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▶ 株式会社今井金箔の特許一覧

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  • 特開-金箔担持シート及び金箔の貼付方法 図1
  • 特開-金箔担持シート及び金箔の貼付方法 図2
  • 特開-金箔担持シート及び金箔の貼付方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026623
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】金箔担持シート及び金箔の貼付方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/165 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
B44C1/165 G
B44C1/165 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130184
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】305052827
【氏名又は名称】株式会社今井金箔
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】今井 康弘
【テーマコード(参考)】
3B005
【Fターム(参考)】
3B005EA04
3B005FB54
3B005FE03
3B005FE31
3B005FE37
3B005GA00
3B005GB01
(57)【要約】
【課題】金箔の搬送や貼付作業などにおいて、金箔の取り扱いに不慣れな者であっても、自由形状の被装飾物の表面にある程度の大きさの金箔を貼付する作業を容易に行うことができ、かつ被装飾物が水分を含んだ食品などであっても金箔の貼付作業が容易で、所望の装飾的な形状に切断した金箔の貼付も容易に行うことができるようにする。
【課題を解決するための手段】金箔3を樹脂シート4に添着して被装飾物へと搬送して被装飾物の表面に金箔3を接触させ、そのあと樹脂シート4を被装飾物から離隔させて被装飾物の表面に金箔を貼付する際に用いる樹脂シート4として、少なくとも金箔3を吸着させる側の表面に撥水剤をコーティングした樹脂シートを用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼付方法
金箔を帯電した樹脂シートに静電気で添付して当該金箔の搬送及び被装飾物への貼付を行う被装飾物の装飾方法において、前記樹脂シートとして少なくとも金箔の添付側表面に撥水コート層を備えた樹脂シートを使用することを特徴とする、被装飾物の装飾方法。
【請求項2】
担持シート
帯電可能な樹脂シートに金箔を添付した金箔担持シートにおいて、前記樹脂シートの少なくとも金箔添付側の表面が撥水コートされた表面であることを特徴とする、金箔担持シート。
【請求項3】
前記金箔及び樹脂シートが同一形状かつ同一寸法の箔及びシートである、請求項2記載の金箔担持シート。
【請求項4】
前記樹脂シートの金箔添付面の反対側の面に両端が当該樹脂シートの外縁から突出するハンドリングテープが貼付されている、請求項2又は3記載の金箔担持シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金箔の搬送や貼付作業などの金箔の取り扱いを容易にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
漆器や屏風などの装飾に用いる装飾用金箔(以下、単に「金箔」と言う。)は、寸法が10cm~20cm角であるが、厚さは0.1~0.3μmと非常に薄く、金箔単体では僅かな風圧で折れ曲がったり皺になったりして、その取り扱いに熟練を必要とする。この金箔の取り扱いを容易にするために、所定寸法に切断した金箔を静電気を利用して樹脂シートに吸着させ、この樹脂シートと共に金箔を取り扱うということが行われている。
【0003】
すなわち、所定寸法に切断された金箔をPE(ポリエチレン)やОPP(オリエンテッドポリプロリレン)などの樹脂シートに静電気を利用して金箔を吸着させ、金箔を吸着させた状態で樹脂シートを搬送し、金箔が吸着されている側の面を被装飾物に添付し、その後、樹脂シートを剥離して金箔を被装飾物の表面に付着させるという手順で金箔の貼付作業を行っている(特許文献1)。被装飾物の表面には、漆その他の接着性を備えた塗料が塗布されているので、樹脂シートに吸着された金箔を当該被装飾物の表面に添着して樹脂シートを剥がすと、金箔は皺や折れを生ずることなく、被装飾物の表面に貼付される。
