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特開2022-26343感圧センサー、感圧センサーの製造方法および圧力検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026343
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】感圧センサー、感圧センサーの製造方法および圧力検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
G01L1/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129755
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(71)【出願人】
【識別番号】500239236
【氏名又は名称】株式会社マルニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博正
(72)【発明者】
【氏名】神田 雅之
(57)【要約】
【課題】弾性力および柔軟性を有し、単体での使用や、曲面や任意の3次元形状の表面などへの設置も容易であり、大きな圧縮動作や広範囲の圧力変化を計測可能な感圧センサーを提供すること。
【解決手段】感圧センサー10は、弾力性を有する第1導電性材料1と、第1導電性材料1と近接する第2導電性材料2と、第1導電性材料1と第2導電性材料2との間に配設された、絶縁性を有するスペーサー3と、第1導電性材料1に接続している第1電極4と、第2導電性材料2に接続している第2電極5と、を備え、第1導電性材料1は、基材にバインダーを介してポリアニリンが吸着しており、スペーサー3は、1または2以上の貫通孔を有し、貫通孔を介して第1導電性材料1と第2導電性材料2とが連通している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力性を有する第1導電性材料と、
前記第1導電性材料と近接する第2導電性材料と、
前記第1導電性材料と前記第2導電性材料との間に配設された、絶縁性を有するスペーサーと、
前記第1導電性材料に接続している第1電極と、
前記第2導電性材料に接続している第2電極と、
を備え、
前記第1導電性材料は、基材にバインダーを介してポリアニリンが吸着しており、
前記スペーサーは、1または2以上の貫通孔を有し、前記貫通孔を介して前記第1導電性材料と前記第2導電性材料とが連通していることを特徴とする感圧センサー。
【請求項2】
前記第2導電性材料は、基材にバインダーを介してポリアニリンが吸着していることを特徴とする請求項1の感圧センサー。
【請求項3】
前記基材は、合成繊維または合成樹脂であることを特徴とする請求項1または2の感圧センサー。
【請求項4】
前記バインダーが、ヒドロキシル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかの感圧センサー。
【請求項5】
請求項1の感圧センサーの製造方法であって、
前記第1導電性材料と前記第2導電性材料との間に前記スペーサーを配設して一体化する工程:および
前記第1導電性材料と前記第1電極とを接続し、前記第2導電性材料と前記第2電極とを接続する工程
を含み、
前記第1導電性材料は、以下の工程:
ヒドロキシル基を有する化合物であるバインダーを、水中でアルカリ処理してゾル状液を得るゾル化工程;
前記ゾル状液にアニリン類モノマーおよび基材を添加する添加工程;
前記添加工程後の前記ゾル状液に対して酸処理を行って前記バインダーを不溶化させて、前記基材上に、前記バインダーとともにアニリン類モノマーを固定するゲル化工程;および、
前記ゲル化工程後、重合反応によって前記基材上でポリアニリンを生成して第1導電性材料を得る重合工程
を含む方法で得られることを特徴とする感圧センサーの製造方法。
【請求項6】
前記重合工程の重合反応は、化学酸化重合または電解重合であることを特徴とする請求項4の感圧センサーの製造方法。
【請求項7】
前記基材は、合成繊維または合成樹脂であることを特徴とする請求項4または5の感圧センサーの製造方法。
【請求項8】
前記バインダーが、ヒドロキシル基を有する化合物であることを特徴とする請求項5から7のいずれかの感圧センサーの製造方法。
【請求項9】
請求項1の感圧センサーを用いた圧力検出方法であって、
前記第1電極および前記第2電極を介して測定される電気抵抗値の変化に基づいて、前記第1導電性材料または前記第2導電性材料への圧力を検出する工程を含むことを特徴とする圧力検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサー、感圧センサーの製造方法および圧力検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、介護用ベッドに着座中の状態を検知する目的で、柔軟性のある感圧センサーが提案されている。このような用途では、人間の身体に接触したり、また接触する可能性がある場所に置いて、身体に違和感の少ない柔軟性を持ちつつ、身体に対応した大きなサイズで広範囲の圧力分布を計測可能な感圧センサーが必要とされている。
