(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026429
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】自律走行作業装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220203BHJP
A47L 11/292 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G05D1/02 K
A47L11/292
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129902
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】仲野 綾華
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴史
(72)【発明者】
【氏名】下郡 祐美子
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB11
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301FF13
5H301GG07
5H301GG09
5H301GG12
5H301LL14
5H301LL16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オペレータの作業負担を減らしつつ、容易に作業エリアを設定する。
【解決手段】自律走行作業装置は、自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する。自律走行作業装置には、被作業面を撮像した撮像部から撮像画像を取得する取得部(36)と、撮像画像から被作業面上に存在するマーカを認識する認識部(37)と、時系列に連続した撮像画像からマーカの移動軌跡を作成する作成部(39)と、マーカの移動軌跡の内側を作業エリアに設定する設定部(41)と、が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置であって、
前記被作業面を撮像した撮像部から撮像画像を取得する取得部と、
撮像画像から前記被作業面上に存在するマーカを認識する認識部と、
時系列に連続した撮像画像から前記マーカの移動軌跡を作成する作成部と、
前記マーカの移動軌跡の内側を作業エリアに設定する設定部と、を備えたことを特徴とする自律走行作業装置。
【請求項2】
障壁からの距離が安全距離以上になるように作業エリアの外周を補正する補正部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の自律走行作業装置。
【請求項3】
往復走行を繰り返して作業エリア全域を通過するような走行経路を決定する決定部を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自律走行作業装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記マーカの移動軌跡の内側を非作業エリアに設定可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項5】
前記設定部は、複数の作業エリアを組み合わせて新たな作業エリアを再設定可能であると共に、作業エリアと非作業エリアを組み合わせて新たな作業エリアを再設定可能であることを特徴とする請求項4に記載の自律走行作業装置。
【請求項6】
前記マーカが手動式の作業具に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項7】
前記マーカが光源、又は事前登録された特徴形状であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項8】
前記認識部は、自律走行中に前記マーカを認識することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項9】
前記設定部が前記被作業面に複数の作業エリアを設定したときに、作業エリア毎に異なる作業プランが適用されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項10】
前記撮像部は全方位を撮像することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項11】
事前に作成された前記被作業面の環境地図を記憶した記憶部を備え、
前記認識部は、撮像画像から前記被作業面上に存在する前記マーカの位置を認識し、環境地図の特徴点と撮像画像の特徴点を関連付けて、前記マーカの位置を環境地図に反映させ、
前記作成部は、環境地図に反映された複数の前記マーカの位置を繋ぎ合わせて前記マーカの移動軌跡を作成し、
前記設定部は、環境地図上の前記マーカの移動軌跡の内側を作業エリアに設定することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の自律走行作業装置。
【請求項12】
自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置のプログラムであって、
前記被作業面を撮像した撮像部から撮像画像を取得するステップと、
撮像画像から前記被作業面上に存在するマーカを認識するステップと、
時系列に連続した撮像画像から前記マーカの移動軌跡を作成するステップと、
前記マーカの移動軌跡の内側を作業エリアに設定するステップと、を前記自律走行作業装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行作業装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ティーチングによって作業エリアを設定するロボット装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のロボット装置は、前方に移動するオペレータをステレオカメラで検知して、そのオペレータの移動に追従することで移動経路のティーチングデータを取得している。走行経路のティーチングデータに従ってロボット装置が自律走行する際に、超音波センサによって障害物が検知されて、障害物を回避するように走行経路のティーチングデータが修正される。修正後の走行経路によってロボット装置が自律走行可能な作業エリアが自動的に設定される。
