(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026091
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】磁気治療器
(51)【国際特許分類】
A61N 2/08 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61N2/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129384
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000112299
【氏名又は名称】ピップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 等
(72)【発明者】
【氏名】森下 直美
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA01
4C106BB02
4C106CC01
4C106DD20
4C106FF04
4C106FF09
(57)【要約】
【課題】損傷が生じにくい磁気治療器を提供することを目的とする。
【解決手段】磁気治療器1は、使用者の首部Nに装着されて使用される。磁気治療器1は、首部Nに沿う初期形状を有するアーム2と、アーム2に設けられた磁性体32とを含む。アーム2は、外力が加えられたときの変形した形状を保持するように作用する保持力を有する第1の芯材と、形状記憶合金によって構成され、アーム2を初期形状に戻す復元力を有する第2の芯材と、チューブ形状を有し、第1の芯材および第2の芯材が内部に挿入される、弾性を有する被覆部材とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の首部に装着されて使用される磁気治療器であって、
前記磁気治療器は、
前記首部に沿う初期形状を有するアームと、
前記アームに設けられた磁性体と
を含み、
前記アームは、
外力が加えられたときの変形した形状を保持するように作用する保持力を有する第1の芯材と、
形状記憶合金によって構成され、前記アームを前記初期形状に戻る復元力を有する第2の芯材と、
チューブ形状を有し、前記第1の芯材および前記第2の芯材が内部に挿入される、弾性を有する被覆部材と
を備える、磁気治療器。
【請求項2】
前記形状記憶合金の変態温度は、使用者の体温以下であって、前記変態温度以上において、前記保持力よりも前記復元力が大きい、請求項1記載の磁気治療器。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記アームの径方向において、前記第1の芯材および前記第2の芯材が非拘束状態となるように、前記第1の芯材および前記第2の芯材を収容する、請求項1または2記載の磁気治療器。
【請求項4】
前記磁性体は、前記被覆部材に分散される磁粉を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気治療器。
【請求項5】
前記磁性体は、固形磁石を含み、
前記磁気治療器は、前記固形磁石を保持する磁石保持部材をさらに備え、前記磁石保持部材は、前記アームが前記磁石保持部材に挿入されることで、前記アームに移動可能に取り付けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1には、使用者の首部に挟み込んで装着される磁気治療器が開示されている。特許文献1の磁気治療器は、首部に沿うように、略C字状のアームを有しており、アームは、磁性体と、形状保持機能を有する芯材と、芯材を被覆する被覆部材によって構成されている。磁気治療器を装着するときには、アームを変形させながらアームの開口を首部の後側から挿入する。アームは、首部を挟み込むことで芯材によって変形した状態を保持して、首部を挟み込む。磁気治療器は、使用者の首部に接触するように位置付けられ、磁性体による磁気の効果を得ることで、血行促進作用による健康増進効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の磁気治療器は、たとえば曲率が小さな部分を起点として大きく変形するなど、アームに変形の不均一が生じた状態で、使用者に装着されることがある。このような場合、装着中に、アームの曲率が小さな部分に過度の機械的負荷が加わることがある。この局所的な機械的負荷により、アームの芯材が破断するなどの損傷を生じることがある。特に、強度が比較的弱い樹脂材料によって芯材が構成される場合、このような損傷が生じやすい。