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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026839
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】無人航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 37/00 20060101AFI20220203BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220203BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220203BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B64C37/00
B64C27/08
B64C39/02
B63C11/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130495
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】715001390
【氏名又は名称】株式会社プロドローン
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅木 紀代一
(57)【要約】
【課題】水中に潜水可能な無人航空機について、その飛行性能と潜水性能とを両立させる。
【解決手段】飛行用の水平回転翼(51)を有するロータ(50)と、水中での移動に用いる推力源(60)と、を個別に備える潜水可能な無人航空機(10)によりこれを解決する。かかる無人航空機は、複数の前記ロータと複数の前記推力源とを有することが好ましく、さらには、前記推力源が一の方向とその反対方向とに推力を発生させることができること、前記水平回転翼が、前記ロータの回転中心線に沿う方向に旋回可能であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行用の水平回転翼を有するロータと、
水中での移動に用いる推力源と、を個別に備える潜水可能な無人航空機。
【請求項2】
複数の前記ロータと複数の前記推力源とを有する請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
前記ロータと前記推力源とを同数備える請求項2に記載の無人航空機。
【請求項4】
4基の前記ロータと4基の前記推力源とを有する請求項3に記載の無人航空機。
【請求項5】
前記推力源は一の方向とその反対方向とに推力を発生させることができる請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項6】
前記水平回転翼は、前記ロータの回転中心線に沿う方向に旋回可能である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項7】
前記推力源はスクリュープロペラである請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の無人航空機。
【請求項8】
機体の中心部である胴部と、
前記胴部から延びる複数本のアームと、を有し、
前記各アームには、飛行時における姿勢を基準として、これらアームから上方または下方に錐状に突き出した凸部が設けられ、
前記スクリュープロペラは前記各凸部の先端部に配置されている請求項7に記載の無人航空機。
【請求項9】
前記ロータは前記各凸部の後端部またはその近傍に配置されている請求項8に記載の無人航空機。
【請求項10】
前記各スクリュープロペラの軸線方向を上下方向としたときに、前記各アームは、板面を前後または左右に向けるように配置された板状部材である請求項8または請求項9に記載の無人航空機。
【請求項11】
潜水時に水面上に浮かべる通信装置を有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無人航空機技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な産業分野への無人航空機の応用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/073300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の無人潜水機(UUV:Unmanned Underwater Vehicles)は、その潜水対象の水域までこれを船等で運んで沈めるか、或いは水際からその目的とする水域まで航行させる必要があった。特許文献1の発明では無人潜水機である水中カメラを潜水対象の水域までマルチコプターで運搬し、マルチコプターを水面で待機させて水中カメラを遠隔操縦することが可能とされている。かかる構成による場合、飛行機能と潜水機能とをマルチコプターと水中カメラとに完全に分離することができるという利点がある一方、装置全体としての構造の効率化や小型化が図りにくいという課題がある。
