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<図1>
  • 特開-基板間接続構造および基板間接続方法 図1
  • 特開-基板間接続構造および基板間接続方法 図2
  • 特開-基板間接続構造および基板間接続方法 図3
  • 特開-基板間接続構造および基板間接続方法 図4
  • 特開-基板間接続構造および基板間接続方法 図5
  • 特開-基板間接続構造および基板間接続方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026046
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】基板間接続構造および基板間接続方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20220203BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H05K1/14 E
H05K1/02 J
H05K1/02 N
H05K1/02 P
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129320
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】松田 修一
【テーマコード(参考)】
5E338
5E344
【Fターム(参考)】
5E338AA02
5E338AA18
5E338BB43
5E338BB47
5E338CC02
5E338CC06
5E338CD13
5E338CD23
5E338EE11
5E344AA04
5E344AA23
5E344BB06
5E344BB07
5E344BB14
5E344BB15
5E344BB16
5E344CD13
5E344EE08
(57)【要約】
【課題】インダクタンス成分による伝送線路の損失を低減することができる基板間接続構造を提供する。
【解決手段】全体の線路長に応じた寸法に分割され、一方の面11aに線路導体12とグランド13が形成された複数の基板11A,11Bと、複数の基板11A,11Bの線路導体12,12間を導通接続する線状部材14と、線状部材14に近接して覆い、かつ複数の基板11A,11Bのグランド13,13間を導通接続するグランドカバー15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体の線路長に応じた寸法に分割され、一方の面(11a)に線路導体(12)とグランド(13)が形成された複数の基板(11A,11B)と、
前記複数の基板の隣接する基板の線路導体間を導通接続する線状部材(14)と、
前記線状部材に近接して覆い、かつ前記複数の基板の隣接する基板のグランド間を導通接続するグランドカバー(15)と、を備えたことを特徴とする基板間接続構造。
【請求項2】
前記線状部材(14)は、前記グランドカバー(15)との間の高さ方向の距離が略同等となるように複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の基板間接続構造。
【請求項3】
前記グランドカバー(15)は、金リボンまたは金メッキした板材からなることを特徴とする請求項1または2に記載の基板間接続構造。
【請求項4】
全体の線路長に応じた寸法に分割され、一方の面(11a)に線路導体(12)とグランド(13)が形成された複数の基板(11A,11B)を配置するステップと、
前記複数の基板の隣接する基板の線路導体間を線状部材(14)にて導通接続するステップと、
前記線状部材に近接して覆い、かつ前記複数の基板の隣接する基板のグランド間を導通接続するようにグランドカバー(15)を配置するステップと、を含むことを特徴とする基板間接続方法。
【請求項5】
前記グランドカバー(15)との間の高さ方向の距離が略同等となるように前記線状部材(14)を複数設けるステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の基板間接続方法。
【請求項6】
金リボンまたは金メッキした板材で前記グランドカバー(15)を形成するステップを含むことを特徴とする請求項4または5に記載の基板間接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば被測定物(DUT:Device Under Test )に既知パターンのテスト信号を入力し、このテスト信号の入力に伴って被測定物から受信した入力データのビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定する誤り率測定装置などの測定装置の基板間接続構造および基板間接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1に開示されるように、誤り率測定装置は、固定データを含む既知パターンのテスト信号を被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信した被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較してビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定する装置として従来から知られている。
