(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026712
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】蓄電セル及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20220203BHJP
H01M 50/60 20210101ALI20220203BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M2/36 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130305
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】磯村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】神谷 亮太
【テーマコード(参考)】
5H023
5H029
【Fターム(参考)】
5H023AA09
5H023AS01
5H023CC01
5H023CC14
5H023CC19
5H023CC27
5H023CC30
5H029AJ15
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK16
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029CJ05
5H029DJ03
5H029DJ07
5H029DJ14
5H029HJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】シール性の低下を抑制することができる蓄電セル及び蓄電装置を提供すること。
【解決手段】蓄電セル10は、第1集電体20を有する正極と、第2集電体21を有する負極と、積層方向Dにおいて第1集電体20及び第2集電体21に溶着するシール部材14と、シール部材14を貫通して延びる筒部材30と、を有する。蓄電セル10は、積層方向Dにおける筒部材30と、第2集電体21と、の間において、筒部材30に密着し、かつ第2集電体21に溶着している溶着補助部材40と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集電体を有する正極と、
第2集電体を有する負極と、
前記正極と前記負極とが重なり合う積層方向において前記第1集電体及び前記第2集電体に溶着するシール部材と、
前記シール部材を貫通して延びる筒部材と、
前記積層方向における前記筒部材と、前記第1集電体及び前記第2集電体のいずれか一方の被溶着集電体と、の間において、前記筒部材に密着し、かつ前記被溶着集電体に溶着している溶着補助部材と、を有することを特徴とする蓄電セル。
【請求項2】
前記溶着補助部材は、前記筒部材と前記シール部材との間に介在するとともに前記シール部材に溶着していることを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記溶着補助部材の材料は、前記シール部材の材料と同じであることを特徴とする請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記筒部材は、前記第1集電体と前記第2集電体と前記シール部材とによって画定される空間の外部から当該空間の内部へ電解液を注入するために用いられ、
前記筒部材は、前記筒部材の前記空間の外部寄りの端部を閉塞する閉塞部と、
前記閉塞部から前記筒部材の軸方向に沿って延びる通路と、を有することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記溶着補助部材は、前記筒部材の軸方向に沿って延びており、前記溶着補助部材の前記積層方向及び前記軸方向と直交する第1方向における寸法は、前記軸方向に沿って前記第1集電体と前記第2集電体と前記シール部材とによって画定される空間の内部から前記空間の外部に近づくに従い変化していることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記シール部材は、前記積層方向において前記筒部材と重なる位置に、前記積層方向に沿って前記被溶着集電体から離れるように凹む凹部を有することを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項7】
前記積層方向への前記凹部の寸法は、前記積層方向への前記筒部材の寸法と前記積層方向への前記溶着補助部材の寸法との和以上であることを特徴とする請求項6に記載の蓄電セル。
【請求項8】
積層された複数の蓄電セルを有し、
