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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026411
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】物体検出装置及び物体検出方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220203BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220203BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T7/00 650A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129871
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 優
(72)【発明者】
【氏名】小栗 崇治
【テーマコード(参考)】
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA51
5L096HA09
(57)【要約】
【課題】立体物を認識し損なうような誤認識の可能性を低減する。
【解決手段】物体検出装置40は、自車両の進行方向における物体の位置情報を取得する位置情報取得部42と、自車両の進行方向における物体の撮像情報を取得する撮像情報取得部44と、前記位置情報に含まれる前記物体の情報と、前記撮像情報に含まれる前記物体の情報との統合が成立する場合に、統合情報を生成するフュージョン部45と、前記統合情報の生成回数が、立体物の存在を確定するための確定回数閾値以上となる場合に、前記統合が成立した前記物体を立体物として確定する認識部46とを備える。認識部46は、前記物体までの距離、自車両の速度、及び前記フュージョン部における処理周期から定まる余裕度であって、前記物体に衝突するまでにフュージョン部45によって実行可能な前記統合情報の生成回数に応じた余裕度に応じて前記確定回数閾値を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における物体検出装置(40)であって、
自車両の進行方向における物体の位置情報を取得する位置情報取得部(42)と、
自車両の進行方向における物体の撮像情報を取得する撮像情報取得部(44)と、
前記位置情報に含まれる前記物体の情報と、前記撮像情報に含まれる前記物体の情報との統合が成立する場合に、統合情報を生成するフュージョン部(45)と、
前記統合情報の生成回数が、立体物の存在を確定するための確定回数閾値以上となる場合に、前記統合が成立した前記物体を立体物として確定する認識部(46)と、
を備え、
前記認識部は、前記物体までの距離、自車両の速度、及び前記フュージョン部における処理周期から定まる余裕度であって、前記物体に衝突するまでに前記フュージョン部によって実行可能な前記統合情報の生成回数に対応する余裕度に応じて前記確定回数閾値を設定する、
物体検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検出装置において、
前記認識部は、
前記フュージョン部によって前記統合が成立した場合において、さらに、
前記物体に衝突するまでに前記フュージョン部によって実行可能な前記統合情報の生成回数をサンプル回数、前記統合が成立した回数を認識回数として、
認識回数/サンプル回数≧確定回数閾値/サンプル回数
が成立することにより、前記統合が成立した前記物体を立体物として確定する、
物体検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の物体検出装置であって、
前記サンプル回数及び前記確定回数閾値は、下式(1)及び(2)を用いて算出される、物体検出装置。
Ns=(dr/v-(T_ttc+T_idle))/Ts ・・・(1)
Cth=r・Ns ・・・(2)
ここで、Nsはサンプル回数、Cthは確定回数閾値、drは前記物体までの距離[m]、vは前記自車両の速度[m/s]、T_ttcは前記自車両の速度vに対応する規定TTCの値[s]、T_idleは空走時間の値[s]、Tsは前記フュージョン部における処理周期[s]、rは有効認識率である。
【請求項4】
請求項2に記載の物体検出装置であって、
前記サンプル回数及び前記確定回数閾値は、あらかじめ用意された、物体までの距離及び車両の速度と、サンプル回数及び確定回数閾値と、の関係を示すテーブルから設定される、物体検出装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の物体検出装置において、
前記サンプル回数及び前記確定回数閾値は、前記物体までの距離の一定幅で同じ値に設定され、前記自車両の速度の一定幅で同じ値に設定される、物体検出装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の物体検出装置において、
前記確定回数閾値は、前記物体までの第1の距離における第1の確定回数閾値に比べて、前記第1の距離よりも予め定めた値以上に長い前記物体までの第2の距離における第2の確定回数閾値が大きくなるように設定される、物体検出装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の物体検出装置において、
前記物体までの距離が短くなるのに応じて小さな値に設定される前記サンプル回数及び前記確定回数閾値には、それぞれ、あらかじめ設定された正数の下限値が設定される、物体検出装置。
【請求項8】
請求項1の物体検出装置において、
前記認識部は、
前記統合情報の生成回数が前記確定回数閾値未満となって前記物体を立体物として確定しない場合にであっても、前記位置情報の取得回数が、前記位置情報により立体物の存在を確定するための位置情報用の確定回数閾値以上となる場合、あるいは、前記撮像情報の取得回数が、前記撮像情報により立体物の存在を確定するための撮像情報用の確定回数閾値以上となる場合に、前記物体を立体物として確定し、
前記物体までの距離、前記自車両の速度、及び前記位置情報取得部の処理周期から定まる余裕度であって、前記物体に衝突するまでに前記位置情報取得部によって実行可能な前記位置情報の取得回数に応じた余裕度に応じて前記位置情報用の確定回数閾値を設定し、