【0005】
このような問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、水中に潜水可能な無人航空機について、その飛行性能と潜水性能とを両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の潜水可能な無人航空機は、飛行用の水平回転翼を有するロータと、水中での移動に用いる推力源と、を個別に備えることを要旨とする。
【0007】
無人航空機に搭載されるロータは、最も飛行効率が高くなるようにそのプロペラ(水平回転翼)の直径やピッチ等が設計される。当然ではあるがこのようなロータは水中での推力源には適しておらず、水中では空中でのような機動性を発揮することはできない。一方、潜水時の推力源としても使用することを考慮してロータを設計した場合、飛行時の航続時間や安定性が損なわれることとなる。無人航空機に飛行用のロータとは別に水中での移動に用いる推力源を備えることにより、無人航空機の飛行性能と潜水性能とを両立させることができる。
【0008】
このとき、本発明の無人航空機は、複数の前記ロータと複数の前記推力源とを有することが好ましい。潜水時の推力源を複数備えることにより、別途舵を備えることなく水中における機体の姿勢や推進方向を制御することが可能となる。またこのとき、本発明の無人航空機は、前記ロータと前記推力源とを同数備えることが好ましい。これにより飛行時と同様の原理を応用して水中における機体の姿勢や推進方向を制御することが可能となる。さらに、本発明の無人航空機は、4基の前記ロータと4基の前記推力源とを有することが好ましい。これにより一般的なクアッドコプターの飛行原理を応用して水中における機体の姿勢や推進方向を制御することが可能となる。
【0009】
また、前記推力源は一の方向とその反対方向とに推力を発生可能であることが好ましい。無人航空機はその飛行中はロータと重力を利用して比較的自由に機体を持ち上げたり降ろしたりすることができる。一方、水中では浮力が作用しているため、推力源を停止しても機体は空中ほど機敏には反応しない。推力源が一の方向とその反対方向とに推力を発生させることにより、水中においても機体の姿勢を任意に制御することが可能となる。
【0010】
また、前記水平回転翼は、前記ロータの回転中心線に沿う方向に旋回可能であることが好ましい。飛行用のロータと水中での移動に用いる推力源とを両方備える場合、ロータは水中では移動を妨げるだけの存在となる。ロータのプロペラ(水平回転翼)がロータの回転中心線に沿う方向に旋回可能であることにより、プロペラは潜水時に水の抵抗に抗うことなく自由に回転・旋回する。これにより潜水時の推進抵抗が軽減される。
【0011】
また、前記推力源はスクリュープロペラであることが好ましい。水中における移動用に最適化された推力源を備えることにより、機体を水中でスムーズに移動させることが可能となる。
【0012】
また、本発明の無人航空機は、機体の中心部である胴部と、前記胴部から延びる複数本のアームと、を有し、前記各アームには、飛行時における姿勢を基準として、これらアームから上方または下方に錐状に突き出した凸部が設けられ、前記スクリュープロペラは前記各凸部の先端部に配置されている構成としてもよい。各アームから推進方向に向かって錐状の凸部が設けられることで、推進時の姿勢の安定性が高められる。このとき、前記ロータは前記各凸部の後端部またはその近傍に配置されてもよい。
【0013】
また、前記各スクリュープロペラの軸線方向を上下方向としたときに、前記各アームは、板面を前後または左右に向けるように配置された板状部材であることが好ましい。これによりアームがフィン(ひれ)として作用し、水中推進時における姿勢を安定させることができる。
【0014】
また、本発明の無人航空機は、潜水時に水面上に浮かべる通信装置を有することが好ましい。水中の機体を例えば無線通信で操縦する場合、水などの導体中では電磁波が著しく減衰するため、電磁波の周波数を下げたとしてもせいぜい数メートルの距離でしか通信を行うことができない。水面上に通信装置を浮かべ、この通信装置と水中の無人航空機とを例えば信号線でつないだり、光又は超音波などで通信させることにより、水上から水中の無人航空機を自在に操縦することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば水中に潜水可能な無人航空機について、その飛行性能と潜水性能とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態にかかるマルチコプターの外観を示す斜視図である。
図2】潜水時のマルチコプターの様子を示す斜視図である。
図3】マルチコプターが水中を移動するときのプロペラの旋回の様子を示す側面図(a)及び部分拡大図(b)である。
図4】飛行時におけるマルチコプターの機能構成を示すブロック図である。
図5】潜水時におけるマルチコプターの機能構成を示すブロック図である。
図6】マルチコプターの潜水時における水上との通信方法の一例を示す模式図である。
図7】スクリュープロペラによるマルチコプターの浮上補助機能の説明図である。
