(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026367
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】剥線装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20220203BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H02G1/12 060
B26D3/00 603Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129786
(22)【出願日】2020-07-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】595123678
【氏名又は名称】三立機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】中根 亮一
【テーマコード(参考)】
5G353
【Fターム(参考)】
5G353AB06
5G353AC04
5G353CA01
5G353DA01
(57)【要約】
【課題】より信頼性の高い、剥線装置を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る剥線装置は、第一の回転軸と、第一の回転軸に固定され、第一の回転軸の回転とともに回転する一対の押圧ローラと、第一の回転軸の周囲かつ前記前記一対の押圧ローラの間に配置される、外殻に窪みが形成された第一のベアリングと、第一のベアリングの前記窪みに当接される第一のブレードと、を備えるものである。本観点において、窪みは矩形状であることが好ましい。また、本観点において、第一のベアリングにおいて、第一の押圧ローラの表面とブレードの表面の距離はそれぞれ0.1mm以上0.5mm以下の範囲内にあることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の回転軸と、
前記第一の回転軸に固定され、前記第一の回転軸の回転とともに回転する一対の押圧ローラと、
前記第一の回転軸の周囲かつ前記前記一対の押圧ローラの間に配置される、外殻に窪みが形成された第一のベアリングと、
前記第一のベアリングの前記窪みに当接される第一のブレードと、を備える剥線装置。
【請求項2】
前記窪みは矩形状である請求項1記載の剥線装置。
【請求項3】
前記押圧ローラの表面と前記第一のブレードの表面の距離が0.1mm以上1mm以下の範囲にある請求項1記載の剥線装置。
【請求項4】
前記第一のベアリングの前記窪みの深さを1とした場合に、前記第一のブレードの高さが2以上4以下の範囲にある請求項1記載の剥線装置。
【請求項5】
前記第一のベアリングの前記窪みの深さを1とした場合に、前記第一のブレードの表面と前記押圧ローラの表面の距離が、0.03以上0.3以下の範囲内にある請求項1記載の剥線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥線装置に関し、より具体的には被覆された導線(被覆線)から被覆材を剥離させる剥線装置及び剥線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物等に含まれる、芯線を樹脂等の被覆材で被覆した被覆線は、芯線と被覆材を分離(剥離)することで資源として再利用することが可能であり、再生可能な資源として近年注目されてきている。この芯線と被覆材を剥離させる技術については、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【0003】
下記特許文献1には、上下一対の押圧ローラを備え、この上下の押圧ローラそれぞれが左右一対の押圧ローラとなっており、このそれぞれの間にブレードを固定して配置することで処理対象となる被覆線に切り込みを入れて被覆材を剥離させようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、ブレードが押圧ローラ間において固定されているが、本発明者らが上記特許文献1に関する技術について製造及び仕様を行ったところ、ブレードと押圧ローラの回転による改善点が確認された。
【0006】
上記改善点について具体的に説明すると、当該装置において、押圧ローラは回転軸に固定され、回転軸の回転とともに回転する一方、ブレードは回転せずこの押圧ローラ近傍において固定されている。すなわち、押圧ローラとブレードが接触することにより、一方又は双方が傷ついてしまうといった課題が生じていた。つまり、この接触が生ずる場合、装置としての耐久性、信頼性に改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、より信頼性の高い、剥線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る剥線装置は、第一の回転軸と、第一の回転軸に固定され、第一の回転軸の回転とともに回転する一対の押圧ローラと、第一の回転軸の周囲かつ一対の押圧ローラの間に配置される、外殻に窪みが形成された第一のベアリングと、第一のベアリングの前記窪みに当接される第一のブレードと、を備えるものである。
