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特開2022-26344内装下地材用粘弾性組成物およびそれを用いた内装下地材、床衝撃音低減積層板、床衝撃音低減構造体
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  • 特開-内装下地材用粘弾性組成物およびそれを用いた内装下地材、床衝撃音低減積層板、床衝撃音低減構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026344
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】内装下地材用粘弾性組成物およびそれを用いた内装下地材、床衝撃音低減積層板、床衝撃音低減構造体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220203BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220203BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220203BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20220203BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20220203BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C08L101/00
C09K3/00 103G
C08L23/08
C08L33/08
E04B1/86 P
E04B1/98 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129757
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】村谷 圭市
(72)【発明者】
【氏名】浅井 伸介
(72)【発明者】
【氏名】高田 友和
【テーマコード(参考)】
2E001
4J002
【Fターム(参考)】
2E001DH37
2E001FA06
2E001FA10
2E001FA14
2E001GA28
2E001GA42
2E001HA03
2E001HC01
2E001HC02
2E001HC04
2E001HC12
2E001HC14
2E001HD11
2E001HE01
2E001HF16
4J002AA001
4J002AB042
4J002BB061
4J002BB101
4J002BC071
4J002BE011
4J002BG012
4J002BG031
4J002EL086
4J002FD332
4J002FD336
4J002GL00
4J002HA07
(57)【要約】
【課題】住宅等の建造物内の内装下地材に用いられる内装下地材用粘弾性組成物であって、多孔質層となるよう形成しなくとも高周波数帯域音の伝播性を抑制することができる内装下地材用粘弾性組成物、およびそれを用いた内装下地材、床衝撃音低減積層板、床衝撃音低減構造体を提供する。
【解決手段】二枚の板材3,3’と、上記二枚の板材3,3’の間に挟まれた制振層2とからなる内装下地材1における、上記制振層2の形成用の粘弾性組成物であって、ポリマーエマルションを主成分とし増粘剤を含有する粘弾性組成物からなり、25℃雰囲気下での、その粘弾性組成物の、E型粘度計による0.5rpmでの粘度が50~200Pa・sであり、かつ0.5rpmでの粘度/50rpmでの粘度の値が3~20である内装下地材用粘弾性組成物により、課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の板材と、上記二枚の板材の間に挟まれた制振層とからなる内装下地材における、上記制振層の形成用の粘弾性組成物であって、ポリマーエマルションを主成分とし増粘剤を含有する粘弾性組成物からなり、25℃雰囲気下での、その粘弾性組成物の、E型粘度計による0.5rpmでの粘度が50~200Pa・sであり、かつ0.5rpmでの粘度/50rpmでの粘度の値が3~20であることを特徴とする内装下地材用粘弾性組成物。
【請求項2】
上記ポリマーエマルションが、エチレン酢酸ビニルエマルション、エチレンビニルアルコールエマルション、アクリルエマルション、およびアクリルスチレンエマルションからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1記載の内装下地材用粘弾性組成物。
【請求項3】
上記増粘剤がアクリル系増粘剤である、請求項1または2記載の内装下地材用粘弾性組成物。
【請求項4】
