(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026409
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】自在継手
(51)【国際特許分類】
F16D 3/40 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
F16D3/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129869
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000150408
【氏名又は名称】株式会社中村自工
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和樹
(72)【発明者】
【氏名】茂木 仁
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れる自在継手を提供する。
【解決手段】十字軸2と、十字軸の各軸に設けられる軸受3と、十字軸及び軸受を介して互いに回動自在に結合される一対のヨーク4、5と、各々の軸受を覆うベアリングキャップ6とを備え、ヨークとベアリングキャップとの接合面の各々に、ショットピーニング加工が施されている自在継手1。ヨークとベアリングキャップとの接合面の各々にダブルショットピーニング加工を施してもよい。ヨークとベアリングキャップの接合面の各々を、ヨークとベアリングキャップとで把持される軸の軸線方向に対して垂直な方向に山と谷が交互に連続し、互いに噛み合う鋸歯状に形成してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
十字軸と、該十字軸の各軸に設けられる軸受と、十字軸及び軸受を介して互いに回動自在に結合される一対のヨークと、各々の軸受を覆うベアリングキャップとを備え、前記ヨークと前記ベアリングキャップとの接合面の各々に、ショットピーニング加工が施されていることを特徴とする自在継手。
【請求項2】
前記ヨークと前記ベアリングキャップとの接合面の各々に、ダブルショットピーニング加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の自在継手。
【請求項3】
前記ヨークと前記ベアリングキャップの接合面の各々は、該ヨークと該ベアリングキャップとで把持される軸の軸線方向に対して垂直な方向に山と谷が交互に連続し、互いに噛み合う鋸歯状に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の自在継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自在継手に関し、特に耐久性に優れる自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
自在継手は、軸芯の異なる駆動軸と従動軸とを連結するためにいられ、例えば、
図1及び
図2に示すように、十字軸2と、十字軸2の各軸に設けられる軸受3と、十字軸2及び軸受3を介して互いに回動自在に結合される一対のヨーク4、5と、各々の軸受を覆うベアリングキャップ6とを2組ずつ備え、これらをチューブ8で連結して構成される(特許文献1参照)。
【0003】
上記一対のヨーク4、5の各々とベアリングキャップ6とはボルト7で締結され、両者の接合面は、これらの部材4~6に加わる応力を低減するため、
図3に示すように、一つの歯が二等辺三角形の鋸歯状に形成されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記自在継手1は、一対のヨーク4、5の各々とベアリングキャップ6の接合面に大きな応力が加わる環境下、特に腐食し易い環境下では長期間使用することが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであって、耐久性に優れる自在継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、十字軸と、該十字軸の各軸に設けられる軸受と、前記十字軸及び前記軸受を介して互いに回動自在に結合される一対のヨークと、前記各々の軸受を覆うベアリングキャップとを備え、前記ヨークと前記ベアリングキャップとの接合面の各々に、ショットピーニング加工が施されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ヨークのベアリングキャップとの接合面にショットピーニング加工を施したため、当該両面の疲労強度を向上させることができ、自在継手の耐久性を向上させることができる。
【0009】
上記自在継手において、前記ヨークと前記ベアリングキャップとの接合面の各々にダブルショットピーニング加工を施すことで、当該両面の疲労強度をさらに向上させることができる。
【0010】
上記自在継手において、前記ヨークと前記ベアリングキャップの接合面の各々を、該ヨークと該ベアリングキャップとで把持される軸の軸線方向に対して垂直な方向に山と谷が交互に連続し、互いに噛み合う鋸歯状に形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、耐久性に優れる自在継手を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明及び従来の自在継手の全体構造の一例を示す概略図である。
【
図3】
図1の自在継手におけるヨークとベアリングキャップの接合面を示す概略図である。
【
図4】
図1の自在継手のヨークの回転曲げ疲労試験結果を示すグラフである。
【
図5】ヨーク接合面のセレーション(鋸歯状)部にダブルショットピーニング処理を施工する前後の写真である。
【
図6】ヨーク接合面のセレーション部にダブルショットピーニング処理を施工する前後の残留圧縮応力の深さ分布である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本発明に係る自在継手は、上記従来の自在継手1と基本的な構成は同じであるが、一対のヨーク4、5のベアリングキャップ6との接合面の各々にショットピーニング加工が施されており、この点が本発明の特徴部分である。ショットピーニング加工は、微細な球体を金属表面に噴射するものであり、2段階に分けてショットピーニング加工を行うダブルショットピーニング加工がより好ましい。
【0015】
以下、本発明の試験例について説明する。
【0016】
SCM440調質材からなるヨーク4(5)とベアリングキャップ6の接合面(
図3に示すように、ヨーク4(5)とベアリングキャップ6の接合面の各々は、一つの歯が二等辺三角形の鋸歯状に形成されている。)に、ショット粒径0.05mmのショットピーニング加工を施したものを実施例1、上記接合面に、ショット粒径0.2mmのショットピーニング加工の後、さらにショット粒径0.05mmのショットピーニング加工を施した(ダブルショットピーニング)ものを実施例2、何も処理を施していないものを比較例とし、回転曲げ疲労試験を行った。その結果を
図4に示す。
【0017】
同図より、実施例1は比較例より疲労強度が約1.25倍(応力振幅の比が367/293)になり、実施例2は比較例より疲労強度が約1.29倍(応力振幅の比が379/293)になっており、ショットピーニング加工、より好ましくはダブルショットピーニングによりヨークの耐久性が向上することが判る。
【0018】
図5は、ヨーク接合面のセレーション(鋸歯状)部にダブルショットピーニング処理を施工する前後の写真である。施工後は、施工前に比べ、表面の金属光沢は曇り、一様にざらざらした質感であることが判る。
【0019】
次に、ダブルショットピーニング施工後の内部残留圧縮応力測定結果について説明する。
【0020】
同じ材料で製作された異なる2つの供試体TP1、TP2についてX線回折法による測定を行った。加工前の残留圧縮応力データは、TP1のものである。TP2では加工前には内部残留圧縮応力を測定していないが、略々同じ結果になると思われる。ショット粒径0.2mmに引き続き0.05mmにて、供試体TP1に3方向ショット(投射)を行い、供試体TP2に1方向ショットを行った。1方向ショットは、底面に垂直にトーチを1パスさせる。3方向は、さらに歯面に垂直にトーチをパスさせるので、一つの谷に対して3方向のショットを打ったことになる。
【0021】
上記試験結果を
図6に示す。ショットピーニング施工前では、表面が-250N/mm
2であったのが、施工によって-600N/mm
2より高い残留圧縮応力となっているのが判る。また、100μmまでの深さにおいても-500N/mm
2より高い残留圧縮応力となっている。極表面近傍の残留圧縮応力を向上させることにより、疲れ限度が向上したと考えられる。
【0022】
尚、上記実施の形態においては、ヨーク4(5)とベアリングキャップ6の接合面は、一つの歯が二等辺三角形の鋸歯状に形成されていたが、接合面の形状は、これに限定されることなく、二等辺三角形以外の形状とすることも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 自在継手
2 十字軸
3 軸受
4、5 ヨーク
6 ベアリングキャップ
7 ボルト
8 チューブ