(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026673
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】作業者監視システムおよび作業者監視方法
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20220203BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20220203BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20220203BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A62B35/00 J
G08B21/02
G08B25/04 K
E04G21/32 D ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130247
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】大西 祥太
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝男
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 繁年
(72)【発明者】
【氏名】中原 大輔
【テーマコード(参考)】
2E184
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA08
2E184LA16
2E184LA23
2E184MA01
2E184MA09
5C086AA18
5C086BA20
5C086CA01
5C086CB21
5C086CB23
5C086DA08
5C086EA45
5C086GA01
5C087AA02
5C087BB20
5C087DD03
5C087EE07
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF16
5C087GG06
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】 墜落制止用器具を用いて作業を行う作業者を監視するための作業者監視システムにおいて、作業者の安全を確保できるシステムを安価に提供にする。
【解決手段】 作業者監視システム1において、墜落制止用器具HSの第1、第2のフック14
1H、14
2Hをそれぞれ吊下げ可能な第1、第2のホルダ2、3に各々設けられ、第1のホルダ2における第1のフック14
1Hの有無を検出する第1の検出部101、および、第2のホルダ3における第2のフック14
2Hの有無を検出する第2の検出部102と、作業者Pの位置を検出する位置検出部103と、第1、第2の検出部101、102によるフック有無検出結果、および、位置検出部103による作業者位置検出結果に基づいて、作業者Pの危険度を判定する危険度判定部104と、危険度判定部104により判定された危険度に応じて警報を発する警報部105とを設ける。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
墜落制止用器具を用いて作業を行う作業者を監視するための作業者監視システムであって、
前記墜落制止用器具の第1、第2のフックをそれぞれ吊下げ可能な第1、第2のホルダに各々設けられ、前記第1のホルダにおける前記第1のフックの有無を検出する第1の検出部、および、前記第2のホルダにおける前記第2のフックの有無を検出する第2の検出部と、
作業者の位置を検出する位置検出部と、
前記第1、第2の検出部によるフック有無検出結果、および、前記位置検出部による作業者位置検出結果に基づいて、作業者の危険度を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された前記危険度に応じて警報を発する警報部と、
を備えた作業者監視システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の検出部による前記第1のフックのフック有無検出結果がフック有り検出であり、かつ、前記第2の検出部による前記第2のフックのフック有無検出結果がフック有り検出である場合に、前記警報部が警報を発するようになっている、
ことを特徴とする作業者監視システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記位置検出部が作業者の高さ位置および平面上の位置を検出している、
ことを特徴とする作業者監視システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記位置検出部により検出された前記高さ位置が所定高さ以上の場合、または、前記平面上の位置が危険領域にある場合に、前記判定手段が前記危険度を判定している、
ことを特徴とする作業者監視システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1、第2の検出部によるフック有無検出データ、および、前記位置検出部による作業者位置検出データを送信する送信部と、前記送信部からの送信データを受信する受信部とをさらに備えた作業者監視システム。
【請求項6】
請求項1において、
作業者が有する安全管理情報を取得する安全管理情報取得部と、前記安全管理情報取得部で取得された前記安全管理情報に基づいて決定される作業者の安全管理レベルに応じて、前記警報部による警報を変更する警報変更手段とをさらに備えた作業者監視システム。
【請求項7】
墜落制止用器具を用いて作業を行う作業者を監視するための作業者監視方法であって、
前記墜落制止用器具の第1、第2のフックをそれぞれ吊下げ可能な第1、第2のホルダにおける前記第1、第2のフックの有無を検出する第1、第2の検出部と、作業者の位置を検出する位置検出部とが設けられており、
前記作業者監視方法は、
前記第1、第2の検出部がそれぞれ前記第1、第2のフックの有無を検出するフック有無検出ステップと、
前記位置検出部が作業者の位置を検出する作業者位置検出ステップと、
前記フック有無検出ステップで検出された前記第1、第2のフックの有無、および、前記作業者位置検出ステップで検出された作業者の位置に基づいて、作業者の危険度を判定する危険度判定ステップと、
前記危険度判定ステップで判定された前記危険度に応じて警報を発する警報ステップと、
を備えた作業者監視方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記フック有無検出ステップにおいて、前記第1の検出部による前記第1のフックのフック有無検出結果がフック有り検出であり、かつ、前記第2の検出部による前記第2のフックのフック有無検出結果がフック有り検出である場合に、前記警報ステップにおいて警報を発するようになっている、
ことを特徴とする作業者監視方法。
【請求項9】
請求項7において、
前記作業者位置検出ステップにおいて、作業者の高さ位置および平面上の位置を検出している、
ことを特徴とする作業者監視方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記作業者位置検出ステップにおいて検出された前記高さ位置が所定高さ以上の場合、または前記平面上の位置が危険領域にある場合に、前記危険度判定ステップにおいて前記危険度を判定している、
ことを特徴とする作業者監視方法。
【請求項11】
請求項7において、
作業者が有する安全管理情報を取得する安全管理情報取得ステップと、前記安全管理情報取得ステップで取得された前記安全管理情報に基づいて決定される作業者の安全管理レベルに応じて、前記警報ステップによる警報を変更する警報変更ステップとをさらに備えた作業者監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墜落制止用器具を用いて作業を行う作業者を監視するための作業者監視システムおよび作業者監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場や工場等で高所作業を行う場合、墜落制止用器具(旧名称:安全帯)が用いられている。一般に、胴ベルト型の安全帯は、作業者の腰回りに装着される胴ベルトと、基端が胴ベルトに固着され、先端にフックが固着されたランヤードとを備えている。作業者は、高所作業を行う際、ランヤード先端のフックを作業現場の構造物に掛止することにより、ランヤードを命綱として作業を行っている。
【0003】
特開2020-402号公報には、このような安全帯においてフックのかけ忘れを防止するとともに、管理者が作業者の現在位置を把握することにより、作業者の安全を確保するフックかけ忘れ防止監視システムが記載されている。
【0004】
上記公報の段落[0012]、[0014]および
図1に示すように、フックかけ忘れ防止監視システム(100)が適用される建設物(C)には、ビーコンやGPS等からの信号に基づいてエリア境界やエリア内の手すりの有無等の位置情報がマッピングされた安全確認エリア(A2)が設定されている。
【0005】
フックかけ忘れ防止監視システム(100)は、上記公報の段落[0023]~[0024]、
