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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026592
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】化粧仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20220203BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220203BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20220203BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20220203BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220203BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220203BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D7/24 302U
B05D7/24 303E
B05D7/24 303A
C09D163/00
C09D7/41
C09D7/61
C09D5/00 D
E04F13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130138
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 育恵
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
4D075AE03
4D075BB16X
4D075BB56Z
4D075BB60Z
4D075CA03
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB12
4D075DC01
4D075DC05
4D075EA27
4D075EB33
4D075EB39
4D075EB45
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC07
4D075EC11
4D075EC30
4D075EC31
4D075EC33
4D075EC35
4D075EC51
4D075EC54
4J038DB351
4J038GA09
4J038HA166
4J038HA206
4J038HA536
4J038JA01
4J038JB02
4J038JC30
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】
下塗材の塗装・乾燥後、仕上塗材を塗装するまでの条件が変化しても、密着性等において安定した性能を発揮できる化粧仕上げを得る。
【解決手段】
本発明は、下地に対し下塗材を塗装し、当該下塗材の乾燥後、仕上塗材を塗装する化粧仕上げ方法であって、前記下塗材は、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、及び顔料を含有し、顔料体積濃度が1~30%であり、前記エポキシ樹脂と前記アミン硬化剤との配合比が、[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)]で、1.0以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に対し下塗材を塗装し、当該下塗材の乾燥後、仕上塗材を塗装する化粧仕上げ方法であって、
前記下塗材は、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、及び顔料を含有し、
顔料体積濃度が1~30%であり、
前記エポキシ樹脂と前記アミン硬化剤との配合比が、[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)]で、1.0以下である
ことを特徴とする化粧仕上げ方法。
【請求項2】
前記アミン硬化剤の活性水素当量が40~200g/eqであることを特徴とする請求項1記載の化粧仕上げ方法。
【請求項3】
前記仕上塗材が、弾性仕上塗材であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧仕上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化粧仕上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物、土木構築物等に対し塗装による化粧仕上げを施す場合は、これらを構成する種々の基材に対し、密着性等を確保するために被覆材として下塗材を塗装した後に、仕上塗材を塗装している。また最近では、経年劣化した既存塗膜面(旧塗膜面)に対して、下塗材と仕上塗材を塗装するケースも多くなっている。
【0003】
ここで使用される下塗材は、基材や既存塗膜面等(以下、これらを総称して「下地」ともいう)と、仕上塗材の密着性等を高める大きな役割を担う。
【0004】
このような下塗材としては、例えば、特許文献1や2に記載されているものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-306305号公報
