(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026854
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、及び、レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20220203BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220203BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20220203BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/53
B23K26/03
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130516
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】是松 克洋
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA07
4E168CA13
4E168CA15
4E168CB01
4E168CB07
4E168CB12
4E168CB15
4E168CB23
4E168EA11
4E168JA12
5F063AA02
5F063AA21
5F063AA48
5F063BA03
5F063CB02
5F063CB07
5F063CC02
5F063DE01
5F063DE33
5F063DE35
(57)【要約】
【課題】追従加工の可能範囲が狭められることを抑制可能なレーザ加工装置、及び、レーザ加工方法提供する。
【解決手段】レーザ加工装置1は、制御部6を備える。制御部6は、Z方向についての対象物11の第1面11aの変位を示す変位情報を取得する取得処理と、変位情報に基づいて、変位の中心値を含む変位の一部の範囲である中心範囲の特定値と、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧と、を関連付ける関連付け処理と、基準電圧を中心にアクチュエータ8を駆動させることにより、Z方向についてのレーザ光Lの集光点Cの位置を変位に応じて調整しながら、X方向に沿うラインAに沿って集光点Cを相対移動させ、ラインAに沿って対象物11のレーザ加工を行う加工処理と、を実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを含む対象物を支持するための支持部と、
前記支持部に支持された前記対象物に対して、集光レンズを介して前記第1面側からレーザ光を照射するためのレーザ照射部と、
前記第2面から前記第1面に向かうZ方向に沿って前記集光レンズを駆動するためのアクチュエータと、
前記Z方向に交差するX方向に沿って前記レーザ光の集光点が前記対象物に対して相対移動するように、前記支持部及び前記レーザ照射部の少なくとも一方を移動させるための第1移動部と、
少なくとも前記アクチュエータ、前記レーザ照射部、及び前記第1移動部を制御しつつ、前記対象物に前記レーザ光を照射して前記対象物のレーザ加工を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記Z方向についての前記第1面の変位を示す変位情報を取得する取得処理と、
前記取得処理の後に、前記変位情報に基づいて、前記変位の中心値を含む前記変位の一部の範囲である中心範囲の特定値と、前記アクチュエータの駆動電圧の基準電圧と、を関連付ける関連付け処理と、
前記関連付け処理の後に、前記基準電圧を中心に前記アクチュエータを駆動させることにより、前記Z方向についての前記レーザ光の集光点の位置を前記変位に応じて調整しながら、前記X方向に沿うラインに沿って前記集光点を相対移動させ、前記ラインに沿って前記対象物のレーザ加工を行う加工処理と、を実行する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記特定値は、前記変位の中心値である、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記レーザ照射部と一体的に移動するように設けられており、前記対象物に向けて測定光を出射すると共に前記測定光の反射光を入力することにより、前記第1面の変位を測定して前記変位情報を取得するための変位センサを備える、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記変位センサによって、連続的に前記変位を測定して前記変位情報を取得する、
請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記変位センサによって、前記第1面内の複数箇所において離散的に前記変位を測定して前記変位情報を取得する、
請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ照射部及び前記変位センサを、前記対象物に対して前記Z方向に沿って相対移動させるための第2移動部を備え、
前記制御部は、前記関連付け処理において、
前記第1移動部の制御によって、前記第1面の前記変位が前記特定値となる第1位置に前記レーザ照射部及び前記変位センサを移動させる第1処理と、
前記第1処理の後に、前記第2移動部の制御によって、前記測定光が前記第1面に集光するように前記Z方向に沿って前記レーザ照射部及び前記変位センサを相対移動させる第2処理と、
前記第2処理の後に、前記測定光が前記第1面に集光したときの前記変位センサの前記変位の測定値を前記基準電圧と関連付ける第3処理と、
を実行する、