前記物体までの距離、前記自車両の速度、及び前記撮像情報取得部の処理周期から定まる余裕度であって、前記物体に衝突するまでに前記撮像情報取得部によって実行可能な前記撮像情報の取得回数に応じた余裕度に応じて前記撮像情報用の確定回数閾値を設定する、
物体検出装置。
【請求項9】
車両における物体検出方法であって、
自車両の進行方向における物体の位置情報を取得し(S210)、
自車両の進行方向における物体の撮像情報を取得し(S220)、
前記位置情報に含まれる前記物体の情報と、前記撮像情報に含まれる前記物体の情報との統合が成立する場合に、統合情報を生成し(ステップS230)、
前記統合情報の生成回数が、立体物の存在を確定するための確定回数閾値以上となる場合に、前記統合が成立した前記物体を立体物として確定し(ステップS240)、
前記物体までの距離、自車両の速度、及び前記統合情報を生成するための処理周期から定まる余裕度であって、前記物体に衝突するまでに実行可能な前記統合情報の生成回数に対応する余裕度に応じて前記確定回数閾値を設定する、
物体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自車両の進行方向における物体を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーダ装置や画像センサを用いて自車両の進行方向に位置する他車両や障害物、歩行者等の立体物を物標として検出し、物標と自車両との衝突可能性が高い場合に、運転者への警報や自動ブレーキを作動させる運転支援システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、自車両の進行方向において立体物が横断しようとしているか否かを判定する技術が開示されている。具体的には、立体物の横断移動量が、所定の閾値以上となる事象の発生をカウントし、カウント数が所定の閾値回数以上発生することを条件として、立体物の横断を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-197325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術では、立体物の認識のタイミングが遅れた場合、立体物が横断しようとしているか否かの判定に必要となる事象の発生をカウントするための機会の数を確保することができず、すなわち、判定のための時間的な余裕を確保できず、判定が不可となる可能性がある。
【0006】
また、運転支援システムにおいて、自車両の進行方向に位置するガードレールや電柱等の障害物や停車中の他車両、立ち止まっている歩行者等の静止する立体物に対して、自車両の衝突可能性が高い場合に、警報や自動ブレーキを作動させるためには、静止する立体物を認識して、自車量の衝突可能性が高いか否かの判定を行なうことが要求される。この場合において、従来技術の立体物の横断の判定と同様に、静止する立体物の認識回数が所定の閾値回数以上発生することを条件として、静止する立体物の認識の判定を行なうとすると、従来技術と同様に、判定のための時間的な余裕を確保できず、立体物を認識し損なうような誤認識の可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、車両において用いられる物体検出装置(40)が提供される。この物体検出装置は、自車両の進行方向における物体の位置情報を取得する位置情報取得部(42)と、自車両の進行方向における物体の撮像情報を取得する撮像情報取得部(44)と、前記位置情報に含まれる前記物体の情報と、前記撮像情報に含まれる前記物体の情報との統合が成立する場合に、統合情報を生成するフュージョン部(45)と、前記統合情報の生成回数が、立体物の存在を確定するための確定回数閾値以上となる場合に、前記統合が成立した前記物体を立体物として確定する認識部(46)と、を備え、前記認識部は、前記物体までの距離、自車両の速度、及び前記統合情報を生成するための処理周期から定まる余裕度であって、前記物体に衝突するまでに前記フュージョン部によって実行可能な前記統合情報の生成回数に応じた余裕度に応じて前記確定回数閾値を設定する。
この形態の物体検出装置によれば、自車両の進行方向における物体に衝突するまでにフュージョン部による実行可能な統合情報の生成回数に応じた余裕度に応じて確定回数閾値を設定することができるので、立体物を検出し損なうような誤検出の可能性を低減することが可能である。
本開示の他の一形態によれば、車両における立体物認識方法が提供される。この立体物認識方法は、自車両の進行方向における物体の位置情報を取得し(S210)、自車両の進行方向における物体の撮像情報を取得し(S220)、前記位置情報に含まれる前記物体の情報と、前記撮像情報に含まれる前記物体の情報との統合が成立する場合に、統合情報を生成し(ステップS230)、前記統合情報の生成回数が、立体物の存在を確定するための確定回数閾値以上となる場合に、前記統合が成立した前記物体を立体物として確定し(ステップS240)、前記物体までの距離、自車両の速度、及び前記フュージョン部における処理周期から定まる余裕度であって、前記物体に衝突するまでに実行可能な前記統合情報の生成回数に対応する余裕度に応じて前記確定回数閾値を設定する。
この形態の立体物認識方法によれば、自車両の進行方向における物体に衝突するまでに実行可能な統合情報の生成回数に応じた余裕度に応じて確定回数閾値を設定することができるので、立体物を検出し損なうような誤検出の可能性を低減することが可能である。
なお、本開示は、車両における立体物認識プログラムあるいは当該プログラムを記録するコンピュータ読み取り可能記録媒体としても実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】物体検出装置を備える運転支援システムの全体構成を例示するブロック図。
図2】レーダ装置及び撮像装置の検知範囲を例示する説明図。
図3】衝突判断装置が行う各処理を例示するフローチャート。
図4】物体検出装置が行う各処理を例示するフローチャート。
図5】フュージョン情報について示す説明図。
図6】認識部が実行する立体物認識処理を例示するフローチャート。
図7】サンプル回数について示す説明図。
図8】第2実施形態における立体物認識処理を例示するフローチャート。
図9】サンプル回数及び確定回数閾値の設定のためのテーブルを例示する説明図。