図8】本発明の無人航空機の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に挙げる実施形態は、空中を飛行するだけでなく潜水も可能な無人航空機であるマルチコプター10についての例である。
【0018】
[構成概要]
図1は本実施形態にかかるマルチコプター10の外観を示す斜視図である。図2は潜水時のマルチコプター10の様子を示す斜視図である。以下の説明における「上下」及び「縦」とは、各図に描かれた座標軸のZ軸に平行な方向であり、Z1側を上、Z2側を下とする。また「前後」「左右」及び「側方」とはZ軸方向に直交する方向をいう。なおここでいう「上下」とは、鉛直線(重力方向)に沿う絶対的な上下ではなく、単に説明の便宜のために機体の上側と下側とを決めたものに過ぎない。「縦」「前後」「左右」「側方」についても同様である。
【0019】
マルチコプター10は4基のロータ50で空中を移動するいわゆるクアッドコプターである。そしてマルチコプター10は、これらロータ50とは別に、水中での移動に用いる推力源として4基のスクリュープロペラ60を備えている。
【0020】
通常、無人航空機に搭載されるロータは、最も飛行効率が高くなるようにそのプロペラの直径やピッチ等が設計される。当然ではあるがこのようなロータは水中での推力源には適しておらず、水中では空中でのような機動性を発揮することはできない。一方、潜水時の推力源としても使用することを考慮してロータを設計した場合、飛行時の航続時間や安定性が損なわれることとなる。本形態のマルチコプター10は、飛行用のロータ50とは別に、水中における移動用に最適化されたスクリュープロペラ60を備えることで、その飛行性能と潜水性能とを両立させている。
【0021】
本形態のマルチコプター10は、機体の中心部である胴部11と、胴部11から延びる4本のアーム12とを有している。ロータ50は各アーム12の先端に配置されている。また各アーム12の先端には、下方に向かって錐状に突き出した凸部13が設けられている。スクリュープロペラ60は各凸部13の先端に配置されている。
【0022】
本形態の胴部11は縦長の略紡錘形状のケース体であり、上側がやや細く下側が太くなるように形成されている。各アーム12は胴部11から側方に向かって平面視放射状に延びている。本形態のアーム12はその板面を側方に向けるように配置された板状部材である。これによりアーム12がフィン(ひれ)としても作用し、水中推進時の姿勢をより安定させることができる。
【0023】
ロータ50は、水平回転翼であるプロペラ51と、その駆動源である図示しないモータと、そのモータを覆うスピナー52とを有している。ロータ50は各凸部13の後端部に配置されており、ロータ50のモータはその全部または一部が各凸部13の中に収容されている。本形態ではモータ自体に防水モータを採用しているが、例えば凸部13やスピナー52に防水構造をもたせ、モータの収容空間への浸水を防止してもよい。
【0024】
上でも述べたように、スクリュープロペラ60は各凸部13の先端に配置されている。本形態では、各アーム12からスクリュープロペラ60の主たる推進方向(本形態ではZ2方向)に向かって錐状の凸部が設けられることで、推進時の姿勢の安定性が高められている。
【0025】
本形態のマルチコプター10は、複数のロータ50と複数のスクリュープロペラ60とを備えることにより、別途舵を備えることなく水中における機体の姿勢や推進方向を制御することができる。さらに、スクリュープロペラ60を4基備えることにより、一般的なクアッドコプターの飛行原理を応用して水中における機体の姿勢や推進方向を制御することができる。
【0026】
[ロータおよびスクリュープロペラの構造]
図3は、マルチコプター10が水中を移動するときのプロペラ51の様子を示す側面図(a)及び部分拡大図(b)である。以下、図3を参照してロータ50のプロペラ51およびスクリュープロペラ60の構造について説明する。
【0027】
本形態のスクリュープロペラ60は、Z1方向およびZ2方向に推力を発生させることができる。飛行中のマルチコプター10はロータ50と重力を利用して比較的自由に機体の各部を上げ下げすることができる。一方、水中では浮力が作用しているため、スクリュープロペラ60を停止しても機体は空中ほど機敏には反応しない。スクリュープロペラ60が一の方向とその反対方向(以下「正逆方向」という。)に推力を発生可能であることにより、水中においてもマルチコプター10の姿勢を任意に制御することができる。
【0028】
また本形態のロータ50は、ロータ50の回転中心線に沿う方向(本形態ではZ軸方向)に旋回可能なプロペラ51を備えている。プロペラ51はスピナー52又はスピナー52内の図示しないロータハブにヒンジを介して接続されている。飛行時にはロータ50が高速回転することによりプロペラ51は遠心力で自動的に展開され、その位置に保たれる。
【0029】
マルチコプター10のように飛行用のロータ50とは別に水中での移動に用いるスクリュープロペラ60を備える場合、ロータ50は水中では移動を妨げるだけの存在となる。ロータ50のプロペラ51がロータ50の回転中心線に沿う方向に旋回可能であることにより、プロペラ51は水中での移動時に水の抵抗に抗うことなく自由に回転・旋回する。これにより潜水時の推進抵抗が軽減される。