【0003】
また、移動体の作業エリアを遠隔で設定するナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のナビゲーション装置には、屋内に設置されたウェブカメラとフロア内を移動する移動体が無線で接続されている。ウェブカメラによってフロアが撮像されて、ナビゲーション装置のモニタにフロア画像が表示される。フロア画像上には移動体の走行経路等を表わすマーカが配置可能であり、マーカの配置によって移動体が自律走行するナビゲーション画像が作成される。このナビゲーション画像によって移動体が自律走行可能な作業エリアが設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-185438号公報
【特許文献1】国際公開第2010/044277号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のロボット装置には、オペレータが移動を繰り返してティーチングデータを取得させる必要があり、商業施設等の広範なフロアではオペレータの移動距離が長くなって負担が大きい。特許文献2に記載のナビゲーション装置は、遠隔から確認しながら移動体の動きを指示できるが、移動体の走行中にフロア画像上にマーカを配置することは難しい。また、オペレータがモニタに表示された移動体から目を離せないため負担が大きい。
【0006】
そこで、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、オペレータの作業負担を減らしつつ、容易に作業エリアを設定することができる自律走行作業装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自律走行作業装置は、自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置であって、前記被作業面を撮像した撮像部から撮像画像を取得する取得部と、撮像画像から前記被作業面上に存在するマーカを認識する認識部と、時系列に連続した撮像画像から前記マーカの移動軌跡を作成する作成部と、前記マーカの移動軌跡の内側を作業エリアに設定する設定部と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、被作業面上でマーカを移動させることで、被作業面上を移動中のマーカが撮像部によって撮像される。時系列に連続した撮像画像からマーカの移動軌跡が作成され、マーカの移動軌跡の内側に作業エリアが自動的に設定される。よって、被作業面上でマーカを移動させるという簡易な作業で、作業エリアを設定してオペレータの作業負担を軽減することができる。
【0009】
本発明の自律走行作業装置は、障壁からの距離が安全距離以上になるように作業エリアの外周を補正する補正部を備えている。この構成によれば、自律走行作業装置と障壁の衝突を回避することができる。
【0010】
本発明の自律走行作業装置は、往復走行を繰り返して作業エリア全域を通過するような走行経路を決定する決定部を備えている。この構成によれば、作業エリア内の走行経路が自動的に決定されてオペレータの作業負担を軽減することができる。
【0011】
本発明の自律走行作業装置において、前記設定部は、前記マーカの移動軌跡の内側を非作業エリアに設定可能である。この構成によれば、被作業面の状況に応じて作業エリアと非作業エリアを設定することができる。
【0012】
本発明の自律走行作業装置において、前記設定部は、複数の作業エリアを組み合わせて新たな作業エリアを再設定可能であると共に、作業エリアと非作業エリアを組み合わせて新たな作業エリアを再設定可能である。この構成によれば、作業エリア同士の組み合わせ、作業エリアと非作業エリアの組み合わせによって、被作業面の状況に応じた新たな作業エリアを設定することができる。
【0013】
本発明の自律走行作業装置において、前記マーカが手動式の作業具に設けられている。この構成によれば、オペレータが作業具を用いて作業することで、作業具に設けられたマーカが移動する。このため、オペレータの作業中に、自律走行作業装置がマーカの移動軌跡を作成して作業エリアを自動的に設定することができる。
【0014】
本発明の自律走行作業装置において、前記マーカが光源、又は事前登録された特徴形状である。この構成によれば、自律走行作業装置にマーカを容易に認識させることができる。
【0015】
本発明の自律走行作業装置において、前記認識部は、自律走行中に前記マーカを認識する。この構成によれば、自律走行作業装置が自律走行しながらマーカを認識することで、自律走行作業装置の作業に並行して作業エリアを設定して作業効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の自律走行作業装置において、前記設定部が前記被作業面に複数の作業エリアを設定したときに、作業エリア毎に異なる作業プランが適用される。この構成によれば、作業エリアの状況に適した作業を実施することができる。
【0017】
本発明の自律走行作業装置において、前記撮像部は全方位を撮像する。この構成によれば、被清掃面の撮像時に死角を無くすことができる。
【0018】
本発明の自律走行作業装置において、事前に作成された前記被作業面の環境地図を記憶した記憶部を備え、前記認識部は、撮像画像から前記被作業面上に存在する前記マーカの位置を認識し、環境地図の特徴点と撮像画像の特徴点を関連付けて、前記マーカの位置を環境地図に反映させ、前記作成部は、環境地図に反映された複数の前記マーカの位置を繋ぎ合わせて前記マーカの移動軌跡を作成し、前記設定部は、環境地図上の前記マーカの移動軌跡の内側を作業エリアに設定する。この構成によれば、環境地図にマーカの移動軌跡を反映させることで、環境地図上に作業エリアを容易に設定することができる。
【0019】
