(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026523
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
A61M 60/279 20210101AFI20220203BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20220203BHJP
F04B 43/12 20060101ALI20220203BHJP
F04C 5/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61M1/10 137
A61M1/16 111
F04B43/12 Z
F04C5/00 341N
F04C5/00 341Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130051
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑樹
【テーマコード(参考)】
3H077
4C077
【Fターム(参考)】
3H077AA07
3H077BB10
3H077CC04
3H077CC10
3H077EE11
3H077EE15
3H077FF57
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC03
4C077DD07
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH09
4C077HH13
4C077HH21
4C077KK27
(57)【要約】
【課題】より正確な検量線を取得することにより精度よく校正することができる検出装置を提供する。
【解決手段】所定の検出位置の径方向の変位を検出する荷重センサ18と、荷重センサ18が検出した検出値に基づいて、検出位置の流量又は圧力を算出する算出部25と、液体流路における検出位置の流量又は圧力が、制御範囲の上限値と下限値との間にある特定値となるように、液体流路の送液を制御する制御部26と、液体流路における検出位置の流量又は圧力が特定値となるよう制御部26が制御した状態で、荷重センサ18による検出値を取得し、当該検出値を含む少なくとも2つの値を用いることによって、荷重センサ18及び算出部25を校正するための検量線Dを作成する検量線作成部27と、を具備する検出装置である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の液体を流通させ得る可撓性チューブから成る液体流路の流量又は圧力を検出するための検出装置において、
前記液体流路における所定の検出位置で、前記液体流路の径方向の変位を検出する変位検出部と、
前記変位検出部が検出した検出値に基づいて、前記検出位置の流量又は圧力を算出する算出部と、
前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が、制御範囲を規定する上限値と下限値との間にある特定値となるように、前記液体流路の送液を制御する制御部と、
前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が前記特定値となるように前記制御部が制御した状態で、前記変位検出部による検出値を取得し、当該検出値を含む少なくとも2つの値を用いることによって、前記変位検出部及び算出部を校正するための検量線を作成する検量線作成部と、を具備する検出装置。
【請求項2】
前記算出部が算出した流量又は圧力が予め設定された閾値を超えたことを条件として報知する報知部を具備し、前記特定値が、前記報知部の閾値を基準として設定される請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記液体流路の流量又は圧力と前記変位検出部の検出値との関係が変曲する変曲点が前記少なくとも2つの値の間に含まれないように、前記少なくとも2つの値が定められる請求項1又は請求項2記載の検出装置。
【請求項4】
前記液体流路は、しごき型ポンプのしごき部によって径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体が流動するように構成され、
前記変位検出部は、前記被しごきチューブにおける前記しごき部でしごかれる部位より上流側にある前記検出位置で、前記液体流路の径方向の変位を検出する請求項1~3の何れか1つに記載の検出装置。
【請求項5】
前記被しごきチューブは、血液浄化治療時において患者の血液を体外循環させるための動脈側血液回路の途中に接続されるとともに、前記しごき型ポンプは、当該動脈側血液回路内の血液を流動させ得る血液ポンプから成るものとされ、前記変位検出部及び算出部により、血液浄化治療時の血液の体外循環過程において、前記動脈側血液回路の先端から当該被しごきチューブまでの間の前記液体流路の流量比又は脱血圧を算出可能とされた請求項4記載の検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記検出位置より上流側を閉止しつつ前記しごき型ポンプのロータを所定角度回転させることにより、前記検出位置の流量又は圧力が前記特定値とする請求項4記載の検出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検出位置より上流側を閉止しつつ前記しごき型ポンプのロータを所定角度回転させて前記検出位置の流量又は圧力を第1の特定値とする第1工程と、前記検出位置より上流側の閉止を維持しつつ前記しごき型ポンプのロータを更に所定角度回転させて前記検出位置の流量又は圧力を第2の特定値とする第2工程と、を実行し、
前記検量線作成部は、前記第1工程で前記第1の特定値としたときの前記変位検出部による検出値と、前記第2工程で前記第2の特定値としたときの前記変位検出部による検出値とにより前記検量線を作成する請求項6記載の検出装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記検出位置より上流側を閉止しつつ前記血液ポンプのロータを連続回転させることにより、前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が前記下限値となった状態で、前記変位検出部の検出値を取得するゼロ点取得工程と、
前記検出位置より上流側を開放した状態で前記血液ポンプのロータを連続回転させることにより、前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が前記上限値となった状態で、前記変位検出部の検出値を取得するスパン点取得工程と、
前記検出位置より上流側を閉止しつつ前記血液ポンプのロータを所定角度回転させることにより、前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が前記特定値となった状態で、前記変位検出部の検出値を取得する特定点取得工程と、を順次実行し、
