(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026696
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】殺菌装置、建物及び建築設備
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130280
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA28
4C058AA29
4C058BB06
4C058DD01
4C058KK02
4C058KK12
4C058KK22
(57)【要約】
【課題】日常生活の中で殺菌効果を発揮する殺菌装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るタッチ式殺菌装置11は、紫外線出射部50と、パネル40と、マイクロスイッチ100の作動ボタン102と、スイッチ本体101と、を備える。紫外線出射部50は、200nm以上230nm以下の波長域内の波長を含み、且つ200nm以上230nm以下の波長域外の波長を含まない所定の波長域の紫外線77を出射する。パネル40は、紫外線出射部50からの紫外線77の出射方向の前方に配置されている。作動ボタン102は、パネル40に接続可能に構成され、パネル40に外力が加わっていない状態の初期位置から外力が加わった状態の作動位置212に移動した際に作動位置212にあるパネル40に接して押される。スイッチ本体101は、作動ボタン102が押されたときのみ紫外線出射部50の紫外線出射源52に所定時間給電する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の建築設備に設けられ、
200nm以上230nm以下の波長域内の波長を含み、且つ200nm以上230nm以下の波長域外の波長を含まない所定の波長域の紫外線を出射する紫外線出射部と、
前記建物内又は前記建築設備の周囲で殺菌目標物が所定の離間距離範囲内にあるときに前記殺菌目標物が前記所定の離間距離範囲内にあることを接触式又は非接触式で検知可能に構成された検知部と、
前記検知部で前記殺菌目標物が前記所定の離間距離範囲内にあることを検知したときに前記紫外線出射部に給電し、前記紫外線出射部から前記紫外線を所定時間出射させる給電部と、
を備える、
殺菌装置。
【請求項2】
前記検知部は、
前記紫外線出射部からの前記紫外線の出射方向の前方の前記所定の離間距離範囲内に配置されているパネルと、
前記パネルに接続可能に構成され、前記パネルに外力が加わっていない状態の初期位置から外力が加わった状態の作動位置に移動した際に接して押される作動ボタンと、
を備え、
前記給電部は、前記作動ボタンが押されたときのみ前記紫外線出射部に給電するスイッチを備える、
請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記パネルは前記出射方向で前記紫外線出射部と向き合って配置されている、
請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記パネルにおいて前記紫外線出射部と向き合っている対向面又は前記対向面とは反対側の表面に手又は足を載せて前記パネルを前記紫外線出射部に向かって押すことによって前記パネルに前記外力が加わる、
請求項2又は3に記載の殺菌装置。
【請求項5】
開口部が形成された筐体を備え、
前記紫外線出射部は前記筐体内に配置され、
前記パネルは前記開口部に配置され、
前記パネルにおいて前記紫外線出射部と向き合っている対向面又は前記対向面とは反対側の表面の第1領域と前記筐体の側面の第2領域とはヒンジによって接続され、
前記対向面又は前記表面において前記第1領域と向かい合う第3領域と前記筐体の上面において前記第3領域と向かい合う第4領域とがばねによって接続され、
前記ばねは前記パネルが初期位置にある際に自然状態である、
請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記紫外線出射部からの前記紫外線の出射方向の前方の前記所定の離間距離範囲内に配置されているパネルを備え、
前記検知部は、前記所定の離間距離範囲内で前記殺菌目標物が前記パネルの近傍にあるか否かを非接触式で検知し、前記殺菌目標物が前記パネルの近傍にあることを検知したときに検知信号を発信する非接触式センサを備え、
前記給電部は、前記検知信号を受信したときのみ前記紫外線出射部に給電する給電素子を備える、
請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記パネルにおいて前記紫外線出射部と向き合っている対向面又は前記対向面とは反対側の表面に手又は足を載せる位置を示すガイドが設けられている、
請求項2から6の何れか一項に記載の殺菌装置。
【請求項8】
建物に設置され、
前記パネルは前記建物の床面及び側壁面の何れか一方の面の一部を構成する、
請求項2から7の何れか一項に記載の殺菌装置。
【請求項9】
前記パネルは、前記紫外線を透過可能に形成されている、
請求項2から8の何れか一項に記載の殺菌装置。
【請求項10】
前記パネルは、前記所定の波長域の紫外線の透過率が30%以上の板材で形成されている、
請求項9に記載の殺菌装置。
【請求項11】
前記パネルは、厚み方向に沿って貫通孔が形成された板材で形成されている、
請求項9に記載の殺菌装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の殺菌装置を備える、
建物。
【請求項13】
請求項1から11の何れか一項に記載の殺菌装置を備える、
建築設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置、建物及び建築設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフルエンザや新型コロナ等、ウィルスを介した感染症を防止する対策が求められている。紫外線は、例えば手に照射するだけで短時間にウィルスや細菌を不活化する(即ち、DNAを複製できなくすることによって感染力や毒性を消失させる)。そのため、紫外線を用いた殺菌灯や空気清浄機等は手軽で維持費を安価にできることから、広く利用されている。
【0003】
特に、紫外線の中でも波長が短い領域に属する深紫外線は、高い殺菌能力をもつため、水や空気の殺菌をはじめ、医療や工業など多分野へ応用が進んでいる。従来市販されている装置の多くは凡そ波長254nmの紫外線を用いているが、波長254nmの紫外線は人体に照射すると皮膚がんや白内障を発生させる虞があり、人体に当たらないようにする必要があった。
【0004】
上述の事情を鑑み、種々の研究開発が進められる中、波長254nmよりも短い波長222nmの紫外線による不活化実験によって人体に無害であり且つ波長254nmの紫外線と同等水準の不活化効果が得られることが発表された。その後、例えば、波長222nmの紫外線放射源としてエキシマランプを用い、エキシマランプと光学バンドパスフィルターとを組み合わせて人体に有害な波長域の紫外線を除去し、ウィルスや細菌の不活化に有効な装置が開発されている。また、特許文献1には、波長190nm以上230nm以下の少なくとも一部、及び波長230nmよりも長く237nm以下の少なくとも一部を含み、190nm以上237nm以下の波長域以外の波長を含まない紫外線を用いて人体の一部を乾燥殺菌する殺菌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に開示されている殺菌装置は、例えば衛生面が重視される建物内の手洗場等に設置可能である。しかしながら、昨今のコロナウィルス感染予防対策では、従来衛生面が重視されていた場所に留まらず、日常生活の中で、例えば建物内で、壁に手をつく、床面上を歩行する、所定の位置で待つ、机上で作業する、或いは建築設備のボタンやスイッチを押す等のように殺菌に対して無意識又は殺菌を意図しない行動において人体や着衣、付帯物(即ち、殺菌目標物)を殺菌する必要性が高まっている。特許文献1に開示されている殺菌装置では、前述のように殺菌に対して無意識又は殺菌を意図せずに手洗場以外で行動する日常生活の中で殺菌効果を発揮することは難しい。
【0007】
