(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026067
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】繊維強化複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20220203BHJP
B29C 43/20 20060101ALI20220203BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20220203BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20220203BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20220203BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20220203BHJP
B29K 105/12 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
B29B11/16
B29C43/20
B29C43/34
B29C70/16
B29C70/42
B32B5/28 Z
B29K105:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129348
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】稲沢 幸一
(72)【発明者】
【氏名】石井 路治
(72)【発明者】
【氏名】新谷 拓也
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB29
4F072AB33
4F072AD34
4F072AG03
4F072AG16
4F072AH22
4F072AH49
4F072AK02
4F072AK14
4F100AD11A
4F100AD11B
4F100AD11C
4F100AK22A
4F100AK22C
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100DD31
4F100DG15B
4F100DH01A
4F100DH01C
4F100DH02A
4F100DH02C
4F100EJ172
4F100YY00B
4F204AA36
4F204AD16
4F204AG03
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FF05
4F204FG02
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F205AA36
4F205AD16
4F205AG03
4F205HA08
4F205HA14
4F205HA25
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HC06
4F205HF05
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK05
(57)【要約】
【課題】繊維強化複合材料の強度を部分的に向上可能な新たな技術を開示する。
【解決手段】強化繊維材料に樹脂を含浸した少なくとも2つのプリプレグ層を、樹脂を含浸していない炭素繊維不織布を介在させつつ積層し、プリプレグ積層体を得る、積層工程と、前記プリプレグ積層体を加圧する、加圧工程と、を備え、前記炭素繊維不織布の目付が200g/m
2以上300g/m
2以下であり、前記少なくとも2つのプリプレグ層の間において、前記プリプレグ層の全面のうちの一部にのみ、前記炭素繊維不織布を介在させる、繊維強化複合材料の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維材料に樹脂を含浸してなる少なくとも2つのプリプレグ層を、樹脂を含浸していない炭素繊維不織布を介在させつつ積層して、プリプレグ積層体を得ること、及び、
前記プリプレグ積層体を加圧すること、
を含み、
前記炭素繊維不織布の目付が200g/m2以上300g/m2以下であり、
前記少なくとも2つのプリプレグ層の間において、前記プリプレグ層の全面のうちの一部にのみ、前記炭素繊維不織布を介在させる、
繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は繊維強化複合材料の製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シート状のCFRP層(プリプレグ層)を形成し、複数のCFRP層の間に樹脂が未含浸の不織布を介装してプリプレグ積層体を形成し、当該プリプレグ積層体を加圧成形することにより、表面平滑性に優れるSMC成形品を得る技術が開示されている。特許文献2にも、平滑性に優れる繊維強化プラスチック部材を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-246981号公報