【0030】
[マルチコプターの機能構成]
図4は飛行時におけるマルチコプター10の機能構成を示すブロック図である。図5は潜水時におけるマルチコプター10の機能構成を示すブロック図である。図6は、マルチコプター10の潜水時における水上との通信方法の一例を示す模式図である。
【0031】
図4に示すように、飛行時のマルチコプター10の機能は、制御部であるフライトコントローラFC、複数のロータ50、操縦者(オペレータ端末71)との通信を行う通信装置72、並びにこれらに電力を供給するバッテリー(不図示)により構成されている。
【0032】
フライトコントローラFCはマイクロコントローラである制御装置20を有している。制御装置20は単体のマイクロコントローラには限られず、いわゆるコンパニオンコンピュータとの組み合わせであってもよい。その他、制御装置20を例えばFPGA(field-programmable gate array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで構成することも考えられる。
【0033】
フライトコントローラFCはさらに、IMU21(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、GPS受信器22、気圧センサ23、および電子コンパス24を含む飛行制御センサ群S1を有しており、これらは制御装置20に接続されている。
【0034】
IMU21はマルチコプター10の傾きを検出するセンサであり、主に3軸加速度センサおよび3軸角速度センサにより構成されている。気圧センサ23は、検出した気圧値からマルチコプター10の海抜高度(標高)を得る高度センサである。電子コンパス24はフライトコントローラFCのヘディング(機首)の方位角を検出するセンサであり、主に3軸地磁気センサで構成されている。GPS受信器22は、正確には航法衛星システム(NSS:Navigation Satellite System)の受信器である。GPS受信器22は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)または地域航法衛星システム(RNSS:Regional Navigational Satellite System)から現在の経緯度値を取得する。
【0035】
フライトコンローラFCは、これら飛行制御センサ群Sにより、機体の傾きや回転のほか、飛行中の経緯度、高度、および機首の方位角を含む自機の位置情報を取得する。
【0036】
制御装置20は、マルチコプター10の飛行時における姿勢や基本的な飛行動作を制御するプログラムである飛行制御プログラムFSを有している。飛行制御プログラムFSは、飛行制御センサ群S1から取得した情報を基に個々のロータ50の回転数を調節し、機体の姿勢や位置の乱れを補正しながらマルチコプター10を飛行させる。
【0037】
制御装置20はさらに、マルチコプター10を自律飛行させるプログラムである自律飛行プログラムAFを有している。そして、制御装置20には、マルチコプター10を飛行させるコースの経緯度、飛行中の高度や速度などが指定されたパラメータである飛行計画FPが登録されている。自律飛行プログラムAFは、オペレータ端末71や他のシステムからの指示や所定の時刻などを開始条件として、飛行計画FPに従ってマルチコプター10を自律的に飛行させる。
【0038】
その他、マルチコプター10に搭載される装置や機材には特に制限はなく、例えば一般的な可視光カメラや暗視カメラ、深度カメラ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダー、マイクやスピーカー、パラシュート、フラッシュライト、警告灯、アラーム・ブザー等を搭載してもよい。また逆に、例えば飛行制御センサ群S1から一部または全部のセンサを省略したり、自律飛行機能を備えずに手動操縦のみに対応させてもよい。
【0039】
マルチコプター10の通信装置72とオペレータ端末71とは、制御信号やデータの送受信が可能であれば、その具体的な通信方式やプロトコル、使用する回線等は問わない。例えば3GやLTE(Long Term Evolution)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、5Gなどの携帯電話通信網でオペレータ端末71とマルチコプター10とを接続することにより、操縦者は、携帯電話通信網のサービスエリア内からであればどこからでもマルチコプター10にアクセスすることが可能となる。また、マルチコプター10の移動範囲が、例えば沖合や山間部など、携帯電話通信網のサービス圏外にまで及ぶ場合には、例えばイリジウム(登録商標)やインマルサット(登録商標)などの衛星通信モジュールをマルチコプター10に搭載することで、携帯電話通信網のサービス圏外でもマルチコプター10との通信を保つことができる。その他、マルチコプター10の移動範囲に予めアクセスポイントを設置し、アクセスポイント経由でマルチコプター10と通信と行ってもよい。
【0040】