請求項3~5のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザ照射部及び前記変位センサを、前記対象物に対して前記Z方向に沿って相対移動させるための第2移動部を備え、
前記制御部は、前記関連付け処理において、
前記第1移動部の制御によって、前記第1面の前記変位が下限値又は上限値となる第2位置に前記レーザ照射部及び前記変位センサを移動させる第4処理と、
前記第4処理の後に、前記第2移動部の制御によって、前記測定光が前記第1面に集光するように前記Z方向に沿って前記レーザ照射部及び前記変位センサを相対移動させる第5処理と、
前記第5処理の後に、前記測定光が前記第1面に集光したときの前記変位センサの前記変位の測定値にオフセット量を加味したオフセット値が前記中心範囲に含まれるように前記オフセット量を設定し、前記オフセット値を前記特定値として前記基準電圧と関連付ける第6処理と、
を実行する、
請求項3~5のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記取得処理と前記関連付け処理との間において、
前記変位が前記アクチュエータの可動範囲を超過するか否かの判定を行う判定処理と、
前記判定処理の結果が、前記変位が前記可動範囲を超過する場合に、その旨を報知する報知処理と、を実行し、
前記制御部は、前記判定処理の結果が、前記変位が前記可動範囲を超過しない場合に、前記関連付け処理及び前記加工処理を実行する、
請求項1~7のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記取得処理と前記関連付け処理との間において、前記変位が前記アクチュエータの可動範囲を超過するか否かの判定を行う判定処理を実行し、
前記制御部は、前記判定処理の結果が、前記変位が前記可動範囲を超過する場合には、前記変位が前記可動範囲に含まれるように前記ラインを複数の部分に分割すると共に、それぞれの部分に対して前記関連付け処理及び前記加工処理を実行する、
請求項1~7のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
第1面と前記第1面の反対側の第2面とを含み、支持部に支持された対象物に対して、集光レンズを介して前記第1面側からレーザ光を照射するためのレーザ照射部と、前記第2面から前記第1面に向かうZ方向に沿って前記集光レンズを駆動するためのアクチュエータと、前記Z方向に交差するX方向に沿って前記レーザ光の集光点が前記対象物に対して相対移動するように、前記支持部及び前記レーザ照射部の少なくとも一方を移動させるための第1移動部と、を少なくとも制御することにより、レーザ加工を行うレーザ加工方法であって、
前記Z方向についての前記第1面の変位を示す変位情報を取得する取得工程と、
前記取得工程の後に、前記変位情報に基づいて、前記変位の中心値を含む前記変位の一部の範囲である中心範囲の特定値と、前記アクチュエータの駆動電圧の基準電圧と、を関連付ける関連付け工程と、
前記関連付け工程の後に、前記基準電圧を中心に前記アクチュエータを駆動させることにより、前記Z方向についての前記レーザ光の集光点の位置を前記変位に応じて調整しながら、前記X方向に沿うラインに沿って前記集光点を相対移動させ、前記ラインに沿って前記対象物のレーザ加工を行う加工工程と、を備える、
レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置、及び、レーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザダイシング装置が記載されている。このレーザダイシング装置は、ウェハを移動させるステージと、ウェハにレーザ光を照射するレーザヘッドと、各部の制御を行う制御部と、を備えている。レーザヘッドは、ウェハの内部に改質領域を形成するための加工用レーザ光を出射するレーザ光源と、加工用レーザ光の光路上に順に配置されたダイクロイックミラー及び集光レンズと、AF装置と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の装置では、オートフォーカス誤差信号の出力特性を測定するキャリブレーション動作が実行される。キャリブレーション動作では、ウェハの中央部分の基準位置が集光レンズの直下となるように、ステージを制御する。続いて、第2アクチュエータの制御により、AF用レーザ光の集光位置の調整に寄与するフォーカスレンズ群を移動させる。このとき、オートフォーカス誤差信号がゼロとなるようする。これにより、AF用レーザ光の集光点をウェハの表面に一致させる。
【0005】
そして、第1アクチュエータの制御により、AF用レーザ光及び加工用レーザ光をウェハに集光するための集光レンズを移動可能範囲の全体にわたって移動させながら、オートフォーカス誤差信号の出力特性を測定し、その出力特性をルックアップテーブルとして保持する。このように、特許文献1に記載の装置では、レーザ加工に先立って、ウェハの中央部分の基準位置にてAF装置のキャリブレーションが行われる。
【0006】
ところで、上記のように、ウェハの表面の変位の分布によらずに、一律にウェハの中央部分の基準位置においてキャリブレーションを行って、その基準位置におけるウェハの表面の高さを中心にアクチュエータを上下に駆動させようとすると、つぎのような問題が生じ得る。すなわち、例えば基準位置がウェハの表面の高さの上限(又は下限)であった場合には、実際の加工時に、アクチュエータの可動範囲のうちの中心よりも下側(又は上側)のみを使用することとなり、ウェハの表面の変位量がアクチュエータの可動範囲を超える部分が多くなる。
【0007】
