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  • 特開-内面研削盤用砥石カバー装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026465
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】内面研削盤用砥石カバー装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/04 20060101AFI20220203BHJP
   B24B 5/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B24B55/04 A
B24B5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129951
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】加尾 卓也
(72)【発明者】
【氏名】西本 卓史
【テーマコード(参考)】
3C043
3C047
【Fターム(参考)】
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD06
3C047FF02
3C047FF15
(57)【要約】
【課題】砥石破損時の飛散エネルギーを吸収することが可能であり、これにより、段取り換え中の破損による砥石の飛散を防ぐことができる内面研削盤用砥石カバー装置を提供する。
【解決手段】 内面研削盤用砥石カバー装置10は、先端部に砥石カバー16が取り付けられたアーム15と、アーム15の基端部をアーム旋回用ピン32を介して支持するアーム支え14と、アーム15を旋回させるためのアーム旋回機構とを備えている。変形量が他の部品よりも大きく砥石破損時の作業者側方向の飛散エネルギーを吸収する要素として、アーム支え14を固定するアーム支え取付けボルト30を有している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する主軸を支持する主軸台と、主軸台に対向するように配置されてワークの内面を研削する砥石を回転させる内面研削軸と、主軸台および内面研削軸を覆う全体カバーとを備えている内面研削盤に設けられて、砥石を覆う砥石カバー装置であって、
先端部に砥石カバーが取り付けられたアームと、アームの基端部をアーム旋回用ピンを介して支持するアーム支えと、アームを旋回させるためのアーム旋回機構とを備えており、
変形量が他の部品よりも大きく砥石破損時の作業者側方向の飛散エネルギーを吸収する要素として、アーム支えを固定するアーム支え取付けボルトを有していることを特徴とする内面研削盤用砥石カバー装置。
【請求項2】
変形量が他の部品よりも大きく砥石破損時の砥石カバー開方向の飛散エネルギーを吸収する要素として、シリンダの底壁と頂壁とを連結する複数本の固定ロッドを有していることを特徴とする請求項1に記載の内面研削盤用砥石カバー装置。
【請求項3】
アーム旋回機構の駆動力は、砥石破損時の砥石カバー開方向の飛散エネルギーによって砥石カバーが開くことを防ぐ大きさとされていることを特徴とする請求項1または2に記載の内面研削盤用砥石カバー装置。
【請求項4】
アーム旋回機構は、油圧シリンダを有しており、油圧シリンダのシリンダロッドの先端部とアームの基端部とは、アーム旋回用ピンから所要方向に離れた位置に配されたアーム-シリンダロッド相対移動用ピンを介して結合されており、油圧シリンダの基端部は、シリンダ旋回用ピンを介してシリンダ支えに支持されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の内面研削盤用砥石カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内面研削盤における砥石カバー装置に関し、特に、段取り換えを行う際の作業者を保護する内面研削盤用砥石カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内面研削盤には、特許文献1に示されているように、段取り換えを行う際の作業者を保護するための砥石カバーが設けられている。このような研削盤では、砥石カバーを開位置に移動させた状態で研削を行い、研削終了時には、砥石カバーを閉位置に移動させて回転を続ける砥石を覆い、段取り換えを行う作業者が砥石に接触することを防ぐようになっている。