図5に示すように、潜水時のマルチコプター10の機能は、制御部であるダイビングコントローラDC、複数のスクリュープロペラ60、オペレータ端末71との通信を行う通信装置72、並びにこれらに電力を供給するバッテリー(不図示)により構成されている。その他、マルチコプター10の潜水の目的に応じた外部機器を別途搭載してもよい。
【0041】
ダイビングコントローラDCはマイクロコントローラである制御装置30を有している。制御装置30は単体のマイクロコントローラには限られず、いわゆるコンパニオンコンピュータとの組み合わせであってもよい。その他、制御装置30を例えばFPGAやASICなどで構成することも考えられる。
【0042】
ダイビングコントローラDCはさらに、IMU31、超音波センサ32、水圧センサ33、カメラ34、およびカメラ34用の投光器35を含む潜水制御センサ群S2を有しており、これらは制御装置30に接続されている。
【0043】
IMU31はマルチコプター10の水中における傾きを検出するセンサであり、主に3軸加速度センサおよび3軸角速度センサにより構成されている。IMU31の代わりに飛行制御センサ群S1のIMU21を用いることもできる。水圧センサ33は、検出した圧力値からマルチコプター10の水深を得るセンサである。例えば水圧センサ33を各アーム12の先端に配置することにより水中におけるマルチコプター10の姿勢の変化を検知することも可能である。超音波センサ32およびカメラ34は、水中におけるマルチコプター10とその周辺物との距離を検出するセンサである。
【0044】
ダイビングコントローラDCは、これら潜水制御センサ群S2により、機体の傾きや回転のほか、水中における周辺物との相対位置や機首の向きを含む自機の位置情報を取得する。なお本形態のカメラ34は、画像認識によりマルチコプター10の水中における位置の変化や周辺物との距離を検出する手段として用いられているが、水中の撮影画像・映像をオペレータ端末71に転送するカメラとしても用いることもできる。ただ、水中における位置検出用のカメラと水中撮影用のカメラは別々に備えることが望ましい。
【0045】
制御装置30は、マルチコプター10の潜水時における姿勢や基本的な航行動作を制御するプログラムである潜水制御プログラムDSを有している。潜水制御プログラムDSは、潜水制御センサ群S2から取得した情報を基に個々のスクリュープロペラ60の回転数や回転方向を調節し、機体の姿勢や位置の乱れを補正しながらマルチコプター10を航行させる。
【0046】
制御装置30はさらに、マルチコプター10を水中において自律的に航行させるプログラムである自律潜水プログラムADを有している。そして制御装置30には、マルチコプター10を自律航行させる経路や、水深、速度などが指定されたパラメータである潜水計画DPが登録されている。自律潜水プログラムADは、オペレータ端末71や他のシステムからの指示、所定の時刻などを開始条件として、潜水計画DPに従ってマルチコプター10を自律的に航行させる。
【0047】
このように本形態のマルチコプター10は高度な潜水制御機能を有しているが、例えば潜水制御センサ群S2から一部または全部のセンサを省略したり、自律航行機能を備えずに手動操縦のみに対応させてもよい。
【0048】
また、図6に示すように、本形態のマルチコプター10は潜水時に水面上に浮かべるブイ90を有している。着水時にブイ90を膨張させる仕組みには公知の自動膨張機構を用いることができる。例えば、液化ガス(炭酸ガスや炭酸ガスと窒素ガスとの混合ガスなど)が封入されたガスボンベのロック機構に水で溶解する部品を用い、着水によりその部品が溶解することでロック機構が解除され、袋状体にガスが充填される構造や、水濡れを検知するセンサを用いて電子的に同ガスボンベのロック機構を解除する構造などがある。
【0049】
本形態ではマルチコプター10と水上のブイ90が信号線91で接続されている。さらに、ブイ90には通信装置72が配置されており、オペレータ端末71は、水上の通信装置72を介してマルチコプター10と通信を行うことができる。なお、ブイ90又はマルチコプター10にはウインチ(不図示)も搭載されており、信号線91の長さは自動または手動で調節される。
【0050】
水などの導体中では電磁波が著しく減衰する。そのため、水中の機体を無線通信で操縦する場合には、電磁波の周波数を下げたとしてもせいぜい数メートルの距離でしか通信を行うことができない。本形態では、水上にブイ90と通信装置72を浮かべることにより、水による電磁波の減衰を考慮することなく水中のマルチコプター10を遠隔操縦することができる。逆に、水上からの電波が到達可能な範囲内においてマルチコプター10を潜水させるのであれば無線通信で直接マルチコプター10を操縦してもよい。または、マルチコプター10が潜水する領域の近くに操縦者がいるのであれば、オペレータ端末71とマルチコプター10とを直接信号線で接続することも考えられる。この場合でも、マルチコプター10が飛行も可能であることで、操縦者の位置から目的とする潜水スポットまでマルチコプター10を速やかに移動させ、潜水させることができる。
【0051】