図10】第3実施形態における立体物認識処理を例示するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1に示すように、本開示の第1実施形態としての物体検出装置40は、車両に搭載される運転支援システム10に用いられる。運転支援システム10は、ガードレール等の障害物や、停車中の他車両、立ち止まっている歩行者等の静止状態にある立体物を検出し、このシステムを搭載した車両(以下、「自車両」)が検出した立体物に衝突する前に、その衝突被害を回避するための車両制御を行うシステムである。なお、以下では、衝突回避の対象となりうる静止状態にある立体物を単に「対象立体物」あるいは「立体物」のように呼ぶ。
【0010】
運転支援システム10は、測距装置としてのレーダ装置20、撮像装置30、物体検出装置40、衝突判断装置50、状態検出装置60、報知装置70、制動装置80、及び操舵装置90を備えている。
【0011】
レーダ装置20は、いわゆる「ミリ波レーダ」で構成されており、例えば自車両の前端部に配置される。レーダ装置20は、ミリ波帯の電磁波をレーダ波として、自車両の進行方向側の予め定められた範囲(例えば、図2のレーダ検出範囲)に送信するともに、レーダ波の反射波を受信し、そのレーダ波を反射した物体(以下、「レーダ物標」、図2参照)の位置を検出するための情報(以下、「レーダ情報」)を、物体検出装置40に出力する。なお、測距装置としては、ミリ波レーダの他に、ライダー(LiDAR:レーザレーダ)等の種々の他の立体物の位置を検出する種々の測距装置が用いられていてもよい。
【0012】
撮像装置30は、例えばCCDカメラで構成されており、例えば自車両の前側における中央付近に配置される。撮像装置30は、自車両の進行方向側の予め定められた範囲(例えば、図2のカメラ検出範囲)中の物体と道路の境界線を示す画像(以下、「画像物標」、図2参照)を含む画像を撮像し、その撮像画像情報を物体検出装置40に出力する。なお、撮像装置30としては、CCDカメラの他に、3Dライダーが用いられていてもよい。
【0013】
状態検出装置60は、自車両の運転状態を検出するセンサ、具体的には、自車両の速度(以下、「車速」)を検出する車速センサや、自車両の加速度を検出する加速度センサ、自車両の操舵角を検出する操舵角センサ、自車両の進行方向に対するヨーレートを検出するヨーレートセンサ等によって構成され、これらの検出結果を示す状態情報を、物体検出装置40及び衝突判断装置50に出力する。
【0014】
報知装置70は、自車両の車室内に設置されたスピーカやディスプレイであり、運転支援システム10では、衝突判断装置50によって、立体物に衝突する可能性が高まったと判定した場合に、警告音や警報メッセージ、警報画像を出力することで、その衝突を回避または軽減できるよう運転者に報知する。
【0015】
制動装置80は、自車両を制動する装置である。運転支援システム10では、衝突判断装置50によって、立体物に衝突する可能性が高いと判定された場合に、その衝突を軽減または回避できるように、制動装置80によって自車両の自動制動(「自動ブレーキ」とも呼ぶ)が行なわれる。また、制動装置80によって、運転者のブレーキペダルの踏込量に対する制動力、すなわち、ブレーキの効きを強める操作が行なわれる。
【0016】
操舵装置90は、自車両の進行方向を操作する装置である。運転支援システム10では、衝突判断装置50によって、立体物に衝突する可能性が高いと判定された場合に、その衝突を軽減または回避できるように、操舵装置90によって自車両の自動操舵が行なわれる。また、操舵装置90によって、運転者が操作した操舵角に対して、実際の操舵角を強めるあるいは弱める操作が行なわれる。
【0017】
なお、運転支援システム10は、自車両の各座席に設けられたシートベルトの帯(ウェビング)を引き込むプリテンショナで構成されるシートベルト装置を備え、衝突判断装置50によって、立体物に衝突する可能性が高いと判定された場合に、ウェビングの巻き上げ等の動作が行なわれるようにしてもよい。また、運転支援システム10では、その他、自車両の種々の動作を制御する種々の装置を備え、衝突判断装置50によって、立体物に衝突する可能性が高いと判定された場合に、その衝突の回避等のために種々の動作を制御するようにしてもよい。
【0018】
衝突判断装置50は、CPU,ROM,RAM,フラッシュメモリ等を有する1または複数のマイクロコンピュータを中心に構成される。衝突判断装置50は、CPUがROMあるいはフラッシュメモリに記憶された各種プログラムを実行することによって、図3のフローチャートに示す各処理を実行する各機能部として動作し、自車両の衝突の可能性の判断を実行し、衝突可能性が高い場合に、報知装置70や、制動装置80、操舵装置90等の動作を制御する。
【0019】
衝突判断装置50は、自車両の始動に従って、物体検出装置40から出力される立体物情報の取得処理を開始する(ステップS110)。
【0020】
次に、衝突判断装置50は、状態検出装置60の検出結果としての自車両の運転状態を表す状態情報(加速度,車速,操舵角,ヨーレート)を取得し、例えば、車速及びヨーレートが現状のまま自車両が走行道路を推移(移動)した場合に予測される自車両の予測走行軌跡を算出する(ステップS120)。
【0021】
そして、衝突判断装置50は、取得された立体物情報と、算出した自車両の予測走行軌跡上の車速ベクトル(車速及び移動方向)とに基づいて、自車両が立体物に衝突する可能性の有無を判定し、衝突を回避するための各種装置を作動させる必要があるか否かを判定する衝突判定処理を行なう(ステップS130)。
【0022】
なお、衝突判定処理は、例えば、以下のように行なわれる。自車両の予測走行軌跡上に立体物が存在しており、自車両が立体物に衝突する可能性がある場合には、自車両が立体物に衝突するまでの余裕時間(TTC)を算出する。TTCは、立体物までの距離を車速で除算することにより算出される。そして、TTCが予め設定した閾値時間を超えている場合には、自車両が立体物に衝突する可能性は低いと判定し、TTCが予め設定された閾値時間以内の場合には、自車両が立体物に衝突する可能性が高いと判定し、TTCが予め設定が閾値時間を超えている場合には、自車両が立体物に衝突する可能性は低いと判定する。
【0023】
そして、衝突判断装置50は、ステップS130の判定結果に応じて、自車両が立体物に衝突する可能性が高いと判定した場合に、各種の車両制御処理を行なう(ステップS140)。なお、各種の車両制御処理には、報知装置70によって警報音や警報メッセージ、警報画像を出力する制御や、制動装置80によって自動制動を行なう制御、操舵装置90によって自動操舵を行なう制御等が含まれる。
【0024】
