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特開2022-26364パイルを有したホワイトボード用イレーザー
<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026364
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】パイルを有したホワイトボード用イレーザー
(51)【国際特許分類】
   B43L 21/00 20060101AFI20220203BHJP
   D03D 27/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B43L21/00
D03D27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129782
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】394022015
【氏名又は名称】妙中パイル織物株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【弁理士】
【氏名又は名称】堀家 和博
(74)【代理人】
【識別番号】100081891
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】妙中 清剛
(72)【発明者】
【氏名】妙中 正司
(72)【発明者】
【氏名】岸本 大輝
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048AA24
4L048AB07
4L048BA23
4L048CA15
4L048DA21
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】隣接するパイル同士を側面視で交差させる等により、「消し易さ」と「消し滓の低減」を両立させる。
【解決手段】ホワイトボード用イレーザー1は、使用者に把持され得る本体2と、本体2の一面2aに設けられた複数のパイル3を有し、複数のパイル3の少なくとも一部は、隣接するパイル3同士が側面視で交差している。又、隣接するパイル同士は側面視で逆方向に傾斜したり、複数のパイル3それぞれは側面視で傾斜したり、複数のパイル3それぞれは、傾斜角度αが20°以上90°未満であったり、パイル長Hが0.3mm以上8.0mm以下であったり、パイル太さDが5μm以上200μm以下であったり、ポリアミド樹脂繊維を含んだり、パイル布帛12の基布14がバックコーティングされたり、パイル束密度Maが15本/cm以上であったり、パイル繊維密度Mbが800本/cm以上であっても構わない。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に把持され得る本体と、この本体の一面に設けられた複数のパイルを有し、
前記複数のパイルの少なくとも一部は、隣接するパイル束同士が側面視で交差していることを特徴とするホワイトボード用イレーザー。
【請求項2】
前記隣接するパイル同士は、前記本体の一面に対して、側面視で逆方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のホワイトボード用イレーザー。
【請求項3】
使用者に把持され得る本体と、この本体の一面に設けられた複数のパイルを有し、
前記複数のパイルそれぞれは、前記本体の一面に対して、側面視で傾斜していることを特徴とするホワイトボード用イレーザー。
【請求項4】
前記本体の一面に対する前記複数のパイルそれぞれの傾斜角度は、20°以上90°未満であることを特徴とする請求項2又は3に記載のホワイトボード用イレーザー。
【請求項5】
前記複数のパイルそれぞれのパイル長は、0.3mm以上8.0mm以下であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のホワイトボード用イレーザー。
【請求項6】
前記複数のパイルそれぞれのパイル太さは、5μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のホワイトボード用イレーザー。
【請求項7】
前記複数のパイルそれぞれは、ポリアミド樹脂繊維を含んでいることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のホワイトボード用イレーザー。
【請求項8】
当該ホワイトボード用イレーザーは、前記複数のパイルが基布から立設したパイル布帛を有し、
前記パイル布帛の基布は、その裏面がバックコーティングされていることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のホワイトボード用イレーザー。
【請求項9】
前記複数のパイルそれぞれは、複数のパイル繊維が束になったパイル束であることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のホワイトボード用イレーザー。
【請求項10】
前記複数のパイルにおけるパイル束の密度が15本/cm以上であることを特徴とする請求項9に記載のホワイトボード用イレーザー。
【請求項11】
前記複数のパイルにおけるパイル繊維の密度が800本/cm以上であることを特徴とする請求項9又は10に記載のホワイトボード用イレーザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトボード用イレーザーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、払拭面を立毛布帛とした白板用の消去具が知られている(特許文献1)。
この白板用の消去具は、ケースに形成した凹部へスポンジ部材を配し、前記スポンジ部材の表面側に、基材に繊維束を植毛した立毛布帛を設置し、前記スポンジ部材に形成した開口部に、表面と裏面に異なる磁極が存在する平板状に形成した2つのフェライト磁石を、隣接する磁極が互いに異なるように吸着させて一体とした磁石体を収容し、該磁石体の表面側に前記立毛布帛を隣接させると共に、前記磁石体の裏面側に当該磁石体の外形形状と等しい平板状のヨークを吸着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-184345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された白板用の消去具は、その段落0013に記載されたように、払拭面である立毛布帛の繊維束を長くしてあり、またその密度も高くしているが、立毛布帛の繊維それぞれが基材に対して直立した直毛であって、隣接する繊維同士が側面視で略平行となるため、消去具によって白板に描かれたインキは細かいインキカスとなるものの、白板に描かれてからの時間が経過したインキの文字等の筆跡が消し難い問題がある。
一方、白板用の消去具における立毛布帛の繊維束を短くしただけでは、インキカス(消し滓)が出易くなる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、隣接するパイル同士を側面視で交差させる等によって、「消し易さ(消去性)」と「消し滓の低減(消し滓の出にくさ)」を両立できるホワイトボード用イレーザーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1は、使用者に把持され得る本体と、この本体の一面に設けられた複数のパイルを有し、前記複数のパイルの少なくとも一部は、隣接するパイル同士が側面視で交差していることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記隣接するパイル同士は、前記本体の一面に対して、側面視で逆方向に傾斜している点にある。
【0008】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第3の特徴は、使用者に把持され得る本体と、この本体の一面に設けられた複数のパイルを有し、前記複数のパイルそれぞれは、前記本体の一面に対して、側面視で傾斜している点にある。
