(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026675
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】フィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B01D 25/12 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
B01D25/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130249
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】三田 高裕
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA11
4D116CC02
4D116CC07
4D116CC14
4D116CC21
4D116CC41
4D116FF13B
4D116KK04
4D116KK05
4D116QA02B
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4D116QA02F
4D116QA03B
4D116QA03E
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4D116QA55C
4D116QA55D
4D116QA55E
4D116QA55F
4D116QB41
4D116SS01
4D116SS04
4D116SS06
4D116VV07
4D116VV09
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】 閉板したろ板列の一方から洗浄水を供給し、各ろ過室を連通する連通路を介して直列的に全ろ過室の脱水ケーキを洗浄するフィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法を提供する。
【解決手段】 隣接するろ過室を連通させて直列的に洗浄水路を形成し、原液の供給路およびろ液の排出路に設けた弁を閉め、洗浄水の供給路および排出路に設けた弁を開けた後、洗浄水路の一方から洗浄水を供給し、各ろ過室の脱水ケーキ中の不純物を次段のろ過室に順次押し出し、洗浄水路の他方から洗浄水と不純物を排出するもので、全供給量を無駄なく脱水ケーキの洗浄に使用でき、洗浄水量の低減が可能となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のろ板(2…)を並列してろ板(2,2)間にろ過室(3)を形成し、ろ過室(3)でろ過工程を行った後に洗浄水を供給して脱水ケーキ洗浄工程を行うフィルタープレス(1)において、
隣接するろ過室(3,3)を連通させて直列的に洗浄水路(WL)を形成し、
原液の供給路およびろ液の排出路に設けた弁(V1,V2)を閉め、
洗浄水の供給路および排出路に設けた弁(V2r,V3,V4)を開けた後、
洗浄水路(WL)の一方から洗浄水を供給し、
洗浄水路(WL)の他方から洗浄水を排出する
ことを特徴とするフィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄水路(WL)の供給路は、最前段のろ過室(3)の前端に連結するろ液管(7)である
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄水路(WL)の供給路は、最前段のろ過室(3)とろ板列の前端を連通する連通路(17)である
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄水路(WL)の排出路は、最後段のろ過室(3)の後端側に連結するろ液管(7)である
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄水路(WL)の排出路は、最後段のろ過室(3)とろ板列の後端を連通する連通路(17)である