なお、水上の通信装置72と水中のマルチコプター10との通信は信号線91による有線接続には限られず、例えば光や超音波などを媒体として信号を送受信させることも可能である。ブイ90(通信装置72)と水中のマルチコプター10とを非接触(非有線)で通信させる場合、潜水スポットの周辺にあらかじめブイと潜水時の通信装置を浮かべておいてもよい。
【0052】
また、本形態のブイ90には通信装置72だけでなくGPS受信機22も配置されており、マルチコプター10は水上のブイ90の経緯度を取得することができる。これにより、ブイ90の経緯度を基準として水中の現在位置における大まかな経緯度を特定することができる。また、例えばカメラ34や超音波センサ32、その他センサによりブイ90との相対位置を把握すれば、水中におけるより正確な経緯度を特定することも可能である。
【0053】
[浮上補助機能]
図7は、スクリュープロペラ60によるマルチコプター10の浮上補助機能の説明図である。
【0054】
上でも述べたように、本形態のマルチコプター10は、各凸部13の先端にスクリュープロペラ60が配置され、ロータ50は各凸部13の後端部に配置されている。つまりロータ50が上(Z1側)に、スクリュープロペラ60が下(Z2側)に配置されている。そしてスクリュープロペラ60は正逆方向に推力を発生させることができる。
【0055】
マルチコプター10が潜水を終え水中から空中に移動するときには、水面がマルチコプター10の機体に張り付くことでマルチコプター10の離水が妨げられる。特に海面など水面が静止していない環境では、マルチコプター10を水面からスムーズに引きはがせない場合がある。本形態のマルチコプター10は上記構成により、離水時にロータ50の揚力だけでなく、水面下のスクリュープロペラ60で機体を押し上げることができる。これによりマルチコプター10をスムーズに離水させることができる。
【0056】
[他の実施形態]
以下、本発明の無人航空機の他の実施形態について説明する。図8は他の実施形態の一例であるマルチコプター10bの斜視図である。以下の説明では、マルチコプター10の各構成と同一・同様の構成については、先の実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0057】
先の実施形態のマルチコプター10では各凸部13の先端にスクリュープロペラ60が配置されているが、本形態のマルチコプター10bでは、胴部11の下端(Z2側端部)にスクリュープロペラ60bが一基のみ設けられている。スクリュープロペラ60bも正逆方向に推力を発生可能な推力源である。そしてマルチコプター10bの各アーム12には、水中における機体の推進方向を制御するための舵14が設けられており、マルチコプター10bのアーム12はいわゆる+舵・X舵としての機能も担っている。これによりマルチコプター10bは、複数のスクリュープロペラを用いることなく一基のスクリュープロペラ60bのみで水中を自在に移動することができる。なお、4基のロータ50を適宜駆動してこれらの推進抵抗を個別に調節することで舵14に代えることも可能と考えられる。
【0058】
マルチコプター10bのロータ50も先の実施形態と同様にロータ50の回転中心線に沿う方向に旋回可能なプロペラ51を有している。水中におけるプロペラ51の推進抵抗が許容可能である場合、または上で述べたようにロータ50を舵14の代わりに用いるような場合は、プロペラ51を旋回不能に固定してもよい。
【0059】
なお、本発明の水中推力源の数は一基や4基には限られない。水中で所望の動作が可能であれば、例えば3基、6基、8基の推力源を備えてもよい。さらに、水中推力源の形態はスクリュープロペラには限られず、水中において特定方向に推力を発生可能であれば例えばウォータージェット推進器などであってもよい。また、水中推力源は必ずしも正逆方向に推力を発生可能である必要はなく、求められる動作の種類や制御精度によっては一方向にのみ推力を発生するものであってもよい。
【0060】
また、本発明のロータ50の数も4基には限られない。例えばロータ50が3基のトライコプター型や、6基のヘキサコプター型、8基のオクタコプター型の無人航空機としてもよく、さらには、メインロータとテールロータとを一基ずつ備えるヘリコプター型としてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0062】
10,10b:マルチコプター(無人航空機),11:胴部,12:アーム,13:凸部,14:舵,FC:フライトコントローラ,20:制御装置,FS:飛行制御プログラム,AF:自律飛行プログラム,FP:飛行計画,S1:飛行制御センサ群,21:IMU,22:GPS受信器,23:気圧センサ,24:電子コンパス,50:ロータ,51:プロペラ,52:スピナー,DC:ダイビングコントローラ,30:制御装置,DS:潜水制御プログラム,AD:自律潜水プログラム,DP:潜水計画,S2:潜水制御センサ群,31:IMU,32:超音波センサ,33:水圧センサ,34:カメラ,35:投光器,60,60b:スクリュープロペラ(推力源),71:オペレータ端末,72:通信装置,90:ブイ,91:信号線
図1
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図8