【0003】
ところで、この種の誤り率測定装置などの測定装置において、例えば50GHz超で用いられる超高速デジタル信号を測定するために用いられる伝送線路では、高周波での特性を良くするため、誘電損失が低く精度よくパターン構成が可能な薄膜基板が用いられる。その中でもさらに高周波特性を良くするため、比誘電率が低く波長短縮率が少ない石英基板を用い、基板厚を薄くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-274474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板厚が薄い石英基板は、寸法が大きいとクラックや基板割れが発生しやすく、長さのある伝送線路では基板を小さなサイズで複数に分割し、分割された基板間の伝送線路を金リボンやワイヤーなどの線状部材でボンディング接続する必要があり、複数の薄膜基板を接続する箇所での高周波特性の悪化が問題となる。
【0006】
また、薄膜基板は、寸法公差と製造可能になる基板端とパターン端の寸法があるため、隣り合う基板間にギャップが発生し、パターン間の線状部材の寸法が長くなり、直列のインダクタンス成分を持つこととなる。インダクタンス成分は、線状部材の寸法が長い程、その値が大きくなり、50GHz超の高い周波数では大きな損失となる。
【0007】
ここで、図6は下記の条件を元に後述する実施の形態の基板間接続構造を実施した場合と未実施の場合の薄膜基板間を中心とするインピーダンスの測定を行って得られた結果の一例を示している。
(実施の条件)
薄膜基板:石英、基板厚0.2mm、基板間ギャップ0.075mm
ワイヤー条件:φ0.025mm金ワイヤー、基板中心導体パターン間4本、両サイドグランドパターンなし
グランドカバー材質:銅純金メッキ
グランドカバー寸法:高さ0.1mm
(未実施の条件)
薄膜基板:石英、基板厚0.2mm、基板間ギャップ0.075mm
ワイヤー条件:φ0.025mm金ワイヤー、基板中心導体パターン間4本、両サイドグランドパターン間2本
図6の点線で示すように、分割された薄膜基板間の伝送線路を金リボンやワイヤーなどの線状部材で単にボンディング接続した従来の構造では、薄膜基板と薄膜基板との間の中心Pにおけるインピーダンスが50Ωよりも高くなっていることが判る。
【0008】
また、線状部材としての金ワイヤーのインダクタンスは約1mmで1nHと言われており、より短く多本数並列貼りしてインダクタンスを0.2nHまで減らしても、100GHzで接続部一箇所で4dBの損失となってしまい、デジタル信号の波形性能劣化になる。
【0009】
ここで、特定周波数範囲の使用に限れば、基板間ギャップによる容量成分と線状部材の長さを調整することで特定周波数でマッチングすることは可能である。しかし、上述した超高速デジタル信号を測定する誤り率測定装置では、直流から高域まで平坦な周波数特性が要求されるため、インダクタンス成分を可能なだけ小さくして伝送線路の損失を低減することが求められていた。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、インダクタンス成分による伝送線路の損失を低減することができる基板間接続構造および基板間接続方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された基板間接続構造は、全体の線路長に応じた寸法に分割され、一方の面11aに線路導体12とグランド13が形成された複数の基板11A,11Bと、
前記複数の基板の隣接する基板の線路導体間を導通接続する線状部材14と、
前記線状部材に近接して覆い、かつ前記複数の基板の隣接する基板のグランド間を導通接続するグランドカバー15と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に記載された基板間接続構造は、請求項1の基板間接続構造において、
前記線状部材14は、前記グランドカバー15との間の高さ方向の距離が略同等となるように複数設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に記載された基板間接続構造は、請求項1または2の基板間接続構造において、