図2および
図3に示すように、安全帯(10)のフック(1)に設けられた接触センサ(3a)と、安全帯(10)の胴ベルト(8)に設けられたフックかけ忘れ報知機(20)とを備えている。作業者(W1~W3)が安全帯(10)のフック(1)を建設物(C)の支持ロープ(RO)に掛止したとき(すなわち、「安全確保行動」が完了したとき(同段落[0015]参照))、接触センサ(3a)が支持ロープ(RO)との接触を検出して検出信号を出力する(同段落[0024]参照)。フックかけ忘れ報知機(20)は、接触センサ(3a)からの検出信号が受信されるまで(すなわち、作業者による「安全確保行動」が完了するまで)の間、警報を発するようになっている(同段落[0024]~[0025]参照)。
【0006】
フックかけ忘れ防止監視システム(100)は、さらに、作業者(W1~W3)が携帯する携帯通信端末(30)と、管理者(M)が携帯する携帯通信端末(50)とを備えている(同公報の段落[0016]、
図1参照)。携帯通信端末(30)は、各作業者(W1~W3)の位置情報および各作業者(W1~W3)からの警報信号を取得するとともに、取得した位置情報のデータおよび警報信号を管理者(M)の携帯通信端末(50)に送信するためのものであり、携帯通信端末(50)は、受信された位置情報のデータおよび警報信号に基づいて、各作業者(W1~W3)の位置情報を表示するとともに、作業者(W1~W3)が安全帯(10)のフック(1)を支持ロープ(RO)に掛けてあるか否か(つまり、フックの使用状態)を表示するためのものである(同段落[0016]~[0019]、[0027]~[0028]、[0032]~[0033]、
図1および
図4参照)。
【0007】
このようなフックかけ忘れ防止監視システム(100)においては、作業者(W1~W3)が安全確認エリア(A2)に進入した後、作業者(W1~W3)が安全帯(10)のフック(1)を支持ロープ(RO)に掛けるまでの間は、フックかけ忘れ報知機(20)が警報を発する。警報信号は、作業者(W1~W3)の携帯通信端末(30)から管理者(M)の携帯通信端末(50)に送信される。また、作業者(W1~W3)の安全確認エリア(A2)内の位置情報は、携帯通信端末(30)から管理者(M)の携帯通信端末(50)に送信される。これにより、管理者(M)は、各作業者(W1~W3)の位置を把握できるとともに、各作業者(W1~W3)によるフック使用の有無を確認できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の構成では、フックとして、接触センサが設けられた専用のフックを用意しなければならず、汎用品のフックが取り付けられた既存の墜落制止用器具に適用することは困難である。また、上記従来の構成では、フックが一つしか設けられていないため、作業者が作業現場でフックの掛替えを行う際にフックが作業現場の構造物に掛止されていない状態(無胴綱状態)が発生する。そこで、フックを二つ設けることも考えられるが、その場合には、追加したフックについても接触センサを設ける必要があり、追加フックのためのフックかけ忘れ報知機も別途設けなければならないため、さらにコストがアップする。
【0009】
その一方、墜落制止用器具として、フルハーネス(またはハーネス)型の墜落制止用器具が用いられている。フルハーネス型の墜落制止用器具は、一般に、左右一対の肩ベルトと、これらの間に掛け渡される胸ベルトと、胴ベルトと、腿ベルト等とを備えるとともに、一端にフックを有しかつ他端が肩ベルトの背中側配設個所に連結されたランヤードを備えている。フルハーネス型の墜落制止用器具の肩ベルトには、ランヤードの非使用時にフックを作業者の体の側に吊り下げておくためのホルダが取り付けられている。ホルダは、作業者が高所の作業現場に向かう際にフックを吊り下げて持ち運ぶためのものである。
【0010】
このようなフルハーネス型の墜落制止用器具においても、作業者が高所作業時にランヤード先端のフックを作業現場の構造物に掛止しているか否かを検出するための技術が提案されている。たとえば特許第5822796号公報に記載のものでは、フックに凹状の設置部を形成して当該設置部にホール素子を設置するとともに、これと相対する位置に磁石を設置しており(段落[0026]および
図5参照)、フックが被掛止部に掛止されたとき、ホール素子が磁石に近接することで被掛止部へのフックの掛止が検出されるようになっている。また、フックに複数の各種センサを搭載したものも提案されている。
【0011】
しかしながら、これらの場合においても、フックとして、センサが設けられた専用のフックを用意しなければならず、汎用品のフックが取り付けられた既存の墜落制止用器具に適用することは困難である。
【0012】
ところで、フルハーネス型の墜落制止用器具においては、一般に、左右一対のランヤードが設けられており、高所作業時に左側のランヤードが使用されているとき(つまり、左側のランヤードの先端のフックが作業現場の構造物に掛止されているとき)、右側のランヤードの先端のフックは、これに対応するホルダに係止された状態になっている。これとは逆に、高所作業時に右側のランヤードが使用されているとき(つまり、右側のランヤードの先端のフックが作業現場の構造物に掛止されているとき)、左側のランヤードの先端のフックは、これに対応するホルダに係止された状態になっている。
【0013】
したがって、高所作業時にランヤードの先端のフックが構造物に掛止されているかどうかをフック側で直接検出しなくても、ホルダ側でフックの有無を検出することで、高所作業時の安全性をある程度確保することが可能である。
【0014】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、墜落制止用器具を用いて作業を行う作業者を監視するための作業者監視システムにおいて、作業者の安全を確保できるシステムを安価に提供できるようにすることにある。また、本発明は、このような作業者監視システムを汎用品のフックを用いて安価に提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、墜落制止用器具を用いて作業を行う作業者を監視するための作業者監視システムである。当該作業者監視システムは、墜落制止用器具の第1、第2のフックをそれぞれ吊下げ可能な第1、第2のホルダに各々設けられ、第1のホルダにおける第1のフックの有無を検出する第1の検出部、および、第2のホルダにおける第2のフックの有無を検出する第2の検出部と、作業者の位置を検出する位置検出部と、第1、第2の検出部によるフック有無検出結果、および、位置検出部による作業者位置検出結果に基づいて、作業者の危険度を判定する判定手段と、判定手段により判定された危険度に応じて警報を発する警報部とを備えている。
【0016】
本発明によれば、作業者が墜落制止用器具の第1、第2のフックをそれぞれ第1、第2のホルダに吊り下げとき、第1のホルダに第1のフック有りの状態が第1の検出部により検出され、第2のホルダに第2のフック有りの状態が第2の検出部により検出されるとともに、作業者が墜落制止用器具の第1、第2のフックをそれぞれ第1、第2のホルダから取り外したとき、第1のホルダに第1のフック無しの状態が第1の検出部により検出され、第2のホルダに第2のフック無しの状態が第2の検出部により検出される。また、作業者の位置は、位置検出部により検出される。
【0017】
第1、第2の検出部によるフック有無検出結果、および、位置検出部による作業者位置検出結果に基づいて、判定手段により作業者の危険度が判定される。たとえば、作業現場において、第1または第2の検出部のいずれか一方がフック無しの状態を検出しかついずれか他方がフック有りの状態を検出している場合には、作業者が一方のフックを使用していることになり、このとき、作業者位置検出結果を加味しつつ、危険度が判定される。また、作業現場において、第1および第2の検出部の双方がフック有りの状態を検出している場合には、作業者がいずれのフックも使用していないことになり、このとき、作業者位置検出結果を加味しつつ、危険度が判定される。警報部は、判定手段により判定された危険度に応じて警報を発する。
【0018】
この場合には、専用のフックを用意する必要がなく、汎用品のフックを用いた既存の墜落制止用器具に適用することが可能なので、作業者の安全を確保できる作業者監視システムを安価に構成できる。
【0019】
本発明では、第1の検出部による第1のフックのフック有無検出結果がフック有り検出であり、かつ、第2の検出部による第2のフックのフック有無検出結果がフック有り検出である場合に、警報部が警報を発するようになっている。この場合には、作業者が作業現場でいずれのフックも使用していないことになるからである。
【0020】
本発明では、位置検出部が、作業者の高さ位置および平面上の位置を検出している。
【0021】
本発明では、位置検出部により検出された高さ位置が所定高さ以上の場合、または、平面上の位置が危険領域にある場合に、判定手段が危険度を判定している。
【0022】
本発明による作業者監視システムは、第1、第2の検出部によるフック有無検出データ、および、位置検出部による作業者位置検出データを送信する送信部と、送信部からの送信データを受信する受信部とをさらに備えている。
【0023】