【0003】
また、例えば、ロボットの安全機能向上を目的とした、柔軟性のある感圧センサーが提案されている。ロボット用途においては、従来の産業用ロボットへの装着だけでなく、今後は介護用ロボットへの展開も視野に入れると、ロボット本体、アーム、関節部、指先など、ロボットの様々な材質(金属やプラスチックなど)やサイズ、曲面を含む形状に装着可能な柔軟性のある感圧センサーの開発が望まれている。
【0004】
感圧センサーに関する技術として、特許文献1には、布の柔軟性を活かした感圧センサーが記載されている。この特許文献1に記載の感圧センサーは、導電性高分子及びバインダー樹脂の混合物を繊維または布地にコーティングした導電体を含み、複数の導電性の線状又は帯状部材が、布体の導電面の表面と裏面において直交するように配置されている。この感圧センサーは、加圧変形に伴う抵抗値変化を導電性の部材から計測する仕組みであり、センサーに加わる圧力を、均質な導電性を示す布体で吸収することで、柔軟性を実現している。
【0005】
特許文献2には、ロボットの曲面への設置が可能な感圧センサーが記載されている。この特許文献2に記載の感圧センサーは、表面が導電性を有する設置対象物上に積層された感圧弾性層と、感圧弾性層上に積層された弾性を有する導電層と、設置対象物と導電層とにそれぞれ形成された1対の電極とを備えている。感圧弾性層を、ネジやリベットや導電性接着材を用いてロボット本体に接着し、弾性導電層とロボット本体との抵抗変化により加圧を検知している。
【0006】
特許文献3には、光透過性弾性部材の中に発光素子と受光素子を有する基板を配置し、光透過性弾性部材の変形による密度変化による光量変化を取得し、加圧を検知するセンサーが記載されている。また、特許文献4には、せん断力検出素子と圧力検出素子を有する基板を配置したセンサーチップによる、多軸触覚センサーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-108134号公報
【特許文献2】特開2017-009289号公報
【特許文献3】特開2013-101096号公報
【特許文献4】特開2016-217804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の感圧センサーは、圧力検知部に導電性の繊維や布を用いているが、衝撃緩衝を目的としたバンパー用途などでは厚みやクッション性が不十分となる場面も多い。また、この感圧センサーは、導電性の布体の一方の面にX軸方向に配置された導電性の線状または帯状部材を備え、他方の面において、このX軸と直交するY軸方向に導電性の線状または帯状部材を配置する構造である。このため曲率半径が大きくなり、曲面に設置するのが困難であるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の感圧センサーは、弾性導電層とロボット本体との抵抗変化により加圧を検知するため、取り付け可能なロボット本体は金属等の導電体に限定されるという問題がある。また、ロボットの導電体内にセンサー用電極を取り付ける必要があるため、構造として大掛かりになるという問題もある。
【0010】
特許文献3、4に記載の感圧センサーは、いずれも基板を必要とし、より広範な部分での圧力検知には広範な基板を必要とするため、設置できる場所が基板を配置できる場所に限られてしまうという問題がある。また、検知部に基板があるため、大きく圧縮する動作を伴う使い方やアプリケーションでは、基板が妨げになるという問題がある。
【0011】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、弾性力および柔軟性を有し、単体での使用や、曲面や任意の3次元形状の表面などへの設置も容易であり、大きな圧縮動作や広範囲の圧力変化を計測可能な感圧センサーと、その製造方法および圧力検出方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の感圧センサーは、
弾力性を有する第1導電性材料と、
前記第1導電性材料と近接する第2導電性材料と、
前記第1導電性材料と前記第2導電性材料との間に配設された、絶縁性を有するスペーサーと、
前記第1導電性材料に接続している第1電極と、
前記第2導電性材料に接続している第2電極と、
を備え、
前記第1導電性材料は、基材にバインダーを介してポリアニリンが吸着しており、
前記スペーサーは、1または2以上の貫通孔を有し、前記貫通孔を介して前記第1導電性材料と前記第2導電性材料とが連通していることを特徴としている。
【0013】
本発明の感圧センサーの製造方法は、
前記第1導電性材料と前記第2導電性材料との間に前記スペーサーを配設して一体化する工程:および
前記第1導電性材料と前記第1電極とを接続し、前記第2導電性材料と前記第2電極とを接続する工程
