(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026590
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】スイング練習具
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20220203BHJP
A63B 69/36 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A63B69/00 505Z
A63B69/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130136
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】514294588
【氏名又は名称】水口 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】水口 栄二
(57)【要約】
【課題】腰の回転による上半身のひねりに応じた一方の足から他方の足へと体重移動が伴うスイングを練習することができるスイング練習具を提供する。
【解決手段】スイング練習具1は、使用者のお尻の中心に位置させる座面部2と、この座面部2の中心から延びた支柱3と、この支柱3の前記座面部2が設けられた側と反対の端部に設けた脚部4とを備えた構成である。
【効果】上半身があまりにも前傾したり、いわゆるへっぴり腰(および腰)となったりすると、地面又は床面に対して脚部が滑って支柱が倒れてしまう。よってへそと肛門と支柱とが一直線に並ぶ姿勢を保つようになり、腰の回転による上半身のひねりに応じた一方の足から他方の足へと体重移動が伴うスイングを容易に体得できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰の回転による上半身のひねりが行われつつ一方の足から他方の足へと体重移動が伴うスイングの練習具であって、使用者のお尻の中心に位置させる座面部と、この座面部の中心から延びた支柱と、この支柱の前記座面部が設けられた側と反対の端部に設けた脚部とを備えたスイング練習具。
【請求項2】
支柱は伸縮可能とされている請求項1記載のスイング練習具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰の回転による上半身のひねりに応じた一方の足から他方の足へと体重移動が伴うスイングを練習することができるスイング練習具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1(特開2010-253215号公報)には、ゴルフや野球などの腰の回転を伴ったスイングの練習を行うために、台座となる台座フレームに正逆回転自在に動くように取付けられた足のせフレームとスタンドを備え、足のせフレームのロッド、およびスタンドのロッドに共に歯車6が取り付けられ、この2つの歯車の回転が逆になることを利用した身体ねじり器が提案されている。
【0003】
また、例えば特許文献2(特開2005-287833号公報)には、ゴルフや野球などの腰の回転を伴ったスイングの練習とは異なり、腰痛者の姿勢を改善して腰痛を軽減するために、ベース部材上に、下向きに凸となす球面を有する球面体を球面運動が可能に配置し、その球面体には、その球心を通って上向きに延びるように支持軸を設け、該支持軸の上端に腰掛可能の座部を設けたトレーニング用椅子が提案されている。
【0004】
特許文献1は、スタンドと足のせフレームとが互い違いに回転することで、スタンドを握った上半身の力の反作用で、足のせフレームすなわち腰から下半身が回転する。しかし、特許文献1は、スタンドは垂直な支柱であって使用者が握って腰を回転させるための力点とするだけの構成であるため、スイングを伴わないといった問題がある。また、特許文献1は、スタンドを握って固定された上半身の力の反作用で下半身(足のせフレーム)が反対方向に回転するだけで、スイングが伴っていないので正しいスイングの練習にはならないといった問題がある。
【0005】
特許文献2は、身体の鼻、背骨(へそ)を通る軸に着目して、使用者が腰掛けるサドル支持軸の前後左右を含めた円運動を許容する構成としている。この腰によって上半身のバランスを取ろうとする動きはスイングの練習においては有用であるものの、特許文献2の場合もスイングが伴っていないので、腰から上の上半身のトレーニングにしかならないといった問題があった。
【0006】
つまり、ゴルフ、野球のバッティング、テニス、卓球、など腰の回転による上半身の捻りを伴うスイングは、へそと肛門(腰の中心とする)を結んだ軸を中心とした回転により上半身のひねりが生じ、このとき一方の足から他方の足へと体重移動が伴って初めて正しいスイングが行われるのであるが、特許文献1及び特許文献2は、極端に言えば腰の回転のみの練習が可能であって、前記の正しいスイングの練習は不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-253215号公報