【0009】
また本観点において、限定されるわけではないが、窪みは矩形状であることが好ましい。
【0010】
また本観点において、限定されるわけではないが、押圧ローラの表面と第一のブレードの表面の距離が0.1mm以上1mm以下の範囲にあることが好ましい。
【0011】
また本観点において、限定されるわけではないが、第一のベアリングの窪みの深さを1とした場合に、第一のブレードの高さが2以上4以下の範囲にあることが好ましい。
【0012】
また本観点において、限定されるわけではないが、第一のベアリングの窪みの深さを1とした場合に、第一のブレードの表面と押圧ローラの表面の距離が、0.03以上0.3以下の範囲内にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明によって、より信頼性の高い、剥線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る剥線装置の概略を示す図である。
【
図2】実施形態に係る剥線装置の回転軸近傍における断面の概略図である。
【
図3】実施形態に係る剥線装置によって処理される被覆線のイメージを示す図である。
【
図4】実施形態に係る剥線装置のブレード近傍の概略を示す拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態における具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0016】
(剥線装置)
図1は、本実施形態に係る剥線装置(以下「本装置」という。)1の概略を示す図であり、
図2は、本装置1の一対の回転軸近傍における断面(被覆線を挿入する方向に対して垂直な面に沿った断面)の概略を示す図である。本図で示すように、本装置1は、第一の回転軸21と、第一の回転軸21に固定され、第一の回転軸21の回転とともに回転する一対の押圧ローラ22、23と、第一の回転軸21の周囲かつ一対の押圧ローラ22、23の間に配置される、外殻に窪み241が形成された第一のベアリング24と、第一のベアリング24の窪み241に当接される第一のブレード25と、を備える。なお、本明細書では、第一の回転軸21、一対の押圧ローラ22、23、第一のベアリング24、及び、第一のブレード25を合わせて「第一の押圧部材」という。また、本明細書の第一の押圧部材2において、「第一」は、それぞれにおいて複数の同様の構成が存在するため、これらを区別するために用いられる用語であり、特別な技術的意味を含むものではない。また、本図では、鉛直方向上側の押圧部材を「第一の押圧部材」としているがこれは説明における便宜上のものであり、位置においても限定されるわけではない。あくまで、後述の「第二の押圧部材」との区別を行うために用いる用語に過ぎない。
【0017】
また、本装置1では、第一の回転軸21、一対の押圧ローラ22、23、第一のベアリング24、及び、第一のブレード25に対向する位置(本明細書及び図面では上側)に、これらと同様の構成を有する。すなわち、第二の回転軸31と、第二の回転軸31に固定され、第二の回転軸31の回転とともに回転する一対の押圧ローラ32、33と、第二の回転軸31の周囲かつ一対の押圧ローラ32、33の間に配置される、外殻に窪み341が形成された第二のベアリング34と、第二のベアリング34の窪み341に当接される第一のブレード35と、を備える。なお、上記第一の押圧部材と同様に、本明細書では、第二の回転軸31、一対の押圧ローラ32、33、第二のベアリング34、及び、第二のブレード35を合わせて「第二の押圧部材」という。また、第二の押圧部材3において、上記「第一」と同様、「第二」は、同様な構成を区別するために用いられる用語であって、これ自体に特別な技術的意味を含むものではない。
【0018】
また、本装置1では、第一の押圧部材2における第一の回転軸21及び第二の押圧部材3における第二の回転軸31の少なくともいずれかを回転させるための回転動力4を設けており、これを駆動させることで第一の回転軸21及び第二の回転軸31の少なくともいずれかを所望の回転数で回転させることができる。具体的にこの回転動力4としては、回転軸を回転させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、いわゆる電動機を例示することができる。電動機は、電気エネルギーを用いて力学的エネルギー、より具体的には回転軸を回転させるための回転エネルギーに変換することができる機器をいう。なお、この電動機については、第一の回転軸21、第二の回転軸31のそれぞれに対して設けてもよく、伝達機構41を用い、一方の回転軸を回転動力4により回転させ、伝達機構により他方の回転軸にこの回転を伝えることとしてもよい。伝達機構41としては、限定されるわけではないが、伝達ギア411であることは好ましい一例である。また、この伝達機構41には、プーリー及びベルト412が含まれることも好ましい。プーリーを電動機の回転軸413、上記第一の回転軸21及び第二の回転軸31に接続し、これらの間にベルト414を巻き回す構成とすることで、電動機の回転軸の回転を第一の回転軸21、第二の回転軸31の回転として伝えることが可能となる。またもちろん、一方だけ回転させることとし、他方を動かさず受動的に回転可能な状態としておいてもよい。