を含み、
前記第1導電性材料は、以下の工程:
ヒドロキシル基を有する化合物であるバインダーを、水中でアルカリ処理してゾル状液を得るゾル化工程;
前記ゾル状液にアニリン類モノマーおよび基材を添加する添加工程;
前記添加工程後の前記ゾル状液に対して酸処理を行って前記バインダーを不溶化させて、前記基材上に、前記バインダーとともにアニリン類モノマーを固定するゲル化工程;および、
前記ゲル化工程後、重合反応によって前記基材上でポリアニリンを生成して第1導電性材料を得る重合工程
を含む方法で得られることを特徴としている。
【0014】
本発明の圧力検出方法は、感圧センサーを用いた圧力検出方法であって、
前記第1電極および前記第2電極を介して測定される電気抵抗値の変化に基づいて、前記第1導電性材料または前記第2導電性材料への圧力を検出する工程を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感圧センサーは、弾性力および柔軟性を有し、単体での使用や、曲面や任意の3次元形状の表面などへの設置も容易であり、大きな圧縮動作や広範囲の圧力変化を計測可能である。
【0016】
本発明の感圧センサーの製造方法は、前記感圧センサーを低コストで効率的に製造することができる。
【0017】
本発明の圧力検出方法は、大きな圧縮動作や広範囲の圧力変化を高感度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の感圧センサーの第1実施形態を例示した概要断面図である。
図2図1に示した感圧センサーを加圧した状態を例示した概要断面図である。
図3】本発明の感圧センサーの第2実施形態を例示した概要断面図である。
図4図3に示した感圧センサーを手指で加圧した状態を例示した概要断面図である。
図5】本発明の感圧センサーの第3実施形態を例示した概要断面図である。
図6図5に示した感圧センサーを手指で加圧した状態を例示した概要断面図である。
図7】本発明の感圧センサーの第4実施形態を例示した概要断面図である。
図8】実施例1で作製した感圧センサーにおける、圧力と電気抵抗値の関係を示すグラフである。
図9】実施例1で作製した感圧センサーにおける、圧力と圧縮率の関係を示すグラフである。
図10】実施例2で作製した感圧センサーにおける、圧縮率と電気抵抗値の関係を示すグラフである。
図11】実施例3の感圧センサーによる圧縮率と電気抵抗値の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
本発明の感圧センサーの第1実施形態について説明する。図1は、本発明の感圧センサーの第1実施形態を例示した概要断面図であり、図2は、図1に示した感圧センサーを加圧した状態を例示した概要断面図である。
【0020】
この実施形態の感圧センサーは、第1導電性材料1、第2導電性材料2、スペーサー3、第1電極4および第2電極5を有しており、平面上の構造物6上に設置されている。
【0021】
第1導電性材料1は、弾力性を有しており、基材にバインダーを介してポリアニリンが吸着している。
【0022】
基材の材料は、例えば、合成繊維または合成樹脂を例示することができる。合成繊維は、不織布などの形態であってよく、例えば、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂などを例示することができる。合成樹脂は、シートや発泡体などの形態であってよく、例えば、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS、ポリカーボネート(PC)樹脂、ABS/PC、アクリル樹脂などを例示することができる。
【0023】
バインダーは、ヒドロキシル基を有する高分子化合物または低分子化合物であってよく、特に限定されない。具体的には、バインダーは、例えば、カラギーナン、カードラン、コンドロイチン酸、シゾフィラン、ヒアルロン酸、フコイダン、レーヨン、アルギン酸、セルロース、エチレンイミン、アラビアガム、ポリエチレンイミンなどのうちの1種または2種以上を例示することができる。
【0024】
ポリアニリンは、半酸化状態にあたるエメラルディン塩基状態においてドーピングを行うとエメラルディン塩となり、これが導電性を示すことが知られている。この感圧センサーでは、第1導電性材料1は、基材上にバインダーとともに固定されたアニリン類モノマーを重合させてポリアニリンを合成することができる。
【0025】
第1導電性材料1の形態は特に限定されないが、比較的厚みの薄いシート状の形態であってもよいし、その他には、厚みのある発泡体状の合成樹脂を一つのブロックとして使用する形態、厚みの薄い発泡体状の合成樹脂を複数積層する形態、厚みの薄い発泡プラスチックを折り畳んで使用する形態などを例示することができる。また、第1導電性材料1は、成形加工等により立体的に加工されたものであってもよい。
【0026】
第1導電性材料1は、用途に応じて、弾力性、厚さ、基材の材料などを適宜設計することができる。
【0027】
