(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026691
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】オープンシールド工法用プレスバー
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
E21D9/06 331
E21D9/06 311C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130274
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(71)【出願人】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元晶
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC16
2D054AD33
(57)【要約】
【課題】安定した状態で矩形枠を保てるとともに、簡易かつ迅速に拡巾または拡巾した横巾を縮小することができるオープンシールド工法用プレスバーを提供する。
【解決手段】左右の縦材18,19と横材20,21を組合せて形成するオープンシールド工法用プレスバー11において、横材20,21は途中を分割して、一方の分割体20b,21bの端を縮径して他方の分割体20a,21aの端に差し入れることで伸縮構造とするとともに、この伸縮構造の伸縮部の上に押圧ジャッキ22およびジャッキの支圧板20e,21eを設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の縦材と横材を組合せて形成するオープンシールド工法用プレスバーにおいて、横材は途中を分割して、一方の分割体の端を縮径して他方の分割体の端に差し入れることで伸縮構造とするとともに、この伸縮構造の伸縮部の上に押圧ジャッキおよびジャッキの支圧板を設けたことを特徴とするオープンシールド工法用プレスバー。
【請求項2】
押圧ジャッキはジャッキ棚を設けて着脱可能に配置する請求項1記載のオープンシールド工法用プレスバー。
【請求項3】
左右の縦材の途中同士をレバーブロックによる引き寄せ装置で連結した請求項1または請求項2記載のオープンシールド工法用プレスバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市街地に上下水道、地下道等の地下構造物を施工するオープンシールド工法で用いるプレスバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オープンシールド工法は開削工法とシールド工法の双方の利点を集めた工法で、上部および前後端を開口した掘進機を使用する。この掘進機の内部に推進ジャッキが設けられ、掘進機の前端および上部開口より切羽の土砂を掘削、排土し、推進ジャッキを伸長してコンクリート函体による地中構造物を反力受けにして掘進機を前進させる。次いで、推進ジャッキを縮め、新たな地中構造物を掘進機の内部に吊り降ろし、この新たな地中構造物を地中構造物の最前にセットし、掘進機の前端および上部開口より切羽の土砂を掘削、排土し、推進ジャッキを伸長して新たな地中構造物及びこれに後続する地中構造物を反力受けにして掘進機を前進させる。
【0003】
このように掘削、前進、地中構造物の設置の工程を繰り返して、掘進機を前進させていくが、掘削や地中構造物の設置は掘進機の上面開口を利用して地上から行うことができるのでシールド工法よりも簡単な施工となり、また、シールド工法と同様に土砂の崩壊に対しては、掘進機でその内部が保護されるので開削工法における土留支保工等が不要となるものである。
【0004】
オープンシールド工法で用いる掘進機の止水装置として下記特許文献にあるように、押角を矩形枠体を構成する上下の横材の途中に拡径ジャッキを介在させて横巾を拡径可能なものとしたものがある。
【特許文献1】特開平4-302618号公報
【0005】
図13、
図14に示すように、押角16はH型鋼材やボックス鋼材等を上下の横材16a,16bと左右の縦材16c,16dとを組合せて矩形枠体としたものであるが、このうち上下の横材16a,16bの途中に拡径ジャッキとしてキリンジャッキ12を配設し、枠の全体を横方向で拡巾可能なものとした。
【0006】
さらに、この押角16は左右の縦材16c,16dおよび下の横材16bの外側面すなわちシールド掘進機の内周面に当接する側の面にゴム板等の弾性板による板状シール材13を貼設した。
【0007】
また、押角16は、下の横材16bのキリンジャッキ12の周囲を止水のため着脱可能に封止できるようにする。この封止を行う手段としては、拡巾後にスポンジ等の止水部材を詰めるようにしてもよいが、キリンジャッキ12を操作しての拡巾後に鉄板等の板部材で蓋をするため、断面コ字形の蓋14を封止部材としてキリンジャッキ12の周囲に被せるようにした。
【0008】
図15、
図16に示すように、押角16はオープンシールド推進ジャッキとこのオープンシールド機のテール部内に吊り降ろすコンクリート函体の間に出し入れ自在に配設するもので、推進ジャッキは押角16に当接しており、推進ジャッキを伸長してオープンシールド機をコンクリート函体を反力に用いて前進させる。
【0009】
このようにしてオープンシールド機が前進すると、コンクリート函体はその位置に残る。前進後推進ジャッキを縮めれば、その前進分だけ最前列のコンクリート函体の前に空間ができるので、ここに新たなコンクリート函体を吊り降ろしセットし、その周囲にグラウトを施す。
【0010】
推進ジャッキを押角16に当て、これに押圧力をわずかに加えるようにすれば、押角16はその状態で固定される。押角16は吊り降ろす前は縮径されており、オープンシールド機内でキリンジャッキ12を調整し、巾を広げて外周をオープンシールド機の内周に板状シール材13を介して水密に当接させれば、押角6によりこのグラウト材のオープンシールド機前側への流出は阻止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献1の押角のように、キリンジャッキを操作して拡巾または拡巾した横巾を縮小するものでは、その作業に迅速性を欠く。
