(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026690
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ミスト化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20220203BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220203BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/81
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130273
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】薜 茜
(72)【発明者】
【氏名】松藤 孝志
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC442
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD091
4C083AD092
4C083DD08
4C083EE05
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】ミストの拡散性が良く、メイク崩れ防止効果があり、パウダーファンデーションを肌に付けた場合でも粉浮きがし難いミスト化粧料の提供。
【解決手段】(A)請求項1の式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、および請求項1の式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む重合体を0.0001~0.5質量%、(B)請求項1の式(3)で表されるポリメトキシフラボンを0.0001~0.1質量%、 (C)水を含有するミスト化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、および下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む重合体を0.0001~0.5質量%、
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数4~19のアルキル基を示す。)
(B)下記式(3)で表されるポリメトキシフラボンを0.0001~0.1質量%、
【化3】
(式中、R
4およびR
5はそれぞれ独立して水素原子またはメトキシ基を示す。)
(C)水
を含有するミスト化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌や皮膚にミスト状(霧状)に噴霧して使用することができるミスト化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ミスト化粧料は肌に直接触れることなく霧状に吐出・塗布することが可能であるので、メイクの仕上げとして有効であり、さらに、保湿剤や油分を加えて、保湿感などの向上が図られてきた。例えば、特許文献1には、クインスシードエキス、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋型N,N-ジメチルアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体の水溶性増粘剤を含有するミスト化粧料が開示されている。
しかし、ミスト化粧料に保湿剤や油分を配合すると、ノズルに目詰まりを起こしたり、噴霧できたとしてもミストがうまく広がらず、広範囲に拡散できなかったりという問題を生じることがあった。
【0003】
この問題に対しては、特許文献2に、脱アシル型ジェランガムおよびこれを架橋させる架橋剤を含有するミクロゲル粒子組成物を、ミスト状に噴霧する機構を有する容器に充填してなる噴霧型化粧料が開示されており、この噴霧型化粧料では拡散性の改良がなされている。
【0004】
一方、例年2月から4月にかけて、主に杉花粉などの花粉が飛び始めるため、花粉症患者を中心に長時間マスクを着用する機会が増える。さらに、感染症等の流行によっては、予防のためにマスクを着用する機会がますます多くなる。マスクを着用した場合、マスク内の蒸れ、皮膚との摩擦、皮脂分泌の促進などによって、メイクヨレが生じたり、ファンデーションが落ちるメイク崩れが生じたりすることがあった。外出時でも食事などでマスクを外す機会は多く、ファンデーションがマスクに移ることを気にしたり、メイク崩れを心配したりする女性も多い。
【0005】
特許文献3には、アクリル樹脂アルカノールアミン、アルキレングリコール、エタノールおよび水を含有するメイクアップ保護化粧料が開示されている。このメイクアップ保護化粧料によれば一定のメイク崩れ防止効果が期待できるが、ファンデーションを使用している限り、マスク着用時のメイク崩れを十分に防ぐことができない。
