(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026645
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
A47B 55/00 20060101AFI20220203BHJP
A47B 77/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A47B55/00
A47B77/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130209
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大輔
【テーマコード(参考)】
3B067
3B260
【Fターム(参考)】
3B067AA04
3B067AA08
3B067DA03
3B067EA01
3B260DA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サイド化粧板をキャビネットの側板により確実且つ強固に取り付けることが可能なキャビネットを提供する。
【解決手段】本発明にかかるキャビネット100の構成は、サイド化粧板120を有するキャビネットにおいて、サイド化粧板の止め穴に固定された拡張式アンカーと、一端に雄ネジを有し他端に雌ネジを有するスペーサー150と、当該キャビネットの側板112の内側からスペーサーに締結されたネジ160と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイド化粧板を有するキャビネットにおいて、
前記サイド化粧板の止め穴に固定された拡張式アンカーと、
一端に雄ネジを有し他端に雌ネジを有するスペーサーと、
当該キャビネットの側板の内側から前記スペーサーに締結されたネジと、
を備えることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記スペーサーには、前記サイド化粧板と当該キャビネットの側板との隙間を埋める複数枚のワッシャが通してあることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチン等に設けられるサイド化粧板を備えたキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のキッチンは、一枚の天板からなるワークトップの下に複数のキャビネットを備えたシステムキッチンが主流となっている。キッチン全体の上面を覆う天板(ワークトップ)には、組み込み式のコンロやシンク、主に調理を行うのに利用される平坦なテーブル面である調理スペースが設けられる。
【0003】
上述した複数のキャビネットのうち、壁付けしない場合のように側面がオープンなキャビネットの側板には、目隠し用のサイド化粧板が取り付けられる。例えば特許文献1の対面式キッチンでは、キャビネットのオープンな側面(壁についていない側面)にサイド化粧板を取り付けている。かかる構成によれば、オープンな側面がサイド化粧板によって覆われるため、美観の向上が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5は、従来のサイド化粧板16の取付方法を説明する図である。
図5(a)は、サイド化粧板16を天板12の下に納めた状態を示していて、
図5(b)は、サイド化粧板16を天板12の横に納めた状態を示している。
図5(a)および(b)に示すように、サイド化粧板16は、キャビネット14a・キャビネット14b・キャビネット14cのうち、キャビネット14cのオープンな側面にネジ18によって取り付けられることが一般である。
【0006】
ここで、天板12は、製造誤差によって幅が若干変化することがある。しかしながら、製造誤差によって天板12の幅がキャビネット14a・14b・14cの和より狭くなると、キャビネット14cの上面が露出してしまう。このため、天板12はキャビネット14a・14b・14cの和よりも広くなるように若干の余裕をもってプラス公差で幅が設計される。
【0007】
上記のように天板12の幅がキャビネット14a・14b・14cよりも広い場合、
図5(a)に示すようにサイド化粧板16をネジ18によってキャビネット14cの側面に取り付けると、天板12は幅W1分だけサイド化粧板16から飛び出した状態となる。しかし、外観向上の観点からは、天板12の端部とサイド化粧板16の側面とは面一(つらいち)になっている方が好ましい。
【0008】
天板12の端部とサイド化粧板16の側面とを面一にするためには、サイド化粧板16を天板12の端部までずらした状態(浮いた状態)でキャビネット14cの側面に取り付ける必要がある。この場合、サイド化粧板16の位置決めを行うこととなるが、寸法誤差に応じた厚みの部材をその都度作成しなくてはならないことになるため、位置決め作業に非常に手間がかかってしまう。
【0009】