【特許文献2】特開2016-117795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載の下塗材は、その塗膜が透明であるため、塗装部と非塗装部との判別が困難となる場合がある。このような問題に対処するため、下塗材に顔料を配合して、色付けを行うことが考えられる。
【0007】
ところが、顔料を配合した下塗材を塗装に供した場合、下塗材塗膜の乾燥後、仕上塗材を塗装するまでの条件(例えば、時間、温度等)により、密着性等の物性が悪影響を受け、仕上塗材適性が損われるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、下塗材の塗装・乾燥後、仕上塗材を塗装するまでの条件が変化しても、密着性等において安定した性能を発揮できる化粧仕上げを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、下地に対し、特定の下塗材を塗装・乾燥後、仕上塗材を塗装する化粧仕上げ方法に想到し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有するものである。
1.下地に対し下塗材を塗装し、当該下塗材の乾燥後、仕上塗材を塗装する化粧仕上げ方法であって、
前記下塗材は、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、及び顔料を含有し、
顔料体積濃度が1~30%であり、
前記エポキシ樹脂と前記アミン硬化剤との配合比が、[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)]で、1.0以下である
ことを特徴とする化粧仕上げ方法。
2.前記アミン硬化剤の活性水素当量が40~200g/eqであることを特徴とする1.記載の化粧仕上げ方法。
3.前記仕上塗材が、弾性仕上塗材であることを特徴とする1.または2.に記載の化粧仕上げ方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下塗材の塗装・乾燥後、仕上塗材を塗装するまでの条件が変化しても、密着性等において安定した性能を発揮できる化粧仕上げが得られる。すなわち、本発明では、仕上塗材適性において優れた性能を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[下地]
本発明は、例えば、建築物や土木構造物の壁面(内壁面、外壁面等)、床面、天井面等への化粧仕上げに用いることができる。具体的には、例えば、モルタル、コンクリート、窯業系サイディングボード、セラミック系サイディングボード、金属系サイディングボード、押出成形板、スレート板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、合成樹脂等の基材、あるいはこのような基材上(基材の表面)に形成された多種多様な既存塗膜等の下地に適用できる。このような下地(基材や既存塗膜)の形状としては、例えば、平坦なもの、各種凹凸模様(例えば石材調、レンガ・タイル調、木目調、ボーダー調、塗り壁調、吹付け調等)を有するもの等が挙げられる。
【0013】
本発明は、シーリング目地部を含む下地に対して適用することもできる。シーリング目地部を構成するシーリング材としては、例えば、シリコーン系シーリング材、変性シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、変性ポリサルファイド系シーリング材、アクリルウレタン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、SBR系シーリング材、ブチルゴム系シーリング材等が挙げられる。シーリング目地部は、弾性を有する乾式目地材等によって構成されたものであってもよい。
【0014】
本発明は、経年劣化した既存塗膜面の改修(塗り替え)にも適用できる。既存塗膜面の経年劣化の程度は、特に限定されるものではないが、塗膜形成後概ね5年以上(さらには8年以上)使用されたものは、塗装対象とすることができる。
【0015】
塗装対象となる既存塗膜面がシーリング目地部を含む場合は、既存のシーリング材をそのまま残しておいてもよいし、下塗材の塗装前に新たなシーリング材を打設することもできる。
【0016】
既存塗膜は、上記基材上に、現場塗装、あるいは工場塗装(ライン塗装)等により既に塗装されている種々の塗膜であり、例えば、有機質塗膜、無機質塗膜、有機無機複合塗膜等から選ばれる少なくとも1種の塗膜が挙げられる。また、既存塗膜としては、着色塗膜(エナメル系塗膜、印刷塗膜等)、クリヤー塗膜、あるいはこれらの積層塗膜等が挙げられ、各種コーティング材を基材に塗装して形成された塗膜である。このようなコーティング材は、例えば、常温乾燥型、常温硬化型、焼付け硬化型、紫外線(UV)硬化型、電子線硬化型等のいずれであってもよい。また、このようなコーティング材は、例えば、弾性タイプ、硬質タイプ等のいずれであってもよい。
【0017】
このようなコーティング材の結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。
【0018】
本発明は、既存塗膜が、無機質塗膜(上記無機質結合材を含む塗膜)、有機無機複合塗膜(上記有機無機複合結合材を含む塗膜)、フッ素樹脂塗膜(上記フッ素樹脂を含む塗膜)等から選ばれる1種以上である場合にも適用できる。このような既存塗膜は、光触媒酸化チタン等を含むものであってもよい。
