(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026686
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】射撃用的
(51)【国際特許分類】
F41J 1/01 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
F41J1/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130265
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】519084146
【氏名又は名称】中村 聡士
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡士
【テーマコード(参考)】
2C014
【Fターム(参考)】
2C014PP01
2C014QB01
(57)【要約】
【課題】機能性をより向上させた射撃用的を提供する。
【解決手段】略板状体であり標的となる的本体11と、補助部12と、的本体と補助部とを連結する連結部Wと、を備え、補助部12は、的本体11の外周端面から突設された補助部本体12aを有し、連結部Wは、的本体11と補助部本体12aとを互いに分離可能に連結する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略板状体であり標的となる的本体と、補助部と、前記的本体と前記補助部とを連結する連結部と、を備え、
前記補助部は、前記的本体の外周端面から突設された補助部本体を有し、
前記連結部は、前記的本体と前記補助部本体とを互いに分離可能に連結する射撃用的。
【請求項2】
前記補助部本体は、前記的本体の面方向と略平行に突設されている、請求項1に記載の射撃用的。
【請求項3】
前記補助部本体は、前記的本体の外周端面全域を覆って設けられる枠体である、請求項1又は2に記載の射撃用的。
【請求項4】
前記補助部本体は、前記連結部により互いに分離可能に連結された、複数の補助部本体構成体により形成される、請求項1~3の何れかに記載の射撃用的。
【請求項5】
前記補助部は、前記的本体の外面に設けられた表示部を有し、
前記連結部は、前記表示部を前記的本体に対してくり抜き可能に連結する、請求項1~4の何れかに記載の射撃用的。
【請求項6】
前記的本体及び前記補助部は、段ボールにより形成され、
前記連結部は、ミシン目である、請求項1~5の何れかに記載の射撃用的。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射撃訓練に用いられる射撃用的に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自衛隊や治安機関(警察、海上保安庁等)において、射撃用的を用いた射撃訓練、教育が行われてきた。
【0003】
この射撃訓練は、多数の隊員によって繰り返し実施されることから、頻繁に射撃用的の交換が必要となる上、銃弾が射撃用的を保持する的スタンドに当たり、破損した場合には、この的用スタンドの交換も余儀なくされる。
【0004】
このような実情から、従来の射撃訓練は、経済的なロスが大きいばかりか、交換に伴う労力も常に必要となるため、隊員の大きな負担となる、という問題があった。
【0005】
このような問題点を解決するために、特許文献1には、木製のものと比較して寿命が長く取替えの手間を軽減できると共に経済的な、標的装置に関する発明が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、標的への弾丸直撃時に反発力で弾き返るなどの危険性を効果的に防止でき、併せて反復使用性や取り扱い性を高めた、標的に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3619960号公報
【特許文献2】特開1997-280794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの特許文献に記載されている発明は、的スタンドを含めたものであり、何れも、主として的スタンドに対して工夫が施されたものである。そして、この的スタンドに設置される的自体は、長方形状の簡素なものであり、的自体の機能性については一切考慮されていない。
【0009】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、機能性をより向上させた射撃用的を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、略板状体であり標的となる的本体と、補助部と、前記的本体と前記補助部とを連結する連結部と、を備え、
前記補助部は、前記的本体の外周端面から突設された補助部本体を有し、
前記連結部は、前記的本体と前記補助部本体とを互いに分離可能に連結する。
【0011】
本発明によれば、標的となる的本体から突設された補助部本体を有することで、本射撃用的を、補助部本体を介して的スタンドに取付けることができる。これにより、的本体全体を、標的として有効に活用することが可能となる。