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、損傷が生じにくい磁気治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る磁気治療器は、使用者の首部に装着されて使用される磁気治療器であって、前記磁気治療器は、前記首部に沿う初期形状を有するアームと、前記アームに設けられた磁性体とを含み、前記アームは、外力が加えられたときの変形した形状を保持するように作用する保持力を有する第1の芯材と、形状記憶合金によって構成され、前記アームを前記初期形状に戻す復元力を有する第2の芯材と、チューブ形状を有し、前記第1の芯材および前記第2の芯材が内部に挿入される、弾性を有する被覆部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
前記形状記憶合金の変態温度は、使用者の体温以下であって、前記変態温度以上において、前記保持力よりも前記復元力が大きいことが好ましい。
【0008】
前記被覆部材は、前記アームの径方向において、前記第1の芯材および前記第2の芯材が非拘束状態となるように、前記第1の芯材および前記第2の芯材を収容することが好ましい。
【0009】
前記磁性体は、前記被覆部材に分散される磁粉を含むことが好ましい。
【0010】
前記磁性体は、固形磁石を含み、前記磁気治療器は、前記固形磁石を保持する磁石保持部材をさらに備え、前記磁石保持部材は、前記アームが前記磁石保持部材に挿入されることで、前記アームに移動可能に取り付けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、損傷が生じにくい磁気治療器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る磁気治療器が使用者の首部に装着された状態を示す模式的な斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る磁気治療器に用いられる第1の芯材の曲げ特性を示す説明図である。
【
図5】
図1の磁気治療器の模式的な部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る磁気治療器を説明する。ただし、以下の実施形態は一例であり、本発明の磁気治療器は、以下の例に限定されることはない。なお、本明細書では、磁気治療器の使用者の身体の身長方向のうち、頭部へ向かう方向を「上」またはこれに類する表現で呼び、脚部に向かう方向を「下」またはこれに類する表現で呼ぶことがある。
【0014】
本実施形態の磁気治療器1は、
図1に示されるように、使用者の首部Nに装着されて使用される。磁気治療器1は、以下で詳しく述べるように、首部Nに装着されることで、首部Nに磁性体31、32(磁性体31については、
図5参照)を位置付けて、首部Nに磁場を印加し、首部Nおよびその周辺の血行を促進したり、代謝を向上したりするなどの磁気治療効果をもたらす。磁気治療器1は、首部Nに沿う初期形状を有するアーム2と、アーム2に設けられた磁性体31、32とを含んでいる。磁気治療器1は、磁性体31、32のうちの固形磁石32を保持する磁石保持部材4と、アーム2の両端部に設けられるアーム終端部材5とをさらに含んでいてもよい。
【0015】
アーム2は、磁性体31、32を保持し、首部Nの周囲に配置される部材である。アーム2は、
図1に示されるように、磁器治療器1を首部Nに装着したときに、首部Nの周囲に配置される。アーム2の形状は、首部Nの周囲に配置可能であれば、特に限定されない。本実施形態では、アーム2は、
図2に示されるように、平面視で、両端部が互いに近づく方向に向かって延伸する略C字状の初期形状を有している。なお、本明細書において、「初期形状」とは、アーム2に外力が加えられていない状態、かつ、後述する第2の芯材22の復元力が作用した状態で、アーム2が維持する形状を指すものとする。アーム2が略C字状の初期形状を有することで、磁器治療器1を首部Nに装着したときに、アーム2が首部Nを取り囲むように配置されるので、磁器治療器1を装着したときの装着安定性が増す。しかし、アーム2は、両端部が略平行に延伸する略U字状の初期形状や、両端部が互いに離れる方向に向かって延伸する略V字状の初期形状を有していてもよい。アーム2の大きさは、首部Nに装着可能であれば、特に限定されない。アーム2は、本実施形態では、
図1に示されるように、首部Nの付根NB(首部Nの肩部Sとの境界付近の部位)に載置され得る大きさに設定されている。すなわち、アーム2は、本実施形態では、アーム2の初期形状への復元力により、首部Nに保持されるのではなく、アーム2が初期形状を有する状態で、首部Nの付根NBに載置される大きさに設定される。つまり、アーム2は、
