(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026831
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】引張試験方法及び試験片
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
G01N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130476
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】502235315
【氏名又は名称】株式会社島津テクノリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴司
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB01
2G061BA01
2G061CB01
2G061CB07
2G061DA01
2G061EB05
(57)【要約】
【課題】試験片の観察領域の位置あわせを容易に行うことができ、試験片への応力集中を回避するして引張試験を行うことができる引張試験方法を提供すること。
【解決手段】同一平面に配置された3つアクチュエータ11を用い、3つの引張部22を備えた試験片20の各引張部22に対して各アクチュエータ11で引張荷重を加えることで試験片20の引張試験を行う構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面に配置された3つアクチュエータを用い、3つの引張部を備えた試験片の前記各引張部に対して前記各アクチュエータで引張荷重を加えることで前記試験片の引張試験を行うことを特徴とする引張試験方法。
【請求項2】
3つの前記アクチュエータによる引張方向のなす角度のうち、少なくとも2つの引張方向のなす角度は、同一角度とされていることを特徴とする請求項1に記載の引張試験方法。
【請求項3】
3つの前記アクチュエータによる引張方向のなす角度は、すべて同一角度とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の引張試験方法。
【請求項4】
試験片本体の外側から同一平面内で3方向に延在する引張部を備え、
前記試験片本体の前記各引張部が互いに交差する箇所には、前記各引張部の交差部分を弧状に形成してなるノッチが形成されていることを特徴とする試験片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張試験方法及び試験片に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、試験片に対して引張試験を行う引張試験装置が知られている。
このうち、2軸の引張試験装置においては、直交して配置された4つのアクチュエータが、十字状に形成された試験片を引っ張ることで試験を行う。
この場合に、十字状の試験片には、一方向における試験片の伸びに対応するため、十字状の中心部分の外側に、各試験片に沿った複数のスリットを形成するようにしている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「缶用硬質アルミニウム合金板の二軸引張試験方法の開発」(2014年3月 東京農工大学大学院工学府 機械システム工学専攻 花房泰浩)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、試験片にスリットを形成し、試験片に対して、略90°異なる方向に引張荷重を加えた場合、多数のスリットの先端部分に応力が集中するので、試験片がこの部分から破断しやすくなる。
そのため、各方向への引張荷重を適正に制御しないと、試験領域が上下左右にずれて余計な力が観察領域に影響する問題がある。
【0005】
本発明は、試験片の観察領域の位置あわせを容易に行うことができ、試験片への応力集中を回避するして引張試験を行うことができる引張試験方法および試験片を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、同一平面に配置された3つアクチュエータを用い、3つの引張部を備えた試験片の前記各引張部に対して前記各アクチュエータで引張荷重を加えることで前記試験片の引張試験を行うことを特徴とする引張試験方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、試験片の3つの引張部に対して各アクチュエータで引張荷重を加えるので、各引張部に加わる引張荷重のずれを吸収してバランスを取りやすくすることができ、3つの引張部の引張荷重が互いに釣り合いやすくなる。そのため、試験片本体の位置合わせを容易に行うことができるとともに、試験片への応力集中を回避することができる。また、応力集中を回避できるため、従来では応力集中が生じる部分に設けていたスリット等の作成が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る引張試験方法を適用する引張試験装置の実施の形態を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の試験片の実施の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る引張試験方法を適用する引張試験装置の実施の形態を示す概略構成図である。
