cm3とし、坪量54g/m2の基紙を得た以外は実施例2と同様にして紙容器を作製した。
【0055】
(実施例5)
(基紙の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス400mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ60部、550mlcsfの針葉樹晒クラフトパルプ40部、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP-121、奥多摩工業社製)5部、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック30T、日本食品加工社製)0.2部、中性ロジンサイズ(商品名:CC167、星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量48g/m2の原紙を作製した。この原紙にサイズプレスによって、酸化澱粉(商品名:MS3800、日本食品化工社製)を両面あたりの乾燥塗布量が2g/m2となるように塗布した。さらにキャレンダーによって、密度0.75g/cm3となるように処理し、坪量50g/m2の基紙を得た。
【0056】
(顔料塗工層用塗工液の調製)
カオリン(商品名:コンツアー1500、イメリス社製)30部及び重質炭酸カルシウム(商品名:カービラックス、イメリス社製)70部に分散剤(商品名:アロンT-50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作製した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(商品名:MS4600、日本食品加工社製)2部及びスチレンブタジエンラテックス(商品名:PA0372、日本エイアンドエル株式会社)8部、更に水を加えて分散させ、固形分濃度50%の顔料塗工層用塗工液を調製した。
【0057】
(紙基材の作製)
上記で得られた基紙の片面に、顔料塗工層用塗工液を、片面当たりの乾燥塗工量が10g/m2になるようにブレードコーターを用いて両面に塗工、乾燥した。その後、キャレンダーによって密度1.25g/cm3となるよう処理を行い、坪量が70g/m2の紙基材(塗工紙)を作製した。
【0058】
(紙容器用原紙の作製)
上記で得られた紙基材の片面に、真空蒸着機でアルミニウムを膜厚50nmとなるように真空蒸着処理を行い紙容器用原紙を得た。
【0059】
(紙容器の作製)
上記で得られた紙容器用原紙を、真空蒸着層が容器の内側になるように、袋状の紙容器に加工し、底面が3cm×5cm、高さ10cm、開口部が上部にある角柱型の袋状の紙容器を作製した。
【0060】
(実施例6)
実施例1で得られた紙容器用原紙の真空蒸着金属層面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm、図表においては「IO」とする)を乾燥塗工量が1g/m2になるようにバーコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、ヒートシール層を有する紙容器用原紙を得たこと以外は実施例1と同様にして紙容器を作製した。
【0061】
(実施例7)
実施例6において水系アイオノマーエマルジョンの乾燥塗工量を2g/m2に変更した以外は実施例6と同様にして紙容器を作製した。
【0062】
(実施例8)
実施例6において水系アイオノマーエマルジョンの乾燥塗工量を3g/m2に変更した以外は実施例6と同様にして紙容器を作製した。
【0063】
(実施例9)
実施例6において水系アイオノマーエマルジョンの乾燥塗工量を5g/m2に変更した以外は実施例6と同様にして紙容器を作製した。
【0064】
(実施例10)
実施例6において水系アイオノマーエマルジョンの乾燥塗工量を10g/m2に変更した以外は実施例6と同様にして紙容器を作製した。
【0065】
(実施例11)
実施例1で得られた紙容器用原紙の真空蒸着金属層面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が3g/m2になるようにバーコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層(下層)を設けた。次いで、同水系アイオノマーエマルジョンをヒートシール層(下層)の表面に、乾燥塗工量が2g/m2となるようにバーコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層(上層)を設け、ヒートシール層を有する紙容器用原紙を得たこと以外は実施例1と同様にして紙容器を作製した。
【0066】
(実施例12)
実施例2で得られた紙容器用原紙の真空蒸着金属層面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が3g/m2になるようにバーコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、ヒートシール層を有する紙容器用原紙を得たこと以外は実施例2と同様にして紙容器を作製した。
【0067】
(実施例13)
実施例3で得られた紙容器用原紙の真空蒸着金属層面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が3g/m2になるようにバーコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、ヒートシール層を有する紙容器用原紙を得たこと以外は実施例3と同様にして紙容器を作製した。
【0068】
(実施例14)
実施例4で得られた紙容器用原紙の真空蒸着金属層面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が3g/m2になるようにバーコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、ヒートシール層を有する紙容器用原紙を得たこと以外は実施例4と同様にして紙容器を作製した。
【0069】
(実施例15)
実施例5で得られた紙容器用原紙の真空蒸着金属層面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が3g/m2になるようにバーコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、ヒートシール層を有する紙容器用原紙を得たこと以外は実施例5と同様にして紙容器を作製した。
【0070】
(実施例16)
