(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026330
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】鍛造方法および鍛造処理システム
(51)【国際特許分類】
B21J 13/10 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
B21J13/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129736
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼宮内 隆一
(72)【発明者】
【氏名】新井 史孝
(72)【発明者】
【氏名】長澤 馨
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087AA08
4E087CA28
4E087CC02
4E087EA19
4E087FA12
4E087GA03
4E087HA82
(57)【要約】
【課題】鍛造位置の位置ずれを抑制することができる鍛造方法および鍛造処理システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る鍛造方法は、搬送アームによって鍛造対象物を鍛造処理部に搬送して、当該鍛造対象物に鍛造処理を施す鍛造方法であって、鍛造処理部とは異なる位置に設けられた補正情報取得部へ鍛造対象物を搬送する搬送ステップと、補正情報取得部に搬送された鍛造対象物の、三次元空間における位置に関する位置情報を取得する取得ステップと、位置情報に基づいて、搬送アームの鍛造処理部への搬送位置を補正する補正ステップと、補正後の搬送位置に搬送された鍛造対象物に対して鍛造処理を施す鍛造処理ステップと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送アームによって鍛造対象物を鍛造処理部に搬送して、当該鍛造対象物に鍛造処理を施す鍛造方法であって、
前記鍛造処理部とは異なる位置に設けられた補正情報取得部へ前記鍛造対象物を搬送する搬送ステップと、
前記補正情報取得部に搬送された前記鍛造対象物の、三次元空間における位置に関する位置情報を取得する取得ステップと、
前記位置情報に基づいて、前記搬送アームの前記鍛造処理部への搬送位置を補正する補正ステップと、
補正後の搬送位置に搬送された前記鍛造対象物に対して鍛造処理を施す鍛造処理ステップと、
を含むことを特徴とする鍛造方法。
【請求項2】
前記補正ステップは、前記位置情報に基づいて互いに直交する3方向のずれを算出し、各ずれに基づいて前記搬送位置を補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の鍛造方法。
【請求項3】
前記補正ステップは、互いに直交する3方向のうちの1方向のずれを算出するとともに、他の二方向がなす平面上のずれを算出し、各ずれに基づいて前記搬送位置を補正する、
ことを特徴とする請求項2に記載の鍛造方法。
【請求項4】
前記補正ステップは、高さ方向のずれを算出するとともに、該高さ方向と直交する平面上のずれを算出し、各ずれに基づいて前記搬送位置を補正する、
ことを特徴とする請求項3に記載の鍛造方法。
【請求項5】
鍛造対象物を搬送する搬送アームと、
前記搬送アームによって搬送された前記鍛造対象物に鍛造処理を施す鍛造処理部と、
前記鍛造処理部とは異なる位置に設けられ、前記鍛造対象物の、三次元空間における位置に関する位置情報を取得する補正情報取得部と、
前記位置情報に基づいて、前記搬送アームの前記鍛造処理部への搬送位置を補正する補正部と、
を備え、
前記搬送アームは、前記鍛造対象物を、補正後の搬送位置に搬送する、
ことを特徴とする鍛造処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造方法および鍛造処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍛造によって製品を作製する際、搬送アームを用いて鍛造対象の母材を搬送し、母材に鍛造処理を施す方法が知られている。搬送アームは、母材を把持し、回転や伸縮によって、鍛造装置の所定の位置に母材を配置する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、母材が搬送される位置によって、鍛造位置に個体差が生じることがある。例えば、母材に孔を開ける場合、孔の中心が、設定された位置に対して偏心することがあった。