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  • 特開-接触体殺菌システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026358
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】接触体殺菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129775
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】山田 高寛
(72)【発明者】
【氏名】野倉 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058DD15
4C058KK02
4C058KK23
4C058KK44
(57)【要約】
【課題】接触体に触れようとする人に接触箇所が殺菌済であることの安心感を与えることが可能な接触体殺菌システムを提供すること。
【解決手段】接触体殺菌システムは、人が触れる可能性のある接触体に紫外光を照射することにより接触体の表面を殺菌する殺菌部と、接触体に設けられ、接触体の表面における殺菌部による殺菌が行われた殺菌済領域で可視光発光する可視光発光部と、を備える。上記の可視光発光部は、接触体の表面に照射された殺菌部による紫外光を可視光へ波長変換する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が触れる可能性のある接触体に紫外光を照射することにより前記接触体の表面を殺菌する殺菌部と、
前記接触体に設けられ、前記接触体の表面における前記殺菌部による殺菌が行われた殺菌済領域で可視光発光する可視光発光部と、
を備える、接触体殺菌システム。
【請求項2】
前記可視光発光部は、前記接触体の表面に照射された前記殺菌部による紫外光を可視光へ波長変換する、請求項1に記載された接触体殺菌システム。
【請求項3】
前記可視光発光部は、前記接触体の表面における前記殺菌部による紫外光が受光された領域内において光のエネルギを蓄えて可視光を放出する、請求項2に記載された接触体殺菌システム。
【請求項4】
前記接触体は、回転可能な環状部材である、請求項1乃至3の何れか一項に記載された接触体殺菌システム。
【請求項5】
前記接触体は、回転可能な環状部材であり、
前記可視光発光部は、蓄えた光のエネルギを用いて多くても前記接触体が一回転する間継続して可視光発光する、請求項3に記載された接触体殺菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触体殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人が触れる可能性のある接触体を殺菌する装置が知られている(例えば、特許文献1及び2)。この殺菌装置は、接触体としてのエスカレータの手すり或いはバスや電車の持ち手などの表面を殺菌するための装置である。殺菌装置は、紫外線(例えば、波長が300nm以下である深紫外線)の光(以下、紫外光と称す。)を照射する光源を有している。この殺菌装置は、光源から接触体へ向けて紫外光が照射されることにより、接触体の表面を殺菌する。
【0003】
特許文献1記載の殺菌装置や特許文献2記載の殺菌装置は、殺菌に基づく情報を報知する報知部を有している。報知部は、音声報知を行うスピーカや表示報知を行う表示装置などである。この報知部は、光源による紫外光の照射により殺菌が行われているときに、殺菌の実行中を示す報知を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6412231号公報
【特許文献2】特許第6652611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2記載の殺菌装置は、殺菌の実行如何を示す情報をスピーカや表示装置を用いて報知するだけであり、人が触る可能性のある接触体自体を発光させるものではない。特に、この殺菌装置による殺菌で用いられる光源は、人の目で見ることができない紫外光を照射するものであるので、人が接触体における殺菌済の領域を見ても殺菌済か否かを認識することはできない。
【0006】
従って、上記の殺菌装置では、使用者は、殺菌装置が接触体に対する殺菌処理を実行しているか否かを知ることはできる一方、接触体自体を見てもその接触体への実際の接触箇所が殺菌済であるか否かを認識することができない。このため、使用者にとって、接触体に触れるうえで安心感が得られない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、接触体に触れようとする人に接触箇所が殺菌済であることの安心感を与えることが可能な接触体殺菌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る接触体殺菌システムは、人が触れる可能性のある接触体に紫外光を照射することにより前記接触体の表面を殺菌する殺菌部と、前記接触体に設けられ、前記接触体の表面における前記殺菌部による殺菌が行われた殺菌済領域で可視光発光する可視光発光部と、を備える。
【0009】
この構成によれば、接触体の表面における殺菌部による殺菌が行われた殺菌済領域が可視光発光するので、接触体に触れようとする人にその接触箇所が殺菌済であることを視覚を通して認識させることができる。従って、接触体に触れようとする人にその接触体への接触箇所が殺菌済であることの安心感を与えることができ、清潔感をアピールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る接触体殺菌システムが搭載される構造物の斜視図である。
図2図1に示す接触体殺菌システムが搭載される構造物の断面図である。
