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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026159
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】起振器およびせん断波起振方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20220203BHJP
   E02D 5/24 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
E02D1/00
E02D5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129489
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】510189950
【氏名又は名称】市原 道三
(71)【出願人】
【識別番号】593153406
【氏名又は名称】岩淵 常太郎
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 道三
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 常太郎
【テーマコード(参考)】
2D041
2D043
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041FA12
2D043AB08
2D043AC05
2D043BA10
(57)【要約】
【課題】簡易な設備により、測定対象地盤の地質に限定されることなく、地中においてせん断波を発生させることを可能とした起振器およびせん断波起振方法を提案する。
【解決手段】地盤に形成された掘削孔内において掘削孔内の粒状物との間で生じる摩擦により地中でせん断波を発生させる起振器4である。起振器4は、縦軸を中心に回転する本体部41と、本体部41の下面周縁から下向きに突出する壁体42とを備えており、本体部41および壁体42により形成された凹部44に粒状物の一部を取り込むことが可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された掘削孔内において前記掘削孔内の粒状物との間で生じる摩擦により地中でせん断波を発生させる起振器であって、
縦軸を中心に回転する本体部と、
前記本体部の下面周縁から下向きに突出する壁体と、を備えており、
前記本体部および前記壁体により形成された凹部に前記粒状物の一部を取り込むことが可能であることを特徴とする、起振器。
【請求項2】
前記凹部内の水を排出可能な水抜き孔を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の起振器。
【請求項3】
前記本体部の下面および前記壁体の内面が凹凸面であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の起振器。
【請求項4】
前記本体部の上部に、前記本体部と同等の断面形状を有する増幅器具が固定されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の起振器。
【請求項5】
先端に起振器が固定された筒体を掘削孔に挿入する設置工程と、
前記筒体を回転させることで前記掘削孔内の粒状物と前記起振器との間に生じる摩擦によりせん断波を発生させる起振工程と、を備えるせん断波起振方法であって、
前記起振器には、下向きに開口する凹部が形成されており、
前記起振工程では、前記凹部に前記粒状物の一部が取り込まれた状態で前記起振器を回転させることを特徴とする、せん断波起振方法。
【請求項6】
前記設置工程の前に、前記掘削孔内の下部に前記粒状物を投入する投入工程を備えていることを特徴とする、請求項5に記載のせん断波起振方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起振器およびせん断波起振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持杭は、杭の先端(下端)を支持層に所定長貫入させることで支持力を確保し、上部構造物等の上載荷重を支持するものである。
支持杭の施工管理としては、杭長や支持層到達の確認、杭の建込精度(角度や位置等)の確認、杭径や鉄筋等の品質確認等を行う必要がある。支持杭の杭長は、支持層に到達し得る長さに設定されている。支持層は、予め実施された地盤調査や既往の地盤データ等に基づいて作成された地層断面図から推定することが多い。
