IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体用紙容器 図1
  • 特開-液体用紙容器 図2
  • 特開-液体用紙容器 図3
  • 特開-液体用紙容器 図4
  • 特開-液体用紙容器 図5
  • 特開-液体用紙容器 図6
  • 特開-液体用紙容器 図7
  • 特開-液体用紙容器 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026737
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】液体用紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/40 20060101AFI20220203BHJP
   B65D 5/74 20060101ALI20220203BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B65D5/40
B65D5/74 020Z
B65D77/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130338
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規行
【テーマコード(参考)】
3E060
3E067
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB04
3E060BA02
3E060BC01
3E060CF06
3E060CF12
3E060CG12
3E060DA21
3E060EA03
3E060EA14
3E067AA03
3E067AB83
3E067AC01
3E067BA06A
3E067BA32A
3E067BB01A
3E067BB25A
3E067BC06A
3E067CA07
3E067DA04
3E067EA04
3E067EB15
3E067EB22
3E067EB32
3E067ED15
3E067FA01
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】浴室等の水に濡れる場所に配備して使用する紙製容器であって、さまざまな高さから水を掛けられても紙端面に水分が浸透しにくい液体用紙容器を提供すること。
【解決手段】紙の表面及び裏面に防水性被膜を積層した積層体を包装基材10とし、この包装基材を成型して液体用紙容器1を構成する。そして、この液体用紙容器1は天面2に注出孔5を有し、この注出孔5の周囲に露出した紙端面5aのうち最も低い部位を紙端面最下部5a、前記天面2の外周2aのうち最も低い部位を外周最下部2aとして、紙端面最下部5aが外周最下部2aより1mm以上高い位置にあるように構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙の表面及び裏面に防水性被膜を積層した積層体を包装基材とし、この包装基材を成型して構成された液体用紙容器であって、
天面に注出孔を有し、この注出孔の周囲に露出した紙端面のうち最も低い部位を紙端面最下部、前記天面の外周のうち最も低い部位を外周最下部として、紙端面最下部が外周最下部より1mm以上高い位置にあることを特徴とする液体用紙容器。
【請求項2】
前記紙端面最下部が前記外周最下部より2.5mm以上高い位置にあることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器。
【請求項3】
前記紙端面最下部の高さと前記外周最下部の高さとの差が20mm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体用紙容器。
【請求項4】
前記注出孔の周囲が型押しされており、この型押しされた領域がその周囲より高い位置にあることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液体用紙容器。
【請求項5】
前記注出孔に口栓又はディスペンサーポンプが装着されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体用紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用紙容器に関し、特に浴室等の水に濡れた場所でも長期間使用することができる液体用紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来シャンプーやリンスなどの容器としては、ある程度の剛性を持ったプラスチック製のボトル容器が一般的に使用されていた。これらの容器は浴室内など水に濡れる環境に長期間置かれることが多く、仮に紙基材を使用した紙製容器を使用すると、その紙端面から水分が浸透するからである。
【0003】