図5(b)では、サイド化粧板16を天板12の端部に突き当てた状態で、かかるサイド化粧板16をネジ18によってキャビネット14cの側面に取り付けている。上側のネジ18はサイド化粧板16が天板12の端部に突き当たっていることにより位置決めを正確に行うことができる。しかし、下側のネジ18はサイド化粧板16の後ろに幅W2の隙間があるため、位置決めすることができない。このため、サイド化粧板16が傾斜した状態になってしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、サイド化粧板をキャビネットの側板に取り付ける際にそれらの位置決めを良好且つ容易に行うことが可能なキャビネットを提供することを目的としている。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかるキャビネットの代表的な構成は、サイド化粧板を有するキャビネットにおいて、サイド化粧板の止め穴に固定された拡張式アンカーと、一端に雄ネジを有し他端に雌ネジを有するスペーサーと、当該キャビネットの側板の内側からスペーサーに締結されたネジと、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成では、スペーサーの雄ネジを拡張式アンカーにねじ込むことにより、拡張式アンカーが止め穴に固定され、拡張式アンカーを介してサイド化粧板にスペーサーを立てることができる。その後、キャビネットの側板とサイド化粧板との位置合わせを行い、キャビネットの側板の内側からスペーサーにネジを締結する。これにより、サイド化粧板がキャビネットの側板に取り付けられる。
【0013】
また上記構成では特に、サイド化粧板に雌ネジを形成するために拡張式アンカーを用いる。これにより、サイド化粧板に破壊的な衝撃を与えることなく、スペーサーを立てることができる。更に上記構成によれば、スペーサーが長く突出するため、組立作業時にスペーサーをキャビネットの側板の穴に引っかけておくことができる。したがって、サイド化粧板を仮置きすることができ、作業性を高めることが可能となる。
【0014】
上記スペーサーには、サイド化粧板と当該キャビネットの側板との隙間を埋める複数枚のワッシャが通してあるとよい。かかる構成によれば、サイド化粧板とキャビネットの側板との隙間がワッシャによって埋められるため、それらの隙間によって生じるがたつきを好適に防ぐことが可能となる。すなわち上述したワッシャの枚数を変えれば、キャビネットの側板とサイド化粧板との間隙の幅を任意に調節することができる。これにより、キャビネットに対するサイド化粧板の離接方向の位置決めを良好かつ容易に行うことが可能となる。したがって、天板の端部とサイド化粧板の側面(表面)とを面一に調整することが可能となる。同様に、サイド化粧板を天板の端部に突き当てた状態に対しても、サイド化粧板が傾斜した状態で取り付けられることを防ぐことができる。また、サイド化粧板とキャビネットの側板との間にワッシャを挟むことにより、サイド化粧板に衝撃が加えられても拡張式アンカーが止め穴の底を突き破って外部へ露出するおそれがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サイド化粧板をキャビネットの側板に取り付ける際にそれらの位置決めを良好且つ容易に行うことが可能なキャビネットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態のキャビネットの全体斜視図である。
【
図3】取付部材による取付作業の詳細を説明する断面図である。
【
図4】隙間に応じたワッシャの枚数調整について説明する模式図である。
【
図5】従来のサイド化粧板の取付方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態のキャビネット100の全体斜視図であり、キャビネット100の側板112からサイド化粧板120を取り外した状態を示している。
図1に示すように、本実施形態のキャビネット100では、キャビネット本体110のうち、オープンになっている(壁付けされていない)側板112にサイド化粧板120が取り付けられる。例えば、本実施形態のサイド化粧板120は木質系材料であるが、天然石または擬石からなる石製であってもよい。
【0019】
図2は、
図1の拡大図である。
図2(a)は、
図1の要部の拡大斜視図である。
図2(b)は、取付部材130の詳細を説明する図である。
図1および
図2(a)に示すように、本実施形態のキャビネット100では、サイド化粧板120は取付部材130によって側板112に取り付けられる。
【0020】
図2(b)に示すように、取付部材130は、拡張式アンカー140、スペーサー150およびネジ160を含んで構成される。拡張式アンカー140は、サイド化粧板120の止め穴122に挿入され、そこに固定される。拡張式アンカー140は外周が弾性を有するゴム製であり、内部に雌ネジが切られた金属製のコマ142を有する。コマ142がネジによって内側に引き寄せられると、くさびの効果によって外周のゴム直径が拡張する。拡張式アンカー140としては、例えばblum社のEXPANDO Tを好適に使用することができる。
【0021】
スペーサー150は、一端に雄ネジ152を有し、他端に雌ネジ154(