上記ポリマーエマルションのポリマーのガラス転移温度が-15℃以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の内装下地材用粘弾性組成物。
【請求項5】
二枚の板材と、上記二枚の板材の間に挟まれた制振層とからなる内装下地材であって、上記制振層が、請求項1~4のいずれか一項に記載の内装下地材用粘弾性組成物からなることを特徴とする内装下地材。
【請求項6】
上記制振層の厚みが2mm以下である、請求項5記載の内装下地材。
【請求項7】
上記制振層の、25℃雰囲気下での、動的粘弾性測定により求めた周波数500Hzでの損失係数(tanδ)が、0.2以上である、請求項5または6記載の内装下地材。
【請求項8】
上記板材が木質系板材である、請求項5~7のいずれか一項に記載の内装下地材。
【請求項9】
上記木質系板材が、単板、単板積層材、挽き板、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード、ハードボード、中密度繊維板、および配向性ストランドボードからなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項8記載の内装下地材。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか一項に記載の内装下地材からなることを特徴とする床衝撃音低減積層板。
【請求項11】
請求項10記載の床衝撃音低減積層板と、防振ゴム足と、動吸振器とを備えていることを特徴とする床衝撃音低減構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建造物内の内装下地材に用いられる内装下地材用粘弾性組成物、およびそれを用いた内装下地材、床衝撃音低減積層板、床衝撃音低減構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の住宅(一戸建、マンション等)等の建造物内は、気密性が高く、そのこと等に起因する住宅内における生活音、特に上下階の生活音の低減が重要な課題となっている。
ここで、上記のような生活音は、少なくとも建造物の床材、天井材、壁材などが振動することにより発生し、階下で放射される音であり、例えば、人の歩行音(足音)等の、音圧レベルのピークが20~30Hz近傍にある低周波数帯域の音のほか、物の落下による衝撃音や物を引きずったときの音等の、音圧レベルのピークが100~500Hz近傍にある高周波数帯域の音がある。
そして、上記の、低周波数帯域の音や振動の対策を講じることにより、JIS A 1418-2:2000に基づく標準重量衝撃源の床衝撃音遮断性能を高めやすくすることができ、高周波数帯域の音や振動の対策を講じることにより、JIS A 1418-2:2000に基づく標準軽量衝撃源の床衝撃音遮断性能を高めやすくすることができる。
【0003】
通常、住宅等の建造物内の内装下地材には、石膏ボード等が使用されている。そして、従来、上記のような生活音や振動が、隣室へ伝播したり、天井下地材や床下地材を経由して階下へ伝播したりすることを防ぐため、上記石膏ボード等の施工後に、別途遮音シートを追加施工するといった対策がなされている。
また、上記内装下地材の厚みや、床材や天井材となる板材の厚みを厚くすることにより、上記のような生活音や振動の伝播を抑えるといった対策も、従来なされている。
【0004】
しかしながら、上記のような対策は、室内空間が狭くなり、また、音や振動の伝播を抑えるために重量増加を伴うことから、建造物の躯体への負担も懸念される。
そのようななか、ガラスウールやウレタンフォームを使用して高周波数帯域の音や振動の伝播を抑えるといった対策や、単板と単板の間に樹脂エマルジョンを含侵させた不織布を挟み込んだ内装下地材用防音合板を用いるといった対策が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-2673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような多孔性を有する素材により、高周波数帯域の音や振動の伝播を抑えるといった手法は、上記素材からなる層の厚みを厚くしないと、上記伝播を充分に抑えることができないといった問題がある。そのため、例えば、低床構造を実現できない等といったような、室内空間をより広く活用することの実現を難しくする要因となるおそれがある。