【0003】
図4は、従来の内面研削盤の一例を示すもので、内面研削盤(1)は、ワーク(W)を保持する主軸台(2)と、主軸台(2)に対向するように配置されて砥石(4)を回転させる内面研削軸(3)と、主軸台(2)および内面研削軸(3)を覆う全体カバー(5)と、全体カバー(5)に設けられた作業者出入り用の開口(5a)を開閉するドア(6)と、砥石(4)を覆う内面研削盤用砥石カバー装置(40)とを備えている。
【0004】
内面研削盤用砥石カバー装置(40)は、全体カバー(5)内の段取り作業空間(S)において段取り作業を行う作業者を保護するためのもので、旋回エアシリンダ(41)と、旋回エアシリンダ(41)によって旋回させられるアーム(42)と、アーム(42)先端に固定された砥石カバー(43)とを備えている。
【0005】
図4は、砥石カバー(43)が砥石(4)を覆っている閉位置にある状態を示しており、この状態から水平状になっているアーム(42)を旋回エアシリンダ(41)によって垂直状に旋回させることで、砥石カバー(43)が砥石(4)から離れた開位置に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-276032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に示す砥石カバー(43)は、ドア(6)を開いて段取り作業空間(S)に入った作業者が砥石(4)に接触することを防止するために設置されているもので、砥石(4)が破損したときに、砥石(4)の飛散を防ぐようにはなっていない。したがって、加工中の破損による砥石(4)の飛散は、全体カバー(5)によって防ぐことができるものの、段取り換え中の破損による砥石(4)の飛散を防ぐことはできない。そのため、砥石(4)の回転を安全な回転数に落としてから段取り換えを行う必要があり、砥石(4)の回転数を落とすには時間がかかるため、ワーク(W)の製作時間の増大につながるという問題があった。
【0008】
内面研削盤用砥石カバー装置(40)は、作業者が接触した際などに破損することがない強度で設計されており、言い換えると、砥石(4)の破損時の飛散エネルギーを吸収することはできないものとなっている。
【0009】
この発明の目的は、砥石破損時の飛散エネルギーを吸収することが可能であり、これにより、段取り換え中の破損による砥石の飛散を防ぐことができる内面研削盤用砥石カバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による内面研削盤用砥石カバー装置は、ワークを保持する主軸を支持する主軸台と、主軸台に対向するように配置されてワークの内面を研削する砥石を回転させる内面研削軸と、主軸台および内面研削軸を覆う全体カバーとを備えている内面研削盤に設けられて、砥石を覆う砥石カバー装置であって、先端部に砥石カバーが取り付けられたアームと、アームの基端部をアーム旋回用ピンを介して支持するアーム支えと、アームを旋回させるためのアーム旋回機構とを備えており、変形量が他の部品よりも大きく砥石破損時の作業者側方向の飛散エネルギーを吸収する要素として、アーム支えを固定するアーム支え取付けボルトを有していることを特徴とするものである。
【0011】
この発明の内面研削盤用砥石カバー装置によると、従来のものでは、作業者が接触した際などに破損することがない強度で設計されているため、砥石の破損時の飛散エネルギーを吸収することができないのに対し、強度だけでなく、変形量が考慮され、アーム支え取付けボルトの変形量が他の部品よりも大きい要素とされている。これにより、砥石破損時の作業者側方向の飛散エネルギーを吸収することができる。したがって、高速回転する砥石が破損した場合であっても、作業者側方向への砥石の飛散を防ぐことができる。
【0012】
変形量が他の部品よりも大きく砥石破損時の砥石カバー開方向の飛散エネルギーを吸収する要素として、シリンダの底壁と頂壁とを連結する複数本の固定ロッドを有していることが好ましい。固定ロッドによると、これが変形量を確保する為に必要な長さを有していることで、砥石カバー開方向の飛散エネルギーを吸収することができる。
【0013】
このようにすると、砥石破損時の砥石カバー開方向の飛散エネルギーも吸収することができる。
【0014】