偏心の度合いによっては規格から外れ、製品として出荷できない場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、鍛造位置の位置ずれを抑制することができる鍛造方法および鍛造処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鍛造方法は、搬送アームによって鍛造対象物を鍛造処理部に搬送して、当該鍛造対象物に鍛造処理を施す鍛造方法であって、前記鍛造処理部とは異なる位置に設けられた補正情報取得部へ前記鍛造対象物を搬送する搬送ステップと、前記補正情報取得部に搬送された前記鍛造対象物の、三次元空間における位置に関する位置情報を取得する取得ステップと、前記位置情報に基づいて、前記搬送アームの前記鍛造処理部への搬送位置を補正する補正ステップと、補正後の搬送位置に搬送された前記鍛造対象物に対して鍛造処理を施す鍛造処理ステップと、を含む。
【0007】
また、本発明に係る鍛造方法は、上記発明において、前記補正ステップは、前記位置情報に基づいて互いに直交する3方向のずれを算出し、各ずれに基づいて前記搬送位置を補正する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る鍛造方法は、上記発明において、前記補正ステップは、互いに直交する3方向のうちの1方向のずれを算出するとともに、他の二方向がなす平面上のずれを算出し、各ずれに基づいて前記搬送位置を補正する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る鍛造方法は、上記発明において、前記補正ステップは、高さ方向のずれを算出するとともに、該高さ方向と直交する平面上のずれを算出し、各ずれに基づいて前記搬送位置を補正する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る鍛造処理システムは、鍛造対象物を搬送する搬送アームと、前記搬送アームによって搬送された前記鍛造対象物に鍛造処理を施す鍛造処理部と、前記鍛造処理部とは異なる位置に設けられ、前記鍛造対象物の、三次元空間における位置に関する位置情報を取得する補正情報取得部と、前記位置情報に基づいて、前記搬送アームの前記鍛造処理部への搬送位置を補正する補正部と、を備え、前記搬送アームは、前記鍛造対象物を、補正後の搬送位置に搬送する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鍛造位置の位置ずれを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態において製造されるスタビライザーの構成の一例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスタビライザーを作製するための母材であって、鍛造による貫通孔形成前の母材を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すスタビライザーを作製するための鍛造処理システムを示す図である。
【
図5】
図5は、鍛造処理システムが実行する鍛造処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、補正情報取得処理について説明する図(その1)である。
【
図7】
図7は、補正情報取得処理について説明する図(その2)である。
【
図8】
図8は、補正情報取得処理について説明する図(その3)である。
【
図9】
図9は、補正情報取得処理について説明する図(その4)である。
【
図10】
図10は、搬送位置補正を実施した場合の偏心を示す図である。
【
図11】
図11は、搬送位置補正を実施しなかった場合の偏心を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものであって、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合があり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0014】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態において製造されるスタビライザーの構成の一例を示す側面図である。
図1に示すスタビライザー1は、金属や、各種繊維(例えば炭素繊維)によって形成される。スタビライザー1は、両端が屈曲し、中央部が直線状に延びる本体部2と、本体部2の一端に設けられる第1端部3と、本体部2の他端に設けられる第2端部4とを有する。
【0015】
本体部2は、柱状、例えば円柱状をなして延びる。本体部2は、中実であってもよいし、中空であってもよい。
【0016】
第1端部3は、平板状をなす。第1端部3には、板厚方向に貫通する貫通孔31が形成される。