【特許文献2】特開2005-287833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題は、従来は、腰の回転だけを行うものであったため、腰の回転による上半身のひねりが行われつつ一方の足から他方の足へと体重移動が伴った正しいスイングの練習にはならなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、腰の回転による上半身のひねりが行われつつ一方の足から他方の足へと体重移動が伴うスイングを練習するために、使用者のお尻の中心に位置させる座面部と、この座面部の中心から延びた支柱と、この支柱の前記座面部が設けられた側と反対の端部に設けた脚部とを備えることとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脚部と支柱と座面部とが一体となっていて、上半身があまりにも前傾したり、いわゆるへっぴり腰(および腰)となったりすると、地面又は床面に対して脚部が滑って支柱が倒れてしまう。よってへそと肛門と支柱とが一直線に並ぶ姿勢を保つようになる。
【0011】
また、使用者は不安定な座面部に体重を乗せることはなく、全体が倒れないように地面や床面とお尻との間で挟んでいるだけなので、両足の膝に体重が乗った状態を把握しやすいといった効果もある。また、脚部と支柱と座面部とが一体となっているから、一方の足側に一旦支柱を傾けたうえで、腰の回転により上半身のひねりつつ中立状態を介して他方の足側に支柱が傾くようにスイングを行うことで、支柱の動きを意識するだけで正しいスイングを練習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のスイング練習具を示し、(a)は正面図、(b)は下方から見た斜視図である。
【
図2】(a)~(e)は本発明のスイング練習具を用いたスイング練習状況を示す図である。
【
図3】(a)(b)は本発明のスイング練習具を用いた体重移動と腰の回転を説明するための図である。
【
図4】(a)(b)は本発明のスイング練習具を用いてスイング練習した際に悪いフォームであると上手く機能しない状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、腰の回転による上半身のひねりが行われつつ一方の足から他方の足へと体重移動が伴うスイングの体得を容易とする目的を、使用者のお尻の中心に位置させる座面部と、この座面部の中心から延びた支柱と、この支柱の前記座面部が設けられた側と反対の端部に設けた脚部とを備えることで実現した。
【0014】
本発明において、スイングとは、例えば野球のバッティング、ゴルフ、テニス、卓球、といったスポーツにおいてそのスポーツの用具を振ること(フォーム)を意味する。また、本発明において、お尻の中心に座面部を位置させるとは、座面部の中心(支柱)を肛門と一致させることを意味する。そして座面部の裏面(腰掛ける面の反対面)において該座面部の中心に支柱の軸心が位置する。支柱に設けた脚部には、例えば使用場所が床面であれば滑り止めと床面が疵つかないようにゴム材でなるカバーを嵌めておいてもよい。
【0015】
本発明のスイング練習具は、座面部と支柱と脚部とは一体とされ、座面部に腰掛けるがこの座面部に体重を大きく乗せることはなく、よって、スイング練習具全体がスイングと共に回転することも、座面部だけがスイングと共に回転するもない。すなわち、本発明のスイング練習具は、軽く膝を曲げた状態(いわゆる腰を落とす状態)でお尻と地面又は床面との間で狭んで倒れない状態でよく、この状態で、へそと肛門(支柱)を回転軸として腰を回転させて上半身をひねり、このとき、体重移動に伴って支柱が一方から他方に傾き、これをもって体重移動が行われていることを判断する。
【0016】
また、本発明は、支柱を伸縮可能とすることで、大人から子供まで幅広い年齢層でスイングを練習することができる。支柱は、例えば2分割した外筒と内筒とし、内筒を外筒に挿入する構成とすればよい。伸縮の調整は、内筒の外周と外筒の内周とにねじを形成しておいてもよいし、内筒の一か所と、外筒の外周の軸方向に所定間隔を存して複数個所と、に孔を開けて内筒と外筒の孔を一致させてストッパーピンを挿入するようにしてもよい。
【実施例0017】
以下、本発明のスイング練習具の具体例について
図1~
図4を参照して説明する。本発明のスイング練習具1は、使用者のお尻の中心に位置させる座面部2と、この座面部2の中心から延びた支柱3と、この支柱3の座面部2が設けられた側と反対の端部に設けた脚部4とで構成される。
【0018】
座面部2は、腰掛けることを目的としていないので、平面視の面積はお尻全体が乗る必要はないが、支柱3がむき出しだと使用時に肛門に突き刺さってしまう可能性があるので、5~7cm程度の大きさとしている。また、座面部2の厚みを形成する材質は、限定しないが、ウレタンスポンジなど柔らかいものを採択して、カバーをかけておくと、違和感なく使用することができる。
【0019】
支柱3は、材質の限定はないが、本例では、金属製のパイプを用いており、座面部2側を内筒3aと、内筒3aが挿入される外筒3b(外径3~4cm:座面部2の大きさによる)とにより構成されている。内筒3aの外周、外筒3bの内周には、それぞれ螺合するねじが形成されており、ねじを回すことで外筒3bに対する内筒3aの進退量を調整して全体の長さ調整が可能とされている。なお、金属製であると持ち運びに重いという場合は樹脂製でも構わない。