アーム旋回機構の駆動力は、砥石破損時の砥石カバー開方向の飛散エネルギーによって砥石カバーが開くことを防ぐ大きさとされていることが好ましい。
【0015】
砥石破損時に砥石カバーを持ち上げようとする力が加わった際には、砥石カバーが開くおそれがあるが、アーム旋回機構の駆動力が砥石破損時の砥石カバー開方向の飛散エネルギーによって砥石カバーが開くことを防ぐ大きさとされていることで、砥石破損時に砥石カバーが開くことが確実に防止される。
【0016】
アーム旋回機構は、油圧シリンダを有しており、油圧シリンダのシリンダロッドの先端部とアームの基端部とは、アーム旋回用ピンから所要方向に離れた位置に配されたアーム-シリンダロッド相対移動用ピンを介して結合されており、油圧シリンダの基端部は、シリンダ旋回用ピンを介してシリンダ支えに支持されていることが好ましい。
【0017】
このようにすると、簡単な構造で、作業者側方向および砥石カバー開方向に砥石破損時の飛散エネルギーを吸収する要素を設けることができる。油圧シリンダは、非圧縮流体である油によって駆動するものなので、砥石破損時に砥石カバーを持ち上げる力によって動作しない点で有利となる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の内面研削盤用砥石カバー装置によれば、砥石破損時の作業者側方向の飛散エネルギーを吸収することができるので、高速回転する砥石が破損した場合であっても、作業者側方向への砥石の飛散を防ぐことができ、段取り換えを行うために砥石の回転数を落とす必要がなくなり、部品の製作時間を短縮することができる。
【0019】
そして、変形量が他の部品よりも大きく砥石破損時の砥石カバー開方向の飛散エネルギーを吸収する要素として、シリンダの底壁と頂壁とを連結する複数本の固定ロッドを有しているものとすることで、砥石破損時の砥石カバー開方向の飛散エネルギーも吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、この発明による内面研削盤用砥石カバー装置の1実施形態を示す斜視図で、砥石カバーが閉位置にある状態を示している。
図2図2は、図1の側面図である。
図3図3は、砥石カバーが図2の状態から開位置に移動した状態を示す側面図である。
図4図4は、従来の砥石カバー装置を備えた内面研削盤を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1から図3までを参照して、この発明の内面研削盤用砥石カバー装置の実施形態について説明する。以下の説明において、図2の左側を前、同右側を後といい、左右については、後から前を見た場合の左右をいうものとする。
【0022】
この発明による内面研削盤用砥石カバー装置(10)は、図4に示した従来の内面研削盤用砥石カバー装置(40)に置き換えられるものであり、内面研削が終了して、段取り作業空間(S)に入り、ワーク(W)の取出しや装着などを行う作業者を回転する砥石(4)から保護する。
【0023】
内面研削盤用砥石カバー装置(10)は、内面研削軸(3)に左側面側から対向するように床面に固定された垂直板状のベース(11)と、ベース(11)の後部左面に固定されたシリンダ支え(12)と、シリンダ支え(12)に支持された油圧シリンダ(13)と、ベース(11)の前部左面に固定されたアーム支え(14)と、アーム支え(14)に支持されたアーム(15)と、アーム(15)の先端部に固定されて砥石(4)をカバーする砥石カバー(16)とを備えている。
【0024】
砥石カバー(16)は、アーム(15)を旋回させることで、図1および図2に示す閉位置と、図3に示す開位置とに移動させることができる。
【0025】
油圧シリンダ(13)は、アーム(15)を旋回させるアーム旋回機構の駆動部を構成するもので、筒状の本体(21)と、本体(21)の後端開口を閉鎖する底壁(22)と、本体(21)の前端開口を閉鎖する頂壁(23)と、頂壁(23)から前方に突出して本体(21)内周に案内されて進退するシリンダロッド(24)と、底壁(22)と頂壁(23)とを連結する複数本(図示は4本)の固定ロッド(25)とを備えている。固定ロッド(25)は、シリンダロッド(24)の進退方向に平行に形成されている。
【0026】
油圧シリンダ(13)は、その底壁(22)がシリンダ支え(12)の前部に左右に延びるシリンダ旋回用ピン(31)を介して結合されており、これにより、油圧シリンダ(12)は、シリンダ旋回用ピン(31)回りに旋回することができる。