図2に示されるように、磁気治療器1を首部Nに装着しようとするとき(装着前)に変形した状態(
図2中の二点鎖線参照)であるか否かに関係なく、磁気治療器1を装着しているとき(装着中)には、ほとんど変形していない状態(
図2中の実線参照)である。これにより、アーム2は、磁器治療器1の首部Nへの装着中に、変形による機械的負荷をほとんど受けることがないので、アーム2に損傷が発生しにくくなる。首部Nに保持されることなく首部Nに掛ける形態で磁気治療器1を装着可能とするために、アーム2の大きさは、好ましくは、表1(国立研究開発法人産業技術総合研究所による「人体寸法データベース」から引用)に示される日本人の首部Nの付根NBの幅を考慮して設定される。たとえば、初期形状におけるアーム2の内径W(対向するアーム2間の最大幅)は、使用者が女性であることを想定して、女性の首部Nの付根NBの幅の2.5パーセンタイル値±3%以内に設定することができる。しかし、初期形状におけるアーム2の内径Wは、使用者が男性であることを想定して、男性の首部Nの付根NBの幅の2.5パーセンタイル値±3%以内に設定されてもよく、使用者が男性および女性であることを想定して、男性および女性の首部Nの付根NBの幅の2.5パーセンタイル値±3%以内に設定されてもよい。また、アーム2の内径Wの設定値の基準は、2.5パーセンタイル値に限定されず、5パーセントタイル値またはそれ以上のパーセントタイル値を基準とし、それらの値から±1~3%以内に設定されてもよい。
【0016】
【0017】
アーム2は、
図3に示されるように、アーム2の骨格をなす第1の芯材21および第2の芯材22と、アーム2の外郭をなす被覆部材23とを備えている。なお、アーム2は、後述する形状保持機能(第1の芯材21)および形状復元機能(第2の芯材22)以外の付加的な機能を芯材から得るために、第1の芯材21および第2の芯材22以外の芯材を備えていてもよい。
【0018】
第1の芯材21は、外力が加えられたときの変形した形状を保持するように作用する保持力を有する。つまり、第1の芯材21は、可塑性を有する。第1の芯材21として形状保持機能を有する芯材を使用することで、
図2に示されるように、磁気治療器1を首部Nに装着するときに(
図1参照)、首部Nの挿入しやすいようにアーム2を変形させてアーム2の幅を拡大させた状態(
図2中の二点鎖線参照)に保持することが容易になる。本実施形態では、
図2に示されるように、第1の芯材21の長さは、第1の芯材21が収容される被覆部材23の長さより長い。第1の芯材21は、本実施形態では、その両端部210が被覆部材23から突出するように収容され、後述するように、突出した両端部210でアーム終端部材5を介して被覆部材23に固定される。つまり、第1の芯材21は、本実施形態では、被覆部材23に直接固定されず、被覆部材23に摺動可能に収容されている。第1の芯材21の端部210は、本実施形態では、
図5に示されるように、第1の芯材21の残余の部分よりも幅広な略波形形状を有しており、波形形状の凹部210aは、後述するアーム終端部材5内部の凸部5aに嵌合する。これにより、第1の芯材21がアーム終端部材5に固定される。しかし、第1の芯材21の端部210に凸部が形成され、アーム終端部材5内部に凹部が形成され、第1の芯材21の凸部とアーム終端部材5の凹部が嵌合することで、第1の芯材21がアーム終端部材5に固定されてもよい。
【0019】
第1の芯材21の材質は、変形した状態を保持する保持力を有すれば、特に限定されない。第1の芯材21は、本実施形態では、形状保持機能を有する樹脂材料によって構成される。第1の芯材21を樹脂材料によって構成することで、第1の芯材21の軽量化、ひいては、磁気治療器1の軽量化を図ることができる。第1の芯材21は、具体的には、密度が900kg/m
3以上であるエチレン単独重合体またはエチレン・オレフィン共重合体などのポリエチレン樹脂によって構成される。このような高密度な樹脂材料として、たとえば、積水成型工業(株)製のフォルテ(登録商標)、三井化学(株)製のテクノロート(登録商標)などの市販の高密度ポリエチレン樹脂が挙げられる。第1の芯材21の形状保持機能は、
図4に示されるように、たとえば、第1の芯材21を直線の状態から90度に曲げ(
図4中の実線部分参照)、その後に、曲げた部分が戻る(
図4中の破線部分参照)角度θ(以下、「90度曲げによる戻り角度θ」という)によって評価することができる。本実施形態では、第1の芯材21は、90度曲げによる戻り角度θが15度以下であることが好ましく、90度曲げによる戻り角度θが10度以下であることがより好ましく、90度曲げによる戻り角度θが8度以下であることがさらに好ましい。
【0020】
