(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026637
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】フィルム材貼付け装置およびフィルム材貼付け方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220203BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220203BHJP
H05K 3/06 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/30 564Z
H05K3/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130201
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394016601
【氏名又は名称】日東精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】奥野 長平
【テーマコード(参考)】
5E339
5F131
5F146
【Fターム(参考)】
5E339AB05
5E339CE11
5E339CE16
5E339EE10
5F131AA02
5F131BA13
5F131CA22
5F131EA07
5F131EA23
5F131EB81
5F131EC32
5F131EC63
5F131EC64
5F146JA20
5F146JA27
(57)【要約】
【課題】ワークの全面 を押圧してフィルムを貼りつける構成において、効率良くかつ精度良くフィルム材を当該ワークに貼り付けることができるフィルム材貼付け装置およびフィルム材貼付け方法を提供する。
【解決手段】保持テーブル39が基板WおよびドライフィルムDFを保持している状態で、当該保持テーブル39を有する第1プレス機構35と、第1プレス機構35に対向配置されている第2プレス機構36とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、ドライフィルムDFを基板Wに貼り付ける。第2プレス機構36は、第1プレス機構35と第2プレス機構36を互いに押圧させる際に、基板Wの全面およびドライフィルムDFの全面に対して押圧力を作用させるように配設された弾性部材47と、少なくとも弾性部材47のうち保持テーブル39に対向する面を保護する保護シート49とを備える。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するワーク保持部を有する第1プレス機構と、
前記第1プレス機構に対して対向配置されている第2プレス機構と、
前記ワーク保持部に保持されている前記ワークに対してフィルム材を積層させることによって前記フィルム材を前記ワーク保持部に保持させるフィルム供給機構と、
前記ワーク保持部が前記ワークおよび前記フィルム材を保持している状態で前記第1プレス機構と前記第2プレス機構とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける貼付け機構と、
を備え、
前記第2プレス機構は、
前記貼付け機構が前記第1プレス機構および前記第2プレス機構を相対的に近づけることによって、前記フィルム材の全面に対して押圧力を作用させるように配設された弾性部材と、
少なくとも前記弾性部材のうち前記ワーク保持部に対向する面を保護する保護シートと、
を備えることを特徴とするフィルム材貼付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム材貼付け装置において、
前記保護シートに対してテンションを付与することにより、前記保護シートが弛んだ状態で前記フィルム材に接触することを防止するテンション付与機構を備える
ことを特徴とするフィルム材貼付け装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルム材貼付け装置において、
上ハウジングと下ハウジングとを有しており、前記第1プレス機構および前記第2プレス機構を収容するチャンバと、
前記チャンバの内部空間を減圧させる減圧機構と、
を備え、
前記貼付け機構は、
前記減圧機構が前記チャンバの内部空間を減圧させた状態で、前記第1プレス機構と前記第2プレス機構とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける
ことを特徴とするフィルム材貼付け装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフィルム材貼付け装置において、
少なくとも前記第1プレス機構および前記第2プレス機構のうち一方は、前記貼付け機構による貼り付けを行う際に前記フィルム材を加熱する加熱機構を備える
ことを特徴とするフィルム材貼付け装置。
【請求項5】
第1プレス機構が有するワーク保持部にワークを保持させるワーク保持過程と、
前記ワーク保持部に保持されている前記ワークに対してフィルム材を積層させることによって前記フィルム材を前記ワーク保持部に保持させるフィルム供給過程と、
前記ワーク保持部が前記ワークおよび前記フィルム材を保持している状態で、前記第1プレス機構に対して対向配置されている第2プレス機構と前記第1プレス機構とを相対的に近づける近接過程と、
相対的に近づけられた前記第1プレス機構と前記第2プレス機構とを互いに押圧させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける貼付け過程と、
を備え、
前記第2プレス機構は、
前記第1プレス機構に対向する面に配設された弾性部材と、前記弾性部材のうち少なくとも前記ワーク保持部に対向する面を保護する保護シートとを備え、
前記貼付け過程は、
前記弾性部材が前記保護シートを介して前記フィルム材の全面に対して押圧力を作用させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける
ことを特徴とするフィルム材貼付け方法。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルム材貼付け方法において、
前記保護シートに対してテンションを付与することにより、前記保護シートが弛んだ状態で前記フィルム材に接触することを防止するテンション付与過程を備え、
前記貼付け過程は、
前記テンション付与過程によってテンションが付与された前記保護シートを介して、前記弾性部材は前記フィルム材の全面に対して押圧力を作用させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける
ことを特徴とするフィルム材貼付け方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のフィルム材貼付け方法において、
上ハウジングと下ハウジングとを有しており、前記第1プレス機構および前記第2プレス機構を収容するチャンバを形成させるチャンバ形成過程と、
前記チャンバの内部空間を減圧させる減圧過程と、
を備え、
前記貼付け過程は、
前記減圧過程で前記チャンバの内部空間が減圧された状態で、前記第1プレス機構と前記第2プレス機構とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける
ことを特徴とするフィルム材貼付け方法。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれかに記載のフィルム材貼付け方法において、
少なくとも前記第1プレス機構および前記第2プレス機構のうち一方に設けられた加熱機構によって前記フィルム材を加熱する加熱過程を備え、
前記貼付け過程は、
前記加熱過程によって加熱された状態の前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける
ことを特徴とするフィルム材貼付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を例とするワークに対して、フィルムまたはテープなどを例とするフィルム材を貼り付けるために用いるフィルム材貼付け装置およびフィルム材貼付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを製造する際、ウエハの表面に回路パターンを形成させる工程として、フィルム状の感光性樹脂であるドライフィルムレジスト(以下、「ドライフィルム」とする)をウエハの表面に貼り付けられ、さらにドライフィルムに対して回路パターンに応じた露光処理および現像処理が行われる。
【0003】
従来ではウエハに対してドライフィルムを貼り付ける場合、ウエハの上でローラを転動させることでドライフィルムをウエハに押しつけながら貼り付ける方法が提案されている(特許文献1を参照)。また従来の貼付け方法の別例として、保持テーブルに載置されているウエハおよびドライフィルムに対し、平坦面を有する押圧部材を押し当てることによってドライフィルムをウエハに圧着させる方法が提案されている(特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2008-288255号公報
【特許文献2】特開2011-133499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来装置では次のような問題がある。すなわち、従来ではドライフィルムを貼り付ける対象であるワークとして、比較的小型かつ円形状のウエハが用いられている。一方、近年ではチップの製造コストを低下させることなどを目的として、ウエハレベルパッケージ(WLP;Wafer Level Package)またはパネルレベルパッケージ(PLP;Panel Level Package)が知られている。ウエハレベルパッケージは、ウエハの状態でパッケージ最終工程までの処理を行うことによって完成するチップサイズパッケージ(CSP;Chip Size Package)である。パネルレベルパッケージは、ウエハではなくパネル状のガラス基板またはプリント基板に適用したCSPである。このようなウエハレベルパッケージおよびパネルレベルパッケージを行うため、近年ではワークが大型化する傾向にある。そのため、ワークとして大型かつ矩形状の基板を用いてドライフィルムを貼り付ける方法が試みられている。
【0006】
転動するローラを用いてドライフィルムをワークに貼り付ける方法では、ローラを転動させる場所に対して特に大きな押圧力が作用する。そのため、貼り付け過程において基板Wに作用する押圧力の偏りが発生する。従って、当該押圧力の偏りに起因してワークに割れまたは欠けなどの不良が発生する。特にワークが大型化すると、ローラ法では当該不良の発生頻度が特に高くなるので実用化が困難である。