また、上記のような多孔性を有する素材は、例えば床材として使用する場合、歩行の際の不安定感(歩き難さ)につながるといった問題や、家具等を設置した際に局所的な凹みが生じるといった問題の要因となるおそれもある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、住宅等の建造物内の内装下地材に用いられる内装下地材用粘弾性組成物であって、多孔質層となるよう形成しなくとも高周波数帯域音の伝播性を抑制することができる内装下地材用粘弾性組成物、およびそれを用いた内装下地材、床衝撃音低減積層板、床衝撃音低減構造体の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、二枚の板材と、上記二枚の板材の間に挟まれた制振層とからなる内装下地材において、上記制振層の形成材料として、ポリマーエマルションを主成分とし増粘剤を含有し、かつ、25℃雰囲気下での、E型粘度計による0.5rpmでの粘度が50~200Pa・sであり、さらに、E型粘度計による、50rpmでの粘度に対する0.5rpmでの粘度の比(0.5rpmでの粘度/50rpmでの粘度)が3~20である粘弾性組成物を用いたところ、上記制振層を多孔質層となるよう形成しなくとも、高周波数帯域音の伝播性を抑制することができるようになることを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、上記の目的を達成するために、以下の[1]~[11]を、その要旨とする。
[1] 二枚の板材と、上記二枚の板材の間に挟まれた制振層とからなる内装下地材における、上記制振層の形成用の粘弾性組成物であって、ポリマーエマルションを主成分とし増粘剤を含有する粘弾性組成物からなり、25℃雰囲気下での、その粘弾性組成物の、E型粘度計による0.5rpmでの粘度が50~200Pa・sであり、かつ0.5rpmでの粘度/50rpmでの粘度の値が3~20であることを特徴とする内装下地材用粘弾性組成物。
[2] 上記ポリマーエマルションが、エチレン酢酸ビニルエマルション、エチレンビニルアルコールエマルション、アクリルエマルション、およびアクリルスチレンエマルションからなる群から選ばれた少なくとも一つである、[1]に記載の内装下地材用粘弾性組成物。
[3] 上記増粘剤がアクリル系増粘剤である、[1]または[2]に記載の内装下地材用粘弾性組成物。
[4] 上記ポリマーエマルションのポリマーのガラス転移温度が-15℃以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の内装下地材用粘弾性組成物。
[5] 二枚の板材と、上記二枚の板材の間に挟まれた制振層とからなる内装下地材であって、上記制振層が、[1]~[4]のいずれかに記載の内装下地材用粘弾性組成物からなることを特徴とする内装下地材。
[6] 上記制振層の厚みが2mm以下である、[5]に記載の内装下地材。
[7] 上記制振層の、25℃雰囲気下での、動的粘弾性測定により求めた周波数500Hzでの損失係数(tanδ)が、0.2以上である、[5]または[6]に記載の内装下地材。
[8] 上記板材が木質系板材である、[5]~[7]のいずれかに記載の内装下地材。
[9] 上記木質系板材が、単板、単板積層材、挽き板、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード、ハードボード、中密度繊維板、および配向性ストランドボードからなる群から選ばれた少なくとも一つである、[8]に記載の内装下地材。
[10] [5]~[9]のいずれかに記載の内装下地材からなることを特徴とする床衝撃音低減積層板。
[11] [10]に記載の床衝撃音低減積層板と、防振ゴム足と、動吸振器とを備えていることを特徴とする床衝撃音低減構造体。
【発明の効果】
【0010】
以上のことから、本発明では、二枚の板材の間に挟まれた制振層を有する内装下地材において、上記制振層の材料が特殊であることから、上記制振層を多孔質層となるよう形成しなくとも、高周波数帯域音の伝播性を抑制することができる。そのため、上記内装下地材における制振層の厚みを厚くすることに伴う様々な問題(例えば、低床構造を実現できないといった問題等)や、上記内装下地材における制振層を多孔質層となるよう形成することによる様々な問題(例えば、歩行の際に不安定感につながるといった問題や、家具等を設置した際に局所的な凹みが生じるといった問題等)を、解消することができる。また、二枚の板材の間に挟まれた上記制振層は高い接着性を示すことから、上記内装下地材は強固な一体化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の内装下地材の一例を示す断面図である。
図2】本発明の床衝撃音低減構造体の一例を示す正面図である。
図3図2の例の床衝撃音低減構造体のA-A’断面図である。
図4】本発明の床衝撃音低減構造体の他の例を示す正面図である。
図5図4の例の床衝撃音低減構造体のB-B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0013】