【0019】
本発明では、下塗材の塗装前に、このような下地に対し、必要に応じ、洗浄、下地調整等の処理を行うこともできる。
【0020】
[下塗材]
本発明では、上述の下地に対し、エポキシ樹脂、アミン硬化剤、及び顔料を含有する、特定の下塗材を塗装する。
【0021】
エポキシ樹脂とアミン硬化剤は、塗膜形成時に硬化反応を生じ、樹脂成分として作用するものである。このうち、エポキシ樹脂としては、例えば、可とう性エポキシ樹脂、硬質エポキシ樹脂等が挙げられ、本発明では、少なくとも可とう性エポキシ樹脂を含む態様が望ましい。
【0022】
可とう性エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族変性エポキシ樹脂、ブタジエン系エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、チオール系エポキシ樹脂、アミン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリオール変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。この中でも、脂肪酸変性エポキシ樹脂が好適である。
【0023】
本発明下塗材のエポキシ樹脂中に占める可とう性エポキシ樹脂の比率(固形分換算)は、下地追従性、密着性、仕上塗材適性等の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70~100重量%である。
【0024】
脂肪酸変性エポキシ樹脂は、脂肪族多塩基酸化合物をエポキシ樹脂に付加反応させて得られるものである。付加反応には、例えば、エステル化反応等が使用できる。ここで用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、その他後述の硬質エポキシ樹脂等で例示するような各種エポキシ樹脂が使用できる。脂肪族多塩基酸化合物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドカン2酸、ダイマー酸等が挙げられる。この中でも、ダイマー酸が好適である。
【0025】
ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の二量体である。ダイマー酸を構成する不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸等が挙げられる。
【0026】
ダイマー酸をエポキシ樹脂に付加反応させて得られるダイマー酸変性エポキシ樹脂は、本発明下塗材のエポキシ樹脂として好適なものである。本発明下塗材のエポキシ樹脂中に占めるダイマー酸変性エポキシ樹脂の比率(固形分換算)は、下地追従性、密着性、仕上塗材適性等の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70~100重量%である。
【0027】
硬質エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型ビスフェノールAエポキシ樹脂、フェノールノボラック型ビスフェノールFエポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グシシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0028】
本発明で使用するエポキシ樹脂は、エポキシ当量(固形分当たり)が好ましくは300~3000g/eq、より好ましくは400~2000g/eq、さらに好ましくは450~1500g/eq、特に好ましくは500~1100g/eqである。エポキシ当量が上記下限以上であることにより、下地追従性、密着性等の点で好適である。エポキシ当量が上記上限以下であることにより、耐膨れ性、密着性、仕上塗材適性等の点で好適である。なお、エポキシ当量とは、エポキシ樹脂の分子量をエポキシ基の数で除した値である。本発明において、「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0029】
アミン硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環状ポリアミン、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミン、脂環式ポリアミドアミン、芳香族ポリアミドアミン等のポリアミン化合物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。本発明では、この中でも、脂肪族ポリアミン、脂肪族ポリアミド、脂肪族ポリアミドアミンから選ばれる1種以上の脂肪族アミン硬化剤を好適に使用することができる。
【0030】
本発明で使用するアミン硬化剤は、活性水素当量(固形分当たり)が好ましくは40~200g/eq、より好ましくは50~120g/eq、さらに好ましくは60~95g/eqである。活性水素当量が上記範囲内であることにより、密着性、仕上塗材適性等において十分な効果を得ることができる。なお、活性水素当量とは、アミン硬化剤の分子量をアミノ基の水素原子数で除した値である。
【0031】