【0007】
一方、平坦な押圧部材を用いてドライフィルムをワークに貼り付ける方法では、ワーク全体に対して比較的均一に押圧力を作用させることができるので、ワークに割れなどが発生する頻度は低減できる。しかし、押圧部材でドライフィルムの全面を押圧させてワークに貼りつけると、ドライフィルムが貼り付けられたワークが押圧部材に付着して離れなくなるという新たな問題が懸念される。
【0008】
ワークが押圧部材に付着すると、保持テーブルから押圧部材を離間させる際にワークおよびドライフィルムが保持テーブルから離れてしまう。その結果、装置を停止させるとともに押圧部材に付着したドライフィルム付きワークを回収する必要があるので、貼付け装置の作動効率が大きく低下する。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ワークの全面を押圧してフィルムを貼りつける構成において、効率良くかつ精度良くフィルム材を当該ワークに貼り付けることができるフィルム材貼付け装置およびフィルム材貼付け方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るフィルム材貼付け装置は、
ワークを保持するワーク保持部を有する第1プレス機構と、
前記第1プレス機構に対して対向配置されている第2プレス機構と、
前記ワーク保持部に保持されている前記ワークに対してフィルム材を積層させることによって前記フィルム材を前記ワーク保持部に保持させるフィルム供給機構と、
前記ワーク保持部が前記ワークおよび前記フィルム材を保持している状態で前記第1プレス機構と前記第2プレス機構とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける貼付け機構と、
を備え、
前記第2プレス機構は、
前記貼付け機構が前記第1プレス機構および前記第2プレス機構を相対的に近づけることによって、前記フィルム材の全面に対して押圧力を作用させるように配設された弾性部材と、
少なくとも前記弾性部材のうち前記ワーク保持部に対向する面を保護する保護シートと、
を備えることを特徴とするものである。
【0011】
(作用・効果)この構成によれば、第2プレス機構は保護シートを備えている。保護シートは、少なくとも弾性部材のうちワーク保持部に対向する面を保護する。言い換えれば、保護シートは第2プレス機構のうち少なくとも第1プレス機構と接触する面を保護する。よって、フィルム材貼付け装置の使用によって弾性部材に傷、変形、異物付着などが発生することを回避できるので、フィルム材貼付け装置の耐久性および作業効率が向上する。
【0012】
すなわち、弾性部材で直接フィルム材を押圧する構成を用いた場合、弾性部材に傷などが発生するので、弾性部材を交換する必要がある。比較的大型である弾性部材を交換する作業には手間がかかるので、フィルム材貼付け装置の作業効率が低下する。一方、薄いシート状である保護シートを交換する作業は簡便である。そのため、保護シートで弾性部材を保護することにより、フィルム材貼付け装置の作業効果を向上させつつフィルム材貼付け装置を連続で使用することができる。
【0013】
さらに、弾性部材は保護シートを介してフィルム材を押圧する。そのため、ワークおよびフィルム材の全面を弾性部材で押圧する場合であっても、フィルム材をワークに貼り付けることによって、フィルム材が弾性部材に付着してワーク保持部から離れるというエラーの発生を回避できる。
【0014】
また、ワークおよびフィルム材を保持する第1プレス機構に第2プレス機構を相対的に近づけて互いに押圧させるので、フィルム材およびワークの全面に対して押圧力を同時かつ均一に加えることができる。そのため、ワークに作用する押圧力の偏りに起因してワークに不良が発生することを回避できる。また、ワークに凹凸がある場合であっても、弾性部材は弾性変形しつつフィルム材を押圧するので、フィルム材は当該凹凸の隙間に対して精度良く埋め込まれるように貼り付けられる。そのため、ワークに貼り付けられたフィルム材の表面の平坦性を向上できる。
【0015】
また、上述した発明において、前記保護シートに対してテンションを付与することにより、前記保護シートが弛んだ状態で前記フィルム材に接触することを防止するテンション付与機構を備えることが好ましい。
【0016】
(作用・効果)この構成によれば、テンション付与機構が保護シートに対してテンションを付与する。当該テンション付与により、保護シートが弛んで弾性部材との間に隙間が発生した状態で保護シートがフィルム材に接触することを防止できる。保護シートが弛んで弾性部材との間に隙間が発生すると、弾性部材が保護シートを介してフィルム材を押圧してワークに貼り付ける際に、弛んだ保護シートの形状に応じてドライフィルムがワークに押圧されるのでフィルム材とワークとの密着性が低下する。テンション付与機構は、保護シートの弛みを防止することにより、フィルム材とワークとの貼付け精度をより向上できる。
【0017】
また、上述した発明において、上ハウジングと下ハウジングとを有しており、前記第1プレス機構および前記第2プレス機構を収容するチャンバと、前記チャンバの内部空間を減圧させる減圧機構と、を備え、前記貼付け機構は、前記減圧機構が前記チャンバの内部空間を減圧させた状態で、前記第1プレス機構と前記第2プレス機構とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付けることが好ましい。
【0018】
(作用・効果)この構成によれば、第1プレス機構および第2プレス機構を収容するチャンバと、チャンバの内部空間を減圧させる減圧機構とを備えている。そしてチャンバの内部空間を減圧させた状態で、第1プレス機構と第2プレス機構とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、フィルム材を前記ワークに貼り付ける。減圧によりチャンバの内部を抜気させた状態でフィルム材をワークに貼り付けるので、フィルム材とワークとを貼りつける際に、フィルム材とワークとの間に空気が巻き込まれることを確実に防止できる。そのため、フィルム材とワークとの密着性をより向上できる。
【0019】
また、上述した発明において、少なくとも前記第1プレス機構および前記第2プレス機構のうち一方は、前記貼付け機構による貼り付けを行う際に前記フィルム材を加熱する加熱機構を備えることが好ましい。
【0020】
(作用・効果)この構成によれば、フィルム材を加熱する加熱機構を備える。フィルム材を加熱することによってフィルム材はより柔らかくなり変形しやすくなる。そのためワーク表面の形状に応じてフィルム材を精度良く貼り付けることができる。また表面に凹凸があるワークを用いる場合であっても、ワークとフィルム材との密着性を向上できる。
【0021】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明に係るフィルム材貼付け方法は、
第1プレス機構が有するワーク保持部にワークを保持させるワーク保持過程と、
前記ワーク保持部に保持されている前記ワークに対してフィルム材を積層させることによって前記フィルム材を前記ワーク保持部に保持させるフィルム供給過程と、
前記ワーク保持部が前記ワークおよび前記フィルム材を保持している状態で、前記第1プレス機構に対して対向配置されている第2プレス機構と前記第1プレス機構とを相対的に近づける近接過程と、
相対的に近づけられた前記第1プレス機構と前記第2プレス機構とを互いに押圧させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける貼付け過程と、
を備え、
前記第2プレス機構は、
前記第1プレス機構に対向する面に配設された弾性部材と、前記弾性部材のうち少なくとも前記ワーク保持部に対向する面を保護する保護シートとを備え、
前記貼付け過程は、
前記弾性部材が前記保護シートを介して前記フィルム材の全面に対して押圧力を作用させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付ける
ことを特徴とするものである。
【0022】
(作用・効果)この構成によれば、ワークおよびフィルム材を保持する第1プレス機構に第2プレス機構を相対的に近づけて互いに押圧させる。第2プレス機構は弾性部材を備えており、貼付け過程において弾性部材はワークの全面およびフィルム材の全面に対して押圧力を作用させるので、フィルム材およびワークの全面に対して押圧力を同時かつ均一に加えることができる。そのため、ワークが大型化する場合であっても、フィルム材をワークに貼り付ける際に、ワークに作用する押圧力の偏りに起因してワークに割れまたは欠けなどの不良が発生することを回避できる。
【0023】
また、ワークに凹凸がある場合であっても、弾性部材は弾性変形しつつフィルム材を押圧するので、フィルム材は当該凹凸に対して精度良く貼り付けられて密着する。また、第2プレス機構でフィルム材の全体を押圧することにより、フィルム材は当該凹凸の隙間に対して精度良く埋め込まれるように貼り付けられる。そのため、ワークに貼り付けられたフィルム材の表面の平坦性を向上できる。
【0024】
そして第2プレス機構は保護シートを備えている。保護シートは、少なくとも弾性部材のうちワーク保持部に対向する面を保護する。言い換えれば、保護シートは第2プレス機構のうち少なくとも第1プレス機構と接触する面を保護する。よって、フィルム材貼付け装置の使用によって弾性部材に傷、変形、異物付着などが発生することを回避できるので、フィルム材貼付け装置の耐久性および作業効率が向上する。
【0025】
さらに、弾性部材は保護シートを介してフィルム材を押圧する。そのため、弾性部材でフィルムの全面をワークに押圧させる場合であっても、フィルム材をワークに貼り付けることによって、フィルム材が弾性部材に付着してワーク保持部から離れるというエラーの発生を回避できる。
【0026】
また、上述した発明において、前記保護シートに対してテンションを付与することにより、前記保護シートが弛んだ状態で前記フィルム材に接触することを防止するテンション付与過程を備え、前記貼付け過程は、前記テンション付与過程によってテンションが付与された前記保護シートを介して、前記弾性部材は前記フィルム材の全面に対して押圧力を作用させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付けることが好ましい。
【0027】
(作用・効果)この構成によれば、テンション付与過程において、保護シートに対してテンションを付与する。当該テンション付与により、保護シートが弛んで弾性部材との間に隙間が発生した状態で保護シートがフィルム材に接触することを防止できる。保護シートが弛んで弾性部材との間に隙間が発生すると、貼付け過程において弾性部材が保護シートを介してフィルム材を押圧してワークに貼り付ける際に、フィルム材に作用する押圧力に偏りが発生するのでフィルム材とワークとの密着性が低下する。テンション付与過程によって保護シートの弛みを防止することにより、貼付け過程におけるフィルム材とワークとの貼付け精度をより向上できる。