第1の芯材21は、本実施形態では、帯状に形成されており、
図3に示されるように、その断面が、一方向に延びる形状(より具体的には、長方形状)を有している。これにより、第1の芯材21の断面の短手方向が長手方向より変形し易くなるので、本実施形態のように短手方向が首部Nに向くように第1の芯材21を被覆部材23に収容すれば、アーム2が首部Nに対向する方向に変形しやすくなる。しかし、第1の芯材21の形状は、変形した形状を保持する保持力を生じさせることができれば、特に限定されない。第1の芯材21の断面は、楕円形状を有していてもよく、たとえば、第1の芯材21が線状に形成され、その断面が円形状や正方形状を有していてもよい。
【0021】
第1の芯材21は、本実施形態では、
図5に示されるように、アーム2(被覆部材23)の全長に亘って連続的に延伸する一本の芯材として設けられている。第1の芯材21を被覆部材23の全長に亘る一本の芯材とすることで、アーム2を変形させたときに、芯材が設けられない部分など、機械的に不連続となる部分でアーム2に局所的に機械的負荷が加わることが抑制される。しかし、第1の芯材21は、たとえば、磁石保持部材4と一方のアーム終端部材5との間と、磁石保持部材4と他方のアーム終端部材5との間に分けて2本設けられるなど、アーム2(被覆部材23)の延伸方向で複数に分割して設けられてもよい。また、第1の芯材21は、アーム2(被覆部材23)の全長に亘って連続的に延在する複数本の芯材として設けられてもよい。
【0022】
第2の芯材22は、形状記憶合金によって構成される。第2の芯材22として形状記憶合金を使用することで、アーム2が形状記憶合金によって延伸方向に亘って均一に変形し易くなり、局所的な変形によるアーム2への機械的負荷が抑制される。これにより、第1の芯材21の破断などの損傷が抑制される。本実施形態では、
図5に示されるように、第2の芯材22の長さは、第2の芯材22が収容される被覆部材23の長さと略同等である。そのため、第2の芯材22は、本実施形態では、その全体が被覆部材23に内包されるように収容され、後述するように、アーム終端部材5をアーム2に取り付けたときに、その端部は、被覆部材23に固定されない。つまり、第2の芯材22は、被覆部材23に摺動可能に収容されている。
【0023】
第2の芯材22は、アーム2を初期形状に戻す復元力を有する。具体的には、第2の芯材22は、形状記憶合金の相変態によって、変態温度以上になると所定の形状に戻る復元力を発現する。第2の芯材22の所定の形状は、アーム2の初期形状(本実施形態では、C字状)に沿うように設定されている。本実施形態では、第2の芯材22を構成する形状記憶合金の変態温度は、使用者の体温(たとえば、36℃)以下であって、変態温度以上において、第1の芯材21の保持力よりも第2の芯材22の復元力が大きい。そのため、第2の芯材22を構成する形状記憶合金の変態温度以上になると、アーム2は、第1の芯材21の保持力に抗して初期形状へと戻ることができる。形状記憶合金の変態温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。第2の芯材22は、たとえば、鉄系形状記憶合金、銅系形状記憶合金、ニチノール系形状記憶合金によって構成することができる。鉄系形状記憶合金として、Fe-Mn-Si合金などが挙げられる。銅系形状記憶合金として、Cu-Zn-Al合金またはCu-Al-Ni合金などが挙げられる。ニチノール系形状記憶合金として、Ni-Ti合金、Ni-Ti-Co合金、Ni-Ti-Cu合金などが挙げられる。これらの形状記憶合金の中でも、熱機械特性に優れたニチノール系形状記憶合金が、第2の芯材22の材料として好ましい。
【0024】
第2の芯材22は、本実施形態では、線状に形成されており、
図3に示されるように、その断面が、円形状を有している。しかし、第2の芯材22の形状は、アーム2を初期形状に戻す復元力を生じさせることができれば、特に限定されない。第2の芯材22の断面は、正方形状であってもよく、あるいは、たとえば、第2の芯材22が帯状に形成され、その断面が一方向に延びる形状(たとえば、長方形状や楕円形状)を有していてもよい。第2の芯材22は、本実施形態では、
図5に示されるように、アーム2(被覆部材23)の全長に亘って連続的に延在する一本の芯材として設けられている。第2の芯材22を被覆部材23の全長に亘る一本の芯材とすることで、アーム2を変形させたときに、芯材が設けられない部分など、機械的に不連続となる部分でアーム2に局所的に機械的負荷が加わることが抑制される。しかし、第2の芯材22は、たとえば、磁石保持部材4と一方のアーム終端部材5との間と、磁石保持部材4と他方のアーム終端部材5との間に分けて2本設けられるなど、アーム2(被覆部材23)の延伸方向で複数に分割して設けられてもよい。また、第2の芯材22は、アーム2(被覆部材23)の全長に亘って連続的に延在する複数本の芯材として設けられてもよい。