【0012】
また、上下のキリンジャッキはプレスバーの横材に固定されている為、上下のキリンジャッキを同等に操作しないと全体の矩形が歪み、キリンジャッキが破損してしまうおそれがある。
【0013】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、可動部のジャッキの破損の可能性を減らし、安定した状態で、簡易かつ迅速に拡巾することができるオープンシールド工法用プレスバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、左右の縦材と横材を組合せて形成するオープンシールド工法用プレスバーにおいて、横材は途中を分割して、一方の分割体の端を縮径して他方の分割体の端に差し入れることで伸縮構造とするとともに、この伸縮構造の伸縮部の上に押圧ジャッキおよびジャッキの支圧板を設けたことを要旨とするものである。
【0015】
請求項1記載の本発明によれば、左右の縦材と横材を組合せて形成するオープンシールド工法用プレスバーにおいて、上下の横材は途中を分割して、一方の分割体の端を縮径して他方の分割体の端に差し入れることで伸縮構造としたので、歪みに対して弱点となる伸縮する可動部箇所にジャッキを配置すること無い為、ジャッキの破損の可能性を減らし、左右の縦材を安定して押圧ジャッキで拡巾することができる。
【0016】
請求項2記載の本発明は、押圧ジャッキはジャッキ棚を設けて着脱可能に配置することを要旨とするものである。
【0017】
請求項2記載の本発明によれば、押圧ジャッキは必要時に設置することで、プレスバーの組立および解体の邪魔にならない。さらに、オープンシールド機内とコンクリート函体内を作業員が行き来する際に、プレスバーを部材が支障となることも無い。また、レバーブロック(登録商標)による引き寄せ装置で引き寄せる際に押圧ジャッキが支障となることもない。
【0018】
請求項3記載の本発明は、左右の縦材の途中同士をレバーブロックによる引き寄せ装置で連結したことを要旨とするものである。
【0019】
請求項3記載の本発明によれば、拡巾した横巾をレバーブロック等の引き寄せ装置により左右の縦材同士を引き寄せれば迅速に行うことができる。また、縮小するには押圧ジャッキをフリーな状態とする。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように本発明のオープンシールド工法用プレスバーは、可動部のジャッキの破損の可能性を減らし、安定した状態で、簡易かつ迅速に拡巾することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第1実施形態を示す横巾縮小時の正面図である。
【
図2】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第1実施形態を示す拡巾時の正面図である。
【
図3】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第2実施形態を示すオープンシールド機のプレスバー拡幅時の縦断側面図である。
【
図4】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第2実施形態を示すオープンシールド機のプレスバー拡幅時の中央縦断側面図である。
【
図5】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第2実施形態を示すオープンシールド機のプレスバー拡幅時の横断平面図である。
【
図6】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第2実施形態を示すオープンシールド機のプレスバー拡幅時の平面図である。
【
図8】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第2実施形態を示すオープンシールド機のプレスバー縮小時の縦断側面図である。
【
図9】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第2実施形態を示すオープンシールド機のプレスバー縮小時の中央縦断側面図である。
【
図10】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第2実施形態を示すオープンシールド機のプレスバー縮小時の横断平面図である。
【
図11】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第2実施形態を示すオープンシールド機のプレスバー縮小時の平面図である。
【
図15】オープンシールド工法の概要を示すオープンシールド機前進工程の側面図である。
【
図16】オープンシールド工法の概要を示すコンクリート函吊り降ろし時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明のオープンシールド工法用プレスバーの1実施形態を示す横巾縮小時の正面図、
図2は同上拡巾時の正面図で、本発明のプレスバー11も前記従来例と同じくH型鋼材やボックス鋼材等による上下の横材20,21と左右の縦材18,19とを組合せて矩形枠体としたものである。
【0023】
前記上下の横材20,21はこれの途中を分割して分割体20a,21aと分割体20b,21bとの組み合わせとし、一方の分割体20b,21bの端を縮径して差し入れ部20c、21cを形成し、これを他方の分割体20a,21aの端に形成した嵌入孔に差し入れた嵌合による伸縮構造とする。
【0024】
かかる差し入れ部20c、21cによる伸縮構造の伸縮部の上のジャッキ棚26上に油圧ジャッキもしくは水圧ジャッキでの押圧ジャッキ22による拡巾装置を設置して支圧フランジによる支圧板20e,21eを介して左右の縦材18,19を拡巾可能とした。