【0028】
また、上述した発明において、上ハウジングと下ハウジングとを有しており、前記第1プレス機構および前記第2プレス機構を収容するチャンバを形成させるチャンバ形成過程と、前記チャンバの内部空間を減圧させる減圧過程と、を備え、前記貼付け過程は、前記減圧過程で前記チャンバの内部空間が減圧された状態で、前記第1プレス機構と前記第2プレス機構とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、前記フィルム材を前記ワークに貼り付けることが好ましい。
【0029】
(作用・効果)この構成によれば、第1プレス機構および第2プレス機構を収容するチャンバを形成するチャンバ形成過程と、チャンバの内部空間を減圧させる減圧過程とを備えている。そしてチャンバの内部空間を減圧させた状態で、第1プレス機構と第2プレス機構とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、フィルム材を前記ワークに貼り付ける。減圧によりチャンバの内部を抜気させた状態でフィルム材をワークに貼り付けるので、フィルム材とワークとの間に空気が巻き込まれることを確実に防止できる。そのため、フィルム材とワークとの密着性をより向上できる。
【0030】
また、上述した発明において、少なくとも前記第1プレス機構および前記第2プレス機構のうち一方に設けられた加熱機構によって前記フィルム材を加熱する加熱過程を備え、前記貼付け過程は、前記加熱過程によって加熱された状態の前記フィルム材を前記ワークに貼り付けることが好ましい。
【0031】
(作用・効果)この構成によれば、フィルム材を加熱する加熱過程を備える。フィルム材を加熱することによってフィルム材はより柔らかくなり変形しやすくなる。そのためワーク表面の形状に応じてフィルム材を精度良く貼り付けることができる。また表面に凹凸があるワークを用いる場合であっても、ワークとフィルム材との密着性を向上できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るフィルム材貼付け装置およびフィルム材貼付け方法によれば、ワークおよびフィルム材を保持する第1プレス機構に第2プレス機構を相対的に近づけて互いに押圧させる。第2プレス機構は弾性部材を備えており、弾性部材はワークの全面およびフィルム材の全面に対して押圧力を作用させるので、フィルム材およびワークの全面に対して押圧力を同時かつ均一に加えることができる。そのため、ワークが大型化する場合であっても、フィルム材をワークに貼り付ける際に、ワークに作用する押圧力の偏りに起因してワークに割れまたは欠けなどの不良が発生することを回避できる。
【0033】
また、ワークに凹凸がある場合であっても、弾性部材は弾性変形しつつフィルム材を押圧するので、フィルム材は当該凹凸に対して精度良く貼り付けられて密着する。また、第2プレス機構でフィルム材の全体を押圧することにより、フィルム材は当該凹凸の隙間に対して精度良く埋め込まれるように貼り付けられる。そのため、ワークに貼り付けられたフィルム材の表面の平坦性を向上できる。
【0034】
そして第2プレス機構は保護シートを備えている。保護シートは、少なくとも弾性部材のうちワーク保持部に対向する面を保護する。言い換えれば、保護シートは第2プレス機構のうち少なくとも第1プレス機構と接触する面を保護する。よって、フィルム材貼付け装置の使用によって弾性部材に傷、変形、異物付着などが発生することを回避できるので、フィルム材貼付け装置の耐久性および作業効率が向上する。
【0035】
さらに、弾性部材は保護シートを介してフィルム材を押圧する。そのため、フィルム材の全面を押圧してワークに貼りつける場合であっても、フィルム材をワークに貼り付けることによって、フィルム材が弾性部材に付着してワーク保持部から離れるというエラーの発生を回避できるので、フィルム材貼付け装置の作動効率を向上できる。従って、ワークが大型化した場合であっても、効率良くかつ精度良くフィルム材を当該ワークに貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施例に係るフィルム材貼付け装置の平面図である。
【
図2】実施例に係るドライフィルムの構成を示す縦断面図である。
【
図3】実施例に係るフィルム供給ユニットの正面図である。
【
図5】実施例に係る第2プレス機構の構成を示す縦断面図である。(a)は保護シートが十分なテンションを有している基本的な状態を示す縦断面図であり、(b)は保護シートが弛んだ状態を示す縦断面図であり、(c)はシリンダを作動させて保護シートのテンションを調整した状態を示す縦断面図である。
【
図7】実施例に係るフィルム材貼付け装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施例に係るステップS1を説明する図である。(a)は保持テーブルの上方に基板を搬送させた状態を示す図であり、(b)は支持ピンに基板を受け渡した状態を示す図であり、(c)は支持ピンを保持テーブルの内部に収納させて基板を保持テーブルに載置させた状態を示す図である。
【
図9】実施例に係るステップS2を説明する図である。(a)はドライフィルムの先端部をチャンバ内へと案内している状態を示す図であり、(b)はドライフィルムの先端部をフィルム保持プレートで保持している状態を示す図である。
【
図10】実施例に係るステップS2を説明する図である。(a)はドライフィルムの先端部から第1セパレータを剥離してレジスト層の接着面を露出させている状態を示す図であり、(b)はドライフィルムの先端部を切断している状態を示す図である。
【
図11】実施例に係るステップS3を説明する図である。
【
図12】実施例に係るステップS4を説明する図である。(a)は保持テーブルに保持されている基板の上方にドライフィルムを搬送した状態を示す図であり、(b)はドライフィルムを基板に積層させている状態を示す図である。
【
図13】実施例に係るステップS5を説明する図である。(a)は第1プレス機構と第2プレス機構とを相対的に近づけている状態を示す図であり、(b)は第1プレス機構と第2プレス機構とを接触させて互いに押圧させている状態を示す図である。
【
図14】実施例に係るステップS6を説明する図である。(a)は基板搬送機構をフィルム付基板と保持テーブルとの間に差し込んでいる状態を示す図であり、(b)は基板搬送機構でフィルム付基板を保持して保持テーブルから離間させている状態を示す図である。
【
図15】実施例に係るステップS6を説明する図である。
【
図16】実施例に係るステップS6を説明する図である。
【
図17】実施例に係るステップS6を説明する図である。
【
図18】実施例に係るフィルム材貼付け装置の効果を示す図である。(a)は第2プレス機構が保護シートを有しない比較例において、第1プレス機構と第2プレス機構とを相対的に近づけている状態を示す図であり、(b)は第2プレス機構が保護シートを有しない比較例において、ステップS5の完了によってフィルム付基板が第2プレス機構に付着している状態を示す図である。
【
図19】実施例に係るフィルム材貼付け装置の効果を示す図である。(a)は保護シートが弛んでいる状態で、第1プレス機構と第2プレス機構とを相対的に近づけている状態を示す図であり、(b)は保護シートが弛んでいる状態で第1プレス機構と第2プレス機構とを互いに押圧させることにより、保護シートにシワが発生している状態を示す図であり、(c)は保護シートが弛んでいる状態で第1プレス機構と第2プレス機構とを互いに押圧させることによって、ドライフィルムと基板との間に間隙が発生している状態を示す図である。
【
図20】実施例に係るフィルム材貼付け装置の効果を示す図である。(a)はプレス板および弾性部材の下面周縁部が角張った形状を有する比較例において、保護シートが弛んでいる状態を示す図であり、(b)は比較例において保護シートにテンションを付与する状態を示す図である。
【
図21】変形例に係るフィルム材貼付け装置の構成を示す図である。
【
図22】変形例に係るフィルム材貼付け装置の構成を示す図である。
【
図23】変形例に係るフィルム材貼付け装置の構成を示す図である。(a)は弾性部材の下面に対して鈍角を形成する方向へ保護シートを引っ張る構成を示す図であり、(b)は弾性部材の下面に対して鋭角を形成する方向へ保護シートを引っ張る構成を示す図である。
【
図24】変形例に係るフィルム材貼付け装置の構成を示す図である。
【
図25】変形例に係るフィルム材貼付け装置の構成を示す図である。
【
図26】変形例に係るフィルム材貼付け装置の構成を示す図である。
【
図27】変形例に係るフィルム材貼付け装置において、保護シートを挟み込んでチャンバを形成させる工程を示す図である。
【
図28】変形例に係るフィルム材貼付け装置において、保護シートを挟んで第1プレス機構と第2プレス機構とを互いに押圧させる工程を説明する図である。
【
図29】変形例に係るフィルム材貼付け装置において、フィルム付基板が形成された後に第1プレス機構と第2プレス機構とを離間させる工程を示す図である。
【
図30】変形例に係るフィルム材貼付け装置において、劣化した保護シートを新しい保護シートへ交換する工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。実施例に係るフィルム材貼付け装置1では、ドライフィルムDFをフィルム材として用い、フィルム材を貼り付ける対象であるワークとして矩形の基板Wを用いるものとする。すなわち実施例に係るフィルム材貼付け装置1では、基板Wの表面にドライフィルムDFを貼り付けることにより、フィルム付基板FWが作成される。なお、本実施例において基板Wの大きさの好ましい一例としては500mm×500mm程度の大きさから、700mm×700mm程度までの大きさが挙げられるが、基板Wのサイズはこれらの範囲に限られない。
【0038】
<全体構成の説明>
フィルム材貼付け装置1は
図1に示すように、基板供給部2、基板搬送機構3、アライナ4、貼付けユニット5、基板搬送機構6、剥離ユニット7、アライナ8、静電気検査部9、および基板回収部11などが備えられている。なお、以降の説明において、
図1に示されるフィルム材貼付け装置1の長手方向を左右方向(x方向)、これと直交する水平方向(y方向)を前後方向と呼称する。
【0039】
次に、ドライフィルムDFの構成について
図2を用いて説明する。本実施例に用いられるドライフィルムDFは、第1セパレータS1と、レジスト層Reと、第2セパレータS2とが積層した長尺状の構造を備えている。すなわち、第1セパレータS1をドライフィルムDFから剥離することによってレジスト層Reが露出する。
【0040】