【0009】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第4の特徴は、上記第2又は3の特徴に加えて、前記本体の一面に対する前記複数のパイルそれぞれの傾斜角度は、20°以上90°未満である点にある。
【0010】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第5の特徴は、上記第1~4の特徴に加えて、前記複数のパイルそれぞれのパイル長は、0.3mm以上8.0mm以下である点にある。
【0011】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第6の特徴は、上記第1~5の特徴に加えて、前記複数のパイルそれぞれのパイル太さは、5μm以上200μm以下である点にある。
【0012】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第7の特徴は、上記第1~6の特徴に加えて、前記複数のパイルそれぞれは、ポリアミド樹脂繊維を含んでいる点にある。
【0013】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第8の特徴は、上記第1~7の特徴に加えて、当該ホワイトボード用イレーザーは、前記複数のパイルが基布から立設したパイル布帛を有し、前記パイル布帛の基布は、その裏面がバックコーティングされている点にある。
【0014】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第9の特徴は、上記第1~8の特徴に加えて、前記複数のパイルそれぞれは、複数のパイル繊維が束になったパイル束である点にある。
【0015】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第10の特徴は、上記第9の特徴に加えて、前記複数のパイルにおけるパイル束の密度が15本/cm以上である点にある。
【0016】
本発明に係るホワイトボード用イレーザー1の第11の特徴は、上記第9又は10の特徴に加えて、前記複数のパイルにおけるパイル繊維の密度が800本/cm以上である点にある。
【0017】
これらの特徴により、複数のパイル3の少なくとも一部で、隣接するパイル3同士を側面視で交差させることで、表1~4や図9で示したように、特許文献1の如く、立毛布帛の繊維それぞれが基材に対して直立した直毛であったり、隣接する繊維同士が側面視で略平行となる(隣接する繊維同士が側面視で交差していない)場合とは異なり、ホワイトボードに描かれてからの時間が経過したインクの文字等の筆跡が消し易い。
これに加え、隣接するパイル3同士が側面視で交差していれば、パイル長Hが短めであっても、特許文献1のように隣接する繊維同士が側面視で略平行となる場合と比べて、ホワイトボードに描かれたインクの筆跡を消す際に、消し滓Kが出難くなる。
つまり、「消し易さ」と「消し滓の低減」の両立が実現する。
そして、隣接するパイル3同士を、本体2の一面2aに対して側面視で逆方向に傾斜させることで、自ずと隣接するパイル3同士が側面視で交差し、更なる「消し易さ」と「消し滓の低減」の両立が図れる。
【0018】
又、複数のパイル3それぞれを、本体2の一面2aに対して側面視で傾斜させることでも、特許文献1の如く、立毛布帛の繊維それぞれが基材に対して直立した直毛である場合とは異なり、ホワイトボードに描かれてからの時間が経過したインクの筆跡が消し易く、ホワイトボードに描かれたインクの筆跡を消す際に、消し滓Kが出難くなる(「消し易さ」と「消し滓の低減」の両立)。
【0019】
更に、複数のパイル3それぞれにおいて、傾斜角度αを20°以上90°未満としたり、パイル長Hを0.3mm以上8.0mm以下としたり、パイル太さDを5μm以上200μm以下としたり、ポリアミド樹脂繊維を含んだり、パイル束3aの密度(パイル束密度)Maを15本/cm以上としたり、パイル繊維3bの密度(パイル繊維密度)Mbを800本/cm以上とすることでも、「消し易さ」と「消し滓の低減」の両立が図れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るホワイトボード用イレーザーによると、隣接するパイル同士を側面視で交差させる等によって、「消し易さ(消去性)」と「消し滓の低減(消し滓の出にくさ)」を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るホワイトボード用イレーザーを例示する下方斜視概要図である。
図2】ホワイトボード用イレーザーを例示する概要正面図である。
図3】ホワイトボード用イレーザーを例示する概要側面図である。
図4】ホワイトボード用イレーザーを例示する概要平面図である。
図5】ホワイトボード用イレーザーを例示する概要底面図である。
図6】ホワイトボード用イレーザーにおけるパイルの拡大概要側面図であって、(a)は隣接するパイル同士が側面視で交差している状態を示し、(b)は複数のパイルそれぞれは本体の一面に対して側面視で傾斜している状態を示す。
図7】ホワイトボード用イレーザーの実施例1、2、8を例示するパイルの平面図代用拡大写真である。
図8】ホワイトボード用イレーザーの実施例3、4を例示するパイルの平面図代用拡大写真である。
図9】ホワイトボード用イレーザーの実施例5~7を例示するパイルの平面図代用拡大写真である。
図10】ホワイトボード用イレーザーの実施例9を例示するパイルの平面図代用拡大写真である。
図11】ホワイトボード用イレーザーの実施例10~13、15~18等を例示するパイルの平面図代用拡大写真である。
図12】ホワイトボード用イレーザーの実施例14を例示するパイルの平面図代用拡大写真である。
図13】ホワイトボード用イレーザーの比較例2を例示するパイルの図代用拡大写真であって、(a)はある側面視を示し、(b)は(a)とは略直交した側面視を示す。
図14】(a)はホワイトボードに付けた状態のホワイトボード用イレーザー(本体がケース材と芯材に分かれていない場合)を例示する図面代用写真であり、(b)はホワイトボードに描かれたインクの筆跡を例示する図面代用写真である。
図15】(a)は当該インクの筆跡を本発明に係るホワイトボード用イレーザーで消した際の消し滓を示す図面代用写真であり、(b)は当該インクの筆跡を一般的なホワイトボード用イレーザーで消した際の消し滓を示す図面代用写真である。
図16】本発明の試験で用いた実施例、比較例における「消去性」と「消し滓の出にくさ」を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<ホワイトボード用イレーザー1の全体構成>
図1~12、図14(a)には、本発明の実施形態に係るホワイトボード用イレーザー(以下「イレーザー」)1が例示されている。
イレーザー1は、後述する本体2と、この本体2に設けられた複数のパイル3を有している。
【0023】
又、イレーザー1は、複数のパイル3(パイル糸13)が基布14から立設したパイル布帛12を有していても良い。
このようなイレーザー1は、ホワイトボードWに描かれたインクの文字や図形等の筆跡Cを消去する消去具(又は、字消し)であると言えることから、まずは、イレーザー1の消去の対象となるインクの筆跡Cや、当該筆跡Cが描かれるホワイトボードW等について、以下に述べる。
【0024】
<ホワイトボードW、インクの筆跡C、消し滓Kなど>
図14、15に示したように、ホワイトボードWは、白板とも言えるが、インクの文字や図形等の筆跡Cを描くことが出来れば良く、色が白色であるかを問わず、筆記板であるとも言える。
ホワイトボードWは、後述する消し滓Kを受けたり、イレーザー1等の消去具や、所定のホワイトボード用マーカー(剥離剤を含むインクの筆跡CをホワイトボードWに描く筆記具)等を置く(載置する)ことが出来るトレイW1を有していても良い。
【0025】
ホワイトボードWは、インクの筆跡Cを描くことが出来れば、その素材に特に限定はないが、例えば、イレーザー1やマーカー等が磁石で張り付くことが出来るように(磁着可能となるように)、鉄等の磁着可能な素材が用いられていても良い。
ホワイトボードWは、インクの筆跡Cを描くことが出来れば、その構成も特に限定はないが、例えば、ホワイトボードWの形状は、略矩形状や略正方形状の他、略円形状や略楕円形状、略三角形状、略五角形状などの略多角形状であっても良い。
以下は、ホワイトボードWの形状として、主に略矩形状であるとして述べる。