本発明の内装下地材用粘弾性組成物は、図1に示すように、二枚の板材3,3’と、上記二枚の板材3,3’の間に挟まれた制振層2とからなる内装下地材1における、上記制振層2の形成用の粘弾性組成物である。
したがって、それ以外の用途に使用される粘弾性組成物、および、特に使用用途を限定せず一般的な用途に使用されるに過ぎない粘弾性組成物は、本発明の内装下地材用粘弾性組成物に含まれるものではない。
そして、本発明の内装下地材用粘弾性組成物は、先に述べたように、ポリマーエマルションを主成分とし増粘剤を含有する粘弾性組成物からなり、25℃雰囲気下での、その粘弾性組成物の、E型粘度計による0.5rpmでの粘度が50~200Pa・sであり、かつ0.5rpmでの粘度/50rpmでの粘度の値(50rpmでの粘度に対する0.5rpmでの粘度の比)が3~20である。
本発明において、「増粘剤」とは、25℃雰囲気下で液状を示し、液体に添加することで液体の粘度を高くするといった特性を示すもののことをいう。
そして、上記粘弾性組成物の、25℃雰囲気下での、E型粘度計による0.5rpmでの粘度は、好ましくは50~200Pa・sであり、より好ましくは70~150Pa・sである。また、上記粘弾性組成物の、25℃雰囲気下での、E型粘度計による、0.5rpmでの粘度/50rpmでの粘度の値は、好ましくは3~20であり、より好ましくは5~15である。すなわち、このような特性を示すことにより、高周波数帯域音の伝播性を抑制することの実現が可能となり、さらに、塗布性、接着性等にも優れるようになるからである。
【0014】
上記ポリマーエマルションは、上記粘弾性組成物の主成分であり、通常、上記粘弾性組成物の30重量%以上、好ましくは上記粘弾性組成物の40~80重量%、より好ましくは上記粘弾性組成物の45~75重量%が、上記ポリマーエマルションである。
そして、上記ポリマーエマルションは、具体的には、エチレン酢酸ビニルエマルション、エチレンビニルアルコールエマルション、アクリルエマルション、アクリルスチレンエマルション等が用いられ、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
なかでも、エチレンビニルアルコールエマルション、アクリルスチレンエマルション、アクリルエマルションが好ましい。
なお、上記ポリマーエマルションは、通常、そのポリマーの溶媒成分として、水,キシレン,エチルベンゼン,メチルイソブチルケトン等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられてなるものである。
【0015】
上記ポリマーエマルションのポリマーのガラス転移温度(Tg)は、-15℃以下であることが好ましく、より好ましくは-100℃~-18℃、特に好ましくは-80℃~-20℃の範囲である。すなわち、上記ポリマーエマルションのポリマーのガラス転移温度(Tg)が上記範囲であると、本発明の内装下地材の層間接着性が向上するようになる、温度依存性が良好になるといった傾向がみられるからである。なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、DSC測定法(示差走査熱量測定法)に準拠して求めた値である。
【0016】
つぎに、上記ポリマーエマルションとともに用いられる上記増粘剤としては、例えば、アクリル系増粘剤、デキストリン、でんぷん等があげられ、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、アクリル系増粘剤が、エマルションの安定性の観点から好ましい。
上記アクリル系増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等があげられる。市販品としては、例えば、A-20L(東亞合成社製)等があげられる。
【0017】
上記ポリマーエマルション100重量部に対して、上記増粘剤の含有量は、0.1~30重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.5~20重量部の範囲である。すなわち、上記増粘剤が少なすぎると、増粘せず、上記増粘剤が多すぎると、ポリマーエマルション中のポリマーが分離するからである。
【0018】
なお、本発明の内装下地材用粘弾性組成物においては、その必須成分であるポリマーエマルション、増粘剤とともに、必要に応じて、多価金属塩、ポリイソシアナート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリアミド化合物、ニトロソ化合物等からなる架橋剤が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
本発明の内装下地材用粘弾性組成物には、その他、酸化チタン、酸化鉛、酸化亜鉛等の金属酸化物、カーボンブラック、ポリイミド化合物、イソシアナート等を、必要に応じて適宜に含有させることも可能である。