なお、本実施例において、レジスト層Reは加熱接着性を有している。当該レジスト層Reは、常温において接着力を発揮しない一方で、加熱されることによって接着力を発揮する。従って、ドライフィルムDFは加熱を受けることによって基板Wに貼り付けられることが可能となる。また、本実施例に係るドライフィルムDFはレジスト層Reが加熱接着性を有する単層構造としているが、レジスト層Reは多層構造であってもよい。多層構造である場合、レジスト層Reは、少なくとも下面側が接着性を有する接着面となっており、当該下面側には第1セパレータS1が添設される。
【0041】
図1に戻って、フィルム材貼付け装置1の各構造部および機構などについての具体的な構成を説明する。基板供給部2にはカセットC1が載置されている。カセットC1には多数枚の基板Wが、回路パターンを形成させる面(表面)を上向きにした水平姿勢で多段に差込み収納されている。
【0042】
基板搬送機構3は、基板Wを基板供給部2から搬送させるものであり、一例としてロボットアーム3aで構成されている。基板搬送機構3は、水平に進退移動可能に構成されるとともに、全体が旋回および昇降可能になっている。そして、ロボットアーム3aの先端には、馬蹄形をした真空吸着式の基板保持部3bが備えられている。基板保持部3bは、カセットC1に多段に収納された基板W同士の間隙に差し入れられ、基板Wの下面を吸着保持する。吸着保持された基板Wは、カセットC1から引き出されて、アライナ4および貼付けユニット5へと順に搬送される。
【0043】
アライナ4は、基板搬送機構3によって搬入載置された基板Wを、基板Wの外周に形成されたノッチまたはフラット部などに基づいて位置合わせを行うように構成される。
【0044】
貼付けユニット5は、フィルム供給ユニット13とチャンバ15を備えている。フィルム供給ユニット13は、ドライフィルムDFから第1セパレータS1を剥離しつつ、チャンバ15に当該ドライフィルムDFを供給する。貼付けユニット5に搬送された基板Wはチャンバ15に収納されており、チャンバ15の内部において基板WにドライフィルムDFが貼り付けられる。
【0045】
基板搬送機構6は、ドライフィルムDFが貼り付けられた基板W(フィルム付基板FW)をチャンバ15から搬送させるものであり、一例としてロボットアーム6aで構成されている。基板搬送機構6は、水平に進退移動可能に構成されるとともに、全体が旋回および昇降可能になっている。そして、ロボットアーム6aの先端には、馬蹄形をした真空吸着式の基板保持部6bが備えられている。基板保持部6bは、フィルム付基板FWの下面を吸着保持する。吸着保持されたフィルム付基板FWは、チャンバ15から引き出されて、剥離ユニット7、アライナ8、および静電気検査部9へと順に搬送される。
【0046】
剥離ユニット7は、剥離テーブル17と剥離機構19とを備えており、基板Wに貼り付けられているドライフィルムDFから第2セパレータS2を剥離する。アライナ8は、第2セパレータS2が剥離されたフィルム付基板FWを、フィルム付基板FWの外周に形成されたノッチまたはフラット部などに基づいて、再度位置合わせを行うように構成される。
【0047】
静電気検査部9は、検査テーブル9aと静電気センサ9bとを備えている。検査テーブル9aは、アライナ8において位置合わせされたフィルム付基板FWを保持する。静電気センサ9bは、検査テーブル9aに載置保持されたフィルム付基板FWに帯電している静電気の量を測定する。静電気が基準値以下である場合、フィルム付基板FWは基板回収部11へと搬送される。
【0048】
基板回収部11にはカセットC2が載置されている。カセットC2は、多数枚のフィルム付基板FWを水平姿勢で多段に差込み収納できるように構成されている。
【0049】
フィルム供給ユニット13は
図3に示すように、フィルム供給部21と、ガイドローラ23と、セパレータ剥離部材25と、セパレータ回収部27とを備えている。 フィルム供給ユニット13は全体として、
図1に示される一対のレール29に沿ってx方向に往復移動できるように構成される。また、セパレータ剥離部材25はさらにフィルム供給ユニット13と独立してx方向に往復移動できるように構成される。
【0050】
フィルム供給部21には、ロール巻きした帯状のドライフィルムDFが供給ボビンB1に装填されている。ガイドローラ23は、当該供給ボビンB1から繰り出されたドライフィルムDFを巻回案内し、セパレータ剥離部材25へと導くように構成される。
【0051】
セパレータ剥離部材25は、先端が先鋭なエッジを有する。エッジを右向きにした当該セパレータ剥離部材25により、第1セパレータS1を折り返してドライフィルムDfから剥離させる。第1セパレータS1が剥離されたドライフィルムDFは、チャンバ15の内部へと案内される。セパレータ回収部27は、ドライフィルムDFから剥離された第1セパレータS1を巻き取る回収ボビンB2が巻き取り方向に回転駆動されるようになっている。
【0052】
チャンバ15は
図4に示すように、下ハウジング15Aおよび上ハウジング15Bによって構成される。上ハウジング15Bはシリンダ16によって昇降可能に構成されており、上ハウジング15Bが下降して下ハウジング15Aと当接することによって、内部空間が密閉されたチャンバ15が形成される。
【0053】
なお、下ハウジング15Aの円筒頂部28と、上ハウジング15Bの円筒底部30との各々は、一例として弾性体で構成されていることが好ましい。円筒頂部28および円筒底部30が弾性体で構成されている場合、チャンバ15を形成させる際に、下ハウジング15Aおよび上ハウジング15Bをより精度よく密着させることができる。
【0054】
下ハウジング15Aおよび上ハウジング15Bには、
図4に示すように、流路31を介して真空装置32と連通接続されている。真空装置32が作動することにより、チャンバ15の内部空間を減圧することができる。なお、流路31にはチャンバ15の内部空間を減圧させるために用いられる電磁バルブ33が備えられている。またチャンバ15には、大気開放用の電磁バルブ81を備えた流路83が連通接続されている。電磁バルブ33、電磁バルブ81の開閉操作および真空装置32の作動は、制御部34によって行われている。制御部34は電磁バルブ33などの他に、フィルム材貼付け装置1における各部の動作を制御する。
【0055】
チャンバ15の内部には、第1プレス機構35と、第2プレス機構36と、フィルム切断機構37と、フィルム保持プレート38とが備えられている。実施例において、第1プレス機構35およびフィルム切断機構37は下ハウジング15Aに収納されており、第2プレス機構36は上ハウジング15Bに収納されている。
【0056】
第1プレス機構35は、基板Wを保持する保持テーブル39を備えている。保持テーブル39は、一例として基板Wと同形状以上の大きさを有する金属製のチャックテーブルである。保持テーブル39の好ましい構成として、内部に設けられている吸引装置により基板Wを吸着保持するように構成されている。
【0057】
保持テーブル39は、下ハウジング15Aを貫通するロッド40と連結されている。ロッド40の他端は、モータなどから成るアクチュエータ41に駆動連結されている。したがって、保持テーブル39は、下ハウジング15Aの内部で昇降する。保持テーブル39の位置は、制御部34によって任意の高さに制御される。また、保持テーブル39は基板Wを介してドライフィルムDFを保持する。
【0058】
保持テーブル39には複数本の支持ピン43を備えている。支持ピン43は図示しないシリンダによって、出退昇降可能に構成されている。すなわちシリンダによって上昇することにより、
図4に示すように支持ピン43の各々は保持テーブル39の基板保持面(上面)から突出する。そしてシリンダによって下降することにより、支持ピン43の各々は保持テーブル39に内蔵される。
【0059】
また保持テーブル39にはヒータ44が内蔵されている。ヒータ44は、保持テーブル39を加熱することによって、保持テーブル39に保持されている基板WおよびドライフィルムDFを加熱する。
【0060】
第2プレス機構36は、第1プレス機構35に対向配置されている。第2プレス機構36は
図5(a)に示すように、プレス板45と、弾性部材47と、保護シート49と、シリンダ51とを備えている。
【0061】
プレス板45は剛性を有する板状部材であり、その下面は保持テーブル39の基板保持面に対向するように配置される。本実施例において、プレス板45の下面周縁部45aは側面視で丸みを帯びた形状を有している。弾性部材47はプレス板45の下面に配設されており、弾性体によって構成されている。また、弾性部材47の下面周縁部47aは下面周縁部45aと同様に丸みを帯びた形状を有している。保護シート49は、弾性部材47の下面およびプレス板45の側面を覆うように配設されている。
【0062】
すなわち、保持テーブル39が上昇して第1プレス機構35と第2プレス機構36とが近づいて接触することによって、保持テーブル39に保持されている基板WおよびドライフィルムDFは、保護シート49を介して弾性部材47に押圧される。弾性部材47の下面は平坦面になっており、当該平坦面は基板WおよびドライフィルムDFに対向する。第1プレス機構35と第2プレス機構36とが互いに押圧する際に、弾性部材47は平坦な下面によってドライフィルムDFの全面に対して押圧力を加えることができる。なお弾性部材47の下面の広さは、ドライフィルムDFの大きさ以上であることが好ましい。
【0063】
シリンダ51はプレス板45に配設されており、保護シート49の端部はシリンダ51と接続されている。シリンダ51の伸縮動作によって、保護シート49のテンション(張力)を適宜調整することができる。また、保護シート49のテンションは張力センサ52によって随時検知されている。
【0064】
経年劣化または温度変化などに起因して
図5(b)に示すように保護シート49が弛んで弾性部材47と保護シート49との間に隙間Kができることがある。この場合、保護シート49のテンションが低下するので、張力センサ52によって保護シート49の弛みの発生を検知できる。保護シート49の弛みを検知した場合、制御部34はシリンダ51を動作させる。すなわち、
図5(c)に示すように、シリンダ51の伸縮動作によって保護シート49にテンションがさらに付与される。その結果、保護シート49の弛みが解消されて隙間Kがなくなるので、保護シート49は再び弾性体47の下面全体にわたって密着した状態となる。
【0065】
なお保護シート49は、フッ素処理、シリコーン処理、蝋処理などを例とする離型処理が施されている。そのため、弾性部材47が基板WおよびドライフィルムDFを押圧してドライフィルムDFを基板Wに貼り付けた後、ドライフィルムDFは保護シート49から好適に離間する。すなわち、ドライフィルムDFを基板Wに貼り付ける動作によってフィルム付基板FWが保護シート49を介して第2プレス機構36に付着し、第1プレス機構35の保持テーブル39からフィルム付基板FWが離れるという事態が発生することを回避できる。そして経時的な劣化などに起因して保護シート49の離型性が低下した場合であっても、劣化した保護シート49をシリンダ51から外して新しい保護シート49へと容易に交換できる。なお蝋処理の例として、脂肪酸エステル類で離型性を付与する処理が挙げられる。