前記ゼロ点取得工程若しくは前記スパン点取得工程の少なくとも何れか一方、および、前記特定点取得工程で取得した検出値に基づき、前記検量線を作成する請求項6記載の検出装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1つに記載の検出装置を具備した血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しごき型ポンプのしごき部にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体を流動させ得る被しごきチューブが一部に接続され、所定の液体を流通させ得る可撓性チューブから成る液体流路の圧力を検出するための検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液透析治療時に用いられる一般的な血液回路は、先端に動脈側穿刺針が取り付けられる動脈側血液回路と、先端に静脈側穿刺針が取り付けられる静脈側血液回路とから主に構成されており、これら動脈側血液回路及び静脈側血液回路の各基端にダイアライザ等の血液浄化器を接続し得るよう構成されている。動脈側血液回路には、しごき型の血液ポンプが配設されており、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を共に患者に穿刺した状態で当該血液ポンプを駆動させることにより、動脈側穿刺針から血液を採取するとともに、その血液を動脈側血液回路内で流動させてダイアライザまで導き、該ダイアライザによる浄化後の血液を静脈側血液回路内で流動させ、静脈側穿刺針を介して患者の体内に戻して透析治療が行われるよう構成されている。
【0003】
従来、特許文献1にて開示されているように、血液ポンプのしごき部にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体(血液等)を流動させ得る被しごきチューブを利用し、当該被しごきチューブの径方向の変位を検出することで、動脈側血液回路の脱血圧(動脈側血液回路の先端から被しごきチューブまでの間の圧力)を検出し得る検出装置が提案されている。
【0004】
このような検出装置においては、被しごきチューブや当該被しごきチューブの径方向の変位を検出するためのセンサ等の個体差により誤差が生じてしまう虞があることから、当該誤差を抑制するための校正が行われる。かかる校正は、血液ポンプにより圧力が変化された際の液圧測定部で検出された圧力変化(血液ポンプの駆動前後の圧力)と荷重センサ(変位検出センサ)の検出値(出力電圧)との関係により検量線を取得して行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の検出装置においては、現状においては問題なく校正を行うことができるものの、より精度よく校正を行うことが求められるようになってきた。また、近時においては、圧力(脱血圧)を検出するための検量線に限らず、流量比(設定流量に対する実際に流れる実流量の比)を検出するための検量線を取得することも求められるようになってきた。
【0007】
そこで、本出願人は、校正時における流量比と電圧(出力電圧)との関係を実験により観察したところ、
図16のグラフに示すような傾向があることが分かった。かかるグラフは、液体流路に液体が流れていない状態(流量比が0の状態)のときの電圧をゼロ電圧(D0)、液体流路に設定通りの液体が流れている状態(流量比が1の状態)のときの電圧をスパン電圧(Ds)としてプロットするとともに、それら下限値と上限値との間において流量比を種々変更して得られた電圧をプロットして得られたものである。
【0008】
かかるグラフによれば、流量比と電圧との関係において、変曲点(A1、A2)を有するとともに、それら変曲点(A1、A2)の間に直線状の傾向を持った直線領域Bを有することが分かる。したがって、単にゼロ電圧(D0)とスパン電圧(Ds)との間で直線を引いて検量線とした場合、変曲点(A1、A2)を含んでしまい、誤差が大きくなってしまう虞がある。この不具合は、流量比と電圧との関係に限らず、圧力と電圧との関係においても、同様に生じることが分かる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、より正確な検量線を取得することにより精度よく校正することができる検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、所定の液体を流通させ得る可撓性チューブから成る液体流路の流量又は圧力を検出するための検出装置において、前記液体流路における所定の検出位置で、前記液体流路の径方向の変位を検出する変位検出部と、前記変位検出部が検出した検出値に基づいて、前記検出位置の流量又は圧力を算出する算出部と、前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が、制御範囲を規定する上限値と下限値との間にある特定値となるように、前記液体流路の送液を制御する制御部と、前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が前記特定値となるように前記制御部が制御した状態で、前記変位検出部による検出値を取得し、当該検出値を含む少なくとも2つの値を用いることによって、前記変位検出部及び算出部を校正するための検量線を作成する検量線作成部と、を具備する検出装置。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記算出部が算出した流量又は圧力が予め設定された閾値を超えたことを条件として報知する報知部を具備し、前記特定値が、前記報知部の閾値を基準として設定される請求項1記載の検出装置。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記液体流路の流量又は圧力と前記変位検出部の検出値との関係が変曲する変曲点が前記少なくとも2つの値の間に含まれないように、前記少なくとも2つの値が定められる請求項1又は請求項2記載の検出装置。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記液体流路は、しごき型ポンプのしごき部によって径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体が流動するように構成され、前記変位検出部は、前記被しごきチューブにおける前記しごき部でしごかれる部位より上流側にある前記検出位置で、前記液体流路の径方向の変位を検出する請求項1~3の何れか1つに記載の検出装置。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記被しごきチューブは、血液浄化治療時において患者の血液を体外循環させるための動脈側血液回路の途中に接続されるとともに、前記しごき型ポンプは、当該動脈側血液回路内の血液を流動させ得る血液ポンプから成るものとされ、前記変位検出部及び算出部により、血液浄化治療時の血液の体外循環過程において、前記動脈側血液回路の先端から当該被しごきチューブまでの間の前記液体流路の流量比又は脱血圧を算出可能とされた請求項4記載の検出装置。