図2(a)参照)を有する。雄ネジ152は、拡張式アンカー140のコマ142に締結される部位であり、雌ネジ154は、ネジ160が締結される部位である。ネジ160は、キャビネット100の側板112の内側からスペーサー150に締結される。
【0022】
また
図2(b)に示すように、スペーサー150の雄ネジ152およびネジ160には、荷重を分散させるためのワッシャ172が挿通される。これにより、スペーサー150の雄ネジ152を拡張式アンカー140に締結した際の荷重、およびネジ160をスペーサー150の雌ネジ154に締結した際の荷重をワッシャ172によって好適に分散することができる。更に
図2(b)に示すように、スペーサー150の雄ネジ152およびネジ160には、バネワッシャ174が挿通される。これにより、締結後の緩みの発生を好適に防ぐことが可能となる。
【0023】
図3は、取付部材130による取付作業の詳細を説明する断面図である。まず
図3(a)に示すように、サイド化粧板120の止め穴122に拡張式アンカー140を挿入する。この段階ではまだ拡張式アンカー140は拡張しておらず、止め穴122に固定されていない。
【0024】
そして、スペーサー150の雄ネジ152にワッシャ172とバネワッシャ174を挿通させた状態で、雄ネジ152を拡張式アンカー140にねじ込む。するとコマ142が内側に引き寄せられるため、
図3(b)に示すように拡張式アンカー140が止め穴122の中で拡張して固定される。これにより、拡張式アンカー140を介してスペーサー150がサイド化粧板120に立てられる。
【0025】
そして
図3(c)に示すように、サイド化粧板120の端をキャビネット100の天板104の端に合わせることにより、サイド化粧板120と天板104との位置調整を行う。このとき、スペーサー150をキャビネット100の側板112のボルト穴114に引っかけておくことができる。したがって、サイド化粧板120を仮置きすることができ、作業性を高めることが可能となる。
【0026】
また、側板112とサイド化粧板120の間には、寸法誤差による隙間Gが生じることがある。そこで本実施形態では、スペーサー150には隙間調整用の複数枚のワッシャ176が通してある。これにより、サイド化粧板120とキャビネット100の側板112との隙間Gがワッシャ176によって埋められる。したがって、それらの隙間Gによって生じるがたつきを好適に防ぐことが可能となる。
【0027】
その後、
図3(d)に示すように、ワッシャ172およびバネワッシャ174を挿通したネジ160をスペーサー150の雌ネジ154(
図2(a)参照)に締結する。このとき、ボルト穴114の径がスペーサー150の外径より充分に大きく形成されていることで、サイド化粧板120は側板112に対して上下前後に位置合わせすることが容易である。これにより、サイド化粧板120がキャビネット100の側板112に取り付けられる。したがって、本実施形態のキャビネット100によれば、機械的手段によってサイド化粧板120を確実且つ強固に側板112に取り付けることが可能となる。
【0028】
また本実施形態では、サイド化粧板120に雌ネジを形成するために拡張式アンカー140を用いている。これにより、サイド化粧板120に破壊的な衝撃を与えることなく、雌ネジを形成することができる。また、サイド化粧板120とキャビネットの側板112との間にワッシャ176を挟むことにより、サイド化粧板120に衝撃が加えられても拡張式アンカー140が止め穴122の底を突き破って外部へ露出するおそれがない。
【0029】
図4は、隙間に応じたワッシャ176の枚数調整について説明する模式図である。
図4(a)に示す例では、天板104の下方にサイド化粧板120が配置されていて、側板112とサイド化粧板120との間には隙間G1が形成されている。このような場合、例えば3つのワッシャ176をキャビネット100の幅方向に配列することにより、隙間G1を埋めることができる。
【0030】
図4(b)に示す例では、天板104の側方にサイド化粧板120が配置されていて、側板112とサイド化粧板120との間には隙間G2が形成されている。
図4(b)に示す例では、この隙間G2は、
図4(a)の隙間G1よりも狭い。このような場合、例えば2つのワッシャ176をキャビネット100の幅方向に配列することにより、隙間G2を埋めることができる。
【0031】
上記説明したように、本実施形態のキャビネット100によれば、ワッシャ176の枚数を調整することにより、サイド化粧板120とキャビネット100の側板112との隙間の幅に対応することができる。したがって、隙間に応じた幅の部材を用いることなく、隙間によって生じるがたつきを防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、キッチン等に設けられるサイド化粧板を備えたキャビネットに利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
100…キャビネット、104…天板、112…側板、114…ボルト穴、120…サイド化粧板、122…止め穴、130…取付部材、140…拡張式アンカー、142…コマ、150…スペーサー、152…雄ネジ、154…雌ネジ、160…ネジ、172…ワッシャ、174…バネワッシャ、176…ワッシャ、G…隙間