【0066】
保護シート49の例としては、ガラスクロスシート、ラバーシート、フィルムなどが挙げられる。特に保護シート49は弾性体で構成されることがより好ましい。保護シート49が弾性を有する場合、ドライフィルムDFを基板Wに貼り付ける過程において保護シート49はドライフィルムDFに接触して弾性変形する。そのため、ドライフィルムDFの全面にわたって、付与される押圧力をより均一化させることができる。
【0067】
図5においてシリンダ51はプレス板45の上面における左側および右側に配設されているが、シリンダ51はプレス板45の上面における手前側および奥側にも配設されている。すなわち本実施例において、シリンダ51の各々の動作により、保護シート49は平面視において左右方向および前後方向の4方向に引っ張られる。本実施例において、シリンダ51は本発明におけるテンション付与機構に相当する。
【0068】
フィルム切断機構37は、昇降可能な昇降台37aと、当該昇降台37aの上部に配設されたカッタホルダ37bと、カッタホルダ37bの先端に設けられたカッタ37cとを備えている。フィルム切断機構37はy方向に往復移動可能に構成されている。すなわちカッタ37cは、チャンバ15の内部へと案内されたドライフィルムDFを幅方向(y方向)に切断できる。
【0069】
フィルム保持プレート38は下面が平坦となっており、ドライフィルムDFを平坦な状態で保持できるように構成されている。フィルム保持プレート38の下面には、y方向に延びるカッタ走行溝38aが形成されている。カッタ37cがカッタ走行溝38aに沿って走行することにより、フィルム保持プレート38の平坦面で保持されているドライフィルムDFを枚葉状に切断できる。
【0070】
フィルム保持プレート38はチャンバ15の内部において昇降移動可能に構成されているとともに、x方向へ水平移動可能に構成されている。そのため、フィルム保持プレート38は枚葉状に切断されたドライフィルムDFを保持しつつ、保持テーブル39の上方へと移動できる。
【0071】
剥離テーブル17はフィルム付基板FWを保持するものであり、一例として金属製のチャックテーブルである。剥離テーブル17は吸引装置などによって、フィルム付基板FWを吸着保持する構成であることが好ましい。剥離テーブル17は、出退昇降可能に構成されている図示しない支持ピンが内蔵されている。当該支持ピンが上昇して上面から突出することにより、支持ピンはフィルム付基板FWを受け取ることができる。
【0072】
剥離機構19は剥離テーブル17の上方に配設されており、
図1に示されるレール52に沿ってx方向に往復移動可能に構成されている。本実施例において、剥離機構19は剥離テープTsを第2セパレータS2の表面に貼り付けた後、剥離テープTsとともに第2セパレータS2をドライフィルムDFのレジスト層Reから剥離する。
【0073】
剥離機構19は
図6に示すように、テープ供給部53と、支持フレーム55と、剥離部材57と、テープ回収部59とを備えている。テープ供給部53は、原反ロールに装填されている剥離テープTsを繰り出す。支持フレーム55は図示しない昇降台によって昇降可能に構成されており、案内ローラ58とガイドローラ60を備えている。
【0074】
剥離部材57は平面視における支持フレーム55の中央右側に配設されている。剥離部材57は、基板Wの寸法よりも短い板状であり、かつ、先端に向かって先細りのテーパ状に形成されている。当該剥離部材57は、斜め下がり傾斜姿勢で固定されている。すなわち、テープ供給部53から繰り出された剥離テープTsは、案内ローラ58によって剥離部材57へと案内され、剥離部材57の先端において折り返され、さらにガイドローラ60を経由してテープ回収部59へと案内される。テープ回収部59は、剥離部材57から送り出された剥離テープTsを巻き取り回収する。
【0075】
<動作の概要>
ここで、実施例に係るフィルム材貼付け装置1の基本動作を説明する。
図7は、フィルム材貼付け装置1を用いて、基板WにドライフィルムDFを貼り付ける一連の工程を説明するフローチャートである。
【0076】
ステップS1(基板の供給)
貼付け指令が出されると、ワークである基板Wの供給を開始する。すなわち、支持ピン43の先端が保持テーブル39の基板載置面から突出するとともに、基板搬送機構3のロボットアーム3aはカセットC1に基板保持部3bを差し込んで基板Wの裏面側を吸着保持する。基板搬送機構3は、基板Wを吸着保持した状態で基板WをカセットC1から搬出し、アライナ4に載置する。アライナ4で基板Wの位置合わせを行った後、基板搬送機構3は
図8(a)に示すように、下ハウジング15Aに収納されている保持テーブル39の上方へと基板Wを搬送する。
【0077】
そして
図8(b)に示すように、基板搬送機構3の基板保持部3bは基板Wを下降させる。このとき、基板保持部3bによって裏面を吸着保持されている基板Wは、保持テーブル39から突出している支持ピン15に載置される。その後、
図8(c)に示すように、支持ピン43が下降し、基板Wは保持テーブル39の基板保持面に載置される。基板Wが保持テーブル39に保持されると、吸引装置が作動し、保持テーブル39は基板保持面に形成されている吸着孔を介して基板Wを吸着保持する。
【0078】
ステップS2(ドライフィルムの供給)
基板Wの供給を実行する一方で、フィルム供給ユニット13によるドライフィルムDFの供給を開始する。すなわち、フィルム供給ユニット13を右方向へ移動させつつ、フィルム供給部21から所定量のドライフィルムDFを繰り出させる。そして繰り出し供給されたドライフィルムDFを案内させつつ、
図9(a)に示すようにガイドローラ23およびセパレータ剥離部材25をチャンバ15の内部へと移動させる。
【0079】
当該移動により、ドライフィルムDFの先端部はチャンバ15の内部へと案内される。このとき、ドライフィルムDFの先端部がフィルム保持プレート38の下方に位置するよう、ガイドローラ23およびセパレータ剥離部材25の移動量が制御される。
【0080】
フィルム供給ユニット13によってドライフィルムDFの先端部がフィルム保持プレート38の下方に案内された後、制御部34はフィルム供給部21の繰り出し動作を停止させつつフィルム保持プレート38を下降させる制御を行う。下降したフィルム保持プレート38は
図9(b)に示すように、ドライフィルムDFの先端部に当接するとともに、当該ドライフィルムDFの先端部を吸着保持する。
【0081】
フィルム保持プレート38によってドライフィルムDFを上方から保持させた後、ドライフィルムDFの先端部を枚葉状に切断させる動作を行う。まずは
図10(a)に示すように、ガイドローラ23およびセパレータ剥離部材25は左方向へ退避移動するとともに、セパレータ回収部27は所定量の第1セパレータS1を巻き取る。
【0082】
当該動作によって、ドライフィルムDFの先端部において、第1セパレータS1はレジスト層Reから剥離される。第1セパレータS1が剥離されることにより、レジスト層Reの接着面が露出される。このとき、ドライフィルムDFの先端部はフィルム保持プレート38によって平坦に保持されるので、ガイドローラ23およびセパレータ剥離部材25を退避させてもドライフィルムDFの平坦性およびテンションが低下することがない。
【0083】
第1セパレータS1をドライフィルムDFの先端部から剥離させた後、
図10(b)に示すようにフィルム切断機構37を所定の高さまで上昇させる。フィルム切断機構37の上昇移動により、フィルム保持プレート38のカッタ走行溝38aにおいてカッタ37cがドライフィルムDFに突き刺される。
【0084】
カッタ37cがドライフィルムDFに突き刺されると、カッタ37cはカッタ走行溝38aに沿ってy方向へ移動しつつ、ドライフィルムDFを幅方向に切断する。その結果、ドライフィルムDFの先端部は枚葉状に切断され、フィルム供給部21に装填されているドライフィルムDFの原反ロールから分離される。
【0085】
ドライフィルムDFの先端部を枚葉状に切断した後、フィルム供給ユニット13を初期位置へと復帰させる。当該復帰移動によりガイドローラ23およびセパレータ剥離部材25は、ドライフィルムDFとともにチャンバ15の外部へと退避される。そして、フィルム保持プレート38に保持された枚葉状のドライフィルムDFがチャンバ15の内部に残る。ステップS2に係る一連の動作により、枚葉状のドライフィルムDFがチャンバ15の内部に供給される。
【0086】
ステップS3(チャンバの形成)
基板WおよびドライフィルムDFがチャンバ15の内部に供給されると、制御部34はシリンダ16の動作を制御することにより上ハウジング15Bを下降させる。
図11に示すように、当該下降により下ハウジング15Aの円筒頂部28と上ハウジング15Bの円筒底部30とが当接し、内部空間が密閉された状態のチャンバ15が形成される。
【0087】
ステップS4(積層過程)
密閉状態のチャンバ15が形成されると、基板WにドライフィルムDFを積層させる。まず制御部34は電磁バルブ33を開き、電磁バルブ81を閉じた状態で真空装置32を作動させ、チャンバ15の内部空間を減圧させる。チャンバ15の内部空間は真空状態または真空に近い状態にまで減圧されることが好ましい。チャンバ15の内部が所定の気圧まで減圧されると、制御部34は真空装置32の動作を停止させる。減圧後におけるチャンバ15の内部気圧の一例としては、10Pa~100Paが挙げられる。
【0088】
次に
図12(a)に示すように、制御部34はドライフィルムDFを保持しているフィルム保持プレート38を保持テーブル39の上方へ移動させる。このとき、ドライフィルムDFが基板Wの上方に位置するよう、フィルム保持プレート38の昇降移動および水平移動が制御される。
【0089】
フィルム保持プレート38によってドライフィルムDFが基板Wの上方に搬送された後、
図12(b)に示すように、フィルム保持プレート38を下降させてドライフィルムDFを基板Wに積層させる。ドライフィルムDFを基板Wに積層させることより、ドライフィルムDFは基板Wとともに保持テーブル39に保持される。また当該積層操作により、ドライフィルムDFと基板Wとは、平面視における位置が合わせられた状態となる。
【0090】
なお、予めチャンバ15の内部を真空減圧させた状態でドライフィルムDFを基板Wに積層させるので、当該積層された状態において、ドライフィルムDFと基板Wとの間に空気が巻き込まれることを確実に防止できる。そのため、後の貼付け過程においてドライフィルムDFと基板Wとの密着性をより向上できる。
【0091】