又、ホワイトボードWの大きさは、ホワイトボードWが略矩形状であれば、例えば、幅(横)が200mm以上3000mm以下、高さ(縦)が200mm以上1000mm以下などであっても良い。
【0026】
その他、ホワイトボードWは、鉄製で略板状の芯材を有し、その芯材の筆記面(芯材の表側と裏側における露出面)がガラスコーティングされた(シリカ二酸化ケイ素を主成分とするガラス質の釉薬を高温で焼き付けた)琺瑯(ホーローホワイトボード)等であっても良く、逆に、芯材の筆記面がコーティングされていないもの(スチールホワイトボード)でも構わない。
又、ホワイトボードWは、消去できない塗料等で予定表などの枠が描かれたものであったり、逆に、無地のものであっても良く、ホワイトボードWは、脚付きタイプや、壁掛けタイプ、折り曲げ可能なシート状タイプなど、何れの構成でも構わない。
【0027】
インクの筆跡Cは、ホワイトボード用マーカーでホワイトボードWに描かれた文字や図形等であり、例えば、図14(b)に示したように、ループを繰り返す等をした図形や模様などであっても良い。
その他、例えば、図15(a)、(b)に示したように、消し滓Kは、イレーザー1等の消去具で、インクの筆跡Cを消去する際に発生するインクの滓(かす)であって、上述したホワイトボードWがトレイW1を有していれば、当該トレイW1の上面に落ちると言える。
【0028】
<本体2>
図1~12、図14(a)で示したように、本体2は、使用者(イレーザー1の使用者)に把持され得る部分である。
又、本体2は、その一面2aに、上述した複数のパイル3が設けられており、当該一面2aは、消去面であるとも言える。
【0029】
本体2は、その一面2aに複数のパイル3が設けられていれば、その構成は特に限定はないが、本体2の形状は、略直方体状や略立方体状であったり、略円柱状などであっても良く、略直方体状であれば、略四角柱状や略三角柱状であっても構わない。
以下は、本体2の形状として、主に略直方体状であるとして述べる。
本体2には、使用者が把持し易いように、本体2の上面から側面にかけて等に、略矩形状の凹部2bが設けられていても良い。
又、本体2には、その側面に磁石2cが設けられていても良く(図1~5、図7(a)参照)、上述した凹部2bは、磁石2cが設けられた側面から上面にかけて設けられていても構わない。
【0030】
又、本体2の大きさは、本体2が略直方体状であれば、例えば、幅(横)が50mm以上300mm以下、高さ(縦)が10mm以上150mm以下、奥行き(厚さ)が10mm以上150mm以下(幅が150mm、高さが40mm、奥行きが35mmなど、この場合、一般的なイレーザーより幅狭(細長)状であるとも言える)であっても良い。
本体2は、ケース材10と、このケース材10内に嵌め込まれる芯材11を有していても良い。
以下は、本体2は、主にケース材10と芯材11を有しているとして述べる。
【0031】
<ケース材10>
図1~12、図14(a)に示したように、ケース材10は、後述する芯材11を覆う部材であって、当該ケース材10は、その一面等が開口した略箱状であり、この開口10aから芯材11が嵌め込まれる。
ケース材10も、その構成は特に限定はないが、例えば、ケース材10の形状も、略直方体状や略立方体状であったり、略円柱状などであっても良く、略直方体状であれば、略四角柱状や略三角柱状であっても構わない。
以下は、ケース材10の形状として、主に略直方体状であるとして述べる。
【0032】
ケース材10にも、使用者が把持し易いように、ケース材10の上面から側面にかけて等にも、略矩形状の凹部10bが、設けられていても良い。
又、ケース材10の大きさも、ケース材10が略直方体状であれば、例えば、幅(横)が50mm以上300mm以下、高さ(縦)が10mm以上150mm以下、奥行き(厚さ)が10mm以上150mm以下(幅が150mm、高さが40mm、奥行きが35mmなど)であっても良い。
【0033】
略箱状であるケース材10の厚さも、例えば、0.5mm以上5mm以下などであっても良い。
ケース材10の素材も、特に限定はないが、合成樹脂製であったり、その他、木製や金属製などであっても良い。
【0034】
<芯材11>
図1~12、図14(a)に示したように、芯材11は、上述したケース材10に覆われる部材であって、ケース材10にその開口10aから内部に嵌め込まれる。
芯材11も、その構成は特に限定はないが、例えば、芯材11の形状も、略直方体状や略立方体状であったり、略円柱状などであっても良く、略直方体状であれば、略四角柱状や略三角柱状であっても構わない。
以下は、芯材11の形状として、主に略直方体状であるとして述べる。
【0035】
芯材11にも、使用者が把持し易いように、芯材11の上面から側面にかけて等にも、ケース材10の凹部10bの形状に応じた略矩形状の凹部が設けられていたり、その他、芯材11の厚さを、凹部10bの深さの分だけ、ケース材10の厚さより薄くする等しても構わない。
又、芯材11の大きさも、芯材11が略直方体状であれば、例えば、幅(横)が50mm以上300mm以下、高さ(縦)が10mm以上150mm以下、奥行き(厚さ)が10mm以上150mm以下(幅が150mm、高さが40mm、奥行きが35mmなど)であっても良い。
【0036】
芯材11の素材も、特に限定はないが、合成樹脂製であったり、その他、木製や金属製などであっても良い。
芯材11は、後述するパイル布帛12を、パイル糸13が露出するように当該芯材11に巻き付けた状態で、上述したケース材10にその開口10aから内部に嵌め込んで、パイル布帛12を保持しても良い。
【0037】
<パイル布帛12>
図1~12、図14(a)に示したように、パイル布帛12は、後述するパイル3(パイル糸13とも言える)が基布14から立設した布帛である。
パイル布帛12は、の厚みは、パイル糸13の長さ(パイル長H)と、基布14の厚みを足した値であって、特に限定はないが、例えば、1.0mm以上9.0mm以下、好ましくは1.5mm以上8.0mm以下、更に好ましくは2.0mm以上7.0mm以下であっても良い。
パイル布帛12は、パイル糸13と基布14が一緒に織成されたパイル織物12’であったり、パイル糸13が基布14にタフトされた(植設された)パイルタフト布帛などであっても良い。
【0038】
図1~12、図14(a)に示したように、パイル織物12’は、経糸及び緯糸で製織された基布14と、この基布14に織り込まれたパイル糸13を有している。
パイル織物12’は、ダブルモケット織機を使用して織成しても良く、この場合、上下二重にして2枚のパイル織物12’を同時に織成することが出来る。
【0039】
パイル織物12’は、上下二重にして、2枚のパイル織物を連結しているパイル糸13を上下のパイル織物の間でセンターカットして、2枚のパイル織物に分割されて取り出される。
パイル織物12’を織成する織機の筬の数も、特に限定はなく、例えば、40~50羽(46羽など)であっても良い。
【0040】
その他、パイル布帛12は、パイルタフト布帛であっても良く、このパイルタフト布帛とは、パイル糸13が基布14にタフトされた(植設された)パイル布帛である。
このパイルタフト布帛における基布14は、織物であったり、編物や不織布であったり、合成樹脂製のフィルムなどのシート状物であっても良い。
その他、パイル布帛12としては、例えば、織物や編物、不織布等の基布14の一面を起毛加工して、毛羽(パイル3)を立設させたものであっても良い。
以下、パイル布帛12は、主にパイル織物12’であるとして述べる。
【0041】
<パイル3(パイル糸13)>
図1~12、図14(a)(特に、図6~12)に示したように、パイル3は、上述した本体2の一面2aに設けられ、当該一面2aから複数本が立設した立毛であるとも言える。
パイル3は、上述したように、パイル織物12’の後述する基布14と一緒に織成されたパイル糸13であったり、パイルタフト布帛の基布14にタフトされたパイル糸13などであっても良い。
又、パイル3は、複数のパイル繊維13b(3b)が束になったパイル束13a(3a)であっても良く、この場合、複数のパイル繊維13bが束になっていることから、「1本」のパイル束13aは「1株」のパイル束13aであるとも言える。
以下、パイル3は、主に、パイル織物12’におけるパイル糸13であり、複数のパイル繊維13bが束になったパイル束13aであるとして述べる。