第2端部4は、平板状をなす。第2端部4には、板厚方向に貫通する貫通孔41が形成される。
例えばスタビライザー1が自動車に設けられる場合、第1端部3は左右に配置されるサスペンションのうちの一方のサスペンションに接続し、第2端部4は他方のサスペンションに接続する。この際、各端部は、貫通孔を介してサスペンションに固定される。
【0017】
スタビライザー1は、母材を加工することによって作製される。例えば、柱状の母材を屈曲させた後、両端部をそれぞれ加圧して平板状とし、各端部に貫通孔を形成する。
【0018】
図2は、
図1に示すスタビライザーを作製するための母材であって、鍛造による貫通孔形成前の母材を示す図である。スタビライザー1は、例えば、母材10の端部に貫通孔を形成することによって作製される。母材10は、両端が屈曲してなる本体部11と、本体部11の一端に設けられる第1端部12と、本体部11の他端に設けられる第2端部13とを有する。母材10は、棒状に延びる材料を湾曲させた後、端部をプレスすることによって該端部を平板状とすることによって作製される。
鍛造処理では、この母材10を鍛造位置に搬送して第1端部12および第2端部13に貫通孔を形成する。
【0019】
続いて、上述した母材10の両端に貫通孔を形成する鍛造処理について、
図3~
図9を参照して説明する。
図3は、
図1に示すスタビライザーを作製するための鍛造処理システムを示す図である。鍛造処理システム100は、母材10に対して鍛造処理を施す鍛造処理装置200と、鍛造処理装置200を電気的に制御する制御装置300とを備える。
【0020】
鍛造処理装置200は、母材10を搬送するとともに、鍛造処理後の母材10(スタビライザー1)を搬送する搬送部210と、母材10に鍛造処理を施す鍛造処理部220と、搬送部210が搬送する母材10の位置を補正するための補正情報を取得する補正情報取得部230と、搬送部210が搬送する母材10を保持し、鍛造する母材10を供給する供給部240と、鍛造処理後の母材10が搬送され、該母材10を外部へ排出する排出部250とを備える。なお、
図3に示す鍛造処理装置200は、当該鍛造処理装置200を上方からみた配置図に相当する。この配置図において、底面(装置配設面)に相当する平面をXY平面、該XY平面と直交する方向をZ方向とする。この際、X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。なお、Z方向を高さ方向ということがある。この高さ方向は、鉛直方向、すなわち重力の方向と平行な方向である。
【0021】
搬送部210は、搬送アーム211を有する。搬送アーム211は、制御装置300の制御のもと、供給部240から母材10を取り出し、補正情報取得部230および鍛造処理部220を経由して排出部250に搬送する。なお、搬送アーム211は、各部における母材10の処理が可能な位置に搬送可能な態様に伸縮、回転する複数のアームおよび関節を有する。
【0022】
鍛造処理部220は、搬送アーム211が搬送する母材10に対し、鍛造処理や、バリおよびスケールの除去処理を施す。鍛造処理部220は、Z方向に進退するパンチを有する。このため、鍛造処理部220では、母材10に対してZ方向に貫通する貫通孔が形成される。
【0023】
補正情報取得部230は、X方向、Y方向およびZ方向の位置を補正するための情報を取得し、制御装置300に送信する。
【0024】
図4は、
図3に示す補正情報取得装置を示す図である。補正情報取得部230は、投光部231と、受光部232と、撮像部323と、照明部234とを有する。
【0025】
投光部231は、母材10のZ方向の位置を検出するための光を出射する、投光部231は、例えば、紫外領域の波長帯域の光や、赤外領域の波長帯域の光(赤外光)を出射する。投光部231は、X方向に光を出射する。
【0026】
受光部232は、投光部231が出射した光を受光可能な位置に設けられる。受光部232は、受光素子を用いて構成される。受光素子としては、Z方向における物体の位置を検出できるものであればよく、例えば、PSD(Position Sensitive Detector)や、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等が挙げられる。以下、受光素子としてCCDを用いる場合について説明する。受光部232は、受光素子としてCCDを備える場合、YZ平面上に複数の画素が配列された受光面を形成し、各画素が検出した検出値(受光強度)を制御装置300に出力する。
投光部231および受光部232によって、母材10の端部のZ方向の位置を検出する変位センサを構成する。
【0027】