図3】本発明の一変形形態に係る接触体殺菌システムが搭載される構造物の斜視図である。
図4図3に示す接触体殺菌システムが搭載される構造物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る接触体殺菌システムの具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
本実施形態の接触体殺菌システム1は、接触体2を殺菌するシステムである。接触体2は、表面に人が素肌で直接触れる可能性のある部材である。特に、接触体2は、機械装置(図示せず)により軸上で回転する環状部材であってよい。例えば、接触体2は、エスカレータに設けられる手すり、或いは、バスや電車などに設置される持ち手ないしはつり革などである。以下、接触体2は、回転する環状部材であるものとし、エスカレータの手すりであるものとする。
【0013】
接触体殺菌システム1は、図1及び図2に示す如く、殺菌部10と、可視光発光部20と、を備えている。
【0014】
殺菌部10は、接触体2の表面を殺菌する装置である。殺菌部10は、接触体2が回転する周上の一部(具体的には、エスカレータの乗車口付近)に固定配置されている。殺菌部10は、回転する接触体2の対応部位の表面を覆うように設けられている。殺菌部10は、筐体11と、照射部12と、を有している。筐体11は、回転する接触体2の一部を内包するように箱状に形成されている。
【0015】
照射部12は、紫外線の光(以下、紫外光と称す。)を照射する部位である。照射部12が照射する紫外光は、殺菌(不活化)効果を得られ易い波長(例えば、波長が300nm以下である深紫外線)の光である。殺菌したい菌種によるが、この波長は、250nm~280nmの範囲であることがより好ましい。照射部12は、例えばLEDや水銀ランプである。照射部12は、筐体11に内蔵されている。照射部12は、筐体11内において接触体2の表面(特に、その表面のうち人が触れる可能性のある全領域)に向けて紫外光を照射する。照射部12は、接触体2における筐体11内に進入した表面領域に紫外光を照射することにより、その接触体2の表面領域を殺菌する。
【0016】
照射部12による紫外光の照射は、接触体2の幅(具体的には、接触体2の回転方向に対して直交する方向の幅)に相当する広がりを伴って行われ、例えば放射状に行われる。より具体的には、照射部12の配向角の半値全幅は、その取付位置において接触体2の幅を内包する角度に設定されている。これにより、発光強度が強いピーク近傍の光を接触体2に照射することができ、殺菌効果を向上させることができる。また、照射部12による紫外光の照射の量及び照射時間は、接触体2の回転速度に対応して殺菌効果が適切に得られるように制御される。尚、照射部12による紫外光の照射は、筐体11の内部から外部へ紫外光が漏れないように行われる。
【0017】
可視光発光部20は、人に視認可能な可視光を発光する部位である。可視光発光部20は、接触体2に設けられている。可視光発光部20は、特に、接触体2の表面のうち殺菌部10の筐体11を通過した後に人が視認し易い上面側の表面に配置されている。可視光発光部20は、蓄光材により形成されており、例えばアルミン酸ストロンチウムなどを含む。可視光発光部20は、接触体2の表面に顔料として塗布され或いは貼り付けられている。
【0018】
可視光発光部20は、殺菌部10の照射部12から照射された紫外光を可視光へ波長変換する。可視光発光部20は、接触体2の表面における照射部12による紫外光が受光された領域内においてその光のエネルギを蓄え(励起され)、その蓄えた光のエネルギを可視光として放出する。尚、可視光発光部20は、接触体2の表面における人が触る可能性のある全領域に設けられていてもよいし、殺菌済を示す文字や模様,グラデーションが接触体2の回転方向における所定長さ間隔で表示されるように部分的に設けられていてもよい。
【0019】
可視光発光部20は、照射部12からの紫外光を受けた後、その光のエネルギを蓄えた領域から可視光を所定時間継続して放出する。この所定時間は、接触体2の表面における光のエネルギを蓄えた領域が接触体2の回転により筐体11の内部から外部へ進出して人に視認可能な所定位置に到達するまで可視光発光を継続できる時間に設定されている。例えば、人の目で視認できる発光が継続される時間は、2秒~5秒である。
【0020】
また、上記の所定時間は、接触体2の回転中において接触体2の表面領域のうち紫外光を受光してからの経過時間がその所定時間以内であるかその所定時間超であるかの境界を人が視覚的に(すなわち明暗で)認知できるように設定されており、例えば接触体2がエスカレータの手すりである場合、その接触体2が筐体11から1メートル程度離れた位置まで回転するのに要する時間に設定される。尚、この所定時間は、接触体2の表面に蓄えた光のエネルギを用いて多くても接触体2が一回転する時間に設定されていればよい。
【0021】
上記した照射部12による紫外光の照射の量及び照射時間は、接触体2の回転速度に対応して殺菌効果が適切に得られるようにかつ可視光発光部20での可視光発光が上記の所定時間継続するように制御される。
【0022】
次に、接触体殺菌システム1の動作について説明する。
電源オンにより接触体2の回転が開始されると、殺菌部10による殺菌処理が開始される。具体的には、接触体2の全表面のうち殺菌部10の筐体11を通過する表面領域に向けて照射部12から紫外光が照射される。
【0023】
接触体2の表面に対して紫外光が照射されると、その照射された表面領域が殺菌される。このため、接触体2における殺菌された表面領域に人が素肌で直接に触れても、その人に菌が移ることは無い。また、感染している人が接触体2の表面に触れていた場合は、接触体2の表面に菌が付着する可能性があるが、その付着後、その接触体2の表面における菌が付着する領域が殺菌部10の筐体11を通過すればその菌は消滅する。従って、接触体2の表面を媒介して人が感染するのを防止することができ、人が接触体2を触れるうえでの安全性を向上させることができる。