本発明のプログラムは、自律走行しながら被作業面に対して作業を実施する自律走行作業装置のプログラムであって、前記被作業面を撮像した撮像部から撮像画像を取得するステップと、撮像画像から前記被作業面上に存在するマーカを認識するステップと、時系列に連続した撮像画像から前記マーカの移動軌跡を作成するステップと、前記マーカの移動軌跡の内側を作業エリアに設定するステップと、を前記自律走行作業装置に実行させる。この構成によれば、自律走行作業装置がプログラムをインストールすることで、自律走行作業装置に作業エリアの設定機能を持たせてオペレータの作業負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、オペレータの作業負担を減らしつつ、容易に作業エリアを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】本実施形態の装置本体の制御ブロック図である。
【
図4】本実施形態の清掃用具の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態の第1の設定例のフローチャートである。
【
図6】本実施形態の撮像画像の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態の第2の設定例のフローチャートである。
【
図10】本実施形態の第3の設定例の遷移図である。
【
図11】本実施形態の第4の設定例の遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の清掃装置について説明する。
図1は、本実施形態の清掃装置の斜視図である。
図2は、本実施形態の清掃装置の模式図である。なお、以下の説明では、自律走行作業装置として自律走行式の清掃装置を例示して説明するが、自律走行作業装置は自律走行によって被作業面に対して、掃除作業、研磨作業、艶出し作業、ワックス塗布作業等の各種作業を実施する作業装置でもよい。
【0023】
図1に示すように、清掃装置1は、商業施設、製造施設、コンコース等の床面(被作業面)を自律走行で清掃可能に構成されている。清掃装置1の装置本体10の下部には、駆動輪としての前輪12と補助輪としての後輪13が設けられている。前輪12と後輪13の間に洗浄パッドや洗浄ブラシ等の清掃部材16が設けられ、清掃部材16の後側にはスキージ17が設けられている。装置本体10の上部後側にはハンドル28が設けられ、ハンドル28の前側には表示部22が設けられている。装置本体10の上部前側には撮像部21が設けられ、撮像部21の下方の窪みには障害物センサ26が設けられている。
【0024】
図2に示すように、清掃装置1の装置本体10には、走行部11、清掃部15、無線通信部19、撮像部21、表示部22、計測部25、操作部27、記憶部50、電源部29、制御部30が設けられている。走行部11は、上記した前輪12、後輪13、走行モータ(不図示)、エンコーダ(不図示)等によって構成されている。走行部11は、走行モータによって前輪12を駆動させて清掃装置1を走行させている。なお、本実施形態には前輪駆動の清掃装置1を例示しているが、走行部11によって後輪13だけが駆動されてもよいし、走行部11によって両輪が駆動されてもよい。
【0025】
清掃部15は、例えば、湿式清掃によって床面Fを清掃するものであり、上記した清掃部材16及びスキージ17、洗浄モータ(不図示)、アクチュエータ(不図示)、洗浄液供給部(不図示)、汚水回収部(不図示)等によって構成されている。清掃部15は、アクチュエータによって清掃部材16を床面Fに押し付けて、清掃モータによって床面Fに対して清掃部材16を回転させている。このとき、洗浄液供給部によって洗浄液タンクから床面Fに洗浄液が散布されて、スキージ17に集められた汚水が汚水回収部によって汚水タンクに回収される。
【0026】
無線通信部19は、装置本体10と管理端末(不図示)を無線通信によって接続している。例えば、装置本体10と管理端末はWiFi(登録商標)等の無線LANによって接続されている。撮像部21は、床面Fを撮像可能なドーム型カメラである。撮像部21には旋回機構及び高さ調節機構が設けられており、床面Fの死角を無くして撮像部21を中心にして全方位が撮像される。これにより、清掃装置1の走行方向に関わらずに対象物を撮像することができる。なお、撮像部21は、パノラマ画像が撮像可能な全天球カメラでもよいし、清掃装置1の前方を撮像可能な固定カメラでもよい。
【0027】
表示部22は、タッチパネル式の表示画面を有している。表示部22の表示画面には撮像部21に撮像された撮像画像が表示されると共に、清掃装置1に対するオペレータの操作を受け付ける操作画面が表示される。操作画面によって清掃装置1の動作モードが選択され、清掃装置1に対して各種設定が入力される。なお、表示部22としては、装置本体10に対して着脱可能なタブレット型端末やスマートフォン等の携帯端末が用いることもできる。表示部22として携帯端末が用いられた場合には、無線通信部19の代わりに携帯機器の無線通信機能が用いられてもよい。
【0028】
計測部25は、上記した障害物センサ26を備えている。障害物センサ26は、例えば、障害物や壁面からの距離及び角度を計測するLRF(Laser Range Finder)によって構成されている。障害物センサ26から周囲にレーザー光が出射され、物体からの反射光を受光することで周辺の障害物センサ26から障害物までの距離及び角度が計測されて、清掃装置1の周辺環境を認識することが可能になっている。また、障害物センサ26は、レーザー光を用いた障害物検出の代わりに、周辺環境の撮像画像を用いた障害物検出を実施可能に構成されてもよい。
【0029】
操作部27は、オペレータの手動操作を受け付けており、上記したハンドル28(
図1参照)、スロットル等によって構成されている。操作部27は、ハンドル28の操舵量やスロットルの捻り量を電気信号に変換して、装置本体10の走行モータの制御基板に出力して走行モータを駆動させる。操作部27の操作によって、装置本体10の走行速度の調整、左旋回、右旋回が実施される。また、装置本体10の操作部27付近には、電源のON/OFFを行う電源スイッチ(不図示)と、装置本体10の動作を全停止させる緊急停止スイッチ(不図示)が設けられている。
【0030】