第2導電性材料2は、第1導電性材料1と近接している。第2導電性材料2は、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、カーボンブラックなどの導電性物質を練り込んだ材料や、化学重合または電気重合などの方法で導電性を付与した布、金属材料、金属線を編み込んだものなどを例示することができる。なかでも、第1導電性材料1と同様に、弾力性を有する基材にバインダーを介してポリアニリンが吸着している形態であることが好ましい。この場合、第1導電性材料1と同様の材料および方法によって得られたものを使用することができる。
【0028】
また、第2導電性材料2も、用途に応じて、弾力性、厚さ、材料などを適宜設計することができる。
【0029】
スペーサー3は、絶縁性を有しており、第1導電性材料1と第2導電性材料2との間に配設されている。スペーサー3は、1または2以上の貫通孔を有し、貫通孔を介して第1導電性材料1と第2導電性材料2とが連通している。スペーサー3は、例えば第1導電性材料1が加圧された際に貫通孔を介して第1導電性材料1と第2導電性材料2とが互いに接触するように構成されている。
【0030】
スペーサー3の厚さや材料は特に限定されず、適宜設計することができる。具体的には、スペーサー3の厚さは、例えば0.1mm~30mmの範囲を例示することができる。スペーサー3の材料は、例えば、PP( ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PET、ABSなどの各種シート、絶縁性を有するウレタンフォーム布などを例示することができる。また、スペーサー3は、柔軟性および弾力性を有するものであってもよい。さらに、スペーサー3は、シート状でない形態であってもよく、例えば、成形加工等により立体的に加工されたものであってもよい。
【0031】
スペーサー3に設けられている貫通孔の大きさや数も適宜設計することができる。例えば、貫通孔の大きさ(径)は、0.5mm~10mmの範囲を例示することができ、貫通孔の数は、1~1000の範囲を例示することができる。スペーサー3は、大きな気泡(セル)と小さな気泡がランダムに混在するものを好ましく例示することができる。
【0032】
スペーサー3の配設方法は特に限定されないが、例えば、接着剤、縫合糸、ハトメ、ネジ等による固定することもできるし、外皮封し材等の外部構造体により固定、または溶着などにより固定することもできる。
【0033】
第1電極4の一端は、第1導電性材料1に接続しており、第2電極5の一端は、第2導電性材料2に接続している。第1電極4と第2電極5は対をなしている。第1電極4および第2電極5を、第1導電性材料1および第2導電性材料2に接続する形態は特に限定されない。また、第1電極4および第2電極5の他端は、電気抵抗を測定可能な機器(例えば、デジタルマルチメータなど)と接続することができる。
【0034】
この実施形態の感圧センサーは、第1導電性材料1(および第2導電性材料2)が、ポリアニリンが分子レベルで混ざり合った状態で、ゲスト物質である基材(合成繊維または合成樹脂など)とコンポジット化している。このため、例えば、図2に例示したように、発泡体や不織布などの弾力性のある基材が大きく圧縮したり、たわみにより変形したりしても、ポリアニリンの剥離のような構造的な崩壊が起こり難く、長期間に渡り高い導電性を維持することができる。そして、例えば図2に例示したように、感圧センサーの第1導電性材料1が加圧されると、第1導電性材料1と第2導電性材料2とがスペーサー3の貫通孔を介して接触し、第1電極4および第2電極5を介して測定される電気抵抗値が変化する。この電気抵抗値の変化を検出することで、高感度に圧力を検出することができる。
【0035】
具体的には、例えば、発泡体状の合成樹脂からなる基材がウレタンフォームの場合、荷重による圧縮率が限界値の70%程度まで変形しても、ポリアニリンの剥離などが抑制され、導電性を維持することができる。また、ポリアニリンが発泡体状の合成樹脂にコンポジットしている状態にもかかわらず、合成樹脂の硬化は抑制されており、本来の柔軟性や弾力性が維持されている。このため、例えば、曲面や任意の3次元形状の表面などへの設置も容易であり、大きな圧縮動作(例えば、衝突緩衝材などによる衝突時の圧力)
や広範囲の圧力変化を計測することができる。
【0036】
すなわち、本発明の感圧センサーを用いた圧力検出方法は、第1電極4および第2電極5を介して測定される電気抵抗値の変化に基づいて、第1導電性材料1または第2導電性材料2への圧力を検出する工程を含む。
【0037】
(第2、第3実施形態)
本発明の感圧センサーの第2、第3実施形態について説明する。図3は、本発明の感圧センサーの第2実施形態を例示した概要断面図であり、図4は、図3に示した感圧センサーを手指で加圧した状態を例示した概要断面図である。図5は、本発明の感圧センサーの第3実施形態を例示した概要断面図であり、図6は、図5に示した感圧センサーを手指で加圧した状態を例示した概要断面図である。第1実施形態と共通する部分には、同一の符号を付し、以下では説明を一部省略する。