前記複数の前記蓄電セルは、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の前記蓄電セルを含む蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セル及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極が積層された積層体と、バイポーラ電極の積層方向に延在する積層体の側面において、電極板の縁部を保持するシール部材としての枠体と、を備える。バイポーラ電極は、集電体としての上述の電極板と、電極板の第1面に位置する正極と、電極板の第2面に位置する負極とを含む。枠体は、電極板の縁部を保持する第1樹脂部と、第1樹脂部の周囲に設けられる第2樹脂部と、を備える。枠体は、隣り合うバイポーラ電極の間をシールしている。枠体は、隣り合うバイポーラ電極間の内部空間から電解液の漏れを抑制する。
【0003】
枠体は、当該枠体内に電解液を注入するための注液口を備える。注液口は、第1樹脂部に設けられた第1開口と、第2樹脂部に設けられた第2開口と、を備える。第1開口は、隣り合うバイポーラ電極間の内部空間及び第2開口と連通する。電解液は、第2開口から第1開口を経由して枠体内に注入される。具体的には、注入装置の供給管の先端を、第2開口を通じて第1開口に位置させ、供給管から第1開口を介して枠体内に電解液を注入する。
【0004】
ところが、枠体内に電解液を注入する際、供給管の先端によって枠体が損傷する虞がある。
そこで、発明者は、筒部材を、集電体(電極板)に予め接合しておき、筒部材に電解液の供給管を挿入して電解液の注入を行うことを考えた。筒部材に供給管を挿入することで、枠体に対する直接の供給管の接触が回避され、枠体の損傷が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、集電体に筒部材を接合した構成において、集電体と筒部材との密着性が低いと、集電体と筒部材との接合箇所におけるシール性が低下する虞がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、シール性の低下を抑制することができる蓄電セル及び蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する蓄電セルは、第1集電体を有する正極と、第2集電体を有する負極と、前記正極と前記負極とが重なり合う積層方向において前記第1集電体及び前記第2集電体に溶着するシール部材と、前記シール部材を貫通して延びる筒部材と、前記積層方向における前記筒部材と、前記第1集電体及び前記第2集電体のいずれか一方の被溶着集電体と、の間において、前記筒部材に密着し、かつ前記被溶着集電体に溶着している溶着補助部材と、を有する。
【0008】
これによれば、溶着補助部材と被溶着集電体とが溶着され、溶着補助部材と被溶着集電体とが密着する。
上記蓄電セルにおいて、前記溶着補助部材は、前記筒部材と前記シール部材との間に介在するとともに前記シール部材に溶着しているとよい。
【0009】
これによれば、溶着補助部材とシール部材とが溶着され、溶着補助部材とシール部材とが密着する。
上記蓄電セルにおいて、前記溶着補助部材の材料は、前記シール部材の材料と同じであるとよい。
【0010】
これによれば、シール部材と溶着補助部材とをより溶着させ易くすることができ、シール部材の材料と溶着補助部材の材料とが異なる場合に比べてシール部材と溶着補助部材とを密着させ易くすることができる。
【0011】
上記蓄電セルにおいて、前記筒部材は、前記第1集電体と前記第2集電体と前記シール部材とによって画定される空間の外部から当該空間の内部へ電解液を注入するために用いられ、前記筒部材は、前記筒部材の前記空間の外部寄りの端部を閉塞する閉塞部と、前記閉塞部から前記筒部材の軸方向に沿って延びる通路と、を有するとよい。
【0012】
これによれば、電解液を空間の内部に注入するために筒部材が用いられるが、閉塞部により、通路を通じて電解液が空間の内部から外部へ洩れ出ることを防止できる。
上記蓄電セルにおいて、前記溶着補助部材は、前記筒部材の軸方向に沿って延びており、前記溶着補助部材の前記積層方向及び前記軸方向と直交する第1方向における寸法は、前記軸方向に沿って前記第1集電体と前記第2集電体と前記シール部材とによって画定される空間の内部から前記空間の外部に近づくに従い変化しているとよい。
【0013】
例えば、蓄電セルの内圧が上昇し、上昇した内圧が溶着補助部材に作用すると、溶着補助部材が、蓄電セルの外部に向けて押圧される。溶着補助部材を押圧する力は、軸方向に作用する。突出部は、軸方向に直交する第1方向に突出している。そして、突出部の第1方向への寸法は、軸方向に沿って変化する形状である。このため、溶着補助部材とシール部材との界面が、軸方向に沿って延びる場合と比べると界面の長さを長くでき、溶着補助部材とシール部材との界面での応力集中を緩和することができる。
【0014】
上記蓄電セルにおいて、前記シール部材は、前記積層方向において前記筒部材と重なる位置に、前記積層方向に沿って前記被溶着集電体から離れるように凹む凹部を有するとよい。
【0015】
