(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026622
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】呼気計測システム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/497 20060101AFI20220203BHJP
G01N 33/98 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
G01N33/497 A
G01N33/98
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130182
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】717005224
【氏名又は名称】三原 孝士
(71)【出願人】
【識別番号】519003734
【氏名又は名称】田中 大右
(72)【発明者】
【氏名】三原 孝士
(72)【発明者】
【氏名】田中 大右
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045DA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】人体の呼気中のエチルアルコールやアセトン、硫化水素等の成分を検出・計測することで人体の健康状態や動作状態を知りうる呼気成分計測システムを提供する。
【解決手段】安価で軽量なプラスチック材料を用いて本体を構成し、センサも安価で小型なガスセンサ3と流量センサ4を用いて構成するもので、ガスセンサ3をケース内部に入れ、呼気導入管と排気管5を具備し、その排気管5の内部に流量センサ4を入れ、その流量センサ4を用いてケース内部に入る呼気容量を計測することで、呼気の量と呼気中の気体成分の両者を計測することで正確なデータを得るように工夫された呼気成分の計測システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気を導入する導入口と、呼気を排気する排気口と、排気口に嵌挿された排気管と、排気管に装備された流量計と、導入口、排気口を具備したケースと、ケース内に具備されたガスセンサによって構成され、呼気の容積と呼気中の成分量の両方を計測する手段によって、呼気中の成分濃度を定量的に計測可能な呼気成分計測システム。
【請求項2】
ケースに具備されたファンと空気を外部から取り込む通気穴と、その通気穴からの空気流入を制御する逆止弁を具備した請求項1の構成
【請求項3】
呼気の流入量は気体の流量センサで計測される流速を時間積分することで得られることを特徴とする請求項1、2の構成
【請求項4】
呼気の流入量は抵抗値500Ω以下の固体、或いは薄膜抵抗をもちいて、当該抵抗に通電した場合の発熱を、当該抵抗が受ける空気の流れによって発生する温度の変化を用いて流速値を計測することを特徴とした請求項1、2、3の構成
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来には無かった呼気の吹きかけ方による影響がない呼気中濃度が計測できる呼気中のアルコールやアセトン、硫化水素等を計測する呼気計測システムを提案することを目的にしている。
【背景技術】
【0002】
本技術分野においては、呼気中のアルコール濃度を計測するためのアルコールセンサが最も良く普及している。
【0003】
従来のアルコールセンサは、手持ち可能なセンサ容器の先端に取り付けられた、多くは酸化物半導体を用いたガスセンサに息を吹きかけることで、呼気中のアルコールを検出するものであった。
【0004】
この方法では、被験者が自らセンサ部に息を吹きかけるため、息を吹きかける位置や、息の量、息の吹きかける速度と言った不安定要素が極めて多く、再現性の無いものであった。
【0005】
特に自動車・航空機を含む公共交通機関の運転の前に、呼気中のアルコール濃度の検出では、体内の血液に残留する正確なアルコール濃度を検出する必要があるにも関わらず、センサ部に呼気の吹きかけ方によって大きく異なるのは大きな社会問題である。
【0006】
例えば、センサ部に息が掛からないように、向きを少し変えて息を吹きかけた場合は、呼気中のアルコールが極めて僅かであるとの計測結果が出てしまい、十全なアルコール濃度を検出できず看過できない大事故に繋がりかねない。
【0007】