【特許文献2】特開2007-090811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SMC成形品においては部分的な強度が必要とされる場合がある。この場合、樹脂部品においてはリブの形成や厚肉化等によって強度向上を図るが、成形品の配置やスペース等の制約上、リブの形成や厚肉化等を実施することができない場合がある。また、SMC成形品の場合は、リブにカーボンが入りにくい、肉厚化しても、層間の密着が悪く強度向上が図りづらいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
強化繊維材料に樹脂を含浸してなる少なくとも2つのプリプレグ層を、樹脂を含浸していない炭素繊維不織布を介在させつつ積層して、プリプレグ積層体を得ること、及び、
前記プリプレグ積層体を加圧すること、
を含み、
前記炭素繊維不織布の目付が200g/m2以上300g/m2以下であり、
前記少なくとも2つのプリプレグ層の間において、前記プリプレグ層の全面のうちの一部にのみ、前記炭素繊維不織布を介在させる、
繊維強化複合材料の製造方法
を開示する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の技術によれば繊維強化複合材料の強度を部分的に向上可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】加圧前のプリプレグ積層体の構成の一例を概略的に示している。
【
図2】加圧後のプリプレグ積層体の構成の一例を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び2に示されるように、本開示の繊維強化複合材料の製造方法は、強化繊維材料に樹脂を含浸した少なくとも2つのプリプレグ層10を、樹脂を含浸していない炭素繊維不織布20を介在させつつ積層して、プリプレグ積層体30を得ること(
図1)、及び、プリプレグ積層体30を加圧すること(
図2)、を含む。本開示の製造方法においては、炭素繊維不織布20の目付は200g/m
2以上300g/m
2以下である。また、本開示の製造方法においては、少なくとも2つのプリプレグ層10の間において、プリプレグ層10の全面のうちの一部にのみ、炭素繊維不織布20を介在させる。
【0009】
1.積層
図1に示されるように、本開示の製造方法においては、強化繊維材料に樹脂を含浸した少なくとも2つのプリプレグ層10を、樹脂を含浸していない炭素繊維不織布20を介在させつつ積層して、プリプレグ積層体30を得る。
【0010】
1.1 プリプレグ層
プリプレグ層10は、強化繊維材料に樹脂を含浸してなる。プリプレグ層10は、従来のSMC成形品に用いられるプリプレグ層と同様のものであってもよい。
図1に示されるように、プリプレグ層10は、シート状であってよい。プリプレグ層10は、積層方向と交差する方向に表面及び裏面を有し得る。プリプレグ層10の厚みや大きさや形状は特に限定されるものではなく、目的とする用途に応じて適宜決定されればよい。複数のプリプレグ層10は、厚みや大きさや形状が互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0011】
プリプレグ層10を構成する強化繊維材料の形態は特に限定されるものではない。例えば、無機繊維、有機繊維、金属繊維、又は、これらの組み合わせが挙げられる。具体的には、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、炭化タングステン繊維、ボロン繊維、バサルト繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、フッ素樹脂繊維、ステンレス鋼繊維、鉄繊維等である。これらの中でも、例えば、炭素繊維は強度が高く軽量である。炭素繊維は、PAN系炭素繊維であっても、ピッチ系炭素繊維であってもよい。特に、PAN系炭素繊維は強度と弾性率のバランスに優れる。また、プリプレグ層10に用いられる強化繊維材料はチョップドファイバーであってもよい。プリプレグ層10に占める強化繊維材料の体積分率(Vf値)は特に限定されるものではなく、目的とする強度等に応じて適宜決定されればよい。
【0012】
プリプレグ層10を構成する樹脂(マトリックス樹脂)の種類は特に限定されるものではなく、各種硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は、これらの組み合わせであってもよい。硬化性樹脂は例えば熱硬化性樹脂であってよい。硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の種類は特に限定されるものではなく、繊維強化複合材料の用途等に応じて適宜決定されればよい。硬化性樹脂を用いる場合において、当該硬化性樹脂そのものが低粘度である場合は、当該硬化性樹脂に上記の強化繊維材料を浸漬すること等によってプリプレグ層10を得てもよい。或いは、硬化性樹脂が高粘度である場合は、当該硬化性樹脂を溶媒に溶解して低粘度化したうえで強化繊維材料を浸漬すること等によってプリプレグ層10を得てもよい。一方、熱可塑性樹脂を用いる場合は、加熱によって低粘度化させた熱可塑性樹脂に強化繊維材料を浸漬すること等によってプリプレグ層10を得てもよい。その他に、強化繊維材料に対して樹脂の塗付、転写、噴霧等を行うことでプリプレグ層10を得てもよい。低粘度化された状態における樹脂の粘度(後述する加圧時の樹脂の粘度であってもよい)は特に限定されるものではないが、例えば、0.001~100Pa・sであってもよい。