【0025】
なお、前記押圧ジャッキ22はジャッキ棚26にボルト止め等で着脱自在に設置するもので、必要に応じて取り外し可能とする。
【0026】
押圧ジャッキ22は、分割体20a,21aと分割体20b,21bの上に支圧フランジ20d,21d、20e,21eを形成してその間に配設する。
【0027】
また、左右の縦材18、19の内側途中に配置した穴あきフランジによる引っ掛け治具27にレバーブロック24のフックを固定し、左右の縦材18,19同士をレバーブロック24による引き寄せ装置で連結して拡巾した横巾を縮小可能とした。
【0028】
左右の縦材18、19の外側には圧着ゴムラバーによる板状シール材25を貼設する。
【0029】
次に使用法について説明するが、先にオープンシールド工法を説明すると、オープンシールド工法は、開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の長所を生かした合理性に富む工法で、上部開放型シールド機(オープンシールド機)を使用して推進させ土砂崩壊を防ぎながら、その内部で函体布設を行う工法である。
【0030】
図15、
図16にその概略を示すと、図中1はオープンシールド機で、これは左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機である。
【0031】
該オープンシールド機1は、機体を前後方向で複数に分割し、フロント部1aとしての前方の機体の後端にテール部1bとしての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で中折れ部2を形成して屈曲可能としている。
【0032】
フロント部1aは主として掘削を行うもので、前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ(図示せず)を左右によせて、また上下複数段に配設した。
【0033】
これに対してテール部1bはコンクリート函体4の設置を行うもので、底板5を有し、機体内で前部に後方へ向けて推進ジャッキ(シールドジャッキ)3を左右によせて、また上下複数段に配設している。
【0034】
図中6はフロント部1aの前端に設けたスライド土留板、11は本発明のプレスバー(押角)である。
【0035】
図示は省略するが、発進立坑内にこのオープンシールド機1を設置して、オープンシールド機1の推進ジャッキ3を伸長して発進坑内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4をクレーン等の揚重機10により上方から吊り降し、オープンシールド機1のテール1b部内で縮めた推進ジャッキ3の後方にセットする。
【0036】
ショベル等の掘削機7でオープンシールド機1の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土する。この排土工程と同時またはその後に推進ジャッキ3を伸長してオープンシールド機1を前進させる。
【0037】
そして前記第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1b内に吊り降す。以下、同様の排土工程、前進工程、コンクリート函体4のセット工程を適宜繰返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、さらにこのコンクリート函体4の上面に埋戻しを施す。
【0038】
なお、コンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1b内に吊り降す際には、コンクリートブロック等による高さ調整材をコンクリート函体4下に配設し、このテール部1b内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙に瞬結性グラウト材を用いた裏込注入材9を充填して一次注入を行い、さらに、オープンシールド機1の前進後、二次注入として、コンクリート函体4の内側からグラウトホールにより、外側に裏込注入材9を注入する。
【0039】
このようにして、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを撤去して工事を完了する。
【0040】
オープンシールド機1を前進させる前にプレスバー11を推進ジャッキ3とコンクリート函体4の前端との間に吊降ろして、かつ押圧ジャッキ22により巾を広げて外周がオープンシールド機1の内周に板状シール材25を介して水密に当接するように配設する。
【0041】
推進ジャッキ3をプレスバー11の縦材18、19に当て、これに押圧力をわずかに加えるようにすれば、プレスバー11はその状態で固定される。
【0042】
プレスバー11を配置後、コンクリート函体4の周囲隙間をグラウト材9を充填するが、プレスバー11によりこのグラウト材9のオープンシールド機1前部への流出は阻止される。
【0043】
推進ジャッキ3を伸長してオープンシールド機1をコンクリート函体4を反力に用いて前進させる。
【0044】
その後、プレスバー11を上方に引き上げるが、プレスバー11の拡巾した横巾を縮小するには押圧ジャッキ22は取り外しておき、レバーブロック24により左右の縦材18、19を同士を引き寄せる。
【符号の説明】
【0045】
1…オープンシールド機 1a…フロント部
1b…テール部 2…中折れ部
3…推進ジャッキ 4…コンクリート函体
5…底板 6…スライド土留板
7…掘削機 8…中折ジャッキ
9…裏込注入材
10…揚重機 11…プレスバー
12…キリンジャッキ 13…板状シール材
14…蓋 15…水圧ジャッキ
16…押角 17…引っ掛かり治具
16a,16b…横材 16c,16d…縦材
18,19…縦材 20,21…横材
20a,21a…分割体 20b,21b…分割体
20c,21c…差し入れ部 20d,21d…支圧フランジ
20e,21e…支圧板 22…押圧ジャッキ
23…横材 24…レバーブロック
25…板状シール材 26…ジャッキ棚
27…引っ掛け治具