前記グランドカバー15は、金リボンまたは金メッキした板材からなることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に記載された基板間接続方法は、全体の線路長に応じた寸法に分割され、一方の面11aに線路導体12とグランド13が形成された複数の基板11A,11Bを配置するステップと、
前記複数の基板の隣接する基板の線路導体間を線状部材14にて導通接続するステップと、
前記線状部材に近接して覆い、かつ前記複数の基板の隣接する基板のグランド間を導通接続するようにグランドカバー15を配置するステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に記載された基板間接続方法は、請求項4の基板間接続方法において、
前記グランドカバー15との間の高さ方向の距離が略同等となるように前記線状部材14を複数設けるステップを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に記載された基板間接続方法は、請求項4または5の基板間接続方法において、
金リボンまたは金メッキした板材で前記グランドカバー(15)を形成するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、線路導体の線路長に応じて複数に分割された薄膜基板間の接続部にグランドカバーを取り付けて線状部材からグランドまでの距離を接近させる構造としたので、インダクタンス成分による伝送線路の損失を低減させることができる。その結果、誤り率測定装置のパターン発生器でのパターン信号の発生やエラー検出器によるエラー測定において、アイパターン波形の改善および測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)本発明に係る基板間接続構造の第1実施の形態を示す平面図、(b)同正面図、(c)同側面図である。
図2】(a)本発明に係る基板間接続構造の第2実施の形態を示す平面図、(b)同正面図、(c)同側面図である。
図3】誤り率測定装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】本発明に係る基板間接続構造を実施した場合と未実施の場合の挿入損失を示す図である。
図5】本発明に係る基板間接続構造を実施した場合と未実施の場合のリターンロスを示す図である。
図6】本発明に係る基板間接続構造を実施した場合と未実施の場合のインピーダンスの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
[本発明の概要]
本発明に係る基板間接続構造および基板間接続方法は、測定装置として、例えば50GHz超で用いられる超高速デジタル信号を測定するための誤り率測定装置に用いられる伝送線路に採用される。図3に示すように、誤り率測定装置1は、被測定物(DUT)Wに入力される既知のパターン信号を発生するパターン発生器2と、パターン信号の入力に伴って被測定物Wから折り返される信号を受信してエラーを検出(被測定物Wから折り返して受信した被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較してビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定)するエラー検出器3と、を備えて構成される。
【0021】
本発明に係る基板間接続構造および基板間接続方法は、上記誤り率測定装置1のパターン発生器2における薄膜基板の伝送線路(デジタル信号ライン)の出力(最終の出力)および/またはエラー検出器3における薄膜基板の伝送線路(デジタル信号ライン)の入力(最初の入力)において、インダクタンス成分による伝送線路の損失を低減し、直流から所定周波数(例えば50GHz超えの周波数)まで平坦な周波数特性が得られるものである。
【0022】
以下、本発明に係る基板間接続構造の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、薄膜基板を2分割した場合を一例として図示して説明しているが、図示の構造に限定されるものではなく、薄膜基板は線路導体の線路長に応じて複数に分割される。具体的には、薄膜基板として石英基板を使用した場合、1つの薄膜基板の線路導体の長さが例えば15mm以上となるように、線路導体の線路長に応じた寸法に薄膜基板を複数に分割する。
【0023】
[第1実施の形態]
図1(a)~(c)を参照しながら第1実施の形態の基板間接続構造について説明する。
【0024】
第1実施の形態の基板間接続構造は、図1(a)~(c)に示すように、薄膜基板11を伝送線路の線路長に応じた寸法からなる薄膜基板11Aと薄膜基板11Bに2分割し、2分割した薄膜基板11A,11Bを所定間隔dをおいて配置し、各薄膜基板11A,11Bにコプレーナ線路による伝送線路が形成されている。