一般に、AF装置(変位センサ)がウェハの表面の変位を測定可能な測長範囲は、集光レンズのアクチュエータの可動範囲よりも広い。したがって、ウェハの表面の変位量がアクチュエータの可動範囲を超える部分では、変位量の測定が可能であったとしても、その変位量に応じて適切に集光レンズを移動させながらの加工(追従加工)が困難となる。すなわち、このような場合には、追従加工の可能な範囲が狭められる。
【0008】
本発明は、追従加工の可能範囲が狭められることを抑制可能なレーザ加工装置、及び、レーザ加工方法提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレーザ加工装置は、第1面と第1面の反対側の第2面とを含む対象物を支持するための支持部と、支持部に支持された対象物に対して、集光レンズを介して第1面側からレーザ光を照射するためのレーザ照射部と、第2面から第1面に向かうZ方向に沿って集光レンズを駆動するためのアクチュエータと、Z方向に交差するX方向に沿ってレーザ光の集光点が対象物に対して相対移動するように、支持部及びレーザ照射部の少なくとも一方を移動させるための第1移動部と、少なくともアクチュエータ、レーザ照射部、及び第1移動部を制御しつつ、対象物にレーザ光を照射して対象物のレーザ加工を行う制御部と、を備え、制御部は、Z方向についての第1面の変位を示す変位情報を取得する取得処理と、取得処理の後に、変位情報に基づいて、変位の中心値を含む変位の一部の範囲である中心範囲の特定値と、アクチュエータの駆動電圧の基準電圧と、を関連付ける関連付け処理と、関連付け処理の後に、基準電圧を中心にアクチュエータを駆動させることにより、Z方向についてのレーザ光の集光点の位置を変位に応じて調整しながら、X方向に沿うラインに沿って集光点を相対移動させ、ラインに沿って対象物のレーザ加工を行う加工処理と、を実行する。
【0010】
本発明に係るレーザ加工方法は、第1面と第1面の反対側の第2面とを含み、支持部に支持された対象物に対して、集光レンズを介して第1面側からレーザ光を照射するためのレーザ照射部と、第2面から第1面に向かうZ方向に沿って集光レンズを駆動するためのアクチュエータと、Z方向に交差するX方向に沿ってレーザ光の集光点が対象物に対して相対移動するように、支持部及びレーザ照射部の少なくとも一方を移動させるための第1移動部と、を少なくとも制御することにより、レーザ加工を行うレーザ加工方法であって、Z方向についての第1面の変位を示す変位情報を取得する取得工程と、取得工程の後に、変位情報に基づいて、変位の中心値を含む変位の一部の範囲である中心範囲の特定値と、アクチュエータの駆動電圧の基準電圧と、を関連付ける関連付け工程と、関連付け工程の後に、基準電圧を中心にアクチュエータを駆動させることにより、Z方向についてのレーザ光の集光点の位置を変位に応じて調整しながら、X方向に沿うラインに沿って集光点を相対移動させ、ラインに沿って対象物のレーザ加工を行う加工工程と、を備える。
【0011】
これらの装置及び方法では、まず、Z方向についての対象物の第1面の変位を示す変位情報が取得される。その後、取得された変位情報に基づいて、対象物の第1面の変位の中心値を含む変位の一部の範囲である中心範囲の特定の値と、アクチュエータの駆動電圧の基準電圧と、が関連付けられる。そして、その基準電圧を中心にアクチュエータを駆動させることにより、Z方向についてのレーザ光の集光点の位置を対象物の第1面の変位に応じて調整しながら、X方向に沿うラインに沿って集光点を相対移動させ、ラインに沿って対象物のレーザ加工(追従加工)が行われる。このため、追従加工の際に、少なくともアクチュエータの可動範囲の中心よりも下側又は上側のみが使用されることが避けられる。よって、例えば一律に対象物の中心での第1面の変位量(高さ)とアクチュエータの基準電圧とが関連づけられる場合と比較して、追従加工の可能範囲が狭められることを抑制可能である。
【0012】
本発明に係るレーザ加工装置では、特定値は、変位の中心値であってもよい。この場合、追従加工において、アクチュエータの可動範囲の中心よりも下側及び上側が均等に使用されることとなる。よって、追従加工の可能範囲が狭められることが確実に抑制される。
【0013】
本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ照射部と一体的に移動するように設けられており、対象物に向けて測定光を出射すると共に測定光の反射光を入力することにより、第1面の変位を測定して変位情報を取得するための変位センサを備えてもよい。この場合、変位センサを用いて対象物の第1面の変位を示す変位情報を取得可能である。
【0014】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、変位センサによって、連続的に変位を測定して変位情報を取得してもよい。この場合、対象物の第1面の実際の変位により一致した変位情報を取得可能である。
【0015】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、変位センサによって、第1面内の複数箇所において離散的に変位を測定して変位情報を取得してもよい。この場合、取得処理にかかる時間を短縮可能である。
【0016】
本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ照射部及び変位センサを、対象物に対してZ方向に沿って相対移動させるための第2移動部を備え、制御部は、関連付け処理において、第1移動部の制御によって、第1面の変位が特定値となる第1位置にレーザ照射部及び変位センサを移動させる第1処理と、第1処理の後に、第2移動部の制御によって、測定光が第1面に集光するようにZ方向に沿ってレーザ照射部及び変位センサを相対移動させる第2処理と、第2処理の後に、測定光が第1面に集光したときの変位センサの変位の測定値を基準電圧と関連付ける第3処理と、を実行してもよい。このように、関連づけ処理では、対象物の第1面の変位の実際の測定値を特定値として、アクチュエータの駆動電圧の基準電圧に関連づけることができる。