【0019】
本発明の内装下地材用粘弾性組成物は、例えば、前記ポリマーエマルションおよび増粘剤、さらに必要に応じてその他の成分等を、羽根撹拌,プラネタリーミキサー,3本ロール,ダイノーミル分散機等を用いて混合することにより得ることができる。
【0020】
ここで、本発明の内装下地材は、図1に示すように、二枚の板材3,3’と、上記二枚の板材3,3’の間に挟まれた制振層2とからなる内装下地材1であって、上記制振層2が、先に述べたような内装下地材用粘弾性組成物からなるものである。
上記内装下地材1は、例えば、上記二枚の板材3,3’のいずれか一方の片面に、上記内装下地材用粘弾性組成物を、ロールコーター、へら塗り、スプレッター、刷毛塗り等により塗工した後、もう一枚の板材を上記塗工した面に重ねて、23±5℃で、24時間以上、上記粘弾性組成物を圧着、乾燥させて、所定の厚みの制振層2を形成することにより、製造することができる。
【0021】
上記内装下地材1における制振層2の厚みは、2mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5~1mmの範囲である。
【0022】
また、上記制振層2の、25℃雰囲気下での、動的粘弾性測定により求めた周波数500Hzでの損失係数(tanδ)は、0.2以上であることが好ましく、より好ましくは0.2~30、特に好ましくは1~30の範囲である。このような範囲であると、高減衰化および高周波数帯域音の伝播性を抑制する効果がある。
【0023】
さらに、上記制振層2の、25℃雰囲気下での、動的粘弾性測定により求めた周波数500Hzでの貯蔵弾性率は、108Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1×103~6×107Pa・s、特に好ましくは1×104~4×107Pa・sの範囲である。このような範囲であると、振動を抑制する効果がある。
【0024】
なお、上記板材3,3’としては、通常、木質系板材が用いられるが、石膏ボード、コンクリート製ボード等も使用可能である。また、上記板材3,3’は、同じ板材であっても、異なる板材であってもよい。
上記板材3,3’の厚みは、2~15mmであることが好ましく、より好ましくは5.5~12.5mmの範囲である。
【0025】
上記木質系板材としては、例えば、単板、単板積層材、挽き板、合板、パーティクルボード、インシュレーションボード、ハードボード、中密度繊維板、配向性ストランドボード等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0026】
このようにして得られる内装下地材1は、天井用、床用、壁用等の内装下地材として用いることができる。なかでも、上記内装下地材1は、床用の内装下地材(床衝撃音低減積層板)として優れた性能を発揮することができる。
【0027】
そして、上記床衝撃音低減積層板を用いた床衝撃音低減構造体としては、例えば、図2および図3に示すようなものがあげられる。
ここで、図2は、本発明の床衝撃音低減構造体の一例を示す正面図であり、図3は、図2の例の床衝撃音低減構造体のA-A’断面図である。図3において、11は床衝撃音低減積層板(本発明の内装下地材)であり、4,4’は防振ゴム足、5は重錘である。上記重錘5は、防振ゴム足4’を嵌入するための孔部5aが設けられた金属板からなり、上記孔部5aに防振ゴム足4’を嵌入することにより、図示のように重錘5が防振ゴム足4’に固定されるようになっている。また、図示されていないが、床衝撃音低減積層板11に対し、防振ゴム足4,4’は、ボルト、ビス、ねじ等により固定されている。さらに、上記床衝撃音低減積層板11の上面には、図示のように、床表面材6が設置されている。上記床表面材6は、フローリングパネル、フローリングマット、カーペット等からなる。そして、このようにしてなる上記床衝撃音低減構造体は、図示のように、床構造躯体7の上に設置されている。
【0028】
また、上記床衝撃音低減積層板を用いた床衝撃音低減構造体としては、例えば、図4および図5に示すようなものもある。
ここで、図4は、本発明の床衝撃音低減構造体の他の例を示す正面図であり、図5は、図4の例の床衝撃音低減構造体のB-B’断面図である。図5において、11は床衝撃音低減積層板(本発明の内装下地材)であり、4’は防振ゴム足、5’は重錘である。上記重錘5’は、防振ゴム足4’を嵌入するための孔部5’aが設けられたドーナツ状の金属板からなり、上記孔部5’aに防振ゴム足4’を嵌入することにより、図示のように重錘5’が防振ゴム足4’に固定されるようになっている。また、図示されていないが、床衝撃音低減積層板11に対し、防振ゴム足4’は、ボルト、ビス、ねじ等により固定されている。さらに、上記床衝撃音低減積層板11の上面には、図示のように、床表面材6が設置されている。上記床表面材6は、フローリングパネル、フローリングマット、カーペット等からなる。そして、このようにしてなる上記床衝撃音低減構造体は、図示のように、床構造躯体7の上に設置されている。