物体検出装置40(図1参照)は、衝突判断装置50と同様に、1または複数のマイクロコンピュータを中心に構成される。物体検出装置40のCPUがROMあるいはフラッシュメモリに記憶された各種プログラムを実行することによって、レーダ物標情報取得部42,画像物標情報取得部44、フュージョン(FSN)部45、認識部46、及び立体物情報出力部47の各機能部として動作する。そして、物体検出装置40は、各機能部が図4のフローチャートに示す各処理を行なうことにより、立体物の認識を実行する。
【0025】
物体検出装置40では、自車両の始動に従って、レーダ物標情報取得部42がレーダ物標情報取得処理を開始し(ステップS210)、画像物標情報取得部44が画像物標情報取得処理を開始する(ステップS220)。
【0026】
レーダ物標情報取得処理では、レーダ装置20から入力されたレーダ情報から、レーダ装置20で検出された検出点によって表されるレーダ物標(図2参照)の位置、具体的には、自車両との距離及び横位置を示すレーダ物標情報を生成する。このレーダ物標情報の取得処理は、レーダ装置20がレーダ情報を出力する周期毎に行なわれる。なお、レーダ物標情報取得部42は、外部、例えば、レーダ装置20あるいはレーダ装置20と物体検出装置40との間に設けられた装置、で生成されたレーダ物標情報を取得するようにしてもよい。レーダ物標情報取得部42は「位置情報取得部」に相当し、レーダ物標情報は「位置情報」に相当する。
【0027】
画像物標情報取得処理では、撮像装置30から入力された撮像画像情報から、物体と道路の境界線によって表される画像物標(図2参照)の位置、具体的には、自車両との距離、及び自車両の進行方向に沿った軸と物標との距離(物標の横位置)を示す画像物標情報を生成する。この画像物標情報の生成は、撮像装置30が画像情報を出力する周期毎に行なわれる。通常、撮像装置30が画像情報を出力する周期は、レーダ装置20がレーダ情報を出力する周期に比べて長い周期に設定される。なお、画像物標情報取得部44は、外部、例えば、撮像装置30あるいは撮像装置30と物体検出装置40との間に設けられた装置、で生成された画像物標標情報を取得するようにしてもよい。画像物標情報取得部44は「撮像情報取得部」に相当し、画像物標情報は「撮像情報」に相当する。
【0028】
そして、FSN部45は、FSN処理を実行する(ステップS230)。FSN処理では、以下で説明するように、ステップS210で取得されたレーダ物標情報と、ステップS220で取得された画像物標情報とに、統合可能な部分(物体)の情報が含まれていて、これらの統合(以下、「フュージョン(FSN)」)が成立する場合に、これらを統合する。以下では、統合により生成される統合情報を、「フュージョン情報(FSN情報)」)とも呼ぶ。また、統合が成立した部分(物体)は、立体物として確定するための対象物標として認識される。
【0029】
FSN処理では、図5に示すように、レーダ物標情報が示す物標の距離及び横位置に予め設定された想定誤差を加えた領域(レーダ物標領域)と、画像物標情報が示す物標の距離及び方位(距離を横位置で除算した値)に予め設定された想定誤差を加えた領域(画像物標領域)とを生成する。そして、両者の少なくとも一部が交わるレーダ物標領域と画像物標領域とを選択し、レーダ物標情報が示す物標の距離と、このレーダ物標情報が示す物標の距離を画像物標情報が示す方位で除算した値である横位置とを示す情報を、FSN情報として生成する。なお、FSN処理は、レーダ物標情報生成の周期あるいは画像物標情報生成の周期のいずれか遅い周期毎に行なわれる。そして、1回のFSN処理の周期でFSN情報の生成がなされたことは、生成されたFSN情報に対応する物標(対象物標)の認識が1回成立したことに対応する。
【0030】
次に、認識部46は、後述するように、FSN処理により認識された対象物標を立体物として確定するための立体物認識処理を開始する(図4のステップS240)。この立体物認識処理は、ステップS230のFSN処理の結果を受けて、FSN処理の周期に同期して実行される。そして、立体物情報出力部47(図1参照)は、ステップS240で対象とする物体が立体物として確定された場合にのみ、ステップS230で生成されたFSN情報を立体物情報として衝突判断装置50に出力する(ステップS250)。出力された立体物情報は、上述したように、衝突判断装置50における衝突の可能性の判定に利用される。
【0031】
ステップS240の立体物認識処理では、以下で説明するように、図6のフローチャートに示す各処理が実行される。
【0032】
認識部46は、自車両が対象物標に衝突するまでの余裕時間(TTC)を算出する(ステップS310)。このTTCは、対象物標の認識距離を自車両の車速で除算することにより算出される。
【0033】
そして、認識部46は、FSN部45におけるFSN処理の結果に応じて、対象物標の認識が成立したか否か判定する(ステップS320)。具体的には、上述のように、レーダ物標情報と画像物標情報との統合が成立した場合に、対象物標の認識が成立したと判定され、統合が非成立の場合に、対象物標の認識は非成立と判定される。なお、図4のステップS240で実行するFSN処理を、ステップS320の判定の際に、FSN部45が実行するようにしてもよい。
【0034】
そして、認識部46は、対象物標までの距離(以下、「認識距離」とも呼ぶ)[m]、自車両の車速[m/s]、ステップS230のFSN処理の処理周期[s]、及び、規定TTCと空走時間から、ステップS320で算出したTTCに応じたサンプル回数Nsを算出する(ステップS330)。なお、認識距離は、FSN情報、FSN情報が生成されない場合には、レーダ物標情報や画像物標情報から取得される。
【0035】
サンプル回数Nsは、具体的には、下式(1)により算出することができる。但し、サンプル回数Nsは、正数であるので、下式(1)から求められる数値の小数点以下の数値を切り捨てまたは切り上げた数値とされる。
Ns=(dr/v-(T_ttc+T_idle))/Ts ・・・(1)
drは自車両から対象物標までの認識距離[m]であり、FSN情報から取得される。vは車速[m/s]であり、状態検出装置60が出力する状態情報から取得される。なお、(dr/v)は、ステップS320で算出されたTTCに相当する。T_ttcは車速vに対応する規定TTCの値[s]である。なお、規定TTCは、規定の制動力(例えば、最大制動力)で制動させた時に完全停止するために要する距離に相当する時間であり、制動前の車速に応じた値である。具体的には、物体検出装置40のメモリ内に予め格納されている。T_idleは空走時間の値[s]であり、物体検出装置40のメモリ内に予め格納されている。TsはステップS230のFSN処理の処理周期[s]であり、物体検出装置40の不図示のメモリ内に予め格納されている。