【0038】
図3に例示したように、第2実施形態の感圧センサーは、弾力性を有する略ドーム状の構造物6の内部に埋め込まれている。また、図5に例示した実施形態の感圧センサーは、弾力性を有する略円筒状の構造物6の内部に埋め込まれている。
【0039】
第1導電性材料1と第2導電性材料2は、略等しい厚みで形成されており、立設されたスペーサー3を介して左右に対抗している。また、第1導電性材料1と第2導電性材料2には、それぞれ、第1電極4と第2電極5が接続しており、一部が構造物6の外部に延びており、電気抵抗を測定可能な機器(図示していない)と接続されている。この実施形態では、第2導電性材料2は、第1導電性材料1と同様に弾力性を有しており、基材にバインダーを介してポリアニリンが吸着している。
【0040】
図4に例示したように、例えば、手指で構造物6を挟んで押圧すると、構造物6が変形するとともに、その内部に保持されている感圧センサーの第1導電性材料1と第2導電性材料2が加圧されて変形する。これにより、第1電極4および第2電極5を介して測定される電気抵抗値が変化するため、この電気抵抗値の変化を検出することで、高感度に圧力を検出することができる。この実施形態の感圧センサーによっても、柔軟性や弾力性を維持しつつ、大きく圧縮や変形などによっても、ポリアニリンの剥離のような構造的な崩壊が起こり難く、長期間に渡り高い導電性を維持することができる。
【0041】
(第4実施形態)
本発明の感圧センサーの第4実施形態について説明する。図7は、本発明の感圧センサーの第4実施形態を例示した概要断面図である。第1実施形態と共通する部分には、同一の符号を付し、以下では説明を一部省略する。
【0042】
図7に例示したように、第4実施形態の感圧センサーは、円柱形の構造物6の外周に、感圧センサーが巻き付けられている。
【0043】
第1導電性材料1と第2導電性材料2は柔軟性を有しており、スペーサー3を介して積層されている。また、第1導電性材料1と第2導電性材料2には、それぞれ、第1電極4と第2電極5が接続しており、一部が構造物6の外部に延びており、電気抵抗を測定可能な機器(図示していない)と接続することができる。
【0044】
この実施形態の感圧センサーでは、第2導電性材料2が構造物6の外周面と当接した状態で固定されており、第1導電性材料1は外側に露出している。第1導電性材料1は、ポリアニリンが合成樹脂などの基材にコンポジットしている状態にもかかわらず、合成樹脂の硬化は抑制されており、本来の柔軟性や弾力性が維持されている。このため、例えば、図7に例示したような曲面や任意の3次元形状の表面などにも容易に配設することができる。
【0045】
次に、本発明の感圧センサーの製造方法の一実施形態について説明する。
【0046】
この感圧センサーの製造方法は、
第1導電性材料1と第2導電性材料2との間にスペーサー3を配設して一体化する工程:および
第1導電性材料1と第1電極4とを接続し、第2導電性材料2と第2電極5とを接続する工程
を含む。
【0047】
上述したように、第1導電性材料1と第2導電性材料2との間にスペーサー3を配設する形態は、特に限定されず、例えば、接着剤、縫合糸、ハトメ、ネジ等による固定することもできるし、外皮封し材等の外部構造体により固定、または溶着などにより固定することもできる。
【0048】
また、第1電極4および第2電極5の一端を、第1導電性材料1および第2導電性材料2に接続する形態は特に限定されない。また、第1電極4および第2電極5の他端は、電気抵抗を測定可能な機器(例えば、デジタルマルチメータなど)と接続することができる。
【0049】
そして、この感圧センサーの製造方法では、第1導電性材料1は、以下の工程:
ヒドロキシル基を有する化合物であるバインダーを、水中でアルカリ処理してゾル状液を得るゾル化工程;
前記ゾル状液にアニリン類モノマーおよび基材を添加する添加工程;
前記添加工程後の前記ゾル状液に対して酸処理を行って前記バインダーを不溶化させて、前記基材上に、前記バインダーとともにアニリン類モノマーを固定するゲル化工程;および、
前記ゲル化工程後、重合反応によって前記基材上でポリアニリンを生成して第1導電性材料1を得る重合工程
を含む方法で得られる。
【0050】
以下、本発明の第1導電性材料1の製造方法の各工程について説明する。
【0051】
(ゾル化工程)
この工程では、ヒドロキシル基を有する化合物であるバインダーを、水中でアルカリ処理し、アルカリ塩とすることで、バインダーを水中に溶解させる。これによって、水溶性コロイドとしてバインダーを含むゾル状液を得る。
【0052】
バインダーは、ヒドロキシル基を有する高分子化合物または低分子化合物であってよく、特に限定されない。具体的には、バインダーは、例えば、カラギーナン、カードラン、コンドロイチン酸、シゾフィラン、ヒアルロン酸、フコイダン、レーヨン、アルギン酸、セルロース、エチレンイミン、アラビアガム、ポリエチレンイミンなどのうちの1種または2種以上を例示することができる。