本発明は、日常生活の中で殺菌効果を発揮する殺菌装置、及び該殺菌装置を備える建物及び建築設備を提供する。建築設備とは、建物に設置される電気設備(例えば、照明、自動ドア、エレベータ、空調機等)やこれらの電気設備をON-OFFする装置(例えば、スイッチ、押しボタン等)を指す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る殺菌装置は、建物内の建築設備に設けられ、200nm以上230nm以下の波長域内の波長を含み、且つ200nm以上230nm以下の波長域外の波長を含まない所定の波長域の紫外線を出射する紫外線出射部と、前記建物内又は前記建築設備の周囲で殺菌目標物が所定の離間距離範囲内にあるときに前記殺菌目標物が前記所定の離間距離範囲内にあることを接触式又は非接触式で検知可能に構成された検知部と、前記検知部で前記殺菌目標物が前記所定の離間距離範囲内にあることを検知したときに前記紫外線出射部に給電し、前記紫外線出射部から前記紫外線を所定時間出射させる給電部と、を備える。
【0009】
上述の殺菌装置によれば、人体の手や足、着衣、付帯物等の殺菌目標物が検知部から所定の離間距離範囲内にあることが検知されたときに、紫外線出射部から200nm以上230nm以下の波長を有する紫外線が所定時間だけ出射される。200nm以上230nm以下の波長を有する紫外線は、人体に与える影響の小さく、且つウィルスや細菌等の殺菌対象物を不活化させ、殺菌目標物を殺菌する。したがって、上述の殺菌装置が建物又は建築設備において例えば従来衛生面が重視されていなかった場所・位置に組み込まれ、所定の離間距離範囲が日常生活の中で殺菌目標物が殺菌されることを意識せずに又は意図せずに配される位置を含むように設定されることによって、上述の殺菌装置は日常生活の中で殺菌効果を発揮する。
【0010】
本発明に係る殺菌装置は、前記検知部は、前記紫外線出射部からの前記紫外線の出射方向の前方の前記所定の離間距離範囲内に配置されているパネルと、前記パネルに接続可能に構成され、前記パネルに外力が加わっていない状態の初期位置から外力が加わった状態の作動位置に移動した際に接して押される作動ボタンと、を備え、前記給電部は、前記作動ボタンが押されたときのみ前記紫外線出射部に給電するスイッチを備える。
【0011】
上述の殺菌装置によれば、パネルに外力が加わり、パネルが作動位置に移動するだけで作動ボタンが押され、紫外線出射部に給電され、紫外線出射部から紫外線がパネルに向かって出射される。したがって、パネルに外力が加わったときのみに紫外線出射部で紫外線を出射させるための電力が使われるだけで、殺菌装置における電力消費量を抑え、誤作動を防止することができる。また、上述の殺菌装置によれば、パネルの移動によって紫外線出射部に直接通電又は切電し、紫外線出射部の点灯又は消灯を直接操作するので、人体等の殺菌目標物を検知するためのセンサやセンサからの信号に応じて紫外線出射部を作動又は停止させるモータや駆動機構を備える必要がなく、設置環境に合わせて小型化或いは薄型化が容易である。
【0012】
本発明に係る殺菌装置において、前記パネルは前記出射方向で前記紫外線出射部と向き合って配置されていてもよい。
【0013】
上述の殺菌装置によれば、紫外線出射部とパネルとが紫外線の出射方向に沿って配置されるので、例えば平板状の概形を実現し易く、パネルが紫外線出射部と向き合っていない場合に比べて小型化或いは薄型化が容易である。
【0014】
本発明に係る殺菌装置において、前記パネルにおいて前記紫外線出射部と向き合っている対向面又は前記対向面とは反対側の表面に手又は足を載せて前記パネルを前記紫外線出射部に向かって押すことによって前記パネルに前記外力が加わってもよい。
【0015】
上述の殺菌装置によれば、パネルの対向面又は表面に手又は足を載せてパネルを紫外線出射部に向かって押し、別の動作等を必要とされず、パネルに外力が加わるだけで紫外線出射部から紫外線が容易に出射される。
【0016】
本発明に係る殺菌装置では、開口部が形成された筐体を備え、前記紫外線出射部は前記筐体内に配置され、前記パネルは前記開口部に配置され、前記パネルにおいて前記紫外線出射部と向き合っている対向面又は前記対向面とは反対側の表面の第1領域と前記筐体の側面の第2領域とはヒンジによって接続され、前記対向面又は前記表面において前記第1領域と向かい合う第3領域と前記筐体の上面において前記第3領域と向かい合う第4領域とがばねによって接続され、前記ばねは前記パネルが初期位置にある際に自然状態であってもよい。
【0017】
上述の殺菌装置によれば、パネルの第2領域に近い部分が紫外線出射部に向かって押され、パネルに外力が加わると、パネルがヒンジを中心軸として回動して作動位置に移動し、作動ボタンが押されてスイッチが入り、紫外線出射部に通電されて紫外線が出射される。
【0018】
本発明に係る殺菌装置において、前記紫外線出射部からの前記紫外線の出射方向の前方の前記所定の離間距離範囲内に配置されているパネルを備え、前記検知部は、前記所定の離間距離範囲内で前記殺菌目標物が前記パネルの近傍にあるか否かを非接触式で検知し、前記殺菌目標物が前記パネルの近傍にあることを検知したときに検知信号を発信する非接触式センサを備え、前記給電部は、前記検知信号を受信したときのみ前記紫外線出射部に給電する給電素子を備えてもよい。
【0019】
上述の殺菌装置によれば、パネルの近傍で手足等の殺菌目標物が非接触式で検知されれば、紫外線出射部に給電され、紫外線出射部から紫外線がパネルに向かって出射される。したがって、殺菌目標物がパネル近傍で所定の離間距離範囲内に配されたときのみに紫外線出射部で紫外線を出射させ、誤作動を防止することができる。
【0020】
本発明に係る殺菌装置において、前記表面に手又は足を載せる位置を示すガイドが設けられていてもよい。
【0021】
上述の殺菌装置によれば、パネルの表面又は対向面において紫外線出射部からの紫外線の照射効率を十分に得るのに好適な位置にガイドを設けることによって、手又は足がガイドに応じた位置に載せられたときに手又は足に十分な照射効率で紫外線が照射され、ウィルス及び細菌が不活化され、手又は足が殺菌される。また、接触式の場合は、パネルの表面又は対向面において外力を加えるのに好適な位置(即ち、外力が加えられた際にパネルが作動位置に移動して確実に作動ボタンが押されるという表面における位置)にガイドを設けることによって、手又は足がガイドに応じた位置に載せられたときに紫外線出射部から紫外線が出射され、ウィルス及び細菌が不活化され、手又は足が殺菌される。なお、上述の手(殺菌目標物)には手袋等(殺菌目標物)も含まれ、上述の足(殺菌目標物)には靴やスリッパ等の履物(殺菌目標物)も含まれる。
【0022】
本発明に係る殺菌装置では、前記建物に設置され、前記パネルは前記建物の床面及び側壁面の何れか一方の面の一部を構成してもよい。
【0023】
上述の殺菌装置によれば、建物の床面及び側壁面の一部を構成するパネルに足や手が自然な動作によって触れやすい。また、紫外線出射部や筐体等を建物の床の建材内或いは床下空間内や、側壁面の建材内或いは側壁面間のよりも奥側の空間等に可能であり、建物への設置時に小型化或いは薄型化が容易である。
【0024】
本発明に係る殺菌装置では、前記パネルは、前記紫外線を透過可能に形成されてもよい。
【0025】
上述の殺菌装置によれば、パネルの対向面又は表面に接する殺菌対象物及び殺菌目標物にパネルの反対側の表面側又は対向面側から透過する紫外線を照射し、殺菌できる。
【0026】
本発明に係る殺菌装置では、前記パネルは、前記所定の波長域の紫外線の透過率が30%以上の板材で形成されてもよい。
【0027】
上述の殺菌装置によれば、紫外線出射部から出射された紫外線がパネルを透過してパネルに外力を加える殺菌目標物に照射され、殺菌されると共に、パネルに接する際に殺菌目標物からパネルに付着したウィルスや細菌等の殺菌対象物が不活化される。したがって、上述の殺菌装置によれば、パネルの表面が清潔に保たれる。
【0028】
本発明に係る殺菌装置では、前記パネルは、厚み方向に沿って貫通孔が形成された板材で形成されてもよい。
【0029】
上述の殺菌装置によれば、紫外線出射部から出射された紫外線がパネルに形成された貫通孔を透過してパネルに外力を加える殺菌対象物に照射され、殺菌される。
【0030】
本発明に係る建物内の建築設備は、上述の殺菌装置を備える。
【0031】
上述の殺菌装置が建物内の建築設備に組み込まれることによって、例えば従来衛生面が重視されていなかった場所・位置においても、ウィルスや細菌等の殺菌対象物が不活化され、殺菌目標物が殺菌されることによって、日常生活の中で殺菌効果を発揮する建物及び建築設備が実現される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、本発明に係る殺菌装置を建物内に設置すれば日常生活の中で殺菌効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の殺菌装置の側断面図であり、作動前の状態を示す図である。