一方、油分の含有率が低く、メイク崩れが起きにくいパウダーファンデーションをつけた場合には、メイク崩れは起き難くなるものの、今度は粉浮きが起こりやすいという別の問題が生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-237615号公報
【特許文献2】特開2014-185118号公報
【特許文献3】特開2019-172601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ミストの拡散性が良く、メイク崩れ防止効果があり、パウダーファンデーションを肌に付けた場合でも粉浮きがし難いミスト化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の共重合体、および特定のポリメトキシフラボンを所定量含有させることによって、上記課題を解決できるミスト化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)下記式(1)で表される2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位、および下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位を含む重合体を0.0001~0.5質量%、(B)下記式(3)で表されるポリメトキシフラボンを0.0001~0.1質量%、および(C)水を含有するミスト化粧料である。
【0010】
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0011】
【化2】
(式中、R
2は水素原子またはメチル基を示し、R
3は炭素数4~19のアルキル基を示す。)
【0012】
【化3】
(式中、R
4およびR
5はそれぞれ独立して水素原子またはメトキシ基を示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明のミスト化粧料によれば、容器内のミスト化粧料をノズルから噴霧した際のミストの拡散性が良い。また、本発明のミスト化粧料をファンデーションなどのメイクの仕上げとして使用した場合に、メイク崩れ防止効果が得られる。更に、パウダーファンデーションを肌に付けた後に、本発明のミスト化粧料を使用した場合に粉浮きがし難い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
なお、本明細書において「肌」は顔面の皮膚を意味し、「皮膚」は顔面以外の皮膚を意味する。
本明細書中、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」およびび「メタクリロイル」の両方を意味し、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」および「メタクリル酸」の両方を意味する。
また、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
更に、濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
【0015】
本発明のミスト化粧料は、成分(A)、成分(B)および成分(C)を少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
【0016】
〔成分(A)〕
本発明に用いられる成分(A)は、下記の式(1)および式(2)で表される各構成単位を含む共重合体である(以下、この共重合体を本明細書では「共重合体A」ともいう)。
【0017】
【0018】
式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。式(1)で表される構成単位は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに基づく構成単位である。
【0019】
【0020】
式(2)中、R2は水素原子またはメチル基を示し、R3は炭素数4~19のアルキル基を示す。式(2)で表される構成単位は、(メタ)アクリル酸アルキルに基づく構成単位である。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基(R3)は、炭素数4~19の直鎖または分岐のアルキル基であり、例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル等が挙げられる。なかでも、ブチル、ドデシル、オクタデシル等の直鎖アルキル基が好ましく、オクタデシル(ステアリル)基がより好ましい。
上記アルキル基の炭素数が小さ過ぎると、本発明の効果が低減することがあり、上記アルキル基の炭素数が大き過ぎると、水や水性溶媒への溶解が困難になることがある。
【0022】