記憶部50は、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成されている。ROMには、例えば、清掃装置1を制御するためのプログラムが記憶されている。HDDやフラッシュメモリには、例えば、自律走行の走行経路、走行速度、洗浄液の散布量、清掃部材16の接触圧等が設定された清掃プラン(作業プラン)や、その他のパラメータが記憶されている。電源部29は、バッテリ(不図示)及び充電回路等によって構成されている。電源部29から装置各部に電力が供給されている。
【0031】
制御部30は、装置各部を統括制御している。制御部30の各種処理は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサが記憶部50に記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)が使用される。なお、制御部30及び記憶部50の制御ブロックの詳細については後述する。
【0032】
このような清掃装置1には、清掃装置1に清掃プランをティーチングする学習モード、清掃装置1に清掃プランを再現させる再現モードが用意されている。学習モードでは、オペレータが清掃装置1を手動操作して、清掃装置1に清掃エリア(作業エリア)を覚え込ませている。再現モードでは、清掃装置1が清掃エリア内を自律走行しながら清掃する。しかしながら、学習モードで清掃エリアを設定するためには、清掃エリア全域を清掃部材16が通過するように清掃装置1を操作しなければならず、オペレータにとって煩わしい作業になっていた。
【0033】
ところで、壁や柱等の障壁と清掃装置1との衝突を避けるために、清掃装置1が壁際や四隅を安全に清掃することは難しい。通常、これらの箇所はモップ等の手動式の清掃用具60(
図4参照)を用いて手作業で清掃する必要がある。清掃エリアを囲むように清掃用具60が動かされるため、清掃用具60の移動軌跡が認識できれば、移動軌跡の内側を清掃エリアに設定することが可能である。そこで、本実施形態の清掃装置1には、清掃用具60に取り付けられたマーカ63(
図4参照)を認識して、マーカ移動軌跡の内側を清掃エリアに設定するエリア設定モードが用意されている。
【0034】
以下、装置本体の制御部及び記憶部の詳細構成について説明する。
図3は、本実施形態の装置本体の制御ブロック図である。なお、ここでは、主にエリア設定モードで清掃装置が動作する際の制御ブロックを示している。また、ここでは、
図1及び
図2の符号を適宜使用して説明する。
【0035】
図3に示すように、制御部30には、清掃制御部31、走行制御部32、SLAM制御部33、走行経路作成部34、環境地図作成部35が設けられている。また、制御部30には、エリア設定モードで機能する撮像画像取得部36、マーカ認識部37、マーカ探索部38、マーカ移動軌跡作成部39、清掃エリア設定部41、清掃エリア補正部42、清掃プラン作成部43が設けられている。記憶部50には、走行経路記憶部51、環境地図記憶部52、マーカ記憶部53、マーカ探索設定記憶部54、マーカ移動軌跡記憶部55、清掃エリア記憶部56、清掃プラン記憶部57、装置設定記憶部58が設けられている。
【0036】
清掃制御部31は、オペレータの手動操作に従った清掃装置1の手動清掃、又は清掃プランに従った清掃装置1の自動清掃を制御している。手動清掃及び自動清掃の制御内容には、例えば洗浄液の散布量、清掃部材16の接触圧、汚水の吸引力が含まれている。走行制御部32は、オペレータの手動操作に従った清掃装置1の手動走行、又は清掃プランに従った清掃装置1の自律走行を制御している。手動走行及び自律走行の制御内容には、例えば走行速度が含まれている。さらに、自律走行の制御内容には、清掃エリアに設定された走行経路が含まれている。
【0037】
SLAM制御部33は、手動操作中にリアルタイムでSLAM(Simultaneous Localization Mapping)を実行して、計測部25に計測された清掃装置1の周囲の障害物からの距離及び角度に基づいて、清掃装置1の自己位置を推定すると共に局所地図を作成する。走行経路作成部34は、手動操作中に時系列に並んだ複数の自己位置を繋ぎ合わせて清掃装置1の走行経路を作成する。環境地図作成部35は、手動操作中に時系列に並んだ複数の局所地図を繋ぎ合わせて環境地図を作成する。走行経路は走行経路記憶部51に記憶され、環境地図は環境地図記憶部52に記憶される。なお、環境地図の作成中に得られた走行経路は、後述するエリア設定モードでは使用されない。
【0038】
清掃装置1のエリア設定モードは、環境地図が作成された状態で有効になる。環境地図記憶部52に環境地図が記憶されていない場合、表示部22等によってオペレータに対して環境地図の作成が促される。オペレータによってエリア設定モードが選択されると、撮像部21によって周囲の床面Fが撮像されて撮像部21から撮像画像取得部36に撮像画像が定期的に出力される。撮像画像取得部(取得部)36は、エリア設定モード中に床面Fを撮像した撮像部21から撮像画像を定期的に取得する。なお、撮像画像取得部36は、オペレータの操作に応じて撮像画像を取得してもよい。また、撮像画像は表示部22の表示画面にリアルタイムで表示されてもよい。
【0039】
マーカ認識部(認識部)37は、エリア設定モード中に撮像画像から床面F上に存在するマーカ63(
図4参照)を認識する。撮像画像に対して各種画像処理やパターンマッチング処理が施されることで撮像画像内のマーカ63が認識される。このとき、撮像部21の高さと向きが装置本体10に固定されている場合は、撮像画像のフレーム内のマーカ位置を認識することで、撮像部21に対するマーカ63の距離と角度が求められる。求めたマーカ63の距離と角度を清掃装置1の自己位置に加えることで、マーカ位置が環境地図に反映される。
【0040】
一方、見回り機能を兼ねて撮像部21が駆動(パン、チルト、ロール)する場合は、撮像画像の特徴点と環境地図の特徴点とを関連付けることで、マーカ位置が環境地図に反映されてもよい。マーカ認識部37は、環境地図記憶部52から環境地図を読み出し、環境地図の特徴点と撮像画像の特徴点を照合している。例えば、撮像画像中の障壁の隅等を特徴点とし、環境地図中の同じ特徴点とを関連付けることで、環境地図に撮像画像が関連付けられて、撮像画像系(カメラ座標系)のマーカ位置から環境地図の座標系のマーカ位置に変換されることで、撮像画像から求めたマーカ位置が環境地図に反映される。