【
図2】
図1に示す殺菌装置を奥行き方向から見た正面図である。
【
図3】
図1に示す殺菌装置のマイクロスイッチの一例を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す殺菌装置の作動時の状態を示す図である。
【
図5】
図1に示す殺菌装置の変形例を示す部分平面図である。
【
図6】
図1に示す殺菌装置の変形例を示す部分平面図である。
【
図7】
図1に示す殺菌装置の変形例を示す部分平面図である。
【
図8】
図1に示す殺菌装置の変形例を示す部分平面図である。
【
図9】本発明に係る第2実施形態の殺菌装置の斜視図である。
【
図10】本発明に係る第2実施形態の第1変形例の殺菌装置の斜視図である。
【
図11】本発明に係る第2実施形態の第2変形例の殺菌装置の部分断面図である。
【
図12】本発明に係る第3実施形態の殺菌装置の側断面図であり、作動前の状態を示す図である。
【
図13】
図1に示す殺菌装置の作動時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る殺菌装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態のタッチ式殺菌装置(殺菌装置)11は、人体の手に付着したウィルスや細菌等の殺菌対象物を少なくとも不活化し、手を殺菌するための装置である。本明細書では、殺菌される対象のウィルスや細菌等の物質を殺菌対象物21と称し、手や足等のように殺菌対象物21が付着する目標とされる物を殺菌目標物22と称する場合がある。
【0036】
図1に示すように、タッチ式殺菌装置11は、不図示の建物に設けられ、紫外線出射部50と、検知部150と、給電部170と、を備える。検知部150は、パネル40と、作動ボタン102と、を備える。給電部170は、マイクロスイッチ100を備える。タッチ式殺菌装置11は、さらに装置ケース(筐体)30と、ヒンジ111、112と、復元ばね(ばね)120と、制御基板130と、電源140と、を備える。タッチ式殺菌装置11の少なくとも一部は、不図示の建物の壁部200に埋設されている。壁部200は、建物の床面又は側壁面を構成する壁材で構成され、第1実施形態では建物の側壁面を構成する。以下、壁部200の壁面202に平行な鉛直方向を縦方向D1とし、縦方向D1の矢先側を下側、縦方向D1の矢元側を上側とする。縦方向D1に直交し、且つ壁部200の内部から屋内側に向かう方向を奥行き方向D2とし、奥行き方向D2の矢先側を前側、奥行き方向D2の矢元側を後側とする。
【0037】
装置ケース30は、箱状に形成され、底壁部31及び側壁部32を備え、奥行き方向D2の前側に開口部36が形成されている。底壁部31は、奥行き方向D2から見て例えば略矩形状に形成されている。側壁部32は、底壁部31の外周縁から奥行き方向D2の前方に向けて立設されている。縦方向D1の上側の側壁部32-1における奥行き方向D2の前端面33-1は、壁面202よりも奥行き方向D2の前側に突出している。一方、縦方向D1の下側の側壁部32-2における奥行き方向D2の上端面33-2は、奥行き方向D2において壁面202と略重なり、壁面202と面一である。
【0038】
紫外線出射部50は、装置ケース30内に配置されている。紫外線出射部50は、200nm以上230nm以下の波長域内の波長を含み、且つ200nm以上230nm以下の波長域外の波長を含まない所定の波長域の紫外線77を出射する。紫外線出射部50は、所定の波長域の紫外線77(
図4参照)を出射し、紫外線出射源52と、反射板54と、を備える。紫外線出射源52は、前述の所定の波長域の紫外線77を自ら放射する線源である。
【0039】
従来、例えばKrClエキシマランプを用いた例では、波長280nm~315nmの紫外線が照射された全てのマウスに影響(皮膚がんが形成される等)があり、波長222nmの紫外線が照射されたマウスには影響が全く見られなかった(即ち、皮膚がんが全く形成されず目にも異常が確認されなかった)ことが報告されている。つまり、波長222nmは、人体即ち殺菌目標物22(
図2参照)への影響を与えず、安心安全であるといえる。なお、波長222nmの紫外線も波長254nmの紫外線も、波長域では深紫外線UV-C(200nm~280nm)に分類される。新紫外線はオゾン層に吸収されるので、地表には到達せず自然には存在しない。波長254nmの紫外線は人体に照射すると皮膚がんや白内障を発症させる虞があるが、波長222nmの紫外線は人体への影響が殆どない。この違いは、人体内に紫外線が到達する深さの差による。波長254nmの紫外線を人体に照射した場合、最外層である角質層等を透過し、表皮の最深部である基底層まで到達し、皮膚がんを発症させる虞がある。一方、波長222nmの紫外線の殆どが角質層で吸収される。角質層では細胞が頻繁に入れ替わるので、紫外線が角質層に留まっていれば皮膚がんを発症させる虞はない。角質層の厚さは、約20μmといわれる。厚さ20μmにおける生体透過率で比べると、波長254nmの紫外線は30%程度であるのに対し、波長222nmの紫外線は0.01%以下であり、健康上の問題は生じない。200nm以上230nm以下の波長域外(即ち、200nm未満230nm超の波長域)の波長では、生体透過率がやや高まり、人体への影響及び健康上の問題が生じる虞がある。
【0040】
なお、波長222nmを含む所定の波長域の紫外線を出射する紫外線出射源52として、例えば紫外線光源モジュール(製品名;Care222、製造元;ウシオ電機株式会社)が挙げられるが、このモジュールに限定されない。また、本発明における所定の波長域は、200nm以上230nm以下の波長域内であれば、ピーク波長及びピーク波長の数は特に限定されない。所定の波長域は、殺菌対象物を殺菌可能であって、人体への影響及び健康上の問題が生じない紫外線の波長域を意味する。
【0041】
紫外線出射源52は、装置ケース30の内側空間に配置されている。紫外線出射源52は、主に奥行き方向D2の前方及び後方に向かって上述の所定の波長の紫外線77を出射する。反射板54は、装置ケース30内で紫外線出射源52よりも奥行き方向D2の後方に配置され、装置ケース30の底壁部31の奥行き方向D2の前側の表面34に設けられている。反射板54は、紫外線77を正反射(即ち、鏡面反射)する。つまり、紫外線出射源52から奥行き方向D2の後方に出射された紫外線77は、反射板54によって、奥行き方向D2の前方に出射される。このことによって、紫外線出射部50から奥行き方向D2の前方に所定の波長域の紫外線77が出射される。
【0042】
なお、最終的に紫外線出射部50から奥行き方向D2の前方に所定の波長域の紫外線77が出射されればよいので、紫外線出射源52から所定の波長域外の波長の紫外線等の電磁波が出射される場合は、紫外線出射部50において紫外線出射源52の奥行き方向D2の前方に不図示の波長フィルタが配置されてもよい。前述の波長フィルタは、紫外線出射源52から出射された所定の波長域外の波長の電磁波を遮断可能なフィルタである。
【0043】
検知部150は、前述の建物内で手(殺菌目標物)401(
図4参照)が所定の離間距離範囲180内にあるときに手401が所定の離間距離範囲180内にあることを接触式又は非接触式で検知可能に構成され、第1実施形態では接触式で検知可能に構成されている。所定の離間距離範囲180の離間距離Lは、紫外線出射部50の出射面から奥行き方向D2の前方で紫外線77によって殺菌対象物21を可能とする距離に基づいて設定され、例えば200mm程度であり、好ましくは100mm程度であり、比較的近距離である。
【0044】
パネル40は、紫外線出射部50から出射された紫外線77の出射方向(即ち、奥行き方向D2)で紫外線出射部50の紫外線出射源52と向き合って配置されている。パネル40は、紫外線77を透過可能に構成され、奥行き方向D2で自身よりも後方から入射した紫外線77を通過させ、自身よりも前方に出射する。
【0045】
図2に示すように、パネル40は、奥行き方向D2から見たときに装置ケース30の底壁部31と同様、略矩形状に形成されている。
図1及び
図2に示すように、パネル40は、装置ケース30に形成された開口部36に配置されている。
【0046】
パネル40の対向面41とは反対側の表面44には、手401(