【0053】
また、バインダーの使用量は、後述するアニリン類モノマーの量などを考慮して適宜設定することができる。
【0054】
アルカリ処理に使用するアルカリは特に限定されない。具体的には、アルカリは、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩;水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸バリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等のアルカリ土類金属酢酸塩、リン酸バリウム、リン酸カルシウム等のアルカリ土類金属リン酸化物;アンモニア、およびアミン等を例示することができる。
【0055】
また、アルカリ処理溶液の濃度は、バインダーの溶解性などを考慮して、使用するアルカリの種類に応じて適宜設定することができる。
【0056】
(添加工程)
この工程では、ゾル化工程で得たゾル状液に、アニリン類モノマーおよび基材を添加する。
【0057】
アニリン類モノマーと基材は、いずれか一方を先に添加することもできるし、両者をほぼ同時に添加することもできる。
【0058】
アニリン類モノマーの具体例としては、アニリン、および、アニリンのアミノ基またはベンゼン環上の水素原子の1以上をアルキル基、アリール基、アルキルエーテル基、カルボキシルエステル基、シアノ基、ハロゲン基等の置換基により置換したアニリン誘導体など例示することができる。
【0059】
アニリン類モノマーの添加量は適宜設定することができる。具体的には、例えば、ゾル状液中のアニリン類モノマーの濃度は0.001~10質量%の範囲を例示することができる。
【0060】
ゾル状液にアニリン類モノマーを添加することで、バインダーとアニリン類モノマーとを分子レベルで混合させることができる。
【0061】
基材は、合成繊維および合成樹脂のうちの1種または2種以上であることが好ましい。
【0062】
具体的には、合成繊維は、不織布などの形態であってよく、例えば、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂などを例示することができる。合成樹脂は、シートや発泡体などの形態であってよく、例えば、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS、ポリカーボネート(PC)樹脂、ABS/PC、アクリル樹脂などを例示することができる。
【0063】
さらに、この添加工程では、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を添加することが好ましい。ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤を添加することで、アニリン類モノマーをナノサイズまで微粒子化することができる。ナノ化したアニリンモノマー類はバインダーと親和し、後述する重合工程おいて、ナノサイズ粒子の状態で重合するため、優れた電気伝導性を有し、基材上にポリアニリンが強く吸着した第1導電性材料1を得ることができる。
【0064】
(ゲル化工程)
この工程では、添加工程後のゾル状液に対して酸処理を行ってバインダーを不溶化させて、基材上に、バインダーとともにアニリン類モノマーを固定する。
【0065】
酸処理に使用される酸は、特に限定されないが、例えば、塩化水素酸、過塩素酸、臭化水素酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、トルエンスルホン酸、フッ化水素酸、メタンスルホン酸、ヨウ化水素酸、硫酸、四フッ化ホウ素酸、六フッ化リン酸などを例示することができる。
【0066】
酸の添加量は特に限定されず、適宜設定することができる。使用する酸の種類にもよるが、例えば、ゾル状液に対して0.01~10質量%であることが好ましい。
【0067】
ゾル状液に対してこれらの酸を添加して適宜攪拌等することで、バインダーが不溶化し、基材上に強く吸着する。すなわち、バインダーおよびアニリン類モノマーを含むゾル状液がゲル化し、ゲル状体となることで、基材上にバインダーを介してアニリン類モノマーが強く結合した状態となる。
【0068】
(重合工程)
この工程では、重合反応によって基材上でポリアニリンを生成して第1導電性材料1を得る。
【0069】
重合反応は、化学酸化重合または電解重合のいずれであってもよい。
【0070】
化学酸化重合の場合は、酸化剤(重合開始剤)として、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過塩素酸カリウム、塩化第二鉄、二酸化マンガン、二クロム酸塩、過酸化水素などを使用することができる。
【0071】
アニリン類モノマーと酸化剤の比は、適宜設定することができるが、例えば、1/1~1/5(重量比)の範囲を例示することができる。酸化剤の量がアニリン類モノマーに対して少な過ぎると重合反応が十分に進行せず、酸化剤の量がアニリン類モノマーに対して多過ぎると重合反応時に副生成物が多量に生成してしまう場合がある。
