(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026437
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】小型4輪車両
(51)【国際特許分類】
B62D 21/15 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
B62D21/15 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129911
(22)【出願日】2020-07-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】501204868
【氏名又は名称】安形 雄三
(71)【出願人】
【識別番号】520286924
【氏名又は名称】稲吉 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】安形 雄三
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BA12
3D203CA02
3D203CA25
3D203CA29
3D203CA52
3D203CB03
3D203DA13
3D203DA15
3D203DA51
3D203DB01
3D203DB10
(57)【要約】
【課題】シンプルで軽量、かつ衝撃に強い構造で、事故の際に運転者の生命を守り、損傷を抑制する小型4輪車両を提供する。
【解決手段】車両ボディに支持され、左右各1対ずつの前輪及び後輪を設けられると共に、前記車両ボディ内に、前記前輪を操舵する運転席が設けられている小型4輪車両において、前記車両ボディの内面に沿い、かつ前記運転席の周りを平面楕円形状の楕円状パイプで水平に囲んだ構造を持つ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに支持され、左右各1対ずつの前輪及び後輪を設けられると共に、前記車両ボディ内に、前記前輪を操舵する運転席が設けられている小型4輪車両において、
前記車両ボディの内面に沿い、かつ前記運転席の周りを平面楕円形状の楕円状パイプで水平に囲んだ構造を持つことを特徴とする小型4輪車両。
【請求項2】
前記運転席の後方位置であり、前記パイプの短軸に棒状パイプが設けられている。請求項1に記載の小型4輪車両。
【請求項3】
前記楕円状パイプ及び前記棒状パイプが炭素鋼鋼管で成り、外径が30mm以下、厚さが3mm以下となっている請求項2に記載の小型4輪車両。
【請求項4】
車両ボディに支持され、左右各1対ずつの前輪及び後輪を設けられると共に、前記車両ボディ内に、前記前輪を操舵する運転席が設けられている小型4輪車両において、
前記運転席の背もたれの後面に、前記背もたれよりも外形が大きな平面楕円形状の楕円状パイプが配設された構造を持つことを特徴とする小型4輪車両。
【請求項5】
前記パイプの短軸に棒状パイプが設けられている。請求項4に記載の小型4輪車両。
【請求項6】
前記楕円状パイプ及び前記棒状パイプが炭素鋼鋼管で成り、外径が30mm以下、厚さが3mm以下となっている請求項5に記載の小型4輪車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者一人が乗って運転(乗車)する小型4輪車両に関し、特に交通事故などで車両に何かが衝突する際の衝撃を効率良く吸収し、運転者を損傷や落命から守る安全機構を有する車両の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型の一人乗り自動車が実用化されつつある。また、一人乗りのドローンなども開発されつつある。これらの小型乗物は利便性を追求するため、構造はシンプルで、軽量である。そのため、何かに衝突した場合や、何かが衝突した際に車両が大きく破損し、運転者(乗員)が大けがを負うとか、落命する可能性が高いという欠点があった。特に、一人乗り自動車の場合、横方向からの衝突で、より大きな損傷を受ける可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-85502号公報
【特許文献2】特開2011-168129号公報
【特許文献3】特開2002-127969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型の一人乗り自動車として小型4輪車両があり、特開2000-85502号公報(特許文献1)には、乗降性を犠牲にせず、乗員の安定支持構造を得る小型4輪車両が開示されているが、衝突時の補強についての開示はない。
【0005】
また、特開2011-168129号公報(特許文献2)には、車両の衝撃吸収構造が開示されているが、2つの衝撃吸収体が必要であり、構造が複雑になる問題がある。