【0015】
請求項6記載の発明は、前記制御部は、前記検出位置より上流側を閉止しつつ前記しごき型ポンプのロータを所定角度回転させることにより、前記検出位置の流量又は圧力が前記特定値とする請求項4記載の検出装置。
【0016】
請求項7記載の発明は、前記制御部は、前記検出位置より上流側を閉止しつつ前記しごき型ポンプのロータを所定角度回転させて前記検出位置の流量又は圧力を第1の特定値とする第1工程と、前記検出位置より上流側の閉止を維持しつつ前記しごき型ポンプのロータを更に所定角度回転させて前記検出位置の流量又は圧力を第2の特定値とする第2工程と、を実行し、前記検量線作成部は、前記第1工程で前記第1の特定値としたときの前記変位検出部による検出値と、前記第2工程で前記第2の特定値としたときの前記変位検出部による検出値とにより前記検量線を作成する請求項6記載の検出装置。
【0017】
請求項8記載の発明は、前記制御部は、前記検出位置より上流側を閉止しつつ前記血液ポンプのロータを連続回転させることにより、前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が前記下限値となった状態で、前記変位検出部の検出値を取得するゼロ点取得工程と、前記検出位置より上流側を開放した状態で前記血液ポンプのロータを連続回転させることにより、前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が前記上限値となった状態で、前記変位検出部の検出値を取得するスパン点取得工程と、前記検出位置より上流側を閉止しつつ前記血液ポンプのロータを所定角度回転させることにより、前記液体流路における前記検出位置の流量又は圧力が前記特定値となった状態で、前記変位検出部の検出値を取得する特定点取得工程と、を順次実行し、前記ゼロ点取得工程若しくは前記スパン点取得工程の少なくとも何れか一方、および、前記特定点取得工程で取得した検出値に基づき、前記検量線を作成する請求項6記載の検出装置。
【0018】
請求項9記載の発明は、請求項1~8の何れか1つに記載の検出装置を具備した血液浄化装置。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、液体流路における検出位置の流量又は圧力が特定値となるよう制御した状態で、変位検出部による検出値を取得し、当該検出値を含む少なくとも2つの値を用いることによって、変位検出部及び算出部を校正するための検量線を作成するので、より正確な検量線を取得することにより精度よく校正することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、算出部が算出した流量又は圧力が予め設定された閾値を超えたことを条件として報知する報知部を具備し、特定値が、報知部の閾値を基準として設定されるので、報知部による報知をより正確に行わせることができ、装置の信頼性を向上させることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、液体流路の流量又は圧力と変位検出部の検出値との関係が変曲する変曲点が少なくとも2つの値の間に含まれないように、少なくとも2つの値が定められるので、変曲点による誤差原因を抑制することができ、より一層正確な検量線を取得することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、液体流路は、しごき型ポンプのしごき部によって径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体が流動するように構成され、変位検出部は、被しごきチューブにおけるしごき部でしごかれる部位より上流側にある検出位置で、液体流路の径方向の変位を検出するので、より精度よく校正することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、変位検出部及び算出部により、血液浄化治療時の血液の体外循環過程において、動脈側血液回路の先端から当該被しごきチューブまでの間の液体流路の流量比又は脱血圧を算出可能とされたので、正確な検量線に基づいて精度よく流量比又は脱血圧を算出することができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、制御部は、検出位置より上流側を閉止しつつしごき型ポンプのロータを所定角度回転させることにより、検出位置の流量又は圧力が特定値とするので、別個の圧力検出センサ等を必要とすることなく、血液ポンプのロータを回転させることにより検出位置を予め定めた特定の流量又は圧力とすることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、検量線作成部は、第1工程で第1の特定値としたときの変位検出部による検出値と、第2工程で第2の特定値としたときの変位検出部による検出値とにより検量線を作成するので、別個の圧力検出センサ等を必要とすることなく、血液ポンプのロータを断続的に回転させることにより検出位置を予め定めた特定の流量又は圧力とすることができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、ゼロ点取得工程若しくはスパン点取得工程の少なくとも何れか一方、および、特定点取得工程で取得した検出値に基づき、検量線を作成するので、ゼロスパン工程の後、血液ポンプのロータを回転させることにより検出位置を予め定めた特定の流量又は圧力とすることができる。
【0027】
請求項9の発明によれば、請求項1~8の何れか1つに記載の検出装置を具備した血液浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る検出装置が適用される血液浄化装置を示す模式図
【
図2】同検出装置が配設される血液ポンプを示す斜視図
【
図3】同検出装置が配設される血液ポンプを示す平面図
【
図4】同血液ポンプに配設された変位検出部を示す断面模式図
【
図5】同検出装置が適用される血液浄化装置における校正時の状態を示す模式図
【
図6】同検出装置の流量比と電圧との関係(予め得られた実験結果)を示すグラフ
【
図7】同検出装置において取得された検量線を示すグラフ
【
図8】同検出装置における校正時の血液ポンプの駆動を示す模式図
【
図9】本発明の他の実施形態に係る検出装置の流量比と電圧との関係(予め得られた実験結果)を示すグラフ
【
図10】同検出装置において取得された検量線を示すグラフ
【
図11】同検出装置における校正時の血液ポンプの駆動を示す模式図
【
図12】本発明の実施形態に係る検出装置の吸い込み圧力と電圧との関係を示すグラフ
【
図13】同検出装置に適用される血液浄化装置における校正を含む制御内容を説明するためのフローチャート
【
図14】本発明の他の実施形態に係る検出装置が配設される血液ポンプを示す斜視図
【
図15】同血液ポンプに配設された変位検出部を示す断面模式図
【