【0072】
電解重合の場合も、従来公知の方法に従って行うことができ、電極の種類や電圧などの具体的な条件は限定されず、適宜設定することができる。
【0073】
この工程では、基材上にバインダーを介して結合したアニリン類モノマーに対して、ゲル状体(マトリックスゲル)中で重合反応を行う。これによって、基材上でポリアニリンが生成され、良好な成膜性を有するポリアニリン層を備えた第1導電性材料1が得られる。
【0074】
また、第2導電性材料2を第1導電性材料1と同様の材料で構成する場合、第2導電性材料2も上述した方法で作製することができる。
【0075】
本発明の感圧センサー、感圧センサーの製造方法および圧力検出方法は、上記の実施形態に限定されず、細部については適宜設計することができる。例えば、第1導電性材料の基材の種類や特性、またスペーサーの厚み、開口部の大きさや数を変えることによって、検知したい圧力の範囲を適宜調整することができる。
【実施例0076】
以下、本発明の感圧センサー、感圧センサーの製造方法および圧力検出方法について、実施例とともに説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
<実施例1>感圧センサーの作製
(1)第1導電性材料の作製
第1導電性材料の基材として、発泡体形状の中反発のウレタンフォーム(180mm×100mm×45mm、反発率≦40%)を用意し、以下の手順で第1導電性材料を作製した。
【0078】
バインダーとしてセルロース、又はエチレンイミン、又はアラビアガムを水に加えて撹拌し、ここに別途用意したNaOH水溶液を加えてアルカリ処理を行い、水にすべて溶解させた(ゾル化工程)。
【0079】
次に、蒸留したアニリンモノマー1%を加え、その溶解を確認したのち、ウレタンフォームを加えた(添加工程)。
【0080】
その後、H2SO4を加えて酸処理を行い、撹拌を続け、セルロース、又はエチレンイミン、又はアラビアガムを不溶化させて、ゲル化させた(ゲル化工程)。
【0081】
これにペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS, 1.5g/10mL H2O)を加え、これを氷水で冷却しつつ24時間、重合反応させ、ポリアニリンを生成し、第1導電性材料を得た(重合工程)。
【0082】
その後、第1導電性材料(ポリアニリンが吸着したウレタンフォーム)を取り出し、水で洗浄後に乾燥し、抵抗値を測定したところ、第1導電性材料の表面抵抗値は60KΩ/cmであった。
【0083】
(2)第2導電性材料の作製
第2導電性材料の基材として、ポリエステル不織布(180mm×100mm×3mm、目付500g/m3)を用意し、以下の手順で第2導電性材料を合成した。
【0084】
バインダーとしてセルロース、又はエチレンイミン、又はアラビアガムを水に加えて撹拌し、ここに別途用意したNaOH水溶液を加えてアルカリ処理を行い、水にすべて溶解させた。次に、蒸留したアニリンモノマー1%を加え、その溶解を確認したのち、ポリエステル不織布を加えた(添加工程)。
【0085】
その後、H2SO4を加えて酸処理を行い、撹拌を続け、セルロース、又はエチレンイミン、又はアラビアガムを不溶化させて、ゲル化させた(ゲル化工程)。
【0086】
これにペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS, 1.5g/10mL H2O)を加え、これを氷水で冷却しつつ24時間、重合反応させ、ポリアニリンを生成し、第2導電性材料を得た(重合工程)。
【0087】
その後、第2導電性材料(ポリアニリンが吸着したポリエステル不織布)を取り出し、水で洗浄後に乾燥し、抵抗値を測定したところ、第2導電性材料の表面抵抗値は15KΩ/cmであった。
【0088】
(3)感圧センサーの構成
第1導電性材料(ポリアニリンが吸着したウレタンフォーム)と、第2導電性材料(ポリアニリンが吸着したポリエステル不織布)の間に、適当な大きさと数で開口したPPシート材(厚み0.4mm)をスペーサーとして配置し、開口部をふさがないように接着剤で固定した。
【0089】
さらに第1電極はクリップ、第2電極はハトメを用いて、それぞれ第1導電性材料および第2導電性材料導電材と接続した。この状態で第1電極と第2電極にテスターを接続して、図1に例示した形態の感圧センサーを構成した。
【0090】
(4)電気抵抗値の測定
作製した感圧センサーを用いて、電気抵抗値を測定した。
【0091】
図8は、この感圧センサーにおける、圧力と電気抵抗値の関係を示すグラフである。図3の横軸は加えた圧力(Kg)を示し、縦軸は抵抗値(KΩ)を示している。
【0092】
図8に示されているように、この感圧センサーでは、抵抗値の変化に基づいて、1.0~2.0Kgの圧力変化を高感度に検出可能であることが確認された。
【0093】