これによれば、凹部を有しない場合に比べて、積層方向への凹部の寸法の分だけ蓄電セルの厚みが厚くなることを抑制することができる。
上記蓄電セルにおいて、前記積層方向への前記凹部の寸法は、前記積層方向への前記筒部材の寸法と前記積層方向への前記溶着補助部材の寸法との和以上であるとよい。
【0016】
これによれば、筒部材及び溶着補助部材を配置した箇所が局所的に厚くなることを抑制することができる。
上記課題を解決する蓄電装置は、積層された複数の蓄電セルを有し、前記複数の前記蓄電セルは、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の前記蓄電セルを含む。
【0017】
これによれば、積層された複数の蓄電セルについて、溶着補助部材と被溶着集電体とが溶着され、溶着補助部材と被溶着集電体とが密着する。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、シール性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図6】別の実施形態における蓄電セルの一部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、蓄電セル及び蓄電装置を具体化した一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。
図1に示すように、蓄電装置1は、複数の蓄電セル10を積層したセルスタック2を含んで構成されている。蓄電セル10が積層される方向を積層方向Dとする。蓄電セル10は、正極11と、負極12と、セパレータ13と、シール部材14とを備える。正極11は、第1集電体20と、第1集電体20の第1面20aに位置する正極活物質層22と、を有する。正極11は、例えば矩形状の電極である。負極12は、第2集電体21と、第2集電体21の第1面21aに位置する負極活物質層23と、を有する。負極12は、例えば矩形状の電極である。正極11の第1面20aと負極12の第1面21aとは積層方向Dに対向する。つまり、正極11と負極12は重なり合っている。正極11と負極12が重なり合う積層方向は、蓄電セル10の積層方向Dと一致する。負極活物質層23は、セパレータ13を介して正極活物質層22と対向するように配置されている。正極活物質層22及び負極活物質層23は、それぞれ矩形状に形成されている。負極活物質層23は、正極活物質層22よりも一回り大きく形成されている。積層方向Dから見た平面視において、正極活物質層22の形成領域の全体が、負極活物質層23の形成領域の内側に位置している。
【0021】
第1集電体20は、第1面20aとは反対側の面である第2面20bを有する。第2面20bには、正極活物質層22が形成されていない。第1集電体20の第2面20bと第2集電体21の第2面21bとが互いに接するように、蓄電セル10がスタックされることによってセルスタック2が構成される。これにより、複数の蓄電セル10が電気的に直列に接続される。セルスタック2では、隣り合う蓄電セル10により互いに接する第1集電体20及び第2集電体21を電極体とする疑似的なバイポーラ電極3が形成される。すなわち、1つのバイポーラ電極3は、第1集電体20、第2集電体21、正極活物質層22、及び負極活物質層23を含む。
【0022】
蓄電装置1における積層方向Dの第1端部6には、終端電極として第1集電体20が配置される。蓄電装置1における積層方向Dの第2端部7には、終端電極として第2集電体21が配置される。
【0023】
蓄電装置1は、積層方向Dにおいてセルスタック2を挟むように配置された、正極通電板60及び負極通電板70からなる一対の通電体を備える。正極通電板60及び負極通電板70は、それぞれ両導電性材料で構成される。正極通電板60は、積層方向Dの第1端部6において最も外側に配置された第1集電体20に電気的に接続される。負極通電板70は、積層方向Dの第2端部7において最も外側に配置された第2集電体21に電気的に接続される。正極通電板60及び負極通電板70のそれぞれに設けられた端子を通じて蓄電装置1の充放電が行われる。正極通電板60及び負極通電板70のそれぞれを構成する材料としては、第1集電体20及び第2集電体21を構成する材料と同じを用いることができる。正極通電板60及び負極通電板70のそれぞれは、セルスタック2に用いられた第1集電体20及び第2集電体21よりも厚い金属板で構成してもよい。
【0024】