【0029】
ここで、上記の各例において、重錘5,5’は、図示のように防振ゴム足4’によって床衝撃音低減積層板11を防振支持する空間内(床構造躯体7から床衝撃音低減積層板11までの間の空間)に固定され、上記防振ゴム足4’の弾性を利用することにより、動吸振器としての機能を示すようになっている。
このようにして、動吸振器を構成するようにすると、動吸振器に必要な部品点数の削減(簡素化)および省スペース化を図ることができる。
また、上記の各例において、衝撃によるフローリングの振動の伝播を防振ゴム足4,4’で抑制し、さらに上記重錘5,5’および防振ゴム足4’による動吸振器により低周波数帯域の振動を効果的に抑制することができ、フローリング面内で生じる振動(高周波数帯域の振動)を、床衝撃音低減積層板11で効果的に抑制することができるようになる。
そのため、上記のような床衝撃音低減構造体は、従来の市場には存在しない広周波数帯に音抑制効果を持つシステムとなる。
【0030】
なお、上記の防振ゴム足4,4’の形成材料としては、例えば、天然ゴム(NR),ブタジエンゴム(BR),スチレンブタジエンゴム(SBR),イソプレンゴム(IR),アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR),カルボキシル変性NBR,クロロプレンゴム(CR),エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM),マレイン酸変性EPM,ブチルゴム(IIR),ハロゲン化IIR,クロロスルホン化ポリエチレン(CSM),フッ素ゴム(FKM),アクリルゴム,エピクロロヒドリンゴム等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、強度が高く、さらに反発弾性が高く歩行の際の不安定感(歩き難さ)につながりにくいことから、天然ゴムが好ましい。また、必要性能に応じて、上記材料に、カーボンブラック等の補強剤,加硫剤,加硫促進剤,滑剤,助剤,可塑剤,老化防止剤等が適宜に添加される。
【0031】
なお、上記のような防振ゴムからなるゴム足(防振ゴム足4,4’)の形状は、図示のような略円柱状のものに限定されず、例えば、パット状のもの等であってもよい。
【0032】
また、上記の重錘5,5’としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、鉛、錫、あるいはこれらの合金、ステンレス等の従来公知の金属によって形成されたものが用いられる。
【0033】
なお、前記内装下地材1を、天井用、壁用の内装下地材として用いる際には、上記のような防振ゴム足や動吸振器を設ける必要はない。
【実施例0034】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0035】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。なお、下記の各ポリマーエマルションに示されているガラス転移温度は、そのポリマーのガラス転移温度を示す。
【0036】
[ポリマーエマルション]
201HQ:住化ケムテックス社製のエチレンビニルアルコールエマルション(ガラス転移温度:-20℃)
ペガール806:高圧ガス工業社製のアクリルスチレンエマルション(ガラス転移温度:-35℃)
AE610H:イーテック社製のアクリルエマルション(ガラス転移温度:-57℃)
ペガール150:高圧ガス工業社製のアクリルスチレンエマルション(ガラス転移温度:20℃)
【0037】
[増粘剤]
A-20L:東亞合成社製のアクリル系増粘剤
【0038】
[粘土鉱物]
スメクトン-SA:クニミネ工業社製の層状ケイ酸塩鉱物
【0039】
〔実施例1~3、比較例1~7〕
上記の各材料を、後記の表1および表2に示す割合で混合し、粘弾性組成物を調製した。
そして、各粘弾性組成物について、以下の各測定を行った。結果は、後記の表1および表2に併せて示す。
<粘度>
25℃雰囲気下での、E型粘度計による0.5rpmでの粘度(Pa・s)。
<0.5rpm粘度/50rpm粘度>
25℃雰囲気下での、E型粘度計による「0.5rpmでの粘度(Pa・s)/50rpmでの粘度(Pa・s)」の値。
<tanδ>
上記粘弾性組成物を加硫してなるテストピースに対し、25℃雰囲気下で、動的粘弾性測定により求めた周波数500Hzでの損失係数(tanδ)を求めた値。
<弾性率>
上記粘弾性組成物を加硫してなるテストピースに対し、25℃雰囲気下で、動的粘弾性測定により求めた周波数500Hzでの貯蔵弾性率(Pa・s)を求めた値。