【0019】
また、本装置1では、第一の押圧部材2と第二の押圧部材3の間の距離を調節するための距離調節部材5を設けていることが好ましい。この構成については、当該機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、第一の押圧部材2の回転軸21を保持する保持部材51と、この保持部材51を移動させる移動部材52と、を有して構成されていることが好ましい。この保持部材51としては、回転軸21の回転を阻害させずに保持させるための保持用のベアリングであることは好ましい一例であり、移動部材52としては、回転ハンドル521と、この回転ハンドル521に接続される溝が形成された棒状のスクリュー522とを備えたものであることが好ましい一例である。このようにすることで、ベアリングに付された突起(又はベアリングに固定された部材に配置された突起)をスクリュー522の溝にかみ合わせ、回転ハンドル521を回転させてスクリュー522を回転させることで、このスクリュー522の延伸方向に沿って上記第一の押圧部材2全体を移動させることができるようになる。もちろん、上記の通りこれは一例であり、第一の押圧部材2ではなく第二の押圧部材3側に設けてもよく、双方に設けることも当然に可能である。この結果、被覆線を圧延する力を調節することができるようになる。
【0020】
また、本装置1では、上記第一の押圧部材2、第二の押圧部材3、動力部材4、距離調節部材5の少なくともいずれかを収容するフレーム6を備えている。
【0021】
また、本装置1においては、一対の押圧部材(第一の押圧部材2と第二の押圧部材3)の間に、処理対象となる被覆線を導入し排出させるためのガイド7を有している。なお、このガイド7は、より具体的には、被覆線を導入するための入口側ガイド71と、被覆線を装置外に排出させるための出口側ガイド72を有していることが好ましい。なお、このガイド部材は、安全性の観点及び被覆線を導入及び排出させやすくために用いられるものであって、簡便な構造を採用する場合は省略してもよい。
【0022】
本実施形態において、処理の対象となる「被覆線」とは、金属導線を樹脂等の被覆材で覆った線材をいう。金属導線については、限定されるわけではないが銅、アルミニウム等を例示することができ、特に本実施形態では、押圧することで被覆線と分離しにくくなる金属に対して有効に機能を発揮する。また、金属導線としては、単線であってもよく、複数の金属線が組み合わされた複線であってもよい。
図3に、本装置により処理される被覆線のイメージ図を示しておく。なお、被覆線の径の大きさは様々であり、適宜採用可能であるが、径として3mm以上20mm以下であるものが一般的である。また、本被覆線の芯材である金属導線の断面形状は限定されるわけではないが、円形状又は楕円形状であることが好ましい。この形状とすることで、より安定的に被覆材を剥離させやすくすることができる。
【0023】
上記の記載から明らかなように、本装置1において、第一の回転部材2と第二の回転部材3の間に、被覆線Cを挿入することで、被覆線に効果的に切れ目を入れ、被覆線を被覆材と金属導線に分けることができる。すなわち、普段廃棄物となっている被覆線から、金属導線を効率的に取り出し再資源化することができるようになる。この具体的な機序については以下詳述する内容から明らかとなる。
【0024】
本装置1の第一の回転部材2における回転軸21は、上記の通り、回転する軸である。これが上記の通り回転動力4の回転に応じて回転することでこれに固定される一対の押圧ローラ22、23を回転させることができる。
【0025】
また、本装置1の第一の回転部材2において、一対の押圧ローラ22、23は、上記記載及び図面から明らかなように、所定の間隔を空けて回転軸21に固定されている。
【0026】
また、本装置1の第一の回転部材2における一対の押圧ローラ22、23の回転表面221、231は、限定されるわけではないが、滑らかな部分を有する凹凸が形成されていることが好ましく、より具体的には、一対の押圧ローラ22、23の間に窪みが形成されるようそれぞれの押圧ローラの中間位置に凸部が形成されていることが好ましい。このようにすることで、窪み部分が形成され、この位置に処理対象となる被覆線を安定的に配置することができるようになる。
【0027】