また、ドライフィルムDFの接着面は、加熱によって接着力を発揮する加熱接着性の材料で構成されている。そのため積層過程を常温で行うことにより、ドライフィルムDFを基板Wに積層させる時点でドライフィルムDFが基板Wに貼り付くことを回避できる。そのため、ドライフィルムDFが十分に押圧されていない時点で尚早にドライフィルムDFが基板Wに貼り付いてしまい、ドライフィルムDFと基板Wとの密着性が低下するという事態の発生を防止できる。
【0092】
ステップS5(貼付け過程)
仮合わせされた状態のドライフィルムDFおよび基板Wが、第1プレス機構35の保持テーブル39によって保持された状態となることにより、ドライフィルムDFを基板Wに貼り付ける過程を開始する。
【0093】
まず、チャンバ15の内部が減圧された状態を維持しつつ、制御部34はヒータ44を作動させて保持テーブル39に保持されているドライフィルムDFを加熱させる。ドライフィルムDFを加熱することにより、ドライフィルムDFのレジスト層Reに含まれている加熱性の接着材は接着力を発揮する。そのため、レジスト層Reの接着面を介してドライフィルムDFと基板Wとは接着可能となる。ヒータ44による加熱の温度は一例として40℃~80℃であるが、加熱接着性のドライフィルムDFが接着性を発揮する温度であればヒータ44による加熱温度は適宜変更してよい。
【0094】
そして
図13(a)に示すように、制御部34はアクチュエータ41を制御して保持テーブル39を上昇させる。当該上昇動作により、第1プレス機構35と第2プレス機構36とを相対的に近づけていく。
【0095】
そして第1プレス機構35と第2プレス機構36とをさらに近づけていくことにより、
図13(b)に示すように、第1プレス機構35と第2プレス機構36とは接触して互いに押圧される。すなわち保持テーブル39に対向している弾性部材47は、保護シート49を介してドライフィルムDFに当接し、当該ドライフィルムDFを下方に押圧する。その結果、ドライフィルムDFおよび基板Wの全面にわたって押圧力が作用し、ドライフィルムDFが基板Wに貼り付けられる。すなわち、第1プレス機構35と第2プレス機構36とを互いに押圧させることにより、フィルム付基板FWが作成される。
【0096】
弾性部材47は弾性力を有しておりドライフィルムDFおよび基板Wの全面に当接する。そのため、ドライフィルムDFおよび基板Wの全面にわたって均一に押圧力を付与できる。また、チャンバ15の内部が減圧されている状態でドライフィルムDFおよび基板Wに押圧力を付与して両者を貼り付けるので、ドライフィルムDFと基板Wとの間に空気が巻き込まれることをより確実に回避できる。
【0097】
また、基板Wの表面に凹凸が形成されている場合であっても、弾性部材47は当該凹凸に応じて弾性変形しつつドライフィルムDFを押圧する。よって、接着力を有するドライフィルムDFのレジスト層Reは基板W上の凹凸の隙間を精度良く埋め込んでいく。従って、作成されたフィルム付基板FWにおいて、基板WとドライフィルムDFとは精度良く密着している。
【0098】
ドライフィルムDFを基板Wに貼り付けた後、保持テーブル39を下降させることによって、第1プレス機構35と第2プレス機構36とを離間させる。このとき、保護シート49の表面には離型処理がなされている。そのため、
図18(b)に示すような、フィルム付基板FWが保護シート49に付着して保持テーブル39から離れるという事態を確実に回避できる。
【0099】
第1プレス機構35と第2プレス機構36とを離間させるとともに、制御部34は電磁バルブ81の開度を調節してチャンバ15の内部の気圧を大気圧に近づけていく。そしてチャンバ15の内部が所定の気圧にまで上昇すると、制御部34は電磁バルブ81を全開にしてチャンバ15を大気開放させた後に、シリンダ16を作動させて上ハウジング15Bを上昇させる。チャンバ15の密閉状態が解除されることにより、貼付け過程は完了する。
【0100】
ステップS6(剥離過程)
貼付け過程を完了させた後、第2セパレータS2をドライフィルムDFから剥離する動作を開始する。まず、基板搬送機構6を用いてフィルム付基板FWを剥離テーブル17へと搬送する。すなわち
図14(a)に示すように、支持ピン43を保持テーブル39の基板保持面から突出させてフィルム付基板FWを持ち上げるとともに、基板搬送機構6の基板保持部6bを保持テーブル39とフィルム付基板FWとの間に差し込む。
【0101】
そして
図14(b)に示すように、基板保持部6bがフィルム付基板FWの下面を吸着保持して上昇することにより、フィルム付基板FWは保持テーブル39から離れる。基板搬送機構6はフィルム付基板FWをチャンバ15から搬出し、剥離ユニット7へとフィルム付基板FWを搬送する。
【0102】
フィルム付基板FWが剥離ユニット7へと搬送された後、基板搬送機構6はフィルム付基板FWを剥離テーブル17に載置させる。このとき
図15に示すように、剥離部材57がフィルム付基板FWの右端部分の上方に位置するよう、剥離機構19を適宜移動させる。その後、
図16に示すように支持フレーム55を下降させ、剥離部材57によって剥離テープTsを第2セパレータS2の表面に貼り付ける。
【0103】
剥離テープTsが第2セパレータS2の表面に貼り付けられた後、
図17に示すように、剥離機構19を左方向へ移動させつつ、剥離テープTsを巻き取る。すなわち、剥離部材57によって剥離テープTsを折り返しながら第2セパレータS2を剥離テープTsと一体にしてフィルム付基板FWから剥離していく。フィルム付基板FWから剥離された第2セパレータS2が貼り付いている剥離テープTsは、テープ回収部59によって巻き取り回収されていく。
【0104】
ステップS7(フィルム付基板の回収)
第2セパレータS2をフィルム付基板FWから剥離させた後、基板搬送機構6はフィルム付基板FWを剥離テーブル17から搬出し、アライナ8へと搬送する。アライナ8においてフィルム付基板FWの位置合わせを行った後、基板搬送機構6はフィルム付基板FWを静電気検査部9へと搬送し、検査テーブル9aに載置する。
【0105】
静電気検査部9は、静電気センサ9bを用いてフィルム付基板FWに帯電している静電気の量を測定する。静電気が基準値を超える場合、フィルム付基板FWは不良品であると判定され、フィルム付基板FWに対して除電を行う動作またはオペレータによるフィルム付基板FWの除去を行う。静電気が基準値以下である場合、フィルム付基板FWは良品であると判定され、基板搬送機構3によって基板回収部11へと搬送される。基板回収部11へと搬送されたフィルム付基板FWは、カセットC2に積載収納される。
【0106】
以上で、基板WにドライフィルムDFを貼り付ける一巡の動作が終了する。以後、フィルム付基板FWが所定数に達するまで上記処理が繰り返される。
【0107】
なお、一連の工程において、保護シート49のテンションは張力センサ52によって随時検知されている。そして保護シート49のテンションが予め定められた基準値以下となった場合、張力センサ52は、
図5(b)に示すような保護シート49が弛んだ状態になったと判定し、保護シート49のテンションが低下した旨の信号を制御部34へ送信する。当該信号を受信することにより、制御部34はシリンダ51を動作させて保護シート49にテンションを付与させる。その結果、
図5(c)に示すように保護シート49の弛みが解消され、保護シート49は再び弾性体47の下面全体にわたって密着した状態となる。
【0108】
<実施例の構成による効果>
上記実施例に係る装置によれば、基板WおよびドライフィルムDFを積層させた状態で両者を保持する第1プレス機構35と、第1プレス機構36に対向配置されており基板WおよびドライフィルムDFに対向する平坦面を有する第2プレス機構36とを備えている。そして、第1プレス機構35と第1プレス機構36とを相対的に近づけて互いに押圧させることによって、ドライフィルムDFを基板Wに貼り付ける。
【0109】
実施例に係る装置では、第2プレス機構36が有する平坦面によって、ドライフィルムDFの全面に対して押圧力を同時かつ均一に加えることができる。そのため、基板Wが大型化する場合であっても、ドライフィルムDFを基板Wに貼り付ける際に、基板Wに作用する押圧力の偏りに起因して基板Wに割れまたは欠けなどの不良が発生することを回避できる。また、基板Wに凹凸がある場合であっても、ドライフィルムDFは当該凹凸に対して密着良く貼り付けられる。また、第2プレス機構36でドライフィルムDFの全体を押圧することにより、ドライフィルムDFのレジスト層Reは当該凹凸の隙間に対して精度良く埋め込まれるように貼り付けられる。そのため、フィルム付基板FWの表面の平坦性を向上できる。
【0110】
そして第2プレス機構36は離型性を有する保護シート49を備えている。保護シート49は、第2プレス機構36のうち少なくとも第1プレス機構35と接触する面を保護するように配設されている。保護シート49は離型性を有しているので、基板WおよびドライフィルムDFを保持している第1プレス機構35と第2プレス機構36とが互いに押圧して貼付け過程を実行した後、ドライフィルムDFが貼り付けられた基板Wは好適に保護シート49から離れる。
【0111】
保護シート49を有していない比較例では、
図18(a)および(b)に示すような問題点が発生する。すなわち、従来よりも大型化した基板WおよびドライフィルムDFに対して、
図18(a)に示すように、大型の部材であるプレス板45および弾性部材47を近づけ、互いに押圧させる。この場合、弾性部材47によってドライフィルムDFの全面が押圧される。
【0112】
その結果、貼付け過程が完了した後に第1プレス機構35と第2プレス機構36とを離間させる際に、
図18(b)に示すように、貼付け過程によってフィルム付基板FWが第2プレス機構36に付着してしまい、保持テーブル39からフィルム付基板FWが離れてしまうという事態が懸念される。このようなエラーが発生すると、装置を停止させてフィルム付基板FWを第2プレス機構36から回収する作業が必要になるので、装置の作動効率が低下する。
【0113】
本実施例に係る構成では保護シート49を用いて第2プレス機構36に離型性を付与している。そのため、貼付け過程によってフィルム付基板FWが第2プレス機構36に付着してしまい、保持テーブル39からフィルム付基板FWが離れてしまうというエラーの発生を防止できる。従って、フィルム材貼付け装置1の作動効率を向上できる。
【0114】
第2プレス機構36に離型性を付与する構成の比較例として、弾性部材47の下面に離型処理を施し、当該下面をドライフィルムDFに当接させることによってドライフィルムDFを押圧する構成が考えられる。しかし当該比較例の構成では、長期の使用によって弾性部材47の離型性が低下した場合、プレス板45から弾性部材47を取り外して新たな弾性部材47に交換する作業、または弾性部材47およびプレス板45を一体として交換する作業が必要となる。これらの作業には手間がかかるので、装置の作動効率が低下する。また弾性部材47およびプレス板45は大型の部材であるため、交換に要するコストが上昇する。