【0042】
パイル織物12’において、パイル糸13は、後述する基布14に織り込まれているのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、織成時において、基布14を構成する経糸のうち、隣接する数本1組(2本1組など)の経糸に、テンション差(張力差)を付けることで、パイル糸13を傾斜や交差させても良い。
その他、パイル糸13は、基布14を構成する2本1組となった太い経糸と、この太い経糸より細い経糸の間に、製織(経)方向に沿って複数配置されても良い。
【0043】
又、各パイル糸13は、基布14において、製織方向に前後する3本以上で奇数本の緯糸に対して、1本の緯糸の下を通る毎に1本の緯糸の上を通った後に1本の緯糸の下を通っていても良い。
この場合、基布14に織り込まれた各パイル糸13は、ファストパイル(Fast Pile )を構成しているとも言える。
【0044】
その他、各パイル糸13は、基布14において、1本の緯糸のみの下を通っていても良く、この場合、基布14に織り込まれた各パイル3は、ルーズパイル(Loose Pile )を構成しているとも言える。
以下、各パイル糸13は、主にファストパイルを構成しているとして述べる。
【0045】
各パイル糸13は、前後する3本以上で奇数本の緯糸における最も前方の緯糸の下を通った後に基布14から突出する前パイル片と、前後する3本以上で奇数本の緯糸における最も後方の緯糸の下を通った後に基布14から突出する後パイル片を形成しても良い。
ここで、上述した経糸は、最も前方の緯糸と最も後方の緯糸のうちの少なくとも一方の緯糸の上を通っていても良い。
【0046】
このようなパイル糸13は、基布14における上述した経糸のテンション差や、基布14自体の織組織によって、織幅(緯)方向に傾斜した状態に保持されるように形態安定加工を別途することなく、基布14の製織、パイル糸13の織り込みを行うだけで、各パイル糸13における前後のパイル片(パイル束13aやパイル繊維13b)を、織幅方向に沿った何れかの方向に傾斜させることが可能となるとも言える。
尚、パイル3が、パイルタフト布帛におけるパイル糸13である場合には、形態安定加工(例えば、ヒートセット加工など)によって、パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)を、タフト方向又はタフト方向に略直交する方向に傾斜させても良い。
b)を傾斜させることが可能となる。
【0047】
複数のパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))の少なくとも一部は、隣接するパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))同士が側面視で交差していても良い(図6(a)参照)。
ここで、本発明における「隣接するパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))同士が側面視で交差している」とは、隣接するパイル3の両方が本体2の一面2aに対して、側面視で傾斜している場合を含むだけでなく、隣接するパイル3のうち、何れか一方のパイル3のみが本体2の一面2aに対して、側面視で傾斜している場合も含む。
【0048】
この「隣接するパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))同士が側面視で交差している」場合、更に、隣接するパイル3同士は、本体2の一面2aに対して、側面視で逆方向(双方向)に傾斜していても構わない。
ここで、本発明における「隣接するパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))同士は、本体2の一面2aに対して、側面視で逆方向に傾斜している」とは、側面視で、隣接するパイル3のうち、一方のパイル3(パイル糸13)と、本体2の一面2a(基布14の上面(表面)14c)との間の角が、他方のパイル3と、本体2の一面2aとの間の角の反対側に位置することを意味する。
【0049】
又、複数のパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))それぞれは、本体2の一面2aに対して、側面視で傾斜していても良い(図6(b)参照)。
ここで、本発明における「複数のパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))それぞれは、本体2の一面2aに対して、側面視で傾斜している」とは、各パイル3(パイル糸13)と、本体2の一面2a(基布14の上面(表面)14c)との間の角度が、90°ではないこと(つまり、各パイル3が直立していないこと)を意味する。ここで、複数のパイル3それぞれが傾斜する方向は、上述したように、側面視で逆方向に傾斜していたり、側面視で同方向に傾斜していても良い。
【0050】
尚、本発明における「側面視で交差している」とは、少なくともある1つの側面方向視において交差していることを意味し、本発明における「側面視で逆方向に傾斜している」とは、少なくともある1つの側面方向視において逆方向に傾斜していることを意味し、本発明における「側面視で傾斜している」とは、少なくともある1つの側面方向視において傾斜していることを意味する。
特に、パイル3がパイル織物12’のパイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)である場合には、本発明における「側面視で交差している」とは、織成される基布14の経方向視又は緯方向視において交差していることを意味し、本発明における「側面視で逆方向に傾斜している」とは、基布14の経方向視又は緯方向視において逆方向に傾斜していることを意味し、本発明における「側面視で傾斜している」とは、基布14の経方向視又は緯方向視において傾斜していることを意味する。
又、パイル3がパイルタフト布帛のパイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)である場合には、本発明における「側面視で交差している」とは、パイル糸13のタフト方向視又はタフト方向に略直交する方向視において交差していることを意味し、本発明における「側面視で逆方向に傾斜している」とは、タフト方向視又はタフト方向に略直交する方向視において逆方向に傾斜していることを意味し、本発明における「側面視で傾斜している」とは、タフト方向視又はタフト方向に略直交する方向視において傾斜していることを意味する。
【0051】
<パイル3の傾斜角度α>
図6に示したように、パイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))の傾斜角度αは、上述した本体2の一面2a(基布14の上面(表面)14c)に対する、複数のパイル3それぞれの傾斜角度である。
パイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))の傾斜角度αは、特に限定はないが、例えば、20°以上90°未満であったり、20°以上89°以下、好ましくは25°以上85°以下、更に好ましくは30°以上80°以下、より更に好ましくは40°以上75°以下であっても良い。
尚、「パイル束3a(13a)における傾斜角度α」とは、本体2の一面2a(基布14の上面(表面)14c)に対する、パイル束3a(13a)の側面視における太さD方向(幅方向)の略中央をパイル束3a自体の長さH2方向に略沿った直線の傾斜角度であっても良い。
又、「パイル繊維3b(13b)における傾斜角度α」とは、本体2の一面2a(基布14の上面(表面)14c)に対する、パイル繊維3b(13b)の側面視における太さD方向(幅方向)の略中央をパイル繊維3b自体の長さH2方向に略沿った直線の傾斜角度であっても良い。
【0052】
<パイル3のパイル長H>
図6に示したように、パイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))のパイル長Hは、<1>パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)の上下長さ(厚み方向長さ)H1であるか、又は、<2>傾斜角度αに依らず、パイル糸13自体の長さH2であるとも言え、パイル糸13が、前後のパイル片(パイル束13aやパイル繊維13b)を有している場合は、当該パイル片の上下方向の長さか、又は、パイル片自体の長さである。尚、上述したパイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)の傾斜角度αを用いて、H1=H2sinαであるとも言える。