【0003】
ところが、地層は必ずしも水平ではなく、傾斜や褶曲を伴うことがある。そのため、支持層の実際の位置(深さ)が、地層断面図に示された支持層の位置と異なっている場合がある。支持層の深さが地層断面図と異なっていると、杭を設計通り施工した場合であっても、杭の先端が支持層に到達しないことになる。
【0004】
そのため、支持杭の施工は、支持杭の先端が支持層に到達することを確認しながら行う必要がある。支持杭が支持層に到達していることを確認する方法として、特許文献1に示すように、支持層内で弾性波を発生させて、支持杭の上部で受信した弾性波(S波とP波)の到着時間または振幅によって、支持杭が支持層に到達しているか否かを判断する方法がある。
【0005】
支持層内でせん断波(S波)を発生させる方法としては、金属部材が先端に固定されたロッドをボーリング孔内に挿入し、孔底に金属部材を押し当てた状態でロッドを回転させる方法がある。こうすることで、金属部材と支持層との間に生じる摩擦によってせん断波が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6617022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
支持層は硬質の地層であるものの、粘土等の細粒土が固結した泥岩等が支持層である場合には、金属部材を押し当てた状態で回転させると、回転当初は摩擦力によりせん断波が発生するが、時間の経過とともに硬質の地層が泥土化し(乱され)、摩擦力が小さくなる。摩擦力が小さくなると、せん断波も小さくなり、測定不能になるおそれがある。
【0008】
このような観点から、本発明は、簡易な設備により、測定対象地盤の地質に限定されることなく、地中においてせん断波を発生させることを可能とした起振器およびせん断波起振方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明の起振器は、地盤に形成された掘削孔内において前記掘削孔内の粒状物との間で生じる摩擦により地中でせん断波を発生させるものである。前記起振器は、縦軸を中心に回転する本体部と、前記本体部の下面周縁から下向きに突出する壁体とを備えており、前記本体部および前記壁体により形成された凹部に前記粒状物の一部を取り込むことが可能である。
【0010】
また、本発明のせん断波起振方法は、先端に起振器が固定された筒体を掘削孔に挿入する設置工程と、前記筒体を回転させることで前記掘削孔内の粒状物と前記起振器との間に生じる摩擦によりせん断波を発生させる起振工程とを備えるものである。前記起振器には、下向きに開口する凹部が形成されており、前記起振工程では、前記凹部に前記粒状物の一部が取り込まれた状態で前記起振器を回転させる。
【0011】
かかる起振器及びせん断波起振方法によれば、凹部に粒状物(例えば、砂、礫、砂質土等)が取り込まれた状態で起振器を回転させるので、地盤(掘削孔の底面)が乱され難くなる。すなわち、本発明によれば、起振器の本体部の下面が孔底に直接接触しないため、泥岩等の粘性の地盤であっても孔底が乱され難く、泥土化による摩擦力の低下が抑制される結果、せん断波を継続的に発生させることができる。
【0012】
また、前記起振器が、前記凹部内の水を排出可能な水抜き孔を備えていれば、凹部内の粒状物の充填率を高めることができるので、より大きなせん断波を発生させることができる。また、前記本体部の下面および前記壁体の内面が凹凸面であれば、粒状物との間の摩擦抵抗が増すので、さらに大きなせん断波を発生させることができる。大きなせん断波を発生させれば、掘削孔から離れた位置においてせん断波を確認しやすくなる。また、本体部の外面や壁体の外面も凹凸面であれば、より大きなせん断波が発生する。さらに、前記本体部の上部に、前記本体部と同等の断面形状を有する増幅器具が固定されていれば、粒状体と接する面積が増加するため、より大きなせん断波が発生する。
【0013】
掘削孔の底部が泥岩や粘性土等を主体としている場合には、前記設置工程の前に、前記掘削孔内の下部に前記粒状物を投入する投入工程を備えているのが望ましい。粒状物が存在しない(あるいは少ない)泥岩や粘性土等に対して起振器を回転させると、地盤が泥土化してせん断波が発生し難くなるおそれがある。一方、掘削孔内に予め粒状物を投入し、起振器と粒状物とを接触させた状態で起振器を回転させれば、地盤を乱すことなく、せん断波を発生させることが可能となる。なお、掘削孔に投入する粒状物には、砂、礫、砂質土、礫質土、掘削孔底部の地層よりも大きな硬度を有する粒状体(例えば、直径1cm程度の鋼製の球体等)等、せん断時にダイレタンシーが生じるものを使用すればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の起振器およびせん断波起振方法によれば、簡易な設備により、測定対象地盤の地質に限定されることなく、地中においてせん断波を発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るせん断波起振方法の概要を示す断面図である。