本発明では、このようなエポキシ樹脂とアミン硬化剤について、アミン硬化剤の活性水素当量とエポキシ樹脂のエポキシ当量が、[アミン硬化剤の活性水素当量/エポキシ樹脂のエポキシ当量]で、好ましくは0.4未満、より好ましくは0.01~0.3、さらに好ましくは0.03~0.25、特に好ましくは0.05~0.2の組み合わせになるように各材料を設定して使用することができる。エポキシ樹脂、アミン硬化剤として、このような条件を満たす材料を組み合わせて使用することにより、密着性、仕上塗材適性等の点でより好ましい効果を得ることができる。
【0032】
エポキシ樹脂とアミン硬化剤の配合比は、[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)]で1.0以下であり、好ましくは0.3~1.0、より好ましくは0.5~0.98、さらに好ましくは0.6~0.95、特に好ましくは0.7~0.9である。なお、アミン硬化剤の配合量及び活性水素当量、並びにエポキシ樹脂の配合量及びエポキシ当量は、いずれも固形分を基準とするものである。エポキシ樹脂とアミン硬化剤の配合比が上記上限以下であることにより、密着性、下地追従性、仕上塗材適性等の点で好適であり、上記下限以上であることにより、硬化性、密着性等の点で好適である。特に本発明では、このような配合比でエポキシ樹脂とアミン硬化剤を用いることにより、下塗材塗装後、仕上塗材を塗装するまでの条件(例えば、時間、温度等)による密着性の低下等を抑制することができ、仕上塗材適性を高めることができる。
【0033】
本発明において、顔料は、下塗材塗膜の視認性、密着性等の向上化に寄与する成分である。顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、防錆顔料等が使用できる。
【0034】
具体的に、着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄-クロム複合酸化物、マンガン-ビスマス複合酸化物、マンガン-イットリウム複合酸化物、鉄-マンガン複合酸化物、鉄-銅-マンガン複合酸化物、鉄-クロム-コバルト複合酸化物、銅-クロム複合酸化物、銅-マンガン-クロム複合酸化物、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0035】
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0036】
防錆顔料としては、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のリン酸化合物;亜リン酸亜鉛、亜リン酸鉄、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸マグネシウム等の亜リン酸化合物;ポリリン酸亜鉛、ポリリン酸鉄、ポリリン酸アルミニウム等のポリリン酸化合物;モリブデン酸亜鉛、モリンブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、リンモリブデン酸アルミニウム等のモリブデン酸化合物;酸化バナジウム等のバナジウム化合物;ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム等のホウ酸化合物;シアナミド亜鉛、シアナミド亜鉛カルシウム等のシアナミド化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0037】
下塗材における顔料としては、平均粒子径1μm以下(より好ましくは0.1~0.9μm、さらに好ましくは0.2~0.8μm)の着色顔料を含む態様が望ましい。このような態様は、密着性向上化等の点で好適である。このような効果には、着色顔料の凝集力等に起因して下塗材塗膜の強度が高まること、等が寄与しているものと推察される。なお、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される平均値(測定条件は、分布基準:体積、屈折率:1.60-0.10i)である。
【0038】
本発明下塗材の顔料体積濃度は1~30%であり、好ましくは3~25%、より好ましくは5~23%、さらに好ましくは7~20%、特に好ましくは8~15%である。顔料体積濃度が上記範囲内であることにより、下塗材塗膜の視認性を付与しつつ、密着性に優れた塗膜を形成することができる。顔料体積濃度が上記値を満たさない場合は、上述の効果が得られ難くなる。また、本発明では、顔料体積濃度を上記範囲内に制御することにより、下塗材の塗装・乾燥後、仕上塗材を塗装するまでの条件が変化しても、十分な密着性等を確保することができる。すなわち、仕上塗材適性を確保することができる。
【0039】
顔料体積濃度は、乾燥塗膜中に含まれる顔料の体積百分率であり、下塗材を構成する樹脂成分(エポキシ樹脂及びアミン硬化剤)と顔料の重量部数及び比重から計算により求められる値である。なお、樹脂成分の比重は1とする。
【0040】
本発明の下塗材は、上記成分に加え、シラン化合物を含むことができる。本発明では、このような下塗材を使用した場合、シラン化合物の配合により、密着性等をいっそう高めることができ、十分な仕上塗材適性を確保することもできる。
【0041】
シラン化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシラン化合物;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルコキシシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシラン化合物;
テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン等のクロロシラン化合物;
テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン等のアセトキシシラン化合物;
γ-グリシドキシプロピルトリメキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリイミノオキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリイソプロペニルオキシシランとグリシドールとの付加物等のエポキシ基を含有するシラン化合物;
N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を含有するシラン化合物;
γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基を含有するシラン化合物;等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0042】
本発明では、特に、エポキシ基を含有するシラン化合物、アミノ基を含有するシラン化合物から選ばれる1種以上を好適に使用することができる。
【0043】
シラン化合物の混合比率は、樹脂成分(エポキシ樹脂及びアミン硬化剤)の固形分100重量部に対し、好ましくは3重量%以下、より好ましくは0.1~2.8重量部、さらに好ましくは0.2~2.5重量部である。シラン化合物の混合比率がこのような範囲内であることにより、密着性をいっそう高めることができるとともに、エポキシ樹脂、アミン硬化剤の混合直後に塗装する場合だけでなく、混合して時間経過した後に塗装する場合でも、優れた密着性を示すことができ、仕上塗材適性向上の点でも好適である。シラン化合物の使用は、無機質塗膜、有機無機複合塗膜、フッ素樹脂塗膜等の既存塗膜に対する密着性向上化等の点でも好適である。
【0044】
本発明下塗材は、上述の成分が媒体に溶解ないし分散した態様とすることができる。媒体が非水系溶剤を主成分とするものであれば溶剤系下塗材、媒体が水を主成分とするものであれば水性下塗材を得ることができる。
【0045】
非水系溶剤としては、例えば、n-へプタン、n-ヘキサン、n-ペンタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等の脂肪族炭化水素溶剤、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶剤、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素含有混合溶剤、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ、ケロシン等の石油系溶剤等の他、イソパラフィン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテルアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0046】
本発明下塗材は、非水系溶剤として、アニリン点12~70℃の非水系溶剤を含むことができる。このような非水系溶剤は、下地に浸透する作用、既存塗膜を若干膨潤ないし溶解する作用等により、密着性向上に寄与できるものである。アニリン点12~70℃の非水系溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素含有混合溶剤、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ、ケロシン等の石油系溶剤等から選ばれる1種以上が好適である。なお、アニリン点は、JIS K2256の方法で測定される値である。
【0047】
本発明下塗材における媒体が水を主成分とする場合(すなわち、水性媒体である場合)、媒体は水のみからなる態様であってもよいし、水と、水溶性の非水系溶剤との混合物からなる態様であってもよい。水溶性の非水系溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤等が挙げられ、これらは1種または2種以上で使用できる。エポキシ樹脂、アミン硬化剤等を水性媒体に溶解ないし分散させるには、例えば、親水性官能基の付与、分散剤の使用等の手段を採用することができる。
【0048】
本発明下塗材においては、上述の成分の他、必要に応じ、例えば、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、界面活性剤、増粘剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、触媒、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を、本発明の効果が著しく阻害されない範囲内で混合することができる。
【0049】
本発明下塗材は、以上のような各成分を常法により均一に撹拌・混合して製造することができる。下塗材の形態は、流通時には、エポキシ樹脂を含む主剤とアミン硬化剤を含む硬化剤とからなる2液型の形態としておき、これらを塗装時に混合して使用することが望ましい。
【0050】