上記式(1)で表される構成単位と、上記式(2)で表される構成単位とを含む共重合体A中におけるそれぞれの構成単位の含有量の比([式(1)で表される構成単位]:[式(2)で表される構成単位])(n1:n2)は、モル比にて好ましくは10:1~1:5であり、より好ましくは5:1~1:4であり、更に好ましくは1:1~1:3である。式(1)で表される構成単位の含有量に対する式(2)で表される構成単位の含有量の比(n2/n1)(モル比)が小さ過ぎると、保湿感が低下することがある。一方、前記比が大き過ぎると、メイク崩れ防止効果が低下することがある。
【0023】
共重合体Aの重量平均分子量は、通常10,000~1,000,000であり、好ましくは30,000~900,000であり、より好ましくは50,000~800,000である。共重合体Aの重量平均分子量が小さ過ぎると、保湿感が低下することがあり、一方、共重合体Aの重量平均分子量が大き過ぎると、取り扱いが困難となることがある。
なお、共重合体Aの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定され、ポリエチレングリコール換算の分子量で示される。
【0024】
共重合体Aの重合形態は、特に限定されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
【0025】
また、共重合体Aは、通常、上記式(1)で表される構成単位と、上記式(2)で表される構成単位とからなる二元共重合体であるが、式(1)および(2)で表される構成単位以外に、他の構成単位を含む共重合体であってもよい。共重合体Aに含まれる他の構成単位は、通常、本発明の効果に影響を与えない範囲で、共重合体の構成単位となり得るものから適宜選択することができる。他の構成単位に相当する単量体としては、例えば、(メタ)アクル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の炭素数が1~3の低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の芳香族基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体等を挙げることができる。
これら他の構成単位は1種または2種以上を含むことができ、共重合体A中におけるその含有量は、式(1)および(2)で表される構成単位の合計量に対して、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。
【0026】
共重合体Aは、公知の製造方法により製造することができる。例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリル酸アルキル、および必要に応じて上記他の構成単位に相当する単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、溶液重合等の公知の方法により重合させることによって共重合体Aを製造することができる。
【0027】
共重合体Aを製造する際の各単量体の含有量比は、共重合体A中における各構成単位の含有量比に相当する比とする。本発明のミスト化粧料には、共重合体Aの1種を単独で、または共重合体Aの2種以上を組み合わせて含有させることができる。
【0028】
共重合体Aは、上記した重合方法により製造したものを用いることもできるが、市販の製品を用いることもできる。市販の製品としては、例えば、「リピジュア(登録商標)-B」、「リピジュア(登録商標)-PMB」、「リピジュア(登録商標)-NR」(いずれも日油株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
成分(A)の含有量は、ミスト化粧料総量に対して、0.0001~0.5質量%であり、好ましくは0.025~0.4質量%、より好ましくは0.1~0.3質量%である。成分(A)の含有量が少な過ぎると、メイク崩れ防止効果が不十分となることがある。また、成分(A)の含有量が多過ぎても、含有量に見合った効果が得られ難くなることがある。
【0030】
〔成分(B)〕
本発明に用いられる成分(B)は、下記の式(3)で表されるポリメトキシフラボンである。
【0031】
【0032】
式(3)中、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子またはメトキシ基を示す。本発明のミスト化粧料は、好ましい実施態様において、以下の式(4)~式(6)で表されるポリメトキシフラボンからなる群から選択される少なくとも1種のポリメトキシフラボンを含有する。
【0033】
【0034】
式(4)は、式(3)中のR4およびR5がいずれもメトキシ基である3,5,6,7,8,3’,4’-ヘプタメトキシフラボン(ヘプタメトキシフラボン)である。
【0035】
【0036】
式(5)は、式(3)中のR4が水素原子、R5がメトキシ基である5,6,7,8,3’,4’-へキサメトキシフラボン(ノビレチン)である。
【0037】
【0038】
式(6)は、式(3)中のR4およびR5がいずれも水素原子である5,6,7,8,4’-ペンタメトキシフラボン(タンゲレチン)である。