図4参照)を載せる位置を示すガイド71が設けられている。ガイド71は、例えばパネル40の表面44に、手401の凡その輪郭が線で描かれているものである。ガイド71は、縦方向D1においてパネル40の中心よりも下側に配置され、ガイド71に合わせて載せられた手401によってパネル40の下部が良好に押される。言い換えると、ガイド71は、パネル40が押された際に紫外線77が手401に効率良く照射される領域、及びパネル40に外力が加わるのに好適な領域、即ち奥行き方向D2から見たときに後述する復元ばね120に比較的近い領域に配置されている。ガイド71は、手401を載せる好適な位置に手401を誘導するためのものであるから、凹凸で表現されていてもよい。
【0047】
パネル40において紫外線出射部50の紫外線出射源52と奥行き方向D2で向き合っている対向面41の縦方向D1の上端部(第1領域)42と、装置ケース30の側壁部32-1の内側面35-1における奥行き方向D2の前端部(第2領域)37とは、ヒンジ111、112によって接続されている。対向面41の上端部42と内側面35-1の前端部37とは、縦方向D1及び奥行き方向D2の双方に直交する横方向D3に沿って接続されている。ヒンジ111、112は、横方向D3で互いに間隔をあけて配置され、横方向D3に沿って延びている。
【0048】
図1に示すように、パネル40の対向面41において奥行き方向から見たときに上端部42と向かい合う下端部(第3領域)43と装置ケース30において奥行き方向D2でパネル40の下端部43と向かい合う側壁部32-2の上端面(上面において第3領域と向かい合う第4領域)33-2の所定の領域38とは、復元ばね120によって接続されている。復元ばね120の軸線方向は、奥行き方向D2に沿っている。復元ばね120は、パネル40に外力が加わっていない状態において、自然状態を保っている。
【0049】
パネル40は、所定の波長域の紫外線77を透過可能且つ稠密な板材で形成されている。パネル40を構成する板材における紫外線77の透過率は、少なくとも30%以上であり、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。紫外線77に対して前述のような優れた透過率特性を有する板材として、例えば深紫外線透過ガラス(製造元;日本電気硝子株式会社)、紫外線用光学ガラスUVC-200A(製造元;オーエムジー株式会社)や高純度の深紫外対応石英ガラス(製造元株式会社大興製作所)等からなる板材が挙げられる。
【0050】
給電部170は、検知部150で手401が所定の離間距離範囲180内にあることを検知したときに紫外線出射部50に給電し、紫外線出射部50から紫外線77を所定時間出射させる。
【0051】
図3に示すように、マイクロスイッチ100は、装置ケース30内に配置され、スイッチ本体(スイッチ)101と、作動ボタン102と、パネル支持部103と、複数(
図3では3本)の端子104と、を備える。スイッチ本体101は、作動ボタン102が押されたときのみON状態になり、電気信号を制御基板130に出力する。スイッチ本体101は、作動ボタン102が押されていないときにはOFF状態であり、制御信号を出力しない。作動ボタン102は、スイッチ本体101から突出し、物理的に押されるか否かで操作可能である。パネル支持部103は、スイッチ本体101から斜め外方に立ち上がり、作動ボタン102のスイッチ本体101とは反対側を通って直線状に延びている。パネル支持部103の先端部105にはパネル40の対向面41が接している。パネル支持部103を介して作動ボタン102が押されると、スイッチ本体101から端子104を介して制御基板130に通電され、前述の電気信号が出力される。なお、
図1では、マイクロスイッチ100のパネル支持部103は、省略されている。
【0052】
装置ケース30内において、マイクロスイッチ100は、作動ボタン102を奥行き方向D2でパネル支持部103を介してパネル40と向き合わせるように配置されている。パネル40に外力が加わっていない状態において、パネル40は初期位置211にあり、パネル40の下端部43はマイクロスイッチ100のパネル支持部103に接しているが、作動ボタン102には接していない、或いは作動ボタン102にも接してはいるが作動ボタン102を押していない。一方、パネル40に外力が加わり、パネル40がヒンジ111、112を中心として初期位置211よりも奥行き方向D2の後側に移動すると、パネル支持部103が連動し、作動ボタン102が直接、物理的に押される。
【0053】
制御基板130は、装置ケース30内に配置され、マイクロスイッチ100の端子104と接続されている。制御基板130は、微小集積回路或いはマイクロチップ等で構成されている。制御基板130は、端子104からの電気信号を受信した際に、電気信号の受信タイミング及び受信時間の長さに応じて紫外線出射源52に直接通電する。例えば、制御基板130は、マイクロスイッチ100から電気信号を受信し次第、紫外線出射源52に通電する。制御基板130は、マイクロスイッチ100から電気信号を受信しなくなった後、所定時間だけ経過したら紫外線出射源52への通電を停止する。所定時間は、基本的に作動ボタン102が押されている時間を意味するが、作動ボタン102が押されている時間のみに限定されず、例えば作動ボタン102が押されている時間に関係して延長されてもよく、作動ボタン102が一旦押されている状態から押されていない状態に戻った後に短時間延長されてもよい。
【0054】
電源140は、装置ケース30外に配置され、例えばケーブル142を介して制御基板130と電気的に接続されている。電源140は、壁部200内に埋設され、例えばタッチ式殺菌装置11とは別の装置に付属する電源等であってもよい。また、制御基板130が充電式である等、電力を必要としなければ、電源140は省略可能である。
【0055】
次に、
図4を参照し、タッチ式殺菌装置11の作動時の基本動作について説明する。ウィルスや細菌等の殺菌対象物21が付着していると思われる手401(即ち、殺菌目標物22)をパネル40のガイド71に合わせて載せ、パネル40を奥行き方向D2の後方に押し、パネル40に外力を加える。パネル40は、ヒンジ111、112を中心に回動し、初期位置211から
図4に示す作動位置212に移動する。作動位置212に移動したパネル40の下端部43によってマイクロスイッチ100の作動ボタン102が押され、スイッチ本体101がOFF状態からON状態になり、制御基板130に電気信号が送られ、制御基板130からの電流・電圧によって紫外線出射源52が点灯する。
【0056】
点灯した紫外線出射源52から出射された紫外線77は、紫外線出射部50から奥行き方向D2の前方に出射され、殺菌目標物22に付着した殺菌対象物21に当たり、ウィルスや細菌等は不活化され、殺菌対象物21を殺菌する。なお、殺菌中は、手401がパネル40を押してパネル40が作動位置212にあるものとする。
【0057】
手401がパネル40から離れると、パネル40への加力がなくなり、復元力によって復元ばね120が自然状態に戻り、マイクロスイッチ100の作動ボタン102が押されていない状態に戻る。このことによって、マイクロスイッチ100のスイッチ本体101がON状態からOFF状態になり、制御基板130に電気信号が送られ、制御基板130からの電流・電圧によって紫外線出射源52が消灯する。
【0058】
以上説明したように、不図示の建物に設けられ、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11は、上述の紫外線出射部50と、検知部150と、給電部170と、を備える。紫外線出射部50は、200nm以上230nm以下の波長域内の波長を含み、且つ200nm以上230nm以下の波長域外の波長を含まない所定の波長域の紫外線を出射する。検知部150は、前述の建物内で手(殺菌目標物)401が所定の離間距離範囲180内にあるときに手401が所定の離間距離範囲180内にあることを接触式で検知可能に構成されている。給電部170は、検知部150で手401が所定の離間距離範囲180内にあることを検知したときに紫外線出射部50に給電し、紫外線出射部50から紫外線77を所定時間出射させる。
【0059】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、人体の手401が検知部150から所定の離間距離範囲180内にあることが検知されたときに、紫外線出射部から200nm以上230nm以下の波長を有する紫外線77が所定時間だけ出射される。上述のように200nm以上230nm以下の波長を有する紫外線77は、人体に与える影響の小さく、且つウィルスや細菌等の殺菌対象物を不活化させ、手401を殺菌する。したがって、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11を建物において例えば従来衛生面が重視されていたトイレや化粧室等以外のオフィス空間、居室をはじめとする任意の場所や所定の位置に組み込み、所定の離間距離範囲180を日常生活の中で殺菌目標物が殺菌されることを意識せずに又は意図せずに配される位置を含むように設定することによって、日常生活の中で殺菌効果を発揮することができる。