実施例8において水系アイオノマーエマルジョンを水系エチレン・アクリル酸共重合物エマルジョン(商品名:MICHEM FLEX P1883、マイケルマン社製、図表においては「EA」とする)に変更した以外は実施例8と同様にして紙容器を作製した。
【0071】
(実施例17)
実施例8において水系アイオノマーエマルジョンを水系エチレン酢酸ビニル共重合物エマルジョン(商品名:アクアテックス AC-3100、ジャパンコーティングレジン社製、図表においては「EVA」とする)に変更した以外は実施例8と同様にして紙容器を作製した。
【0072】
(実施例18)
実施例8において水系アイオノマーエマルジョンを水系スチレン・アクリル共重合物エマルジョン(商品名:FILLHARMO A400DF、トーヨーケム社製、図表においては「SA」とする)に変更した以外は実施例8と同様にして紙容器を作製した。
【0073】
(比較例1)
厚さ12μmのPETフィルムの片面に、真空蒸着機でアルミニウムを膜厚50nmとなるように真空蒸着処理を行いアルミ蒸着PETフィルムを得た。前記アルミ蒸着フィルムの非蒸着面側に厚さ60μmのポリエチレンフィルムを接着剤で貼りつけ容器用フィルムを得た。得られた容器用フィルムを真空蒸着層が容器の内側になるように、袋状の容器に加工し、底面が3cm×5cm、高さ10cm、開口部が上部にある角柱型の袋状の容器を作製した。
【0074】
(比較例2)
実施例6において、真空蒸着処理を行わないとした以外は実施例6と同様にして紙容器を作製した。
【0075】
(比較例3)
実施例8において、真空蒸着処理を行わないとした以外は実施例8と同様にして紙容器を作製した。
【0076】
(参考例1~5)
実施例1~5において、真空蒸着処理を行わないとした以外は実施例1~5と同様にして紙容器を作製した。
【0077】
各実施例及び比較例で得られた紙容器について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を
図1~4に示す。
【0078】
(1)密度
JIS P 8118に準拠して、蒸着後の紙容器用原紙およびヒートシール層を有する紙容器用原紙の重量と厚みを測定し、密度を求めた。
【0079】
(2)透気度
JIS P 8117:2009に準拠して、デジタル型王研式透気度平滑度試験機(旭精工社製、型番:EYDO-6-2M)にて、蒸着後の紙容器用原紙およびヒートシール層を有する紙容器用原紙の透気度(秒)を測定した。数値の低い方が、通気性が高いことを示す。
【0080】
(3)平滑度
JIS P 8155に準拠して、デジタル型王研式透気度平滑度試験機(旭精工社製、型番:EYDO-6-2M)にて、蒸着前の紙容器用原紙の真空蒸着処理予定面の平滑度(秒)を測定した。数値の低い方が、平滑性が低いことを示す。
【0081】
(4)表面電気抵抗率
JIS K 7194に準拠して、四探針法電気抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製、型番:Loresta-AX MCP-T370)にて、真空蒸着金属層の表面電気抵抗率(Ω/sq)を測定した。数値の低い方が、表面電気抵抗率が低いことを示す。
【0082】
(5)ヒートシール強度
実施例6~18、比較例2~3について、ヒートシール層を有する紙容器用原紙を、幅8mm、長さ15cmのサイズに2枚カットし、ヒートシール層を有する紙容器用原紙の表面と裏面とを重ね合わせ、ヒートシール装置(パルメック社製、型番:PTS-100)で、一定条件(接着幅:4mm、温度:180℃、圧力0.4MPa、押し当て時間0.5秒、ピッチ:4mm)にてヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを、剥離強度試験機(島津製作所製、型番:オートグラフAGS-X)にて、一定条件(剥離速度:100mm/分、剥離長さ:10cm)で剥離強度を測定してヒートシール強度(gf/4mm)とした。数値が高い方が優れる。
【0083】
(6)撥水性
実施例6~18、比較例2~3について、JIS K 6768:1999(プラスチック-フィルム及びシート-濡れ張力試験方法)に準拠し、ヒートシール層表面の撥水性を評価した。数字が低い程撥水性が高い(濡れにくい)ことを示す。
【0084】
(7)撥油性
実施例6~18、比較例2~3について、TAPPI T-559cm-02(キット法)に準拠し、ヒートシール層表面の撥油性を評価した。値(キット値)が高いほど撥油性が高いことを示す。
【0085】
(8)熱伝導率
迅速熱伝導率計(京都電子工業製、QTM-D3)を用いて熱伝導率を測定した。紙、フィルムなどの比較的に薄いサンプルでは、サンプルを机などの台座に置いて状態で、測定用プローブをサンプルにあてて測定した場合には、机などの台座の熱伝導率の影響を受けるため、正確な熱伝導率の測定は困難である。本実施例では、精密工学会誌2004年70巻4号P.523に記載の方法に準拠して測定を行った。台座の影響を除外するため3種類の熱伝導率が既知な基準片を用い、蒸着後の紙容器用原紙の熱伝導率を測定した。まず基準片として発泡ポリエチレン(熱伝導率0.0349W/m・K)の台座の上に紙容器用原紙を蒸着層面を台座側に向けて1枚置き、非蒸着面側に測定用プローブを当てて熱伝導率を測定し、基準片熱伝導率からの熱伝導率の偏差を求めた。ついで、基準片としてシリコーンゴム(熱伝導率0.237W/m・K)、石英ガラス(熱伝導率1.418W/m・K)の台座についてもそれぞれ同様の操作を行い基準片からの熱伝導率の偏差を求めた。算出した偏差をY軸、基準片の熱伝導率をX軸にグラフへプロットし、グラフのY軸の偏差が0になる点を求め、紙容器用原紙の熱伝導率とした。参考例についてはヒートシール層面を台座側に向けて測定を行った。熱伝導率が低いほど保温性に優れる傾向にある。
【0086】
(9)保温性
水20mlを容量20mlのガラス瓶に入れ密閉し、80℃に加温した。次いで、実施例、比較例、参考例で作製した袋状の紙容器および容器へ、加温したガラス瓶を入れた後、開口部をクリップで閉じた。23℃50%RH環境下に保管し、30分後に赤外線温度計を用いてガラス瓶の温度を測定した。温度が高いほど保温性が高い。
【0087】
(10)対応する参考例との保温性差
実施例と対応する参考例(参考例
図4に記載)の保温性の差を求めた。差が大きいほど真空蒸着処理による保温性向上の効果が高い。
【0088】
図1~4より明らかなように、実施例1~18による紙容器は比較例1~3と比較して、プラスチックフィルムを含まないにも関わらず、保温性が良好である。実験結果が示している様に、本発明であれば、従来のプラスチック製の容器と比較して、プラスチックゴミ削減に貢献しつつ、保温性に優れた紙容器を提供することができる。