【0039】
式(3)で表されるポリメトキシフラボンは、各種の合成法によって得ることができ、また植物から天然物として溶媒抽出することによっても得ることができる。植物から溶媒抽出で得る方法としては、例えば、ミカン科ミカン属(Rutaceae Citrus )植物の果皮から抽出する方法が挙げられる。ミカン科ミカン属植物、例えば、ウンシュウミカン、ポンカン、ハッサク、レモン、タチバナ、ユズ、スダチ、ザボン、タンジェリン、オレンジ、グレープフルーツなどには、ポリメトキシフラボンが含有されている。これらの中で、好ましい植物はウンシュウミカン、タチバナ、ユズ、スダチおよびオレンジであり、より好ましい植物はタチバナおよびオレンジである。
【0040】
式(3)で表されるポリメトキシフラボンの単離精製は、これらのミカン科ミカン属植物の果皮を水や有機溶剤で抽出し、抽出物をカラムクロマトグラフィーにより分離することにより行なうことができる。以下、具体的に説明する。
まず、ミカン属植物の果皮を水、有機溶剤またはこれらの混合溶剤を用いて抽出する。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の水溶性アルコール;アセトン、ヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム等が挙げられる。好ましい溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールおよび酢酸エチルからなる群から選択される1または2以上の溶剤である。より好ましい溶剤は、メタノール、エタノール、プロピレングリコールおよび1,3-ブチレングリコールからなる群から選択される1または2以上の溶剤であり、さらに好ましい溶媒はエタノールである。
抽出液を濃縮すると、目的のポリメトキシフラボンを約1~15質量%含有する抽出物が得られる。さらに精製するために、この抽出物を2倍質量以上、好ましくは3~10倍質量の酢酸エチルに溶解し、水を加えて撹拌・分層し、水層を除去してから酢酸エチルを留去して、乾固物を得ることができる。
【0041】
なお、本発明においては、合成時の混合物や植物抽出物から単離した複数のポリメトキシフラボン、例えば、ヘプタメトキシフラボン、ノビレチンおよびタンゲレチンからなる群から選択される少なくとも1のポリメトキシフラボンを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、合成時の混合物のまま、または植物抽出物等の複数のポリメトキシフラボンを含む形態で用いてもよい。得られる効果を高めるために、2種以上のポリメトキシフラボンを用いるのが好ましく、3種のポリメトキシフラボンを混合して用いるのがより好ましい。
抽出液から得られた乾固物は、通常、適切な溶剤に再溶解されて液体カラムクロマトグラフィーに供され、ノビレチン、ヘプタメトキシフラボン、タンゲレチンなどのポリメトキシフラボンが得られる。液体カラムクロマトグラフィーは、充填材としてシリカゲルまたはアルミナが用いられ、溶離液としてヘキサン/エタノールを容積比で70/30~97/3で混合した混合溶剤が用いられる。
【0042】
成分(B)の含有量は、ミスト化粧料総量に対して、0.0001~0.1質量%であり、好ましくは0.0005~0.05質量%、より好ましくは0.005~0.05質量%である。成分(B)の含有量が少な過ぎると、粉浮きのなさが不十分となることがある。また、成分(B)の含有量が多過ぎても、含有量に見合った効果が得られ難くなることがある。
【0043】
〔成分(C)〕
本発明に用いられる成分(C)は水であり、水として精製水のほか、イオン交換水、加熱鉱泉水や海洋深層水、植物の水蒸気蒸留水なども用いることができる。
【0044】
成分(C)である水の含有量は、ミスト化粧料総量に対して、好ましくは50~99質量%であり、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは70~80質量%である。
【0045】
〔保湿剤〕
本発明のミスト化粧料は、肌や皮膚に適用した際に保湿感を得る目的で、保湿剤を含有していてもよい。保湿剤としては、化粧料に通常使用されるものを用いることができる。例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、3-メチル-1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グルコース、メチルグルコシド、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、マンニトールなどの多価アルコールおよびそれらのアルキレンオキシド誘導体;キトサン、尿素、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リボ核酸ナトリウム、アスパラギン酸、アルギン酸ナトリウム、アラニン、グリシン、シスチン、システイン、セリン、アルギニン、リシン、アシタバエキス、アルテアエキス、アロエエキス、オイスターエキス、海藻エキス、カリンエキス、キイチゴエキス、キュウリエキス、クインスシードエキス、ゼニアオイエキス、プラセンタエキス、ヘチマエキス、ユリエキス、リンゴエキス、ローヤルゼリー、ラクトフェリンなどが挙げられる。好ましくは、多価アルコールおよびそれらのアルキレンオキシド誘導体である。これら保湿剤から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0046】