【0036】
ここで、図7に示すように、立体物すなわち対象物標である物体の位置Ptに対して衝突を回避できる限界の物体位置を限界位置Pmとし、限界位置Pmから物体位置Ptまでの距離を限界距離dmとする。この限界距離dmは、規定TTCの値T_ttc及び空走時間の値T_idlと車速vにより下式(2)で表される。
dm=v・(T_ttc+T_idl) ・・・(2)
【0037】
そして、限界位置Pmよりも以前(過去)に繰り返し実行される立体物認識処理において、上記FSN処理による物標の認識が成立した最初の位置を初回認識位置Psとし、初回認識位置Psから立体物の位置Ptまでの認識距離をdrとする。なお、認識距離drを車速vで除算することにより得られる値が、ステップS320において算出されるTTCに相当し、認識距離dr及び車速vはTTCを示すパラメータと言える。
【0038】
ここで、初回認識位置Psから限界位置Pmまでの距離dbは、立体物の認識確定の限界位置までの余裕度を距離で示す余裕距離であり、認識距離drと限界距離dmにより下式(3)で表される。また、余裕距離dbの間を車速vで移動するのに要する時間tbは、立体物の認識確定の限界位置までの余裕度を時間で示す余裕時間であり、下式(4)で表される。
db=dr-dm=dr-v・(T_ttc+T_idl) ・・・(3)
tb=db/v=dr/v-(T_ttc+T_idl) ・・・(4)
【0039】
そして、上式(1)は、上式(4)の余裕時間tbをFSN処理の処理周期Tsで除算する式であり、余裕時間tbの間に実行可能なFSN処理の処理周期(以下、「フレーム」とも呼ぶ)の回数を示している。従って、上式(1)で求められるサンプル回数Nsは、立体物の確定の限界位置までの余裕度を示すパラメータ、すなわち、対象物標に衝突するまでに実行可能なFSN情報の生成回数に対応する余裕度を示すパラメータである、と言える。
【0040】
そして、認識部46は、算出したサンプル回数Nsに対応する確定回数閾値Cthを設定する(図6のステップS340)。確定回数閾値Cthは、実行されたNS回の認識処理の中で確定回数閾値Cth以上の回数の認識が成立した場合に、対象物標を立体物として確定するための判定用の閾値である。確定回数閾値Cthは、例えば、下式(5)に示すように、算出したサンプル回数Nsと予め設定された有効認識率rとを乗算することにより求めることができる。但し、確定回数閾値Cthは、サンプル回数Nsと同様に正数であるので、下式(5)から求められる数値の小数点以下の数値を切り捨てまたは切り上げた数値とされる。
Cth=r・Ns ・・・(5)
【0041】
次に、認識部46は、実行されたNs回の認識処理の中で認識が成立した回数を認識回数Nrとしてカウントする(ステップS350)。
【0042】
そして、認識部46は、実行されたNs回のFSN処理による認識処理(ステップS320の認識判定に対応)のうち今回の認識処理における認識が成立しており、かつ、Nr/Ns≧Cth/Nsが成立しているか否か判定する(ステップS360)。今回の認識処理における認識が非成立である場合、あるいは、Nr/Ns≧Cth/Nsが非成立の場合には(ステップS360:NO)、物体検出装置40は、そのまま、立体物認識処理を終了する。一方、今回の認識処理における認識が成立し、かつ、Nr/Ns≧Cth/Nsが成立する場合には(ステップS360:YES)、認識部46は、対象物標を立体物として確定し(ステップS370)、立体物認識処理を終了する。
【0043】
上述したように、認識部46の立体物認識処理では、対象物標を認識した位置から、対象物標への衝突を回避できる限界位置に自車両が到達するまでの余裕度に対応するサンプル回数Nsに応じて、対象物標を立体物として確定するための確定回数閾値Cthを変化させている。これにより、認識距離drすなわちTTCが短くなって余裕度が小さくなるのに応じてサンプル回数Nsが確定回数閾値Cth未満となって、認識回数Nrをカウントするための認識処理の機会を確保できずに立体物を検出し損なう、という誤検出の可能性を低減することができる。
【0044】
ここで、自車両の位置が対象となる立体物から遠いほど、すなわち、認識距離drが長いほど、レーダ装置20により検出される立体物の横位置のばらつきは大きくなる。このため、FSN処理(図4のステップS230)では、誤ったFSN情報を生成(以下、「誤フュージョン」とも呼ぶ)しやすくなり、誤った対象物標の認識が発生しやすくなる、という問題がある。
【0045】
また、例えば、予め設定した近距離において設定される回数閾値Cth/Nsの値(以下、「通常値」とも呼ぶ)を、遠距離における認識確定(図6のステップS360)に用いたと仮定する。通常値では、サンプル回数Nsは距離に応じた小さい値に設定され、確定回数閾値Cthもサンプル回数Nsに応じた小さい値に設定されるので、確定回数閾値Cth以上となった認識回数Nr中に、誤フュージョンによる誤認識が含まれる確率が高くなり、立体物の誤った確定(以下、「誤確定」とも呼ぶ)が発生しやすくなる、という問題がある。
【0046】
これに対して、上述した実施形態で設定される確定回数閾値Cthは、上式(5)に示すように、サンプル回数Nsと有効認識率rの積の値である。そして、サンプル回数Nsは、上述したように立体物の認識確定までの余裕度を示すパラメータであり、上式(1)に示すように、認識距離drの大きさに応じて大きくなる値である。従って、確定回数閾値Cthを、認識距離drの大きさに応じて大きくなるように設定することができる。これにより、認識距離drが長くなるのに応じて、すなわち、自車両の位置が立体物から遠くなるのに応じて、サンプル回数Ns、及び、確定回数閾値Cthすなわち立体物の確定に要する認識回数Nrを大きく設定することができるので、立体物の誤確定を低減することができる。
【0047】
また、上述したように、サンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthは認識距離drの変動及び車速vの変動に応じて変動する。このため、立体物を確定するまでの間に、認識距離drの変動及び車速vの変動に応じてサンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthが変動すると、立体物の確定までの処理を安定に実行することができない可能性がある。そこで、一定の距離幅及び車速幅では、同じサンプル回数及び確定回数閾値に設定することが好ましい。このようにすれば、自車両の走行による認識距離の変動及び車速の変動によって発生するサンプル回数及び確定回数閾値の変動を抑制することができるので、立体物を確定するまでの処理の安定化を図ることができる。