【0060】
上述のように日常生活の中で殺菌目標物が殺菌されることを意識しない又は意図しない行動は、前述のようにオフィス空間、居室をはじめとする任意の場所や建築設備の所定の位置で歩行・走行する、立ち止まる、スイッチやボタンを押す、寝る、座ることを例とするが、特に限定されず、広義には、洗浄、乾燥、殺菌除菌を目的とする行動以外の日常生活の中での行動を広く含む。
【0061】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、検知部150は、紫外線出射部50からの紫外線77の出射方向(
図1等では、奥行き方向D2)の前方の所定の離間距離範囲180内に配置されているパネル40と、パネル40に接続可能(即ち、接触可能)に構成され、パネル40に外力が加わっていない状態の初期位置211から外力が加わった状態の作動位置212に移動した際に接して押される作動ボタン102と、を備える。給電部170は、作動ボタン102が押されたときのみ紫外線出射部50に給電するスイッチ本体101を備える。
【0062】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、パネル40に外力が加わり、パネル40が作動位置212に移動するだけで作動ボタン102が押され、紫外線出射源52に給電され、紫外線出射源52から紫外線77がパネルに向かって出射される。紫外線77は、少なくとも波長222nmを含む所定の波長域の紫外線であり、人体に与える影響の殆どない紫外線である。第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、パネル40に外力が加わったときのみに紫外線出射部50で紫外線77を出射させるための電力が使われるだけで、使用する電力消費量を抑え、誤作動を防止することができる。また、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、パネル40の移動によって紫外線出射源52に直接通電又は切電し、紫外線出射源52の点灯又は消灯を直接操作するので、従来の殺菌装置等のように殺菌目標物22を検知するためのセンサやセンサからの制御信号に応じて紫外線出射源52を作動又は停止させるためのモータ、その他の駆動機構等を備える必要がない。第1実施形態のタッチ式殺菌装置11は、壁部200の形状や厚み等を勘案し、設置環境等に合わせて小型化或いは薄型化を容易に図ることができる。
【0063】
波長222nmの紫外線はウィルスや細菌の不活化に有用であるが、上述した特許文献1の殺菌装置のように、波長222nmの紫外線放射源を用いて照明器具を構成し、常時点灯させると、(1)器具から人体等の殺菌目標物までの距離が数mと長い場合、効率が悪い、(2)電力消費量が多い、等の問題が考えられる。(1)については、紫外線の強さは紫外線放射源と人体等の殺菌目標物との距離の2乗に反比例して小さくなるので、照明器具等のように距離が大きいと殺菌目標物への紫外線の照射量が不足し、ウィルスや細菌の不活化が不十分になる虞があった。(2)については、紫外線の照射領域内に殺菌目標物がない場合であっても点灯すると、電力消費量が膨大になり、且つ電力の無駄が生じる虞があった。また、特許文献1に開示されている装置は、乾燥殺菌が行われる空洞部の比較的近くに配置された紫外線放射源と、空洞部への手指の挿入を検出すると手指検出信号を出力するセンサと、を備える。特許文献1に開示されている装置では、紫外線放射源から放射された紫外線は効率良く手指に照射可能であるが、紫外線放射源の点灯及び消灯以外に、センサ及び駆動モータの作動のために電力を必要とするため、電力消費量を抑えるのは難しい。また、特許文献1に開示されている装置では、筐体内に紫外線放射源に加えてセンサ、駆動モータ等の設置スペース及び手指を配置するための空洞部を確保するため、小型化或いは薄型化が難しい。
【0064】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、上述のように使用する電力消費量を抑え、誤作動を防止すると共に設置環境等に合わせて小型化或いは薄型化を容易に図ることができる。
【0065】
また、従来の照明型の殺菌装置等では、常時点灯している紫外線放射源の近くを通過する細菌やウィルスに紫外線を照射して殺菌していた。それに対し、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11は、感染媒体として他の人体の部位に比べて殺菌対象物21の付着量が多い可能性の高い手401でスイッチ本体101をON状態にし、紫外線77を手401に照射して手401を殺菌できる。
【0066】
また、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、波長222nmの紫外線を用いることによって人体に影響が殆どなく、高い殺菌能力を得ることができる。単なる天井照明で波長222nmの紫外線を応用する提案は既にされているが、照射する殺菌目標物までの距離が数mオーダーと長く、照射強度(即ち、単位面積当たりの紫外線量)が低下してしまう。このことに対し、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、紫外線出射源52の近くまで手401を運んで照射するため、小さな消費電力で済み、エネルギー効率を高めることができる。今後、さらに消費電力が下がれば、制御基板130等のバッテリー駆動も可能になり、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11の可搬性を高めることができる。
【0067】
また、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、スイッチ本体101をON状態にした後に手401でパネル40を押している間という比較的短時間のみ紫外線出射源52が点灯しないため、省エネルギーである。また、紫外線77の照射時間が短いので、人体への影響を極力抑え、皮膚がん等が発生する可能性を極めて低くし、安全性を向上させることができる。
【0068】
また、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、パネル40の表面44にタッチするだけの簡単な操作で紫外線77を殺菌目標物22に照射できると共に、制御基板130を用いて紫外線77の照射時間を微調整及び任意に調整できる。タッチする動作は日常生活の中でも各種センサに対して行っており、多くの人になじみがあるので、違和感がなく、面倒くささを感じにくくし、タッチ習慣及び紫外線77による殺菌を長期にわたり継続させることができる。
【0069】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、パネル40は紫外線77の出射方向(即ち、奥行き方向D2)で紫外線出射部50と向き合って配置されている。第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、互いに対向する紫外線出射部50とパネル40とが紫外線77の出射方向に沿った軸線上に配置されるので、
図1及び
図4に例示するように装置ケース30と組み合わせて平板状の概形を実現し、パネル40が紫外線出射部50と奥行き方向D2で向き合っていない場合に比べて小型化或いは薄型化を容易に図ることができる。
【0070】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、パネル40の表面44に手401を載せてパネル40を紫外線出射源52に向かって押すことによってパネル40に外力が加わる。パネル40の表面44は、紫外線出射部50の紫外線出射源52と向き合っている対向面41とは反対側の表面である。このような第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、パネル40の表面44に手401を載せるというなじみのある動作によってパネル40を紫外線出射源52に向かって押し、別の動作等を必要とせずにパネル40に外力を加えるだけで紫外線出射源52から紫外線77を容易に出射させることができる。