【0017】
本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ照射部及び変位センサを、対象物に対してZ方向に沿って相対移動させるための第2移動部を備え、制御部は、関連付け処理において、第1移動部の制御によって、第1面の変位が下限値又は上限値となる第2位置にレーザ照射部及び変位センサを移動させる第4処理と、第4処理の後に、第2移動部の制御によって、測定光が第1面に集光するようにZ方向に沿ってレーザ照射部及び変位センサを相対移動させる第5処理と、第5処理の後に、測定光が第1面に集光したときの変位センサの変位の測定値にオフセット量を加味したオフセット値が中心範囲に含まれるようにオフセット量を設定し、オフセット値を特定値として基準電圧と関連付ける第6処理と、を実行してもよい。このように、関連づけ処理では、対象物の第1面の変位の実際の測定値からオフセットされたオフセット値を特定値として、アクチュエータの駆動電圧の基準電圧に関連づけることができる。
【0018】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、取得処理と関連付け処理との間において、変位がアクチュエータの可動範囲を超過するか否かの判定を行う判定処理と、判定処理の結果が、変位が可動範囲を超過する場合に、その旨を報知する報知処理と、を実行し、制御部は、判定処理の結果が、変位が可動範囲を超過しない場合に、関連付け処理及び加工処理を実行してもよい。この場合、対象物の第1面の変位がアクチュエータの可動範囲を超過する場合を認識することが可能となる。
【0019】
本発明に係るレーザ加工装置では、制御部は、取得処理と関連付け処理との間において、変位がアクチュエータの可動範囲を超過するか否かの判定を行う判定処理を実行し、制御部は、判定処理の結果が、変位が可動範囲を超過する場合には、変位が可動範囲に含まれるようにラインを複数の部分に分割すると共に、それぞれの部分に対して関連付け処理及び加工処理を実行してもよい。この場合、追従加工の可能範囲が拡大される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、追従加工の可能範囲が狭められることを抑制可能なレーザ加工装置、及び、レーザ加工方法提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたレーザ照射部の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、レーザ加工(追従加工)の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、変位センサとアクチュエータとの関係を示す図である。
【
図5】
図5は、追従加工の問題点を説明するための図である。
【
図6】
図6は、レーザ加工方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、追従加工の問題点を説明するための図である。
【
図8】第1実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図8に示されたレーザ加工方法の作用・効果を示す図である。
【
図10】
図10は、追従加工の問題点を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図12】
図11に示されたレーザ加工後方の作用・効果を示す図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第5実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、対象物の変位がアクチュエータの可動範囲を超過する場合を示すグラフである。
【
図17】
図17は、第5実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、第5実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、第5実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図20】変形例を説明するための対象物の平面図である。
【
図21】変形例を説明するための変位センサ電圧のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、各図には、X軸、Y軸、及びZ軸によって規定される直交座標系を示す場合がある。
[レーザ加工装置、及び、レーザ加工の概要]
【0023】
図1は、一実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
図2は、
図1に示されたレーザ照射部の構成を示す図である。
図2には、レーザ加工の予定を示す仮想的なラインAを示している。
図1及び
図2に示されるように、レーザ加工装置1は、ステージ(支持部)2と、レーザ照射部3と、駆動部(移動部)4,5と、制御部6と、を備えている。レーザ加工装置1は、対象物11にレーザ光Lを照射することにより、対象物11に改質領域12を形成するための装置である。
【0024】