本発明下塗材の不揮発分は、好ましくは30~90重量%であり、より好ましくは40~80重量%、さらに好ましくは45~75重量%である。下塗材の不揮発分がこのような範囲内であることにより、下地に対し、下塗材を満遍なく一様に塗着させやすくなり、密着性向上化の点で好適である。なお、不揮発分は、JIS K5601-1-2の方法にて測定される値であり、加熱温度は105℃、加熱時間は60分である。
【0051】
本発明下塗材において、下塗材の不揮発分中に占める樹脂固形分(エポキシ樹脂とアミン硬化剤との合計固形分)の比率は、好ましくは20~85重量%、より好ましくは40~80重量%、さらに好ましくは60~75重量%である。下塗材の不揮発分中に占める顔料の比率は、好ましくは15~80重量%、より好ましくは20~60重量%、さらに好ましくは25~40重量%である。不揮発分中の樹脂固形分や顔料の比率が上記範囲内であることにより、密着性、仕上塗材適性等に優れた塗膜を形成する効果を高めることができる。
【0052】
本発明下塗材の塗装においては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を採用することができる。また、工場内で塗装する場合は、上記以外にもロールコーター、フローコーター等を用いて塗装することもできる。
【0053】
下塗材の塗付け量は、好ましくは0.03~0.5kg/m(より好ましくは0.05~0.3kg/m)程度である。下塗材の塗回数は、下地の状態によって適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。下塗材の塗装、乾燥は、好ましくは0~50℃の環境下で行うことができる。本発明下塗材は、常温硬化型として好ましいものである。下塗材塗装後の乾燥時間(仕上塗材塗装までの間隔)は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上14日以内である。このような下塗材は、仕上塗材適性を十分に発揮することができる。
【0054】
[仕上塗材]
本発明では、上記下塗材が乾燥した塗膜面(下塗材塗膜)の上に、仕上塗材を塗装する。この際、下塗材塗膜は、少なくとも指触乾燥の状態であればよく、半硬化乾燥、硬化乾燥等の状態であってもよい。このような下塗材塗膜に対して仕上塗材を塗装することによって、美観性、密着性等を備えた化粧仕上げが得られる。仕上塗材は、1種または2種以上使用できる。
【0055】
上記下塗材により形成された塗膜は、多種多様な仕上塗材に対し優れた密着性を発揮することができる。仕上塗材としては、一般的に建築物等の塗装に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、その結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂等の有機質結合材、あるいはシリコン樹脂、アルコキシシラン、コロイダルシリカ、ケイ酸塩等の無機質結合材、アクリルシリコン樹脂等の有機無機複合結合材等が挙げられる。
【0056】
仕上塗材の構成成分としては、上記結合材の他に、例えば、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、カップリング剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒、溶剤、水等が挙げられる。
【0057】
具体的に、仕上塗材としては、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JIS K5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JIS K5659:2008)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K5660:2008)、建築用防火塗料(JIS K5661:1970)、合成樹脂エマルションペイント(JIS K5663:2008)、路面標示用塗料(JIS K5665:2011)、多彩模様塗料(JIS K5667:2003)、合成樹脂エマルション模様塗料(JIS K5668:2010)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K5670:2008)、鉛・クロムフリーさび止めペイント(JIS K5674:2008)、屋根用高日射反射率塗料(JIS K5675:2011)、建物用床塗料(JIS K5970:2008)、建築用塗膜防水材(JIS A6021:2011)、建築用仕上塗材(JIS A6909:2014)、等が挙げられる。
【0058】
本発明は、仕上塗材が弾性仕上塗材である場合に、特に有利な効果を得ることができる。弾性仕上塗材としては、例えば、JIS A6909:2014に規定されている建築用仕上塗材のうち、可とう性または防水性を示すもの、JIS A6021:2011に規定されている建築用塗膜防水材等が挙げられる。具体的に、弾性仕上塗材としては、例えば、可とう形外装けい酸質系薄付け仕上げ塗材(可とう形外装薄塗材Si)、可とう形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上げ塗材(可とう形外装薄塗材E)、防水形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上げ塗材(防水形外装薄塗材E)、可とう形ポリマーセメント系複層仕上塗材(可とう形複層塗材CE)、防水形ポリマーセメント系複層仕上塗材(防水形複層塗材CE)、防水形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材(防水形複層塗材E)、防水形反応硬化形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材(防水形複層塗材RE)、防水形合成樹脂溶液系複層仕上塗材(防水形複層塗材RS)、可とう形合成樹脂エマルション系改修用仕上塗材(可とう形改修塗材E)、可とう形反応硬化形合成樹脂エマルション系改修用仕上塗材(可とう形改修塗材RE)、可とう形ポリマーセメント系改修用仕上塗材(可とう形改修塗材CE)、アクリルゴム系屋根用塗膜防水材、ウレタンゴム系屋根用塗膜防水材、アクリルゴム系外壁用塗膜防水材、ウレタンゴム系外壁用塗膜防止材等が挙げられる。