第1集電体20及び第2集電体21は、化学的に不活性な電気伝導体である。第1集電体20及び第2集電体21を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。第1集電体20及び第2集電体21は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。第1集電体20及び第2集電体21の表面に、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。第1集電体20及び第2集電体21は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。第1集電体20及び第2集電体21を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、又はステンレス鋼箔等を用いることができる。第1集電体20及び第2集電体21としてステンレス鋼箔を用いる場合、例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等を用いると、第1集電体20及び第2集電体21の機械的強度を確保することができる。第1集電体20及び第2集電体21は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。本実施形態において、第1集電体20はアルミニウム箔であり、第2集電体21は銅箔である。第1集電体20及び第2集電体21は、箔状である場合、厚みを例えば、1μm~100μmとすればよい。
【0025】
正極活物質層22は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態において、正極活物質層22は複合活物質としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を含む。
【0026】
負極活物質層23は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金、又は、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)又はソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)が挙げられる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態において、負極活物質層23は炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0027】
正極活物質層22及び負極活物質層23のそれぞれは、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助材、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。活物質層に含まれる成分又は成分の配合比及び活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての公知の知見が適宜参照され得る。活物質層の厚みは、例えば2μm~150μmである。第1集電体20及び第2集電体21の表面に活物質層を形成させるために、ロールコート法等の公知の方法を用いてもよい。正極11又は負極12の熱安定性を向上させるために、第1集電体20及び第2集電体21の表面(片面又は両面)又は正極活物質層22及び負極活物質層23の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば、無機粒子と結着剤とを含み、その他に増粘剤等の添加剤を含んでもよい。
【0028】
導電助剤は、正極11又は負極12の導電性を高めるために添付される。導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン―ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン―アクリル酸グラフト重合体が挙げられる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒としては、例えば、水、N―メチル―2―ピロドリン(NMP)等が用いられる。
【0029】
セパレータ13は、正極11と負極12との間に配置されている。セパレータ13は、正極11と負極12とを隔離することで両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる。
【0030】
セパレータ13は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であってもよい。セパレータ13を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。セパレータ13は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。セパレータ13には、電解質が含浸されてもよく、セパレータ13自体を高分子ゲル電解質又は電解質等の電解質で構成してもよい。
【0031】
セパレータ13に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質等が挙げられる。
【0032】
セパレータ13に電解液が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO4、LiAsF6LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