パイル長Hは、特に制限はないが、例えば、0.3mm以上8.0mm以下であったり、好ましくは0.5mm以上5.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以上4.0mm以下であったり、又は、1.5mm以上3.0mm以下(2.0mmや2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、6.0mmなど)であっても良い。
【0053】
<パイル3のパイル太さDなど>
図6に示したように、パイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))のパイル太さDは、パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)の太さ(直径)であって、マイクロスコープなどで実測した値であっても良い。
パイル太さDも、特に制限はないが、例えば、5μm以上200μm以下であったり、好ましくは10μm以上100μm以下、更に好ましくは20μm以上80μm以下(30μm以上50μm以下や、35μm以上60μm以下、60μm以上70μm以下、90μm以上120μm以下など)であっても良い。
【0054】
尚、パイル糸13(パイル束13a)全体としての繊度(総繊度)も、特に制限はないが、例えば、30d(デニール)以上1500d以下、好ましくは40d以上1000d以下、更に好ましくは50d以上500d以下(210dや、212d、873d、848d(212d×4)など)であっても良い。
又、パイル糸13に含まれた繊維(パイル繊維13b)の繊度(単繊維繊度)も、特に限定はないが、例えば、5.0d(デニール)以下、好ましくは4.5d以下、更に好ましくは4.0d以下であっても良く、1.0d以上1.2d以下などでも構わない。
パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)のフィラメント数も、特に限定はないが、例えば、1本以上500本以下、好ましくは10本以上400本以下、更に好ましくは30本以上300本(3本、7本、14本、60本(15本×4)、360本など)であっても良い。
【0055】
<パイル3のパイル束密度Ma、パイル繊維密度Mb>
図7~12に示したように、パイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))の密度のうち、パイル束3a(13a)の密度(パイル束密度)Maや、パイル繊維3b(13b))の密度(パイル繊維度)Mbは、立設したパイル(パイル片)3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))の所定面積当たりの本数であるが、特に制限はないが、例えば、パイル束密度Maは、15本/cm以上であったり、好ましくは20本/cm以上、更に好ましくは30本/cm以上、より更に好ましくは40本/cm以上であっても良く、その他、15本/cm以上100本/cm以下であったり、好ましくは20本/cm以上80本/cm以下、更に好ましくは30本/cm以上70本/cm以下、より更に好ましくは40本/cm以上60本/cm以下(16本/cm、23.5本/cm、25.5本/cm、34本/cm、45.5本/cm、48本/cmなど)であっても構わない。
又、パイル繊維密度Mbは、800本/cm以上であったり、好ましくは1000本/cm以上、更に好ましくは1500本/cm以上、より更に好ましくは2000本/cm以上であっても良く、その他、800本/cm以上10000本/cm以下であったり、好ましくは1000本/cm以上8000本/cm以下、更に好ましくは1500本/cm以上7000本/cm以下、より更に好ましくは2000本/cm以上6000本/cm以下(960本/cm、1870本/cm、2295本/cm、2502.5本/cm、2585本/cm、5820本/cmなど)であっても構わない。
尚、パイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))が、かさ高加工が施された糸(後述するBCFポリアミド樹脂繊維など)であれば、上述したパイル束密度Maやパイル繊維度Mbは、数えられるだけの値であっても良く、例えば、BCFポリアミド樹脂繊維を除き、パイル繊維度Mbが960本/cmなどであっても構わない。
【0056】
<パイル3の素材>
パイル3(パイル糸13、パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))の素材も、特に制限はないが、例えば、各パイル糸13それぞれは、ポリアミド樹脂繊維を含んでいても良い。
パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)は、かさ高加工が施され且つ長繊維のBCF(Bulked Continuous Filaments)ポリアミド樹脂繊維を含んでいても良い。
【0057】
又、パイル糸13は、ポリアミド樹脂繊維とBCFポリアミド樹脂繊維との混繊糸であったり、ポリアミド樹脂繊維と、BCFポリアミド樹脂繊維の交撚糸や混繊糸であるなど何れの構成でも良い。
その他、パイル糸13は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維などのポリエステル樹脂繊維を含んでいたり、レーヨン繊維や、コットン繊維などを含んでいても良い。
【0058】
パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)がポリアミド樹脂繊維とBCFポリアミド樹脂繊維との混繊糸である場合、パイル糸13において、BCFポリアミド樹脂繊維が含まれる割合(重量比)も、特に限定はないが、例えば、10%以上であっても良く、好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上でも構わない。
ここで、BCFポリアミド樹脂繊維が含まれる割合を、具体的な重量比で示せば、当該割合が20%である場合の重量比は、ポリアミド樹脂繊維:BCFポリアミド樹脂繊維=4:1となり、当該割合が25%である場合の重量比は、ポリアミド樹脂繊維:BCFポリアミド樹脂繊維=3:1となり、当該割合が約33%である場合の重量比は、ポリアミド樹脂繊維:BCFポリアミド樹脂繊維=2:1となる。
【0059】
<基布14>
図1~12、図14(a)に示したように、基布14は、上述したパイル布帛12において、パイル糸13を支えるものである。
基布14は、パイル布帛12がパイル織物12’であれば、経糸(織成時のテンションや太さが異なる経糸を含んでいても良い)と、緯糸で織成される。
【0060】
一方、基布14は、パイル布帛12がパイルタフト布帛であれば、上述したように、織物であったり、編物や不織布であったり、合成樹脂製のフィルムなどのシート状物であっても良い。
以下、基布14は、主に経糸と緯糸で織成されるとして述べる。
【0061】
基布14の組織(織組織)は、特に制限はないが、例えば、経糸は、製織される基布14における製織方向(経方向)に沿って配置されている(換言すれば、織幅方向に並んで配置されている)。
一方、緯糸は、製織される基布14における織幅方向(緯方向)に沿って配置されている(換言すれば、製織方向に並んで配置されている)。
【0062】
又、経糸は、1本の緯糸の上を通る毎に1本以上3本以下の緯糸の下を通っていても良く、各緯糸と平織組織、又は、綾織組織を構成しているとも言える。
詳解すれば、各経糸は、1本の緯糸の上を通る毎に1本の緯糸の下を通るもの(平織組織)と、1本の緯糸の上を通る毎に2本の緯糸の下を通るもの(綾織組織)などの何れでも構わない。
【0063】
経糸や緯糸の繊度(総繊度)は、特に制限はないが、例えば、30d(デニール)以上500d以下、好ましくは40d以上450d以下、更に好ましくは50d以上400d以下であっても良い。