【0025】
被覆部材23は、
図3に示されるように、第1の芯材21および第2の芯材22を被覆する部材であり、第1の芯材21および第2の芯材22を保護する。被覆部材23は、
図2および
図3に示されるように、チューブ形状を有し、第1の芯材21および第2の芯材22が内部に挿入される。被覆部材23は、第1の芯材21および第2の芯材22の変形に追従し得るように、弾性を有している。被覆部材23の内部での第1の芯材21および第2の芯材22の配置は、特に限定されない。本実施形態では、被覆部材23は、
図3に示されるように、第1の芯材21および第2の芯材22がアーム2の延伸面に略垂直な方向VDに並んで配置されるように、第1の芯材21および第2の芯材22を内部に収容している。このようにすれば、アーム2の主要な変形モードであるアーム2の径を拡縮させる変形の際に、第1の芯材21および第2の芯材22の両方が変形する方向で被覆部材23と接触する。そのため、第1の芯材21の変形の保持力および第2の芯材22の変形からの復元力が、被覆部材23に効果的に作用する。しかし、被覆部材23は、第1の芯材21および第2の芯材22がアーム2の延伸面に略平行な方向HDに並んで配置されるように、第1の芯材21および第2の芯材22を内部に収容してもよい。この場合、第2の芯材22が第1の芯材21よりアーム2の径方向の内側に配置されてもよく、第2の芯材22が第1の芯材21よりアーム2の径方向の外側に配置されてもよい。
【0026】
被覆部材23は、本実施形態では、アーム2の延伸方向において、第1の芯材21が拘束状態となり、第2の芯材22が非拘束状態となるように、第1の芯材21および第2の芯材22を収容している。より具体的には、
図5に示されるように、被覆部材23は、アーム終端部材5を介して、第1の芯材21の両端部210を固定しているが、第2の芯材22の両端部を固定していない。つまり、第2の芯材22は、アーム2の延伸方向で拘束状態である第1の芯材21よりも変形・復元動作しやすく、第2の芯材22の変形からの復元力は、第1の芯材21の変形の保持力よりも働きやすい。そのため、アーム2全体としての復元力が高まる。しかし、アーム2全体としての変形の保持力を高めたい場合には、被覆部材23は、アーム2の延伸方向において、第1の芯材21が非拘束状態となり、第2の芯材22が拘束状態となるように、第1の芯材21および第2の芯材22を収容してもよい。
【0027】
被覆部材23は、本実施形態では、アーム2の径方向において、第1の芯材21および第2の芯材22が非拘束状態となるように、第1の芯材21および第2の芯材22を収容している。より具体的には、
図3に示されるように、被覆部材23は、第1の芯材21および第2の芯材22と側面で結合していない。これにより、被覆部材23は、第1の芯材21および第2の芯材22に過度に追従することなく変形するので、被覆部材23の変形による機械的負荷が抑制される。被覆部材23は、本実施形態では、予め成形された後に、第1の芯材21および第2の芯材22を内部に挿入することで、第1の芯材21および第2の芯材22を収容している。これにより、射出成形などによる芯材21、22と被覆部材23との一体的な熱成形を経ずにアーム2を作製することが可能となるので、熱成形による芯材21、22の熱劣化が抑制される。特に樹脂材料は、熱履歴を受けることで脆くなりやすい。第1の芯材21が樹脂材料によって構成されている場合には、第1の芯材21は、熱履歴を回避することで、強度の低下が抑制される。それによって、第1の芯材21の損傷が抑制される。
【0028】
被覆部材23の材質は、第1の芯材21および第2の芯材22の変形に追従し得る弾性を有すれば、特に限定されない。被覆部材23を構成する材料としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム(U)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(SBR)、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などの熱硬化性エラストマー、またはウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系などの熱可塑性エラストマー、またはそれらの複合物などが挙げられる。これらの材料の中でも、耐熱性および耐寒性に優れるシリコーンゴムが特に好ましい。本実施形態では、被覆部材23は、後述するように、磁粉31を分散した状態で含んでいる。これにより、被覆部材23(アーム2)の全長に亘って磁場を生成し得るので、使用者の首部N(