【0006】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、シンプルで軽量、かつ衝撃に強い構造で、事故の際に運転者の生命を守り、損傷を抑制する小型4輪車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、4輪車両に車両ボディに支持され、左右各1対ずつの前輪及び後輪を設けられると共に、前記車両ボディ内に、前記前輪を操舵する運転席が設けられている一人乗りの小型4輪車両に関し、本発明の上記目的は、前記車両ボディの内面に沿い、かつ前記運転席の周りを平面楕円形状の楕円状パイプで水平に囲んだ構造を持つこと、或いは前記運転席の背もたれの後面に、前記背もたれよりも外形が大きな平面楕円形状の楕円状パイプが配設された構造を持つことにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る小型4輪車両によれば、車両の前部や後部又は側部に衝撃を受けた場合、楕円形状のパイプがその衝撃を楕円形状の円周方向に逃がすため、運転者(乗員)が外力を直接受けることはなく、極めて安全性が高い。楕円状パイプは中空であるため、軽量であり、小型乗物の利便性を損なうことはない。また、楕円状パイプの短軸に補強用の棒状パイプを配設した場合、更に大きな外力を吸収することができる。このため、大きな衝撃を受けても車両は潰れることは稀で、運転者の損傷を最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る小型4輪車両の第1実施形態を示し、
図1(A)は側面構造を、
図1(B)は平面構造をそれぞれ示している。
【
図3】本発明で用いる楕円状パイプの平面図である。
【
図5】本発明に係る小型4輪車両の第2実施形態を示し、
図5(A)は側面構造を、
図5(B)は平面構造をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る小型4輪車両(一人乗り車両)は、車両ボディに支持され、左右各1対ずつの前輪及び後輪を設けられると共に、車両ボディ内に、前輪を操舵する運転席が設けられている。運転席に乗車した運転者はハンドルで操舵して、車両を運転する。本発明では運転席の周りに水平に楕円状パイプを配設すること、或いは運転席の背もたれの後面に楕円状パイプを配設することによって、衝突等による車両の衝撃に対する安全性を高めている。また、楕円状パイプの短軸に補強用の棒状パイプを取り付けることにより、一層の効果を上げることができる。楕円状パイプは中空の円筒形構造をしており、軽量であるが、加えられた衝撃力を円周方向に逃がすため、変形しにくいと言う形状的な特性を持つ。
【0011】
図1は本発明の第1実施形態を示しており、車両ボディ10の下方前部には、前輪車軸22を介して左右前輪20FL及び20FRが設けられており、下方後部には、後輪車軸23を介して左右後輪21RL及び21RRが設けられている。車両ボディ10と一体のフレーム11には制御機器収納部12が設けられると共に、車両後方にも制御機器収納部13が設けられている。また、車両中央部には、運転者が座って運転するための運転席30が設けられており、運転席30は座席31と背もたれ32で構成され、運転者はハンドル40で操舵装置41を介して車両を操舵する。
【0012】
そして、本発明では、車両ボディ10内の内面に沿って、運転席30の周りに水平に、平面楕円形状の楕円状パイプ100を配設している。楕円形パイプ100は、車両ボディ10やフレーム11などの構造物に、溶接等の公知の取り付け手段によって取り付けられている。また、運転席30の後方位置で、楕円状パイプ100の短軸に補強用の棒状パイプ110を溶接等、公知の連結手段で連結している。この場合、楕円状パイプ100が、運転者の乗降を妨げないことが必要であるが、ハンドル40をフロントガラス方向に折り曲げ、運転席30背もたれ32をリクライニングさせ、水平方向に90度回転しながら足を楕円状パイプ100の上まで持ち上げる機構を取り付けることにより、容易な乗降が可能となる。
【0013】
楕円状パイプ100には、車両(乗用車)の構造用として規格化され、実績のある炭素鋼鋼管が適している。重さ600Kgの車両が、時速40Km/hで壁に激突して0.1秒で止まった場合、衝撃力は、66,000Nであるが、耐力の最も大きいSTAM540H鋼管を使用した場合、耐力は480N/mm2であり、パイプ外径をDとし、厚さをtとすると、衝撃力を上回るためには、下記数1の関係でなければならない。
(数1)
66,000<480(D-t)t×3.14
更に鋼材としての安全係数を“2”とすると、外径Dと厚さtの関係は、
(数2)
87.6<(D-t)t
が必要となる。例えば、外径D=30mmの時、厚さt=3.3mmである。楕円状パイプ100の全長を7mとすると、重量は約15kgである。
【0014】
この炭素鋼鋼管を楕円形に加工し、補強用の棒状パイプ110を取り付けた場合、安全係数を5倍程度確保することは可能である。従って、楕円状パイプ100及び棒状パイプ110の外径Dと厚さtは、下記数3を満たすもので良い。
(数3)
87.6<(D-t)t
楕円は、数学的には
図2に示すように長軸径a,短軸径bとして、“x
2/a
2+y