また、連結部により的本体と補助部本体とを互いに分離可能に連結していることで、補助部本体が不要な場合等、本射撃用的の使用環境に合わせて、的本体のみを訓練に使用することが可能となる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記補助部本体は、前記的本体の面方向と略平行に突設されている。
【0013】
このような構成とすることで、本射撃用的全体が嵩張ることなく、複数枚をコンパクトに積層することができ、運搬や収納等が容易となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記補助部本体は、前記的本体の外周端面全域を覆って設けられる枠体である。
【0015】
このような構成とすることで、本射撃用的を、補助部本体を介して的スタンドに取付ける際に、左右の補助部本体を介して留めておく、上方の補助部本体を介して吊り下げておく等、使用する的スタンドに合わせて柔軟に保持態様を変更することが可能となる。
【0016】
また、補助部本体から的本体をくり抜いて分離させることで、これらの分離された的本体や補助部本体を、他の本射撃用的の特定の領域を着色する際の型として利用することができる。即ち、複数の本射撃用的は、着色の有無で識別できる状態とされていることで、着色の有無を識別して射撃する訓練に用いることができるが、分離された的本体や補助部本体を型として利用することで、これら本射撃用的の特定の領域を様々な色で着色する作業を、容易に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記補助部本体は、前記連結部により互いに分離可能に連結された、複数の補助部本体構成体により形成される。
【0018】
このような構成とすることで、例えば使用する的スタンドに合わせて、補助部本体から部分的に補助部本体構成体を分離させることができ、使用環境等に合わせて、より柔軟に本射撃用的の外形状を変更することが可能となる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記補助部は、前記的本体の外面に設けられた表示部を有し、前記連結部は、前記表示部を前記的本体に対してくり抜き可能に連結する。
【0020】
このような構成とすることで、表示部や表示部がくり抜かれた的本体を、他の本射撃用的の特定の領域を着色する際の型として利用することができる。
即ち、複数の本射撃用的は、表示部の有無で識別できる状態とされていることで、表示部の有無を識別して射撃する訓練に用いることができるが、表示部がくり抜かれた的本体を型として利用することで、これら本射撃用的の特定の領域に、表示部の形状が複写された複写部を形成する作業を、容易に行うことが可能となる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記的本体及び前記補助部は、段ボールにより形成され、前記連結部は、ミシン目である。
【0022】
このような構成とすることで、本射撃用的を安価に製作することができ、的本体と補助部とを分離させる作業も容易となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、機能性をより向上させた射撃用的を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る射撃用的の概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る射撃用的の正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る射撃用的を的スタンドと共に用いる際の使用態様の説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る射撃用的を的スタンドと共に用いる際の使用態様の説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る射撃用的を的スタンドと共に用いる際の使用態様の説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る射撃用的を着色する際の使用態様の説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る射撃用的を着色する際の使用態様の説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る射撃用的を着色する際の使用態様の説明図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る射撃用的を着色する際の使用態様の説明図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る射撃用的を着色する際の使用態様の説明図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る射撃用的を着色する際の使用態様の説明図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る射撃用的を着色する際の使用態様の説明図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る射撃用的を着色する際の使用態様の説明図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る射撃用的の変更例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る射撃用的について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において符号1は、本実施形態に係る射撃用的を示す。