【0020】
脚部4は、支柱3の座面部2と反対端部であって、地面で使う場合には支柱3の端部がむき出しの状態であっても構わない。本例では、室内における床面での使用を想定して脚部4にはゴム製のカバー4aを設けて、容易に滑らないようにすると共に床面を傷つけることを防止するようにしている。
【0021】
上記構成の本発明のスイング練習具は、
図2に示すように使用する。なお、
図2では、野球のバッティング(右打者)のスイングを室内にて練習する状況を示している。スイング練習具1は、使用者の両ひざを若干曲げた状態(つまりいわゆる腰を少し落とした状態)で床面とお尻との間の長さで調整されている。
【0022】
図2(a)「構え」
へそと肛門(以下、支柱3)とを結んだ仮想軸(一点鎖線)が一直線とされると共に仮想軸が床面に対して略直交状となるように使用者が座面部2に腰掛ける。腰掛けると言っても体重はほぼ両ひざに乗せる。スイング練習具1は、床面に対して過剰に傾いていない限り、床面とお尻との間で挟んで倒れないように維持する程度に体重をかける。
【0023】
図2(b)「テイクバック」
へそと支柱3とを結んだ仮想軸がずれないように上半身を、腰の回転をさせつつ捕手寄り(右足方向)に捻る。このとき、体重は捕手寄りの足に乗り、支柱3は上端が捕手寄りに移動して傾くことになる。この支柱3の傾きにより体重移動が行われていることが把握できる。つまり、上半身だけのテイクバックとなっていないことが把握できる。
【0024】
図2(c)「スイング開始」
テイクバックからスイングを開始(ミート直前まで)は、(b)の状態から、今度はへそと支柱3とを結んだ仮想軸がずれないように上半身を、腰の回転をさせつつ投手寄り(左足方向)に捻り、一旦、支柱3が中立状態(傾いていない状態)となる。このとき、体重は両足にほぼ均等に乗った状態であることが、支柱3の中立状態で把握できる。要するにテイクバックで捕手寄りの足の膝に乗った体重が両足の膝に移動していることが把握できる。
【0025】
図2(d)「ミート」
ミートからミート直後は、今度はへそと支柱3とを結んだ仮想軸がずれないように上半身を、腰の回転をさせつつ(c)の状態からさらに投手寄り(左足方向)に捻り、支柱3がやや投手寄りに傾く状態となる。このとき、体重が投手寄りの足の膝に乗った状態であることが、支柱3の傾きで把握できる。
【0026】
図2(e)「フォロースルー」
ミート直後からフォロースルーは、へそと支柱3とを結んだ仮想軸がずれないように上半身を、腰の回転をさせつつ(d)の状態からさらに投手寄り(左足方向)に捻り、支柱3がさらに投手寄りに傾く状態となる。このとき、体重が投手寄りの足の膝に完全に乗った状態であることが、支柱3の傾きで把握できる。
【0027】
次に、野球の右打者がアウトコース(打者から遠い位置)の低い球をバッティングするときのスイング練習、又は、テニスの右利きプレイヤーのフォアハンドのスイング練習、の状況について
図3を参照して説明する。スイングに伴うスイング練習具1の挙動は上記
図2の(a)~(e)のとおりであるが、
図3(a)(b)では
図2(c)(d)に相当する状況をピックアップして説明する。
【0028】
へそと支柱3とを結んだ仮想軸がずれないように上半身を、腰の回転をさせつつ中立状態からさらに左足方向に捻り、支柱3がやや左足方向に傾く状態となる。
図3(a)(b)において
図2(c)(d)と異なるのは、支柱3の上端が、打とうとする球寄りに傾いている点である。
【0029】
すなわち、この場合は使用者(打者)が前傾姿勢となるが、スイング練習具1を用いることで、上半身あるいは腕だけを球に合わせようとする姿勢ではなく、
図3(a)(b)に示すように、へそと支柱3とを結んだ仮想軸がずれないように足のスタンスと膝の曲げ具合で打点に向けて身体を調整するということを体得することができる。
【0030】
図4には、スイング練習具1を用いることで、悪いスイングはすぐに体感することができることを示している。
図4(a)は、上半身だけが前傾しすぎている例を示している。このとき、へそと肛門までの軸と、支柱3とに角度が付いてしまって、結果的に床面からスイング練習具1が滑って倒れてしまう。つまり、スイング練習具1が倒れてしまうことで悪いスイングであることが把握できる。
【0031】
図4(b)は、いわゆるへっぴり腰(および腰)の例を示している。このときもへそと肛門までの軸と、支柱3とに角度が付いてしまって、結果的に床面からスイング練習具1が滑って倒れてしまう。つまり、スイング練習具1が倒れてしまうことで悪いスイングであることが把握できる。
【0032】
以上、説明したとおり、本発明のスイング練習具1は、(支柱3の)傾き具合で上半身のひねりに応じた腰の回転が行われつつ一方の足から他方の足へと体重移動が伴うスイングか否かを把握できるので、正しいスイングをすぐに体得することができる。また、悪いスイングを容易に把握でき、すぐに修正することもできる。
【0033】
また、本発明のスイング練習具1は、持ち運びが容易で、例えば、室内での素振りに使用することもでき、いわゆるバッティングセンターやゴルフの打ちっぱなしに持ち込んで実際に打球してスイングチェックしながら練習することができる。