【0048】
B.第2実施形態:
第2実施形態は、認識部46(図1参照)による立体物認識処理が図8に示すフローチャートに従って実行される点を除いて、第1実施形態の構成と同様である。そこで、第2実施形態と第1実施形態とで同じ箇所には、同一の符号を付し、その説明は省略する。また、図8に示した立体物認識処理は、図5に示した第1実施形態の立体物認識処理のステップS330,S340がステップS335Bに置き換えられている点が、第1実施形態の立体物認識処理と異なっている。
【0049】
ステップS335Bでは、認識部46は、S320で算出されたTTCに応じた、具体的には、認識距離drと車速vに応じたサンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthを設定する。具体的には、例えば、図9に示すように、物体検出装置40のメモリ内に予め格納されている、認識距離及び車速とサンプル回数及び確定回数閾値との関係を示すテーブルから、認識距離drと車速vに対応するサンプル回数Nsの値及び確定回数閾値Cthの値を読み出す。これにより、認識距離drと車速vに応じたサンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthを設定することができる。
【0050】
なお、認識距離及び車速と、サンプル回数及び確定回数閾値との関係を示すテーブルは、例えば、第1実施形態で説明したように、認識距離dr及び車速vをパラメータとして、上式(1)及び式(5)に従って複数のサンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthを算出することで、作成することができる。ただし、これに限定されるものではなく、認識距離と、車速をパラメータとして、認識された物標に対応する立体物に衝突するまでに、FSN処理による対象物標の認識の実行可能回数に対応する余裕度を求めて、求めた余裕度に対応するサンプル回数及び確定回数閾値を設定することができれば、どのような方法で作成してもよい。
【0051】
なお、図9に示すテーブルは、認識距離drを3つの値dr1,dr2,dr3(dr1<dr2<dr3)とし、車速vを3つの値v1,v2,v3(v1<v2<v3)とした例を示している。rは確定回数閾値Cthの値を示し、nはサンプル回数Nsの値を示している。r及びnに付された2つの添え字の左側の添え字は認識距離drの添え字に対応し、右側の添え字は車速vの添え字に対応する。例えば、r11及びn11は、認識距離dr1で車速v1に対応する確定回数閾値Cthの値及びサンプル回数Nsの値を示している。認識距離drの値dr1,dr2,dr3(dr1<dr2<dr3)に対応する、車速v1におけるn11,n21,n31、車速v2におけるn12,n22,n32、及び車速v3におけるn13,n23,n33は、それぞれ、n11<n21<n31、n12<n22<n32、及びn13<n23<n33となるように設定されている。同様に、認識距離drの値dr1,dr2,dr3(dr1<dr2<dr3)に対応する、車速v1におけるr11,r21,r31、車速v2におけるr12,r22,r32、及び車速v3におけるr13,r23,r33は、それぞれ、r11<r21<r31、r12<r22<r32、及びr13<r23<r33となるように設定されている。また、車速vの値v1,v2,v3(v1<v2<v3)に対応する、認識距離dr1におけるn11,n12,n13、認識距離dr1におけるn21,n22,n23、及び認識距離dr3におけるn31,n32,n33は、それぞれ、n11>n12>n13、n21>n22>n23、及びn31>n32>n33となるように設定されている。同様に、車速vの値v1,v2,v3(v1<v2<v3)に対応する、認識距離dr1におけるr11,r12,r13、認識距離dr1におけるr21,r22,r23、及び認識距離dr3におけるr31,r32,r33は、それぞれ、r11>r12>r13、r21>r22>r23、及びr31>r32>r33となるように設定されている。
【0052】
ここで、認識距離drが、例えば、テーブルに用意されている値dr1から値dr2までの間の値である場合には、値dr1あるいは値dr2における確定回数閾値Cth及びサンプル回数Nsに設定されるようにすればよい。認識距離drがテーブルの他の間の値である場合も同様である。また、車速vが、テーブルに用意されている値v1から値v2までの間の値である場合にも、同様に、値v1あるいは値v2における回数閾値Cth/Nsの値に設定されるようにすればよい。車速vがテーブルの他の間の値である場合も同様である。
【0053】
第2実施形態における立体物認識処理においても、対象物標を認識した位置から、対象物標への衝突を回避できる限界位置に自車両が到達するまでの余裕度に対応するサンプル回数Nsに応じて、対象物標を立体物として確定するための確定回数閾値Cthを変化させている。これにより、認識距離drすなわちTTCが短くなって余裕度が小さくなるのに応じてサンプル回数Nsが確定回数閾値Cth未満となって、認識回数Nrをカウントするための認識処理の機会を確保できずに立体物を認識し損なう、という誤認識の可能性を低減することができる。
【0054】
また、認識距離drが大きくなるのに応じて、すなわち、自車両の位置が立体物から遠くなるのに応じて、サンプル回数Ns、及び、確定回数閾値Cthすなわち立体物の確定に要する認識回数Nrを大きく設定することができるので、立体物の誤確定を低減することができる。
【0055】
また、第2実施形態で設定されるサンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthは、第1実施形態のように認識距離dr、車速v、規定TTCと空走時間、及び、FSN処理の処理周期から算出するのではなく、認識距離dr及び車速vに対応する値をテーブルから読み出すことにより取得される。従って、算出のために物体検出装置40に掛かる負荷を省略して、認識距離dr及び車速vに対応するサンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthを容易に設定することができる。