【0041】
その他、マーカ63の実際の大きさと撮像画像に写されたマーカ63の大きさの違い等から、撮像部21からマーカ63までの距離が測定されてもよい。これにより、マーカ認識部37によって撮像座標系(カメラ座標系)におけるマーカ位置(座標)が認識される。さらに、撮像部21にステレオカメラを用いて、ステレオカメラの視差情報からマーカ位置が認識されてもよい。マーカ認識部37によって撮像座標系(カメラ座標系)におけるマーカ位置(座標)が認識されると、前述のように撮像画像の特徴点と環境地図の特徴点とを関連付けることで、撮像画像系(カメラ座標系)のマーカ位置が環境地図の座標系のマーカ位置に変換され、撮像画像から求めたマーカ位置が環境地図に反映される。
【0042】
撮像画像取得部36によって撮像部21から撮像画像が取得される度に、マーカ認識部37によって撮像画像に対してマーカ認識処理が実施される。複数の撮像画像からマーカ位置が認識されて、環境地図に複数のマーカ位置が反映される。
【0043】
本実施形態では、マーカ63は、モップ等の清掃用具(作業具)60に取り付けられている。マーカ63としては、可視光や赤外光の光源、モーションキャプチャー用の反射マーカ、事前登録された物体や模様等の特徴形状が用いられる。撮像画像に対して各種画像処理やパターンマッチング処理が施されることでマーカ63が認識される。なお、物体や模様の特徴形状をマーカ63として使用する場合には、当該特徴形状がテンプレート画像としてマーカ記憶部(記憶部)53に事前に登録されている。また、マーカ記憶部53には、マーカ63の距離測定用にマーカ63の実際の大きさが記憶されている。
【0044】
マーカ探索部38は、エリア設定モード中にマーカ認識部37によって撮像画像にマーカ63が認識されない場合に、撮像部21を昇降駆動及び旋回駆動させて床面F上のマーカ63を探索する。撮像部21が駆動されてもマーカ63が認識されない場合には、マーカ探索部38が清掃装置1の自律走行を制御して床面F上のマーカ63を探索する。自律走行によるマーカ探索時の走行速度は、事前にマーカ探索設定記憶部54に記憶されている。また、自律走行によるマーカ探索時には、壁や柱等の障壁に清掃装置1が衝突しないように、障壁からの距離が十分に確保されている。
【0045】
マーカ移動軌跡作成部39は、エリア設定モード中に時系列に連続した撮像画像からマーカ移動軌跡を作成する。上記したように、環境地図に複数のマーカ位置が反映されているため、複数のマーカ位置が繋ぎ合わされることで環境地図にマーカ移動軌跡が作成される。清掃用具60が小刻みに動かされると、清掃用具60に取り付けられたマーカ63が細かく移動する。このため、マーカ移動軌跡作成部39は、複数のマーカ位置の移動平均から近似曲線を求めてマーカ移動軌跡にしている。マーカ移動軌跡は、マーカ移動軌跡記憶部55に記憶される。
【0046】
エリア設定モード中にオペレータの陰にマーカ63が隠れると、撮像部21に撮像された撮像画像にマーカ63が含まれなくなる。このため、マーカ移動軌跡作成部39によって作成されたマーカ移動軌跡が途切れて断続的になる。この場合には、マーカ移動軌跡の途切れた箇所を繋ぐようにマーカ移動軌跡が補完されてもよい。マーカ移動軌跡が閉領域を形成しない場合には、マーカ移動軌跡の始点と終点が繋がれて閉領域になるようにマーカ移動軌跡が補完されてもよい。さらに、マーカ移動軌跡は、環境地図の障壁の壁面に平行になるように周囲の形状に沿って作成されてもよい。
【0047】
清掃エリア設定部(設定部)41は、エリア設定モード中に環境地図上のマーカ移動軌跡の内側を清掃エリアに設定する。マーカ移動軌跡に全体的又は部分的に囲まれた閉領域が自動的に清掃エリアに設定される。清掃エリア補正部(補正部)42は、障壁からの距離が安全距離以上になるように清掃エリアの外周を補正する。清掃エリア補正部42によって装置設定記憶部58から安全距離が読み出されて、障壁から清掃エリアの外周までの距離が安全距離未満のときに清掃エリアの外周がオフセットされる。なお、障壁から清掃エリアの外周までの距離は環境地図から求められる。
【0048】
また、清掃エリア設定部41は、オペレータの操作に応じて、エリア設定モード中に環境地図上のマーカ移動軌跡の内側を非清掃エリア(非作業エリア)に設定可能である。例えば、マーカ移動軌跡の内側に障害物が存在する場合に、障害物と清掃装置1の衝突を回避するようにマーカ移動軌跡の内側が非清掃エリアに設定される。さらに、清掃エリア設定部41は、複数の清掃エリアを組み合わせて新たな清掃エリアを設定可能であり、清掃エリアと非清掃エリアを組み合わせて新たな清掃エリアを設定可能である。清掃エリア及び非清掃エリアは、清掃エリア記憶部56に記憶される。
【0049】
清掃プラン作成部(決定部)43は、往復走行を繰り返して清掃エリア全域を清掃装置1が通過するような走行経路を決定する。清掃エリアに走行経路の開始地点及び終了地点が設定されると、開始地点から終了地点に向かって、往復走行を繰り返して清掃エリア全域を清掃部材16で通過するようにジグザグ状の走行経路が決定される。走行経路の往復方向は、例えば清掃エリアの長手方向になるように設定され、この往復方向の直線経路の間隔は清掃部材16の通過面がオーバラップするように設定される。清掃部材16の幅寸法は、装置設定として装置設定記憶部58に記憶されている。
【0050】
なお、走行経路の開始地点及び終了地点は自動的に設定されてもよいし、オペレータによって手動で設定されてもよい。また、開始地点及び終了地点のいずれか一方の地点が設定されたときに、いずれか一方の地点に対していずれか他方の地点が対称的な位置に自動的に設定されてもよい。走行経路の開始地点から終了地点までの各地点の洗浄液の散布量、清掃部材16の接触圧、汚水の吸引力、走行速度等の清掃条件がオペレータによって設定されて清掃プランが作成される。なお、装置設定記憶部58に記憶された清掃条件が走行経路に自動的に反映されてもよい。清掃プラン記憶部57には複数の清掃プランが記憶され、清掃プランを適宜選択することができる。
【0051】
ここで、
図4から
図7を参照して、清掃エリアの第1の設定例について説明する。第1の設定例は、清掃装置が停止された状態で環境地図に清掃エリアを設定する一例である。以下の説明では、事前に環境地図が作成されているものとして説明する。