また、本装置1の第一の回転部材2において、一対の押圧ローラ22、23の間には、第一の回転軸21の周囲に配置される第一のベアリング24を有している。この第一のベアリング24を設けることで、第一の回転部材2が回転したとしてもこの回転によらず静止した面を形成することが可能となる。特にブレードは、回転軸の回転によらず常時同じ位置に配置される必要があるため、仮にベアリング24が無く回転軸に直接接した状態となっていると回転軸とブレードの摩擦によりブレード又は回転軸が摩耗してしまうといったことがあるが、ベアリング24を設けることでこの恐れが格段に少なくなる。
【0028】
また、第一のベアリング24には、上記の通り、外殻に窪み241が形成されている。この窪み241にはブレード25が当接されており、第一の回転軸21が回転したとしても、上記の通りこの回転の影響を受けることなく安定的にブレード25の配置が可能となる。より具体的に説明すると、第一のベアリング24を一対の押圧ローラ22、23の間に配置することでスペーサとしての機能を発揮させることができるとともに、一対の押圧ローラ22、23のそれぞれとブレード25の間の距離を確保することができる。すなわち、第一のベアリング24の窪み241以外の部分を間隙として利用することができる。更に具体的に説明すると、上記特許文献1に記載の技術では、このブレードの間の距離確保が十分でない場合があり、一対の押圧部材間に被覆線が挿入され、ブレードが被覆線の被覆材に押し当てられた場合に、ブレードがこの押し当てられた際に発生する力により曲がり、又は、位置がずれることで、一対の押圧ローラ22、23のいずれかと接触してしまう場合がある。この押圧ローラとブレードは通常金属で構成されており、押圧ローラが回転している以上一方が摩耗する又は傷ついてしまう場合がある。これは装置としての信頼性に大きな影響を及ぼす。しかしながら、本装置1のように、第一のベアリング24を設け、この第一のベアリングの窪み241及びこれ以外の部分を有効活用することにより、ブレードの位置がずれることなく、また、仮に被覆材にブレードが押し当てられて曲がったとしても接触しない程度の距離を確保することが可能となる。この拡大イメージ図(寸法イメージ図)を
図4に示しておく。なお、この窪みの形状としては、なだらかな波型であってもよいが、矩形状の窪みであることで、より確実にブレードを保持することができる観点から好ましい。また、この窪みを形成する方法としては、ベアリングの外周部材そのものに窪みを設けてもよく、また、ベアリングの外周部材に窪みを形成するための部品を固定させてもよい。
【0029】
また本装置1において、第一のベアリングの幅は限定されるわけではないが、上記の効果を達成するため、5mm以上30mm以下であることが好ましく、より好ましくは20mm以下の範囲である。5mm以上とすることで、十分な幅の余裕をもって窪みを形成することが可能となり、この窪みによりブレードを安定的に保持することができる。また、この窪み241の幅としては、上記の通りブレードの厚さに合わせて形成されていることが好ましく、上記第一のベアリングの幅よりは当然狭く、1mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以上4mm以下である。さらに、この窪みの深さとしては、限定されるわけではないが、ブレード25の高さよりは浅く、3mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましくは7mm以下である。この範囲とすることで、回転軸の回転において生じる振動でブレードが窪みから出てしまうおそれを少なくし、ブレードの保持を確実に行わせるとともに、必要以上にブレードの先端を低くしてしまうことを防止できる。
【0030】
また、この場合において、ブレード25の高さは、限定されるわけではないが、上記の窪みの深さよりは高いことはもちろんであるが、10mm以上30mm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは20mm以下である。この範囲にすることで、上記窪みの深さと相まって、確実に被覆線に切り込みを入れることが可能となるとともに、必要以上に長くなり曲がりが大きくなって押圧ローラと接触してしまうおそれを少なくすることができる。また、ブレード25の幅(厚み)としても、上記曲がりの可能性と相まって適宜調整可能であるが、1mm以上5mm以下のブレードであることが好ましく、より好ましくは2mm以上4mm以下である。ただし、ブレードは、上記第一のベアリングの窪みに丁度嵌るようにしておくことが必要である。なお、ブレードの材質としては、金属であることが好ましく、より好ましくは刃に用いることができる鋼、SK材等であることが好ましい。
【0031】
また、本装置1において、ブレード25表面と一対の押圧ローラ22、23の表面の距離は開けておく必要がある一方、この距離としては、限定されるわけではないが、0.1mm以上1mm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.3mm以下である。この範囲とすることで、上記ベアリングの窪み寸法と相まって、ブレード25と押圧ローラ22、23の間に被覆線が入り込んでしまうことを防止するとともに、ブレード25が曲がったとしても一対の押圧ローラ22、23にブレード25が接触してしまうおそれを抑えることができる。