【0059】
仕上塗材の塗装方法としては、特に限定されず、各材料に応じた塗装方法を採用することができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、コテ、刷毛等を用いることができる。仕上塗材の塗付け量は、その種類にもよるが、好ましくは0.2~5kg/m、より好ましくは0.3~4kg/mである。塗装時には、必要に応じ適宜希釈することもできる。仕上塗材の塗装、乾燥は、好ましくは0~50℃、より好ましくは5~45℃の環境下で行うことができる。
【実施例0060】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明の特徴をより明確にする。
【0061】
○主剤の製造
(主剤1)
エポキシ樹脂a{ダイマー酸変性エポキシ樹脂溶液、固形分:60重量%、エポキシ当量(固形分当たり):780g/eq、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)及びソルベントナフサ(アニリン点13℃)}75重量部、酸化チタン(比重:4.2、平均粒子径:0.3μm)15重量部、タルク(比重2.7、平均粒子径5μm)2重量部、ソルベントナフサ(同上)4重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤1を製造した。
【0062】
(主剤2)
エポキシ樹脂a(同上)67重量部、酸化チタン(同上)15重量部、重質炭酸カルシウム(比重2.7、平均粒子径6μm)5重量部、タルク(同上)5重量部、ソルベントナフサ(同上)4重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤2を製造した。
【0063】
(主剤3)
エポキシ樹脂a(同上)61重量部、酸化チタン(同上)15重量部、重質炭酸カルシウム(同上)8重量部、タルク(同上)8重量部、ソルベントナフサ(同上)4重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤3を製造した。
【0064】
(主剤4)
エポキシ樹脂b{フェノールノボラック型ビスフェノールAエポキシ樹脂溶液、固形分:60重量%、エポキシ当量(固形分当たり):600g/eq、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)及びソルベントナフサ(アニリン点13℃)}67重量部、酸化チタン(同上)15重量部、重質炭酸カルシウム(同上)5重量部、タルク(同上)5重量部、ソルベントナフサ(同上)4重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)4重量部を常法にて均一に混合し、主剤4を製造した。
【0065】
(主剤5)
エポキシ樹脂a(同上)65重量部、ソルベントナフサ(同上)29重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)6重量部を常法にて均一に混合し、主剤5を製造した。
【0066】
(主剤6)
エポキシ樹脂a(同上)38重量部、酸化チタン(同上)15重量部、重質炭酸カルシウム(同上)15重量部、タルク(同上)15重量部、ソルベントナフサ(同上)12重量部、添加剤(分散剤、増粘剤、及び消泡剤)5重量部を常法にて均一に混合し、主剤6を製造した。
【0067】
○硬化剤の製造
(硬化剤1)
アミン硬化剤a{脂肪族ポリアミドアミン、固形分100重量%、活性水素当量(固形分)80g/eq}15重量部、シラン化合物{N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン}4重量部、アルコール系溶剤16重量部、ソルベントナフサ(同上)65重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤1を製造した。
【0068】
(硬化剤2)
アミン硬化剤a(同上)15重量部、アルコール系溶剤16重量部、ソルベントナフサ(同上)69重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤2を製造した。
【0069】
(硬化剤3)
アミン硬化剤b{脂肪族ポリアミドアミン、固形分100重量%、活性水素当量(固形分)180g/eq}38重量部、アルコール系溶剤6重量部、ソルベントナフサ(同上)56重量部を常法にて均一に混合し、硬化剤3を製造した。
【0070】
○下塗材の製造
(下塗材1)