図1参照)の広い範囲に磁気治療効果を及ぼすことができる。
【0029】
磁性体31、32は、磁場を生成し、特に、使用者の首部Nに対して影響(たとえば磁気治療効果)を及ぼし得る磁場を生成する。磁性体31、32(磁性体31については、
図3参照、磁性体32については、
図1など参照)は、使用者の首部Nに対して磁気治療効果を及ぼし得る磁力線を発生させることができればよく、その磁極方向は特に限定されない。たとえば、磁性体31、32は、首部Nの表面に対して略垂直方向に磁極方向が向くようにアーム2に取り付けられてもよい。磁性体31、32は、本実施形態では、被覆部材23に分散される磁粉31(
図3参照)と、磁石保持部材4に保持される固形磁石32を含む。しかし、磁性体31、32は、磁粉31および固形磁石32の一方のみであってもよく、たとえば、被覆部材23に固形磁石32が埋設され、磁石保持部材4に磁粉31が分散されるなど、その他の形態で、アーム2に設けられてもよい。
【0030】
磁粉31は、磁性材料の微粉末である。本実施形態では、
図3に示されるように、磁粉31は、シリコーンゴムなどの被覆部材23の母材中に均一に分散されている。磁粉31が被覆部材23に均一に分散されることで、使用者の首部N全体に均一な磁気治療効果を及ぼすことができる。しかし、使用者の首部N(
図1参照)の局所的な部位のみに磁気治療効果を及ぼしたい場合などには、磁気治療器1の装着中に、その部位に対応する被覆部材23の部分が高密度になるように、被覆部材23の母材中に分散されていてもよい。磁粉31の材質は、使用者の首部Nに磁気治療効果を及すことができれば、特に限定されない。磁粉31を構成する材料としては、フェライト磁石、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石などが挙げられる。磁粉31の出力レベルは、特に限定されることはないが、たとえば、皮膚表面上において、厚生労働省の認証基準である200mT以下となるように設定することができる。
【0031】
固形磁石32は、たとえば、磁性材料を成形して焼成することで得られる。固形磁石32は、本実施形態では、
図6に示されるように、磁石保持部材4において、首部N(
図1参照)に面する面Fに配置される。より具体的には、固形磁石32は、磁石保持部材4において、首部Nに面する面Fから露出するように配置されている。固形磁石32が首部Nに面する面Fから露出するように配置されることで、磁気治療器1が首部Nに装着されたときに、固形磁石32が首部Nに押圧されて首部Nへのマッサージ効果を及ぼすことできる。しかし、固形磁石32は、首部Nに磁気治療効果を及し得れば、特に限定されず、磁石保持部材4から露出しないように磁石保持部材4に埋設されていてもよい。固形磁石32の材質は、使用者の首部Nに磁気治療効果を及すことができれば、特に限定されない。固形磁石32を構成する材料としては、フェライト磁石、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石などが挙げられる。固形磁石32の出力レベルは、特に限定されることはないが、たとえば、皮膚表面上において、厚生労働省の認証基準である200mT以下となるように設定することができる。固形磁石32は、人体の皮膚に直接接触することを避けるために、シリコーン樹脂などによって被覆されてもよい。固形磁石32は、本実施形態では、磁石保持部材4において、アーム2の延伸方向に複数(具体的には、4つ)並ぶように磁石保持部材4に配置されているが、磁石保持部材4に1つ配置されるなど、その他の形態で磁石保持部材4に配置されてもよい。
【0032】
磁石保持部材4は、固形磁石32を保持する部材である。本実施形態では、
図6に示されるように、磁石保持部材4は、アーム2に取り付けられる。磁石保持部材4のアーム2への取付位置は、特に限定されない。磁石保持部材4は、移動可能にアーム2に取り付けられてもよく、磁石保持部材4は、アーム2の中央部分(首部N(
図1参照)の後側に対応する部位)に固定されてもよい。磁石保持部材4がアーム2に移動可能に取り付けられる場合、磁気治療器1が首部Nに装着されたときに(
図1参照)、磁石保持部材4は、首部Nの所望の部位に面するように位置付けることができる。これにより、磁石保持部材4が固形磁石32より生成する磁場を首部Nの所望の部位に及ぼし易くなる。磁石保持部材4がアーム2の中央部分に固定される場合、磁気治療器1が中心軸CLに対して線対称に構成されることとなるので、磁気治療器1の重心が中心軸CLから偏ることにより生じる、首部Nからの磁気治療器1の離脱が防止される。磁石保持部材4の材質は、固形磁石32を保持可能であるために要求される強度を有すれば、特に限定されない。磁石保持部材4は、本実施形態では、ポリプロピレン(PP)などの結晶性を有する樹脂材料によって構成される。結晶性を有する樹脂材料によって構成することで、磁石保持部材4に強靭性が備わるので、磁石保持部材4の破損を防止することができる。しかし、磁石保持部材4は、ポリスチレン(PS)などの非結晶性を有する樹脂材料によって構成されてもよい。