ステージ2は、例えば対象物11に貼り付けられたフィルムを保持することにより、対象物11を支持する。ステージ2は、Z方向に平行な軸線を回転軸として回転可能である。ステージ2は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動可能とされてもよい。なお、X方向及びY方向は、互いに交差(直交)する第1水平方向及び第2水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。対象物11は、第1面11aと第1面11aの反対側の第2面11bとを有する。対象物11は、例えば半導体を含むウェハ(一例としてシリコンウェハ)である。
【0025】
レーザ照射部3は、対象物11に対して透過性を有するレーザ光Lを集光して対象物11に照射する。ステージ2に支持された対象物11の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光点Cに対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、対象物11の内部に改質領域12が形成される。なお、集光点Cは、レーザ光Lが集光される点である。ただし、集光点Cは、例えば、空間光変調器7に提示された変調パターンに応じてレーザ光Lが変調されている場合(例えば各種の収差が付与されている場合)等であって、レーザ光Lが一点に集光されない場合には、レーザ光Lのビーム強度が最も高くなる位置又はビーム強度の重心位置から所定範囲の領域であり得る。
【0026】
改質領域12は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域12としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域12は、改質領域12からレーザ光Lの入射側及びその反対側に亀裂が延びるように形成され得る。そのような改質領域12及び亀裂は、例えば対象物11の切断に利用される。
【0027】
一例として、ステージ2をX方向に沿って移動させ、対象物11に対して集光点CをX方向に沿って相対的に移動させると、複数の改質スポット12sがX方向に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポット12sは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域12は、1列に並んだ複数の改質スポット12sの集合である。隣り合う改質スポット12sは、対象物11に対する集光点Cの相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
【0028】
駆動部4は、ステージ2をZ方向に交差(直交)する面内の一方向に移動させる第1ユニット41と、ステージ2をZ方向に交差(直交)する面内の別方向に移動させる第2ユニット42と、を含む。一例として、第1ユニット41は、ステージ2をX方向に沿って移動させ、第2ユニット42は、ステージ2をY方向に沿って移動させる。また、駆動部4は、ステージ2をZ方向に平行な軸線を回転軸として回転させる。駆動部5は、レーザ照射部3を支持している。駆動部5は、レーザ照射部3をX方向、Y方向、及びZ方向に沿って移動させる。レーザ光Lの集光点Cが形成されている状態においてステージ2及び/又はレーザ照射部3が移動させられることにより、集光点Cが対象物11に対して相対移動させられる。すなわち、駆動部4,5は、対象物11に対してレーザ光Lの集光点Cが相対移動するように、ステージ2及びレーザ照射部3の少なくとも一方を移動させる第1移動部及び第2移動部である。
【0029】
制御部6は、ステージ2、レーザ照射部3、及び駆動部4,5の動作を制御する。制御部6は、処理部、記憶部、及び入力受付部を有している(不図示)。処理部は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。処理部では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。記憶部は、例えばハードディスク等であり、各種データを記憶する。入力受付部は、各種情報を表示すると共に、ユーザから各種情報の入力を受け付けるインターフェース部である。入力受付部は、GUI(Graphical User Interface)を構成している。
【0030】
図2に示されるように、レーザ照射部3は、光源31と、空間光変調器7と、アクチュエータ8と、変位センサ9と、集光レンズ33と、ミラー34と、を有している。光源31は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光Lを出力する。なお、レーザ照射部3は、光源31を有さず、レーザ照射部3の外部からレーザ光Lを導入するように構成されてもよい。
【0031】
空間光変調器7は、例えば液晶層に形成した変調パターンによって、光源31から出力されたレーザ光Lを変調する。集光レンズ33は、空間光変調器7によって変調されて空間光変調器7から出力されたレーザ光Lを対象物11に向けて集光する。つまり、レーザ照射部3は、ステージ2に支持された対象物11に対して、集光レンズ33を介して第1面11a側からレーザ光Lを照射するためのものである。
【0032】
ミラー34は、レーザ光Lの光路上において、集光レンズ33の前段(ここでは、集光レンズ33と空間光変調器7との間)に配置されている。ミラー34は、集光レンズ33に向けてレーザ光Lを透過させる。
【0033】
変位センサ9は、測定用レーザ光LAを出力する。ミラー34は、測定用レーザ光LAの光路上に配置されており、測定用レーザ光LAを集光レンズ33に向けて反射する。これにより、測定用レーザ光LAは、レーザ光Lの光軸と同一の光軸により対象物11に照射されることとなる。つまり、ここでは、変位センサ9はレーザ光Lと同軸に構成されている。変位センサ9は、集光レンズ33及びミラー34を介して、測定用レーザ光LAの対象物11による反射光LRを入力する。変位センサ9は、反射光LRに関する情報を、対象物11の第1面11aの変位(Z軸方向の高さであり、凹凸及び傾き等を含む)に関する変位情報として制御部6に出力する。変位情報は、例えば、反射光LRに応じた変位センサ9の電圧値(以下、「変位センサ電圧」という場合がある)である。