特許文献1は、このように浴室内などで使用する紙製容器を提案している。この特許文献1に記載の紙製容器では、底面から高さ3mm以内の範囲に紙の端面が存在していない。このため、水に濡れる場所に置いても紙端面から水分が浸透することがないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-135102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように浴室等に配備する容器は、その底部が水に濡れるばかりではない。例えばシャワー等により、上から水が掛るということもあるのである。
【0006】
特許文献1に記載の容器は、底部近傍に紙端面が露出していないが、このようにさまざまな高さから水を掛けられる浴室等にあっては、その紙端面からの水分の浸透を防ぐことは困難であった。
【0007】
本発明はこのような技術的背景に基づいてなされたもので、浴室等の水に濡れる場所に配備して使用する紙製容器であって、さまざまな高さから水を掛けられても紙端面に水分が浸透しにくい液体用紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、紙の表面及び裏面に防水性被膜を積層した積層体を包装基材とし、この包装基材を成型して構成された液体用紙容器であって、
天面に注出孔を有し、この注出孔の周囲に露出した紙端面のうち最も低い部位を紙端面最下部、前記天面の外周のうち最も低い部位を外周最下部として、紙端面最下部が外周最下部より1mm以上高い位置にあることを特徴とする液体用紙容器である。
【0009】
次に、請求項2に記載の発明は、前記紙端面最下部が前記外周最下部より2.5mm以上高い位置にあることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器である。
【0010】
次に、請求項3に記載の発明は、前記紙端面最下部の高さと前記外周最下部の高さとの差が20mm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体用紙容器である。
【0011】
次に、請求項4に記載の発明は、前記注出孔の周囲が型押しされており、この型押しされた領域がその周囲より高い位置にあることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液体用紙容器である。
【0012】
次に、請求項5に記載の発明は、前記注出孔に口栓又はディスペンサーポンプが装着されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙端面最下部が外周最下部より1mm以上高い位置にあるため、後述する実施例から分かるように、浴室等の水に濡れる場所に配備し、その自然な使用方法に伴い、さまざまな高さから水を掛けるように使用されても、その紙端面から水分が浸透しにくいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の液体用紙容器の具体例に係り、その包装基材の断面説明図である。
図2図2は本発明の液体用紙容器の第1の具体例に係り、そのブランクの平面説明図である。
図3図3は本発明の液体用紙容器の第1の具体例を示す説明用斜視図である。
図4図4図3のX-X線における要部断面説明図である。
図5図5は本発明の液体用紙容器の第2の具体例に係り、図5(a)はそのブランクの平面説明図、図5(b)は要部断面説明図である。
図6図6は発明の液体用紙容器の第2の具体例における要部断面説明図である。
図7図7は比較例における要部断面説明図である。
図8図8は比較例における要部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、紙の表面及び裏面に防水性被膜を積層した積層体を包装基材とし、この包装基材を成型して構成された液体用紙容器である。図1は、この積層体(包装基材)の例を示す断面説明図である。
【0016】
この例では、包装基材10は、紙12の表面に表面合成樹脂フィルム11と裏面合成樹脂フィルム16とを備え、さらに紙12と裏面合成樹脂フィルム16の間にバリア層14を備え、紙12とバリア層14を接着させるためのポリオレフィン樹脂層13と、バリア層14と裏面合成樹脂フィルム16を接着させるための接着剤層15を備えている。紙12の表面に積層された表面合成樹脂フィルム11は防水性を有しており、また、紙12の裏面に積層されたポリオレフィン樹脂層13、バリア層14及び裏面合成樹脂フィルム16も防水性を有している。また、接着剤層15も防水性を有している。なお、この例では、表面合成樹脂フィルム11の上にインキ17による印刷が施されている。
【0017】
紙12としては、ミルクカートン原紙、カード原紙、各種ボール紙などの厚紙を用いることができる。紙としては坪量200g/m~500g/m、密度0.6g/cm~1.1g/cm程度が適当である。
【0018】