このような背景や課題から、特許文献1に示す公開公報では、呼気を導入する導入管の内部に、圧力センサと電磁バルブ、更にその電磁バルブの後部にガスセンサを具備し、呼気が導入されると当該圧力センサの信号が検出され、その圧力センサによって電磁バルブが開いて、呼気が導入され、ガスセンサによって呼気が計測される構成が開示されている。
【0008】
この公開特許には圧力センサは呼気が導入されて圧力が閾値を超えて上がった場合に電磁バルブを開き、そのオン時間を用いてセンサの連続使用時間を積算して、センサの交換時期を通知する構成としている。
【0009】
他の構成として特許文献2に示す公開公報では、呼気中の二酸化炭素濃度を正確に計測するために差圧センサを具備した装置であって、一旦容量が判ったサンプルバッグに呼気を収集し、二酸化炭素吸着材料を使って吸着し、これによるサンプル気体の圧力の減少を当該差圧センサにて二酸化炭素の濃度を検出するシステムが提案されている。
【0010】
これらの特許文献1,2では圧力センサによって呼気の有無や濃度を計測するシステムが提案されているが、我々は安価で小型に構成できるMEMS(Micro Electric Mechanical System) 式の絶対圧センサを用いて、呼気の排気量を計測したところ、数Pa以下の極めて高い精度の圧力の変化を検出できないと呼気量を計測出来ないこと、ケース内の圧力があがるとガスセンサの精度が落ちると言うことを突き止めた。
【0011】
ここで数Paの精度とは、気象における高気圧や低気圧の気圧差(例えば20hPa)の1/200以下であって、これらの気圧配置による気象条件を問わず計測するには差圧センサを使う必要があるが、その構成やセンサの精度、アナログ回路で構成することは容易ではない。
【0012】
特許文献3に示す公開公報では、呼気を導入するマウスピーク、細菌等を防止するフィルター、呼気の導入管の内部に、酸素センサ、二酸化炭素センサ、流量センサ、圧力センサと温度センサを具備した手持ちユニットを構成し、これらのセンサの値を総合処理して呼気中の二酸化酸素の濃度を含む呼気の状態を計測するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特願2005-176276 「呼気の評価装置及び方法」
【特許文献2】特願2013-258283 「ガス濃度計測装置及び交換通知方法」
【特許文献3】特願2009-542931 「生理的異常の検出を支援する装置、システムおよび方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来のガスセンサを用いた呼気センサシステムはガスセンサを外部に露出させた場合が多く、呼気をガスセンサに吹きかける方式のため、呼気を吹きかける向きや量、吹き付ける速度によって大きく変わっていた。
【0015】
このため、呼気中のアルコールや硫化水素の濃度を正確に計測することはできなかった。
【0016】
呼気中のアルコールや硫化水素を正確に計測するためには、呼気の排出量を正確に計測しなければならないため、特許文献1,2,3のようにガスセンサの他に圧力センサや流量センサを具備して、呼気の量を計測する必要があるが、特許文献1のような電磁バルブの開閉を判断する圧力センサのみでは呼気の排出量は計測できない。
【0017】
また特許文献2,3のようにガスセンサの他に圧力センサや流量センサを具備して呼気の排出量を計測して正確な呼気中のガス濃度を計測する方式では、複雑な構成が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本技術分野では、手持ちできる小型・軽量な装置にも関わらず、呼気内部のアルコールや硫化水素等の成分を呼気容積中のモル濃度或いは体積濃度として、正確に計測できる手段を提案する。
【0019】
呼気計測で困難であるのは、呼気は肺から排出される二酸化炭素を含む気体が口腔内を通過するときに歯や口腔粘膜表面の呼気成分を抽出するために、呼気が口から出るときの呼気内の成分が時間的、空間的に均一ではない可能性があるため、正確に計測するためには呼気を容積が明確なサンプルバッグに一旦収集し、当該バッグ中で均一化された後に、そのサンプルバッグを濃度計測する必要があった。
【0020】
すなわち呼気を吐く速度や強度に依らず、呼気の絶対量を計測する手段を有することで確実な計測を実現する構成が必要である。
【0021】
ここで呼気の容量Vb(mL)の内部にm(g)のエチルアルコールが入っている場合の濃度Cb(g/mL)は、(1)式を用いて与えられる(mの単位はgでもuLでも良い)。