【0032】
また、ブレード及びベアリングの窪みの寸法等は上記のとおりであるが、これらの相対的な関係は重要である。例えば、第一のベアリングの窪みの深さを1とした場合に、第一のブレードの高さは2以上10以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。また、第一のブレードの窪みの深さを1とした場合に、第一のブレードの幅(厚み)は1以下であることが好ましい。また、第一のブレードの幅を1とした場合において、第一のブレードの表面と押圧ローラ22、23の距離(隙間)は、0.03以上0.3以下であることが好ましく、より好ましくは0.1以下である。これは、ブレード25に用いられる金属材料とそのヤング率、ブレード25に加えられる荷重によって変動する場合はあるが、この範囲に収めておくことで、ブレード25の曲がりを最小限に抑え、仮に曲がったとしても、押圧ローラに接触してしまうおそれを格段に少なくすることができる。
【0033】
そして、本装置1において、第二の押圧部材3の各構成も、上記第一の押圧部材2と同様の構成を採用することが可能である。ただし、第二の押圧部材3においては一対の押圧ローラ32、33の形状が異なっていることが好ましい。より具体的には、第一の押圧部材2における一対の押圧ローラ22、23の回転表面の形状と、第二の押圧部材3における一対の押圧ローラ32、33の回転表面の形状が組み合わされた場合に、中心近傍(ブレード位置近傍)に被覆線を挟み込む空隙を備える一方、それ以外の部分がかみ合わされるようにしておくことが好ましい(上記
図2参照)。このようにしておくことで、押圧ローラ22、23、32、33自身により被覆線の切り込みに障害が出ることが少なくなる。
【0034】
(剥線方法)
次にここで、本装置1を用いた剥線方法(以下「本方法」という。)について具体的に説明する。
【0035】
本方法は、上記した本装置1を用いる剥線方法であって、本装置1に対し被覆線Cを挿入して切込を入れるステップ、を備えている。
【0036】
なおこのステップの前に、被覆線の長さが短くなるよう切断するステップを備えていてもよい。このようにすることで、処理をより容易にすることができるようになる。
【0037】
そして、上記ステップを経た被覆材は、簡単に被覆材と金属導線に分離させることが可能となる。
【0038】
以上の通り、本装置1によると、押圧ローラの間にベアリングを設け、このベアリングの外周(回転表面)に窪みを設け、この窪みにブレードを配置することで、一対の押圧ローラとブレードそれぞれの間に確実に空隙を設けることが可能となり、この空隙によって仮に被覆線を押圧することによってブレードの位置がずれるおそれは少なく、また、ブレードが曲がったとしても、ブレードと押圧ローラが接触するおそれが格段に少なくなる。
【0039】
(効果確認)
上記の構成に関し、実際に装置を作製し、効果を確認した。実際にベアリングを設けず一対の間隙を設けた押圧ローラ間にブレードを配置した剥線装置を用いて被覆線を実際に剥離させたところ、強く被覆材を押し当てた場合、押圧ローラとブレードの間の接触が起こり、鋭い金属音が発生してしまった。これは接触により一方の金属が削れてしまっていることを意味する。一方、一対の押圧ローラ間にベアリングを設け、更にこのベアリングに深さ5mm、幅3mmの矩形の窪みを設け、高さ15mmのブレードを配置し、それぞれの押圧ローラとブレードの各距離を0.25mmとして行ったところ、被覆線を強く押し当てても上記したような押圧ローラとブレードの間の接触は起こらなかった。すなわち、信頼性の高い装置であることが確認できた。
【0040】
以上、本実施形態によって、より信頼性の高い、剥線装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、剥線装置及び剥線方法として産業上の利用可能性がある。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の回転軸と、
前記第一の回転軸に固定され、前記第一の回転軸の回転とともに回転する一対の押圧ローラと、
前記第一の回転軸の周囲かつ前記一対の押圧ローラの間に配置される、外殻に窪みが形成された第一のベアリングと、
前記第一のベアリングの前記窪みに当接される第一のブレードと、を備える剥線装置。
【請求項2】
前記窪みは矩形状である請求項1記載の剥線装置。
【請求項3】
前記押圧ローラの表面と前記第一のブレードの表面の距離が0.1mm以上1mm以下の範囲にある請求項1記載の剥線装置。
【請求項4】
前記第一のベアリングの前記窪みの深さを1とした場合に、前記第一のブレードの高さが2以上4以下の範囲にある請求項1記載の剥線装置。
【請求項5】
前記第一のベアリングの前記窪みの深さを1とした場合に、前記第一のブレードの表面と前記押圧ローラの表面の距離が、0.03以上0.3以下の範囲内にある請求項1記載の剥線装置。