【0034】
このように、レーザ加工装置1は、レーザ照射部3と一体的に移動するように設けられており、対象物11に向けて測定用レーザ光(測定光)LAを出射すると共に測定用レーザ光LAの反射光LRを入力することにより、第1面11aの変位を測定して変位情報を取得するための変位センサ9を備えることとなる。また、制御部6は、変位センサ9を制御することにより、対象物11の第1面11aの変位を示す変位情報(変位センサ電圧)を取得することができる。
【0035】
なお、変位センサ9は、上述したように、ここではレーザ光Lと同軸のセンサであり、一例として非点収差方式のセンサ等である。ただし、変位センサ9は、レーザ光Lと別軸のセンサであってもよい。この場合、変位センサ9は、三角測距方式、レーザ共焦点方式、白色共焦点方式、分光干渉方式、非点収差方式等のセンサとされ得る。
【0036】
アクチュエータ8は、集光レンズ33に設けられている。アクチュエータ8は、Z方向に沿って集光レンズ33を駆動するためのものである。アクチュエータ8は、基準電圧が付与されたときの伸び量を中心として、付与される駆動電圧の大きさに応じて伸縮することにより、Z方向に沿って集光レンズ33を駆動する。Z方向は、ここでは対象物11の第2面11bから第1面11aに向かう方向である。
【0037】
制御部6は、上記のとおりコンピュータ装置として構成されており、少なくとも、ステージ2、アクチュエータ8及び変位センサ9を含むレーザ照射部3、及び駆動部4,5を制御しつつ、対象物11にレーザ光Lを照射して対象物11のレーザ加工を行う。制御部6の処理の詳細については後述する。
【0038】
以上のようなレーザ加工装置1では、次のようにレーザ加工が行われる。
図3の(a)は、対象物11の平面図であり、
図3の(b)は、レーザ加工の様子を示す断面図である。ここでは、対象物11に対して、一例として、Z方向からみたときの対象物11の中心11cと同心の円形状のラインAが設定されている。ラインAは、レーザ光Lの照射による加工が行われる加工予定を示すラインである。ここでは、対象物11は、第1面11aが集光レンズ33に対向する向きでステージ2に支持されている。すなわち、ここでは、第1面11aがレーザ光L及び測定用レーザ光LAの入射面である。
【0039】
制御部6は、変位センサ9を制御することにより、変位センサ9から第1面11aの変位を示す変位情報(変位センサ電圧)を取得する。また、制御部6は、レーザ照射部3を制御することにより、第1面11a側から対象物11にレーザ光Lを照射する。その状態において、制御部6は、駆動部4,5を制御することによって、レーザ光Lの集光点CをラインAに沿って対象物11に対して相対移動させる。
【0040】
これと共に、制御部6は、レーザ光Lの集光点Cが第1面11aから所望の深さ(Z軸高さ)Dsで一定となるように、変位情報に基づいてアクチュエータ8を制御し、集光レンズ33をZ方向に沿って移動させる。これにより、第1面11aがZ方向に変位している場合であっても、第1面11aから一定の深さDsにおいてラインAに沿った改質領域12が形成される。このように、レーザ加工装置1では、アクチュエータ8及び変位センサ9を用いた追従加工を行うことができる。
[問題点の説明]
【0041】
ここで、
図4は、変位センサとアクチュエータとの関係を示す図である。
図4の(a)の縦軸は、変位センサ9の変位センサ電圧VDを示し、
図4の(a)の横軸は、対象物11の第1面11aのZ方向に沿った変位(Z軸高さ)を示している。
図4の(a)には、変位センサ電圧VDと、アクチュエータ8の可動範囲RAとが示されている。
【0042】
図4に示されるように、ここでは、変位センサ電圧VDが第1面11aの変位に応じて変化可能な範囲であって、変位センサ9が第1面11aの変位を測定可能なZ軸高さの範囲である測長範囲RDに比べて、アクチュエータ8の可動範囲RAが狭くなっている。したがって、
図4の(b)に示されるように、対象物11の第1面11aの変位がアクチュエータ8の可動範囲RAを越える変位ODとなる部分では、変位センサ9によって変位ODを測定可能であったとしても、ラインAに沿ってレーザ加工を進行させたときに追従加工を行うことが困難となる。
【0043】
このような問題は、一例として、
図5の(a)に示されるように、対象物11が中心11cから外縁に向けて厚くなるように第1面11aに一様に変位が生じている場合であって、相対的に厚い外縁部分に設定されたラインAに沿ったレーザ加工を行う場合に生じることがある。このような対象物11に対するレーザ加工について具体的に説明する。
【0044】
図6は、レーザ加工方法の一例を示すフローチャートである。
図5,6に示されるように、ここでは、まず、アライメントが行われる(工程S11)。より具体的には、工程S11では、例えば対象物11を透過する光により対象物11を撮像して対象物11の画像を取得する。そして、予め保持されている対象物11の基準画像を含む初期情報と取得された画像とに基づいて、第1面11aに沿った方向(X方向及びY方向)におけるレーザ光Lの照射位置のアライメントが行われる。
【0045】
続いて、駆動部4,5が駆動され、レーザ照射部3が対象物11に対してX方向及びY方向に相対移動されることにより、レーザ照射部3が対象物11の中心11c上に移動させられる(工程S12)。なお、以下でも同様であるが、ここではレーザ照射部3が変位センサ9を含む。したがって、レーザ照射部3を移動させることは、変位センサ9も移動させることを意味する。