撮像部233は、搬送された母材10の端部(第1端部12または第2端部13)を撮像する。撮像部233は、撮像光学系の光軸がXY平面と直交しており、このXY平面と平行な平面を撮像面として撮像する。撮像部233は、撮像によって生成された画像信号を制御装置300に出力する。撮像部233は、例えば、CCD、COMS等のイメージセンサを用いて構成される。
【0028】
照明部234は、撮像部233の撮像領域を照明する。照明部234は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、レーザ光源、キセノンランプ等のランプ光源を用いて構成される。
【0029】
図3に戻り、制御装置300は、鍛造処理装置200の動作を電気的に制御する。制御装置300は、変位情報取得部301と、高さ計測部302と、画像取得部303と、シフト量算出部304と、制御部305と、記憶部306とを有する。
【0030】
変位情報取得部301は、受光部232と通信可能に接続される。変位情報取得部301は、受信した検出値を制御部305に出力する。変位情報取得部301は、通信インタフェースを用いて構成される。
【0031】
高さ計測部302は、変位情報取得部301が取得した検出値に基づいて、搬送された母材10の高さを計測する。高さ計測部302は、受光部232の各画素の受信強度に基づいて、母材10の端部の位置を計測する。例えば、投光部231と受光部232との間に母材10の端部が存在すると、投光部231からの光が遮られ、対応する画素の受光強度が低下する。高さ計測部302は、画素の受信強度が低い位置を端部存在位置として、母材10の端部が存在している高さを計測する。ここでいう高さは、予め設定されている基準位置からの、Z方向のずれ量に相当する。
【0032】
画像取得部303は、撮像部233と通信可能に接続される。画像取得部303は、受信した画像信号を制御部305に出力する。画像取得部303は、通信インタフェースを用いて構成される。
【0033】
シフト量算出部304は、画像取得部303が取得した画像信号を用いて、母材10の端部の、予め設定されている基準位置からのずれを、シフト量として算出する。本実施の形態では、シフト量算出部304は、X方向、Y方向およびZ方向の基準位置からのずれ量を算出する。ここで、シフト量算出部304は、例えば、X方向、Y方向については、画像信号を用いてシフト量を算出し、Z方向については高さ計測部302が計測した高さに基づいてシフト量を算出する。
【0034】
制御部305は、当該制御装置300、および鍛造処理装置200の各構成部品の動作処理を制御する。制御部305は、例えば、高さ計測部302が計測した高さが、予め設定されている高さであるか否かを判定したり、その判定結果に基づいて母材10の端部位置を調整させたりする。また、制御部305は、シフト量算出部304が算出したシフト量に基づいて、搬送アーム211による母材10の搬送位置を制御する。
【0035】
高さ計測部302、シフト量算出部304および制御部305は、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の機能を実行する各種演算回路等のプロセッサを用いて構成される。
【0036】
記憶部306は、制御部305が各種動作を実行するためのプログラム(例えば後述する鍛造処理を実行するためのプログラム)や、位置補正に関する閾値等を記憶する。記憶部306は、揮発性メモリや不揮発性メモリを用いて構成されるか、またはそれらを組み合わせて構成される。例えば、記憶部306は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を用いて構成される。
【0037】
そのほか、制御装置300は、当該制御装置300の動作に関する各種信号の入力を受け付ける入力部や、画像を表示させたり、音や光を出力させたりする出力部を有してもよい。入力部は、キーボード、マウス、スイッチ、タッチパネル等を用いて構成される。出力部は、ディスプレイや、スピーカー、光源等を用いて構成される。
【0038】
続いて、鍛造処理システム100が行う鍛造処理について、
図5~
図9を参照して説明する。
図5は、鍛造処理システムが実行する鍛造処理の流れを示すフローチャートである。
図6~
図9は、補正情報取得処理について説明する図である。
【0039】
まず、搬送アーム211によって、供給部240からワークを取り出す(ステップS101)。以下、ワークが、
図2に示す形状をなす母材10であり、鍛造処理によって貫通孔31、41を形成する例について説明する。
【0040】
搬送アーム211は、ワークを補正情報取得部230へ搬送する(ステップS102)。搬送アーム211は、予め設定されている長さにアームを伸縮するとともに、設定された角度で関節を回転させることによって、ワークを補正情報取得部230に配置する。この際、例えば