【数1】
【0022】
この容積を計測する方法としては、呼気が排気される円筒状の排気管の面積S(平方cm)とした場合での、そこを流れる気体の流量F(m/s)が計測できれば、その初期時間t0(秒)からt1(秒)までの時間積分を行う(2)式を用いて呼気容量Vb(mL)を推定する。
【数2】
【0023】
本発明では、このセンサシステムの精度向上の目的を達成するために、実施例1である
図1に示すようにセンサシステム1は呼気導入口2、排気口5 、ガスセンサ3、流量センサ4、電子回路基板17、ケース6で構成され、流量センサ4は断面積が確定している排気管5の内部に位置していることを特徴としている。
【0024】
図1に示す構成図のなかで、ケース6に装着された 呼気導入口2は呼気を導入できる構成であればどのようなものでもよいが、衛生上使い捨て可能なストローを差し込む構成が望ましい。
【0025】
また排気管5は、ケース6に装着されており、排気管の断面は円形であることが望ましく、また流量センサ4は熱センサであることが一般的なので、そのセンサと排気管の壁面との距離を5mm以上離す必要がある。
【0026】
第一の実施例では、最初の呼気計測のために呼気を吸引したあとに、ケース6の内部に最初に計測した気体が残留しているため、この残留物質を排出するために呼気導入口2にフレッシュエアを導入する必要がある。
【0027】
図2に示す第二の実施例では、呼気センサシステム1は呼気導入口2、排気口5 、ガスセンサ3、 流量センサ4、電子回路基板17、ケース6で構成され、流量センサ4は断面積が確定している排気口5の内部に配置しており、更に測定後のケース6内の空気をクリーンにするためのファン7、そのファン7の空気導入穴10、逆止弁8、アクチュエータ9が具備されていること特徴としている。
【0028】
第二の実施例では、最初の呼気計測のために呼気を吸引したあとにケース6の内部に最初に計測した気体が残留しているので、この残留物質を排出するためにアクチュエータ9を用いて逆止弁8を開き、ファン9を動作させて周囲の空気をケース6の内部に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明の実施例(実施例1)の構成図、呼気センサシステムの構成を示す。
【
図2】実施例2の構成図(実施例2)、ファン付き呼気センサシステムの断面を示す。
【
図5】実施例1の構成で計測したエチルアルコール気体サンプルの測定結果を示す。
【
図6】実施例2の構成で計測したエチルアルコール気体サンプルの測定結果を示す。
【
図7】実施例2の構成で計測したエチルアルコール気体サンプルの測定結果を示す。
【
図8】実施例2の構成で濃度の異なるエチルアルコール気体サンプルの測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1が本発明の実施例(実施例1)の構成図であり、センサシステム1は呼気導入口2、排気管5 、ガスセンサ3、流量センサ4、電子回路基板17、ケース6で構成され、流量センサ4は断面積が確定している排気管5の内部に流量センサ4が位置していることを特徴としている。
【実施例0031】
図1に示す実施例1は本発明の呼気センサシステム1の基本的な構成であって、被験者は呼気導入口2の外枠に付けられた使い捨てのストローを使って息を吹きかけることで、呼気がケース6の内部に導入され、その流れは排気管5の内部を通じてケース6の外部に排出される。
【0032】
この時に排気管5は断面積S(平方cm)を持つ円筒、或いは同じく断面積S(平方cm)を持つ内部が空洞の四角柱となっており、その断面の中心位置に流量センサ4が具備されている。
【0033】
図3は、実施例1のセンサシステム1の計測のためのブロックダイアグラムであり、ガスセンサ3、流量センサ4、初段アンプ11、差動アンプ12、ガスセンサ用オフセット補正電源13、流量センサ用オフセット補正電源14、ADC内臓マイコン15、そしてコンピュータインターフェースモジュール16で構成されている。
【0034】
ここで、ADC内臓マイコン15はADCが外付けでも良いし、またコンピュータインターフェースモジュール16は例えばシリアルインターフェース、USB信号処理モジュール、無線モジュールやイーサネットモジュールでも良い。
【0035】