【0027】
シリンダ支え(12)は、略直方体状となされており、シリンダ支え(12)の前面には、シリンダ支え(12)の前部にシリンダ旋回用ピン(31)を挿通するための半円形状の突出部(12a)が設けられている。
【0028】
アーム支え(14)は、直方体状の基部(26)と、基部(26)の前面から前方に延びる左右突出壁(27)とを備えている。基部(26)は、前後2本のアーム支え取付けボルト(30)によってベース(11)に固定されている。アーム支え取付けボルト(30)の軸線は、左右方向(水平方向)に延びている。
【0029】
アーム(15)は、先端部に砥石カバー(16)が取り付けられている長尺部(28)と、長尺部(28)の基端部に一体に設けられた短尺部(29)とよりなる。
【0030】
図1および図2に示す砥石カバー閉位置では、長尺部(28)は水平状となっており、この状態で、短尺部(29)は、その前部右面が長尺部(28)の後端部(基端部)左面に一体とされ、その後部が長尺部(28)の後端面(基端面)よりも後方に突出するようになされている。
【0031】
長尺部(28)の基端部は、砥石破損時の飛散エネルギーをボルト(30)に伝える目的で、アーム支え(14)の左の突出壁(27)と右の突出壁(27)との間に挿入されて、アーム旋回用ピン(32)を介して左右突出壁(27)に結合されており、これにより、アーム(15)は、アーム旋回用ピン(32)回りに旋回することができる。
【0032】
短尺部(29)の長尺部(28)の基端面より突出している部分は、シリンダロッド(24)の先端に延長状に設けられた連結部(24a)に、アーム-シリンダロッド相対移動用ピン(33)を介して結合されている。これにより、油圧シリンダ(13)とアーム(15)とは、アーム-シリンダロッド相対移動用ピン(33)による結合状態を維持して、相対移動することができる。
【0033】
図1および図2に示す砥石カバー閉位置では、シリンダロッド(24)の軸線は水平(前後方向)に延びており、アーム-シリンダロッド相対移動用ピン(33)は、アーム旋回用ピン(32)の下方でかつ後方に位置している。なお、図2の符号(29a)は、シリンダロッド(24)の連結部(24a)に重ね合わされる部分が薄肉化されることで生じた短尺部(29)の段差を示している。
【0034】
砥石カバー(16)は、砥石(4)に前側から対向する前壁(16a)と、砥石(4)に上側から対向する頂壁(16b)と、砥石(4)に左右から対向する左右壁(16c)とからなる。砥石カバー(16)の左壁(16c)に、アーム(15)の長尺部(29)の先端部が2本のカバー取付けボルト(34)によって固定されている。
【0035】
上記実施形態の内面研削盤用砥石カバー装置(10)を構成する主な部品(11)(12)(13)(14)(15)(16)(21)(24)(25)(31)(32)(33)の位置関係および動きをまとめると、以下のようになる。
【0036】
シリンダ支え(12)およびアーム支え(14)は、ベース(11)に固定された固定部材であり、シリンダ旋回用ピン(31)およびアーム旋回用ピン(32)は、固定部材に支持されてその位置は不変である。油圧シリンダ(13)は、シリンダ旋回用ピン(31)の回りに旋回可能で、アーム(15)は、アーム旋回用ピン(32)の回りに旋回可能となっている。砥石カバー(16)は、アーム(15)と一体に移動する。油圧シリンダ(13)のシリンダロッド(24)は、旋回可能な本体(21)に対して進退し、油圧シリンダ(13)の固定ロッド(25)は、本体(21)に一体となっている。そして、シリンダロッド(24)とアーム(15)とは、アーム-シリンダロッド相対移動用ピン(33)による結合状態を維持して、相対移動することができ、アーム-シリンダロッド相対移動用ピン(33)は、アーム旋回用ピン(32)からの距離が一定という条件で移動可能になっている。
【0037】
したがって、図2の位置からシリンダロッド(24)を前進させると、アーム-シリンダロッド相対移動用ピン(33)も前方に移動するが、この際、アーム旋回用ピン(32)からの距離が一定という条件に従い、アーム旋回用ピン(32)を中心とする円弧に沿って移動する。これに伴って、油圧シリンダ(13)は、シリンダ旋回用ピン(31)の回りに旋回し、アーム(15)は、アーム旋回用ピン(32)の回りに旋回する。この結果、図3に示すアーム(15)が垂直状となって砥石カバー(16)が開いた状態が得られる。このとき、アーム-シリンダロッド相対移動用ピン(33)は、図2に示す初期位置から、アーム旋回用ピン(32)の中心を通る上下方向の軸線に対する対称位置(アーム旋回用ピン(32)の下方でかつ前方)に移動している。