図6に示すように、母材10の一方の端部(第1端部12または第2端部13)が、投光部231と受光部232との間に配置される。
【0041】
ワークが補正情報取得部230に搬送されると、高さ計測部302がワークの高さを計測する(ステップS103)。高さ計測部302は、変位センサ(受光部232)から検出値を受信し、各画素の受信強度に基づいて、ワーク(母材10の端部)の位置(高さ)を計測する。高さ計測部302は、計測した高さを制御部305に出力する。
【0042】
制御部305は、計測された高さが、予め設定されている基準範囲内であるか否かを判断する(ステップS104)。制御部305は、計測された高さが基準範囲内である場合(ステップS104:Yes)、ステップS106に移行する。これに対し、制御部305は、計測された高さが基準範囲から外れている場合(ステップS104:No)、ステップS105に移行する。
【0043】
ステップS105において、制御部305は、例えば、計測された高さの代表値と、基準範囲の代表値との差分をとって、該差分に応じた高さだけワークを移動させる。ここで、代表値は、Z方向の中央値や、最高値、最低値等が用いられる。搬送アーム211は、差分に応じた距離、Z方向にワークを移動させる。例えば、
図6に示す矢印Q
1方向(Z方向)に母材10を移動させることによって、
図7に示すように、第1端部12の位置が調整される。この調整によって、撮像部233による撮像位置のうち、光軸方向の位置が調整される。
【0044】
ステップS106において、制御部305は、撮像部233に撮像処理を実行させる。制御部305は、照明部234に照明光を出射させるとともに、撮像部233に撮像処理を実行させる(
図8参照)。撮像部233は、ワークを撮像して画像信号を制御装置300(画像取得部303)に出力する。
【0045】
シフト量算出部304は、画像取得部303が取得した画像信号に基づいてシフト量を算出する(ステップS107)。シフト量算出部304は、母材10の端部の画像から、XY平面における端部位置のずれ(シフト量)を算出する。シフト量算出部304は、画像に写る母材10の端部が、予め設定されている位置からのX方向、Y方向のずれをそれぞれ算出する。シフト量算出部304は、例えば輪郭抽出等によって画像における端部位置を検出し、X方向における端部位置と、X方向の基準位置との差分を、X方向のずれとして算出する。また、シフト量算出部304は、検出されたY方向の端部位置と、Y方向の基準位置との差分を、Y方向のずれとして算出する。
シフト量算出部304は、X方向のずれ、Y方向のずれ、および、Z方向のずれを関連付けたシフト量を、制御部305に出力する。ここで、Z方向のずれは、ステップS104において算出された差分が用いられる。なお、ステップS104において高さの基準範囲を満たしていると判断された場合には、Z方向のずれをゼロとしてもよい。
【0046】
その後、制御部305は、シフト量に基づいて、搬送アーム211が搬送する位置を補正して、鍛造処理部220におけるワーク搬送位置を設定する(ステップS108)。制御部305は、鍛造処理部220へワークを搬送する際の、予め設定されているアーム長さや関節の回転角度を、シフト量に応じて補正する。搬送アーム211は、制御部305の制御のもと、補正後の搬送位置へワークを搬送する。
【0047】
搬送アーム211によってワークが補正情報取得部230から移動し(
図9参照)、鍛造処理部220に搬送されると、鍛造処理部220において、鍛造処理が実施される(ステップS109)。例えば、鍛造処理部220では、母材10の端部に対してピアストリムを実施して貫通孔を形成する。また、貫通孔形成後、バリやスケールの除去処理が実施される。
【0048】
その後、制御部305は、当該ワークの他の部分に鍛造処理を施す必要があるか否かを判断する(ステップS110)。例えば、制御部305は、母材10の他端部に貫通孔を形成する必要があるか否かを判断する。制御部305は、当該ワークの他の部分に鍛造処理が必要であると判断した場合(ステップS110:Yes)、ステップS102に戻り、他の部分に対する鍛造処理を実施する。これに対し、制御部305は、ワークの他の部分に鍛造処理を施す必要がないと判断した場合(ステップS110:No)、ステップS111に移行する。
【0049】
ステップS111において、搬送アーム211は、制御部305の制御のもと、鍛造処理後のワークを排出部250へ搬送する。このようにして、一つのワークに対して鍛造処理が実施される。
【0050】
続いて、搬送位置補正の有無による貫通孔の偏心について、
図10を参照して説明する。