経糸や緯糸の素材は、特に制限はないが、例えば、コットン繊維であったり、ポリアミド樹脂繊維を含んでいたり、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維などのポリエステル樹脂繊維や、レーヨン繊維、アセテート繊維を含んでいたり、これら各繊維の混繊糸や交撚糸、混紡糸であっても構わない。
【0064】
緯糸の打込み本数(1インチにおいて打ち込んだ緯糸の本数)も、特に制限はなく、例えば、10本以上110本以下(56本など)であっても良い。
基布14の裏面には、アクリル樹脂系接着剤などの合成樹脂を塗布して、所定の熱セットの時間で、バックコーティング(バッキング)していても良い。
ここまで述べた基布14の厚みは、特に限定はないが、例えば、0.01mm以上1.00mm以下、好ましくは0.05mm以上0.90mm以下、更に好ましくは0.10mm以上0.80mm以下であっても良い。
【0065】
<試験>
本発明の試験においては、ここまで述べたイレーザー1について、実施例1~18、比較例1~7を作成し、これら実施例1~18、比較例1~7に対して、「消し易さ(消去性)」と「消し滓の低減(消し滓の出にくさ)」を調べる。
まずは、実施例1~18、比較例1~7について詳解する。
【0066】
<実施例1>
実施例1のイレーザー1は、パイル布帛12として所定の織組織(謂わば、逆方向傾斜組織)のパイル織物12’を有し、当該パイル織物12’の織成時に、基布14における隣接する2本1組の経糸にテンション差を付けたり、単位長さ当たり(例えば、1インチ当たり)の緯糸の本数を所定の値(パターンAの値)とすること等で、ファストパイルである複数のパイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)の少なくとも一部では、織幅(緯)方向において隣接するパイル糸13同士を側面視で交差させ、且つ、織幅(緯)方向において隣接するパイル糸13同士を基布14の上面14c(本体2の一面2a)に対して側面視で逆方向に傾斜させている。
このように織成されたパイル織物12’を用いた(当該織成したパイル織物12’を、パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)が露出する向きで本体2の芯材11に巻き付けた状態で、ケース材10にその開口10aから内部に嵌め込んだ)イレーザー1を実施例1とする。
尚、実施例1において、各パイル糸13(前後のパイル片、パイル束13aやパイル繊維13b)の基布14に対する傾斜角度αは60~70°(60°以上70°以下)、パイル長Hは約2.0mm、パイル太さDは35μm以上60μm以下(パイル糸13は、212d/15F×4本(15本のフィラメントが集まって総繊度212dとなった糸が4本)、パイル束密度Maは25.5本/cm、パイル繊維密度Mbは2295本/cm図7参照、ここで、パイル束密度Maが25.5本/cmとは、図7中で1cm×1cmを示す正方形内に、全体が入っているパイル束13aが25本(略半分のみ入っているパイル束13aを2つあわせて1本としたもの等も含む)で、略半分だけ入っているパイル束13aが1つだけであることを示す)、パイル糸13がポリアミド樹脂繊維製である(つまり、ポリアミド樹脂繊維(BCFでないポリアミド樹脂繊維)のみを含んでいる)。
又、実施例1では、パイル布帛12を熱セットをしておらず、バックコーティングはしていない。
【0067】
<実施例2>
実施例1のパイル織物12’において、パイル長Hを約3.5mmとしたパイル織物12’を用いることで、実施例2のイレーザー1を得た。
【0068】
<実施例3>
実施例1のパイル織物12’において、当該パイル織物12’の織成時に、単位長さ当たりの緯糸の本数や、1本のパイル束13aにおけるパイル繊維13bの本数などを、別の値(パターンBの値)に変更したパイル織物12’を用いることで、実施例3のイレーザー1を得た。
尚、実施例3において、パイル束密度Ma及びパイル繊維密度Mbの値だけが実施例1とは別の値となり、パイル束密度Maは23.5本/cm、パイル繊維密度Mbは2585本/cm図8参照、ここで、パイル束密度Maが23.5本/cmとは、図8中で1cm×1cmを示す正方形内に、全体が入っているパイル束13aが23本で、略半分だけ入っているパイル束13aが1つだけであることを示す)である。
【0069】
<実施例4>
実施例3のパイル織物12’において、パイル長Hを約3.5mmとしたパイル織物12’を用いることで、実施例4のイレーザー1を得た。
【0070】
<実施例5>
実施例1のパイル織物12’において、当該パイル織物12’の織成時に、単位長さ当たりの緯糸の本数や、1本のパイル束13aにおけるパイル繊維13bの本数などを、また更に別の値(パターンCの値)に変更したパイル織物12’を用いることで、実施例5のイレーザー1を得た。
尚、実施例5において、パイル束密度Ma及びパイル繊維密度Mbの値だけが実施例1とはまた更に別の値となり、パイル束密度Maは45.5本/cm、パイル繊維密度Mbは2502.5本/cm図9参照、ここで、パイル束密度Maが45.5本/cmとは、図9中で1cm×1cmを示す正方形内に、全体が入っているパイル束13aが45本で、略半分だけ入っているパイル束13aが1つだけであり、又、パイル繊維密度Mbが2502.5本/cmとは、図9中で1cm×1cmを示す正方形内に、全体が入っているパイル繊維13bが2502本(略半分のみ入っているパイル繊維13bを2つあわせて1本としたもの等も含む)で、略半分だけ入っているパイル繊維13bが1つだけであることを示す)である。
【0071】
<実施例6>
実施例5のパイル織物12’において、パイル長Hを約2.5mmとしたパイル織物12’を用いることで、実施例6のイレーザー1を得た。
【0072】
<実施例7>
実施例5のパイル織物12’において、基布14の裏面にアクリル樹脂系接着剤などを塗布して、所定の熱セットの時間でバックコーティングをすることで、実施例7のイレーザー1を得た。
【0073】
<実施例8>
実施例1のパイル織物12’において、パイル長Hを約4.0mmとしたパイル織物12’を用いることで、実施例8のイレーザー1を得た。
【0074】
<実施例9>
実施例1のパイル織物12’において、パイル長Hを約4.0mmとし、当該パイル織物12’の織成時に、単位長さ当たりの緯糸の本数や、1本のパイル束13aにおけるパイル繊維13bの本数などを、全く別の値(パターンDの値)に変更したパイル織物12’を用いることで、実施例9のイレーザー1を得た。
尚、実施例9において、パイル束密度Ma及びパイル繊維密度Mbの値だけが実施例1とは全く別の値となり、パイル束密度Maは34本/cm、パイル繊維密度Mbは1870本/cm図10参照)である。
【0075】
<実施例10>
実施例10のイレーザー1は、パイル布帛12としてまた別の織組織(謂わば、同方向傾斜組織)のパイル織物12’を有し、当該パイル織物12’の織成時に、基布14における隣接する2本1組の経糸にテンション差を付けたり、単位長さ当たり(例えば、1インチ当たり)の緯糸の本数を異なる値(パターンEの値)とすることで、ファストパイルである複数のパイル13(パイル束13aやパイル繊維13b)それぞれを、基布14の上面14c(本体2の一面2a)に対して側面視で(同方向に)傾斜させている。
このように織成されたパイル織物12’を用いた(当該織成したパイル織物12’を、パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)が露出する向きで本体2の芯材11に巻き付けた状態で、ケース材10にその開口10aから内部に嵌め込んだ)イレーザー1を実施例10とする。
尚、実施例10において、各パイル糸13(前後のパイル片、パイル束13aやパイル繊維13b)の基布14に対する傾斜角度αは50~60°(50°以上60°以下)、パイル長Hは約4.5mm、パイル太さDは90μm以上120μm以下(パイル糸13は、210d/3F(3本のフィラメントが集まって総繊度210dとなった糸))、パイル束密度Maは16本/cm、パイル繊維密度Mbは960本/cm図11参照、ここで、パイル繊維密度MbからBCFポリアミド樹脂繊維の本数は除いている)、パイル糸13がポリアミド樹脂繊維(BCFでないポリアミド樹脂繊維)とBCFポリアミド樹脂繊維(BCFポリアミド樹脂繊維は、873d/360F(360本のフィラメントが集まって総繊度873dとなった糸))との混繊糸であり、その重量比はポリアミド樹脂繊維:BCFポリアミド樹脂繊維=4:1である。