【0038】
上記実施形態の内面研削盤用砥石カバー装置(10)において、砥石カバー(16)は、砥石破損による飛散で砥石カバー(16)が破損しない様、従来に比べ材質や板厚の変更により強度が確保され、この砥石カバー(16)が閉位置にあることによって、作業者が砥石(4)に接触することが防止される。従来のカバー装置では、段取り換え中の砥石破損による砥石(4)の飛散を防ぐためには、砥石(4)の回転数を落としてから作業を行う必要があった。
【0039】
この実施形態の内面研削盤用砥石カバー装置(10)では、段取り換え中の砥石破損による砥石(4)の飛散を防ぐために、以下の構成が採用されている。
【0040】
固定ロッド(25)は、その変形量が他の部品(砥石カバー(16)、油圧シリンダ(13)の本体(21)やシリンダロッド(24)など)よりも大きくなるように設計されており、これにより、砥石破損時の砥石カバー開方向(図1で上向きの矢印が示す方向)の飛散エネルギーを吸収する要素となっている。
【0041】
アーム支え取付けボルト(30)は、その変形量が他の部品(砥石カバー(16)、カバー取付けボルト(34)など)よりも大きくなるように設計されており、これにより、砥石破損時の作業者側方向(図1で右手前向きの矢印が示す方向)の飛散エネルギーを吸収する要素となっている。
【0042】
すなわち、従来の内面研削盤用砥石カバー装置(40)は、作業者が接触した際などに破損することがない強度で設計されているのに対し、この発明の内面研削盤用砥石カバー装置(10)では、これを構成する部品の強度だけでなく、変形量が考慮され、砥石(4)の破損時の飛散エネルギーを吸収することができるようになっている。
【0043】
砥石破損時の飛散エネルギーを吸収するためには、砥石(4)の飛散を受ける部品の変形が必要となる。同一材料では、変形量が大きいほどエネルギー吸収量が大きくなる。そこで、この実施形態では、アーム支え取付けボルト(30)および油圧シリンダ(13)の固定ロッド(25)が飛散エネルギーの吸収部品とされており、アーム支え取付けボルト(30)によって、砥石破損時の作業者側方向の飛散エネルギーが吸収され、固定ロッド(25)によって、砥石カバー開方向の飛散エネルギーが吸収される。こうして、強度だけでなく、変形量も考慮した部品構成とすることで、段取り換え中の砥石破損による飛散を防ぐことができる。
【0044】
なお、固定ロッド(25)およびアーム支え取付けボルト(30)以外の変形量が確保できない他の部品(砥石カバー(16)、油圧シリンダ(13)の本体(21)やシリンダロッド(24)、カバー取付けボルト(34)など)については、固定ロッド(25)およびアーム支え取付けボルト(30)よりも強度を高くし、これにより、砥石カバー装置(10)自体の破損を防ぐものとされている。
【0045】
上記において、アーム(15)を旋回させるアーム旋回機構の駆動部は油圧シリンダ(13)に限定されるものではないが、アーム旋回機構の駆動力は、砥石破損時の砥石カバー開方向の飛散エネルギーによって砥石カバー(16)が開くことを確実に防ぐ大きさとされていることが好ましい。例えば、エアシリンダによる駆動の場合、砥石破損時に砥石カバーを持ち上げようとする力が加わった際に、シリンダ内エアが圧縮されて砥石カバー(16)が開くおそれがあるのに対し、非圧縮流体である油によって駆動する油圧シリンダ(13)を使用すると、砥石破損時に砥石カバー(16)を持ち上げる力によってシリンダ(13)が動作しない点で有利となる。
【符号の説明】
【0046】
(1):内面研削盤
(2):主軸台
(3):内面研削軸
(4):砥石
(5):全体カバー
(10):内面研削盤用砥石カバー装置
(12):シリンダ支え
(13):油圧シリンダ
(14):アーム支え
(15):アーム
(16):砥石カバー
(24):シリンダロッド
(25):固定ロッド
(30):アーム支え取付けボルト
(31):シリンダ旋回用ピン
(32):アーム旋回用ピン
(33):アーム-シリンダロッド相対移動用ピン
(W):ワーク
図1
図2
図3
図4