【0026】
図1に示すように、射撃用的1は、略板状体であり標的となる的本体11と、補助部12と、的本体11と補助部12とを連結する連結部Wと、を備えている。
ここで、本実施形態における的本体11及び補助部12は、段ボールにより形成されている。また、本実施形態における連結部Wは、ミシン目である。
なお、本実施形態の各図において、連結部Wは、点線で示している。また、本実施形態の各図において、的本体11の外周面に沿って形成された連結部Wは太線で、その他の連結部Wは細線で示している。
【0027】
的本体11は、射撃用的1の略中央に配置され、人を概略化した形状で構成されている。即ち、的本体11は、胴部11aと、胴部11aの上辺から上方に突出した頭部11bと、を有している。
【0028】
胴部11aと頭部11bとには、それぞれの外面に、使用者が射撃する目印として、円形の目印部ma、mbが設けられている。
なお、目印部ma、mbは、円形に限られず、訓練の内容によって多様に変更可能であるし、目印部ma、mbの内側や近傍に、点数となる数字を表示しておく構成としても良い。例えば、大きさの異なる複数の目印部maや複数の目印部mbを、同心円となるように配置し、各目印部maや各目印部mbの各領域近傍に、それぞれ異なる数字を表示しておく構成とすることができる。
【0029】
補助部12は、的本体11の外周端面から突設された補助部本体12aと、的本体の外面に設けられた表示部12bと、を有している。
【0030】
補助部本体12aは、的本体11の外周端面全域から、的本体11の面方向と略平行に突設されることで、的本体11の外周端面を覆って設けられる枠体として構成されている。また、これにより、射撃用的1は、全体が長方形状の板状体として構成されている。
【0031】
表示部12bは、本実施形態においては、人の左右の手を模した外形状を有している。
【0032】
連結部Wは、的本体11の外周面に沿って形成されることで、的本体11と補助部本体12aとを分離可能に連結している。
【0033】
また、連結部Wは、補助部本体12aに複数設けられることで、補助部本体12aが連結部Wにより複数の領域に区画されている。
詳述すれば、的本体11の外周面に沿って形成された連結部W(胴部11aに2本、頭部11bに1本形成された、射撃用的1の短辺方向に平行な連結部W、胴部11aに2本形成された、射撃用的1の長辺方向に平行な連結部W)が、補助部本体12aの端面まで延びて形成されている。
これにより、
図2に示すように、補助部本体12aは、連結部Wにより互いに分離可能に連結された、複数の補助部本体構成体12a1により形成されている。
【0034】
また、連結部Wは、表示部12bの外周面に沿って形成されることで、表示部12bを的本体11に対してくり抜き可能に連結している。
なお、連結部Wは、目印部ma、mbの外周面に沿って形成されることで、目印部ma、mbを的本体11に対してくり抜き可能に連結している。
【0035】
以下、
図3~
図5を用いて、射撃用的1を的スタンドSと共に用いる際の使用態様を説明する。
【0036】
図3に示すように、的スタンドSは、例えば木製の角材で形成されており、その設置面に対して鉛直方向に延びる一対の立設部S1と、一対の立設部S1の下端から設置面の面方向に沿って延びる支持部S2と、により構成されている。
【0037】
使用者は、
図3の矢印に示すように、射撃用的1の長辺側に構成された一対の補助部本体構成体12a1を、一対の立設部S1に当接させる。そして、使用者は、例えばガンタッカー等の工具を用いて、一対の補助部本体構成体12a1と一対の立設部S1とを連結させる。
【0038】
これにより、
図4に示すように、射撃用的1は、的スタンドSに安定的に保持され、射撃訓練に用いることが可能な状態となる。
【0039】
射撃用的1を的スタンドSに保持させる際、上記のような態様に限られず、例えば、
図5に示すような態様としても良い。
【0040】
即ち、
図5に示す的スタンドSは、一対の立設部S1と、一対の支持部S2と、一対の立設部S1の上方に懸架される紐状体S3と、紐状体S3に設けられたクリップS4と、により構成されている。
【0041】
このような的スタンドSによれば、使用者は、射撃用的1の短辺側及び上方に構成された補助部本体構成体12a1をクリップS4で挟持することで、射撃用的1を吊り下げた態様で、的スタンドSに保持させることができる。
【0042】
そして、使用者は、射撃訓練において、このような保持態様を基本とする場合、
図5に示すように、射撃用的1の長辺側に構成された一対の補助部本体構成体12a1を切り離しても良い。これにより、射撃用的1が、保持態様に則してコンパクトとなり、取り扱い易くなる。
【0043】
以下、
図6~
図9を用いて、補助部本体12aを用いて射撃用的1を着色する際の使用態様について説明図する。
【0044】
まず、使用者は、
図6に示すように、的本体11と補助部本体12aと分離させる。