また、図9は、この感圧センサーにおける、圧力と圧縮率の関係を示すグラフである。図9の横軸は加えた圧力(Kg)を示し、縦軸は第1導電性クッション材の圧縮率を示している。
【0094】
図9に示されているように、この感圧センサーの第1導電性材料は、1.0~2.0Kgの圧力変化時は圧力と圧縮率がほぼ比例関係にあり、図8の圧力と抵抗値がほぼ比例関係にあったことが裏付けられた。
【0095】
<実施例2>感圧センサーの作製2
(1)第1導電性材料、第2導電性材料の作製
第1導電性材料および第2導電性材料の基材として、発泡体形状の合成樹脂である中反発ウレタンフォーム(40mm×70mm×5mm、反発率≦40%)を2枚用意し、以下の手順で第1導電性材料、第2導電性材料を作製した。
【0096】
バインダーとしてセルロース、又はエチレンイミン、又はアラビアガムを水に加えて撹拌し、ここに別途用意したNaOH水溶液を加えてアルカリ処理を行い、水にすべて溶解させた(ゾル化工程)。
【0097】
次に、蒸留したアニリンモノマー1%を加え、その溶解を確認したのち、ウレタンシートを加えた(添加工程)。
【0098】
その後、H2SO4を加えて酸処理を行い、撹拌を続け、セルロース、又はエチレンイミン、又はアラビアガムを不溶化させて、ゲル化させた(ゲル化工程)。
【0099】
これにペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS, 1.5g/10mL H2O)を加え、これを氷水で冷却しつつ24時間、重合反応させ、ポリアニリンを生成し、2枚の導電性材料を得た(重合工程)。
【0100】
その後、これらの導電性材料(ポリアニリンが吸着したウレタンフォーム)を取り出し、水で洗浄後に乾燥し、抵抗値を測定したところ、表面抵抗値はそれぞれ60KΩ/cmであった。
【0101】
(2)感圧センサーの構成
上記で作成した2枚の導電性材料をそれぞれ4つ折りに畳んだ形態とし、これを第1導電性材料および第2導電性材料とした。そして、この第1導電性材料と第2導電性材料との間に、PPシート材からなり、貫通孔を備えたスペーサー(厚み2~3mm)を配置し接着剤で固定した。
【0102】
さらに、第1電極および第2電極は、ハトメと線材を用いて第1導電性材料および第2導電性材料と接続した。また、第1電極と第2電極にテスターを接続した。
【0103】
そして、図3に例示したように、この感圧センサーをドーム形状のウレタンフォーム(直径70mm 高さ45mm)構造物の中に埋め込んだ。
【0104】
(3)電気抵抗値の測定
図4に例示したように、感圧センサーを内部に保持したウレタンフォーム構造物を外側から握りつぶしていく動作を行い、電気抵抗値を測定した。
【0105】
図10は、感圧センサーにおける、圧縮率を示すグラフである。図10の横軸は感圧センサーの圧縮率(%)を示し、縦軸は電気抵抗値(KΩ)を示している。
【0106】
図10に示されているように、ウレタンフォーム構造物の外側から握りつぶしによる動作で、感圧センサーが圧縮されることで、抵抗値変化が検出可能であることが確認された。
【0107】
<実施例3>感圧センサーの作製3
第1導電性材料の基材として、発泡体形状の合成樹脂である中反発ウレタンフォーム(150mm×150mm×10mm、反発率≦40%)を用意し、実施例2と同様の手順で、表面抵抗値230KΩ/cmの第1導電性材料を得た。
【0108】
この第1導電性材料と、実施例1(2)で作製したポリエステル不織布による第2導電性材料との間に、PPシート材からなり、貫通孔を備えたスペーサー(厚み2~3mm)を配置し、感圧センサーを構成した。さらに、第1電極および第2電極は、ハトメと線材を用いて第1導電性材料および第2導電性材料と接続した。また、第1電極と第2電極にテスターを接続した。
【0109】
そして、図7に例示した形態のように、円柱状(直径60mm)のプラスチック製構造物の外周にこの感圧センサーを巻き付けた。
【0110】
図11は、この感圧センサーの圧縮率と電気抵抗値の関係を示すグラフである。
【0111】
図11では、圧縮率10%程度で急激に抵抗値変化が起きており、局所的なぶつかり等により生じる感圧センサーの小さな圧縮変形でも、抵抗値変化が検出可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の感圧センサーは、弾性力および柔軟性を有し、単体での使用や、曲面や任意の3次(元形状の表面などへの設置も容易であり、大きな圧縮動作や広範囲の圧力変化を計測可能である。このため、自動車や工場内自動搬送機のバンパー部でのぶつかり検知、電車等のドアの挟み込み検知、マットセンサによる検知、ロボットアーム等の接触検知、玩具、ゲーム機のコントローラーなど幅広い分野において広く利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 第1導電性材料
2 第2導電性材料
3 スペーサー
4 第1電極
5 第2電極
6 構造物
10 感圧センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11