本発明による作業者監視システムは、作業者が有する安全管理情報を取得する安全管理情報取得部と、安全管理情報取得部で取得された安全管理情報に基づいて決定される作業者の安全管理レベルに応じて、警報部による警報を変更する警報変更手段とをさらに備えている。
【0024】
本発明は、墜落制止用器具を用いて作業を行う作業者を監視するための作業者監視方法である。墜落制止用器具の第1、第2のフックをそれぞれ吊下げ可能な第1、第2のホルダにおける第1、第2のフックの有無を検出する第1、第2の検出部と、作業者の位置を検出する位置検出部とが設けられている。当該作業者監視方法は、以下のステップ(工程)を備えている。
i) 第1、第2の検出部がそれぞれ第1、第2のフックの有無を検出するフック有無検出ステップ。
ii) 位置検出部が作業者の位置を検出する作業者位置検出ステップ。
iii)フック有無検出ステップで検出された第1、第2のフックの有無、および、作業者位置検出ステップで検出された作業者の位置に基づいて、作業者の危険度を判定する危険度判定ステップ。
iv) 危険度判定ステップで判定された危険度に応じて警報を発する警報ステップ。
【0025】
本発明によれば、フック有無検出ステップにおいては、作業者が墜落制止用器具の第1、第2のフックをそれぞれ第1、第2のホルダに吊り下げとき、第1のホルダに第1のフック有りの状態が第1の検出部により検出され、第2のホルダに第2のフック有りの状態が第2の検出部により検出されるとともに、作業者が墜落制止用器具の第1、第2のフックをそれぞれ第1、第2のホルダから取り外したとき、第1のホルダに第1のフック無しの状態が第1の検出部により検出され、第2のホルダに第2のフック無しの状態が第2の検出部により検出される。作業者位置検出ステップにおいては、作業者の位置が位置検出部により検出される。
【0026】
危険度判定ステップにおいては、フック有無検出ステップで検出された第1、第2のフックの有無、および、作業者位置検出ステップで検出された作業者の位置に基づいて、作業者の危険度が判定される。たとえば、作業現場において、第1または第2の検出部のいずれか一方がフック無しの状態を検出しかついずれか他方がフック有りの状態を検出している場合には、作業者が一方のフックを使用していることになり、このとき、作業者の位置を加味しつつ、危険度が判定される。また、作業現場において、第1および第2の検出部の双方がフック有りの状態を検出している場合には、作業者がいずれのフックも使用していないことになり、このとき、作業者の位置を加味しつつ、危険度が判定される。警報ステップにおいては、警報部が、判定手段により判定された危険度に応じて警報を発する。
【0027】
この場合には、専用のフックを用意することなく、汎用品のフックを用いて作業者を監視できるようになるので、作業者の安全を確保できる作業者監視方法を安価に構築できるようになる。
【0028】
本発明では、フック有無検出ステップにおいて、第1の検出部による第1のフックのフック有無検出結果がフック有り検出であり、かつ、第2の検出部による第2のフックのフック有無検出結果がフック有り検出である場合に、警報ステップにおいて警報を発するようになっている。この場合には、作業者が作業現場でいずれのフックも使用していないことになるからである。
【0029】
本発明では、作業者位置検出ステップにおいて、作業者の高さ位置および平面上の位置を検出している。
【0030】
本発明では、作業者位置検出ステップにおいて検出された高さ位置が所定高さ以上の場合、または平面上の位置が危険領域にある場合に、危険度判定ステップにおいて危険度を判定している。
【0031】
本発明に係る作業者監視方法は、作業者が有する安全管理情報を取得する安全管理情報取得ステップと、安全管理情報取得ステップで取得された安全管理情報に基づいて決定される作業者の安全管理レベルに応じて、警報ステップによる警報を変更する警報変更ステップとをさらに備えている。
【発明の効果】
【0032】
以上のように本発明によれば、墜落制止用器具を用いて作業を行う作業者を監視するための作業者監視システム/作業者監視方法において、作業者の安全を確保できるシステム/方法を安価に提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施例による作業者監視システムが適用される作業現場の一例の正面概略図である。
【
図3】
図1のIII-III線矢視概略図(すなわち、前記作業現場(
図1)の3階部分の平面概略図)において、前記作業者監視システム(
図1)を構成する機器のブロック構成を併せて示している。
【
図4】前記作業者監視システム(
図1)を構成するフルハーネス型の墜落制止用器具を作業者が装着した状態を前側から見た全体斜視図であって、第1、第2のホルダにそれぞれ第1、第2のフックが吊り下げられた状態を示している。
【
図5】前記墜落制止用器具(
図4)を後ろ側から見た全体斜視図であって、左側のフック(第2のホルダ)がホルダから外された状態を示している。
【
図8】前記ホルダ(
図4)を右側上方から見た全体斜視図である。
【
図9】前記ホルダ(
図4)を右側下方から見た全体斜視図である。
【
図10】前記ホルダ(
図6)において、ベースから蓋体を取り外した状態を示す正面図であって、内部構造を示している。
【
図11】前記ホルダ(
図6)において、スライダにフックが吊り下げられた状態を示す正面図である。
【
図12】前記ホルダ(
図11)を右側上方から見た全体斜視図である。
【
図13】前記ホルダ(
図10)において、スライダにフックが吊り下げられた状態を示す正面図である。
【
図14】前記墜落制止用器具(
図4)に取り付けられるコントローラの概略ブロック構成図である。
【
図15】前記作業者監視システム(
図1)の機能ブロック図である。
【
図16】前記第1のホルダ(
図4)における前記第1のフックの有無を検出する第1の検出部、または前記第2のホルダ(
図4)における前記第2のフックの有無を検出する第2の検出部をそれぞれ構成するマイクロスイッチおよびリードスイッチの出力動作設定の一例を説明するための図である。
【
図17】前記マイクロスイッチおよびリードスイッチ(
図16)の出力動作設定の他の例を説明するための図である。
【
図18】前記作業者監視システム(
図1)を構成する各機器のタイムチャートの一例を示している。
【
図19】前記作業者監視システム(
図1)のフローチャートの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし
図19は、本発明の一実施例による作業者監視システムを説明するための図であって、
図1ないし
図3は、作業者監視システムが適用される作業現場(建設現場)の概略構成図、
図4および
図5は作業者監視システムを構成するフルハーネス型の墜落制止用器具の全体斜視図、
図6ないし
図9は墜落制止用器具のホルダの外観図、
図10はホルダの内部構造図、
図11および
図12はホルダにフックが吊り下げられた状態を示す外観図、
図13はホルダにフックが吊り下げられた状態を示す内部構造図、
図14は墜落制止用器具のコンローラのブロック構成図、
図15は作業者監視システムの機能ブロック図、
図16および
図17は各ホルダ内部の各スイッチの出力動作設定を説明するための図、
図18は作業者監視システムを構成する各機器のタイムチャート、
図19は作業者監視システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図1に示すように、建設中の建物BLの周囲には、多数の金属製パイプTPを概略鉛直方向および水平方向に組み合わせてなる足場が組み立てられている(同図では一部のみ図示)。図示例では、建物BLが3階建ての場合を例にとっている。鉛直方向に延設された各パイプ(支柱)TPの間には、2、3階の各床面に相当する高さ位置に配設された踏板(アンチ)FL
2、FL
3が設けられるとともに、各踏板のFL
2、FL
3の上方位置に手摺R
2、R
3が設けられている。これらの手摺R
2、R
3には、作業者P
1、P
2、P
3が装着している墜落制止用器具HS(詳細は後述)のフック14
1H、14
2Hが掛止される。また、1階から2階に向かう階段ST
1およびその手摺RS
1が設けられるとともに、2階から3階に向かう階段ST
2およびその手摺RS
2が設けられている。なお、ここでは、典型的なくさび式足場を例にとっているが、本発明による作業者監視システムは、その他の種々の足場に適用可能である。
【0036】
図2は、
図1を一部拡大して示したものであるが、図示の便宜上、2、3階の各作業者P
2、P
3を上下に揃えた位置に配置している。同図に示すように、墜落制止用器具HSのコントローラ17(後述)の地面GLからの高さをHとし、各作用者P
2、P
3が立っている踏板FL
2、FL
3からコントローラ17までの高さをhとしたとき、H-hを各作業者P
2、P
3の高さ位置としている。
【0037】
図3は、
図2のIII-III線矢視図であって、
図1の3階部分の平面図である。
図3に示すように、建物BLの周囲に複数個(この例では8個)の通信機CDが設けられるとともに、建物BLの内部の略中央部分に1個の通信機CDが設けられている。建物BLの周囲の通信機CDは、3階の天井に相当する高さ位置において水平方向に配設されたパイプCL
3(
図1、