【0045】
次に、使用者は、
図7(a)に示すように、分離させた的本体11を、他の射撃用的1´の的本体11´の上部に積層する。
【0046】
次に、使用者は、
図7(b)に示すように、的本体11を積層させた射撃用的1´に向かって、塗装用スプレー(図示せず)により塗料Cを噴射する。
【0047】
これにより、
図8に示すように、補助部本体12a´のみが着色された状態の射撃用的1´を作成することができる。
【0048】
また、使用者は、
図9に示すように、分離させた補助部本体12aを、他の射撃用的1´の補助部本体12a´の上部に積層し、塗料Cを噴射することで、
図8に示した状態とは逆に、的本体11´のみが着色された状態の射撃用的1´を作成することができる。
【0049】
以下、
図10~
図14を用いて、表示部12bを用いて射撃用的1を着色する際の使用態様について説明図する。
【0050】
まず、使用者は、
図10に示すように、的本体11から表示部12bをくり抜き、的本体11と表示部12bとを分離させる。
【0051】
次に、使用者は、
図11(a)に示すように、表示部12bがくり抜かれた的本体11を、他の的本体11´の上部に積層する。
【0052】
次に、使用者は、
図11(b)に示すように、的本体11を積層させた的本体11´に向かって、塗装用スプレーにより塗料Cを噴射する。
【0053】
これにより、
図12に示すように、外面に表示部12bの形状が複写された複写部Zを有する的本体11´を作成することができる。
【0054】
また、使用者は、
図13に示すように、的本体11の、他の的本体11´に対する積層位置を変更することで、的本体11´の任意の位置に表示部12bの形状を複写することができる。
【0055】
なお、上記使用態様は、的本体11が補助部本体12aから分離した状態としたが、的本体11と補助部本体12aとが連結された状態でも、当然に適用可能である。
【0056】
本実施形態によれば、射撃用的1を、補助部本体12aを介して的スタンドSに取付けることができ、的本体11全体を、標的として有効に活用することが可能となる。
【0057】
また、補助部本体12aが的本体11の面方向と略平行に突設され、射撃用的1全体が板状体として構成されていることで、射撃用的1全体が嵩張ることなく、複数枚をコンパクトに積層することができ、運搬や収納等が容易となる。
【0058】
また、補助部本体12aが的本体11の外周端面全域を覆って設けられる枠体であることで、射撃用的1を、補助部本体を介して的スタンドSに取付ける際に、左右の補助部本体12aを介して留めておく、上方の補助部本体12aを介して吊り下げておく等、使用する的スタンドSに合わせて柔軟に保持態様を変更することが可能となる。
【0059】
また、補助部本体12aから的本体11をくり抜いて分離させることで、これらの分離された的本体11や補助部本体12aを、他の射撃用的1´の特定の領域を着色する際の型として利用することができ、他の射撃用的1´の特定の領域を着色する作業を容易に行うことが可能となる。
【0060】
また、補助部本体12aが、連結部Wにより互いに分離可能に連結された、複数の補助部本体構成体12a1により形成されていることで、例えば使用する的スタンドSに合わせて、補助部本体12aから部分的に補助部本体構成体12a1を分離させることができ、使用環境等に合わせて、より柔軟に射撃用的1の外形状を変更することが可能となる。
【0061】
また、補助部12が、的本体11の外面に設けられた表示部12bを有し、連結部Wが、表示部12bを的本体11に対してくり抜き可能に連結していることで、表示部12bや表示部12bがくり抜かれた的本体11を、他の射撃用的1´の特定の領域を着色する際の型として利用することができる。
特に、本実施形態に示すように、表示部12bの外形状を人の手とすることで、着色された的本体11が、人をより想起させる状態となり、訓練によりリアリティを持たせることができる。
【0062】
また、的本体11及び補助部12が段ボールにより形成され、連結部Wがミシン目であることで、射撃用的1を安価に製作することができ、的本体11と補助部12とを分離させる作業も容易となる。
【0063】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0064】
例えば、
図14に示すように、表示部12bを、人の手ではなく、銃等の使用者にとって脅威に感じるものを模した外形状を有するものとしても良い。
そして、人の手のように、使用者にとって脅威に感じないものと、銃のように、使用者にとって脅威に感じるものと、を、別々の射撃用的1に複写することで、より高度な訓練を実施することができる。
【0065】
また、本実施形態では、的本体11及び補助部12が段ボールにより形成され、連結部Wがミシン目である例を示したが、これに限られず、例えば、的本体11及び補助部12をプラスチックにより形成し、連結部Wを、手作業で切り離し可能な溝やミシン目、切り込み等としても良い。
【符号の説明】
【0066】
1、1´ 射撃用的
11 的本体
11a 胴部
11b 頭部
ma、mb 目印部
12 補助部
12a 補助部本体
12a1 補助部本体構成体
12b 表示部
W 連結部
S 的スタンド
S1 立設部
S2 支持部
S3 紐状体
S4 クリップ
Z 複写部
C 塗料