図16】従来の検出装置の流量比と電圧との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る検出装置は、患者の血液を体外循環させて血液浄化治療(例えば血液透析治療)を行わせるための血液回路(具体的には、血液ポンプが配設される部位より上流側)における圧力を検出するためのもので、その適用される血液回路は、
図1に示すように、動脈側血液回路1と、静脈側血液回路2と、血液浄化器としてのダイアライザ3とから主に構成されている。なお、動脈側血液回路1は、本発明の「被しごきチューブ1aが一部に接続された液体流路」に相当するものである。
【0030】
動脈側血液回路1は、所定の液体を流通させ得る可撓性チューブから成る液体流路を構成するもので、その先端にコネクタaを介して動脈側穿刺針(不図示)が取り付け可能とされるとともに、途中に除泡のための動脈側エアトラップチャンバ5が接続されている。かかる動脈側血液回路1には、T字管cを介して透析液供給ラインL3の一端が接続されており、その透析液供給ラインL3の他端は、採取ポート19を介して透析液導入ラインL1に接続されている。この透析液供給ラインL3は、電磁弁V9にて任意に開閉可能とされており、透析液導入ラインL1の透析液を血液回路内に供給し得るよう構成されている。
【0031】
また、動脈側血液回路1の途中(T字管cと動脈側エアトラップチャンバ5との間)には、被しごきチューブ1aが接続されており、かかる被しごきチューブ1aを血液ポンプ4に取り付けることが可能とされている。被しごきチューブ1aは、後で詳述する血液ポンプ4のローラ10にて径方向に圧縮されつつ長手方向にしごかれて内部の液体をロータ9の回転方向に流動させ得るものであり、動脈側血液回路1を構成する他の可撓性チューブより軟質且つ大径の可撓性チューブから成る。なお、動脈側血液回路1の先端側には、電磁弁V1が配設されており、その流路を任意タイミングにて開閉し得るようになっている。
【0032】
静脈側血液回路2は、所定の液体を流通させ得る可撓性チューブから成る液体流路を構成するもので、その先端にコネクタbを介して静脈側穿刺針(不図示)が取り付け可能とされるとともに、途中に除泡のための静脈側エアトラップチャンバ6が接続されている。しかるに、静脈側血液回路2を構成する可撓性チューブは、動脈側血液回路1を構成する可撓性チューブと材質及び寸法が略同一のものとされている。なお、静脈側血液回路2の先端側には、電磁弁V2が配設されており、その流路を任意タイミングにて開閉し得るようになっている。
【0033】
静脈側エアトラップチャンバ6の空気層側(上部)には、当該静脈側エアトラップチャンバ6内の空気又は気体を外部に排出させ得るオーバーフローラインL4が延設されており、当該オーバーフローラインL4の途中には、任意タイミングにて流路を開閉し得る電磁弁V3が配設されている。さらに、静脈側エアトラップチャンバ6の空気層側(上部)には、静脈圧センサ7まで延設された圧モニタラインが延設されている。かかる静脈圧センサ7は、静脈側エアトラップチャンバ6の空気層側の圧力を測定することにより静脈側血液回路2内の液圧(血液浄化治療時において測定される静脈圧)を検出し得るようになっている。
【0034】
そして、動脈側血液回路1と静脈側血液回路2との間には、ダイアライザ3が接続されており、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を患者に穿刺した後、血液ポンプ4を正転駆動させることにより(
図5における血液ポンプ4の矢印方向)、当該動脈側血液回路1、静脈側血液回路2及びダイアライザ3が構成する液体の流路を介して、血液浄化治療時、患者の血液を体外循環させ得るようになっている。
【0035】
一方、血液浄化治療前には、
図1に示すように、コネクタaとコネクタbとを接続することにより、動脈側血液回路1の先端と静脈側血液回路2の先端とを連結させ、これら動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2(ダイアライザ3内の血液流路を含む)にて血液回路側の閉回路を形成させ得るようになっている。そして、この閉回路内に透析液供給ラインL3を介して透析液を供給することにより、血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)に対して透析液を充填させてプライミング作業が可能とされている。なお、プライミング作業の過程において、オーバーフローラインL4から透析液をオーバーフローさせて血液回路側の閉回路内を洗浄し得るようになっている。
【0036】
ダイアライザ3は、微小孔(ポア)が形成された複数の中空糸を筐体部に収容して成るものであり、その筐体部に、血液導入ポート3a、血液導出ポート3b、透析液導入ポート3c及び透析液導出ポート3dが形成されており、このうち血液導入ポート3aには動脈側血液回路1の基端が、血液導出ポート3bには静脈側血液回路2の基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート3c及び透析液導出ポート3dは、透析装置本体から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2にそれぞれ接続されている。
【0037】
そして、ダイアライザ3に導入された患者の血液は、内部の中空糸膜内を通過して血液導出ポート3bから排出される一方、透析液導入ポート3cから導入された透析液が当該中空糸膜外を通過して透析液導出ポート3dから排出されるよう構成されている。これにより、血液流路を通過する血液中の老廃物等を透析液側に透過させ、清浄化することができ、その清浄な血液を静脈側血液回路2を介して患者の体内に戻すことができる。
【0038】
透析装置本体は、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を有するとともに、複式ポンプ21、バイパスラインL5~L8及び電磁弁V4~V8を有している。このうち複式ポンプ21は、透析液導入ラインL1と透析液排出ラインL2とに跨って配設され、所定濃度に調製された透析液をダイアライザ3に導入させるとともに当該ダイアライザ3から透析後の透析液を排出させるものである。
【0039】
透析液導入ラインL1の途中(透析液導入ラインL1における採取ポート19とダイアライザ3との間)には、電磁弁V4が接続されるとともに、透析液排出ラインL2の途中(透析液排出ラインL2におけるバイパスラインL6との連結部とダイアライザ3との間)には、電磁弁V5が接続されている。また、透析液導入ラインL1における複式ポンプ21と電磁弁V4との間には、濾過フィルタ23、24が接続されている。
【0040】
この濾過フィルタ23、24は、透析液導入ラインL1を流れる透析液を濾過して浄化するためのものであり、これら濾過フィルタ23、24には透析液排出ラインL2にバイパスして透析液を導くためのバイパスラインL5、L6がそれぞれ接続されている。かかるバイパスラインL5、L6には、それぞれ電磁弁V6、V7が接続されている。
【0041】