【0033】
磁石保持部材4は、本実施形態では、
図6に示されるように、アーム2を挿入するための挿入孔4aを有し、アーム2が挿入孔4aに挿入されることで、アーム2に取り付けられる。挿入孔4aは、所定の方向で磁石保持部材4を貫通するように設けられる。磁石保持部材4がアーム2に移動可能に取り付けられる場合には、挿入孔4aを囲む周壁がアーム2を遊嵌し、磁石保持部材4がアーム2に固定される場合には、挿入孔4aを囲む周壁がアーム2を挟持する。磁石保持部材4は、本実施形態では、アーム2に沿う方向に長い長尺形状を有し、磁気治療器1が首部Nに装着されたときに(
図1参照)、首部Nに面する面Fが首部Nに沿うように位置付けられる。これにより、磁石保持部材4は、固形磁石32から生成される磁場を首部Nに及ぼし易くなる。磁石保持部材4は、本実施形態では、挿入孔4aが設けられる保持部材下部42と、保持部材下部42からアーム2の延伸面に略垂直な方向VDに突出する、固形磁石32が設けられる保持部材上部41とを有している。これにより、アーム2が首部Nの付根NBに載置されるように磁気治療器1を首部Nに装着したときに、固形磁石32が設けられる保持部材上部41が首部Nの中央付近に位置付けられる。そのため、固形磁石32による磁気治療効果を首部N全体に及ぼすことができる。磁石保持部材4は、本実施形態では、アーム2の挿入方向において、保持部材上部41が保持部材下部42より幅広となるように構成されている。これにより、首部Nの中央部に対応する保持部材上部41に複数の固形磁石32を配置するためのスペースを確保できるとともに、アーム2に対して機械的負荷を加え得る挿入孔4aを小さく形成することができる。本実施形態では、磁石保持部材4は、保持部材上部41が保持部材下部42より幅広となるように、正面視で略三角形状(より具体的には、略二等辺三角形状)を有しているが、下向きの略凸字形状など、その他の正面視形状を有していてもよい。
【0034】
アーム終端部材5は、
図2に示されるように、アーム2の両端部に設けられる一対の部材であり、被覆部材23の内部に収容される第1の芯材21および第2の芯材22がアーム2の両端部から露出しないように保護する。アーム終端部材5は、アーム2の両端部で被覆部材23に取り付けることができる。アーム終端部材5がアーム2の両端部に取り付けられることで、磁気治療器1の重心Cが、アーム2に囲まれる空間の中心に位置付けられる。これにより、磁気治療器1を首部Nに装着したときに(
図1参照)、磁気治療器1の重心Cが装着対象となる首部Nの中心と略一致するので、磁気治療器1を首部Nに装着したときの安定性が増す。アーム終端部材5は、本実施形態では、アーム2の径より大きい径で形成され、好ましくは、使用者の手で把持し易い大きさに形成される。これにより、アーム終端部材5は、アーム2の径を拡大させるように変形させて首部Nに装着する際などに、使用者が磁気治療器1を把持する把持部としても機能し得る。アーム終端部材5の材質は、第1の芯材21および/または第2の芯材22を保持可能であるために要求される強度を有すれば、特に限定されない。アーム終端部材5は、本実施形態では、ポリプロピレン(PP)などの結晶性を有する樹脂材料によって構成される。結晶性を有する樹脂材料によって構成することで、アーム終端部材5に強靭性が備わるので、アーム終端部材5の破損を防止することができる。しかし、アーム終端部材5は、ポリスチレン(PS)などの非結晶性を有する樹脂材料によって構成されてもよい。
【0035】
アーム終端部材5は、
図2に示されるように、第1の芯材21および第2の芯材22の少なくともいずれかの端部を保持することもできる。本実施形態では、アーム終端部材5は、第1の芯材21の端部210を保持している。アーム終端部材5が第1の芯材21の端部210を保持することで、第1の芯材21は、アーム終端部材5を介して被覆部材23に固定され、アーム2の延伸方向で拘束される。具体的には、