【0071】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、パネル40の表面44に手401を載せる位置を示すガイド71が設けられている。具体的には、ガイド71は、奥行き方向D2から見たときに、紫外線出射部50から出射して手401に照射される紫外線77の照射効率が十分に得られる位置に設けられ、例えばパネル40の表面44の縦方向D1の中央部からやや下部に設けられている。第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、縦方向D1及び横方向D3を含む面方向で紫外線出射源52の近くのパネル40の表面44に手401を当てるので、紫外線77の照射強度を効率良く得ることができる。また、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、パネル40の表面44において外力を加えるのに好適な位置、即ち、外力が加えられた際にパネル40を作動位置212に移動させて作動ボタン102が押される好適な位置にガイド71を設けることによって、手401がパネル40に載せられたときに紫外線出射部50から紫外線77がガイド71を設けない場合に比べて確実に出射させ、ウィルス及び細菌等の殺菌対象物21を不活化し、殺菌目標物22を殺菌できる。
【0072】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、開口部36が形成された装置ケース30を備える。紫外線出射部50は、装置ケース30内に配置されている。パネル40は、装置ケース30に形成された開口部36に配置されている。パネル40において紫外線出射部50と向き合っている対向面41の上端部42と装置ケース30の側壁部32-1の内側面35-1の前端部37とはヒンジ111、112によって接続されている。パネル40の対向面41において奥行き方向D2から見て上端部42と向かい合う下端部43と装置ケース30の側壁部32-2の上端面33-2とが復元ばね120によって接続されている。復元ばね120は、パネル40が初期位置211にある際に自然状態である。
【0073】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、パネル40の下端部43に近い部分に外力を加えて紫外線出射部50に向かって押せば、パネル40がヒンジ111、112を中心として回動して作動位置212に移動し、作動ボタン102が押されてスイッチ本体101がON状態になり、紫外線出射部50の紫外線出射源52に通電されるので、自然な動作で紫外線77を容易に出射させることができる。
【0074】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11は、建物の壁面202に埋め込まれている。第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、一般的な照明や自動ドアのマットと同様に簡単な工事で設置でき照明や自動ドアのスイッチとすることも、竣工後に付加することも容易にできる。そのため、安価で簡単に施工可能な感染症等の対策として普及展開を図ることができる。第1実施形態のタッチ式殺菌装置11は、新築建物だけでなく、既存建物の改修時にも設置できる。新型コロナ禍を受けてオフィス等の居住空間で所謂「3つの密」を解消するためのリフォームや設備改修が進行しているが、出入口や机等の什器備品の交換も行われるため、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11を活用できる。
【0075】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、パネル40は、前述の所定の波長域の紫外線77を透過可能な板材で形成されている。第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、
図4に例示するようにパネル40で紫外線77を透過させ、パネル40の表面44に接する手401及び手401に付着しているウィルスや細菌、或いは手401等からパネル40の表面44に移ったウィルスや細菌に紫外線77を照射し、手401を殺菌できる。
【0076】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、パネル40は、前述の所定の波長域の紫外線77の透過率が30%以上の板材で形成されている。
【0077】
第1実施形態のタッチ式殺菌装置11によれば、紫外線出射部50から出射された紫外線77をパネル40で透過させ、例えば
図4に例示するようにパネル40に外力を加える手401に照射することができる。このことによって、手401を殺菌すると共に、パネル40に接する手401からパネル40に付着したウィルスや細菌等を不活化し、パネル40の表面44を清潔に保つことができる。
【0078】
(第1実施形態の第1変形例)
上述の第1実施形態のタッチ式殺菌装置11では、パネル40は、例えば深紫外線透過ガラス等のように所定の波長域の紫外線77を透過可能且つ稠密な板材で形成されているが、厚み方向(即ち、奥行き方向D2)に沿って貫通孔80が形成された板材で形成されていてもよい。
【0079】
図5から
図8には、パネル40の一部の領域46を拡大した図が示されている。例えば、
図5に示すように、パネル40は、縦方向D1及び横方向D3を含む面内で複数の円形状の貫通孔81が形成されている金属製の板材85(パンチングメタル)で形成されていてもよい。また、
図6に示すように、パネル40は、縦方向D1及び横方向D3を含む面内で複数の六角形状の貫通孔82が形成されている板材85或いはは2方向以上の線材を組み合わせた網材(即ち、メッシュ)で形成されていてもよい。また、
図7に示すように、パネル40は、縦方向D1及び横方向D3を含む面内で複数の長方形状の貫通孔83が形成されている板材85(即ち、グレーチング)で形成されていてもよい。変形例として図示していないが、
図7に例示する複数の貫通孔83は、縦方向D1又は横方向D3において互い違いに形成されていても構わない。さらに、
図8に示すように、パネル40は、縦方向D1及び横方向D3を含む面内で複数の菱形状の貫通孔84が形成されている板材85もしくは2方向の線材を撚り合わせた網材(即ち、ネット)で形成されていてもよい。
【0080】
図5から
図8に例示するパネル40では、板材85が所定の波長域の紫外線77を殆ど透過しない材料で形成されている場合は、表面44における貫通孔81~84の何れかの開口率は、大きい方が好ましく、例えば90%以上であることが好ましい。表面44における貫通孔81~84の開口率は、手401に覆われる複数の貫通孔81~84の何れかを通過して手401に照射され得る紫外線77の照射効率が例えば50%以上得られるように適宜設定されることが好ましい。
図5から
図8に例示するパネル40は、例えば鋼製の板材85に複数の貫通孔81~84の何れかが形成されているパンチングメタル、グレーチングリブ(所謂、補強材)等で形成されている。なお、板材85の素材は、パネル40としたときに少なくとも手401がパネル40を押した際に反力を受け止められれば、特に限定されない。
【0081】
図5から
図8に例示するパネル40の変形例として、パネル40は、複数の貫通孔81~84の何れかが形成されている網(図示略)で構成されていてもよい。網の素材は、鋼や鉄に限定されず、例えばナイロンやガラス繊維である。なお、貫通孔80の奥行き方向D2から見た形状は、貫通孔81~84のように円形状、六角形状、長方形状、菱形状等に限定されず、紫外線77を通過させ且つ板材85や網の強度を適切に保持可能であれば、適宜変更可能である。また、パネル40において、複数の貫通孔80の形状は、全て揃っていてもよく、複数種類の形状で混在してもよい。
【0082】
(第1実施形態のその他の変形例)
上述の第1実施形態のタッチ式殺菌装置11は、建物の壁部200に埋設されているが、手401でパネル40に外力を加えることができれば、建物の側壁をなす壁部200以外の壁部や位置に設けられていてもよい。
【0083】
最近の新型コロナウィルスの主な感染経路は、手を介した接触感染と感染者の咳による飛沫感染であるといわれている。接触感染については、手洗いの敢行やアルコール等での消毒等で対応されている。飛沫感染については、マスクの着用、人との距離を1m以上確保すること等で対応されている。しかしながら、ウィルスは目に見えないだけに、前述の対応を徹底することは難しく、また現状では無意識のうちに手を触れる状況になり易い設備や環境が多く、新型コロナウィルスの感染を封じ込めは難しいと考えられている。