一方、透析液排出ラインL2におけるバイパスラインL5との連結部及びバイパスラインL6との連結部の間には、透析液の液圧を測定し得る透析液圧センサ20が配設されている。この透析液圧センサ20は、透析治療時(血液浄化治療時)、ダイアライザ3から排出されて透析液排出ラインL2を流れる透析液の圧力(液圧)を測定し得るものである。
【0042】
さらに、透析液排出ラインL2には、複式ポンプ21をバイパスするバイパスラインL7、L8がそれぞれ接続されており、バイパスラインL7には、ダイアライザ3の血液流路中を流れる患者の血液から水分を除去するための除水ポンプ22が配設されるとともに、バイパスラインL8には、流路を開閉可能な電磁弁V8が配設されている。なお、図示はしていないが、透析液排出ラインL2における複式ポンプ21より上流側(バイパスラインL7との連結部と複式ポンプ21との間)には、複式ポンプ21における排液側の液圧調整を行うためのポンプが配設されている。
【0043】
ところで、本実施形態に係る血液ポンプ4は、
図2~4に示すように、ステータ8と、当該ステータ8内で回転駆動可能なロータ9と、該ロータ9に形成されたローラ10と、上下一対のガイドピン11と、上流側把持部12と、下流側把持部13と、変位検出部としての荷重センサ18とから主に構成されている。なお、同図においては、血液ポンプ4におけるステータ8の上部を覆うカバーについて省略してある。
【0044】
ステータ8は、被しごきチューブ1aが取り付けられる取付凹部8aが形成されたもので、当該取付凹部8aを形成する内周壁面に沿って被しごきチューブ1aが取り付けられるよう構成されている。取付凹部8aの略中央には、モータにより回転駆動可能なロータ9が配設されている。かかるロータ9の側面(取付凹部8aの内周壁面と対向する面)には、一対のローラ10と、ガイドピン11とが配設されている。
【0045】
ローラ10は、ロータ9の外縁側に形成された回転軸Mを中心として回転可能とされたもので、取付凹部8aに取り付けられた被しごきチューブ1aを径方向に圧縮しつつ当該ロータ9の回転に伴い長手方向(血液の流動方向)にしごくことにより、動脈側血液回路1内で血液を流動させ得るものである。すなわち、取付凹部8a内に被しごきチューブ1aを取り付けてロータ9を回転駆動させると、ローラ10と取付凹部8aの内周壁面との間で当該被しごきチューブ1aが圧縮されるとともに、ロータ9の回転駆動に伴ってその回転方向(長手方向)にしごき得るのである。かかるしごき作用により、動脈側血液回路1内の血液がロータ9の回転方向に流動することとなるので、当該血液回路1内で体外循環させることが可能とされている。
【0046】
ガイドピン11は、
図2に示すように、ロータ9の上端側及び下端側から取付凹部8aの内周壁面に向かってそれぞれ突出形成された上下一対のピン状部材から成るものであり、これら上下一対のガイドピン11の間に被しごきチューブ1aが保持されることとなる。すなわち、ロータ9の駆動時、上下一対のガイドピン11により被しごきチューブ1aを正規の位置に保持させるとともに、上側のガイドピン11により取付凹部8aから被しごきチューブ1aが上方に離脱しないようになっているのである。
【0047】
上流側把持部12は、血液ポンプ4におけるステータ8の取付凹部8aに取り付けられた被しごきチューブ1aのうち上流側(動脈側血液回路1の先端側が接続される部位)を把持するためのもので、
図2~4に示すように、被しごきチューブ1aを径方向に押圧して把持し得る把持片14と、該把持片14を被しごきチューブ1a側に付勢するねじりバネ15(付勢部)とを有する。
【0048】
把持片14は、
図4に示すように、揺動軸Laを中心に揺動可能な部品から成るもので、ねじりバネ15により把持方向に比較的強く付勢されており、被しごきチューブ1aの上流側の部位を押圧して固く挟持することにより固定可能とされたものである。ねじりバネ15は、同図に示すように、揺動軸Laに取り付けられて把持片14を付勢するとともに、ステータ8の固定部(本実施形態においては、ステータ8に取り付けられた荷重センサ18)に位置する固定端15aと把持片14を押圧する押圧端15bとを有する。なお、ねじりバネ15に代えて把持片14を付勢する他の付勢部としてもよい。
【0049】
下流側把持部13は、血液ポンプ4におけるステータ8の取付凹部8aに取り付けられた被しごきチューブ1aのうち下流側(動脈側血液回路1の基端側が接続される部位)を把持するためのもので、被しごきチューブ1aを径方向に押圧して把持し得る把持片16と、該把持片16を被しごきチューブ1a側に付勢するねじりバネ17とを有する。
【0050】
把持片16は、上流側把持部12の把持片14と同様、揺動軸Lbを中心に揺動可能な部品から成るもので、ねじりバネ17により把持方向に比較的強く付勢されており、被しごきチューブ1aの下流側の部位を押圧して固く挟持することにより固定可能とされたものである。ねじりバネ17は、上流側把持部12のねじりバネ15と同様、揺動軸Lbに取り付けられて把持片16を付勢するとともに、ステータ8の固定部に位置する固定端と把持片16を押圧する押圧端とを有する。
【0051】
変位検出部としての荷重センサ18は、被しごきチューブ1aにおけるローラ10でしごかれる部位より上流側の所定の位置(かかる位置を所定の検出位置と称する)の径方向の変位を検出するものである。なお、本実施形態の変位検出部は、血液ポンプ4に配設された荷重センサ18にて構成され、被しごきチューブ1aにおけるローラ10でしごかれる部位より上流側の所定の検出位置における径方向の変位を検出しているが、被しごきチューブ1aの上流側に接続された動脈側血液回路1を構成する可撓性チューブの所定の検出位置における径方向の変位を検出するもの(例えば、ピロー等)であってもよい。
【0052】
本実施形態に係る荷重センサ18は、被しごきチューブ1aにおける上流側把持部12で把持された部位の径方向の変位を検出可能なもので、ねじりバネ15の固定端15a側に付与される荷重を検出し、当該検出された荷重に基づいて被しごきチューブ1aの径方向の変位を検出するものとされている。この荷重センサ18は、付与された荷重に応じた電気信号を発生し得るものである。
【0053】
すなわち、治療時において動脈側血液回路の先端には、動脈側穿刺針が取り付けられていることから、患者から血液を採取して動脈側血液回路1にて流動させる際(
図5において血液ポンプ4の駆動方向を示す矢印方向に流動)、当該動脈側血液回路1の先端と血液ポンプ4との間で陰圧が生じてしまう。かかる陰圧が生じると、被しごきチューブ1a内の液圧が低下し、当該被しごきチューブ1aにおける上流側把持部12で把持された部位が径方向に変位する(径が小さくなる)ので、荷重センサ18により検出される荷重が低下することとなる。かかる荷重の低下を検出することにより、動脈側血液回路1に陰圧が生じていることを検出することができるのである。
【0054】
本実施形態に係る荷重センサ18は、配線等が延設されて算出部25と電気的に接続されている。かかる算出部25は、例えば透析装置本体に配設されたマイコン等から成るもので、荷重センサ18で検出された被しごきチューブ1aの径方向の変位に基づいて、動脈側血液回路1の圧力や流量を算出し得るよう構成されている。