又、実施例10では、パイル布帛12を所定の時間だけ熱セットをしている。
【0076】
<実施例11>
実施例10のパイル織物12’において、パイル長Hを約2.5mmとしたパイル織物12’を用いることで、実施例11のイレーザー1を得た。
【0077】
<実施例12>
実施例10のパイル織物12’において、パイル長Hを約4.0mmとし、当該パイル織物12’の織成時に、基布14における隣接する2本1組の経糸にテンション差を、また異なる値として、各パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)の傾斜角度αを60°~70°(60°以上70°以下)としたパイル織物12’を用いることで、実施例12のイレーザー1を得た。
【0078】
<実施例13>
実施例12のパイル織物12’に対する熱セットの時間を、実施例10とは別の時間に変更したパイル織物12’を用いることで、実施例13のイレーザー1を得た。
【0079】
<実施例14>
実施例14のイレーザー1は、パイル布帛12としてまた別の織組織(謂わば、同方向傾斜組織)パイル織物12’を有し、当該パイル織物12’の織成時に、基布14における隣接する2本1組の経糸にテンション差を付けたり、単位長さ当たり(例えば、1インチ当たり)の緯糸の本数を異なる値(パターンFの値)とすることで、ファストパイルである複数のパイル3それぞれを、基布14の上面14c(本体2の一面2a)に対して側面視で(同方向に)傾斜させている。
このように織成されたパイル織物12’を用いた(当該織成したパイル織物12’を、パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)が露出する向きで本体2の芯材11に巻き付けた状態で、ケース材10にその開口10aから内部に嵌め込んだ)イレーザー1を実施例14とする。
尚、実施例14において、各パイル糸13(前後のパイル片)の基布14に対する傾斜角度αは60°~70°(60°以上70°以下)、パイル長Hは約2.0mm、パイル太さDは30μm以上50μm以下(パイル糸13は、210d/15F(15本のフィラメントが集まって総繊度210dとなった糸))、パイル束密度Maは48本/cm、パイル繊維密度Mbは5820本/cm図12参照)、パイル糸13がポリアミド樹脂繊維製である(つまり、ポリアミド樹脂繊維(BCFでないポリアミド樹脂繊維)のみを含んでいる)。
【0080】
<実施例15>
実施例10のパイル織物12’において、パイル長Hを約4.5mmとし、当該パイル織物12’の織成時に、基布14における隣接する2本1組の経糸にテンション差を、また異なる値として、各パイル糸13(パイル束13aやパイル繊維13b)の傾斜角度αを60°~70°(60°以上70°以下)とし、パイル糸13をポリアミド樹脂繊維製(つまり、ポリアミド樹脂繊維(BCFでないポリアミド樹脂繊維)のみを含んでいる)としたパイル織物12’を用いることで、実施例15のイレーザー1を得た。
尚、実施例15において、パイル束密度Maは16本/cm、パイル繊維密度Mbは960本/cm図11参照、ここで、パイル繊維13bにBCFポリアミド樹脂繊維を含んでいないため、当然に、パイル繊維密度MbからBCFポリアミド樹脂繊維の本数は除いている)である。
【0081】
<実施例16>
実施例15のパイル織物12’において、パイル長Hを約6.0mmとしたパイル織物12’を用いることで、実施例16のイレーザー1を得た。
【0082】
<実施例17>
実施例15のパイル織物12’ において、パイル太さDは60μm以上70μm以下(パイル糸13は、210d/7F(7本のフィラメントが集まって総繊度210dとなった糸))としたパイル織物12’を用いることで、実施例17のイレーザー1を得た。
【0083】
<実施例18>
実施例16のパイル織物12’ において、パイル太さDは60μm以上70μm以下(パイル糸13は、210d/7F(7本のフィラメントが集まって総繊度210dとなった糸))としたパイル織物12’を用いることで、実施例18のイレーザー1を得た。
【0084】
<比較例1>
比較例1のイレーザーは、不織布を用いた(当該不織布を、その一方面が露出する向きで本体の芯材に巻き付けた状態で、ケース材にその開口から内部に嵌め込んだ)イレーザーを比較例1としており、そもそもパイルを有さない。
尚、比較例1においては、パイルが存在しないため、パイルの傾斜も当然無しであり、不織布の厚さ(パイル長に相当)は約3.0mm、不織布を構成する繊維の太さ(パイル太さに相当)は30μm以上50μm以下、不織布はポリエステル樹脂繊維で構成されている。
又、比較例1では、パイルがなく、バックコーティングもしていない。
【0085】
<比較例2>
比較例2のイレーザーは、パイル布帛を有するものの、特許文献1のように、当該パイル布帛のパイルは、基布に対して直立した直毛であり、傾斜していない。
このようなパイル布帛を用いた(当該パイル布帛を、パイルが露出する向きで本体の芯材に巻き付けた状態で、ケース材にその開口から内部に嵌め込んだ)イレーザーを比較例2とする。
尚、比較例2においては、パイルが傾斜していないため、パイルの傾斜角度も当然無く、敢えて言うのであれば、パイルの基布に対する角度は90°であり、パイル長は約6.0mm、パイル太さは80μm以上100μm以下、パイル束密度Maは208本/cm、パイル繊維密度Mbは2496本/cm図13参照)である。
又、比較例2では、パイル布帛を熱セットをしておらず、バックコーティングはしていない。
【0086】
<比較例3>
実施例15のパイル織物において、当該パイル織物12’の織成時に、基布14における隣接する2本1組の経糸にテンション差を、また更に異なる値(例えば、0(ゼロ)等)として、パイル糸を傾斜させない(つまり、パイル糸の基布に対する角度を90°)とし、パイル布帛を熱セットをしていないパイル織物を用いることで、比較例3のイレーザーを得た。
【0087】
<比較例4>
比較例3のパイル織物において、パイル太さは60μm以上70μm以下(パイル糸は、210d/7F(7本のフィラメントが集まって総繊度210dとなった糸))としたパイル織物を用いることで、比較例4のイレーザーを得た。
【0088】
<比較例5>
比較例3のパイル織物において、パイル糸13はポリアミド樹脂繊維とBCFポリアミド樹脂繊維との混繊糸とし、その重量比をポリアミド樹脂繊維:BCFポリアミド樹脂繊維=4:1としたパイル織物を用いることで、比較例5のイレーザーを得た。
ここで、表4中のパイル繊維密度MbからBCFポリアミド樹脂繊維の本数は除いている。
【0089】
<比較例6>
比較例3のパイル織物において、パイル糸13はポリアミド樹脂繊維とBCFポリアミド樹脂繊維との混繊糸とし、その重量比をポリアミド樹脂繊維:BCFポリアミド樹脂繊維=3:1としたパイル織物を用いることで、比較例6のイレーザーを得た。
ここで、表4中のパイル繊維密度MbからBCFポリアミド樹脂繊維の本数は除いている。
【0090】
<比較例7>
比較例3のパイル織物において、パイル糸13はポリアミド樹脂繊維とBCFポリアミド樹脂繊維との混繊糸とし、その重量比をポリアミド樹脂繊維:BCFポリアミド樹脂繊維=2:1としたパイル織物を用いることで、比較例7のイレーザーを得た。
ここで、表4中のパイル繊維密度MbからBCFポリアミド樹脂繊維の本数は除いている。
【0091】
これら実施例1~18、比較例1~7における特徴、「消し易さ(消去性)」と「消し滓の低減(消し滓の出にくさ)」の評価結果を、下記の表1~4に示す(詳しくは、実施例1~9は表1に示し、実施例10~13は表2に示し、実施例14~18は表3に示し、比較例1~7は表4に示す)。
又、実施例1~18、比較例1~7における「消し易さ(消去性)」と「消し滓の低減(消し滓の出にくさ)」を示すグラフを図16に示す。