図4は、本実施形態の清掃用具の一例を示す図である。
図5は、本実施形態の第1の設定例のフローチャートである。
図6は、本実施形態の撮像画像の一例を示す図である。
図7は本実施形態の第1の設定例の遷移図であり、(A)は初期状態、(B)はマーカ移動軌跡の作成状態、(C)は清掃エリアの設定状態、(D)は走行経路の設定状態を示している。ここでは、
図1から
図3の符号を適宜使用して説明する。
【0052】
図4に示すように、本実施形態では、清掃装置1で清掃できない壁際等をオペレータOPが清掃用具60を用いて清掃する。清掃用具60は、ハンドル柄61の先端に自在継手を介してヘッド62が連結されて構成されている。ヘッド62は平面視長方形状に形成されており、ヘッド62の下面全域には拭取部材(不図示)が取り付けられ、ヘッド62の上面の長手方向の両端にマーカ63として一対のLED(Light Emitting Diode)光源が取り付けられている。オペレータOPが清掃用具60を用いて清掃することによって、マーカ63によって壁際に沿ったマーカ移動軌跡が描かれる。
【0053】
図5に示すように、環境地
図M(
図7(A)参照)が作成された状態で、オペレータOPによってエリア設定モードが選択されると(ステップS01)、撮像画像取得部36によって撮像部21から床面Fの撮像画像が取得される(ステップS02)。例えば、撮像画像には清掃用具60を用いて清掃中のオペレータOPが含まれている(
図6参照)。次に、マーカ認識部37によって撮像画像に対してマーカ認識処理が実施される(ステップS03)。本実施形態では、清掃用具60のヘッド62に一対のマーカ63が設けられているため、一対のマーカ63の少なくとも一方が認識される。
【0054】
撮像画像からマーカ63が認識されない場合(ステップS03でNo)、マーカ探索部38によってマーカ探索処理が実施される(ステップS04)。上記したように、マーカ探索処理では、撮像部21が昇降駆動及び旋回駆動されて床面F上のマーカ63が探索される。所定時間以内にマーカ63が発見された場合(ステップS05でYes)、ステップS02に戻って撮像画像取得部36によって撮像部21から撮像画像が取得される。所定時間以内にマーカ63が発見されない場合(ステップS05でNo)、オペレータOPが清掃を終えて清掃場所から離れたと判断されてマーカ認識処理が停止される。
【0055】
撮像画像からマーカ63が認識された場合(ステップS03でYes)、撮像画像系におけるマーカ位置が求められる。そして、環境地
図Mの特徴点と撮像画像の特徴点が照合されて、環境地
図Mの座標系に清掃装置1の自己位置P1とマーカ位置P2が反映される(
図7(A)参照)。オペレータOPにマーカ認識処理の停止操作が実施されない場合(ステップS06でNo)、ステップS02からステップS05までの処理が繰り返される。オペレータOPに停止操作が実施されると(ステップS06でYes)、清掃用具60を用いた清掃が終わったとしてマーカ認識処理が停止される。
【0056】
マーカ認識処理の停止後に、マーカ移動軌跡作成部39によって移動軌跡作成処理が実施される(ステップS07)。移動軌跡作成処理では、環境地
図Mの複数のマーカ位置P2が繋ぎ合わされてマーカ移動軌跡71が作成される(
図7(B)参照)。清掃用具60に一対のマーカ63が設けられているため、一対のマーカ63のいずれか一方のマーカ移動軌跡71が作成されてもよいし、一対のマーカ63の中間位置が通るマーカ移動軌跡71が作成されてもよい。マーカ移動軌跡71に途切れた箇所等がある場合には、閉領域になるようにマーカ移動軌跡71が適宜補完される。
【0057】
次に、清掃エリア設定部41によってエリア設定処理が実施される(ステップS08)。エリア設定処理では、マーカ移動軌跡71の内側に清掃エリア72が設定される。マーカ移動軌跡71が閉領域にならない場合には清掃エリア72は設定されない。次に、清掃エリア補正部42によってエリア補正処理が実施される(ステップS09)。エリア補正処理では、環境地
図Mの障壁から清掃エリア72の外周までの距離が安全距離以上になるように補正される。本実施形態では清掃エリア72の外周が全周にわたって補正される(
図7(C)参照)。
【0058】
次に、清掃プラン作成部43によってプラン作成処理が実施される(ステップS10)。プラン作成処理では、清掃エリア72に走行経路75の開始地点76と終了地点77が設定され、開始地点76から終了地点77に向かうジグザグ状の走行経路75が決定される(
図7(D)参照)。また、走行経路75の各地点に清掃動作の清掃条件が設定されて清掃プランが作成される。そして、オペレータOPの指示によって、清掃プランに従って清掃装置1が駆動されて清掃エリア72に対する清掃動作が実施される(ステップS11)。オペレータOPによって終了操作が実施されるまで、清掃装置1による清掃動作が継続される(ステップS12)。
【0059】
以上のように、第1の設定例では、清掃用具60を用いて床面Fを清掃している間に、清掃装置1によって清掃エリア72が自動的に設定される。これにより、オペレータOPの作業負担を減らしつつ、容易に清掃エリア72を設定することができる。
【0060】
図8及び
図9を参照して、清掃エリアの第2の設定例について説明する。第2の設定例は、清掃装置が清掃エリアを清掃している間に、バックグラウンドで環境地図に他の清掃エリアを設定する一例である。以下の説明では、事前に環境地図が作成されているものとして説明する。
図8は、本実施形態の第2の設定例のフローチャートである。
図9は本実施形態の第2の設定例の遷移図であり、(A)は初期状態、(B)はマーカ移動軌跡の作成状態、(C)は清掃エリアの設定状態、(D)は走行経路の設定状態を示している。ここでは、
図1から
図4の符号を適宜使用して説明する。また、第1の設定例と同様な処理については省略して説明する。
【0061】
図8に示すように、環境地
図M(