表面の合成樹脂フィルムとしては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が好ましい。紙12の表面に押し出してラミネートすることができる。印刷時のインキの密着性を向上させるために押し出し面にコロナ処理を施すと良い。
【0019】
バリア層14を用いる場合には、内容物の揮散が防止され、紙容器としての保存性や耐久性が向上する。バリア層14としては、アルミニウム箔の他、アルミナ、シリカ、アルミニウム等を蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)が好適に用いられる。蒸着層の厚さとしては、5nm~100nm、PETフィルムとしては、厚さ6~2
5μm程度が好ましい。アルミニウム箔を用いる場合であれば、厚さ5~15μm程度が好ましい。
【0020】
紙12と、バリア層14を含む内層フィルムの接着方法として、この例では接着樹脂層13が用いられている。この目的に用いる材質としては、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレンメタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、エチレンアクリル酸共重合体樹脂(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレン樹脂(PP)等が使用可能である。
【0021】
接着樹脂層13の厚さとしては、10μm~60μmが好ましい。10μm未満では、一般的に十分な強度が得られない。接着強度を向上させるために接着しようとする紙面やフィルム面にコロナ処理、オゾン処理、アンカーコート処理を行っても良い。
【0022】
裏面合成樹脂フィルム16は、一般的にシーラント層と呼ばれる層であり、HDPE、LDPE、MDPE、LLDPEが使用可能であるが、LLDPEが最も好ましい。特に密度0.925以下、メルトインデックス4以上のものが良い。一部ポリブテンを含む層があってもよい。裏面合成樹脂フィルム16の厚さとしては、30μm~100μmが適当であり、Tダイ法やインフレーション法によって製膜される。
【0023】
バリア層14と裏面合成樹脂フィルム16は、予め貼り合せて内装フィルムとしてもよい。この場合の貼り合せ方法としては、ドライラミネート用接着剤やノンソルラミネート用接着剤を使用する。接着剤の塗布量としては、0.5~7.0g/mとする。バリア層14と裏面合成樹脂フィルム16は、先に述べた接着樹脂層を用いて押出し加工によって貼り合せてもよい。
【0024】
表裏面の熱可塑性樹脂フィルムは、単層に限らず、複数の層から構成されても良いが、紙容器を成形する際に、加熱して溶着することが可能なように、最表面の材質と最裏面の材質とは同じか類似の材質であることが望ましい。
【0025】
次に、図2は、この包装基材10で構成した液体用紙容器1の第1の具体例に係り、そのブランク20を示すもので、このブランク20を表面側(外面側)から見た状態を示している。図中点線は山折罫線を、また一点鎖線は谷折罫線を示している。
【0026】
図示のように、このブランク20は天面板21を有している。そして、この天面板21から山折罫線を介して側面板22、底面板24、側面板23、糊代41が連設されている。正面板21の左右には、山折罫線を介して側面矩形版37、38が連設され、底面板24の左右には、山折罫線を介して側面矩形版39、40が連設されている。
【0027】
側面板22、23には、それぞれ左右に側面三角板25、26と27、28が谷折罫線を介して連設されている。側面三角板25~28の側面板に接しない各辺には側面折込板29~36がいずれも山折罫線を介して連設されている。
【0028】
側面折込板31、33と側面矩形版39には、側面糊代42が谷折罫線を介して連設されており、側面折込板32、34と側面矩形版40には、側面糊代43が谷折罫線を介して連設されている。
【0029】
ところで、天面板21には注出孔5が設けられており、この注出孔には口栓6が装着されている。なお、口栓6の代わりにディスペンサーポンプを装着したものであってもよい。
【0030】
このブランクから液体用紙容器1を成形するには、まず、垂直方向の罫線をすべて山折りして、糊代41を天面板21、側面矩形版37、38の裏面に熱シールし、四角柱状にする。次いで側面糊代42部分を相対する側面矩形板37、側面折込板29、35と合掌させて熱シールする。側面三角板25、27の外周の罫線がすべて山折りになるように折畳んで熱シールし、折込側面を成型する。次に反対側の側面糊代43についても同様に成形して、折込側面を形成する。図3はこうして成型された液体用紙容器1を示している。図3中、符号2は天面板21で構成された天面を示している。
【0031】