【0013】
プリプレグ層10は、必要に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、各種モノマーやポリマー、セラミックスや金属粉末などの充填剤、顔料や染料などの着色剤、相溶化剤、分散剤、耐候剤、紫外線吸収剤、導電材、増粘剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0014】
1.2 炭素繊維不織布
本開示の繊維強化複合材料の製造方法においては、上記のプリプレグ層10の間に炭素繊維不織布20を挟み込む。炭素繊維不織布20は、ガラス繊維等の炭素繊維以外の強化繊維からなる不織布と比べて、高強度且つ軽量である。
【0015】
炭素繊維不織布20はプリプレグ層10の間に介在させる前において樹脂に含浸していない。後述する加圧時に、プリプレグ層10を構成する樹脂の一部が炭素繊維不織布20に浸透することで、プリプレグ層10と炭素繊維不織布20とが一体化され得る。
【0016】
炭素繊維不織布20を構成する炭素繊維は、PAN系炭素繊維であっても、ピッチ系炭素繊維であってもよい。特に、PAN系炭素繊維は、強度と弾性率のバランスに優れる。炭素繊維の長さ、断面形状、断面の大きさは特に限定されるものではないが、繊維の長さについては、繊維が絡まりやすい25mm以上50mm以下程度が望ましい。炭素繊維不織布20は、炭素繊維のみからなっていてもよいし、炭素繊維と他の繊維とが組み合わされてなるものであってもよい。例えば、炭素繊維不織布20において、炭素繊維が繊維状バインダーによって結着されていてもよい。炭素繊維不織布20は、炭素繊維の含有量が80体積%以上であってもよい。
【0017】
炭素繊維不織布20は不織布として種々の形態を採り得る。例えば、カーディングによって炭素繊維が絡まったものや、湿式で形成したものであってもよい。
【0018】
炭素繊維不織布20は、その目付が少な過ぎると、品質のばらつき等によって繊維が不足する部位が発生し、そこに強度が不足することがある。また、その目付が多過ぎると、不織布が厚くなり過ぎ、プリプレグ層10との一体成形の際に樹脂が浸透し難くなる。本発明者の知見では、特に、炭素繊維不織布20の目付が200g/m2以上300g/m2以下の場合に、顕著に高い強度を確保しつつ、樹脂の浸透性を高めることができる。炭素繊維不織布20の目付は、200g/m2超又は220g/m2以上であってもよく、300g/m2未満又は280g/m2以下であってもよい。当該目付は、少なくとも、180g/m2以上320g/m2以下、特に、220g/m2以上280m2以下が望ましい。
【0019】
1.3 プリプレグ積層体
本開示の製造方法においては、少なくとも2つのプリプレグ層10の間において、プリプレグ層10の全面のうちの一部にのみ、炭素繊維不織布20を介在させる。すなわち、
図1に示されるように、プリプレグ積層体30において、2つのプリプレグ層10は、その全面のうち炭素繊維不織布20と接触している領域と、炭素繊維不織布20とは接触していない領域とを有してもよい。本開示の製造方法においては、このように、プリプレグ層10の間において、炭素繊維不織布20を部分的に介在させることで、繊維強化複合材料を部分的に補強することができる。プリプレグ積層体30において、炭素繊維不織布20は、プリプレグ層10の面に対して直接接触していてよい。
【0020】
図1には、プリプレグ積層体30において、2つのプリプレグ層10の間に1つの炭素繊維不織布20を部分的に介在させた形態を示したが、プリプレグ積層体の形態はこれに限定されるものではない。プリプレグ積層体30は、その全体の中の少なくとも一部に、プリプレグ層10の間に炭素繊維不織布20を部分的に介在させた部分があればよい。例えば、3つ以上のプリプレグ層10を積層する場合、これらの間の各々に炭素繊維不織布20を部分的に介在させてもよい。或いは、3つ以上のプリプレグ層10を積層する場合、プリプレグ層10の間のうち少なくとも1つの間にのみ炭素繊維不織布20を部分的に介在させてもよい。例えば、プリプレグ層10の間に炭素繊維不織布20が部分的に介在した部分に加えて、炭素繊維不織布20が介在せずにプリプレグ層10の全面同士が密着する部分があってもよいし、或いは、プリプレグ層10の全面に亘って炭素繊維不織布20が介在する部分があってもよい。また、プリプレグ積層体30において、プリプレグ層10の間に介在させる炭素繊維不織布20の数は1つに限られず、面方向や積層方向に2つ以上の炭素繊維不織布20を介在させていてもよい。
【0021】
上述したように、本開示の製造方法においては、プリプレグ層10の間において、炭素繊維不織布20を、補強のために部分的に介在させる。すなわち、プリプレグ積層体30において炭素繊維不織布20が存在する部分は、繊維強化複合材料のうち、補強が必要と判断される部分と対応する。繊維強化複合材料において補強が必要と判断される部分は、その用途等に応じて適宜決定されればよい。