2/b
2=1”で表わされる形状であるが、本発明における楕円状パイプ100は数学的な楕円形のみではなく、もっと緩やかな形状も含むものである。即ち、
図3に示すように長軸Lの部分が平行で、前端部102及び後端部101が円弧ないし湾曲した形状であれば良い。長軸Lの部分は車両ボディ10の内面に沿った形状であり、円弧の曲率も任意である。
【0015】
また、楕円状パイプ100及び棒状パイプ110の断面形状は
図4であり、全体が中空であり、外径D(=r2×2)は30mm以下、厚さt(=r2-r1)は3mm以下となっている。
【0016】
図5は、本発明の第2実施形態を
図1に対応させて示しており、本実施形態では、運転席30の背もたれ31の後面に、背もたれ31よりも外形が大きな楕円状パイプ120を上下に傾斜させて配設している。楕円状パイプ120は、車両ボディ10やフレーム11などの構造物に、溶接等の公知の取り付け手段によって取り付けられている。楕円状パイプ120の上部は車両ボディ10の天井で固定され、下部はフレーム11に固定されている。また、楕円状パイプ120には、楕円の短軸に補強用の棒状パイプ130が水平に取り付けられており、棒状パイプ130を取り付けることにより、一層の耐衝撃効果がある。
【0017】
この場合は、楕円状パイプ120が運転者の乗降を妨げることはない。
【0018】
なお、上述では運転者(乗員)がハンドルで操舵する車両について説明したが、自動運転車両についても同様に適用可能である。また、上述した第1実施形態と第2実施形態を組み合わせて、より高い安全性を求めることも可能である。
【符号の説明】
【0019】
10 車両ボディ
11 フレーム
12、13 制御機器収納部
20FR,20FL 前輪
21RR,21RR 後輪
22 前輪車軸
23 後輪車軸
30 運転席
31 座席シート
32 背もたれ
40 ハンドル
41 操舵装置
【手続補正書】
【提出日】2020-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに支持されて左右各1対ずつの前輪及び後輪を設けられると共に、前記車両ボディ内に、前記前輪を操舵する運転席が設けられている小型4輪車両において、
前記車両ボディの内面に沿い、かつ前記運転席の周りを平面楕円形状の楕円状パイプで水平に囲んだ構造を持つことを特徴とする小型4輪車両。
【請求項2】
前記運転席の後方位置であり、前記パイプの短軸に棒状パイプが設けられている請求項1に記載の小型4輪車両。
【請求項3】
前記楕円状パイプ及び前記棒状パイプが炭素鋼鋼管で成り、外径が30mm以下、厚さが3mm以下となっている請求項2に記載の小型4輪車両。
【請求項4】
車両ボディに支持されて左右各1対ずつの前輪及び後輪を設けられると共に、前記車両ボディ内に、前記前輪を操舵する運転席が設けられている小型4輪車両において、
前記車両ボディの内面に沿い、かつ前記運転席の周りを平面楕円形状の第1の楕円状パイプで水平に囲んだ構造を持つと共に、
前記運転席の背もたれの後面に、前記背もたれよりも外形が大きな平面楕円形状の第2の楕円状パイプが配設された構造を持つことを特徴とする小型4輪車両。
【請求項5】
前記第2の楕円状パイプの短軸に棒状パイプが設けられている請求項4に記載の小型4輪車両。
【請求項6】
前記第2の楕円状パイプ及び前記棒状パイプが炭素鋼鋼管で成り、外径が30mm以下、厚さが3mm以下となっている請求項5に記載の小型4輪車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、4輪車両に車両ボディに支持されて左右各1対ずつの前輪及び後輪を設けられると共に、前記車両ボディ内に、前記前輪を操舵する運転席が設けられている一人乗りの小型4輪車両に関し、本発明の上記目的は、前記車両ボディの内面に沿い、かつ前記運転席の周りを平面楕円形状の楕円状パイプで水平に囲んだ構造を持つこと、或いは前記車両ボディの内面に沿い、かつ前記運転席の周りを平面楕円形状の第1の楕円状パイプで水平に囲んだ構造を持つと共に、前記運転席の背もたれの後面に、前記背もたれよりも外形が大きな平面楕円形状の第2の楕円状パイプが配設された構造を持つことにより達成される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
この炭素鋼鋼管を楕円形に加工し、補強用の棒状パイプ110を取り付けた場合、安全係数を5倍程度確保することは可能である。従って、楕円状パイプ100及び棒状パイプ110の外径Dと厚さtは、下記数3を満たすもので良い。
(数3)
87.6<(D-t)t
楕円は、数学的には
図2に示すように長軸径a,短軸径bとして、“x
2/a
2+y
2/b
2=1”で表わされる形状であるが、本発明における楕円状パイプ100は数学的な
楕円のみではなく、もっと緩やかな形状も含むものである。即ち、
図3に示すように長軸Lの部分が平行で、前端部102及び後端部101が円弧ないし湾曲した形状であれば良い。長軸Lの部分は車両ボディ10の内面に沿った形状であり、円弧の曲率も任意である。