図9A参照)が作成された状態で、オペレータOPによってエリア設定モードが選択されると(ステップS21)、清掃装置1によって清掃エリア82に対する清掃動作が実施される(ステップS22)。清掃エリア82に対する清掃動作に並行して、バックグラウンドで清掃装置1によって他の清掃エリア83の設定処理が実施される。他の清掃エリア83の設定処理では、撮像画像取得部36によって撮像部21から床面Fの撮像画像が取得される(ステップS23)。すなわち、清掃装置1の自律走行中に撮像部21によって清掃中のオペレータOPが撮像される。
【0062】
次に、清掃装置1の自律走行中にマーカ認識部37によってマーカ認識処理が実施される(ステップS24)。マーカ認識処理では、撮像画像系におけるマーカ位置が求められ、清掃装置1の自己位置P1を基準にして環境地
図Mの座標系にマーカ位置P2が反映される(
図9(A)参照)。なお、第2の設定例は清掃装置1の清掃動作中に実施されるため、マーカ認識部37によってマーカ63が認識されなくてもマーカ63の探索処理は実施されない。清掃装置1の清掃動作が終了して、オペレータOPに停止操作が実施されると(ステップS25でYes)、清掃用具60を用いた清掃が終わったとしてマーカ認識処理が停止される。
【0063】
次に、マーカ移動軌跡作成部39によって移動軌跡作成処理が実施される(ステップS26)。移動軌跡作成処理では、環境地
図Mの複数のマーカ位置P2が繋ぎ合わされてマーカ移動軌跡81が作成される(
図9(B)参照)。このとき、マーカ移動軌跡81の始点と終点が繋がっていないが、始点と終点が繋がれてマーカ移動軌跡81が補完される。次に、清掃エリア設定部41によってエリア設定処理が実施される(ステップS27)。エリア設定処理では、マーカ移動軌跡81の内側に障害物Cを避けるように他の清掃エリア83が設定される。清掃エリア補正部42によってエリア補正処理が実施される(ステップS28)。エリア補正処理では、環境地
図Mの障壁から他の清掃エリア83の外周までの距離が安全距離以上になるように補正される(
図9(C)参照)。
【0064】
次に、清掃プラン作成部43によってプラン作成処理が実施される(ステップS29)。プラン作成処理では、開始地点86から終了地点87に向かうジグザグ状の走行経路85が決定され、走行経路85の各地点に清掃動作の清掃条件が設定されて清掃プランが作成される(
図9(D)参照)。そして、オペレータOPの指示によって、清掃プランに従って清掃装置1が駆動されて他の清掃エリア83に対する清掃動作が実施される(ステップS30)。オペレータOPによって終了操作が実施されるまで、清掃装置1による清掃動作が継続される(ステップS31)。
【0065】
以上のように、第2の設定例では、清掃装置1が自律走行中にマーカ認識部37によってマーカ63が認識される。これにより、清掃装置1による清掃エリア82の清掃動作に並行して、他の清掃エリア83を追加して作業効率が向上される。また、環境地
図Mに清掃エリア82、83が設定されることで、床面Fに段ボール等の障害物Cが存在する場合や、部分的な汚れが存在する場合にも、エリア毎に適切な清掃プランを作成することができる。
【0066】
図10を参照して、清掃エリアの第3の設定例について説明する。第3の設定例は、清掃エリアと非清掃エリアを組み合わせて新たな清掃エリアを再設定する一例である。以下の説明では、事前に環境地図が作成されているものとして説明する。
図10は本実施形態の第3の設定例の遷移図であり、(A)は初期状態、(B)はマーカ移動軌跡の作成状態、(C)は清掃エリアの設定状態、(D)は走行経路の設定状態を示している。ここでは、
図1から
図4の符号を適宜使用して説明する。また、第1の設定例と同様な処理については省略して説明する。
【0067】
図10(A)に示すように、第3の設定例では、第1の設定例と同様な処理を実施することで、環境地
図Mに清掃エリア92が設定されている。オペレータが清掃用具60を用いて壁際を清掃しているため、清掃エリア92が環境地
図Mの障壁に沿った長方形状に形成される。床面F上に段ボール等の障害物Cが置かれていると、障害物Cに清掃装置1が干渉して清掃エリア92の清掃作業が障害物Cによって阻害される。清掃エリア92から障害物Cの設置エリアが除かれるまでは、清掃エリア92の清掃動作を清掃装置1に実施させることができない。
【0068】
図10(B)に示すように、清掃エリア92から障害物Cを除くために、清掃エリア92の内側に障害物Cを含む非清掃エリア93が設定される。この場合、清掃エリア92から障害物Cの設置エリアを切り離すようにオペレータOPによって清掃用具60が移動される。清掃装置1によって清掃用具60のマーカ移動軌跡91が作成されて、マーカ移動軌跡91と清掃エリア92の縦横の2辺(清掃エリア92のマーカ移動軌跡)によって三角形の閉領域が形成される。この閉領域にはオペレータの操作によって非清掃エリア93が設定される。これにより、
図10Cに示すように、清掃エリア92から非清掃エリア93を除いた新たな清掃エリア94が再設定される。
【0069】
図10(D)に示すように、新たな清掃エリア94に対して開始地点96から終了地点97に向かうジグザグ状の走行経路95が再決定される。また、走行経路95の各地点に対して清掃動作の清掃条件が設定されて清掃プランが再作成される。そして、清掃プランに従って清掃装置1が駆動されて、新たな清掃エリア94に対する清掃動作が実施される。なお、第3の設定処理では、清掃エリア92と非清掃エリア93を組み合わされて新たな清掃エリア94が再設定されたが、複数の清掃エリアが組み合わされて新たな清掃エリアが再設定されてもよい。
【0070】
以上、第3の設定処理では、清掃エリア92と非清掃エリア93の組み合わせによって、障害物Cを避けた新たな清掃エリア94が再設定される。よって、自律走行中の清掃装置1が障害物Cに衝突することが抑えられる。
【0071】
図11を参照して、清掃エリアの第4の設定例について説明する。第4の設定例は、環境地図に複数の清掃エリアを設定して、清掃エリア毎に清掃プランを設定する一例である。以下の説明では、事前に環境地図が作成されているものとして説明する。
図11は本実施形態の第4の設定例の遷移図であり、(A)は初期状態、(B)はマーカ移動軌跡の作成状態、(C)は清掃エリアの設定状態、(D)は走行経路の設定状態を示している。ここでは、
図1から
図4の符号を適宜使用して説明する。また、第1の設定例と同様な処理については省略して説明する。
【0072】
図11(A)に示すように、第4の設定例では、第1の設定例と同様な処理を実施することで、環境地