【0004】
細かく切断ないし破断した金箔を和菓子などの食品の表面に貼付して装飾することは、広く行われている。一方、ある程度の大きさを備えた金箔をソフトクリームの表面全体を覆うように添着して提供することが行われるようになってきている。すなわち、従来は食品のごく一部に金箔をあしらって装飾していたのに対し、近時は食品表面の広い領域に金箔を貼付して提供することが行われている。
【0005】
食品に金箔を貼付する作業を行う者は、菓子職人などの金箔の扱いに不慣れな者である。そのため、食品表面への金箔の貼付作業は、漆器や仏壇などの表面への金箔の貼付作業より難しく、うまく貼付することができない。
【0006】
この問題を解決するため、すなわち自由形状の表面を有する被装飾物の表面にある程度の大きさを備えた金箔を貼付する作業を容易に行うことができるようにすることを課題として、本願出願人は、特許文献2において、金箔の搬送や貼付作業などの金箔の取り扱いを容易にする技術を提案している。
【0007】
特許文献2では、金箔を静電気で吸着する樹脂シートと当該樹脂シートに担持された金箔との間に金箔の樹脂シートへの吸着を妨げる介装シートを備えた3枚重ねの構造とし、金箔の周縁の一部を介装シートの周縁から突出させた状態にして当該金箔を樹脂シートに吸着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012‐20792号公報
【特許文献2】特開2019-02638529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2で提案した手段によれば、金箔の取り扱いに不慣れな者であっても、自由形状の表面を有する被装飾物の表面にある程度の大きさを備えた金箔を貼付する作業を容易に行うことができる。
【0010】
しかし、被装飾物が水分の多い食品の場合、食品中の水分が所介装シートを浸潤させ、その水分によって金箔が介装シートに吸着されて剥離しにくくなると言うことが起こり、被装飾物が水分の多い食品などである場合には、特許文献2で提案した技術では不完全であることが判明した。
【0011】
この発明は、新たに判明した上記問題を解決するために為されたもので、金箔の取り扱いに不慣れな者であっても、自由形状の表面を有する被装飾物の表面にある程度の大きさを備えた金箔を貼付する作業を容易に行うことができると共に、被装飾物が水分を含んだ食品などであっても、金箔の貼付作業が困難になることがなく、また、所望の装飾的な形状に切断した金箔の貼付も容易に行うことができるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明では、金箔3を帯電した樹脂シート4に吸着して当該金箔の搬送及び被装飾物への貼付を行う際に用いる樹脂シート4として、少なくとも金箔3を吸着させる側の表面に撥水剤をコーティングした樹脂シートを用いることにより、上記課題を解決したものである。
【0013】
すなわち、この発明の被装飾物の装飾方法は、金箔3を樹脂シートに添着して被装飾物へと搬送して被装飾物の表面に金箔3を接触させ、そのあと樹脂シート4を被装飾物から離隔させる被装飾物の装飾方法において、樹脂シートとして少なくとも金箔3の添付側表面に撥水コート層を備えた樹脂シート4を使用することを特徴とする。
【0014】
この発明の金箔担持シート1は、上記装飾方法で使用するシートであり、金箔3を添付した帯電可能な樹脂シート4の少なくとも金箔添付側の表面が撥水コートされた表面であることを特徴とする。樹脂シート4は、金箔3の全体を覆う大きさとするか、金箔3と同一形状かつ同一寸法とする。
【0015】
樹脂シート4を金箔3と同一形状かつ同一寸法としたときは、被装飾物への金箔貼付時の作業性を良くするために、樹脂シート4の金箔添付面の反対側の面に両端5a、5bが樹脂シート4の外縁から突出するハンドリングテープ5を貼付しておくことが好ましい。
【0016】
このハンドリングテープ5を突出部5a、5bの先端部を除く部分に剥離しやすい粘着剤を塗布したテープとして、突出部5a、5bの金箔3の外縁に近い部分が合紙2にも貼付されるようにすれば、金箔3及び樹脂シート4が合紙2上でずれるのを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
上記構造の金箔担持シート1は、樹脂シート4を1枚ずつ取り扱うことによって、金箔3に皺や折れ曲りを生ずることなく、金箔3を1枚ずつ取り扱うことができる。樹脂シート4に吸着されている金箔3をソフトクリームや和菓子などの被装飾物の表面に接触させて樹脂シート4を離隔すると、金箔が樹脂シート4から離れてふわりと凹凸のあるソフトクリームや菓子の表面に移動して貼付され、不要な皺や折れが生ずることなく、被装飾物の表面を装飾することができる。