保湿剤の含有量は、ミスト化粧料総量に対して、好ましくは0.01~40質量%であり、より好ましくは0.1~30質量%、さらに好ましくは1~25質量%である。
【0047】
〔他の成分〕
本発明のミスト化粧料は、成分(A)~成分(C)に加え、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて更に、化粧料、医薬部外品、医薬品等に使用される添加剤を1種または2種以上含有してもよい。
添加剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;ポリエチレングリコール類;乳糖、ショ糖等の糖類;流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素系油;ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーンまたはシリコーン誘導体;セラミド、コレステロール、カチオン化セルロース等のカチオン性高分子;キサンタンガム等の増粘性多糖類;クエン酸塩、リンゴ酸塩、食塩等の有機または無機塩類;pH調製剤としての酸、アルカリ;パラベン類;防腐剤;キレート剤;動植物由来のエキス;ビタミン類;アミノ酸類;色素;顔料;香料等が挙げられる。
【0048】
本発明のミスト化粧料は、成分(A)~成分(C)、必要に応じて、保湿剤や他の添加剤を加えて混合し、均一化して調製することができる。混合に際しては、液状化粧料の製造において一般的に使用される混合機や撹拌機を用いて行うことができる。
【0049】
本発明のミスト化粧料は、通常、噴霧機構を備えた容器等に充填され、使用時には霧状に噴射される。噴霧機構は、容器の開口部に取り付けられた部材、例えば、ポンプ式ディスペンサーまたはトリガー式ディスペンサーにより実現される。ディスペンサーの1回の吐出操作により吐出されるミスト化粧料の量は、特に限定されないが、好ましくは0.01~1mL/1回、より好ましくは0.02~0.8mL/1回、さらに好ましくは0.03~0.5mL/1回である。
【0050】
本発明のミスト化粧料は、肌や皮膚に噴霧した際のミストの拡散性が良好である。また、本発明のミスト化粧料をファンデーションなどのメイクの仕上げとして使用することによって、メイク崩れ防止効果が得られる。更に、パウダーファンデーションを付けた肌に本発明のミスト化粧料を噴霧することによって、粉浮きがし難いという効果が得られる。したがって、本発明のミスト化粧料は、メイク仕上げ用、特にパウダーファンデーションを用いたメイク仕上げ用に好適である。
【実施例0051】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳述する。配合量は組成物全量に対する質量%で示し、有効分を換算した値である。
【0052】
まず、成分(B)(ポリメトキシフラボン)の単離・精製について説明する。
ミカン科オレンジ(Rutaceae C. sinensis)の乾燥果皮100kgをブレンダーにて粉砕し、5倍質量の95質量%エタノールで5日間浸漬、抽出した。抽出液を濾過後、減圧濃縮してオレンジ果皮抽出物450gを得た。このオレンジ果皮抽出物を5倍質量の酢酸エチルに溶解し、酢酸エチルと等量の水を加えて撹拌し、静置後に水層を除去した。この操作を3回繰り返した後、酢酸エチルを留去し、乾固物280gを得た。
さらに、この乾固物を2倍質量のヘキサン/エタノール混合溶剤(容積比85/15)に溶解し、溶解液を得た。シリカゲルを充填したカラム(直径30cm、長さ1m)にこの溶解液を全量チャージした。このカラムにカラム容量の2倍容量のヘキサンを流した後、溶離液としてヘキサン/エタノール混合溶剤(容積比90/10)を使用し、溶出液を1Lずつ分画した。
【0053】
この各分画液について、展開溶剤としてヘキサン/エタノール混合溶剤(容積比90/10)を使用したシリカゲル薄層クロマトグラフに供して分析したところ、式(4)~式(6)で示される化合物(ポリメトキシフラボン)の存在を確認した。
そして、それぞれの化合物を含有する分画液を合一してから溶媒を留去し、式(4)~式(6)で表される化合物(ポリメトキシフラボン)を得た。
各化合物の収量は、式(4)の化合物(ヘプタメトキシフラボン)が13g、式(5)の化合物(ノビレチン)が9.2g、式(6)の化合物(タンゲレチン)が2.2gであった。このようにして、ポリメトキシフラボンが得られた。
なお、表1中では、式(4)~式(6)の混合物(ポリメトキシフラボン) と表記する。