図2】本実施形態の起振器を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
図3】本実施形態のせん断波起振方法を示すフローチャートである。
図4】本実施形態に係るせん断波起振方法の削孔工程を示す断面図である。
図5】本実施形態に係るせん断波起振方法の各工程を示す断面図であって、(a)は投入工程、(b)は設置工程である。
図6】(a)は本実施形態に係るせん断波起振方法の起振工程を示す拡大断面図、(b)は(a)に続く起振工程の拡大断面図である。
図7】増幅器具が設置された状態の起振器を示す断面図である。
図8】他の形態に係る起振器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態では、杭基礎構造の建物を構築する場合において、支持杭1の先端が軟弱層G2の下側に存在する支持層G1(対象地盤)に到達(貫入)しているか否かを確認する手段(図1参照)を例示する。本実施形態では、図1に示すように、支持杭1から離れた位置に、支持層G1に到達する掘削孔2を形成し、掘削孔2内において発生させたせん断波を支持杭1において確認することで、支持杭1が支持層G1に到達していることを確認する。せん断波は、地盤に形成された掘削孔2内において、起振器4を回転させることにより掘削孔2内の粒状物5との間で生じる摩擦により発生させる。なお、支持層G1への到達の確認を行う支持杭1の本数は限定されるものではなく、1本ずつ確認してもよいし、複数本に対して同時に確認してもよい。
【0017】
起振器4は、ロッド3の先端に固定された金属部材(例えば、鋳鉄製部材)である。本実施形態の起振器4は、図2(a)および(b)に示すように、円柱状の本体部41と、本体部41の下面周縁から下向きに突出する壁体42と、本体部41の上端に形成された取付部43とを備えている。
【0018】
本体部41は、円柱状に形成された部分(中実部分)である。本体部41の側面および下面は凹凸面である。本実施形態では、四角錐状の突起を多数並設することにより凹凸面を形成しているが、凹凸面の形状は限定されるものではない。
本体部41には、上下に貫通する水抜き孔45が形成されている。水抜き孔45の位置は、下端が壁体42の内側において開口していれば限定されるものではない。
【0019】
壁体42は、本体部41の下側に形成された筒状部分である。壁体42の外径は本体部41の外径と同一である。起振器4には、本体部41と壁体42により、下側が開口する凹部44が形成されている。また、壁体42の内面および外面は凹凸面である。すなわち、本実施形態の起振器4は、外面が全長にわたって凹凸面であるとともに、凹部44の内面(本体部41の下面および壁体42の外面)も凹凸面である。
【0020】
取付部43は、本体部41の上端に一体に形成された雄ネジ部分である。取付部43は、ロッド3の下端に螺合可能な形状を有している。なお、取付部43の構成は限定されるものではなく、起振器4を取り付ける部材(ロッド3)の構造に応じて適宜決定すればよい。取付部43には、本体部41に形成された水抜き孔45が連続している。すなわち、水抜き孔45は、凹部44から取付部43の上端に至るように、起振器4の本体部41および取付部43を貫通している。
【0021】
本実施形態の起振器4を使用するせん断波起振方法は、図3に示すように、削孔工程S1、投入工程S2、設置工程S3および起振工程S4を備えている。
削孔工程S1では、図4に示すように、支持層G1に到達する掘削孔2を、支持杭1から平面視(水平方向)で離れた位置に形成する。掘削孔2は、先端にビット31が固定されたロッド3を回転させながら地盤に圧入することにより形成する。本実施形態の掘削孔2は、支持層G1内に所定長貫入させた状態となるように形成する。本実施形態では、掘削孔2を形成した後、ロッド(ボーリングロッド)3を利用した標準貫入試験(ロッド3先端部のN値の測定)を行い、掘削孔2が支持層G1(支持杭1を到達させる支持層G1)に到達していることを確認する。なお、支持杭1と掘削孔2との距離は限定されるものではないが、好ましくは0.2m~100mの範囲内、より好ましくは、0.2m~50mの範囲内とする。また、N値の測定は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