ここでガスセンサ3はアルコールや硫化水素と言った比較的活性のある分子に感度のある化学センサが必要であって、一般的には亜鉛等の金属の酸化物を400-500℃に加熱して表面の触媒反応を用いたMOS(Metal Oxide Semiconductor)型センサは整合性が良く、更に小型で消費電力を抑えるためにマイクロホットプレートと言うMEMS(Micro Electric Mechanical System)デバイスであることが望ましい。
【0036】
このMOS型センサは被検出気体分子が無い状態でのセンサ抵抗値がオフセット電圧として検出され、このオフセット電圧が周辺の温度や圧力によって変化すると同時に、経時変化もあるためガスセンサ用オフセット補正電源13を用いて導入された被検出気体の濃度に比例した正しいセンサ信号を得るように補正する必要がある。
【0037】
このガスセンサ用オフセット補正電源13は、可変抵抗を用いて発生させても良いし、出力信号の時間的な平均値を常時計測してこれを参照電圧として使っても良く、或いはADCで検出されたデジタル信号をマイコンやホストコンピュータで演算処理しても良い。
【0038】
ここで流量センサ4はタングステンやニクロム線を用いた熱線、小型サーミスタを使った方式、温度特性があまりよくない小型炭素抵抗を用いた方式が考えられるが、安価で構成できることから小型炭素抵抗を用いたものが望ましく、本提案例では50オームから200オームの1/6ワットの小型炭素抵抗を用いたが、電源電圧が高い場合は大きな抵抗が利用できるため、500オーム以下が望ましい。
【0039】
本実施例では、小型炭素抵抗100オームに3V、30mAすなわち90mWの電力を与えて、数℃から数十℃の温度に加熱して定常状態にし、空気の流れがあった場合にこの小型炭素抵抗の表面から熱を奪いとることで、炭素抵抗の平均温度がさがり、これによる抵抗の変化を検出し、これを予め取得したキャリブレーションデータを用いてリアルタイムで計算して、この小型炭素抵抗の周囲の流速を推定するものである。
【0040】
この流量センサ4は無風状態でのセンサ抵抗値がオフセット電圧として検出され、このオフセット電圧が周辺の温度や圧力によって変化すると同時に経時変化もあるため、流量センサ用オフセット補正電源14を用いて流量に比例した正しいセンサ信号を得るように補正する必要がある。
【0041】
この流量センサ用オフセット補正電源14は、可変抵抗を用いて発生させても良いし、出力信号の時間的な平均値を常時計測してこれを参照電圧として使っても良く、或いはADCで検出されたデジタル信号をマイコンやホストコンピュータで演算処理しても良い。
【0042】
図5に第一の実施例の構成から得られた液体体積濃度1uL/Lのエチルアルコール400mLを呼気導入口2から5秒かけて導入した場合の計測データの一例を示す。
【0043】
この液体体積濃度1uL/Lのエチルアルコールサンプルは、10L(10000mL)のサンプルバッグ(商品名テドラーバッグ)に25uLのマイクロシリンジを用いてエチルアルコール液体を10uL入れ、そこから500mLの大型シリンジに400mL入れることで作成した。
【0044】
図5の上半分にはガスセンサ3の信号(単位は電圧)の応答を赤で示し、流量センサ4の信号(単位はm/s)の応答を青で示し、また下半分には2式使って、導入された気体の総量(呼気量に相当)した値を単位(mL)として茶色で示す。
【0045】
図5に示すように、サンプルの導入によってセンサ容器であるケース6に導入された気体の量が、シリンジの400mLと一致しており、導入容積の計測が正しくされている。
【0046】
ただし、課題としてセンサ容器であるケース6に一旦入ったエチルアルコールはそのまま滞留を続けることによって、その後の計測の精度が落ちてしまうため、呼気導入口2からフレッシュエアを一定時間流す必要がある。
【0047】
図2は本発明の実施例(実施例2)の構成図であり、センサシステム1は呼気導入口2、排気管5 、ガスセンサ3、流量センサ4、電子回路基板17、ケース6の表面に付けられたファン7、そのファン7の空気導入穴10に付けられた逆止弁8、この逆止弁8を開閉させるアクチュエータ9で構成され、流量センサ4は断面積が確定している排気管5の内部に位置していることを特徴としている。
【0048】
図2に示す実施例2は本発明の呼気センサシステム1の他の基本的な構成であって、被験者は呼気導入口2の外枠に付けられた使い捨てのストローを使って息を吹きかけることで、呼気がケース6の内部に導入され、その流れは排気管5の内部を通じてケース6の外部に排出する。
【0049】
この時に排気管5は断面積S(平方cm)を持つ円筒、或いは内部が空洞の四角柱となっており、その断面の中心位置に流量センサ4が具備されている。
【0050】