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水ケーキの洗浄に関し、各ろ過室を連通する連通路を介して洗浄水を供給し、ろ過室に形成された脱水ケーキ中の不純物を除去するフィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学プラント等で用いられるフィルタープレスのろ過室で形成された脱水ケーキには塩素等の不純物が含まれており、それらの不純物を除去するため、ろ過室に洗浄液を供給して脱水ケーキを洗浄していた。
【0003】
特許文献1には、ろ過室を形成する一方のろ板から洗浄水を供給し、他方のろ板からろ過室の洗浄水を排出する脱水ケーキの洗浄方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、各ろ過室がろ板の中央で連通するセンターフィード式のフィルタープレスにおいて、原液を供給する給泥路から各ろ過室に並列にケーキ洗浄を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-082028号公報
【特許文献2】特開2003-164711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、各ろ過室のろ液の排出路に洗浄水管を接続して洗浄水を供給する方法、および特許文献2のように、給泥路を介して各ろ過室に洗浄水を供給する方法は、それぞれのろ過室に十分な洗浄水を供給でき、脱水ケーキ中の不純物を押し出すことが可能である。
【0007】
しかし、各ろ過室の脱水ケーキは微妙に固形物の圧密状態や空隙率が異なる。洗浄水を各ろ過室に並列に供給すると、不純物を押し出しながら脱水ケーキ中に水の通り道を形成する。通り道の空隙が広い、あるいは多くの通り道が形成されたろ過室の圧力抵抗が低いため、他のろ過室より前記ろ過室へ多量の洗浄水が流入する。その結果、各ろ過室で除去される脱水ケーキの不純物量にムラが発生し、脱水ケーキの後処理に多大な手間と費用が必要となる。
【0008】
本発明は、脱水ケーキ洗浄方法において、閉板したろ板列の一方から洗浄水を供給し、各ろ過室を連通する連通路を介して直列的に全ろ過室の脱水ケーキを洗浄するフィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のろ板を並列してろ板間にろ過室を形成し、ろ過室でろ過工程を行った後に洗浄水を供給して脱水ケーキ洗浄工程を行うフィルタープレスにおいて、隣接するろ過室を連通させて直列的に洗浄水路を形成し、原液の供給路およびろ液の排出路に設けた弁を閉め、洗浄水の供給路および排出路に設けた弁を開けた後、洗浄水路の一方から洗浄水を供給し、洗浄水路の他方から洗浄水を排出するもので、脱水ケーキの圧密度のバラつきによるろ過室への供給量の増減がなく、全供給量を無駄なく脱水ケーキの洗浄に使用でき、洗浄水量の低減が可能となる。
【0010】
洗浄水路の供給路は、最前段のろ過室の前端に連結するろ液管、あるいは最前段のろ過室とろ板列の前端を連通する連通路とすると、洗浄水の給液口が1か所となり、各ろ板に接続する給液管が不要で、部品点数が削減できる。
【0011】
洗浄水路の排出路は、最後段のろ過室の後端側に連結するろ液管、あるいは最後段のろ過室とろ板列の後端を連通する連通路とすると、洗浄水の排液口が1か所となり、各ろ板に接続する排液管が不要で、部品点数が削減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るフィルタープレスにおける脱水ケーキ洗浄方法は、洗浄水が各ろ過室を直列的に連通するように構成しているため脱水ケーキの圧密度のバラつきによるろ過室への洗浄水の増減がなく、全水量を無駄なく全ろ過室への洗浄作用に使用でき、均一な脱水ケーキの生成が可能となり、後処理工程での脱水ケーキの取り扱いが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】同じく、脱水ケーキ洗浄工程時のろ過室の断面図である。
【
図4】同じく、他の実施例2の脱水ケーキ洗浄工程時のろ過室の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る全体フロー図である。
フィルタープレス1の脱水機構のみを抜粋したものであって、前後に移動自在に構成したろ板2を閉板してろ過室3を形成し、水分を含んだ原液を供給して固液分離を行う。
【0015】