【0022】
投入工程S2では、図5(a)に示すように、掘削孔2内の下部に粒状物5を投入する。本実施形態では粒状物5として砂を投入する。なお、粒状物5を構成する材料は、せん断時にダイレタンシーが生じるものであれば砂に限定されるものではなく、例えば、礫、砂質土、礫質土のほか、掘削孔底部の地層よりも大きな硬度を有する粒状体(例えば、直径1cm程度の鋼製の球体等)等であってもよい。また、掘削孔2に投入する粒状物5の量は限定されるものではないが、掘削孔2内において、少なくとも起振器4の全体が埋まる高さを確保できる量とする。
【0023】
設置工程S3では、図5(b)に示すように、先端に起振器4が固定されたロッド(筒体)3を掘削孔2に挿入する。ロッド3は、起振器4が粒状物5に当接あるいは挿入されるまで押し込む(図6(a)参照)。
【0024】
ロッド3は、中空の筒体であって、本実施形態では、掘削孔2の削孔に利用したボーリングロッドを使用する。削孔工程S1後、まず、ロッド3を掘削孔2から一旦抜き出すとともに先端のビット31(図4参照)を取り外す。次に、ロッド3の先端部に起振器4を取り付ける。そして、起振器4が取り付けられたロッド3を掘削孔2に挿入する。なお、ロッド3としてボーリングロッドを使用する必要はなく、専用のロッド(筒体)3を使用してもよい。
【0025】
起振工程S4では、掘削孔2から発せられたせん断波を支持杭1の上端部において受信する(図1参照)。せん断波は、図6(a)および(b)に示すように、起振器4を粒状物5に当接させた状態(粒状物5に挿入された状態)で縦軸を中心にロッド3を回転させることで、掘削孔2内の粒状物5と起振器4との間に生じる摩擦により発生する。せん断波は、支持杭1の上端部に設けられた受信器6(図1参照)により受信する。支持層G1を伝搬するせん断波(弾性波)は、軟弱層G2を伝搬するせん断波(弾性波)に比べて、到達時間が早く、また、振幅が大きく低下することなく伝達される。そのため、受信器6によって受信した弾性波の到達時間や振幅を確認することで、支持杭1の先端が支持層G1に到達したことを確認することができる。
【0026】
ここで、摩擦力τは、式1で示すことができる。
τ=σtanφ ・・・式1
σは、せん断面に垂直に作用する力(例えば、壁体42の下端面であればロッド3の重量や起振器4の重量)である。tanφは摩擦係数で、ここでは、砂(粒状物5)と起振器4の表面との摩擦係数となる。本実施形態では、掘削孔2の底部に粒状物5が投入されているため、起振器4の回転時の摩擦係数が一定値を保持しており、支持層G1の地質に左右されることなく、せん断波が発生する。また、起振器4の側面と砂(粒状物5)との間には砂の重量の約半分の重量が作用するので掘削孔2への粒状物5の投入量を増やすと、せん断面に作用する力σが増加する。
【0027】
粒状物5に接した状態で起振器4を回転させると、ロッド3および起振器4の重量により起振器4が下降する。このとき、凹部44に粒状物5の一部が取り込まれる(図6(a)参照)。下降した起振器4は、掘削孔2の底面(支持層G1)に着底し、その後、壁体42の一部が支持層G1にめり込んだ状態となる(図6(b)参照)。このとき、凹部44内に取り込まれた粒状物5は起振器4の下降に伴って圧密される。粒状物5の圧密により排出される間隙水は、水抜き孔45を介してロッド3内(凹部44外)に排出される。この状態で縦軸を中心に起振器4を回転させると、起振器4の外面と掘削孔2内の粒状物5との間に生じる摩擦により発生するせん断波に加え、凹部44の内面(本体部41の下面および壁体42の内面)と凹部44内の粒状物5との間に生じる摩擦によりせん断波が発生するため、より大きなせん断波が発生する。
【0028】
本実施形態の起振器4およびこれを使用したせん断波起振方法によれば、凹部44に粒状物5が取り込まれた状態で、起振器4を回転させるので、地盤(掘削孔2の底面)が乱され難くなる。これは、起振器4の本体部41の下面が掘削孔2の孔底に直接接触しないため、泥岩等の粘性の地盤であっても孔底が乱され難く、泥土化による摩擦力の低下(起振器4の回転に伴って地盤に作用する振動の低下)が抑制され、その結果、せん断波を継続的に発生させることができる。
【0029】
また、起振器4が、凹部44内の水を排出可能な水抜き孔45を備えているため、凹部44内の粒状物5の充填率を高めることができ、より大きなせん断波を発生させることができる。大きなせん断波を発生させれば、掘削孔2から離れた位置においてせん断波を確認しやすくなる。