図2参照)に取り付けられており、建物BLの内部の通信機CDは、たとえば建物BLの3階の天井を支える骨組みに取り付けられている。
【0038】
これらの通信機CDは、墜落制止用器具HSから出力される作業者位置データおよびフック有無検出データ(いずれも詳細は後述)を受信するためのものである。通信機CDには、ゲートウェイGWが通信可能に接続され、ゲートウェイGWには、インターネット回線等を介してサーバSVが通信可能に接続されており、サーバSVは、外部のコンピュータCPと通信可能に接続されている。なお、サーバSVが作業現場に設置される場合には、ゲートウェイGWを省略できるので、無線LAN等の無線通信を利用して通信機CDからサーバSVに信号を直接送信するようにしてもよい。また、図示は省略するが、建物BLの2階部分にも同様の通信機CDが設けられており、各通信機CDは、上述したゲートウェイGWに通信可能に接続されている。コンピュータCPにおいては、本発明による作業者監視方法を実行するためのプログラムがハードディスク等の記録媒体にインストールされている。
【0039】
各通信機CDがブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)に対応した受信機器である場合には、各通信機CDは、好ましくは、ブルートゥース(登録商標)・ロウ・エネルギー(BLE:Bluetooth Low Energy)を拡張させたブルートゥース(登録商標)・メッシュ・ネットワークBNを構築している。すなわち、通信機CD同士は通信線による接続が不要となっており、近接する通信機CD同士は近距離無線通信により送受信可能になっている。したがって、ゲートウェイGWと無線通信を直接行うことができない通信機CDが受信した信号であっても、ブルートゥース(登録商標)・メッシュ・ネットワークBNを介してゲートウェイGWまで到達し、サーバSVに供給されるようになっている。この場合、ゲートウェイGWは、ブルートゥース(登録商標)・メッシュ・ネットワークBNと、外部の各種ネットワークとを接続している。
【0040】
図3中の斜線領域は危険領域HZであって、たとえば足場の悪い領域等がこれに該当する。図示例では、危険領域HZが矩形形状を有している。危険領域HZを作業者に認知させるとともにその位置を特定するために、危険領域HZの各頂点A、B、C、Dの近傍位置にカラーコーン(登録商標)(図示せず)が設置され、各カラーコーン(登録商標)にRFID(Radio Frequency Identifier)タグやICタグまたはビーコン等(いずれも図示せず)が取り付けられている。RFIDタグやICタグのためのタグリーダー(図示せず)が作業現場のいずれかの個所に設けられている。タグリーダで読み取られたデータやビーコンから出力された電波は、通信機CDによって受信されている。なお、建物BLの2階部分にも同様の危険領域HZが設けられており、上述したICタグ等によってその位置が特定されている。
【0041】
次に、墜落制止用器具HSについて、
図4および
図5を用いて説明する。
これらの図に示すように、墜落制止用器具1は、フルハーネス型の墜落制止用器具であって、作業者Pの体に掛け渡される左右一対の肩ベルト10
1、10
2と、これらを連結する胸ベルト11と、胴ベルト12と、左右一対の腿ベルト13
1、13
2と、左右一対のランヤード14
1、14
2とを備えており、2本のランヤードを有するダブルランヤード式である。
【0042】
ランヤード14
1は、先端にフック14
1Hが取り付けられたストラップ14
1Sから構成されており、同様に、ランヤード14
2は、先端にフック14
2Hが取り付けられたストラップ14
2Sから構成されている。墜落制止用器具1の背面側において(
図5参照)、各肩ベルト10
1、10
2の交差個所には、D環15が固定されており、D環15にはショックアブソーバー16が係止している。各ランヤード14
1、14
2の基端は、それぞれショックアブソーバー16に取り付けられている。
【0043】
墜落制止用器具1の正面側において(
図4参照)、各肩ベルト10
1、10
2には、第1、第2のホルダ2、3がそれぞれ取り付けられている。各ホルダ2、3は、対応する各肩ベルト10
1、10
2がそれぞれ挿通し得るベルト通し(図示せず)を一体に有しており、これらのベルト通しに肩ベルト10
1、10
2がそれぞれ挿通することで肩ベルト10
1、10
2に予め取り付けられている。または、各ホルダ2、3は、対応する各肩ベルト10
1、10
2がそれぞれ係止し得る、たとえばフック状または爪状の係止具(図示せず)を一体に有しており、これらの係止具が肩ベルト10
1、10
2にそれぞれ係脱自在に係止することで肩ベルト10
1、10
2に後付けで取り付けられている。あるいは、各ホルダ2、3は、肩ベルト10
1、10
2に予め取り付けられている既存の各ホルダに対して直接またはジョイント等を介して着脱可能になっている。
【0044】
ホルダ2は、ランヤード141の先端のフック141Hを吊下げ可能に係止するためのものであり、同様に、ホルダ3は、ランヤード142の先端のフック142Hを吊下げ可能に係止するためのものである。
【0045】
ホルダ2の外観構造について、
図6ないし
図9を用いて説明する。なお、ホルダ3についても同様の構成を示しており、ここでは、ホルダ2についてのみ説明する。
これらの図に示すように、ホルダ2は、肩ベルト10
1に取付け可能に設けられるベース20と、ベース20にスライド可能に設けられ、フック14
1Hが係止し得るスライダ21とを有している。ベース20には、図示していないが、肩ベルト10
1に取り付けるための係止具またはベルト通しがその背面側(
図6の紙面奥側)に設けられている。
【0046】
ベース20は、箱状のベース本体20Aと、ベース本体20Aの前面開口部を覆う蓋体20Bとから構成されている。スライダ21は、ベース本体20Aに上下方向(
図6上下方向)スライド自在に支持されている。
【0047】
スライダ21は、
図6に示すように、概略五角形状のフック吊下げ部を有する枠状部材であって、中央に開口21aを有している。スライダ21は、上下方向に延びる左右一対の立壁面21Aと、底部に配置され、左右方向(同図左右方向)に延びる底壁面21Bと、各立壁面21Aと底壁面21Bを連設するように下方に向かって傾斜する左右一対の傾斜面21Cとを有している。これら各立壁面21A、底壁面21Bおよび各傾斜面21Cと、ベース本体20Aの底壁面20aとにより、開口21aが画成されている。スライダ21の各立壁面21Aには、スライダ21の上方へのスライド移動を規制するストッパ21Sがそれぞれ設けられている。各ストッパ21Sは、ベース本体20Aの底壁面20aに下方から当接している。
【0048】
スライダ21の底壁面21Bは、フック141Hが吊下げ可能に係止される部位であるが、その下方の底部内には、フック141Hの有無を検出するための第1の検出部を構成するリードスイッチ22が設けられている。リードスイッチ22は、スライダ21の底部に形成された凹部に収容されている。
【0049】
リードスイッチ22は、2本の強磁性体リード22A、22Bを所定の接点間隔を介して対向配置させてガラス管22Cの中に封入することにより構成されている。各リード22A、22Bは、スライダ21の枠状部材に沿って形成された凹部21hに収容されている。スライダ21の底壁面21Bにフック14
1Hが吊り下げられていないとき、リードスイッチ22はOFF状態になっている。なお、
図6、
図8および
図9では、図示の便宜上、各リード22A、22Bおよびガラス管22Cがスライダ21の前面に露出したものが示されているが、各リード22A、22Bおよびガラス管22Cは、たとえばエポキシ樹脂を用いて樹脂封止されている。
【0050】
次に、ホルダ2の内部構造について、
図10を用いて説明する。
図10では、
図6に示すホルダ2から蓋体20Bを取り外した状態を示している。なお、ホルダ3についても同様の構成を示しており、ここでは、ホルダ2についてのみ説明する。
【0051】
図10に示すように、ホルダ2のベース本体20Aは、同図の紙面奥側に配置された正面視概略矩形状の背面壁部20bと、背面壁部20bの外周縁部に沿って概略矩形状に配設されるとともに、同図の紙面手前側に向かって延設された側壁部20w
1、20w
2、20w
3、20w
4とを有しており、同図の紙面手前側に開口を有する箱形形状を有している。
【0052】
左右の側壁部20w
3、20w
4には、上下方向(
図10上下方向)に延びる切欠き20nがそれぞれ形成されている。一方、スライダ21を構成する枠状部材の上部には、左右方向に延びる左右一対の肩部21kが設けられており、各肩部21kは、対応する各切欠き20nに挿入されている。各肩部21kは、対応する各切欠き20n内において、各切欠き20nとの間に上下方向の間隙を有している。リードスイッチ22の各リード22A、22Bは、各肩部21kを通り、スライダ21を挿通して上方まで延びている。
【0053】
下側の側壁部20w2の左右の端部寄りの位置には、上下方向に配設された左右一対のリターンスプリング24が配置されている。各リターンスプリング24の下部は、側壁部20w2に設けられた凹状のスプリング受け部20sにそれぞれ保持されており、各リターンスプリング24の上端は、スライダ21の各肩部21kの下面に当接している。このとき、側壁部20w2の下面20aには、スライダ21の各ストッパ21Sが当接している。なお、各肩部21kの下面には、下方に延びる支軸部21k1、21k2がそれぞれ設けられており、各支軸部21k1、21k2は、対応する各リターンスプリング24の上部に挿入されて、各リターンスプリング24を内周側から保持している。