【0040】
つぎに、二枚の木質系板材(合板(200cm×100cm×厚み5.5mm)およびパーティクルボード(200cm×100cm×厚み9mm)を用意し、上記二枚の木質系板材の間に、実施例および比較例の粘弾性組成物をへら塗りで塗布して挟み、23±5℃で24時間以上、圧着、乾燥させて、厚み0.5mm以上0.6mm未満の制振層を形成することにより、内装下地材を作製した。
【0041】
このようにして得られた実施例および比較例の内装下地材を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1および表2に併せて示した。
【0042】
≪接着性≫
上記内装下地材を一晩縦置きに置いた後、その制振層と木質系板材との間に剥がれが生じなかったものを「○」、剥がれが生じたものを「×」と評価した。
【0043】
≪塗布性≫
上記内装下地材の作製の際に、ロールコーターで粘弾性組成物を塗布することにより形成される制振層の厚みを測定し、下記の基準に従い評価した。
○:制振層の厚みが0.5mm以上
△:制振層の厚みが0.4mm以上0.5mm未満
×:制振層の厚みが0.4mm未満
【0044】
≪高音低減性(高周波数帯域音の伝播の抑制)≫
上記内装下地材を木造住宅の上階の床へ施工し、JIS A 1418-2:2000に基づく標準軽量衝撃源による高音低減性を、下記の基準に従い評価した。
○:-10dB以上の高音低減効果が階下で得られた。
△:-5dB以上-10dB未満の高音低減効果が階下で得られた。
×:-5dB未満の高音低減効果が階下で得られた。
【0045】
≪総合評価≫
下記の基準に従い、総合評価を行った。
○:上記の、接着性、塗布性、高音低減性の各評価において、「×」の評価がない。
×:上記の、接着性、塗布性、高音低減性の各評価において、「×」の評価が1つ以上ある。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
上記表1および表2より、実施例の内装下地材は、いずれも、接着性、塗布性、高音低減性の各評価において、優れた結果が得られた。そのため、総合評価も「○」であった。
【0049】
これに対し、比較例1の内装下地材は、その制振層の形成材料である粘弾性組成物の粘度が本発明に規定されている粘度よりも低く、塗布性に劣る結果となった。比較例2の内装下地材は、その制振層の形成材料である粘弾性組成物の粘度が本発明に規定されている粘度よりも低く、さらに、その粘弾性組成物の「0.5rpm粘度/50rpm粘度」の値が本発明に規定されている値よりも高いことから、塗布性等に劣る結果となった。比較例3の内装下地材は、その制振層の形成材料である粘弾性組成物の粘度が本発明に規定されている粘度よりも非常に低く、塗布性に劣る結果となった。比較例4の内装下地材は、その制振層の形成材料である粘弾性組成物の粘度、および「0.5rpm粘度/50rpm粘度」の値は、本発明に規定の範囲内であるが、増粘剤が不含であり、接着性、高音低減性に劣る結果となった。比較例5の内装下地材は、その制振層の形成材料である粘弾性組成物に増粘剤が含まれるが、上記粘弾性組成物の0.5rpmでの粘度が低すぎるため、塗布性等に劣る結果となった。比較例6の内装下地材は、その制振層の形成材料である粘弾性組成物が増粘剤を含有するが、上記増粘剤の含有量が多く、その粘弾性組成物の「0.5rpm粘度/50rpm粘度」の値が本発明に規定されている値よりも高いことから、塗布性等に劣る結果となり、さらに、ポリマーエマルションの分離等がみられた。比較例7の内装下地材は、その制振層の形成材料である粘弾性組成物に粘土鉱物が含まれており、それに起因し、貯蔵弾性率が大きくなり、高音低減性に劣る結果となった。
【0050】
なお、実施例の内装下地材を、図2図5に示すような、防振ゴム足と、動吸振器とを備えた床衝撃音低減構造体における、床衝撃音低減積層板として用いることにより、上記のようにJIS A 1418-2:2000に基づく標準軽量床衝撃源の床衝撃音遮断性能を高めやすくすることができるとともに、JIS A 1418-2:2000に基づく標準重量床衝撃源の床衝撃音遮断性能を高めやすくすることができることが確認された。そのため、実施例の内装下地材を用いた上記床衝撃音低減構造体は、従来の市場には存在しない、広周波数帯に音抑制効果を持つシステムとすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の内装下地材用粘弾性組成物は、住宅等の建造物内の内装下地材に用いられるものであり、上記内装下地材は、天井用、床用、壁用等の内装下地材として用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 内装下地材
2 制振層
3 板材
図1
図2
図3
図4
図5