【0018】
またこの発明の金箔担持シート1の樹脂シート4は、金箔添着側の表面が撥水コートされているので、被装飾物が水分を含んだソフトクリームや菓子などであっても、その水分によって樹脂シートからの金箔の離脱が阻害されることがなく、従って金箔の貼付作業に慣れていない菓子職人などであっても、水分の多い食品などの表面への金箔の貼付作業を容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施例の金箔担持シートの分解斜視図
図2】第2実施例の金箔担持シートの分解斜視図
図3】金箔担持シートを積重した金箔流通パッケージの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。図1はこの発明の金箔担持シートの第1実施例を示した図で、最も単純な実施の形態の一例を示した分解斜視図である。図中、1は金箔担持シート、2は合紙、3は金箔、4は樹脂シートである。図では、金箔3と樹脂シート4を離して図示しているが、実際には両者3、4は密着している。
【0021】
樹脂シート4は、金箔添付側の表面、すなわち図の下面に撥水コートが施されている。具体的には、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートの表面に撥水コート、最適にはシリカを含有する撥水層を施した樹脂シートで、例えば東洋アルミニウム株式会社製の「トーヤルロータス」(登録商標)や伊藤光学工業株式会社製の「ロータスコート」(登録商標)でコーティングした樹脂フィルムを用いることができる。樹脂シート4は、金箔3の全体を覆う大きさ又は金箔3と同寸の大きさとする。
【0022】
合紙2は、この発明の金箔担持シート1の構成要素ではないが、金箔3を被装飾物に貼付する作業現場まで搬送などの便を考慮して添付されているもので、ある程度の強度を備えた紙製のものとするのが好ましい。合紙2の外形寸法は、金箔3及び樹脂シート4の全体をカバーする大きさである。
【0023】
被装飾物への金箔3の貼付作業は、樹脂シート4を合紙2から剥がして被装飾物の所望の箇所に運び、金箔3を被装飾物の表面に当てるという手順で行われる。樹脂シート4を合紙2から剥がすとき、樹脂シート4に生ずる静電気で金箔3が樹脂シート4と共に剥がれて、樹脂シート4に添着されたまま被装飾物の所望箇所まで運ばれる。そして金箔3を被装飾物の表面に接触させることにより、金箔3が樹脂シート4から離れて被装飾物の表面に貼付される。被装飾物が水分を含んだ食品などであっても、樹脂シート4の金箔側表面が撥水性を備えているので、その水分が樹脂シート4からの金箔3の剥離を阻害することがない。
【0024】
金箔3及び樹脂シート4は、図2に示すように、装飾性を高めるための適宜な形状に切り抜き又は打ち抜いたものとすることができる。切り抜き又は打ち抜き形状が小さい場合は、樹脂シート4の反金箔側の面にハンドリングのためのテープ5を貼付しておくのが好ましい。このテープ5は、その両端5a、5bを樹脂シート4の外縁から突出させ、被装飾物への金箔の貼付作業時には、この突出部5a、5bをつまんで被装飾物の所望の箇所に運び、金箔3を被装飾物の表面に当ててやれば良い。
【0025】
なお、テープ5として両先端を除いた部分に剥離可能な粘着層を設けたテープを用いれば、樹脂シート4にテープ5を容易に貼付することができ、金箔3から突出した両端5a、5bの金箔3の縁に近い側の粘着層が合紙2に付着して、合紙2上での金箔担持シート1のずれ動きを防止することができる。更に、合紙2を厚紙などにして、合紙2を含む金箔担持シート1の1枚又は複数枚を袋に封入して流通させることができる。
【0026】
この発明の金箔担持シート1の多数枚を一括して流通させる場合には、合紙2を挟んで多数枚のシートを積層したパッケージとすることができる。図3は、そのようなパッケージの一例を示す分解斜視図で、1枚ごとの金箔担持シート1の間に合紙2を挟んで積重し、積重したものの両端面に合紙2を添設し、更にその積層体の両面に厚紙からなる保護板6を添設し、図示しない結束テープで図の上下方向に結束した構造である。
【0027】
このような金箔流通パッケージを1単位として流通させることにより、この発明に係る金箔担持シート1を金箔製造販売業者からソフトクリームの販売業者や和菓子の製造業者に流通させることができる。ソフトクリーム販売業者や和菓子製造業者は、金箔流通パッケージの結束を解いて、金箔担持シート1を1枚ずつ扱うことにより、必要な菓子などの表面に所望の大きさの金箔を添着して装飾することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 金箔担持シート
2 合紙
3 金箔
4 樹脂シート
5 ハンドリングテープ
図1
図2
図3