【0056】
また、認識距離dr及び車速vがテーブルに用意されている認識距離drの複数の値の間及び車速vの複数の値の間である場合には、認識距離drを挟むいずれか一方の値及び車速vを挟むいずれか一方の値に関係付けられている値を、サンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthの値として設定している。すなわち、一定の距離幅及び車速幅で、同じサンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthに設定している。これにより、自車両の走行による認識距離の変動及び車速の変動によって発生する閾値の変動を抑制することができるので、立体物を確定するまでの処理の安定化を図ることができる。
【0057】
C.第3実施形態:
第3実施形態は、認識部46(図1参照)による立体物認識処理が図10に示すフローチャートに従って実行される点を除いて、第1実施形態の構成と同様である。そこで、第3実施形態と第1実施形態とで同じ箇所には、同一の符号を付し、その説明は省略する。また、図10に示した立体物認識処理は、図8に示した第2実施形態の立体物認識処理のステップS335B,S350がステップS335C,S350Cに置き換えられ、ステップS360のNO側の分岐経路にステップS365Cが設けられている点が異なっている。
【0058】
ステップS335Cでは、認識部46は、FSN情報による認識処理用(以下、「FSN用」)のサンプル回数Ns_f及び確定回数閾値Cth_fを設定する。FSN用の設定は、第2実施形態のステップS335B(図8参照)と同様に、FSN用に用意された認識距離及び車速と、サンプル回数及び確定回数閾値との関係を示すテーブル(図9参照)を用いて、取得される認識距離dr及び車速vに対応するサンプル回数Ns_f及び確定回数閾値Cth_fを読み出すことにより、実行することができる。
【0059】
また、ステップS335Cにおいて、認識部46は、レーダ物標情報による認識処理用(以下、「レーダ物標用」)のサンプル回数Ns_l及び確定回数閾値Cth_lを設定する。レーダ物標用の設定は、FSN用の設定と同様に、レーダ物標用に用意された認識距離及び車速と、サンプル回数及び確定回数閾値との関係を示すテーブルを用いて、取得される認識距離dr及び車速vに対応するサンプル回数Ns_l及び確定回数閾値Cth_lを読み出すことにより、実行される。なお、レーダ物標用のサンプル回数Ns_l及び確定回数閾値Cth_lは、「位置情報用のサンプル回数及び確定回数閾値」に相当する。
【0060】
また、ステップS335Cにおいて、認識部46は、画像物標情報による認識処理用(以下、「画像物標用」)のサンプル回数Ns_p及び確定回数閾値Cth_pを設定する。画像物標用の設定も、画像物標用に用意されたテーブルを用いて、取得される認識距離dr及び車速vに対応するサンプル回数Ns_p及び確定回数閾値Cth_pを読み出すことにより、実行される。なお、画像物標用のサンプル回数Ns_p及び確定回数閾値Cth_pは、「撮像情報用のサンプル回数及び確定回数閾値」に相当する。
【0061】
そして、ステップS350Cにおいて、認識部46は、ステップS350(図6参照)と同様に、FSN処理によって実行されたNs_f回の認識処理の中で認識が成立した回数を認識回数Nr_fとしてカウントする。また、ステップS350Cにおいて、認識部46は、レーザ物標情報取得処理により実行されたNs_l回のレーダ物標情報の取得処理の中で、レーダ物標情報が取得されることに対応する対象物標の認識が成立した回数を認識回数Nr_lとしてカウントする。さらにまた、ステップS350Cにおいて、認識部46は、画像物標情報取得処理により実行されたNs_p回の画像物標情報の取得処理の中で、画像物標情報が取得されることに対応する対象物標の認識が成立した回数を認識回数Nr_pとしてカウントする。
【0062】
そして、認識部46は、今回の認識処理における認識が成立し、かつ、Nr/Ns≧Cth/Nsが成立する場合には(ステップS360:YES)、認識部46は、対象物標を立体物として確定し(ステップS370)、立体物認識処理を終了する。
【0063】
一方、認識部46は、今回の認識処理における認識が非成立である場合、あるいは、Nr/Ns≧Cth/Nsが非成立の場合には(ステップS360:NO)、ステップS365Cにおいて、以下の判定を行なう。具体的には、Cth_l>Cth_p、で、かつ、Nr_l/Ns_l≧Cth_l/Ns_lが成立するか否か、あるいは、Cth_p>Cth_lで、かつ、Nr_p/Ns_p≧Cth_p/Ns_pが成立するか否か判定する。
【0064】
ここで、Cth_l>Cth_pは、レーダ物標による認識確定に要する認識回数が画像物標における認識確定に要する認識回数よりも厳しい条件であることを示している。反対に、Cth_p>Cth_lは、画像物標による認識確定に要する認識回数がレーザ物標による認識確定に要する認識回数よりも厳しい条件であることを示している。従って、ステップS365Cの判定は、ステップS360におけるFSN情報による認識確定の条件が成立しなかった場合に、レーザ物標あるいは画像物標のうち、より厳しい認識確定の条件を満たしているか否かを判定するものである。
【0065】
そして、Cth_l>Cth_p、で、かつ、Nr_l/Ns_l≧Cth_l/Ns_l、あるいは、Cth_p>Cth_lで、かつ、Nr_p/Ns_p≧Cth_p/Ns_p、のいずれか一方が成立する場合には(ステップS365C:YES),ステップS360におけるFSN情報による判定が非成立であっても、認識部46は、対象物標を立体物として確定する(ステップS370)。
【0066】
なお、認識部46は、Cth_l>Cth_p、で、かつ、Nr_l/Ns_l≧Cth_l/Ns_lが非成立で、Cth_p>Cth_lで、かつ、Nr_p/Ns_p≧Cth_p/Ns_pが非成立の場合には(ステップS365C:NO)、物体検出装置40は、そのまま、立体物認識処理を終了する。
【0067】
例えば、FSN用としてCth_f/Ns_f=2/3、レーダ物標用としてCth_l/Ns=15/20、画像物標用としてCt_P/Ns_p=8/10の場合、レーダ物標による認識回数Nr_lがCth_l(=15)以上であれば、対象物標を立体物として確定する。
【0068】
なお、ステップS365Cにおいて、レーザ物標用の確定回数閾値Cth_lと画像物標用の確定回数閾値Cth_pの大小関係に関係なく、Nr_l/Ns_l≧Cth_l/Ns_l、あるいは、Nr_p/Ns_p≧Cth_p/Ns_p、のいずれか一方が成立する場合に、対象物標を立体物として確定するようにしてもよい。