【0025】
2分割した各薄膜基板11A,11Bは、誘電損失が低く精度よくパターン構成が可能なセラミック基板、石英基板などで構成される。なお、薄膜基板11A,11Bとしては、基板厚を極力薄くし(例えば0.2mm程度)、比誘電率が低く波長短縮率が少ない石英基板を用いるのが好ましい。
【0026】
各薄膜基板11A,11Bの一方の面(表面)11aの中心には、長手方向(長さ方向:X)に沿って線路導体(中心導体)12が形成され、この線路導体12の両側には長手方向Xに沿ってグランド13,13が形成されており、コプレーナ線路による伝送線路を形成している。
【0027】
そして、一方の薄膜基板11Aの線路導体12と他方の薄膜基板11Bの線路導体12との間は、例えば金リボンや金ワイヤーなどからなる線状部材14によって電気的に導通接続されている。
【0028】
また、薄膜基板11A,11B間の上方には、トンネル構造部品としてのグランドカバー15が設けられている。グランドカバー15は、例えば金リボン成型または銅エッチング金メッキ形成の板材で形成され、線状部材14に近接して覆い、かつ2分割した一方の薄膜基板11Aのグランド13,13と他方の薄膜基板11Bのグランド13,13との間を電気的に導通接続するように設けられる。
【0029】
さらに説明すると、グランドカバー15は、折曲部21と取付部22から構成される。折曲部21は、薄膜基板11の表面11aと平行をなす平坦面21aと、薄膜基板11の表面11aと直角をなす一対の立ち下げ面21b,21bとを有する。折曲部21は、薄膜基板11A,11B間の線状部材14に近接して覆うように薄膜基板11の表面11a側に開口21cを有して下向きコ字状に折曲形成される。取付部22は、折曲部21の一対の立ち下げ面21b,21bに一体に形成され、薄膜基板11A,11B間の対向するグランド13,13間を電気的に導通接続するようにグランド13それぞれの面にボンディングして取り付けられる。
【0030】
なお、線状部材14は、グランドカバー15との間の高さ方向の距離が略同等となるように複数設けるのが好ましい。
【0031】
また、上述した第1実施の形態の基板間接続構造では、2分割した薄膜基板11A,11Bに形成される伝送線路として、各薄膜基板11A,11Bの一方の面(表面)11aの中心に線路導体12を形成し、この線路導体12の両側に長手方向に沿ってグランド13,13を形成して薄膜基板11A上の線路導体12と薄膜基板11B上の線路導体12との間を線状部材14で電気的に導通接続したコプレーナ線路であるが、この構成に加えて、各薄膜基板11A,11Bの他方の面(裏面)11bにグランドをベタ状に形成したグランドコプレーナ線路を伝送線路としてもよい。
【0032】
[第2実施の形態]
図2(a)~(c)を参照しながら第2実施の形態の基板間接続構造について説明する。なお、図2(a)~(c)において第1実施の形態と同一または同等の構成要素には同一番号を付している。
【0033】
第2実施の形態の基板間接続構造は、図2(a)~(c)に示すように、薄膜基板11を伝送線路の線路長に応じた寸法からなる薄膜基板11Aと薄膜基板11Bに2分割し、2分割した薄膜基板11A,11Bを所定間隔dをおいて配置し、各薄膜基板にマイクロストリップ線路による伝送線路が形成されている。
【0034】
2分割した各薄膜基板11A,11Bは、誘電損失が低く精度よくパターン構成が可能なセラミック基板、石英基板などで構成される。なお、薄膜基板11A,11Bとしては、基板厚を極力薄くし(例えば0.2mm程度)、比誘電率が低く波長短縮率が少ない石英基板を用いるのが好ましい。
【0035】
各薄膜基板11A,11Bの一方の面(表面)11aの中心には、長手方向(長さ方向:X)に沿って線路導体(中心導体)12が形成される。また、各薄膜基板11A,11Bの他方の面(裏面)11bにはグランドがベタ状に形成されており、マイクロストリップ線路による伝送線路を形成している。
【0036】
さらに、各薄膜基板11A,11Bの線路導体12の両側で、線路導体12が対向する各薄膜基板11A,11Bの角端部には、薄膜基板11A,11Bの一方の面(表面)11aと他方の面(裏面)11bとの間を貫通するスルーホール16(図2の例では2箇所)が形成され、このスルーホール16に埋設された導電材17を介してベタ状のグランド18と導通接続されるようにグランド13が形成される。
【0037】
そして、一方の薄膜基板11Aの線路導体12と他方の薄膜基板11Bの線路導体12との間は、例えば金リボンや金ワイヤーなどからなる線状部材14によって電気的に導通接続されている。
【0038】