【0054】
〔実施例1~4,比較例1~3〕
表1に掲げた組成のミスト化粧料を通常の方法により調製して、フィンガースプレー(株式会社ライフプラテック製、商品名:KFS100-24、吐出量:0.1ml)に充填した。
上記フィンガースプレーに充填した各ミスト用化粧料を用いて、下記のとおり、「保湿感」、「ミストの拡散性」、「メイク崩れ防止効果」、「粉浮きのなさ」について評価を行った。各試験項目について、以下の評価基準に基づいて各専門パネルが評価し、その評価点の合計によって3段階に評価基準を設定した。
【0055】
<評価基準>
(1)保湿感
20名の専門パネルにより、パウダーファンデーションを3回重ね塗りした全顔に、上記フィンガースプレーに充填した各ミスト化粧料を約0.4g(4プッシュ)噴霧し、保湿感を評価した。
2点:保湿感が非常に感じられる。
1点:保湿感がやや感じられる。
0点:保湿感が感じられない。
【0056】
(2)ミストの拡散性
上記フィンガースプレーに充填した各ミスト用化粧料を、壁に固定したキムタオル(日本製紙クレシア株式会社製) から水平方向に20cm離れた所から、キムタオルに向かって約0.4g(4プッシュ)噴霧し、キムタオル上に円状に広がって塗布された部分の直径を測定し、ミストの拡散性を以下の基準により評価した。
2点:15cm以上
1点:10cm以上15cm未満
0点:10cm未満
【0057】
(3)メイク崩れ防止効果
20名の専門パネルに、室温30℃、湿度60%に調整した部屋にてサージカルマスク( 製造販売元:サラヤ(株) 、商品名:サージカルマスク ふつう、本体素材:ポリプロピレン) を装着させて1時間滞在し、その後、メイク崩れ防止効果について下記の評価基準により点数化させた。
2点:1時間後に化粧の崩れが全くみられない。
1点:1時間後に化粧の崩れがみられる。
0点:1時間後に化粧の崩れが顕著にみられる。
【0058】
(4)粉浮きのなさ
20名の専門パネルに、室温20℃、湿度30%に調整した部屋にてサージカルマスク( 製造販売元:サラヤ(株)、商品名:サージカルマスク ふつう、本体素材:ポリプロピレン) を装着させて1時間滞在し、その後、粉浮きについて下記の評価基準により点数化させた。
2点:1時間後に粉浮きが全くみられない。
1点:1時間後に粉浮きがみられる。
0点:1時間後に粉浮きが顕著にみられる。
【0059】
<判定基準>
◎:合計点が35点以上
○:合計点が30~34点
△:合計点が29点以下
【0060】
上記の各評価結果を表1に示した。なお、上記(1)、(3)及び(4)の評価項目における評価結果に付記した数値は20名の専門パネルによる評価点の合計点を示し、上記(2)の評価項目における評価結果に付記した数値は20回の噴霧による評価の合計点である。各評価項目において、「◎」及び「○」と判定された場合を合格とした。
【0061】
【0062】
*1:Lipidure(登録商標)-NR (共重合体組成(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/ステアリルメタクリレイト)(モル比):33/67;重量平均分子量:189,000;製品組成2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体:5%、1,3-ブチレングリコール:47.5%、濃グリセリン:47.5%)
【0063】
*2:Lipidure(登録商標)-PMB(共重合体組成(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/メタクリル酸ブチル)(モル比):80/20;重量平均分子量:600,000;製品組成2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液:5%、水:95%)
【0064】
*3:ヒアルロン酸(商品名:ヒアルロンサン液HA-LQH1P(キユーピー株式会社製)、分子量:120万~220万)
【0065】
【0066】
表1に示されるように、実施例1~4の各ミスト化粧料については、「保湿感」、「ミストの拡散性」、「メイク崩れ防止効果」、「粉浮きのなさ」が付与されていると評価された。
一方、比較例1~3のミスト化粧料については、以下のとおり、すべての評価項目において十分な有効性が認められたものはなかった。
成分(A)の代わりに成分(A’)ヒアルロン酸を含有する比較例1のミスト化粧料では、「ミストの拡散性」、「メイク崩れ防止効果」と「粉浮きのなさ」が不十分と評価された。
成分(A)を含有していない比較例2のミスト化粧料では、「保湿感」、「メイク崩れ防止効果」と「粉浮きのなさ」が不十分と評価された。
成分(B)を含有していない比較例3のミスト化粧料では、「粉浮きのなさ」が不十分と評価された。
上記の実施例の記載からも明らかなように、本発明のミスト化粧料は、「保湿感」、「ミストの拡散性」、「メイク崩れ防止効果」および「粉浮きのなさ」を与えることができるので、メイク仕上げ用、特にパウダーファンデーションを用いたメイク仕上げ用に好適である。