【0054】
スライダ21において、左右の各肩部21kの間には、センサ収容凹部21mが形成されている。センサ収容凹部21mには、フック141Hの有無を検出するための第1の検出部を構成するマイクロスイッチ23が配置されている。マイクロスイッチ23は、この例では、上下方向に回動するヒンジレバー型のアクチュエータ23sを有している。アクチュエータ23sの先端は、センサ収容凹部21mの底部21fに圧接している。このように、スライダ21の底壁面21Bにフック141Hが吊り下げられていないとき、マイクロスイッチ23はON状態となっている。
【0055】
次に、
図11および
図12は、スライダ21にフック14
1Hが吊り下げられた状態の外観図であり、
図13はその状態での内部構造図である。
図11、
図12、
図13は、
図6、
図8、
図10にそれぞれ対応している。なお、ホルダ3についても同様の構成を示しており、ここでは、ホルダ2についてのみ説明する。また、
図11ないし
図13では、フック14
1Hの先端部分を簡略化して示しており、外れ止め部材等の図示は省略されている。
【0056】
図11および
図12に示すように、フック14
1Hは、スライダ21の底部の底壁面21Bに吊り下げられて係止されており、このとき、フック14
1Hはホルダ2に対して係止位置に位置している。フック14
1Hの先端側部の左右側面には、それぞれマグネット14
1mが接着剤や粘着テープ等により後付けで固着されている。なお、マグネット14
1mは、フック14
1Hの側面に形成された凹部または凸部に嵌合させるようにしてもよい。各マグネット14
1mは、フック14
1Hが底壁面21Bに係止された状態で、底壁面21Bの直近近傍に配置されている。また、このとき、各マグネット14
1mは、リードスイッチ22の接点の上方に位置しており、これにより、リードスイッチ22がいずれか一方または双方のマグネット14
1mを検出することにより、リードスイッチ22がON状態となっている。
【0057】
また、このとき、スライダ21にフック14
1Hが吊り下げられることで、フック14
1Hおよびランヤード14
1のストラップ14
1Sの自重による荷重がスライダ21に作用しており、これにより、スライダ21が下方(
図11下方)に移動する。その結果、スライダ21の各ストッパ21Sとセンサ収容部20の下面20aとの間には、ギャップeが形成されている。
【0058】
図13に示すように、スライダ21の底部の底壁面21Bにフック14
1Hが吊り下げられて係止されたとき、スライダ21の下方(
図13下方)への移動によって、ベース本体20Aのセンサ収容凹部21mの底部21fが下方に移動することにより、底部21fがマイクロスイッチ23のアクチュエータ23sから離れる。これにより、マイクロスイッチ23がOFF状態となる。また、このとき、各リターンスプリング24は圧縮変形している。
【0059】
この状態から、フック14
1Hをスライダ21から取り外すと、各リターンスプリング24の弾性反発力により、スライダ21が上方(
図13上方)に移動し、各ストッパ21Sがベース本体20Aの側壁部20w
2の下面20aに当接して停止する(
図10参照)。このとき、上述したように、スライダ21の底部21fがマイクロスイッチ23のアクチュエータ23sと当接して、マイクロスイッチ23がONとなる。その一方、リードスイッチ22は、フック14
1Hのマグネット14
1mを検出できなくなることにより、OFFとなる。
【0060】
このように、マイクロスイッチ23は、フック141Hの自重に起因した荷重を検出可能な手段(またはスライダ21の移動を検出可能な手段)であり、リードスイッチ22は、フック141Hがスライダ21したがってホルダ2に対して係止位置に位置していることを検出可能な手段である。別の言い方をすれば、マイクロスイッチ23およびリードスイッチ22を含む第1の検出部はいずれも、第1のホルダ2における第1のフック141Hの有無を検出するための手段である。また、マイクロスイッチ23およびリードスイッチ22は、上述したように、フック141Hの吊下げ前および吊下げ後の双方においてON/OFF状態が異なっており、互いに異なる出力動作設定がなされている。
【0061】
ここで、
図16は、マイクロスイッチ23およびリードスイッチ22の出力動作設定の一例を説明するための図である。ここでは、ホルダ2についてのみ説明するが、ホルダ3についても同様である。
【0062】
上述したように、墜落制止用器具1のフック14
1Hをホルダ2のスライダ21に吊り下げて係止したとき(
図11、
図13参照)、ホルダ2にフック有りの状態がマイクロスイッチ23およびリードスイッチ22により検出される。このとき、各スイッチ23、22の出力状態は、
図16中の「フック有り」の欄に示すとおり、マイクロスイッチ23は「OFF」で、リードスイッチ22は「ON」になっており、各スイッチ23、22の出力動作設定は異なっている。
【0063】
このように、フック有りの状態がマイクロスイッチ23およびリードスイッチ22により検出されたとき、各スイッチ23、22の出力は互いに異なっており、マイクロスイッチ23が「OFF」で、リードスイッチ22が「ON」の場合に限り、各スイッチ23、22がフック有りの状態を検出したことになる。これにより、ホルダ2にフック有りの状態が確実に検出できるようになる。しかも、この場合には、専用品の特殊なフックを用意することなく、汎用品のフックを使用することができる(この例では、後付けでマグネット141mを装着するだけである)ので、安価に構成できる。
【0064】
また、フック有りの状態において、作業者Pの激しい体の動きによってフック141Hがスライダ21上で上下に振動してスライダ21上の係止位置から若干上方に移動した場合でも、リードスイッチ22が一定の検出範囲を有していることにより、リードスイッチ22がOFFになることなくON状態を維持できるので、作業者Pの体の動きに起因したリードスイッチ22の誤作動を防止できる。
【0065】
その一方、上述したように、フック14
1Hをホルダ2のスライダ21から取り外したとき(
図6、
図10参照)、ホルダ2にフック無しの状態がマイクロスイッチ23およびリードスイッチ22により検出される。このとき、各スイッチ23、22の出力状態は、
図16中の「フック無し」の欄に示すとおり、マイクロスイッチ23は「ON」で、リードスイッチ22は「OFF」になっており、各スイッチ23、22の出力動作設定は異なっている。
【0066】
このように、フック無しの状態がマイクロスイッチ23およびリードスイッチ22により検出されたとき、各スイッチ23、22の出力は互いに異なっており、マイクロスイッチ23が「ON」で、リードスイッチ22が「OFF」の場合に限り、各スイッチ23、22がフック無しの状態を検出したことになる。これにより、ホルダ2にフック無しの状態が確実に検出できるようになる。しかも、この場合には、専用品の特殊なフックを用意することなく、汎用品のフックを使用することができる(この例では、後付けでマグネット141mを装着するだけである)ので、安価に構成できる。
【0067】
以上のようにして、ホルダ2におけるフック141Hの有無の検出を安価な構成で確実に行えるようになる。
【0068】
なお、
図16中の右欄に示すように、マイクロスイッチ23およびリードスイッチ22の出力状態がいずれも「OFF」または「ON」になっていて、各スイッチ23、22の出力動作が同じ場合には、接点の溶着や短絡、断線、スイッチの故障等に起因した異常が発生していることを検出できる。
【0069】
図4に戻って説明すると、墜落制止用器具HSは、一方の肩ベルト10
1(または10
2)にコントローラ17を有している。コントローラ17の詳細について、
図14を用いて説明する。
【0070】
図14は、コントローラ17の概略ブロック構成を示している。同図に示すように、コントローラ17は、制御部17Aを有している。制御部17Aには、作業者に異常を知らせるための警報を発する警報部17Bと、作業者の位置情報を発信するための発信機17Cと、外部のコンピュータCP(
図3)との間で通信を行うための通信ユニット17Dと、RFID(Radio Frequency Identifier)タグ(以下、単に「IDタグ」という)リーダ(安全管理情報取得部)17Eとが接続されている。IDタグリーダ17Eには、作業者の安全管理情報が格納されたIDタグ17Fが接続可能になっている。ここで、作業者の安全管理情報とは、たとえば、その作業者の現場での作業の習熟度に関する情報である。この安全管理情報に基づいて作業者の安全管理レベルが決定されるようになっている。たとえば、作業者の習熟度が低ければ安全管理レベルは低く設定され、作業者の習熟度が高ければ安全管理レベルは高く設定される。
【0071】