上記主剤1(100重量部)と上記硬化剤1(25重量部)とを均一に混合して、下塗材1を作製した。この下塗材1の各特性値は表1に示す通りであり、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の配合比[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)](表1では「配合比」と表記)が0.81、顔料体積濃度が8%、下塗材の不揮発分(表1では「不揮発分」と表記)が54重量%、下塗材の不揮発分中に占める樹脂固形分の比率(表1では「樹脂比率」と表記)が72重量%、下塗材の不揮発分中に占める顔料の比率(表1では「顔料比率」と表記)が25重量%である。
【0071】
(下塗材2)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤1(20重量部)とを均一に混合して、下塗材2を作製した。この下塗材2の各特性値は、表1に示す通りである。
【0072】
(下塗材3)
上記主剤3(100重量部)と上記硬化剤1(22重量部)とを均一に混合して、下塗材3を作製した。この下塗材3の各特性値は、表1に示す通りである。
【0073】
(下塗材4)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤1(23重量部)とを均一に混合して、下塗材4を作製した。この下塗材4の各特性値は、表1に示す通りである。
【0074】
(下塗材5)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤2(20重量部)とを均一に混合して、下塗材5を作製した。この下塗材5の各特性値は、表1に示す通りである。
【0075】
(下塗材6)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤2(27重量部)とを均一に混合して、下塗材6を作製した。この下塗材6の各特性値は、表1に示す通りである。
【0076】
(下塗材7)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤2(25重量部)とを均一に混合して、下塗材7を作製した。この下塗材7の各特性値は、表1に示す通りである。
【0077】
(下塗材8)
上記主剤3(100重量部)と上記硬化剤2(23重量部)とを均一に混合して、下塗材8を作製した。この下塗材8の各特性値は、表2に示す通りである。
【0078】
(下塗材9)
上記主剤4(100重量部)と上記硬化剤2(28重量部)とを均一に混合して、下塗材9を作製した。この下塗材9の各特性値は、表2に示す通りである。
【0079】
(下塗材10)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤3(20重量部)とを均一に混合して、下塗材10を作製した。この下塗材10の各特性値は、表2に示す通りである。
【0080】
(下塗材11)
上記主剤5(100重量部)と上記硬化剤3(20重量部)とを均一に混合して、下塗材11を作製した。この下塗材11の各特性値は、表2に示す通りである。
【0081】
(下塗材12)
上記主剤6(100重量部)と上記硬化剤3(12重量部)とを均一に混合して、下塗材12を作製した。この下塗材12の各特性値は、表2に示す通りである。
【0082】
(下塗材13)
上記主剤6(100重量部)と上記硬化剤2(14.5重量部)とを均一に混合して、下塗材13を作製した。この下塗材13の各特性値は、表2に示す通りである。
【0083】
(下塗材14)
上記主剤2(100重量部)と上記硬化剤3(26重量部)とを均一に混合して、下塗材14を作製した。この下塗材14の各特性値は、表2に示す通りである。
【0084】
以上の方法で得られた下塗材を用いて、以下の試験を行った。
【0085】
○試験1
試験基材として、スレート板を用意した。この試験基材の半面に対し、上記下塗材を塗付け量0.1kg/mにてスプレー塗装し、2時間乾燥させた。このとき、試験基材全面を観察し、下塗材塗膜の視認性を評価した。評価基準は、下塗材塗膜が容易に視認できるものを「○」、下塗材塗膜が視認されにくいものを「×」とした。
【0086】
○試験2
試験基材として、スレート板を用意した。この試験基材に対し、上記下塗材を塗付け量0.1kg/mにてスプレー塗装し、24時間乾燥後、仕上塗材(JIS A6909:2014に該当する防水形外装薄塗材E)を塗付け量1kg/mにてコテ塗りし、7日間乾燥養生することにより、試験体を作製した。なお、塗装ないし養生の工程は、すべて標準状態下(気温23℃、相対湿度50%)で行った。得られた試験体について、その表面の塗膜端部を爪にて剥がすピーリングテストを行った。このとき全く剥がれなかったものを「A」、全面的に剥がれたものを「D」として、4段階(優:A>B>C>D:劣)にて評価を行った。
【0087】
○試験3
試験2と同様の試験基材に対し、上記下塗材を塗付け量0.1kg/mにて標準状態下でスプレー塗装し、50℃環境下で7日間乾燥させた。次いで、仕上塗材(同上)を塗付け量1kg/mにて標準状態下でコテ塗りし、7日間乾燥養生することにより、試験体を作製した。得られた試験体について、試験2と同様にピーリングテストを行った。
【0088】
(実施例1~10、比較例1~4)
使用した下塗材と、その試験結果を表3~4に示す。実施例1~10では、比較例1~4に比べ総じて良好な結果が得られた。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】