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  • 特開-梁貫通孔補強リング 図1
  • 特開-梁貫通孔補強リング 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026124
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】梁貫通孔補強リング
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/08 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
E04C3/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129442
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】592173124
【氏名又は名称】日本ファブテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】沼田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】高山 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】橋田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩二
【テーマコード(参考)】
2E163
【Fターム(参考)】
2E163FA12
2E163FB02
2E163FB23
(57)【要約】
【課題】最外径を抑えながら今までよりも大きい耐力を得ることができる補強リングを提供する。
【解決手段】鋼構造建物の梁1に形成された梁貫通孔4を補強する補強リング5であって、外周面6が45度の傾斜角度を持つ外観円錐台状の第1リング部7と、第1リング部7の最外径と同じ最外径を有し第1リング部7の大径側の側面から突出する外観円筒状の第2リング部9と、第1リング部7の内側空間及び第2リング部9の内側空間によって形成される円筒状のリング貫通孔10と、を有して構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼構造建物の梁に形成された梁貫通孔を補強する補強リングであって、外周面が傾斜角度を持つ外観円錐台状の第1リング部と、前記第1リング部の最外径と同じ最外径を有し前記第1リング部の大径側の側面から突出する外観円筒状の第2リング部と、前記第1リング部の内側空間及び前記第2リング部の内側空間によって形成される円筒状のリング貫通孔と、を有することを特徴とする梁貫通孔補強リング。
【請求項2】
リング断面形状における径方向の最リング幅より軸方向のリング厚を大きくすることを特徴とする梁貫通孔補強リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨梁のウエブに穿設された梁貫通孔部分の補強に使用する補強リングに関する。
【背景技術】
【0002】
H形鋼やI形鋼は、建築構造物の梁として広く用いられているが、このような梁にあっては、建築構造物の内部に設けられる配管や配線を通過させるため、梁のウエブ部に貫通孔を形成することがある。この場合、梁の強度低下を防ぐために、梁貫通孔に補強用の金具を取り付けることがある。
【0003】
このような補強用金具として、本出願人は、外周面が40度から50度の傾斜角度を持つ外観円錐台状の補強リングを鋼板から切断により切出し、補強リングを建築構造物の梁に形成された梁貫通孔に装着し、補強リングの外周面と梁貫通孔の内周面との間に形成される開先部を溶接固定するものを先に提案した(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5343020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の補強リングは、外観円錐台状に形成されており、リング厚の全体に渡って40度から50度の傾斜角度を持つ外周面が設けられているため、耐力を上げる目的でリング厚を大きくすると、それに伴い最外径も大きくなり、梁フランジや隣接する他の補強リングとの間に必要な距離を確保できなくなるため、補強できる範囲が限定されるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点に着目し、最外径を抑えながら今までよりも大きい耐力を得ることができる補強リングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の補強リングは、鋼構造建物の梁に形成された梁貫通孔を補強する補強リングであって、外周面が傾斜角度を持つ外観円錐台状の第1リング部と、前記第1リング部の最外径と同じ最外径を有し前記第1リング部の大径側の側面から突出する外観円筒状の第2リング部と、前記第1リング部の内側空間及び前記第2リング部の内側空間によって形成される円筒状のリング貫通孔と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明の補強リングにおいては、リング断面形状における径方向の最リング幅よりも軸方向のリング厚が大きくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の補強リングでは、外周面が傾斜角度を持つ外観円錐台状の第1リング部と、前記第1リング部の最外径と同じ最外径を有し前記第1リング部の大径側の側面から突出する外観円筒状の第2リング部と、前記第1リング部の内側空間及び前記第2リング部の内側空間によって形成される円筒状のリング貫通孔と、を有するので、第2リング部によって補強リングの最外径を抑えながらリング断面を大きくすることができ、今までよりも大きい耐力を得ることができる。
【0010】
リング断面形状における径方向の最リング幅より軸方向のリング厚を大きくすることにより、同じ耐力の補強リングを得る場合、リング断面形状における径方向の最リング幅より軸方向のリング厚が小さい補強リングに比べて重量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る梁貫通孔補強リングを示す使用状態での断面図である。