尚、「消し易さ(消去性)」の評価は、荷重・経時消去性の評価であるとも言え、ホワイトボードの筆記面(板面とも言い、塗装鋼板を用いる)に対して、青・黒・赤・緑の所定のマーカーにて、各色3本ずつ水平方向に沿った線(インクの筆跡C)を筆記し、所定時間経過後(例えば、筆記直後と、168時間後、つまり1週間(出張などの期間)後)に、所定幅(例えば、50mm)のイレーザーに、所定の荷重(例えば、100gや、300g(一般的な消す力であるとも言える))をかけて、所定の消去速度(5cm/sec)にて、筆記面上を、イレーザーが真っ直ぐ均等に進むようにレールを使って往復させた際、10往復以内でインクの筆跡Cが消し残りなく消去できるか(又は、10往復後でも消し残るか)を、4条件(2種類の所定時間の経過後×2種類の所定の荷重)にて行い、各条件において、10往復以内でインクの筆跡Cが完全に消えれば「○(1点)」とし(詳細比較のため、完全に消えた消去回数を記録しても良い)、10往復以内でインクの筆跡Cがほぼ消えれば「△(0.5点)」とし、10往復後でもインクの筆跡Cが消し残れば「×(0点)」として、4条件の合計を0~4点までのスコア化を行う(高い方が良い)。
一方、「消し滓の低減(消し滓の出にくさ)」の評価は、ホワイトボードの筆記面(同様に、塗装鋼板を用いる)に対して、所定のマーカーにて、20個×7行の2行ループ(インクの筆跡C、図14(b)参照)を筆記し、筆記直後に、所定幅のイレーザーに、所定の荷重をかけて、所定の消去速度にて、筆記面上を、<1>イレーザーを「Z」を描くように5往復させ(図14(b)左図参照)、<2>イレーザーを「円」を描くように5往復させ(図14(b)右図参照)、以降、<1>と<2>を交互に繰り返して、インクの筆跡Cを消すことを100回行い、10回消すごとにホワイトボードWのトレイW1に落ちた消し滓Kの量を目視で級数判定(1~6級)をする際、各10回ごとにおいて、級数判定が、1級であれば「1点」とし、2級であれば「2点」とし・・・6級であれば「6点」として、100回までの合計を10~60点までのスコア化を行う(低い方が良い)。
この「消し滓の低減(消し滓の出にくさ)」のスコア化を例示すると、1~10回目は「2点」で、11~20回目も「2点」で、21~30回目も「2点」で、31~40回目は「3点」で、41~50回目も「3点」で、51~60回目も「3点」で、61~70回目は「4点」で、71~80回目も「4点」で、81~90回目も「4点」で、91~100回目も「4点」であれば、100回までの合計スコアは「31点」となる。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
<試験の評価>
表1~4、図16より、実施例1~18のイレーザー1のように、少なくとも複数パイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))を有し、当該複数のパイル3が側面視で傾斜していることで、比較例1~7のイレーザーのように、複数のパイルが、傾斜していない(基材に対して直立した)直毛であったり、そもそもパイルそのものを有さないものと比べて、パイル等の長さや、パイル等の太さ、パイル密度などが略同じ値であっても、「消し易さ(消去性)」や「消し滓の低減(消し滓の出にくさ)」の評価が良いと言える。
又、実施例1~9のイレーザー1のように、複数のパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))の少なくとも一部で、隣接するパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))同士を側面視で交差させたり、隣接するパイル3同士を本体2の一面2aに対して側面視で逆方向に傾斜させることで、比較例1~7のイレーザーのように、直毛の隣接するパイル同士が側面視で略平行となって、隣接するパイル同士が側面視で交差していないものと比べて、やはり、パイル等の長さや、パイル等の太さ、パイル密度などが略同じ値であっても、「消し易さ」や「消し滓の低減」の評価が良いと言える。
尚、実施例1~9と、実施例10~18を比べると、複数のパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))の少なくとも一部で、隣接するパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))同士を側面視で交差させたり、隣接するパイル3同士を本体2の一面2aに対して側面視で逆方向に傾斜させる方が、「消し易さ」や「消し滓の低減」の評価において、より好ましいとも言える。
更に、実施例1、3、5を比べたり、実施例8、9を比べると、パイル束密度Maが大きいほど(例えば、15本/cm以上や、20本/cm以上など)、消し滓は出にくくなる(「消し滓の低減」の評価が高くなる)とも言え、又、パイル繊維密度Mbも大きいほど(例えば、800本/cm以上や、1000本/cm以上など)、消し滓は出にくくなる(「消し滓の低減」の評価が高くなる)とも言える。
その他、特に実施例8、9を比べることで、パイル束密度Maが所定の値以上(例えば、20本/cm以上など)であって、これと同時に、パイル繊維密度Mbが2000本/cm以上であれば、更に消し滓は出にくくなる(更に「消し滓の低減」の評価が高くなる)とも言える。
その他、実施例1、2を比べたり、実施例3~6を比べると、パイル長Hが長いほど、消し滓は出にくくなるが、消し易さは悪くなる(逆に言えば、パイル長Hが短いほど、消し易さは良くなるが、消し滓は出やすくなる)とも言える。
その他、実施例5などより、パイル束密度Maやパイル繊維密度Mb、パイル長Hの組み合わせにより、消し易さと消し滓の出やすさのバランスをとることが出来る(「消し易さ」と「消し滓の低減」の両立が図れる)とも言える。
その他、実施例5、7を比べると、バックコーティングを施しているほうが、消し易さは良くなるとも言える。
その他、実施例1~9と実施例10~13、15~18を比べると、パイル太さDが太いほど、消し易さは良くなる一方で、パイル太さDが太くなると、パイル繊維密度Mbを若干上げることが出来ないとも言え、その場合、消し滓は出やすくなるとも言える。
そして、表2、3より、複数のパイル3を側面視で傾斜させると共に、BCFポリアミド樹脂繊維を混繊したり、パイル長Hを長くしたり、パイル太さDを太くすることで、少なくとも「消し滓の低減」の評価は、向上するとも言える。
尚、比較例1、2それぞれをベンチマークとする(詳解すれば、比較例1の「消し易さ(消去性)」の評価『2.5点』を同等か上回ったり、比較例2の「消し滓の低減(消し滓の出にくさ)」の評価『20点』を同等か下回るものを、ベンチマーク(ある水準)以上であるものとする)と、実施例5及び実施例7は、「消し易さ」と「消し滓の低減」の何れもがベンチマーク以上となっているとも言える。
【0097】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。イレーザー1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
イレーザー1は、複数のパイル3(パイル糸13、パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))が基布14から立設したパイル布帛12を有しいなくとも良く、直接、本体2の一面2aから、合成樹脂製等のパイル3が複数立設していても良い。
【0098】
本体2は、ケース材10と芯材11を有していなくとも良く(図14(a)参照)、この場合、パイル布帛12は本体2に接着剤等にて固着されていても構わない。
本体2は、上述したように、直接、本体2の一面2aから複数のパイル3(パイル束3a(13a)やパイル繊維3b(13b))が立設していたり、本体2は、パイル布帛12を保持する構成であっても構わない。
パイル布帛12がパイル織物12’である場合だけでなく、パイルタフト布帛である場合でも、その基布14の裏面に、アクリル樹脂系接着剤(エマルジョン)などを塗布(バックコーティング)していても良い。
【符号の説明】
【0099】
1 ホワイトボード用イレーザー(イレーザー)
2 本体
2a 本体の一面
3 パイル
3a パイル束
3b パイル繊維
α パイルの傾斜角度
H パイル長
D パイル太さ
Ma パイル束の密度(パイル束密度)
Mb パイル繊維の密度(パイル繊維密度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16