【0024】
また、接触体2の表面に対して紫外光が照射されると、その光のエネルギが接触体2の可視光発光部20に蓄えられる。そして、接触体2の表面における光のエネルギを蓄えた領域が筐体11の外部へ進出した後も、その可視光発光部20がその蓄えられた光のエネルギを用いて可視光発光(すなわち、燐光)する。尚、図1及び図2には、可視光発光部20が可視光発光した領域Vが梨地で示されている。
【0025】
上記の如く接触体2の表面における筐体11を通過した領域が可視光発光すれば、エスカレータへの乗車直前に、人が触れる可能性のある接触体2の表面が燐光するので、その接触体2に触れようとする人にその接触箇所が殺菌済であることを視覚を通して認識させることができる。この場合、接触体2に触れようとする人は、その可視光発光する接触体2の表面を見ることにより、その触れようとする接触体2の表面箇所が殺菌済であることを視覚を通して認知することができる。
【0026】
従って、本実施形態の構成によれば、接触体2の表面が可視光発光しない構成とは異なり、接触体2に触れようとする人にその接触体2への接触箇所が殺菌済であることの安心感を与えることができ、清潔感をアピールすることができる。
【0027】
また、接触体2の表面の可視光発光は、接触体2の回転中、筐体11内で照射部12から紫外光を受けた後、筐体11外で人が視覚的に可視光発光が停止した領域との境界を認知できる所定位置に到達するまで継続する。この場合、接触体2に触れようとする人は、回転する接触体2の表面での可視光発光する領域と可視光発光しない領域との境界を視覚を通して認知することができる。従って、このように上記の境界を認知できるように可視光発光する構成によれば、その境界を認知できないように(具体的には、接触体2の全周の全表面で)可視光発光する構成に比べて、その触れようとする接触体2の表面が筐体11内で殺菌処理されていたことをより確実に認識させることが可能になる。
【0028】
更に、上記の如く接触体2の表面の可視光発光が可視光発光する領域と可視光発光しない領域との境界を人が認知できる所定位置まで継続する構成によれば、接触体2の回転中、その境界は、筐体11の近傍領域において、その筐体11よりも回転方向下流側に現れる一方、その筐体11よりも回転方向上流側には現れないこととなる。この場合、接触体2に触れようとする人は、接触体2の表面の境界有無を見ることにより、その接触体2が何れの方向に回転しているのかを視覚を通して認識することができる。従って、エスカレータに乗ろうとしている人に、そのエスカレータの接触体2が何れの方向に回転しているのかを認識させ易くすることができ、エスカレータへの正常な進入方向(乗車口)を人に知らせ易くすることができ、これにより、人をエスカレータの乗車口へ適切に誘導することができる。
【0029】
ところで、上記の実施形態においては、接触体2がエスカレータの手すりであるものとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、図3及び図4に示す如く、接触体2がバスや電車などに設置される持ち手ないしはつり革であってもよい。
【0030】
また、上記の実施形態においては、接触体2が自動で回転する環状部材である。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、接触体2が手動で回転する環状部材であってもよい。この変形形態においては、人が接触体2を手動で回転させて殺菌済の表面領域を引き出すものとしてよい。
【0031】
また、上記の実施形態においては、接触体2が回転する環状部材である。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、殺菌部10による殺菌処理が可能であれば、接触体2が、表面に不特定の人が触れる可能性のある、公衆トイレの便座や操作ボタン、銀行などのATM、鉄道などの券売機、エレベータのボタン、パソコンのキーボードなどであってもよい。これらの接触体2に可視光発光部20を設けることで、使用者に安心感を与えることができる。不特定多数の人が利用するシェアオフィスでは、部屋内を紫外光により殺菌し、扉や窓の全部又は一部を可視光発光部20として発光表示させることで、次の利用者が安心してその部屋を利用することができる。
【0032】
また、上記の実施形態においては、可視光発光部20が、殺菌部10の照射部12が照射した紫外光を可視光に変換することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、可視光発光部20が、照射部12による紫外光を用いることなく、その照射部12による紫外光の照射と同期して接触体2の表面における殺菌済領域で可視光発光するものであってもよい。例えば、照射部12が青色などの別の可視光光源を有し、この可視光により可視光発光部20を励起することで蓄光発光させてもよい。さらには筐体11内で光を照射することのみならず、接触体2の全周に導光体を埋め込み、筐体11の外部にまで光を導光させることで、筐体11外部の接触体2の表面を可視光発光させることとしてもよい。
【0033】
また、上記の実施形態においては、可視光発光部20での可視光発光のパターンが、発光が行われるか行われないかの二値的なものとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、可視光発光部20での可視光発光のパターンが、発光が時間経過に伴って(すなわち、筐体11からの距離が遠い箇所ほど)徐々に弱くなるように設定されていてもよい。
【0034】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1:接触体殺菌システム、2:接触体、10:殺菌部、11:筐体、12:照射部、20:可視光発光部。
図1
図2
図3
図4