シール部材14は、第1集電体20と第2集電体21との間に位置する。シール部材14は、第1集電体20及び第2集電体21に溶着される。シール部材14は、絶縁材料を含み、第1集電体20と第2集電体21との間を絶縁することによって短絡を防止する。本実施形態では、シール部材14の材料は酸変性ポリエチレンである。なお、シール部材14の材料は、酸変性ポリプロピレンであってもよい。
【0034】
シール部材14は、第1集電体20の縁部20e及び第2集電体21の縁部21eに沿って延在する。積層方向Dに沿って外側から蓄電セル10を見た平面視において、シール部材14は、正極活物質層22の周囲を取り囲む矩形枠状である。積層方向Dにおけるシール部材14と第1集電体20との間に、セパレータ13の縁部が挟み込まれている。
【0035】
シール部材14は、正極11と負極12とシール部材14とによって画定される空間Sを封止する。シール部材14は、空間Sに収容された電解液の外部への透過を抑制する。また、シール部材14は、外部から空間S内への水分の侵入を抑制する。本実施形態では、各蓄電セル10に配置されるシール部材14は、積層方向Dにおける第1集電体20と第2集電体21との間に配置される部分と、第1集電体20の縁部20e及び第2集電体21の縁部21eよりも外側に延びる部分と、を有する。これにより、積層方向Dに隣り合うシール部材14の外側に延びる部分同士が接合されて一体化している。蓄電セル10は、複数のシール部材14が一体化された封止体14aを有する。
【0036】
図2、
図3又は
図4に示すように、筒部材30を軸方向に沿って外側から見た軸方向視において、筒部材30は偏平形状である。筒部材30の軸方向視において偏平の長手が延びる方向を第1延在方向Aとし、第1延在方向Aと直交する方向を第2延在方向Bとする。第2延在方向Bは積層方向Dと同じ方向である。第1延在方向Aへの筒部材30の寸法は、第2延在方向Bへの筒部材30の寸法より長い。
【0037】
筒部材30は、通路31と、閉塞部32と、を有する。筒部材30の軸方向における、空間Sの外部寄りの第1端部30aは、シール部材14の外側の端面141よりも外側に位置する。筒部材30の第1端部30aは、閉塞部32によって閉塞されている。なお、閉塞部32は、筒部材30の第1端部30aが熱によって溶着されることにより形成されている。閉塞部32は、シール部材14よりも外部寄りにおいて通路31を閉塞している。筒部材30の軸方向における、第1端部30aと反対側の第2端部30bは、シール部材14の内側の端面140よりも内側に位置する。筒部材30の第2端部30bは、空間Sに向けて開口している。通路31は、閉塞部32から空間Sの内部に向かってシール部材14を第1延在方向A及び第2延在方向B(積層方向D)と交差する方向である筒部材30の軸方向Xに貫通して設けられている。すなわち、通路31は、筒部材30の軸方向に沿って延びている。
【0038】
筒部材30の第2端部30b寄りの一部分は、積層方向Dにおける第2集電体21と第1集電体20との間に位置する。したがって、筒部材30の第2端部30b寄りの一部は、積層方向Dから見て第1集電体20及び第2集電体21と重なり合う。筒部材30の第2端部30bは、シール部材14の内周面において開口している。積層方向Dに沿って外側から蓄電セル10を見た平面視において、筒部材30の第1端部30a寄りの残りの部分は、蓄電セル10の外部に位置している。
【0039】
蓄電セル10は、積層方向Dにおける筒部材30と第2集電体21との間に溶着補助部材40を有する。蓄電セル10は軸方向視において筒部材30を取り囲む態様に溶着補助部材40を有していてもよい。溶着補助部材40は、筒部材30とシール部材14との間に介在する。シール部材14と溶着補助部材40は互いに溶着している。溶着補助部材40の材料は、シール部材14の材料と同じであるのが好ましい。したがって、シール部材14の材料が酸変性ポリエチレンであれば、溶着補助部材40の材料は酸変性ポリエチレンが用いられ、シール部材14の材料が酸変性ポリプロピレンであれば、溶着補助部材40の材料は、酸変性ポリプロピレンが用いられる。
【0040】
図4又は
図5に示すように、溶着補助部材40を軸方向Xに沿って外側から見た軸方向視において、溶着補助部材40は偏平形状である。溶着補助部材40の軸方向視において、筒部材30の第1延在方向Aと同じ方向を第1方向Yとし、第1方向Yに直交する方向を第2方向Zとする。第2方向Zは、積層方向Dと同じ方向である。第1方向Yへの溶着補助部材40の寸法は、第2方向Zへの溶着補助部材40の寸法より長い。
【0041】