また、薄膜基板11A,11B間の上方には、トンネル構造部品としてのグランドカバー15が設けられている。グランドカバー15は、例えば金リボン成型または銅エッチング金メッキ形成の板材で形成され、線状部材14に近接して覆い、かつ2分割した一方の薄膜基板11Aのグランド13と他方の薄膜基板11Bのグランド13との間を電気的に導通接続するように設けられる。
【0039】
さらに説明すると、グランドカバー15は、折曲部21と取付部22から構成される。折曲部21は、薄膜基板11の表面11aと平行をなす平坦面21aと、薄膜基板11の表面11aと直角をなす一対の立ち下げ面21b,21bとを有する。折曲部21は、薄膜基板11A,11B間の線状部材14に近接して覆うように薄膜基板11の表面11a側に開口21cを有して下向きコ字状に折曲形成される。取付部22は、折曲部21の一対の立ち下げ面21b,21bに一体に形成され、薄膜基板11A,11B間の対向するグランド13,13間を電気的に導通接続するようにグランド13それぞれの面にボンディングして取り付けられる。
【0040】
なお、線状部材14は、グランドカバー15との間の高さ方向の距離が略同等となるように複数設けるのが好ましい。
【0041】
ここで、上述した本実施の形態による基板間接続構造を実施した場合と未実施の場合の挿入損失の測定結果を図4に示す。また、上述した本実施の形態による基板間接続構造を実施した場合と未実施の場合のリターンロスの測定結果を図5に示す。
【0042】
なお、図4の挿入損失および図5のリターンロスは、下記の条件を元に本実施の形態による基板間接続構造を実施した場合と未実施の場合の測定を行って得られた結果である。
(実施の条件)
薄膜基板:石英、基板厚0.2mm、基板間ギャップ0.075mm
ワイヤー条件:φ0.025mm金ワイヤー、基板中心導体パターン間4本、両サイドグランドパターンなし
グランドカバー材質:銅純金メッキ
グランドカバー寸法:高さ0.1mm
(未実施の条件)
薄膜基板:石英、基板厚0.2mm、基板間ギャップ0.075mm
ワイヤー条件:φ0.025mm金ワイヤー、基板中心導体パターン間4本、両サイドグランドパターン間2本
【0043】
本実施の形態による基板間接続構造では、薄膜基板11A,11B間の接続部における線状部材14の長さによる寄生インダクタンスの値をグランドカバー15で線状部材14に近づけることで寄生インダクタンスの値を下げている。これにより、図6の実線で示すように、薄膜基板11Aと薄膜基板11Bとの間の中心Pにおけるインピーダンスを50Ωに近づけることができる。そして、図4図5を見ても明らかなように、本実施の形態による基板間接続構造を実施した場合には、本実施の形態による基板間接続構造を実施しない場合と比較して、挿入損失およびリターンロスを低減することができ、直流から所定周波数(例えば50GHz超えの周波数)まで平坦な周波数特性を得ることができる。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、50GHz超で用いられる超高速デジタル信号を測定するための誤り率測定装置1に用いられる伝送線路において、線路導体(中心導体)12の線路長に応じて複数に分割された薄膜基板11A,11B間の接続部に対し、金リボン成型または銅エッチング金メッキ形成のグランドカバー15を取り付けることにより、線状部材14からグランド13までの距離を接近させる構造としたので、インダクタンスの値が小さくなり、50GHz超の伝送線路の損失を大幅に低減させることができる。その結果、50GHz超で用いられる超高速デジタル信号を測定するための誤り率測定装置1のパターン発生器2でのパターン信号の発生やエラー検出器3によるエラー測定において、アイパターン波形の改善および測定精度を向上させることができる。
【0045】
ところで、上述した実施の形態の基板間接続構造および基板間接続方法は、例示した誤り率測定装置に限定されず、他の高周波測定器などの測定装置に適用可能である。例えば50GHz超えの周波数を用いる測定装置で有用である。
【0046】
以上、本発明に係る基板間接続構造および基板間接続方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 誤り率測定装置
2 パターン発生器
3 エラー検出器
11(11A,11B) 薄膜基板
11a 一方の面(表面)
11b 他方の面(裏面)
12 線路導体(中心導体)
13 グランド
14 線状部材
15 グランドカバー
16 スルーホール
17 導電材
18 グランド
21 折曲部
21a 平坦面
21b 立ち下げ面
21c 開口
22 取付部
W 被測定物
d 薄膜基板間の間隔
P 薄膜基板間の中心位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6