【0084】
特に接触感染については、前述のように無意識のうちに多人数の手が触れる建物の構成要素や設備を介した感染拡大が懸念されているが、このような建物の構成要素や建築設備において手401が触れる部分にパネル40を配置することによって、複数人の手401がパネル40に触れてパネル40に押圧力(外力)が加わる度に手401を殺菌できる。
【0085】
例えば、パネル40がドアノブ(建築設備)や自動ドア(建築設備)のタッチ部分において手指が接する部分がパネル40で構成され、ドアノブやタッチ部分において手指が殆ど接しない部分が装置ケース30を変形させた筐体として構成されていてもよい。或いは、複数人で共有して使用する電話(建築設備)の受話器の手指が接する部分がパネル40で構成され、受話器において手指が殆ど接しない部分が筐体として構成されていてもよい。車両の吊り革(建築設備)の吊り輪において手指が接する部分がパネル40で構成され、吊り輪において手指が殆ど接しない部分が装置ケース30を変形させた筐体として構成されていてもよい。車両やエスカレータの手すり(建築設備)において手指が接する部分がパネル40で構成され、手すりにおいて手指が殆ど接しない部分が筐体として構成されていてもよい。別の変形例としては、例えば、電気スイッチやエレベータ内のボタン、リモートコントローラ、固定電話、携帯電話、券売機等(建築設備)のボタン部分がパネル40として構成され、電気スイッチや各種ボタン部分の周囲のプレート部分やケース部分が筐体として構成されていてもよい。
【0086】
上述の変形例では、例えば奥行き方向D2から見たときに、パネル40の外周部で周方向に間隔をあけて対向面41と装置ケース30(又は、筐体)の底壁部31の表面34とが複数の復元ばね120で接続されていてもよい。奥行き方向D2から見たときに、マイクロスイッチ100のスイッチ本体101が底壁部31の表面34の中心部に配置されていてもよい。作動ボタン102は、奥行き方向D2から見てパネル40の略中央部の対向面41と接触可能に設けられていてもよい。紫外線出射部50は、奥行き方向D2から見て装置ケース30の底壁部31の復元ばね120やマイクロスイッチ100、制御基板130が配置されていない適切な位置に配置されていればよい。
【0087】
他の変形例として、上述の第1実施形態のタッチ式殺菌装置11の装置ケース30は、壁部200と一体であってもよい。つまり、壁部200に装置ケース30に紫外線出射部50等が収容されている凹部と同形状の凹部が直接形成され、凹部内に紫外線出射部50や制御基板130等が収容されていてもよい。また、上述の各構成例において、装置ケース30の側壁部32-1の前端面33-1及び初期位置211のパネル40の表面44が壁部200の壁面202と奥行き方向D2で略直線をなし、壁面202と面一であってもよい。
【0088】
(第2実施形態)
次いで、本発明に係る第2実施形態のタッチ式殺菌装置(殺菌装置)12について説明する。なお、第2実施形態のタッチ式殺菌装置12の説明において、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11と共通する内容については説明を省略する。タッチ式殺菌装置12の構成のうち、タッチ式殺菌装置11と共通する構成には、タッチ式殺菌装置11との構成と同一の符号を付す。
【0089】
タッチ式殺菌装置12は、タッチ式殺菌装置11と同様の構成を備える。但し、
図9に示すように、タッチ式殺菌装置12は、2つのタッチ式殺菌装置12-1、12-2を有する。以下では、2つのタッチ式殺菌装置12-1、12-2に共通する内容について説明する際には、これらをまとめてタッチ式殺菌装置12と記載する。また、
図9では、タッチ式殺菌装置12-1、12-2の構成は互いに同一であるため、タッチ式殺菌装置12-1の構成の詳細の符号は省略されている。
【0090】
タッチ式殺菌装置12の装置ケース30は建物等の床面をなす床部206の一部として床部206と一体に形成されている。即ち、タッチ式殺菌装置12は、建物等の床面をなす床部206に直接設置されている。床部206には、第1実施形態で説明した装置ケース30に紫外線出射部50等が収容されている凹部と同形状の凹部39が形成されている。凹部39の奥行き方向D2の前端部の開口部36に、パネル40が配置されている。
【0091】
タッチ式殺菌装置12のパネル40には、手401を載せる位置を示すガイド71に替えて足(図示略)を載せる位置を示すガイド72が設けられている。ガイド72は、例えばパネル40の表面44に、靴底やスリッパ底の輪郭が線で描かれているものである。ガイド72は、縦方向D1においてパネル40の中心よりもやや下側を中心に配置され、ガイド72に合わせて載せられた足によって靴を介してパネル40が良好に押される。ガイド72は、パネル40が押された際に紫外線77が靴底或いはスリッパ底、足等に効率良く照射される領域、及びパネル40に外力が加わるのに好適な領域、即ち奥行き方向D2から見たときに後述する復元ばね120に比較的近い領域に配置されている。
【0092】
図9に示すように、タッチ式殺菌装置12-1は、例えば建物内のカウンター300の接客対応されている人の位置の床部206に設置されている。タッチ式殺菌装置12-2は、例えば建物内のカウンター300で接客待ちの人(図示略)の立つ位置の床部206に設置されている。カウンター300で接客対応されている人の次に接客対応を待つ人がガイド72に合わせてパネル40上で待つことができる。待つ人がパネル40上に立つと、パネル40が初期位置211から作動位置212に移動し、マイクロスイッチ100の作動ボタン102が押され、スイッチ本体101がOFF状態からON状態になる。スイッチ本体101がON状態になると、紫外線出射源52に通電され、紫外線出射部50から奥行き方向D2の前方に紫外線77が出射され、靴底或いは足等に紫外線77が照射され、殺菌される。
【0093】
以上説明した第2実施形態のタッチ式殺菌装置12は、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11と同様の構成を備え、タッチ式殺菌装置11と同様の効果を奏する。
【0094】
第2実施形態のタッチ式殺菌装置12では、パネル40の表面44に足を載せてパネル40を紫外線出射源52に向かって押すことによってパネル40に外力が加わる。第2実施形態のタッチ式殺菌装置12によれば、パネル40の表面44に足を載せるという自然な動作によってパネル40を紫外線出射源52に向かって押し、別の動作等を必要とせずにパネル40に外力を加えるだけで紫外線出射源52から紫外線77を容易に出射させることができる。
【0095】
第2実施形態のタッチ式殺菌装置12では、パネル40の表面44に足を載せる位置を示すガイド72が設けられている。ガイド72は、奥行き方向D2から見たときに、紫外線出射部50から出射して靴や足に照射される紫外線77の照射効率が十分に得られる位置に設けられている。第2実施形態のタッチ式殺菌装置12によれば、縦方向D1及び横方向D3を含む面方向で紫外線出射源52の近くのパネル40の表面44に足を載せるので、紫外線77の照射強度を効率良く得ることができる。また、第2実施形態のタッチ式殺菌装置12によれば、パネル40の表面44において外力を加えるのに好適な位置(即ち、外力が加えられた際にパネル40を作動位置212に移動させて作動ボタン102が押される好適な位置)にガイド72を設けることによって、足がパネル40に載せられたときに紫外線出射部50から紫外線77がガイド72を設けない場合に比べて確実に出射させ、殺菌対象物21を不活化し、殺菌目標物22を殺菌できる。
【0096】
(第2実施形態の第1変形例)
上述の第2実施形態の変形例のタッチ式殺菌装置13は、
図10に示すように、例えば自動ドア310の通行方向の入口側及び出口側の少なくとも一方の床部206-2に、従来のマット312等に組み込んで設置されていてもよい。タッチ式殺菌装置13は、例えば台車やトランク等の殺菌に有効となる。タッチ式殺菌装置13によれば、自動ドア310の前後のマット312に組み込み、自動ドア310が開くまでの時間を紫外線77の照射時間とすることによって殺菌効果を高めることができる。
【0097】
(第2実施形態の第2変形例)
第2実施形態の別の変形例の複数のタッチ式殺菌装置14-1、14-2、14-3は、