【0055】
すなわち、荷重センサ18にて被しごきチューブ1aの径方向の変位が検出されると、その変位に応じた所定の電気信号が算出部25に送信され、当該算出部25にて動脈側血液回路1(本実施形態においては、動脈側血液回路1の先端から荷重センサ18が配設された部位までの間)における圧力(血液浄化治療時における脱血圧)や流量比(設定流量に対する実流量の比)が算出されるのである。かかる算出部25で算出された流量比や脱血圧は、不図示のモニタ等に表示されるよう構成されている。
【0056】
さらに、算出部25は、報知部28と電気的に接続されている。かかる報知部28は、スピーカやモニタ等を有して成るもので、荷重センサ18及び算出部25により算出された流量又は圧力が予め設定された設定値を超えたことを条件として報知(スピーカによる音声や効果音等の出力やモニタに対する警告に関する表示等)し得るものである。
【0057】
ここで、本実施形態においては、荷重センサ18及び算出部25を校正(キャリブレーション)するための制御部26及び検量線作成部27を具備している。制御部26は、所定の検出位置(被しごきチューブ1aにおけるローラ10でしごかれる部位より上流側の位置)を予め定めた特定の流量又は圧力とするものであり、本実施形態においては、
図5に示すように、電磁弁V1、V9を閉状態とすることにより検出位置より上流側を閉止しつつ血液ポンプ4のロータ9を所定角度回転させることにより、検出位置を予め定めた特定の流量(流量比)又は圧力とするようになっている。
【0058】
すなわち、制御部26は、液体流路において検出位置の流量又は圧力が、制御範囲の上限値と下限値の特定値となるように、液体流路の送液を制御するものである。かかる特定値は、制御範囲の上限値と下限値の間の任意の点が対象として含まれるもので、1つとは限らず2つ以上であってもよい。また、検量線作成部27は、制御部26が、液体流路における検出位置の流量又は圧力が特定値となるよう制御した状態で、荷重センサ18による検出値を取得し、当該検出値を含む少なくとも2つの値を用いることによって、荷重センサ18及び算出部25を校正するための検量線Dを作成するものである。
【0059】
具体的には、制御部26は、校正時、
図5に示すように、電磁弁V1、V9を閉状態として検出位置より上流側を閉止するとともに、
図8(a)に示すように、血液ポンプ4における初期位置P0にあるロータ9を所定角度K1だけ回転させて、同図(b)に示すように、ロータ9を位置P1とすることにより、検出位置を予め定めた特定の流量(具体的には、
図6で示す流量比F1)又は圧力とする第1工程を実行する。
【0060】
そして、第1工程を実行した後、制御部26は、電磁弁V1、V9の閉状態を保持して検出位置より上流側の閉止を維持するとともに、血液ポンプ4のロータ9を更に所定角度K2だけ回転させて、同図(c)に示すように、ロータ9を位置P2とすることにより、検出位置を予め定めた特定の流量(具体的には、
図6で示す流量比F2)又は圧力とする第2工程を実行する。このように、血液ポンプ4のロータ9を断続的に回転させて第1工程及び第2工程を経ることにより、流量比F1のときの検出値D1と流量比F2のときの検出値D2とに基づいて検量線作成部27にて検量線D(
図7参照)を取得することができる。
【0061】
しかるに、予め行われた実験結果によると、検出位置を流れる液体の流量比(設定流量に対する実流量の比)と荷重センサ18の出力電圧との関係は、
図6で示すグラフの如き傾向とされており、下限値と上限値との間において、2つの変曲点(下限側の変曲点A1及び上限側の変曲点A2)を有している。本実施形態においては、荷重センサ18で検出可能な上限値と下限値との間の所定範囲における変曲点(A1、A2)を避けた範囲であって、下限側の変曲点A1と上限側の変曲点A2との間の略直線状の傾向を持つ範囲(流量比F1と流量比F2との間の範囲)に亘って検量線D(
図7参照)を取得するようになっている。
【0062】
なお、流量比を算出するものにおいては、荷重センサ18で検出可能な上限値とは、検出位置の流量比が1の値(設定流量と実流量とが等しい)をいい、荷重センサ18で検出可能な下限値とは、検出位置の流量比が0の値(設定流量に対して実流量が0)をいう。また、圧力(脱血圧)を算出するものにおいては、荷重センサ18で検出可能な上限値とは、検出位置の流量比が1の値(設定流量と実流量とが等しい)のときの圧力(液圧)をいい、荷重センサ18で検出可能な下限値とは、検出位置の流量比が0の値(設定流量に対して実流量が0)のときの圧力(液圧)をいう。
【0063】
ところで、本実施形態に係る制御部26は、上述の通り、所定の検出位置を予め定めた特定の流量又は圧力とするものであるが、その流量又は圧力は、絶対値の他、本実施形態の「流量比」の如く相対値(圧力の相対値も同様)を含むものである。よって、流量比の他、設定流量以外の基準値との対比で求められる他の相対値であってもよい。
【0064】
また、本実施形態における流量比F1及び流量比F2の間の範囲は、変曲点(A1、A2)を含まない範囲であって、報知部28の設定値を基準とした範囲とされており、報知部28による報知を正確な検量線Dに基づいて行わせるようになっている。例えば、報知部28が報知を行う設定値が流量比Fである場合、流量比Fに所定値を加算した値が流量比F1、流量比Fに所定値を減算した値が流量比F2とされ、変曲点(A1、A2)を含まない範囲に設定される。なお、本実施形態においては、変曲点A1と変曲点A2との間において流量比F1、F2を設定しているが、変曲点A1より下限側又は変曲点A2より上限側において流量比F1、F2を設定するようにしてもよい。
【0065】
検量線作成部27は、制御部26により検出位置を特定の流量又は圧力としたときの荷重センサ18による検出値を取得し、当該特定の流量又は圧力と取得した検出値との関係に基づいて荷重センサ18及び算出部25の校正のための検量線を作成して取得するものであり、本実施形態においては、荷重センサ18で検出可能な上限値(流量比1)と下限値(流量比0)との間の所定範囲(制御部26により実行された第1工程で得られた流量比F1と、第2工程で得られた流量比F2との間の範囲)に亘って検量線を取得するものとされている。
【0066】
具体的には、検量線作成部27は、
図7に示すように、流量比0(下限値)と流量比1(上限値)との間に設定された特定の流量比F1、F2又は圧力において、第1工程で特定の流量(流量比F1)又は圧力としたときの荷重センサ18で得られた検出値(D1)と、第2工程で特定の流量(流量比F2)又は圧力としたときの荷重センサ18で得られた検出値(D2)とを直線で結び、かかる直線を検量線Dとして取得する。
【0067】