【0046】
続いて、対象物11の中心11cにおいて例えばレチクルを用いてハイトセットが行われる(工程S13)。より具体的には、工程S13では、対象物11の中心11cにおいて、測定用レーザ光LAが対象物11の第1面11aに集光するように、駆動部4,5が駆動されてレーザ照射部3の全体が対象物11に対してZ方向に沿って相対移動させられ、測定用レーザ光LAの集光点が対象物11に対してZ方向に沿って相対移動させられる。そして、測定用レーザ光LAの集光点が第1面11aに一致したときの変位センサ電圧VDの値であるハイトセット電圧が取得される。
【0047】
続いて、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧が設定される(工程S14)。この工程S14では、アクチュエータ8の基準電圧と工程S13で取得されたハイトセット電圧とが関連付けられる。より具体的には、例えば、変位センサ9の変位センサ電圧がハイトセット電圧であるときに、アクチュエータ8に基準電圧が付与されるように(すなわち、アクチュエータ8の伸縮量が基準電圧に応じた量となるように)、基準電圧が設定される。これにより、例えば、第1面11aの変位に応じて変位センサ電圧VDがハイトセット電圧を含む範囲で変動したときに、アクチュエータ8の伸縮量も、基準電圧に対応する量を中心として変動することとなる。
【0048】
続く工程では、駆動部4,5が駆動されることにより、レーザ照射部3がX方向及びY方向に移動させられ、レーザ照射部3がラインA上に移動される(工程S15)。そして、加工が行われる(工程S16)。工程S16では、駆動部4,5が駆動されることにより、レーザ光Lの集光点CがラインAに沿って対象物11に対して相対移動させられる。このとき、変位センサ9により第1面11aの変位が測定される。そして、アクチュエータ8が、変位センサ9が測定した第1面11aの変位を示す変位情報(変位センサ電圧VD)に応じて伸縮されることにより、集光レンズ33がZ方向に沿って移動させられる。
【0049】
図5の(b)は、このときの変位センサ電圧VDと集光レンズ33(集光点C)のZ軸高さADとの関係の一例を示すグラフである。
図5の(b)の横軸は、X方向及びY方向における集光点C(レーザ照射部3)の移動距離を示している。
図5の(b)に示されるように、変位センサ電圧VDは、対象物11の形状に起因して、対象物11の中心11cから外縁側のラインAに向かうにつれて(移動距離が増すにつれて)大きくなる。
【0050】
アクチュエータ8の可動範囲RAは、基準電圧に対応する中心値Aоを中心とした範囲である。そして、基準電圧は、対象物11の中心11cでの第1面11aの変位を示すハイトセット電圧に関連付けられている。上述したように、対象物11は、中心11cから外縁に向かうにつれて厚さがますような形状を有している。したがって、対象物11の第1面11aのZ軸高さが中心11cで最も低くなることから、ハイトセット電圧は変位センサ電圧VDの下限となる。
【0051】
このため、アクチュエータ8は、その可動範囲RAのうちの中心値Aоよりも下側(例えば延びる側)で駆動されることがなく、可動範囲RAのうちの中心値Aоよりも上側(例えば縮む側)のみで駆動されることとなる。その結果、移動距離が中心11cに対応する位置Poから距離Paに至るまでは、変位センサ電圧VDの変化に応じてアクチュエータ8が駆動されて集光点CのZ軸高さADが調整されるものの、距離Pa以降では変位センサ電圧VDがアクチュエータ8の可動範囲RAを越えることにより、アクチュエータ8が停止され、集光点CのZ軸高さADの調整が行われない。すなわち、追従加工が困難となる上記の問題が生じ得る。
【0052】
引き続き、追従加工が困難となる別の例について説明する。
図7の(a)は、対象物11の断面図であり、
図7の(b)は、ラインAに沿って対象物11を展開した場合の断面図である。この例では、対象物11の第1面11aに対して
図5の(a)に示されるような一様な変位が生じていないものの、ラインAに沿って変位、すなわち、ラインAに沿った第1面11aのZ軸高さの分布が生じている。
【0053】
このような対象物11に対して、
図6に示されたレーザ加工方法と同様に、対象物11の中心11cにおいてハイトセットを行い、そのときのハイトセット電圧に関連付けられた基準電圧に基づいてアクチュエータ8を駆動すると、移動距離が距離Pbに至るまで、及び、距離Pc以降では、変位センサ電圧VDの変化に応じてアクチュエータ8が駆動されて集光点CのZ軸高さADが調整されるものの、距離Pbと距離Pcとの間では変位センサ電圧VDがアクチュエータ8の可動範囲RAを越えることにより、アクチュエータ8が停止され、集光点CのZ軸高さADの調整が行われない。すなわち、ここでも、追従加工が困難となる上記の問題が生じ得る。
【0054】
以上のように、対象物11の第1面11aの変位の分布によらずに一律に対象物11の中心11cにおいてハイトセットを行って、中心11cで得られるハイトセット電圧に対応する基準電圧を中心にアクチュエータ8を駆動させようとすると、追従加工の可能な範囲が狭められるおそれがある。
[第1実施形態]
【0055】
これに対して、本実施形態では、追従加工の可能な範囲が狭められることを抑制する。引き続いて、レーザ加工装置及びレーザ加工方法の第1実施形態について具体的に説明する。ここでは、対象物11は
図7に示されるものと同様とする。
図8は、第1実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【0056】