コントローラ17には、上述した第1のホルダ2側の第1の検出部を構成するマイクロスイッチ23およびリードスイッチ22が接続されるとともに、第2のホルダ3側の第2の検出部を構成するマイクロスイッチ23’およびリードスイッチ22’が接続されている。なお、第1、第2の検出部の各出力は、コントローラ17に対してケーブルやコネクタ等の有線で入力されてもよいし、無線により入力されるようにしてもよい。
【0072】
発信機17Cは、作業者のリアルタイムの位置データの信号を連続的または間欠的(たとえば100ms毎)に送信するための機器であって、たとえば、近距離無線通信規格の一つであるブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)を利用して電波を発するビーコンが用いられる。なお、無線LANによる通信や赤外線による通信によって電波を発する他の機器を用いるようにしてもよい。発信機17Cから発せられた電波は、通信機CDによって受信されるようになっている。通信機CDとしては、発信機17Cにビーコンが用いられる場合には、同様に、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)に対応した受信機器が用いられる。また、第1、第2の検出部による検出データは、通信ユニット17Dを介して通信機CDにたとえば無線で送信されるようになっている。
【0073】
一般に、電波が距離の二乗に反比例して減衰するという性質を利用することで、発信機(ビーコン)17Cからの電波を少なくとも3個の通信機CDで受信して三点測位を用いることにより、発信機17Cしたがって作業者の平面上の位置を検出することができる。また、作業者の高さ位置については、たとえば、コントローラ17の内部(または墜落制止用器具HSの一部)に圧力センサを設け、圧力センサから得られた高さ情報を利用することが考えられる。あるいは、コントローラ17の内部(または墜落制止用器具HSの一部)にソナーを設け、ソナーから得られた、地面までの距離情報つまり高さ情報を利用することが考えられる。これら圧力センサやソナーから得られたデータは、通信ユニット17Dを経由して通信機CDに送信される。
【0074】
次に、
図15は、作業者監視システム1の機能ブロック図である。同図に示すように、作業者監視システム1は、第1のフック有無検出部101と、第2のフック有無検出部102と、作業者位置検出部103と、危険度判定部104と、警報部105と、送信部106と、受信部107と、警報変更部108とを備えている。
【0075】
第1のフック有無検出部101は、上述したように、第1のホルダ2側において第1のフック141Hの有無を検出するマイクロスイッチ23およびリードスイッチ22から構成されており、第2のフック有無検出部102は、第2のホルダ3側において第2のフック142Hの有無を検出するマイクロスイッチ23’およびリードスイッチ22’から構成されている。
【0076】
作業者位置検出部103は、上述したように、作業者の平面上の位置情報を提供する発信機(ビーコン)17Cと、作業者の高さ位置情報を提供する圧力センサ等とを含んで構成される。危険度判定部104は、作業者がいる高さ(H-h)(
図2)が地面から所定高さ以上(たとえば(H-h)≧2m)の場合、あるいは、作業者が危険領域またはその近傍位置にいる場合に、作業者の危険度を判定する手段である。
【0077】
警報部105は、コントローラ17に設けられた警報部17Bによって構成されており、スピーカから所定の警告音が発せられたり、所定の警告メッセージが流れたりするようになっている。送信部106は、コントローラ17に設けられた発信機17Cおよび通信ユニット17Dによって構成されている。受信部107は、送信部106から送信された送信データを受信するサーバSV(
図3)から構成されている。警報変更部108は、警報部105による警報を変更する手段であって、作業者の安全管理レベルに応じて、警報の頻度や音量を変更したり、警報内容を変更したりする制御を行う。
【0078】
より具体的には、作業者の安全管理レベルをたとえば3~5段階に設定したとき、作業者の安全管理レベルが3~5段階中の「1」であれば、警報の頻度を高くしかつ音量を大きくし、安全管理レベルが3段階中の「2」や5段階中の「3」であれば、警報の頻度および音量を中程度とし、安全管理レベルが3段階中の「3」や5段階中の「5」であれば、警報の頻度を低くしかつ音量を小さめにする。また、安全管理レベルに応じて、警告メッセージの内容を変えるようにしてもよい。さらに、安全管理レベルが3段階中の「3」や5段階中の「5」の場合には、警報部105による警報を有効→無効とする2値化制御を行うようにしてもよい。ここで、警報の「有効」とは、警報部17Bが警報を発報可能な状態を指し、警報の「無効」とは、警報部17Bが警報を発報不可の状態を指している。このような警報の有効→無効の切替えは、所定レベル以上の安全管理能力を有する作業者(たとえば監督者等)が手動で操作できるようになっている。
【0079】
図18は、作業者監視システム1を構成する各機器のタイムチャートの一例を示している。同図中、「第1のフック無し(安全)」とは、墜落制止用器具HSの第1のホルダ2に第1のフック14
1Hが掛止されていない状態を指し、このとき、第1のフック14
1Hは作業現場のいずれかの手摺に掛止されていると想定して、「安全」としている。これに対して、「第1のフック有り(危険)」とは、墜落制止用器具HSの第1のホルダ2に第1のフック14
1Hが掛止されている状態を指し、このとき、第1のフック14
1Hは作業現場のいずれの手摺にも掛止されていないので、「危険」としている。以上の点は、「第2のフック無し(安全)」および「第2のフック有り(危険)」についても同様である。
【0080】
図18中、「位置」とは、作業者の位置を指し、高さ位置および平面上の位置の双方を含んでいる。(危険)とは、高さ位置が所定高さ以上(たとえば(H-h)≧2m)の場合、または、平面上の位置が危険領域(たとえばHZ)にある場合のいずれかまたは双方がこれに該当する。これに対して、(安全)とは、高さ位置が所定高さ未満(たとえば(H-h)<2m)であって、かつ、平面上の位置が危険領域(たとえばHZ)にない場合がこれに該当する。警報(発報)とは、作業者Pに対して安全対策を促すために、警報部17B(
図14)から警告音(たとえばブザー音やビープ音等)が発せられたり、警告メッセージ(たとえば「フックをレールに掛けてください」等)が流れたりする状態を指し、警報(停止)とは、警報部17Bからの警告音や警告メッセージが停止している状態を指す。
【0081】
なお、
図18中、横軸は時間Tを表しており、各タイムチャートの立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングをそれぞれ点線T
1~T
11で示している。
【0082】
次に、作業者監視システム1の動作について、
図18を参照しつつ、
図19のフローチャートを用いて説明する。
【0083】
図19のフローチャートにおいては、プログラムがスタートすると、同図のステップS1において、フック情報および位置情報の取込みを開始する。これにより、フック情報および位置情報のリアルタイム情報が取り込まれる。なお、このとき、IDタグ17F(
図14)がIDタグリーダ17Eに接続されている場合には、IDタグ17Fに格納された作業者の安全管理情報(すなわち、作業者の現場での作業の習熟度に関する情報)をIDタグリーダ17Eにより読み込む。
【0084】
ステップS1で取り込まれるフック情報としては、墜落制止用器具HSにおいて第1のホルダ2におけるマイクロスイッチ23およびリードスイッチ22の検出出力、ならびに、第2のホルダ3におけるマイクロスイッチ23’およびリードスイッチ22’(
図14)の検出出力をそれぞれ取り込む。作業開始時には、作業者Pは、第1のフック14
1Hを第1のホルダ2に吊り下げ、第2のフック14
2Hを第2のホルダ3に吊り下げた状態なので(
図4参照)、第1、第2のホルダ2、3において、各マイクロスイッチ23、23’はOFFとなっており、各リードスイッチ22、22’はONとなっている(
図16中の「フック有り」の欄参照)。このとき、
図18中、「第1のフック」および「第2のフック」のタイムチャートは、T
0~T
1(つまりT
0≦T<T
1)に示すように、「第1のフック有り(危険)」および「第2のフック有り(危険)」の状態(すなわちa
0、b
0)である。
【0085】
また、ステップS1で取り込まれる位置情報には、作業者Pの平面上の位置情報および高さ位置情報がある。平面上の位置情報としては、墜落制止用器具HSのコントローラ17内の発信機(ビーコン)17Dから発信された電波を作業現場内の複数(少なくとも3個)の通信機CDで受信し、受信データをゲートウェイGWおよびサーバSVを経由してコンピュータCPに送信して、三点測位により演算処理を行うことにより、作業者Pの平面上の位置を検出してこれを取り込む。高さ位置情報としては、コントローラ17内の圧力センサ等からの検出データをコントローラ17内の通信ユニット17Eから通信機CDに送信し、同様に、ゲートウェイGWおよびサーバSVを経由してコンピュータCPに送信して演算処理を行うことにより、作業者Pの高さ位置を検出してこれを取り込む。
【0086】
作業開始時には、作業者Pは、高所に移動しておらず、危険領域にもいないので、
図18中、「位置」のタイムチャートは、T
0~T
1(つまりT
0≦T<T