ろ板2を閉板して形成したろ板列の前端(図左)に原液供給管4を連結し、原液貯留槽5に貯留した原液を原液供給ポンプ6によりろ過室3に供給する。原液は原液供給ポンプ6による圧入供給、あるいは機械的な圧搾等により固液分離される。分離液(ろ液)は、各ろ板に接続するろ液管7を介してろ液排出管8から外部に排出する。
【0016】
最端のろ液管7には洗浄水管9を連結しており、洗浄水槽16から洗浄水供給ポンプ10を介してろ過室3内に洗浄水を供給する。ろ過室で固液分離された脱水ケーキの内部に流入して脱水ケーキ中の不純物を押し出す。
【0017】
脱水ケーキを貫通した洗浄水は、脱水ケーキ中の不純物を伴ってろ液管7に流入し、ろ液とともにろ液排出管8から外部に排出される。
【0018】
脱水および洗浄が完了して不純物が除去された脱水ケーキは、ろ板列を開板して外部に排出される。なお、脱水ケーキの洗浄工程の後、圧搾工程を行ってもよい。
【0019】
図2はろ過室の断面図である。
ろ板2には凹面状のろ過床11が形成され、このろ過床11にろ布12を張設し、隣接するろ板2,2間にろ過室3を形成している。ろ板2の上部にはろ板2を連通する原液供給路13が設けてあり、原液供給路13から供給孔14を介して各ろ過室3に原液を供給する。原液供給路13はろ板列の前端で原液供給管4と連通している。
【0020】
原液供給管4から原液をろ過室3に圧入してろ布12で固液分離を行う。
分離したろ液は、ろ板2のろ過床11に排出し、ろ過床11の下方に設けたろ液の排出孔15から抜き出して、ろ液管7に排出するようにしている。排出孔15はろ過室3に対向する前後のろ過床11,11にそれぞれ設けてあり、排出孔15にろ液管7を連通させている。ろ液管7…の他端をろ液排出管8に接続してあり、ろ液排出管8を介してろ液を外部に排出する。
【0021】
ろ板2には隣接するろ過室3,3間を連通する連通路17を形成している。連通路17はろ板2の内部を貫通し、ろ過床11に設けた開口から隣接するろ過床11に設けた開口までを最短の距離で連通している。
【0022】
最前段のろ過室3の前端側のろ液管7に介装する弁V2のろ板側に洗浄水管9を接続しており、排出孔15から洗浄水をろ過室3に供給すると、連通路17を介して直列的に各ろ過室3…に洗浄水が供給される。最後段のろ過室3に流入した洗浄水は、ろ過床11に形成した排出孔15から排出される。
【0023】
なお、本実施例では、ろ過床11の上方に連通路17を直線状に形成しているが、ろ過床11の中央あるいは下方に形成してもよい。また、
図4に示すようにろ過室3の上下に互い違いに連通させてもよい。
【0024】
図2に示す各弁の開閉状態は脱水工程時の様子を表している。
フィルタープレス1の運転としては、脱水工程(例えば原液圧入時)の後、脱水ケーキ洗浄工程を開始する。なお、機械的な圧搾工程は必要に応じて脱水ケーキ洗浄工程の前後に適宜実施する。
【0025】
脱水工程は、原液の供給路およびろ液の排出路に介装する弁V1,V2は全て開であり、洗浄水の供給路に介装する弁V3は閉としている。
【0026】
本実施例では、原液供給管4に弁V1、それぞれのろ液管7に弁V2、最後端のろ液管7に弁V2r、洗浄水管9に弁V3を設けている。なお、圧搾工程時の弁の開閉は原液圧入時とほぼ同様であるが、原液の供給路に介装する弁V1を閉とする。
【0027】
ろ過室3で固液分離された原液は、ろ過床11の排出孔15に流入し、ろ液管7およびろ液排出路8を介して外部に排出される。
【0028】
図3は脱水ケーキ洗浄工程時のろ過室の断面図である。
原液の脱水工程が終了すると、脱水ケーキ洗浄工程を開始する。
本実施例の脱水ケーキ洗浄工程は、ろ板列内の各ろ過室3…を連通路17で連通させて直列的に洗浄水路WLを形成し、洗浄水路WLの一方から洗浄水を供給して各ろ過室3…の脱水ケーキの不純物を次段のろ過室に押し出し、洗浄水路WLの他方から洗浄水とともに不純物を排出するものである。
【0029】
脱水ケーキ洗浄工程は、原液の供給路に介装する弁V1を閉、洗浄水の供給路に介装する弁V3を開、ろ液の排出路に介装する弁V2は閉とするが、最後段のろ過室3の後端側に設けているろ液管7に介装する弁V2rは開とする。つまり、最前段のろ過室3の前端側および最後段のろ過室3の後端側に設けているろ液管7,7をそれぞれ洗浄水の供給管および排出管として、洗浄水が直列的に各ろ過室3…を通過するように洗浄水路WLを形成する。
【0030】