本実施形態によれば、制御部26は、検出位置より上流側を閉止しつつ血液ポンプ4のロータ9を所定角度回転させることにより、検出位置を予め定めた特定の流量又は圧力とするので、別個の圧力検出センサ等を必要とすることなく、血液ポンプ4のロータを回転させることにより検出位置を予め定めた特定の流量又は圧力とすることができる。特に、本実施形態に係る検量線作成部27は、第1工程で特定の流量又は圧力としたときの変位検出部による検出値D1と、第2工程で特定の流量又は圧力としたときの変位検出部による検出値D2とにより検量線Dを取得するので、別個の圧力検出センサ等を必要とすることなく、血液ポンプ4のロータ9を断続的に回転させることにより検出位置を予め定めた特定の流量又は圧力とすることができるとともに、正確な検量線Dを取得することができる。
【0068】
さらに、他の実施形態に係る制御部26及び検量線作成部27として、以下のものが挙げられる。
かかる制御部26は、校正時、電磁弁V1、V9を閉状態(下限値とする場合)又は開状態(上限値とする場合)とすることにより検出位置より上流側を閉止又は開放しつつ血液ポンプ4のロータ9を連続回転させることにより、検出位置の流量又は圧力を上限値(流量比が1)及び下限値(流量比が0)とするゼロスパン工程を実行した後、検出位置より上流側を閉止しつつ血液ポンプ4のロータ9を所定角度回転させることにより、検出位置を予め定めた特定の流量(流量比)又は圧力とするものである。
【0069】
すなわち、制御部26は、検出位置より上流側を閉止しつつ血液ポンプ4のロータ9を連続回転させることにより、液体流路における検出位置の流量又は圧力が下限値となった状態で、荷重センサ18の検出値を取得するゼロ点取得工程と、検出位置より上流側を開放した状態で血液ポンプ4のロータ9を連続回転させることにより、液体流路における検出位置の流量又は圧力が上限値となった状態で、荷重センサ18の検出値を取得するスパン点取得工程と、検出位置より上流側を閉止しつつ血液ポンプ4のロータ9を所定角度回転させることにより、液体流路における検出位置の流量又は圧力が特定値となった状態で、荷重センサ18の検出値を取得する特定点取得工程と、を順次実行し、ゼロ点取得工程、スパン点取得工程、及び、特定点取得工程で取得した検出値に基づき、検量線を作成する。
【0070】
例えば、この場合の制御部26は、校正時、電磁弁V1、V9を閉状態として検出位置より上流側を閉止し、及び電磁弁V1、V9を開状態として検出位置より上流側を開放するとともに、血液ポンプ4を駆動してロータ9を連続的に回転させ、検出位置の流量比を0から1としてゼロスパン工程を行った後、
図11(a)に示すように、血液ポンプ4における初期位置P0にあるロータ9を所定角度K3(先の実施形態におけるK1+K2に相当)だけ回転させて、同図(b)に示すように、ロータ9を位置P2とすることにより、検出位置を予め定めた特定の流量(具体的には、
図9で示す流量比F2)又は圧力とする。なお、本実施形態においては、スパン点取得工程で取得した検出値及び特定点取得工程で取得した検出値の2つを用いて検量線を作成しているが、ゼロ点取得工程若しくはスパン点取得工程の少なくとも何れか一方の検出値と特定点取得工程で取得した検出値の2つ(又は3つであってもよい)を用いて検量線を作成すればよい。
【0071】
また、検量線作成部27は、
図10に示すように、ゼロスパン工程で上限値(流量比が1)としたときの荷重センサ18による検出値Dsと、血液ポンプ4のロータ9を所定角度K3だけ回転させたときの荷重センサ18による検出値D2とに基づいて検量線Dを取得するよう構成されている。具体的には、検量線作成部27は、
図10に示すように、流量比がスパン点取得工程で得られた値である1(上限値)のときに荷重センサ18で得られた検出値Dsと、血液ポンプ4のロータ9を所定角度K3だけ回転させて流量比をF2としたときの荷重センサ18で得られた検出値D2とを取得し、検出値Dsに対して一定比率の値を乗算して値Dpを求めるとともに、検出値D2と値Dpとを直線で結ぶことにより検量線Dを作成する。
【0072】
かかる他の実施形態によれば、検量線作成部27は、ゼロスパン工程で上限値としたときの荷重センサ18による検出値Dsと、血液ポンプ4のロータ9を所定角度回転させたときの荷重センサ18による検出値D2とに基づいて検量線Dを取得するので、ゼロスパン工程の後、血液ポンプ4のロータ9を回転させることにより検出位置を予め定めた特定の流量又は圧力とすることができるとともに、正確な検量線Dを取得することができる。
【0073】
次に、本実施形態に係る透析装置(血液浄化装置)の制御内容について、
図13のフローチャートに基づいて説明する。
透析治療(血液浄化治療)の開始前において、先ず液置換工程S1を行い、透析装置本体内の配管内を透析液で充填させるとともに、配管の漏れ診断やテスト等の自己診断を実施する。その後、透析準備工程S2に進み、透析条件の設定、動脈側血液回路1における被しごきチューブ1aの血液ポンプ4への取付け、及び血液回路や補液回路のプライミング(置換液の充填作業)等を行う。なお、透析準備工程S2と並行して、ダイアライザ3の透析液流路側のプライミング(ガスパージ)も行わせる。
【0074】
かかる透析準備工程S2が終了すると、校正工程S3に移行する。かかる校正工程S3においては、上述したように、制御部26により検出位置を特定の流量(流量比)又は圧力としたときの荷重センサ18による検出値を取得し、当該特定の流量又は圧力と取得した検出値との関係に基づいて荷重センサ18及び算出部25の校正のための検量線Dを検量線作成部27にて作成して取得することで校正が行われる。
【0075】
その後、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺するとともに、血液ポンプ4を駆動してローラ10を回転駆動させることで脱血を開始(脱血開始S4)させ、患者の血液を動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2を介して体外循環させる。これにより、体外循環過程の血液がダイアライザ3にて浄化され、透析治療(血液浄化治療)がなされることとなる。
【0076】
そして、脱血開始後において、校正工程(S3)にて校正がなされた荷重センサ18及び算出部25により流量比又は脱血圧が算出され(S5)、その流量比又は脱血圧がモニタ等に表示されて監視されることとなる。その後、S5にて算出された流量比又は脱血圧が予め設定された設定値を超えたか否かが判定される(S6)。設定値を超えた場合は、S7に移行して報知部28にて所定の報知を行わせ、当該設定値を超えない場合は、S8に移行し、透析治療が終了したか否かが判定される。このS8にて透析治療が終了していないと判定されると、S5に戻り、流量比又は脱血圧の監視が引き続き行われる。
【0077】
一方、S8にて透析治療が終了したと判定されると、S9に移行し、返血工程S9(血液回路内の血液を患者の体内に戻す工程)を経てダイアライザ3の液抜きを行う排液工程S10が行われ、一連の制御が終了することとなる。上記一連の工程を経ることにより、透析治療(血液浄化治療)において、透析治療中に流量比又は脱血圧をリアルタイムで検出することができ、流量比又は脱血状態を監視することができる。
【0078】