図Mの略半部に清掃エリア102が設定されている。清掃エリア102には既に清掃プランが作成されている。清掃エリア102の隣には、汚れの激しいエリア104が存在している。このエリア104を清掃装置1によって清掃する必要があるが、清掃エリア102と同じ清掃条件ではエリア104の汚れを十分に落とすことが難しい。このため、エリア104に対しては、清掃エリア102とは異なる清掃プランを作成する必要がある。
【0073】
図11(B)に示すように、清掃装置1が清掃エリア102を清掃している間に、汚れの激しいエリア104に他の清掃エリア103が設定される。オペレータOPがエリア104の汚れに気が付くと、エリア104を囲むようにオペレータOPによって清掃用具60が移動される。清掃装置1によって清掃用具60のマーカ移動軌跡101が作成されて、マーカ移動軌跡101と清掃エリア102とによって閉領域が形成される。
図11(C)に示すように、この閉領域にはオペレータOPの操作によって他の清掃エリア103が設定されて、環境地
図M上には清掃エリア102の隣に他の清掃エリア103が追加される。
【0074】
図11(D)に示すように、他の清掃エリア103に対して開始地点106から終了地点107に向かうジグザグ状の走行経路105が決定される。また、走行経路105の各地点に対して清掃動作の清掃条件が設定されて清掃プランが作成される。そして、清掃プランに従って清掃装置1が駆動されて、他の清掃エリア103に対する清掃動作が実施される。なお、第4の設定例では、清掃装置1が清掃エリア102を自律走行した状態で他の清掃エリア103が追加されたが、清掃エリア102の清掃後又は清掃前の清掃装置1が停止した状態で他の清掃エリア103が設定されてもよい。
【0075】
以上、第4の設定例では、環境地図に複数の清掃エリア102、103が設定されたときに、清掃エリア102、103の状況に適した清掃プランが適用される。よって、汚れが激しいエリア104には、汚れの清掃に適した清掃プランに従って良好に清掃される。
【0076】
以上、本実施形態によれば、床面F上でマーカ63を移動させることで、床面F上を移動中のマーカ63が撮像部21によって撮像される。時系列に連続した撮像画像からマーカ移動軌跡71が作成され、マーカ移動軌跡71の内側に清掃エリアが自動的に設定される。よって、床面F上でマーカ63を移動させるという簡易な作業で、清掃エリアを設定してオペレータの作業負担を軽減することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、自律走行作業装置として清掃作業を実施する清掃装置を例示したが、自律走行作業装置は清掃装置に限定されない。自律走行作業装置は、乾式の掃除作業、研磨作業、艶出し作業、ワックス塗布作業等の他の作業を実施する作業装置でもよい。すなわち、自律走行作業装置はロボット清掃機、ポリッシャー、バフィングマシン、ワックス塗布機でもよい。したがって、自律走行作業装置にはパッド等の洗浄部材の代わりに、掃除ブラシ、研磨ブラシ、艶出しブラシ、塗布部材が用いられてもよいし、さらに洗浄液として研磨剤や艶出し剤、コーティング剤が用いられてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、被作業面として床面を例示しているが、被作業面は壁面、天井面、窓面、鏡面等でもよい。
【0079】
また、本実施形態の清掃装置には、動作モードとして学習モード、再現モード、エリア設定モードが用意されているが、少なくとも再現モード、エリア設定モードが用意されていればよい。
【0080】
また、本実施形態では、SLAMによって環境地図が作成される構成にしたが、V-SLAMやLiDAR-SLAMによって環境地図が作成されてもよいし、オペレータによって事前に環境地図が用意されてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、作業具としてモップ等の清掃用具が例示されているが、作業具はオペレータが手持ちで作業する道具であればよい。
【0082】
また、本実施形態では、マーカとしてLED等の光源、物体や模様の特徴形状が例示されたが、レーザーポインタによって指された照射スポットがマーカとして用いられてもよい。さらにマーカとして音波、電波等の発信機を用い、撮像部の代わりに受信機を用いて減衰のレベルを把握することで、自律走行作業装置を基準としたマーカ位置(角度および距離)が特定できる。マーカ位置を環境地図の座標系に変換することで、環境地図にマーカ位置が反映される。
【0083】
また、本実施形態では、撮像部が清掃装置に設けられているが、撮像部は清掃装置とは別の場所に設けられていてもよい。例えば、撮像部が天井に設置されて、撮像部と清掃装置が無線通信を介して接続されていてもよい。
【0084】
また、上記した本実施形態及び変形例において、清掃装置にプログラムをインストールすることによって、清掃装置に清掃エリアの設定機能を持たせてオペレータの作業負担を軽減してもよい。このプログラムは記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体であってもよい。
【0085】
なお、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0086】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、自律走行式の洗浄装置等の作業エリアの自動作業に好適な産業用ロボットに有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 :清掃装置(自律走行作業装置)
21 :撮像部
22 :表示部
36 :撮像画像取得部(取得部)
37 :マーカ認識部(認識部)
39 :マーカ移動軌跡作成部(作成部)
41 :清掃エリア設定部(設定部)
42 :清掃エリア補正部(補正部)
43 :清掃プラン作成部(決定部)
52 :環境地図記憶部(記憶部)
60 :清掃用具(作業具)
63 :マーカ
71、81、91、101:マーカ移動軌跡
72、83、92、103:清掃エリア
75、85、95、105:走行経路
93 :非清掃エリア
F :床面
M :環境地図