また、起振器4の外面、本体部41の下面および壁体42の内面が凹凸面であるため、粒状物5との間の摩擦抵抗が増す(起振器4の回転に伴う振動が大きくなる)ので、さらに大きなせん断波を発生させることができる。
【0030】
掘削孔2に粒状物5を予め投入するため、起振器4と粒状物5とを接触させた状態で起振器4を回転させることができる。起振器4が地盤に直接接触しないので、地盤を乱すことなく、せん断波を発生させることが可能となる。なお、粒状物5が存在しない(あるいは少ない)泥岩や粘性土等に対して起振器4を回転させると、地盤が泥土化し、起振器4がスムーズに回転してしまう(起振器4の回転に伴う振動が小さくなる)ため、せん断波が発生し難くなるおそれがある。
粒状物5の摩擦係数、粒状物5と起振器4(金属)との摩擦係数が一定であるため、起振したせん断波(弾性波)の大きさが安定している。そのため、ロッド3の回転数や地下水の有無等への依存性がなく、安定的にせん断波を発生させることができる。
【0031】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、起振器4は、図7に示すように、本体部41の上部に、本体部41と同等の断面形状を有する増幅器具46が固定されていてもよい。このようにすれば、増幅器具46によって粒状物5と接する面積が増加するため、より大きなせん断波が発生する。なお、増幅器具46の下端には、本体部41の上端に形成された取付部43を螺合する雌ネジ部47が形成されており、増幅器具46の上端には、ロッド3の下端に螺合する取付部43が形成されている。起振器4に設置する増幅器具46の数は限定されるものではない。
【0032】
また、せん断波(S波)の発生に伴い、粗密波(P波)を発生させてもよい。例えば、起振器4の内部に偏心用錘を設置しておくか、ロッド3の下端に重心が偏心した部材を設置しておけば、ロッド3の回転に伴い、起振器4がロッド3の軸に対してぶれることで掘削孔2の壁面を打撃して振動(粗密波)を発生させることができる。そのため、S波(せん断波)とP波(粗密波)との両方による測定が可能となる。
【0033】
また、前記実施形態では、支持杭1が支持層G1に到達しているか否かを測定する場合について説明したが、測定の対象となる地盤は支持層G1に限定されるものではない。すなわち、軟弱層(例えば、N値3以下の粘性土、N値5以下の砂質土)以外の硬質ではない地層(N値<50)の地層でもせん断波を発生させることができる。
投入工程S2は、必要に応じて実施すればよい。例えば、測定の対象となる地盤が、砂質地盤や礫質地盤等、砂や礫(粒状物5)を多く含んでいる場合には、起振器4を地盤に直接接触させることによりせん断波を発生させてもよい。
【0034】
また、ロッド3の重量や、起振器4と粒状物5との接触面積(粒状物5の投入量や増幅器具46の有無)を変化させることによりせん断波の大きさを調節してもよい。
また、起振器4を構成する材料は、粒状物5(砂)と同等もしくはそれ以上の硬度の金属であれば限定されるものではない。
【0035】
前記実施形態では、掘削孔2としてボーリング孔を使用したが、掘削孔2は径が一定の孔であれば限定されるものではなく、例えば、ロータリーパーカッションドリル、削孔用ドリル等の小型削孔機や、直径1m以上の大型削孔機により形成された孔を利用してもよい。
【0036】
起振器4は、図8に示すように、粒状物5を収容する底部容器48を、起振器4の凹部44に設置したものであってもよい。底部容器48は、ボルト49により本体部41に対して縦軸を中心に回転可能に取り付ける。底部容器48の下面は凹凸面として孔底との摩擦を大きくし、ロッド3を回転させた際に、孔底に密着して供回りしないようにする。この起振器4によれば、ロッド3を回転させることで、孔底に固定された底部容器48内の粒状物5と本体部41の下面との間で生じる摩擦によりせん断波が発生する。
【0037】
前記実施形態では、起振器4の外面および凹部44の内面が凹凸面の場合について説明したが、凹凸面は必要に応じて形成すればよい。また、凹凸面を形成する範囲は限定されるものではなく適宜決定すればよい。さらに、凹凸面に代えて、起振器4の表面に目荒らしを施してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 支持杭(杭)
2 掘削孔
3 ロッド(筒体)
4 起振器
41 本体部
42 壁体
43 取付部
44 凹部
45 水抜き孔
46 増幅器具
5 粒状物
6 受信器
7 増幅器具
G1 支持層
G2 軟弱層
S1 削孔工程
S2 投入工程
S3 設置工程
S4 起振工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8