引張試験装置10は、試験対象である試験片20の引張強さを測定する引張試験装置10である。
【0010】
引張試験装置10は、引張試験用のアクチュエータ11を備えている。
本実施の形態においては、アクチュエータ11は、3つのアクチュエータ11で構成されており、各アクチュエータ11は、それぞれ同一の平面内に配置されるとともに、その引張方向のなす角度がそれぞれ120°になるように配置されている。
各アクチュエータ11の互いに向かい合う端部には、試験片20を把持固定する把持具12が設けられている。
各アクチュエータ11と各把持具12とは、引張試験の際に、試験片20に加わる荷重を測定するためのロードセル13を介して連結されている。
【0011】
なお、本実施の形態においては、各アクチュエータ11による引張方向のなす角度をそれぞれ120°になるように構成したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、3つのなす角度のうち、2つの角度を同じ鈍角となるように配置するようにしてもよい。例えば、2つのなす角度を135°とし、残りの1つのなす角度を90°としてもよいし、2つのなす角度を150°とし、残りの1つのなす角度を60°としてもよい。
【0012】
次に、試験片20について説明する。
図2は、本発明に係る試験片20の実施の形態を示す平面図である。
図2に示すように、試験片20は、試験片本体21を備えており、試験片本体21には、放射状に延在する3つの引張部22が一体に形成されている。引張部22は長尺状に形成され、各引張部22の先端部分は、各アクチュエータ11の把持具12により把持固定される把持部23とされている。
各引張部22は、その延在する方向に対して互いになす角度が120°になるように形成されている。すなわち、各引張部22の延在方向がなす角度は、同角とされている。
【0013】
また、本実施の形態においては、試験片本体21の各引張部22が互いに交差する箇所には、各引張部22の交差部分を、試験片本体21側に凹んだ弧状に形成してなるノッチ24が形成されている。
このノッチ24は、各引張部22をアクチュエータ11で引っ張る引張試験を行った際に、各引張部22の交差部分に応力が集中することを防止するためのものである。
なお、ノッチ24は、本実施の形態においては、試験片本体21側に凹んだ弧状に形成するようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、試験片本体21から突出する弧状に形成するようにしてもよく、各引張部22の交差部分に応力が集中しない形状であれば、いずれの形状であってもよい。
【0014】
なお、本実施の形態においては、各アクチュエータ11による引張方向のなす角度をそれぞれ120°になるように構成したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、3つのなす角度のうち、2つの角度を同じ鈍角となるように配置するようにしてもよい。例えば、2つのなす角度を135°とし、残りの1つのなす角度を90°としてもよいし、2つのなす角度を150°とし、残りの1つのなす角度を60°としてもよい。
【0015】
このように、アクチュエータ11を配置した場合に、試験片20の形状も各アクチュエータ11に合わせた形状とする必要がある。
すなわち、例えば、アクチュエータ11による引張方向の2つのなす角度を135°とし、残りの1つのなす角度を90°とした場合には、試験片20の引張部22の2つのなす角度も135°とし、残りの1つのなす角度も90°とすることになる。
また、例えば、アクチュエータ11による引張方向の2つのなす角度を150°とし、残りの1つのなす角度を60°とした場合には、試験片20の引張部22の2つのなす角度も150°とし、残りの1つのなす角度も60°とすることになる。
【0016】
次に、本実施の形態の引張試験装置10を用いた引張試験方法について説明する。
まず、引張試験装置10の各アクチュエータ11の把持具12に、試験片20の把持部23を把持固定させる。
この状態で、各アクチュエータ11により試験片20に引張荷重を加え、試験片20の位置合わせが行われる。
この場合に、本実施の形態においては、各アクチュエータ11による引張方向が120°に形成されているので、1つの引張部22が引っ張られた場合、他の2つの引張部22が均一に引っ張られることになる。このような引張部22の作用が、各引張部22で行われることになるため、引張荷重のずれを吸収してバランスを取りやすくすることができ、3つの引張部22の引張荷重が互いに釣り合いやすくなる。
そのため、試験片本体21の位置合わせを容易に行うことができる。
【0017】
その後、アクチュエータ11により試験荷重を加え、ロードセル13により計測を行うことで、試験片20の引張試験が行われる。
この場合に、本実施の形態においては、各アクチュエータ11による引張方向が120°に形成されているので、引張部22に加わる引張荷重により、バランスを取りつつ、試験片本体21に均一に荷重を加えることができる。
【0018】
また、試験片20にノッチ24が形成されているので、アクチュエータ11により引張部22に引張荷重が加えられた場合に、試験片本体21と各引張部22との接合部分に応力が集中することを回避することができる。
【0019】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0020】