本実施形態によれば、液体流路における検出位置の流量又は圧力が特定値となるよう制御した状態で、荷重センサ18による検出値を取得し、当該検出値を含む少なくとも2つの値を用いることによって、荷重センサ18及び算出部25を校正するための検量線Dを作成するので、より正確な検量線Dを取得することにより精度よく校正することができる。また、特定値が、報知部28の閾値を基準として設定されるので、報知部28による報知をより正確に行わせることができ、装置の信頼性を向上させることができる。
【0079】
さらに、少なくとも2つの値は、少なくとも2つの間に、液体流路の流量又は圧力と荷重センサ18の検出値との関係が制御範囲内において変曲する変曲点が含まれないので、変曲点による誤差原因を抑制することができ、より一層正確な検量線Dを取得することができる。またさらに、荷重センサ18及び算出部25により、血液浄化治療時の血液の体外循環過程において、動脈側血液回路1の先端から被しごきチューブ1aまでの間の液体流路の流量比又は脱血圧を算出可能とされたので、正確な検量線Dに基づいて精度よく流量比又は脱血圧を算出することができる。
【0080】
なお、血液ポンプ4は、当該血液ポンプ4に取り付けられた被しごきチューブ1aを把持するための把持部(上流側把持部12及び下流側把持部13)を具備するとともに、変位検出部としての荷重センサ18は、上流側把持部12で把持された部位の径方向の変位を検出可能とされたので、血液ポンプ4に対して被しごきチューブ1aを取り付けて上流側把持部12にて把持させることにより検出装置に対する被しごきチューブ1aの取り付けがなされることとなり、医療従事者等による作業負担を低下させることができる。
【0081】
さらに、上流側把持部12は、被しごきチューブ1aを径方向に押圧して把持し得る把持片14と、該把持片14を被しごきチューブ1a側に付勢するねじりバネ15(付勢部)とを有するとともに、変位検出部としての荷重センサ18は、当該ねじりバネ15の固定端15a側に付与される荷重を検出し、当該検出された荷重に基づいて被しごきチューブ1aの径方向の変位を検出するので、血液ポンプ4におけるねじりバネ15が被しごきチューブ1aに対する把持力を生じさせる機能と、動脈側血液回路1の圧力を検出する機能とを兼ね備えることができる。
【0082】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば算出部25にて検出位置の吸込み圧力を算出するものとされ、
図12に示すように、検量線作成部27は、制御部26にて生成された吸込み圧力と荷重センサ18で得られる電圧(出力電圧)との関係を示す予め取得されたグラフに基づいて、その変曲点A3を避けた所定範囲に亘って検量線Dを取得するものとしてもよい。
【0083】
さらに、特定値を2つ用いて検量線Dを作成するものの他、特定値1つとゼロ値(又はスパン値)の2つを用いて検量線Dを作成するものであってもよい。なお、3つ以上の検出値により検量線Dを作成するようにしてもよい。
【0084】
また、血液ポンプ4に代えて、
図14、15に示す血液ポンプ4’としてもよい。かかる血液ポンプ4’は、同図に示すように、ステータ8と、当該ステータ8内で回転駆動可能なロータ9と、該ロータ9に形成されたローラ10と、上下一対のガイドピン11と、上流側把持部12’と、下流側把持部13と、変位検出部としての圧力トランスデューサ30とから主に構成されている。なお、血液ポンプ4’における先の実施形態と同様の構成部品には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0085】
上流側把持部12’は、血液ポンプ4’におけるステータ8の取付凹部8aに取り付けられた被しごきチューブ1aのうち上流側(動脈側血液回路1の先端側が接続される部位)を把持するためのもので、
図15に示すように、被しごきチューブ1aを径方向に押圧して把持し得る把持片14と、該把持片14を被しごきチューブ1a側に付勢するねじりバネ15(付勢部)とを有する。
【0086】
変位検出部としての圧力トランスデューサ30は、被しごきチューブ1aにおける上流側把持部12’で把持された部位の径方向の変位を検出可能なもので、本実施形態においては、被しごきチューブ1aを挟んで把持片14と対向した部位に配設され、当該把持片14にて押圧された被しごきチューブ1aの側面に付与される圧力を検出し、当該検出された圧力に基づいて被しごきチューブ1aの径方向の変位を検出するものとされている。
【0087】
すなわち、患者から血液を採取して動脈側血液回路1にて流動させる際、当該動脈側血液回路1の先端と血液ポンプ4’との間で陰圧が生じると、被しごきチューブ1a内の液圧が低下し、当該被しごきチューブ1aにおける上流側把持部12’で把持された部位が径方向に変位しようとする(扁平に変形して短軸側の径が小さくなろうとする)ので、圧力トランスデューサ30により検出される圧力が低下することとなる。かかる圧力の低下を検出することにより、動脈側血液回路1に陰圧が生じていることを検出することができるのである。
【0088】
本実施形態に係る圧力トランスデューサ30は、先の実施形態と同様、配線等が延設されて算出部25と電気的に接続されている。かかる算出部25は、例えば透析装置本体に配設されたマイコン等から成るもので、圧力トランスデューサ30で検出された被しごきチューブ1aの径方向の変位に基づいて、動脈側血液回路1(液体流路)の圧力や流量比を算出し得るよう構成されている。
【0089】
そして、検量線作成部27にて取得された検量線Dにより、圧力トランスデューサ30及び算出部25を校正し得るよう構成されている。なお、血液ポンプ4、4’に取り付けられた荷重センサ18及び圧力トランスデューサ30に代えて、他の形態の変位検出部としてもよく、血液ポンプ4、4’とは別個の位置に取り付けられた変位検出部であってもよい。さらに、他の形態の血液回路(ダイアライザ3に代えて他の形態の血液浄化器としたもの含む)及び透析装置本体(複式ポンプ21に代えてチャンバ方式等のものを含む)に適用することができる。なお、適用されるしごき型ポンプは、血液ポンプの他、例えば補液ポンプ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明と同様の趣旨であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 動脈側血液回路(液体流路)
1a 被しごきチューブ
2 静脈側血液回路
3 ダイアライザ(血液浄化器)
4、4’ 血液ポンプ(しごき型ポンプ)
5 動脈側エアトラップチャンバ
6 静脈側エアトラップチャンバ
7 静脈圧センサ
8 ステータ
9 ロータ
10 ローラ(しごき部)
11 ガイドピン
12、12’ 上流側把持部
13 下流側把持部
14 把持片
15 ねじりバネ
16 把持片
17 ねじりバネ
18 荷重センサ(変位検出部)
19 採取ポート
20 透析液圧センサ
21 複式ポンプ
22 除水ポンプ
23 濾過フィルタ
24 濾過フィルタ
25 算出部
26 制御部
27 検量線作成部
28 報知部
30 圧力トランスデューサ(変位検出部)
V1~V9 電磁弁
D 検量線