1)に示すように、「位置(安全)」の状態(すなわちc
0)である。また、このとき、警報部17B(
図14)は停止しているので、
図18中、「警報」のタイムチャートは、T
0~T
1(つまりT
0≦T<T
1)に示すように、「警報(停止)」の状態(すなわちd
0)である。
【0087】
次に、ステップS2では、ステップS1で取り込まれたリアルタイムの位置情報に基づいて、作業者Pの位置が危険か否か判断する。この場合には、作業者Pが危険領域HZ(
図3)またはその近傍にいるか、または作業者Pの高さ位置(H-h)(
図2)が2m以上(つまり(H-h)≧2m)であるかどうか判断する。なお、危険領域HZの位置は、上述したように、ICタグ等によって予め検出されており、高さ位置(H-h)は、地面GLからコントローラ17までの高さ(正確には圧力センサ等までの高さ)Hと、作用者が立っている踏板からコントローラ17までの高さhとから算出される。
【0088】
作業者Pが危険領域HZまたはその近傍にいるか、または作業者Pが2m以上の高さ位置にいる場合、具体的には、
図1、
図2に示すように、建物BLの外にいる作業者P
1が足場の階段ST
1を使って2階に移動していく途中で、作業者P
1の高さ位置(H-h)が2mに達した場合や、2階に移動した作業者P
2が2階の危険領域HZの近傍に移動した場合などがこれに該当する。すると、ステップS2での判断が「yes」となって、ステップS3に移行する。このとき、
図18中、「位置」のタイムチャートは、T
1の立ち上がり部から始まるT≧T
1に示すように、「位置(危険)」の状態(すなわちc
1)である。
【0089】
ステップS3では、ステップS1で取り込まれたリアルタイムのフック情報に基づいて、第1のホルダ2に第1のフック14
1Hが吊り下げられた第1のフック有りの状態で、かつ、第2のホルダ3に第2のフック14
2Hが吊り下げられた第2のフック有りの状態(すなわち、第1のフック14
1Hおよび第2のフック14
2Hのいずれもが足場のレールに掛止されていない状態)か否か判断する。第1のフック有りかつ第2のフック有りの状態であれば、ステップS4に移行する。このとき、
図18中、「第1のフック」および「第2のフック」のタイムチャートは、T
1(つまりT=T
1)に示すように、「第1のフック有り」の状態(すなわちa
0)および「第2のフック有り」の状態(すなわちb
0)である。
【0090】
ステップS4では、作業者Pの危険度を判定する。危険度の判定は、第1、第2のホルダ2、3におけるフック有無検出結果、および、作業者の平面上および高さ方向の位置検出結果に基づいて行われる。この例では、第1および第2のフック有りの状態で、危険度の判定がなされる。また、平面上の位置に関しては、作業者Pが危険領域HZの近傍(たとえば危険領域HZの外側50cm以内)にいる場合には、危険度が「中」レベルと判断され、作業者Pが危険領域HZ内にいる場合には、危険度が「高」レベルと判断される。高さ位置(H-h)に関しては、たとえば、高さ位置(H-h)が5m未満(つまり2m≦(H-h)<5m)の場合には(
図1、
図2中の作業者P
2参照)、危険度が「中」レベルと判断され、高さ位置(H-h)が5m以上(つまり(H-h)≧5m)の場合には(
図1、
図2中の作業者P
3参照)、危険度が「高」レベルと判断される。なお、危険度のレベル分けは、より細かく(たとえば5段階や10段階等に)設定するようにしてもよい。こうすることによって、よりきめ細やかな制御ができるようになる。
【0091】
また、危険度の判定の際に、作業者の安全管理レベルを加味するようにしてもよい。安全管理レベルは、ステップS1で読み込まれた作業者の安全管理情報に基づいて決定される。作業者の安全管理レベルが高い(すなわち、現場での習熟度が高い)場合には、危険度のレベルを1ランク下げるようにしてもよい。これとは逆に、作業者の安全管理レベルが低い(すなわち、現場での習熟度が低い)場合には、危険度のレベルを1ランク上げるようにしてもよい。
【0092】
次に、ステップS5では、ステップS4で判定された危険度に応じて警報を発報する。この場合には、警報部17B(
図14)から警告音を発しまたは警告メッセージを流すが、このとき、警告音については、たとえば、危険度が「中」レベルであれば中程度の音量にするとともに、危険度が「高」レベルであれば大音量にし、また警告メッセージについては、たとえば、危険度が「中」レベルであれば、通常の警告メッセージ(たとえば「フックをレールに掛けてください」等)を流すとともに、危険度が「高」レベルであれば、より緊急性の高い警告メッセージ(たとえば「危険です!フックをレールに掛けてください」等)を流すことにより、作業者Pに対して安全対策を促す。このとき、
図18中、「警報」のタイムチャートは、T
2の立ち上がり部から始まるT≧T
2に示すように、「警報(発報)」の状態(すなわちd
1)である。
【0093】
なお、この場合、「警報(発報)」の開始タイミングがT1ではなくT2となっているのは、警報発報の指令が出されてから実際に警報が発報されるまでの間に所定のタイムラグ(遅延時間)TL(=T2-T1)生じるからである。
【0094】
ステップS5での処理後、プログラムはステップS2に戻る。ステップS2では、上述したように、ステップS1で取り込まれたリアルタイムの位置情報に基づいて、作業者Pの位置が危険か否か、すなわち、作業者Pが危険領域HZまたはその近傍にいるか否か、あるいは作業者Pの高さ位置(H-h)が(H-h)≧2mであるか否か判断する。
【0095】
作業者Pが依然として危険位置にいて、第1および第2のフック有りの状態を継続している場合には、ステップS2およびS3での判断がいずれも「yes」となり、ステップS4での危険度判定を経てステップS5で警報を発報する。このとき、
図18中、T
2<T<T
3に示すように、「第1のフック有り」の状態(a
0)、「第2のフック有り」の状態(b
0)、「位置(危険)」の状態(c
1)で、「警報(発報)」の状態(d
1)である。
【0096】
ステップS5での処理後、プログラムは再びステップS2に戻る。作業者Pが依然として危険位置に位置していて、作業者Pが第1のフック14
1Hを足場のレールに掛止したとすると(
図1中の作業者P
2参照)、第1のホルダ2がフック無しの状態となるので、ステップS3での判断が「No」となってステップS6に移行する。このとき、
図18中、「第1のフック」のタイムチャートは、T
3の立ち上がり部であるT=T
3に示すように、「無し(安全)」の状態(すなわちa
1)である。一方、第2のフックは依然としてフック有りの状態なので、「第2のフック」のタイムチャートは、T=T
3に示すように、「有り(危険」の状態(すなわちb
0)である。
【0097】
ステップS6では、警報発報中で否か判断する。この例では、
図18中、T
2<T<T
3において警報が発報中であったので、ステップS6での判断が「Yes」となって、ステップS7に移行し、警報を停止させる。このとき、
図18中、「警報」のタイムチャートは、T=T
3の立ち下がり部に示すように、「警報(停止)」の状態(すなわちd
0)である。
【0098】
ステップS7での処理後、ステップS8に移行し、ステップS8において処理を終了せずに継続すると判断された場合には、ステップS2に戻る。一方、ステップS8で処理を終了すると判断された場合には、プログラムうは終了する。
【0099】
また、ステップS3での判断が「No」となって、ステップS6の移行するケースとしては、上述した(a1かつb0)の状態の他に、(a0かつb1)または(a1かつb1)の状態がある。すなわち、これらを総括すると、作業者Pが第1、第2のフック141H、142Hのいずれかまたは双方を足場のレールに掛止した場合である。また、その場合において、警報が停止している状態でステップS6に移行した場合には、ステップS6での判断は「No」となって、ステップS8に移行することになる。
【0100】
図18のタイムチャートにおいては、T=T
4のタイミングで「第2のフック」が「無し(安全)」の状態(すなわちb
1)に移行し、その後、T=T
5のタイミングで「第1のフック」が「有り(危険)」の状態(すなわちa
0)に移行している。T
4≦T≦T
5の区間OP’においてこのような状態が生じるのは、たとえば、作業者Pが足場の支柱TP(
図1)の一方の側から他方の側に移動する際に、第1のフック14
1Hを一方の側のレールR
2(またはR
3)に掛けた状態で、第2のフック14
2Hを支柱TPを挟んで他方の側のレールR
2(またはR
3)に掛け、その後、第1のフック14
1HをレールR
2(またはR
3)から取り外して足場を移動するような場合がこれに該当する。このように、第1、第2のフック14
1H、14
2Hの掛け替え時には、双方のフックが同時にレールから外れないようにすることが、安全対策上の大原則とされている。
【0101】
次に、T=T6のタイミングで「第2のフック」が「有り(危険)」の状態(すなわちb0)に移行し、その結果、「第1のフック有り(危険)」および「第2のフック有り(危険)」の状態(すなわちa0、b0)に移行すると、タイムラグTLを経た後、T=T7のタイミングで「警報」が発報されて、「警報」のタイムチャートが「警報(発報)」の状態(すなわちd1)となる。その後、T=T8のタイミングで「第1のフック」が「無し(安全)」の状態(すなわちa1)に移行すると、警報が停止して、「警報」のタイムチャートが「警報(停止)」の状態(すなわちd0)となる。