図5に示されるように、アーム終端部材5は、中空の内部に凸部5aを有しており、凸部5aが第1の芯材21の端部210の凹部210aと嵌合することで、第1の芯材21は、アーム終端部材5に固定される。しかし、アーム終端部材5が第2の芯材22の端部210を保持することで、第2の芯材22が、アーム終端部材5を介して被覆部材23に固定されてもよく、アーム終端部材5が第1の芯材21および第2の芯材22の端部を保持することで、第1の芯材21および第2の芯材22が、アーム終端部材5を介して被覆部材23に固定されてもよい。本実施形態では、アーム終端部材5の取り付けは、アーム2の端部を挟み込むように、アーム2の延伸方向に沿って分割されたアーム終端部材5を結合(たとえば、係合)させてアーム2の端部を挟持することによって行う。これにより、アーム終端部材5を簡便にアーム2の両端部に取り付けることができる。上述のように、アーム終端部材5が第1の芯材21および/または第2の芯材22の端部を保持する場合には、アーム終端部材5を結合させるときに、第1の芯材21および/または第2の芯材22の端部をも挟み込んでアーム終端部材5に挟持させる。しかし、アーム終端部材5のアーム2への取り付けは、特に限定されず、アーム2の端部へのアーム終端部材5の挿入や、アーム2との一体的な成形など、その他の手法により行われてもよい。
【0036】
以上のように構成される本実施形態に係る磁気治療器1によれば、アーム2は、外力が加えられたときの変形した形状を保持するように作用する保持力を有する第1の芯材21と、形状記憶合金によって構成される第2の芯材22とを備えている。これにより、アーム2に外力が加えられた場合に、第1の芯材21の保持力によって保持されるアーム2の変形は、第2の芯材22を構成する形状記憶合金によって均一になりやすく、変形によるアーム2への機械的負荷は、アーム2の全部分で均一になりやすい。そのため、強度が比較的弱い樹脂材料によって第1の芯材21が構成される場合にも、局所的に大きく変形した部分に加わる過度の機械的負荷に起因して第1の芯材21が破断するなどの損傷が抑制される。これにより、損傷を生じにくい磁気治療器1を得ることができる。
【0037】
本実施形態に係る磁気治療器1によれば、第2の芯材22を構成する形状記憶合金の変態温度は、使用者の体温以下であって、変態温度以上において、保持力よりも復元力が大きい。そのため、磁気治療器1が装着されるときにアーム2が変形されても、体温によって温められることで、アーム2は、保持力に勝る復元力によって初期形状に戻る。これにより、磁気治療器1が使用者の首部Nに適切に装着される。これにより、損傷を生じにくい磁気治療器1を得ることができる。
【0038】
本実施形態に係る磁気治療器1によれば、被覆部材23は、アーム2の径方向において、第1の芯材21および第2の芯材22が非拘束状態となるように、第1の芯材21および第2の芯材22を収容している。より具体的には、被覆部材23は、第1の芯材21および第2の芯材22と側面で結合していない。そのため、被覆部材23は、第1の芯材21および第2の芯材22に過度に追従することなく変形するので、被覆部材23の変形による機械的負荷が抑制される。これにより、変形による第1の芯材21の破断などの損傷の発生がさらに抑制される。これに対し、特許文献1の磁気治療器では、アームが射出成形によって作製されることで、被覆部材は芯材と側面で接合しているので、磁気治療器を装着するときに、被覆部材が芯材の変形に追従して、互いに対して過度の機械的負荷を与えることがある。このような過度の負荷によって、磁気治療器に損傷が発生することがあり、特に、繰り返し使用によって、この損傷は、助長される。
【0039】
本実施形態に係る磁気治療器1によれば、被覆部材23は、第1の芯材21および第2の芯材22とともに射出成形などによって一体的に熱成形されるのではなく、予め成形された被覆部材23の内部に第1の芯材21および第2の芯材22を挿入することで、第1の芯材21および第2の芯材22を収容している。そのため、射出成形などの熱成形による第1の芯材21および第2の芯材22に熱劣化が防止される。これにより、変形による第1の芯材21の破断などの損傷の発生がさらに抑制される。これに対し、特許文献1の磁気治療器では、アームが射出成形によって高温下で作製されているので、芯材や被覆部材に射出成形による熱劣化を生じることがある。このような熱劣化によって、磁気治療器に損傷が発生することがあり、特に、繰り返し使用によって、この損傷は、助長される。
【符号の説明】
【0040】
1 磁気治療器
2 アーム
21 第1の芯材
210 第1の芯材の端部
210a 凹部
22 第2の芯材
23 被覆部材
31、32 磁性体
31 磁粉
32 固形磁石
4 磁石保持部材
4a 挿入孔
41 保持部材上部
42 保持部材下部
5 アーム終端部材
5a 凸部
C 重心
CL 中心軸
F 首部に面する面
N 首部
NB 首部の付根
S 肩部
VD アームの延伸面に略垂直な方向
HD アームの延伸面に略平行な方向
W 内径
θ 90度曲げによる戻り角度