溶着補助部材40は、第1方向Yにおいて筒部材30の外面から突出する突出部41を有する。なお、溶着補助部材40は、軸方向視において筒部材30の外面に沿う延在部42を有する。延在部42は、第2方向Zに筒部材30を挟む部位である。突出部41は、延在部42の第1方向Y両側から突出する部位である。第1方向Yにおける突出部41の寸法L1は、空間Sの内部から外部に近づくに従い長くなっている。つまり、蓄電セル10を積層方向Dの外側から見た平面視において、溶着補助部材40は、突出部41の第1方向Yの先端に傾斜している部分を有する。したがって、第1方向Yにおける溶着補助部材40とシール部材14との界面は、上記平面視において軸方向Xに対して傾斜しているといえる。
【0042】
図示しないが、溶着補助部材40は、帯状の前駆体を加熱して形成されている。帯状の前駆体の両端を溶着して無端状にするとともに、前駆体を筒部材30の外面に溶着して一体化した状態とする。そして、前駆体を第2集電体21の第1面21aに載せ、第2集電体21と第1集電体20との間にシール部材14を介在させた状態で第1集電体20及び第2集電体21とシール部材14とを溶着する際、前駆体の内面は筒部材30に溶着される。また、前駆体の外面のうち、第2集電体21の第1面21aに対面する部分は第1面21aに溶着され、その他の部位はシール部材14に溶着される。
【0043】
したがって、一対の延在部42の内面は筒部材30の外面に溶着されている。一対の延在部42のうち、第2集電体21の第1面21aに対面する一方の延在部42の外面は第2集電体21に溶着され、他方の延在部42の外面はシール部材14に溶着されている。また、突出部41において第2方向Zに対面する部分は互いに溶着されている。突出部41において、第2集電体21の第1面21aに対面する外面は第2集電体21に溶着され、その他の外面はシール部材14に溶着されている。また、第1方向Yにおける突出部41の外面もシール部材14に溶着されている。溶着補助部材40は、筒部材30と、被溶着集電体としての第2集電体21と、の間において、筒部材30に密着し、かつ第2集電体21に溶着している。
【0044】
溶着補助部材40は、軸方向Xにおいて、筒部材30の第1端部30aと第2端部30bとの間に配置されており、シール部材14の内側の端面140から、第2集電体21の外側の端面210にわたって配置されている。筒部材30及び溶着補助部材40を配置した箇所における蓄電セル10の積層方向Dの寸法を寸法L2とする。寸法L2は、第1集電体20の最外面200から第2集電体21の最外面211までの長さを指す。寸法L2は、筒部材30及び溶着補助部材40を配置していない箇所よりも厚くなっている。
【0045】
第2延在方向Bの筒部材30の寸法と、第2方向Zへの溶着補助部材40の寸法との和を、積層寸法L3とする。また、シール部材14において、筒部材30及び溶着補助部材40を配置していない箇所における積層方向Dの寸法をシール寸法L4とする。寸法L2は、積層寸法L3とシール寸法L4の和である。
【0046】
本実施形態では、筒部材30は、電解液を注入するために用いられる。筒部材30は、通路31と、閉塞部32と、を有している。通路31は、周壁31aにより形成されている。閉塞部32は、通路31の第1端部30aの開口を閉塞する。
【0047】
次に、本実施形態の作用について説明する。
蓄電セル10は、溶着補助部材40を備える。溶着補助部材40と第2集電体21とが溶着されて溶着補助部材40と第2集電体21とが密着している。また、溶着補助部材40は、筒部材30とシール部材14との間に介在するとともにシール部材14に溶着している。
【0048】
本実施形態では、以下の効果を得ることができる。
(1)蓄電セル10は、溶着補助部材40を備えるため、溶着補助部材40と第2集電体21とが溶着され、溶着補助部材40と第2集電体21とが密着する。したがって、第2集電体21に対し、溶着補助部材40を介して筒部材30を接合した構成において、当該接合箇所のシール性が低下せず、蓄電セル10のシール性の低下を抑制することができる。
【0049】
(2)溶着補助部材40は、筒部材30を囲むとともに、筒部材30とシール部材14との間に介在する。そして、溶着補助部材40の外面はシール部材14にも溶着している。このため、溶着補助部材40とシール部材14とが密着する。その結果、溶着補助部材40とシール部材14との間のシール性の低下を抑制できる。
【0050】
(3)溶着補助部材40の材料は、シール部材14の材料と同じであるため、シール部材14と溶着補助部材40とをより溶着させ易くすることができ、シール部材14の材料と溶着補助部材40の材料とが異なる場合に比べてシール部材14と溶着補助部材40とを密着させ易くすることができる。したがって、蓄電セル10のシール性の低下をさらに抑制することができる。
【0051】
(4)筒部材30は、通路31と、閉塞部32と、を有する。閉塞部32により、通路31を通じて電解液が空間Sの内部から外部へ漏れ出ることを防止できる。