【0102】
T6≦T≦T8の区間OPは、作業者Pが高所作業中に第1、第2のフック141H、142Hの双方を第1、第2のホルダ2、3に吊り下げた状態にしていて、いずれのフックもレールに掛止していない状態を示しており、危険な状態であるが、警報を発報することにより、作業者Pの注意を喚起して速い段階で安全が担保されるようにしている。
【0103】
次に、T=T9のタイミングで「第1のフック」が「有り(危険)」の状態(すなわちa0)に移行し、その結果、「第1のフック有り(危険)」および「第2のフック有り(危険)」の状態(すなわちa0、b0)に移行すると、タイムラグTLを経た後、T=T10のタイミングで「警報」が発報されて、「警報」のタイムチャートが「警報(発報)」の状態(すなわちd1)となる。
【0104】
次に、T=T
11のタイミングで「位置」が(安全)の状態(すなわちc
0)に移行すると、「警報」が停止されて、「警報」のタイムチャートが「警報(停止)」の状態(すなわちd
0)となる。このとき、
図19のフローチャートにおいては、ステップS2での判断が「No」となってステップS6に移行しており、ステップS6では、警報発報中ゆえ、その判断が「Yes」となって、ステップS7に移行し、警報を停止させる。
【0105】
なお、所定レベル以上の安全管理能力を有する作業者(たとえば監督者等)の場合には、警報の発報時に警報の有効→無効の切替えを手動で操作することにより、発報中の警報を手動で停止できるようにしてもよい。これにより、警報部17Bからは、作業者Pの安全対策を促すような警告音や警告メッセージが流れなくなるが、このとき、「無効にされています」という確認用メッセージが流れるようにしてもよい。
【0106】
また、作業者の警報部17Bから警報が発せられた際には、通信ユニット17Dを介して、監督者が所持しているスマートフォンなどの端末にその通知がなされるようにしてもよい。
【0107】
このように本実施例によれば、上述したように、墜落制止用器具に専用のフックを用意する必要がなく、汎用品のフックを用いた既存の墜落制止用器具に本システムを適用することが可能になるので、作業者の安全を確保できる作業者監視システムを安価に構成できる。しかも、本実施例においては、第1、第2のホルダ2、3でそれぞれフック有無検出を行うだけでなく、作業者の位置を検出するようにしたので、高所作業時の安全性をさらに向上できるようになる。
【0108】
〔第1の変形例〕
前記実施例では、マイクロスイッチ23、23’およびリードスイッチ22、22’の出力動作設定が
図16に示すように設定された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
図17は、マイクロスイッチ23、23’およびリードスイッチ22、22’の出力動作設定の他の例を示している。
【0109】
図17に示すように、マイクロスイッチ23、23’およびリードスイッチ22,22’の正常時におけるそれぞれの出力動作設定は、
図16に示した例と逆になっている。すなわち、フック有りのとき、マイクロスイッチ23、23’が「ON」でリードスイッチ22、22’が「OFF」(
図16では、マイクロスイッチ23、23’が「OFF」でリードスイッチ22、22’が「ON」)になっており、フック無しのとき、マイクロスイッチ23、23’が「OFF」でリードスイッチ22、22’が「ON」(
図16では、マイクロスイッチ23、23’が「ON」でリードスイッチ22、22’が「OFF」)になっている。この場合においても、マイクロスイッチ23、23’およびリードスイッチ22、22’は互いに異なる出力動作設定がなされているといえる。なお、異常時のときの出力動作設定は、
図16と同様である。
【0110】
図17に示すような出力動作設定を行うには、たとえば、
図10において、センサ収容凹部21mの底部21fと、ベース本体20Aの側壁部20w
2とにより画成された内部空間Sにマイクロスイッチ23を配置することが考えられる。なお、この場合、内部空間Sの上下方向の間隔を広げることで、フック吊下げ後においてもマイクロスイッチ23の占有スペースが確保される。また、リードスイッチ22については、
図10、
図13に示したNO型のもの(つまり、フック14
1Hのマグネット14
1m、14
2mが接近したときにだけ接点が閉じてON状態となる)ではなく、NC型のもの(つまり、フック14
1Hのマグネット14
1m、14
2mが接近したときにだけ接点が開いてOFF状態となる)を採用することが考えられる。
【0111】
〔第2の変形例〕
前記実施例では、第1の検出部がマイクロスイッチ23およびリードスイッチ22から構成され、第2の検出部がマイクロスイッチ23’およびリードスイッチ22’から構成された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。第1、第2の検出部としては、種々のセンサを採用し得る。たとえばテープスイッチや透過型光電スイッチ、感圧センサ、ひずみゲージ等を用いるようにしてもよい。
【0112】
ここで、テープスイッチは、一般に、長手方向に沿って多数のスイッチ群が設けられた薄肉のテープ状のスイッチであって、長手方向のどの位置を押してもスイッチとして機能するように構成されている。リードスイッチ22、22’の代わりに、テープスイッチを採用した場合には、スライダ21の底部にフック141Hが吊り下げられたとき、フック141Hおよびランヤード141のストラップ141Sの自重による荷重がテープスイッチに作用して、テープスイッチがONする。この場合においても、汎用品のフック141Hをそのまま使用することができ、作業者監視システムを安価に構成できる。
【0113】
透過型光電スイッチは、一般に、投光部および受光部から構成されており、スライダ21の底部にフック141Hが吊り下げられたとき、投光部から出射された光がフック141Hにより遮られて受光部で受光されなくなることにより、フック有りの状態が検出される。この場合においても、汎用品のフック141Hをそのまま使用することができ、作業者監視システムを安価に構成できる。
【0114】
〔第3の変形例〕
前記実施例では、発信機(ビーコン)17Dから作業者の平面上の位置情報を取得し、圧力センサ等から作業者の高さ位置情報を取得するようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
【0115】
リアルタイムキネマティック(RTK: Real Time Kinematic)を採用するようにしてもよい。単なるGPSでは、数メートル単位の誤差を生じ得るが、RTKでは、水平方向および垂直方向に1センチメートル単位の正確な測位が可能である。
【0116】
〔第4の変形例〕
前記実施例では、コントローラ17に発信機(ビーコン)17Dや通信ユニット17Eを搭載した例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。たとえば、作業者が携帯するスマートフォン(またはタブレット)に必要に応じてアプリをインストールするとともに、スマートフォンのブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)機能をオンにすることにより、コントローラ17の代わりにスマートフォンを用いることも可能である。
【0117】
〔第5の変形例〕
前記実施例では、警報部として、コントローラ17内に警報部17Bを設け、警報部17Bが警報を発したり、警告メッセージを流したりする例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。作業現場内にパトライト(登録商標)や電光掲示板等を設け、警報時には、これらを点灯/点滅させるようにしてもよい。
【0118】
〔その他の変形例〕
上述した実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、墜落制止用器具を用いて作業を行う作業者を監視するための作業者監視システムおよび作業者監視方法に有用である。
【符号の説明】
【0120】
1: 作業者監視システム
HS: 墜落制止用器具
2: 第1のホルダ
3: 第2のホルダ
141H: 第1のフック
142H: 第2のフック
22、22’: リードスイッチ
17E: IDタグリーダ(安全管理情報取得部)
23、23’: マイクロスイッチ
22、23: 第1の検出部
22’、23’: 第2の検出部
101: 第1のフック有無検出部(第1の検出部)
102: 第2のフック有無検出部(第2の検出部)
103: 作業者位置検出部(位置検出部)
104: 危険度判定部(判定手段)
105: 警報部
106: 送信部
107: 受信部
108: 警報変更部(警報変更手段)
P、P1~P3: 作業者
【先行技術文献】
【特許文献】
【0121】
【特許文献1】特開2020-402号公報(段落[0012]、[0014]、[0016]~[0019]、[0023]~[0025]、[0027]~[0028]、[0032]~[0033]、
図1~
図4、
図6参照)
【特許文献2】特許第5822796号公報(段落[0026]および
図5参照)