図2図1の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る梁貫通孔補強リングを示す使用状態での断面図、図2図1の要部拡大断面図である。
【0013】
図中1はH形鋼やI形鋼で形成された鋼構造物の梁(鉄骨梁)であり、ウエブ2と上下フランジ3とを有している。4はウエブ2に穿設された円形の梁貫通孔である。この梁貫通孔4が形成されているウエブ2の強度低下を補うために、この梁貫通孔4の形成部分を梁貫通孔補強リング5で補強する。
【0014】
この補強リング5は、一般構造用圧延鋼板、溶接構造用圧延鋼板、建築構造用圧延鋼板、国土交通大臣認定TMCP鋼板などの鋼板から切断により切り出して形成してあり、例えば、鋼板から断面形状が矩形の円板を切り抜き、その円板の両側面(断面形状では長辺
)に対して直交する外周面(断面形状では短辺)と一方の側面(断面形状では一方の長辺)とで形成される一方の角部を斜めに切り落とし、その円板からそれより所定寸法小径の同心な小径円板(断面形状が矩形の円板)を切り抜き、円形リング状に形成してある。ここで、補強リング5は、ウエブ2の厚みより厚い鋼板から切り出すようにしてある。角部の切り落としと小径円板の切り抜きはどちらを先に行ってもよい。鋼板からの切り出し切断方式としては、ガス切断、レーザ切断、プラズマ切断などを使用することができる。
【0015】
そして、補強リング5は、40度から50度、好ましくは図示する45度の傾斜角度を持つ外周面6を設けた外観円錐台状の第1リング部7(図2の二点鎖線より上側の部分)と、傾斜角度を持たない外周面8を設け、第1リング部7の最外径と同じ最外径を有し第1リング部7の大径側の側面から突出する外観円筒状の第2リング部9(図2の二点鎖線より下側の部分)と、第1リング部7の内部空間及び第2リング部9の内部空間によって形成される円筒状のリング貫通孔10と、を一体的に有して構成されている。
【0016】
また、補強リング5は、リング断面形状における径方向の最リング幅(第1リング部7及び第2リング部9の最外径-第1リング部7及び第2リング部9の内径)よりも軸方向のリング厚(第1リング部7のリング厚+第2リング部9のリング厚)を大きくしてあり、図2においては縦長のリング断面形状を有している。
【0017】
なお、梁貫通孔4の孔径は、補強リング5の孔径(リング貫通孔10の孔径)より大きく、且つ、第1リング部7及び第2リング部9の最外径、すなわち補強リング5の最外径より小さい。
【0018】
このような補強リング5は、梁1のウエブ2に穿設された梁貫通孔4に嵌め込み、補強リング5とウエブ2を溶接で接合することで、梁貫通孔4を補強する。具体的には、補強リング5は、梁1のウエブ2に穿設された梁貫通孔4に補強リング5の第1リング部7を挿入し、第1リング部7の45度の傾斜角度を持つ外周面6を梁貫通孔4における第1リング部7の挿入手前側に位置している周端縁部11に当接させた状態で、ウエブ2における第1リング部7の挿入手前側に位置している側面と第1リング部7の外周面6との間に形成されるレ形の裏面開先部12の周方向2~4箇所に組立溶接を行い、その後、ウエブ2の梁貫通孔4の内周面と第1リング部7の外周面6との間に形成されるレ形の表面開先部12の周方向全周に渡って片面部分溶け込み溶接を行い、補強リング5とウエブ2を溶接固定する。この使用状態において、梁1のウエブ2には補強リング5のリング貫通孔10が配管や配線を通過させるための梁貫通孔として設けられることになる。
【0019】
そして、このような補強リング5では、第2リング部9の厚みを薄くしたり厚くすることで、補強リング5の最外径を大きくすることなく、補強リング5のリング断面を小さくしたり大きくすることができ、梁1のフランジ3や隣接する他の補強リングとの間に必要な距離を確保しながら、補強リング5に所望の耐力を付与することができ、補強リング5を補強できる範囲が限定されることがない。
【0020】
以上から明らかなように本実施形態の補強リング5は、鋼構造建物の梁1に形成された梁貫通孔4を補強する補強リングであって、外周面6が傾斜角度を持つ外観円錐台状の第1リング部7と、第1リング部7の最外径と同じ最外径を有し第1リング部7の大径側の側面から突出する外観円筒状の第2リング部9と、第1リング部7の内側空間及び第2リング部9の内側空間によって形成される円筒状のリング貫通孔10と、を有するので、第2リング部9によって補強リング5の最外径を抑えながらリング断面を大きくすることができ、今までよりも大きい耐力を得ることができる。
【0021】
また、リング断面形状における径方向の最リング幅より軸方向のリング厚を大きくするので、同じ耐力の補強リングを得る場合、リング断面形状における径方向の最リング幅より軸方向のリング厚が小さい補強リングに比べて重量を減らすことができ、補強リング5の軽量化を図ることができる。
【0022】
なお、補強リング5では、第1リング部7の外周面6上にウエブ受け止め突起及び溶接範囲ガイド溝を設けてもよい。このウエブ受け止め突起は、第1リング部7の外周面6から軸方向に突出する周側面と、第1リング部7の外周面6から径方向に突出する円盤状の小径側平面とで段状に形成される。ウエブ受け止め突起の径方向への突出量と軸方向への突出量はそれぞれ4~8mmに設定される。そして、梁1のウエブ2に穿設された梁貫通孔4に補強リング5の第1リング部7を挿入し、ウエブ2における第1リング部7の挿入手前側に位置している側面をウエブ受け止め突起の小径側平面に当接させることで、補強リング5のリング貫通孔10の軸芯とウエブ2の側面とが直交する状態に、補強リング5がウエブ2の梁貫通孔4に取り付けられることになる。ウエブ受け止め突起は階段状に複数段設けることもできる。また、溶接範囲ガイド溝は、ウエブ受け止め突起の小径側平面よりも小径側に位置する第1リング部7の外周面6上に、ウエブ受け止め突起の小径側平面から設計のど厚寸法に見合う寸法離して第1リング部7の外周面6の周方向全周に渡って刻設される。ウエブ2の梁貫通孔4の内周面と第1リング部7の外周面6との間に形成されるレ形の表面開先部12の周方向全周に渡って片面部分溶け込み溶接を行う際、溶接範囲ガイド溝が溶接金属で隠れる状態まで片面部分溶け込み溶接を行うと、施工のど厚は設計のど厚を満足することになる。
【符号の説明】
【0023】
1・・・鉄骨梁、4・・・梁貫通孔、5・・・補強リング、6・・・外周面、7・・・第1リング部、9・・・第2リング部、10・・・リング貫通孔。
図1
図2