洗浄水供給ポンプ10を稼働し、洗浄水管9を介して直列的に形成する洗浄水路WLの上流側から洗浄水をろ過室3に供給する。洗浄水はろ板列の前端に設けたろ液管7および排出孔15から最前段のろ過室3に流入する。
【0031】
ろ過室3に流入した洗浄水は、ろ過室3内の脱水ケーキの抵抗により、流入側のろ過床11の凹面部に沿って回り込む。さらに洗浄水の供給で圧力が増加すると、ろ布12および脱水ケーキの空隙に流入する。
【0032】
脱水ケーキに流入した洗浄水は、脱水ケーキの粒子間に滞留する不純物をろ過室3の後端側のろ過床11に押し出す。
【0033】
その後、洗浄水はろ過室3の後端側のろ過床11に沿って広がりつつ、ろ過室3,3間を繋ぐ連通路17を経て次段のろ過室3へと流入し、同様に脱水ケーキ中の不純物を次段のろ過室3へ押し出していく。
【0034】
順次ろ過室3の脱水ケーキに含まれる不純物を押し出しつつ、最後段のろ過室3を抜けた洗浄水は、ろ過室3の後端側のろ過床11に設けた排出孔15に流入し、ろ液管7からろ液排出管8を介して外部に排出される。
【0035】
本実施例では、洗浄水の供給路として、ろ板列の最前端に洗浄水管9を連結しているが、ろ板列の最後端に洗浄水管9を連結し、最前端に向かって不純物を押し出してもよい。
【0036】
図4は他の実施例2の脱水ケーキ洗浄工程時のろ過室の断面図である。
実施例2では、最前段のろ過室3とろ板列の前端を連通する連通路17と、最後段のろ過室3とろ板列の後端を連通する連通路17を設け、それぞれの連通路17に洗浄水管9を連通させている。前端側の洗浄水管9fは洗浄水供給ポンプ10に接続し、後端側の洗浄水管9rはろ液排出管8に接続する。
【0037】
洗浄水の供給路である連通路17をろ過室3の後段に向かってろ過室3の上下に互い違いに連通させている。洗浄水のろ過室3への供給口と排出口が離れているため、ろ過室3内の脱水ケーキ前面に広く作用を及ぼして効率よく脱水ケーキの不純物を押し出す。
【0038】
脱水工程は、原液の供給路およびろ液の排出路に介装する弁V1,V2は全て開とし、洗浄水の供給、排出路に介装する弁V3,V4は閉とする。
【0039】
原液の脱水工程が終了すると、脱水ケーキ洗浄工程を開始する。
脱水ケーキ洗浄工程は、原液の供給路に介装する弁V1を閉とし、洗浄水の供給路、排出路に介装する弁V3,V4を開とする。ろ液の排出路に介装する弁V2は全て閉とする。つまり、洗浄水が連通路17を介して直列的に各ろ過室3…を通過するように洗浄水路WLを形成する。
【0040】
洗浄水供給ポンプ10を稼働して洗浄水管9fを介して、供給路であるろ板列の前端側から洗浄水をろ過室3に供給する。洗浄水はろ板列の前端に設けた連通路17から最前段のろ過室3に流入する。
【0041】
ろ過室3に流入した洗浄水は、脱水ケーキ中の不純物をろ過室3の後端側のろ過床11に押し出す。
【0042】
その後、洗浄水はろ過床11に開口する連通路17から次段のろ過室3へと流入し、同様に脱水ケーキ中の不純物を後端側のろ過床11に押し出す。その際、連通路17がろ過室3の上下に互い違いに連通させているため、ろ過室3内の脱水ケーキに広範囲に作用を及ぼし、効率よく不純物を押し出す。
【0043】
最後段のろ過室3を抜けた洗浄水は、連通路17を経て排出路である洗浄水管9rへと流入し、ろ液排出管8から外部に排出される。
【0044】
実施例2では、ろ板列の前端から洗浄水を供給し、ろ板列の後端から洗浄水を排出しているが、ろ板列の後端から洗浄水を供給し、ろ板列の前端から洗浄水を排出してもよい。
【0045】
また、洗浄水路WLの供給路および排出路は、実施例1,2をそれぞれ組み合わせてもよく、フィルタープレスの仕様や原液性状に応じて適宜選択できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るフィルタープレスの脱水ケーキ洗浄は、各ろ過室3…と連通路で洗浄水の通気路を直列的に構成しているため、全供給量を無駄なく脱水ケーキの洗浄に使用でき、均一な脱水ケーキの洗浄が可能となる。したがって、後工程にて脱水ケーキを処分する下水汚泥、あるいは産業排水汚泥や、脱水ケーキの有効利用を目的とするプロセスにおいて、脱水ケーキの性状が安定するとともに後処理工程の時間と手間を削減できる有益な技術となる。
【符号の説明】
【0047】
1 フィルタープレス
2 ろ板
3 ろ過室
7 ろ液管
17 連通路
WL 洗浄水路
V1,V2,V3,V4 弁