ところで、前述のように、天面板21で構成された天面2には注出孔5が設けられている(図4参照)。そして、注出孔5の周囲に露出した紙端面5aのうち最も低い部位を紙端面最下部5a、前記天面2の外周2aのうち最も低い部位を外周最下部2aとすると、紙端面最下部5aは外周最下部2aより高い位置にあることが必要である。また、その差dは1mm以上あることが必要である。紙端面最下部5aが外周最下部2aより1mm以上高い位置にある場合には、この液体用紙容器を浴室等の水に濡れる場所に配備し、その自然な使用方法に伴って、さまざまな高さから水を掛けるように使用されても、その紙12の端面から水分が浸透しにくい。他方、紙端面最下部5aがこれより低いとの紙12の端面から水分が浸透し易いのである。望ましくは、前記差dは2.5mm以上である。
【0032】
なお、この差dは20mm未満でよい。20mmを超えると天面板21が破断することがある。
【0033】
また、図5は本発明の液体用紙容器の第2の具体例に係り、図5(a)はそのブランクの平面説明図、図5(b)は要部断面説明図である。
【0034】
図5(a)及び図5(b)から分かるように、この例は、天面板21を型押しして、型押しされた領域21aがその周囲21bより高い位置に存在するようにしたものである。注出孔5の周囲に露出した紙端面5aは領域21aにあり、天面2の外周2aは領域21bにあるから、紙端面5aの最下部5aを外周2aの最下部2aより高い位置に配置することができる。図6は、このようなブランク20を使用して成型した液体用紙容器の要部断面説明図である。なお、この場合にも、外周最下部2aと紙端面最下部5aとの差dは1mm以上あることが必要であり、望ましくは2.5mm以上である。
【実施例0035】
(実施例1)
紙の両面に防水性被膜を積層した積層体を包装基材とし、この包装基材を成型して液体用紙容器を成型した。そのブランクは図2、成型した液体用紙容器は図3図4に示すとおりであり、紙端面5aの最下部(紙端面最下部)5aは外周2aの最下部(外周最下部)2aより高い位置にあり、その差dは1.0mmである。
【0036】
(実施例2)
紙端面最下部5aの高さと外周最下部2aの高さとの差dを2.0mmとした他は、実施例1と同様に液体用紙容器を成型した。
【0037】
(実施例3)
紙端面最下部5aの高さと外周最下部2aの高さとの差dを2.5mmとした他は、実施例1と同様に液体用紙容器を成型した。
【0038】
(実施例4)
紙端面最下部5aの高さと外周最下部2aの高さとの差dを3.0mmとした他は、実施例1と同様に液体用紙容器を成型した。
【0039】
(実施例5)
紙の両面に防水性被膜を積層した積層体を包装基材とし、この包装基材を成型して液体用紙容器を成型した。そのブランクは図5に示すとおりで、注出孔5の周囲3mmの領域を型押して、その領域21aを周囲の領域21bより高い位置とした。その差dは2.5mmである。なお、成型した液体用紙容器は図6に示すとおりである。
【0040】
(比較例1)
図7に示すとおり、紙端面最下部5aを外周最下部2aより低い位置に配置した他は、実施例1と同様に液体用紙容器を成型した。なお、外周最下部2aの高さを基準として、これより高い位置を正とし低い位置を負として、紙端面最下部5aの高さと外周最下部2aの高さとの差dを示すと、差dは-1.0mmである。
【0041】
(比較例2)
図8に示すとおり、紙端面最下部5aと外周最下部2aとを同じ高さ(差dは0mm)とした他は、実施例1と同様に液体用紙容器を成型した。
【0042】
(比較例3)
紙端面最下部5aの高さと外周最下部2aの高さとの差dを0.5mmとした他は、実施例1と同様に液体用紙容器を成型した。
【0043】
(比較例4)
紙端面最下部5aの高さと外周最下部2aの高さとの差dを20mmとした他は、実施例1と同様に液体用紙容器を成型した。
【0044】
(評価)
これら実施例1~5、比較例1~4の液体用紙容器を次の2つの観点から評価した。
【0045】
すなわち、まず、これら容器を浴室にて一週間使用し、紙端面から浸透した距離を測定した。この実験を、各例につき10個のサンプルについて行い、その平均値を算出した。
【0046】
また、ブランクから液体用紙容器に成型する際、無理なく成型できるか否かを評価した。
【0047】
この結果を表1に示す。なお、表1中、紙端面最下部5aの高さと外周最下部2aの高さとの差dは、外周最下部2aを基準として、紙端面最下部5aが高い位置にある場合を正の数値で表し、低い場合を負の数値で表している。両者が同じ高さにある場合は、d=0である。
【0048】
また、表1中、成型性の評価において、「良好」は無理なく良好に成型できたことを意味し、「天面の一部に破れ発生」は成型の際に生じた不具合の内容を示している。
【0049】
【表1】
【符号の説明】
【0050】
1:液体用紙容器 2:天面
10:積層体(包装基材) 11:表面合成樹脂フィルム 12:紙 13:ポリオレフィン樹脂層 14:バリア層 15:接着剤層 16:裏面合成樹脂フィル

20:ブランク
21:天面板 2a:外周 2a:外周最下部
5:注出孔 5a:紙端面 5a:紙端面最下部
6:口栓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8