図11に示すように、例えば人の導線上或いは動く歩道等の通路の床部206-3に直接設置されていてもよい。複数のタッチ式殺菌装置14-1、14-2、14-3によれば、パネル40の表面44上を歩行或いは走行すると同時に紫外線出射源52を点灯し、紫外線出射部50から紫外線77を出射させ、通常の歩行動作の中で無理なく紫外線77の照射時間を稼ぎ、複数パネルを通過することでグレーチングの影となり紫外線が照射されなかった面積を減らせるので、足や靴底、キャリーバッグや台車の車輪等を効率良く殺菌できる。
【0098】
(第2実施形態のその他の変形例)
図示していないが、第2実施形態の他の変形例として、第2実施形態のタッチ式殺菌装置12は、浴室の出入口の手前側又は奥側(即ち、脱衣室側又は浴室内側)の床部、或いはプールの出入口の手前側又は奥側(即ち、脱衣室側又はプールサイド側)の床部に設けられていてもよい。また、第2実施形態のタッチ式殺菌装置12は、体重計や身長計において足を載せる領域を含む底板部に設けられていてもよい。これらのように配置したタッチ式殺菌装置12によれば、パネル40の表面44のガイド72に素足を載せると同時に紫外線出射部50から紫外線77を出射させ、自然な動作の中で無理なく紫外線77の照射時間を稼ぎ、浴室やプールに出入りする複数人の足を効率良く殺菌できる。
【0099】
(第3実施形態)
次いで、本発明に係る第3実施形態のタッチ式殺菌装置(殺菌装置)15について説明する。なお、第3実施形態のタッチ式殺菌装置15の説明において、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11と共通する内容については説明を省略する。タッチ式殺菌装置15の構成のうち、タッチ式殺菌装置11と共通する構成には、タッチ式殺菌装置11との構成と同一の符号を付す。
【0100】
タッチ式殺菌装置15は、タッチ式殺菌装置11と同様の構成を備える。但し、
図12に示すように、装置ケース30は建物内の机の天板部220に設けられている。また、紫外線出射部50は、天板部220に設置されたスタンド90の先端部に設けられ、奥行き方向D2で天板部220やパネル40及び装置ケース30よりも前方に配置されている。奥行き方向D2から見たとき、パネル40と紫外線出射部50とが互いに略向き合っている。スタンド90における紫外線出射部50の姿勢を調整可能である。紫外線出射部50において、反射板54は、紫外線出射源52よりも奥行き方向D2の前方に配置されている。奥行き方向D2におけるパネル40と紫外線出射部50との最大離間距離は、例えば200mm以内であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましい。パネル40と紫外線出射部50との最大離間距離が前述の条件を満たすことによって、対向面41に載せる手401に十分な照射強度の紫外線77が照射される。
【0101】
上述のパネル40と紫外線出射部50との姿勢によって、タッチ式殺菌装置15のパネル40の対向面41と表面44は、タッチ式殺菌装置11のパネル40の対向面41と表面44とは逆である。タッチ式殺菌装置15において、装置ケース30の側壁部32-1の前端面33-1及び初期位置211のパネル40の対向面41は、天板部220の上面222と奥行き方向D2で略直線をなし、上面222と略面一である。
【0102】
以上説明した第3実施形態のタッチ式殺菌装置15は、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11と同様の構成を備え、タッチ式殺菌装置11と同様の効果を奏する。
【0103】
第3実施形態のタッチ式殺菌装置15では、パネル40の対向面41に手401を載せてパネル40を紫外線出射源52から離れるように押すことによってパネル40に外力が加わる。第3実施形態のタッチ式殺菌装置15によれば、
図13に示すようにパネル40の対向面41に手401を載せるというなじみのある動作によってパネル40を紫外線出射源52から離れる向きに向かって押し、別の動作等を必要とせずにパネル40に外力を加えるだけで紫外線出射源52から紫外線77を容易に出射させることができる。
【0104】
第3実施形態のタッチ式殺菌装置15では、パネル40において紫外線出射部50と向き合っている対向面41とは反対側の表面44の上端部42と装置ケース30の側壁部32-1の内側面35-1の前端部37とはヒンジ111、112によって接続されている。パネル40の表面44の下端部43と装置ケース30の側壁部32-2の上端面33-2とが復元ばね120によって接続されている。第3実施形態のタッチ式殺菌装置15によれば、パネル40の下端部43に近い部分に外力を加えて紫外線出射部50から離れる位置で僅かに押せば、パネル40がヒンジ111、112を中心として回動して作動位置212に移動し、作動ボタン102が押されてスイッチ本体101がON状態になるので、自然な動作で紫外線77を容易に出射させることができる。
【0105】
以上、本発明に係る好ましい実施形態について詳述した。本発明は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0106】
例えば、パネル40において手401又は足が接する表面44又は対向面41に、ガイド71、72に加えてキャラクター等が描かれていてもよい。このようなパネル40が設けられることによって遊び心が増し、例えば子供でも違和感なく手や足を殺菌できる。
【0107】
例えば、第1実施形態のタッチ式殺菌装置11等を洗面所、室内への出入り口、机やテーブル上に配置し、パネル40にタッチすれば数秒程度で手401を殺菌消毒でき、手間もかからない。パネル40の表面44は透過する紫外線77によって殺菌されるが、表面44に汚れがつくと殺菌消毒の効果が低下する。そのため、表面44はこまめに清掃されることが好ましく、本発明に係るタッチ式殺菌装置は、表面44を備える不図示の清掃機構を備えてもよい。
【0108】
例えば、本発明に係る殺菌装置では、例えば制御基板130等によって、紫外線出射源52が点灯している間、効果音を発してもよい。例えば、ウィルス死滅のイメージ音や動物の鳴き声等、殺菌対象物21や殺菌目標物22を殺菌する数秒間に人を退屈させない音を発してもよい。
【0109】
本発明に係る殺菌装置では、パネル40の装置ケース30への取り付け方として、上述のように1辺に蝶番を設け、且つ向き合う別の辺に復元ばね120を設ける形を例示したが、必ずしもこの形に限定されない。例えば、前述の2辺ともに復元ばね120を設けてもよく、矩形状のパネル40の四隅に復元ばね120を設けてもよい。
【0110】
本発明に係る殺菌装置の検知部は、図示していないが、殺菌目標物が所定の離間距離範囲内にあるときに殺菌目標物が所定の離間距離範囲内にあることを非接触式で検知可能に構成されていてもよい。
【0111】
本発明に係る殺菌装置はパネル40を備え、検知部が所定の離間距離範囲内で殺菌目標物がパネル40の近傍にあるか否かを非接触式で検知し、殺菌目標物がパネル40の近傍にあることを検知したときに検知信号を発信する非接触式センサを備え、前記給電部が前述の検知信号を受信したときのみ紫外線出射部に給電する給電素子を備えてもよい。
【0112】
例えば、本発明に係る殺菌装置のスイッチは、上述のように機械的にON状態-OFF状態の切り替えが可能なマイクロスイッチ100に限定されず、スマートフォンのタッチパネルやSUICAのように近接するだけでON状態にすることができるものであってもよい。このような構成によれば、他人の触れたパネル40等に接触したくない場合に、他人の触れたパネル40に触れずに済む。また、上述の第1実施形態から第3実施形態で説明した各種タッチ式殺菌装置は、作動ボタン102及び復元ばね120を備える接触式の機構に替えて、パネル40の近傍で所定の離間距離範囲180内に手401や足等の殺菌目標物22があることを検知可能な非接触式センサを備えてもよい。
【0113】
例えば、本発明に係る殺菌装置は、建物内を巡回する移動機構(建築設備)やロボット(建築設備)に設けられてもよい。例えば、前述の移動機構やロボットの任意の位置に紫外線出射部が配置され、紫外線が移動機構やロボットの側方外側に出射可能に構成されてもよい。このような移動式の殺菌装置によれば、巡回する進路上に人がいても人に対して与える影響は殆どなく、建物内の壁面や机上に加えて作業中の人や通行する人を殺菌することができる。
【符号の説明】
【0114】
11、12、13、14-1、14-2、14-3、15 タッチ式殺菌装置(殺菌装置)
40 パネル
50 紫外線出射部
77 紫外線
101 スイッチ本体(スイッチ)
102 作動ボタン
150 検知部
170 給電部
180 所定の離間距離範囲