【0069】
第3実施形態における立体物認識処理においても、FSN情報により対象物標を認識した位置から、対象物標への衝突を回避できる限界位置に自車両が到達するまでの余裕度に対応するサンプル回数Ns_fに応じて、対象物標を立体物として確定するための確定回数閾値Cth_fの設定を変化させている。これにより、余裕度が小さくなるのに応じてサンプル回数Ns_fが確定回数閾値Cth_f未満となって、認識回数Nr_fをカウントするための認識処理の機会を確保できずに立体物を認識し損なう、という誤認識の可能性を低減することができる。
【0070】
また、第3実施形態の立体物認識処理では、FSN情報による立体物の確定が非成立であった場合であっても、レーダ物標と画像物標のうち、認識を確定するための確定回数閾値の条件が厳しい方の物標(レーダ物標あるいは画像物標)による確定条件が成立する場合には、対象物標を立体物として確定している。これにより、例えば、撮像装置30にとって不利な環境のとき(例えば、逆光や夜間等)、あるいは、レーダ装置20にとって不利な環境のとき(例えば、トンネル内、マンホールが配置されている地帯等)のように、FSN情報を生成が困難な場合であっても、立体物の確定を可能とすることができる。
【0071】
また、第3実施形態の立体物認識処理では、第2実施形態の立体物認識処理と同様に、テーブルを用いて、サンプル回数及び確定回数閾値を設定している。これにより、自車両の位置が立体物から遠くなるのに応じて、サンプル回数及び確定回数閾値を大きく設定することができるので、立体物の誤確定を低減することができる。また、自車両の走行による認識距離の変動及び車速の変動によって発生する閾値の変動を抑制することができるので、立体物を確定するまでの処理の安定化を図ることができる。
【0072】
なお、上記第3実施形態の説明では、FSN用、レーダ物標用、及び画像物標用に、それぞれのテーブルを用いて、それぞれのサンプル回数及び確定回数閾値を設定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。第1実施形態と同様に、FSN用、レーダ物標用、及び画像物標用に、それぞれ、認識距離、車速、規定TTC、空走時間、及び対応する処理周期に基づいて、サンプル回数及び確定回数閾値を設定するようにしてもよい。なお、処理周期としては、FSN用についてはFSN処理(図4のステップS230)の周期であり、レーダ物標用についてはレーダ物標情報取得処理(図4のステップS210)の周期であり、画像物標用については画像物標情報取得処理(図4のステップS220)の周期である。
【0073】
D.他の実施形態:
(1)上記各実施形態のFSN処理(図4のステップS230参照)では、図5に示すように、画像物標情報が示す物標の距離及び方位(角度)に想定誤差を加えた領域を、画像物標領域として設定しているが、これに限定されるものではない。例えば、画像物標情報が示す物標の距離及び横位置に想定誤差を加えた領域を、画像物標領域として設定してもよい。また、画像物標情報が示す物標の距離及び横位置に応じて、例えば距離が大きい場合や、距離が比較的大きく横位置が大きい場合には、画像物標情報が示す物標の距離及び方位(角度)に想定誤差を加えた領域を、画像物標領域として設定し、距離が小さい場合や、距離が比較的小さく横位置が小さい場合には、画像物標情報が示す物標の距離及び横位置に想定誤差を加えた領域を、画像物標領域として設定してもよい。
【0074】
(2)上記実施形態において説明したように、立体物への認識距離が短くなるほど、認識処理のためにかけられる余裕度が小さくり、計算によりあるいはテーブルにより設定されるサンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthの大きさは小さくなる。計算によりあるいはテーブルにより設定されるサンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthをそのまま適用すると、例えば、最も極端な条件としてサンプル回数Ns=1で確定回数閾値Cth=1、すなわち、1回の認識処理の機会で1回の認識が成立しなければ、認識が確定されない、という状況があり得、立体物を認識し損なうような誤認識の可能性が高くなる。そこで、サンプル回数Ns及び確定回数閾値Cthに下限値を、例えば、サンプル回数Nsの下限値を2、確定回数閾値Cthの下限値を2のように設定することが好ましい。このようにすれば、立体物の誤確定の可能性を低減することができる。
【0075】
(3)上記実施形態において、対象物標が静止状態から移動状態(速度を有する状態)となった際に、カウントしていた認識回数Nrを0に初期化し、かつ、立体物の認識を確定する立体物認識処理をキャンセルすることが好ましい。これにより、例えば、停車したバスや他車両、歩行者などの、本来移動物として扱うべき立体物が対象物標として認識されて、立体物として誤確定されつつあった場合に、認識を確定するための処理の途中から動き出した際に、強制的に対象から除外することができる。
【0076】
(4)上記実施形態においては、物体検出装置は、1または複数のマイクロコンピュータを中心に構成され、CPUがROMあるいはフラッシュメモリに記憶された各種プログラムを実行することにより、それぞれの処理に対応する機能がソフトウェア的に実現されるものとして説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、ディスクリート回路や集積回路によってハードウェア的に実現されても良い。
【0077】
以上、実施形態、変形例に基づき本開示について説明してきたが、上記した実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定するものではない。本開示は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本開示にはその等価物が含まれる。たとえば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
10…運転支援システム、20…レーダ装置、30…撮像装置、40…物体検出装置、50…衝突判断装置、60…状態検出装置、70…報知装置、80…制動装置、90…操舵装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10