図10は、搬送位置補正を実施した場合の偏心を示す図である。
図11は、搬送位置補正を実施しなかった場合の偏心を示す図である。
図10、
図11では、偏心の上限を超える領域と、下限値を下回る領域をハッチングにて表示している。すなわち、ハッチング領域は、端部に形成される貫通孔の位置が、スタビライザーの規格から外れることを意味する。ここでは、±0.5mmが規格内である場合を示す。また、実線で示す波形(先鍛造)は、母材に対して先に鍛造処理が実施された端部における貫通孔の偏心を示し、破線で示す波形(後鍛造)は、後に鍛造処理が実施された端部における貫通孔の偏心を示す。偏心は、端部の長手方向および貫通孔の貫通方向と直交する方向の長さであって、貫通孔の中心を通過する位置における貫通孔の両端の長さの差を偏心の度合いとしている。例えば、
図1に示す長さW
1、W
2の差を、偏心とする。偏心は、例えば貫通孔が端部の中央に形成されていれば、ゼロとなる。
【0051】
先鍛造の波形と、後鍛造の波形とを比較すると、偏心ゼロ付近を境界として反転している。これは、搬送アーム211の回転に起因するものと考えられる。
【0052】
図10に示す波形と、
図11に示す波形とを比較すると、鍛造位置を補正した場合の波形(
図10参照)は、偏心の度合いが規格内に収まっている。これに対し、鍛造位置を補正していない場合の波形(
図11参照)は、多くの製品が、偏心の度合いが規格から外れている。
【0053】
また、各条件について工程能力指数を算出した。具体的には、工程能力指数としてCpkを算出した。Cpkは、下式(1)によって算出される。
Cpk=(1-K)Cp ・・・(1)
Cp=(U
CL-L
CL)/6σ
K=(|(U
CL+L
CL)/2-μ|)/((U
CL-L
CL)/2)
ここで、U
CL:上限規格値、L
CL:下限規格値、μ:平均値である。
図10に示す偏心に基づいて算出されるCpkは、1.49より大きいという結果が得られた。また、
図11に示す偏心に基づいて算出されるCpkは、ほぼゼロであった。この結果から、位置補正を実施した場合、工程能力が高く、製品間で孔位置のばらつきを小さくできるといえる。
【0054】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、搬送アームによる鍛造処理位置を、予め別の搬送位置において取得した情報に基づいて補正するようにしたので、鍛造処理を行う際の処理位置の位置ずれを抑制することができる。さらに、本実施の形態によれば、ワークの鍛造処理箇所ごと、ワークごとに位置補正を実施することによって、ワーク内における鍛造位置のずれや、個体間の鍛造位置のずれを抑制することができる。
【0055】
なお、実施の形態では、変位センサ(投光部231および受光部232)と、撮像部233とによって、X方向、Y方向およびZ方向のずれを補正するための情報を取得するようにしたが、各方向のずれを補正するための情報を取得できれば、変位センサのみ、撮像部のみ、または三次元的に位置を検出するセンサによって補正情報取得部230を構成してもよい。例えば、母材10の温度を検出し、その温度分布から補正情報取得部における位置を検出してもよい。この場合、シフト量算出部304は、温度分布に基づいて検出された位置と、本来配置されるべき所定位置とのずれを算出し、シフト量を求める。
【0056】
また、上述した実施の形態では、X方向、Y方向およびZ方向の3方向のずれについて搬送アーム211の搬送位置を補正する例について説明したが、各方向の軸のまわりの回転角を検出して、搬送位置に反映してもよい。この場合、例えば、画像における端部の大きさをもとにX方向の軸のまわりの回転角度を検出し、関節の回転角度に反映する。
【0057】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、転造処理を施して製造する製品に対して適用可能である。
【0058】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0059】
以上説明したように、本発明に係る鍛造方法および鍛造処理システムは、鍛造位置の位置ずれを抑制するのに好適である。
【符号の説明】
【0060】
1 スタビライザー
2、11 本体部
3、12 第1端部
4、13 第2端部
10 母材
31、41 貫通孔
100 鍛造処理システム
200 鍛造処理装置
210 搬送部
211 搬送アーム
220 鍛造処理部
230 補正情報取得部
231 投光部
232 受光部
233 撮像部
234 照明部
240 供給部
250 排出部
300 制御装置
301 変位情報取得部
302 高さ計測部
303 画像取得部
304 シフト量算出部
305 制御部
306 記憶部