【0115】
一方、実施例に係る構成では保護シート49を用いて第2プレス機構36に離型性を付与する。保護シート49は第2プレス機構36の外面の少なくとも一部を覆う薄いシート状の部材である。そのため、長期の使用によって保護シート49の離型性が低下した場合であっても、薄いシート状の保護シート49をシリンダ51から取り外して交換することによって第2プレス機構36の離型性を容易に回復できる。従って、交換に要するコストおよび時間を抑制できるので、フィルム材貼付け装置1の作動効率をさらに向上できる。
【0116】
保護シート49は、傷、変形、または異物付着を例とする不具合が弾性部材47に発生することも防止できる。そのため、保護シート49によって弾性部材47の交換頻度をさらに低減できる。
【0117】
また、実施例に係る装置は保護シート49のテンションを調整するシリンダ51を備えている。長期の使用などによって、
図19(a)に示すように保護シート49が弛んだ場合、シリンダ51を作動させてテンションを付与することにより保護シート49の弛みを解消できる。
【0118】
保護シート49が弛んだ状態でドライフィルムDFを基板Wに貼り付ける動作を行う場合、以下のような不具合が発生しうる。すなわち、保護シート49と弾性部材47との間に間隙Kが発生している状態で弾性部材47をドライフィルムDFに押圧させるため、
図19(b)に示すように、弾性部材47の下面において保護シート49にシワPが発生する。
【0119】
保護シート49にシワPが発生すると、保護シート49を介して弾性部材47がドライフィルムDFを押圧する際に、シワPが発生している部分では好適にドライフィルムDFを押圧することができない。そのため、シワPの形状に応じて、
図19(c)に示すように、フィルム付基板FWにおいてドライフィルムDFと基板Wとの間に隙間Qが発生する。また、フィルム付基板FWにおいてドライフィルムDFにもシワが高い頻度で発生する。そのため、ドライフィルムDFと基板Wとを精度良く密着させることが困難となる。
【0120】
そのため、実施例に係る装置はシリンダ51を用いて保護シート49に対して常に一定以上のテンションを付与することにより、保護シート49が弛んだ状態でドライフィルムに接触することを防止している。そのため、貼付け過程においてドライフィルムDFを基板Wに精度良く密着させることができる。
【0121】
本実施例において、プレス板45の下面周縁部45aおよび弾性部材47の下面周縁部47aはいずれも丸みを帯びた形状となっている。
図20(a)に示すように下面周縁部45aまたは下面周縁部47aが角張った形状である場合、保護シート49の弛みを解消する操作において以下のような不具合が発生しうる。すなわち、
図20(b)に示すように角張った形状となっている下面周縁部45aまたは下面周縁部47aにおいて、保護シート49が引っ掛かる。
【0122】
保護シート49が引っ掛かることによって、保護シート49に対して比較的大きい摩擦力が発生する。当該摩擦力が発生すると、シリンダ51によって付与されるテンションは、弾性部材47の下面に対向する部分の保護シート49に伝達されにくくなる。その結果、シリンダ51を作動させても、保護シート49の弛みが解消しきれずに間隙Kが残存することとなる。
【0123】
一方、本実施例において、下面周縁部45aおよび下面周縁部47aに対して丸みを帯びた形状とする表面処理を行っている。下面周縁部45aおよび下面周縁部47aは角が取れた形状、すなわち丸みを帯びた形状を有しているため、保護シート49と下面周縁部45aまたは下面周縁部47aとの間に発生する摩擦力を大きく低減できる。従って、シリンダ51によってテンションを調節し、保護シート49の弛みを解消する操作を精度良く行うことができる。
【0124】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。例として、本発明は下記のように変形実施することができる。
【0125】
(1)実施例において、基板WとドライフィルムDFとを別々にチャンバ15に供給するステップS1およびステップS2の過程を行い、ステップS4においてチャンバ15の内部で両者を積層させているがこれに限られない。すなわち予めドライフィルムDFを基板Wに積層させる過程を行い、ドライフィルムDFが積層された基板Wをチャンバ15に供給してもよい。
【0126】
このような変形例の一例としては以下のようなものが挙げられる。予めドライフィルムDFが積層された基板Wを、基板供給部2に多段に収納させておく。そして基板搬送機構3はドライフィルムDFが積層された基板Wを、アライナ4を経由してチャンバ15へと搬送し、保持テーブル39に載置させる。そして上ハウジング15Bを下降させて密閉状態のチャンバ15を形成させた後、真空装置32を作動させてステップS5以降の工程を実行することにより、ドライフィルムDFが積層された基板Wは第2プレス機構36によって押圧されてフィルム付基板Wが作成される。
【0127】
当該変形例では予めドライフィルムDFが基板Wに積層されている。そのため、フィルム供給ユニット13およびフィルム保持プレート38を例とする構成を適宜省略できる。従って、フィルム材貼付け装置1の小型化および低コスト化を容易に実現できる。
【0128】
(2)実施例および各変形例において、フィルム材をワークに貼り付ける一連の工程は複数回繰り返す構成であってもよい。すなわち、基板WにドライフィルムDFを貼り付けた後に露光処理および現像処理などを行うことにより、基板Wに一層目の金属配線が形成される。その後、金属配線が形成された基板Wを基板供給部2に収納させ、再度ドライフィルムDFを貼り付ける一連の過程を行う。
【0129】
再度の貼付け処理により、金属配線による凹凸を有する基板Wに対して、ドライフィルムDFを高い密着性および埋め込み性で貼り付けることができる。その後、再度露光処理および現像処理を行うことによって、二層目の金属配線が形成される。以下、フィルム材貼付け装置によるフィルム材貼付け処理と、露光処理および現像処理とを繰り返すことにより、多層の金属配線を精度良く基板Wに形成できる。
【0130】
(3)実施例および各変形例において、フィルム材を貼り付ける対象であるワークとして矩形状の基板Wを用いたがこれに限られない。ワークとしては基板の他に、パネル、ウエハなど各種半導体用部材を適用することができる。さらにワークの形状としては矩形状の他、円形状、多角形状、略円形状などであってもよい。
【0131】
(4)実施例および各変形例において、ワークに貼り付けるフィルム材としてドライフィルムDFを用いているがこれに限られない。すなわち、フィルム材の他の例として、フィルム状、テープ状、シート状などの材料を用いることができる。具体的な例として、バックグラインド処理(裏面研削処理)を行う前にウエハまたは基板に貼り付けられる回路保護用の粘着テープ(バックグラインドテープ)、ウエハまたは基板に形成されたチップを封止する封止用の粘着シートなどが挙げられる。
【0132】
本実施例に係るフィルム材貼付け装置1は、特に凹凸を有するワークに対してフィルム材を貼り付ける場合において、当該凹凸に対するフィルム材の密着性および埋め込み性を向上させることができる。よって、フィルム付基板FWにおいて表面にシワが発生する事態や、基板Wとフィルム材との間に気泡が発生する事態を回避できる。バックグラインドテープを用いる場合、フィルム材の表面が平坦であるので、バックグラインド処理が不均一になってワークに割れが発生することを防止できる。封止用シートを用いる場合、チップの実装不良やクラックが発生することを防止できる。
【0133】
(5)実施例および各変形例において、ドライフィルムDFは加熱によって接着力を発揮する加熱接着性のフィルムである構成を例にとって説明したがこれに限られない。他の例として、押圧されることによって接着力を発揮する感圧性接着材を備えるフィルム材を用いてもよい。またフィルム材は接着材を有する構成に限ることはなく、粘着材を備える粘着性フィルム材を用いてもよい。
【0134】
(6)実施例および各変形例において、シリンダ51は保護シート49を4方向に引っ張ることによってテンションを調整しているが、テンションを付与する方向は4方向に限ることはない。一例として
図21に示すように、保護シート49を一方向にのみ引っ張ることによってテンションを付与してもよいし、4方向以上の多方向に保護シート49を引っ張る構成であってもよい。2方向または3方向に保護シート49を引っ張ってテンションを付与してもよい。
【0135】
また、保護シート49のテンションを調整する構成はシリンダ51の伸縮動作によって、任意のタイミングで任意の大きさのテンションを付与する構成に限ることはない。一例として
図22に示すような、定荷重バネ54を用いて保護シート49に対して一定のテンションを継続して付与する構成であってもよい。また、シリンダ51によってテンションを任意に付与する構成の他、モータなどによって保護シート49に対してテンションを任意に付与してもよい。
【0136】
(7)実施例および各変形例において、シリンダ51はドライフィルムDFを押圧する面である押圧面(弾性部材47の下面)に対して直交する方向に保護シート49を引っ張ることでテンションを保護シート49に付与しているが、平面視において保護シート49を引っ張る方向はこれに限られない。すなわち
図23(a)に示すように、押圧面に対して鈍角を形成する方向に保護シート49を引っ張ってもよい。また
図23(b)に示すように、押圧面に対して鋭角を形成する方向に保護シート49を引っ張ってもよい。押圧面に対して鋭角を形成する方向に保護シート49を引っ張る場合、プレス板45は下面周縁部45aに加えて上面周縁部も丸みを帯びた形状であることが好ましい。なお説明の便宜上、
図23の各図においてシリンダ51を省略している。
【0137】
(8)各実施例および各変形例において、第2プレス機構36は弾性部材47を備える構成に限ることはない。すなわち
図24に示すように、第2プレス機構36はプレス板45と、プレス板45のうち少なくとも下面を保護する保護シート49とを備える構成であってもよい。この場合、プレス板45の下面がドライフィルムDFを押圧する押圧面となる。そしてプレス板45の下面は保護シート49を介してドライフィルムDFを押圧する。また、第2プレス機構36においてプレス板45および弾性部材47は実施例のような単一の部材からなる単層構造に限ることはなく、複数の部材を組み合わせた多層構造であってもよい。
【0138】
(9)各実施例および各変形例において、保持テーブル39または剥離テーブル17は金属製に限定されることはなく、セラミックの多孔質で形成された構成などを適宜代用してもよい。また、ウエハWを安定に保持できる構成であれば、保持テーブル39または剥離テーブル17は基板Wを吸着する構成でなくともよい。