【0022】
2.加圧
図2に示されるように、本開示の製造方法においては、プリプレグ積層体30を加圧することにより、プリプレグ層10と炭素繊維不織布20とを一体化し得る。例えば、プリプレグ層10の積層方向に向かって加圧することで、プリプレグ層10を構成する樹脂の一部を炭素繊維不織布20へと浸透させ、プリプレグ層10と炭素繊維不織布20とを一体化することができる。加圧の形態は特に限定されるものではない。
図2に示されるような、プレス型40、50を用いたプレス成形に限られず、種々の方法によってプリプレグ積層体30を加圧すればよい。加圧の際の圧力も特に限定されず、ボイドの回避や目的とする強度等に応じて適宜決定されればよい。
【0023】
3.その他
本開示の製造方法においては、加圧と同時に加熱してもよい。加圧及び加熱によって、例えば、プリプレグ積層体30に含まれる熱可塑性樹脂を低粘度化させて、炭素繊維不織布20へと浸透させ易くなる。或いは、加圧及び加熱によって、例えば、プリプレグ積層体30を成形すると同時に、プリプレグ積層体30に含まれる熱硬化性樹脂を硬化することができる。
【0024】
本開示の方法により製造される繊維強化複合材料は、上記の積層及び加圧に係る工程を経て製造されたものであればよい。繊維強化複合材料が硬化樹脂を含む場合、当該硬化樹脂は硬化反応前の状態であってもよいし、硬化反応後の状態であってもよい。また、繊維強化複合材料は、上記のプリプレグ積層体に由来する部分に加えて、その他の層や材料を備えていてもよい。また、上記の積層及び加圧に係る工程を経て一体化された繊維強化複合材料をさらに樹脂に含浸させてもよい。また、上記の積層及び加圧に係る工程を経て一体化された繊維強化複合材料を別の形に成形してもよい。
【0025】
以上の通り、本開示の製造方法によれば、プリプレグ層10の間に炭素繊維不織布20を部分的に介在させることで、繊維強化複合材料の強度を部分的に向上させることができる。本開示の製造方法においては、例えば、リブの形成や厚肉化といった形状変化を伴う補強法を採用しなくてもよい。また、本開示の製造方法によれば、炭素繊維不織布の目付量を所定範囲内とすることで、炭素繊維不織布20の不足部分が生じ難く、且つ、プリプレグ層10と炭素繊維不織布20とを適切に一体化することができ、繊維強化複合材料の強度を部分的により顕著に向上させることができる。
【0026】
尚、プリプレグ層における強化繊維材料を増加させることで、繊維強化複合材料の全体としての強度を向上させることもあり得るが、この場合、コストアップや成形性の問題が生じ易くなる。これに対し、本開示の製造方法においては、プリプレグ層10における強化繊維材料の量を増加させずとも、プリプレグ層10の間に炭素繊維不織布20を部分的に介在させることで、繊維強化複合材料の強度を部分的に向上させることができることから、コストアップや成形性の問題も生じ難い。
【実施例0027】
1.実施例1
図1に示されるように、2つのSMCプリプレグ(マトリックス樹脂:ビニルエステル、強化繊維材料:PAN系炭素繊維、Vf:40%、厚み:2mm)の間に、PAN系炭素繊維不織布(繊維長50mm)を部分的に介在させてプリプレグ積層体を得た。PAN系炭素繊維不織布の目付は200g/m
2であった。得られたプリプレグ積層体をプレス金型によって150℃、5MPaで加熱加圧硬化する工程を経て、評価用の成形品を得た。
【0028】
2.実施例2
目付が300g/m2であるPAN系炭素繊維不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用の成形品を得た。
【0029】
3.比較例1
PAN系炭素繊維不織布を介在させずに、2つのSMCプリプレグのみを直接積層して実施例1と同様にして評価用の成形品を得た。
【0030】
4.評価結果
実施例1、2及び比較例1の各々の成形品に対して常温3点曲げ強度を測定した。尚、実施例1、2については、PAN系炭素繊維不織布を配置した部分の曲げ強度を測定した。結果を下記表1に示す。下記表1では、比較例1に係る曲げ強度を基準(100)として、実施例1、2に係る曲げ強度を相対化した。
【0031】
【0032】
表1に示される通り、SMCプリプレグの間に炭素繊維不織布を部分的に介在させることで、炭素繊維不織布を介在させなかった場合と比較して、当該部分における曲げ強度を約2倍に顕著に増加させることができた。
【0033】
本発明者は炭素繊維不織布の目付についても検討した。その結果、炭素繊維不織布の目付が200g/m2を大きく下回ると、炭素繊維不織布を部分的に介在させたとしても、当該部分の強度向上効果がみられない傾向にあった。また、炭素繊維不織布の目付が300g/m2を大きく上回ると、SMCプリプレグから炭素繊維不織布に樹脂が浸透し難くなり、プリプレグ積層体を一体化することが難しくなる傾向にあった。
【0034】
以上の通り、(1)少なくとも2つのプリプレグ層の間において、プリプレグ層の全面のうちの一部にのみ、炭素繊維不織布を介在させること、及び、(2)目付が200g/m2以上300g/m2以下の炭素繊維不織布を用いること、によって、繊維強化複合材料の強度を部分的に顕著に向上させることが可能といえる。