図4は実施例2のセンサシステム1の計測のためのブロックダイアグラムであり、
図4に示す構成要素に加えて、ファン7や逆止弁8(図示せず)を駆動するアクチュエータ9を制御するモジュールが追記される。
【0051】
ここで、
図4に示すブロックモジュールの機能や特徴は、実施例1と同様に構成する。
【0052】
図6に第二の実施例の構成から得られた液体体積濃度1uL/Lのエチルアルコール200mLを導入口から約4秒かけて導入した場合の計測データの一例を示す。
【0053】
なお、測定前にアクチュエータ9を動作させて逆止弁8を閉じて、ファン7は動作させないことでケース6の内部を密封する必要がある。
【0054】
この液体体積濃度1uL/Lのエチルアルコールサンプルは、10L(10000mL)のサンプルバッグ(商品名テドラーバッグ)に25uLのマイクロシリンジを用いてエチルアルコール液体を10uL入れ、そこから500mLの大型シリンジに200mL入れることで作成した。
【0055】
図6の上半分にはガスセンサ3の信号(単位は電圧)の応答を赤で示し、流量センサ4の信号(単位はm/s)の応答を青で示し、また下半分には2式使って、導入された気体の総量(呼気量に相当)した値を単位(mL)として茶色で示す。
【0056】
図6に示すように、サンプルの導入によってセンサ容器であるケース6に導入された気体の量が、シリンジの200mLと一致しており、導入容積の計測が正しくされている。
【0057】
サンプルの計測が終わった後に、アクチュエータ9を動作させて逆止弁8を開いて、約30秒間の間ファン7を動作させることでケース6の内部の空気をフレッシュな外気に置き換えて綺麗にする。
【0058】
その後継続して行った、
図7に第二の実施例の構成から得られた液体体積濃度0.5uL/Lのエチルアルコール300mLを導入口から約4秒かけて導入した場合の計測データの一例を示す。
【0059】
なお、測定前にアクチュエータ9を動作させて逆止弁8を閉じて、ファン7は動作させないことでケース6の内部を密封する必要がある。
【0060】
この液体体積濃度0.5uL/Lのエチルアルコールサンプルは、10L(10000mL)のサンプルバッグ(商品名テドラーバッグ)に25uLのマイクロシリンジを用いてエチルアルコール液体を10uL入れ、そこから500mLの大型シリンジに150mLを入れ、その後150mLの清浄空気を追加で導入して、全体で300mL入れることで作成した。
【0061】
図7の上半分にはガスセンサ3の信号(単位は電圧)の応答を赤で示し、流量センサ4の信号(単位はm/s)の応答を青で示し、また下半分には2式使って、導入された気体の総量(呼気量に相当)した値を単位(mL)として茶色で示す。
【0062】
図7に示すように、サンプルの導入によってセンサ容器であるケース6に導入された気体の量が、シリンジの300mLと一致しており、導入容積の計測が正しくされている。
【0063】
第二の実施例では、
図7に示すような、サンプルの計測が終わった後に、アクチュエータ9を動作させて逆止弁8を開いて、ファン7を動作させることでケース6の内部の空気をフレッシュな外気に置き換えて綺麗にする。
【0064】
図8は第二の実施例を用いて、濃度の異なるサンプル、液体容積濃度0.125uL/L、0.25uL/L、0.5uL/L、1uL/L、の4種類の、それぞれ300mLを大型シリンジで注入した場合の結果を、ガスセンサ3の信号(単位は電圧)を赤丸で、サンプルの容積を青四角で示す。
【0065】
図8に示すようにサンプル容積は300mLであり、ガスセンサ信号は濃度に比例しており、原点を通り直線でフィッテングした結果は、ガスセンサ信号(V)=2.32 X 単位uL/L(液体容積濃度)で表した直線で表されることが判った。
【0066】
このフィッテングした式、およびその式に含まれる定数を使うと、ここではエチルアルコールであったが、硫化水素等の呼気成分であっても濃度を計算し、推定することが出来る。
【0067】
ここで使用するMOS型センサは、時間応答や周囲にある酸素の濃度によってセンサ結果に大きな差が出る場合があるため、呼気の量によってどのような特性が得られるのかの特性を見るために、予めキャリブレーションの一環で容量依存性や、サンプルを導入する速度依存性のデータを出して置く必要がある。
【0068】
以上のような構成にすることで、呼気の量と呼気中の成分の濃度の両方を計測することが出来、被検出者の測定の方法、呼気の排出量や排出速度、更に呼気をセンサに吹きかける方向に依らずに正確に計測することが可能になる。