【0139】
(10)各実施例および各変形例に係るステップS5において、第1プレス機構35を上昇させることによって第1プレス機構35および第2プレス機構36を互いに押圧させたがこれに限られない。すなわち、第1プレス機構35および第2プレス機構を相対的に近づけるのであれば、第2プレス機構36を移動させる構成であってもよいし、第1プレス機構35および第2プレス機構36の両方を移動させる構成であってもよい。
【0140】
(11)各実施例および各変形例において、第1プレス機構35が第2プレス機構36の下方に配設される構成に限ることはない。すなわち、第1プレス機構35および第2プレス機構が対向配置される構成であれば、第1プレス機構35および第2プレス機構が配設される位置は適宜変更してよい。
【0141】
(12)実施例および各変形例において、ステップS4またはステップS5の過程はチャンバ15の内部において減圧下で行う構成に限られない。すなわち大気圧の条件でステップS4またはステップS5の過程を行ってもよい。但し、基板WとドライフィルムDFとの間にエアーが巻き込まれることを回避するという点で、ステップS4またはステップS5は減圧条件の下で行われることが好ましい。
【0142】
(13)実施例および各変形例において、ヒータ44は第1プレス機構35が備える保持テーブル39に設けられる構成を例示したが、ヒータ44は第1プレス機構35のみが備える構成に限られない。ドライフィルムDFを加熱するヒータ44は、第2プレス機構36に設けられる構成であってもよいし、第1プレス機構35および第2プレス機構36の両方に設けられる構成であってもよい。第2プレス機構36にヒータ44を設ける構成の一例として、プレス板45または弾性部材47にヒータ44を埋設する構成が挙げられる。
【0143】
(14)実施例および各変形例において、保護シート49は第2プレス機構36を被覆するように配設されているがこれに限られない。第2プレス機構36のうち少なくとも保護テーブル39に対向する面を保護する構成の他の例としては、
図25に示すような、下ハウジング15Aと上ハウジング15Bとの間に保護シート49を配設する構成が挙げられる。
【0144】
当該変形例に係るフィルム材貼付け装置1は、下ハウジング15Aと上ハウジング15Bとの間に帯状の保護シート49を供給する保護シート供給ユニット71を備えている。保護シート供給ユニット71は、シート供給部73と、ガイドローラ74と、シート回収部75と、テンションローラ77とを備えている。なお、当該変形例の説明の便宜上、真空装置32、フィルム切断機構37などの一部構成を図面において省略している。
【0145】
シート供給部73は保護シート49の原反ローラを備えており、当該原反ローラから帯状の保護シート49を繰り出し供給する。ガイドローラ74およびテンションローラ77は繰り出し供給された保護シート49を、下ハウジング15Aと上ハウジング15Bとの間の空間を経由してシート回収部75へと案内する。シート回収部75は、保護シート49を巻き取る回収ボビンを備えている。当該回収ボビンは、巻き取り方向に回転駆動されるようになっている。
【0146】
テンションローラ77は遊転自在に支持アーム78に設けられており、当該支持アーム78を介して揺動可能に配備されている。したがって、テンションローラ77は、案内巻回された保護シート49に適度のテンションを与える。テンションローラ77の揺動量は制御部34によって適宜制御される。そのため、テンションローラ77の揺動量に応じて、保護シート49に付与されるテンションを適宜調整できる。本変形例において、テンションローラ77はテンション付与機構に相当する。
【0147】
保護シート供給ユニット71を備える変形例に係る一連の動作について説明する。まずはステップS1およびステップS2の工程などにより、保持テーブル39に基板WおよびドライフィルムDFを供給する。そして保持テーブル39において基板WにドライフィルムDFを積層させる。ドライフィルムDFが積層された基板Wが保持テーブル39に保持されている状態は、
図26に示されている。なお
図26において、保護シート49のうち保持テーブル39に対向する部分、すなわち弾性部材47が当接してドライフィルムDFを押圧する部分を符号Fで示している。
【0148】
保持テーブル39が基板WおよびドライフィルムDFを積層状態で保持すると、シリンダ16を作動させて上ハウジング15Bを下降させる。上ハウジング15Bの下降により、
図27に示すように、下ハウジング15Aおよび上ハウジング15Bによって保護シート49が挟み込まれ、保護シート49によって内部空間が上下空間に分画されたチャンバ15が形成される。
【0149】
保護シート49を挟み込んでチャンバ15が形成されると、真空装置32を作動させてチャンバ15の内部空間を減圧させるとともに、ヒータ44によるドライフィルムDFの加熱を開始する。そして、第1プレス機構35と第2プレス機構36とを相対的に近づけて互いに押圧させる。その結果、
図28に示すように、第2プレス機構36の弾性部材47は保護シート49に当接するとともに、保護シート49を介してドライフィルムDFを押圧する。弾性部材47がドライフィルムDFの全面を押圧することにより、加熱されて接着力が発揮されたドライフィルムDFは基板Wに貼り付けられる。
【0150】
ドライフィルムDFが基板Wに貼り付けられた後、
図29に示すように、第1プレス機構35と第2プレス機構36とを離間させる。そして電磁バルブ33を開放してチャンバ15の内部を大気圧にまで上昇させた後、上ハウジング15Bを上昇させてチャンバ15を開放する。その後、基板搬送機構6によってフィルム付基板FWを保持テーブル39から剥離ユニット7へと搬出し、実施例と同様にステップS6以降の動作を行う。
【0151】
なお貼付け動作を繰り返すことによって、符号Fで示される部分の保護シート49において、離型性の低下または異物の付着を例とする不良が発生した場合、保護シート49を新たに繰り出すことによって保護シート49の交換を行う。すなわちシート供給部73が符号Fで示される長さに相当する量の保護シート49を新たに繰り出すことにより、
図30に示すように符号Fで示される部分の保護シート49は、保持テーブル39に対向する位置からさらに下流へと移動する。そして、符号Fで示される部分の上流に相当する未使用部分の保護シート49が、保持テーブル39に対向する位置へと新たに移動することによって保護シート49の交換が完了する。以降、当該新たな部分の保護シート49を用いて、貼付け動作を実行する。
【0152】
このように、保護シート供給ユニット71を備える変形例では、下ハウジング15Aと上ハウジング15Bとの間の空間に帯状の保護シート49を繰り出し供給させる。そして保護シート49を挟んで対向配置される第1プレス機構35と第2プレス機構36とを相対的に近づけ、保護シート49を挟んで互いに押圧させることによってドライフィルムDFを基板Wに貼り付けることができる。
【0153】
弾性部材47は保護シート49を介してドライフィルムDFを押圧する。すなわち弾性部材47は保護シート49によって保護された状態でドライフィルムDFを押圧するので、傷の発生または異物の付着などに起因して弾性部材47が劣化することを回避できる。また保護シート49の離型性によって、ドライフィルムDFが貼り付けられた基板Wが第2プレス機構36に張り付くという事態も回避できる。また、テンションローラ77によって保護シート49のテンションを適宜調整できるので、保護シート49が弛んだ状態で弾性部材47がドライフィルムDFを押圧する事態も回避できる。
【0154】
そして長期使用によって、弾性部材47が当接する部分の保護シート49が劣化した場合であっても、シート供給部73に保護シート49を新たに繰り出させるという単純な操作によって保護シート49を新しく交換できる。そのため、当該比較例では保護シート49の交換に要する時間をさらに短縮できる。また、当該比較例では保護シート49が第2プレス機構36の側面などを覆う必要がない。すなわち、保護シート49に無駄が発生することを防止し、保護シート49の全ての部分を弾性部材47が当接してドライフィルムDFを押圧する部分として利用できる。従って、保護シート49の利用効率を大きく向上できる。
【0155】
(15)各実施例および各変形例において、ステップS3およびステップS4の順番は逆であってもよい。すなわち実施例では閉塞状態のチャンバ15を形成させた後にドライフィルムDFをワークWに積層させているが、ドライフィルムDFをワークWに積層させた後に上ハウジング15Bを下降させて閉塞状態のチャンバ15を形成させてもよい。
【0156】
(16)各実施例および各変形例において、シリンダ51は保護シート49に対して所定のテンションを常時付与する構成であってもよい。この場合、保護シート49は常時テンションが付与されて隙間Kが解消された状態となるので、張力センサ52を省略することができる。また、張力センサ52は保護シート49の弛みを検出した場合、警告音の発生または警告ランプの点灯などによって当該弛みを報知する構成であってもよい。さらに、張力センサ52を省略し、オペレータが目視などによって保護シート49の弛みの有無を確認し、手動で保護シートのテンションを調整する構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0157】
1 … フィルム材貼付け装置
2 … 基板供給部
3 … 基板搬送機構
4 … アライナ
5 … 貼付けユニット
6 … 基板搬送機構
7 … 剥離ユニット
8 … アライナ
9 … 静電気検査部
11 … 基板回収部
13 … フィルム供給ユニット
15 … チャンバ
15A … 下ハウジング
15B … 上ハウジング
17 … 剥離テーブル
19 … 剥離機構
21 … フィルム供給部
23 … ガイドローラ
25 … セパレータ剥離部材
27 … セパレータ回収部
28 … 円筒頂部
30 … 円筒底部
32 … 真空装置(減圧機構)
34 … 制御部
35 … 第1プレス機構
36 … 第2プレス機構
37 … フィルム切断機構
38 … フィルム保持プレート
39 … 保持テーブル(ワーク保持部)
43 … 支持ピン
44 … ヒータ
45 … プレス板
45a … 下面周縁部
47 … 弾性部材
47a … 下面周縁部
49 … 保護シート
51 … シリンダ(テンション付与機構)
53 … テープ供給部
55 … 支持フレーム
57 … 剥離部材
59 … テープ回収部
71 … 保護シート供給ユニット
73 … シート供給部
75 … シート回収部
77 … テンションローラ(テンション付与機構)
78 … 支持アーム
W … 基板(ワーク)
DF … ドライフィルム(フィルム材)
FW … フィルム付基板
Re … レジスト層
S1 … 第1セパレータ
S2 … 第2セパレータ