(5)溶着補助部材40は、第1方向Yにおいて筒部材30から突出する突出部41を有し、第1方向Yへの突出部41の形状は、突出部41の寸法が軸方向Xに沿って空間Sの内部から外部に近づくに従い長くなる形状である。例えば、蓄電セル10の内圧が溶着補助部材40に作用すると、溶着補助部材40が、蓄電セル10の外部に向けて押圧される。突出部41の寸法が軸方向Xに沿って変化する形状であることにより、溶着補助部材40とシール部材14との界面での応力集中を緩和することができる。したがって、溶着補助部材40とシール部材14との界面が裂けることを抑制することができる。
【0052】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
○
図6に示すように、シール部材14は、積層方向Dにおいて筒部材30と重なる位置に、積層方向Dに沿って第2集電体21から離れるように凹む凹部43を有してもよい。積層方向Dにおける凹部43の寸法は、第2延在方向Bの筒部材30の寸法と、第2方向Zへの溶着補助部材40の寸法との和と同じである。第2方向Zへの溶着補助部材40の寸法は、第2方向Zにおける筒部材30の両側に位置する延在部42の第2方向Zへの寸法である。これにより、積層方向Dへの凹部43の寸法の分だけ蓄電セル10の厚みが厚くなることを抑制することができる。また、蓄電セル10は、積層方向Dに筒部材30及び溶着補助部材40が重なる位置が局所的に厚くなることを抑制することができる。なお、積層方向Dへの凹部43の寸法は、特に限定されるものではなく、積層方向Dへの筒部材30の寸法と積層方向Dへの溶着補助部材40の寸法との和以上であってもよいし、それ以下であってもよい。例えば、積層方向Dへの凹部43の寸法は、第2延在方向Bへの筒部材30の寸法と同じにしてもよい。
【0054】
○ 凹部43を有する一体のシール部材14を用いる必要はなく、積層方向Dへの寸法が異なる複数のシール部材を用いることによって、凹部43を有するシール部材14としてもよい。
【0055】
○ 実施形態において、溶着補助部材40の突出部41の形状は、突出部41の第1方向Yへの寸法が軸方向Xに沿って空間Sの内部から外部に近づくに従い長くなるように、蓄電セル10を積層方向Dの外側から見た平面視において傾斜する形状であったが、これに限らない。例えば、突出部41の第1方向Yへの寸法が軸方向Xに沿って空間Sの内部から外部に近づくに従い短くなるように、蓄電セル10を積層方向Dの外側から見た平面視において傾斜する形状であってもよい。また、突出部41の第1方向Yへの寸法が軸方向Xに沿って空間Sの内部から外部に近づくに従い短くなるように、蓄電セル10を積層方向Dの外側から見た平面視において湾曲する形状であってもよい。さらに、突出部41の第1方向Yへの寸法が軸方向Xに沿って空間Sの内部から外部に近づくに従い変化するように、蓄電セル10を積層方向Dの外側から見た平面視において複数回傾斜する形状であってもよい。要は、突出部41の形状は、突出部41の第1方向Yへの寸法が軸方向Xに沿って空間Sの内部から外部に近づくに従い変化する形状であればよい。
【0056】
○ 溶着補助部材40は突出部41を有さなくてもよい。この場合、溶着補助部材40は筒部材30を覆う程度に設けられていればよい。
○ 実施形態において、シール部材14に、セパレータ13の縁部13aが埋設されていてもよい。
【0057】
○ 実施形態において、第2集電体21が、溶着補助部材40が溶着される被溶着集電体であったが、第1集電体20が、溶着補助部材40が溶着される被溶着集電体であってもよい。
【0058】
○ 実施形態において、筒部材30は、電解液を注入するために用いられたが、空間Sの内部から外部へ気体を排出するためにも用いられてもよい。
○ 溶着補助部材40は、筒部材30を囲んでおらず、シール部材14に溶着されていなくてもよい。具体的には、溶着補助部材40は、積層方向Dにおける筒部材30と被接合集電体との間のみに位置していてもよい。この場合、筒部材30の外面のうち、被接合集電体寄りの外面は溶着補助部材40に溶着される。また、筒部材30の外面のうち、溶着補助部材40に溶着されていない外面は、シール部材14に溶着される。
【0059】
○ 溶着補助部材40は、シール部材14の内側の端面140からシール部材14の外側の端面141にわたって設けられていてもよい。
○ 実施形態において、筒部材30の通路31は、シール部材14を貫通する長さに形成されているが、シール部材14を貫通しない長さに形成されていてもよい。例えば、シール部材14の外側の端面141と、筒部材30の第1端部30a(閉塞部32の外側の端面)とが一致するように形成され、通路31はシール部材14の途中まで貫通するように形成されていてもよい。この場合も、筒部材30は、シール部材14を貫通して延びているとともに、通路31は、筒部材30の軸方向Xに沿って延びている。
【符号の説明】
【0060】
1…蓄電装置、10…蓄電セル、11…正極、12…負極、14…シール部材、15…、20…第1集電体、21…第2集電体、30…筒部材、31…通路、32…閉塞部、40…溶着補助部材、41…突出部、43…凹部、D…積層方向、L1…寸法、L2…寸法、L3…寸法、L4…寸法、S…空間、X…軸方向、Y…第1方向。