本実施形態の引張試験方法では、同一平面に配置された3つアクチュエータ11を用い、3つの引張部22を備えた試験片20の各引張部22に対して各アクチュエータ11で引張荷重を加えることで試験片20の引張試験を行う構成とした。
これにより、各引張部22に加わる引張荷重のずれを吸収してバランスを取りやすくすることができ、3つの引張部22の引張荷重が互いに釣り合いやすくなる。そのため、試験片本体21の位置合わせを容易に行うことができるとともに、試験片20への応力集中を回避することができる。また、応力集中を回避できるため、従来では応力集中が生じる部分に設けていたスリット等の作成が不要となる。
【0021】
また、本実施の形態の引張試験方法では、3つのアクチュエータ11による引張方向のなす角度は、すべて同一角度とされている構成とした。
これにより、各アクチュエータ11による引張方向のなす角度がすべて同一角度とされているので、各引張部22に加わる引張荷重のずれを吸収してバランスを取りやすくすることができ、3つの引張部22の引張荷重が互いに釣り合いやすくなる。そのため、試験片本体21の位置合わせを容易に行うことができるとともに、試験片20への応力集中を回避することができる。
【0022】
また、本実施の形態の試験片20では、試験片本体21の外側から同一平面内で3方向に延在する引張部22を備え、試験片本体21の各引張部22が互いに交差する箇所には、各引張部22の交差部分を弧状に形成してなるノッチ24が形成されている構成とした。
これにより、試験片本体21の外側から同一平面内で3方向に延在する引張部22を備えているので、試験片20に引張荷重が加わった場合に、各引張部22に加わる引張荷重のずれを吸収してバランスを取りやすくすることができ、3つの引張部22の引張荷重が互いに釣り合いやすくなる。そのため、試験片本体21の位置合わせを容易に行うことができるとともに、試験片20への応力集中を回避することができる。
また、試験片20にノッチ24が形成されているので、引張部22に引張荷重が加えられた場合に、試験片本体21と各引張部22との接合部分に応力が集中することを回避することができる。
【0023】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
また、上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【0024】
[態様]
上述した例示的な実施形態、及び変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0025】
(第1項)一態様に係る引張試験方法は、同一平面に配置された3つアクチュエータを用い、3つの引張部を備えた試験片の前記各引張部に対して前記各アクチュエータで引張荷重を加えることで前記試験片の引張試験を行う。
【0026】
第1項の態様によれば、試験片の3つの引張部に対して各アクチュエータで引張荷重を加えるので、各引張部に加わる引張荷重のずれを吸収してバランスを取りやすくすることができ、3つの引張部の引張荷重が互いに釣り合いやすくなる。そのため、試験片本体の位置合わせを容易に行うことができるとともに、試験片への応力集中を回避することができる。また、応力集中を回避できるため、従来では応力集中が生じる部分に設けていたスリット等の作成が不要となる。
【0027】
(第2項)第1項に記載の引張試験方法において、3つの前記アクチュエータによる引張方向のなす角度のうち、少なくとも2つの引張方向のなす角度は、同一角度とされていてもよい。
【0028】
第2項の態様によれば、少なくとも2つの引張方向のなす角度は、同一角度としているので、各引張部に加わる引張荷重のずれを吸収してバランスを取りやすくすることができ、3つの引張部の引張荷重が互いに釣り合いやすくなる。そのため、試験片本体の位置合わせを容易に行うことができるとともに、試験片への応力集中を回避することができる。
【0029】
(第3項)第1項または第2項に記載の引張試験方法において、3つの前記アクチュエータによる引張方向のなす角度は、すべて同一角度とされていてもよい。
【0030】
第3項の態様によれば、3つのアクチュエータによる引張方向のなす角度をすべて同一角度としているので、各引張部に加わる引張荷重のずれを吸収してバランスを取りやすくすることができ、3つの引張部の引張荷重が互いに釣り合いやすくなる。そのため、試験片本体の位置合わせを容易に行うことができるとともに、試験片への応力集中を回避することができる。
【0031】
(第4項)一態様に係る試験片は、試験片本体の外側から同一平面内で3方向に延在する引張部を備え、前記試験片本体の前記各引張部が互いに交差する箇所には、前記各引張部の交差部分を弧状に形成してなるノッチが形成されている。
【0032】
第4項の態様によれば、試験片本体の外側から同一平面内で3方向に延在する引張部を備えているので、試験片に引張荷重が加わった場合に、各引張部に加わる引張荷重のずれを吸収してバランスを取りやすくすることができ、3つの引張部の引張荷重が互いに釣り合いやすくなる。そのため、試験片本体の位置合わせを容易に行うことができるとともに、試験片への応力集中を回避することができる。
また、試験片にノッチが形成されているので、アクチュエータにより引張部に引張荷重が加えられた場合に、試験片本体と各引張部との接合部分に応力が集中することを回避することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 引張試験装置
11 アクチュエータ
12 把持具
13 ロードセル
20 試験片
21 試験片本体
22 引張部
23 把持部
24 ノッチ