図8に示されるように、ここでは、まず、工程S11と同様にアライメントを行う(工程S21)。より具体的には、工程S21では、制御部6が、アライメント用カメラ(不図示)を制御することにより、対象物11を透過する光により対象物11を撮像して対象物11の画像を取得する。そして、予め制御部6のメモリ等に保持されている対象物11の基準画像を含む初期情報と、取得した画像とに基づいて、第1面11aに沿った方向(X方向及びY方向)におけるレーザ光Lの照射位置のアライメントを行う。
【0057】
続いて、ラインAのトレースを行うことにより(工程S22、取得工程)、対象物11の第1面11aの変位を示す変位情報を取得する(工程S23、取得工程)。この工程S22,S23について具体的に説明する。工程S22,S23では、まず、制御部6が、駆動部4,5を制御することにより、レーザ照射部3をX方向及びY方向に沿って移動させ、レーザ照射部3をラインA上に配置する。なお、上述したように、ここでは、変位センサ9はレーザ照射部3と一体的に移動する。したがって、レーザ照射部3を移動させることは、変位センサ9を移動させることを意味する。
【0058】
続いて、工程S22,S23では、制御部6が、駆動部4,5を制御することにより、レーザ照射部3をラインAに沿って相対移動させながら、変位センサ9を制御することにより、対象物11に向けて測定用レーザ光LAを照射する(トレースを行う)。これにより、制御部6は、測定用レーザ光LAの反射光LRに応じて変位センサ9から出力される変位センサ電圧VDを、対象物11の第1面11aの変位を示す変位情報として取得する。つまり、制御部6は、Z方向についての第1面11aの変位を示す変位情報を取得する取得処理を実行することとなる。
【0059】
この結果、対象物11の第1面11aのラインAに沿った変位情報が取得される。つまり、ここでは、制御部6は、変位センサ9によって連続的に第1面11aの変位を測定し、変位情報を取得する。これにより、制御部6では、第1面11aの変位のラインAに沿った分布が得られることとなる。したがって、制御部6によれば、ラインAに沿って変位が変化する第1面11aの何処の位置でハイトセットを行うかを選択可能となる。
【0060】
続く工程では、制御部6は、変位情報に基づいて、駆動部4,5を制御してレーザ照射部3をX方向及びY方向に移動させることにより、第1面11aの変位が第1面11aの変位の範囲の中心値となる第1位置にレーザ照射部3を配置する(工程S24)。なお、第1位置は、X方向及びY方向を含むXY面内の位置である。
【0061】
続いて、工程S13と同様に、第1位置においてハイトセットを行う(工程S25)。より具体的には、工程S25では、制御部6は、レーザ照射部3が第1位置に配置された状態で、測定用レーザ光LAが対象物11の第1面11aに集光するように駆動部4,5を駆動し、レーザ照射部3をZ方向に沿って相対移動させ、測定用レーザ光LAの集光点を対象物11に対してZ方向に沿って相対移動させる。そして、制御部6は、測定用レーザ光LAの集光点が第1面11aに一致したときの変位センサ電圧VDの値であるハイトセット電圧を取得する。
【0062】
続いて、工程S14と同様に、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧を設定する(工程S26)。この工程S26では、制御部6は、アクチュエータ8の基準電圧と工程S25で取得されたハイトセット電圧とを関連付ける。より具体的には、例えば、変位センサ9の変位センサ電圧VDがハイトセット電圧であるときに、アクチュエータ8に基準電圧が付与されるように(すなわち、アクチュエータ8の伸縮量が基準電圧に応じた量となるように)、基準電圧が設定される。
【0063】
これにより、
図9に示されるように、アクチュエータ8の可動範囲RAが、第1位置Peでの第1面11aの変位(Z軸高さであり、変位の中心値)を中心値Aоとして設定されることとなる。よって、アクチュエータ8は、追従加工の際に、可動範囲RAのうちの中心値Aоよりも下側(例えば延びる側)、及び、可動範囲RAのうちの中心値Aоよりも上側(例えば縮む側)の両方で駆動されることとなり、アクチュエータ8が停止されて追従加工が困難となる範囲が縮小される(ここでは0となる)。
【0064】
なお、以上の工程S24~S26では、ハイトセットを行う第1位置を、第1面11aの変位が第1面11aの変位の範囲の中心値となる位置とした。しかし、第1位置は、中心値となる位置でなくてもよく、第1面11aの変位の中心値を含む一部の範囲である中心範囲の特定値となる位置とすることができる。ただし、ここでの中心範囲は、少なくとも、第1面11aの変位の上限値及び下限値を除く範囲である。
【0065】
したがって、制御部6は、以上の工程S24~S26にわたって、変位情報に基づいて、変位の中心値を含む変位の一部の範囲である中心範囲の特定値(ここでは特定値となる第1位置でのハイトセット電圧値)と、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧と、を関連付ける関連付け処理を実行することとなる。また、本実施形態に係るレーザ加工方法では、以上の工程S24~S26にわたって、変位情報に基づいて、変位の中心値を含む変位の一部の範囲である中心範囲の特定値と、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧と、を関連付ける関連付け工程を実施することとなる。上記の例は、特定値を中心値とした例である。
【0066】
さらに、制御部6は、以上の工程S24~S26にわたって、関連付け処理として、駆動部4,5の制御によって、第1面11aの変位が中心範囲の値となる第1位置にレーザ照射部3を移動させる第1処理と、第1処理の後に、駆動部4,5の制御によって、測定用レーザ光LAの第1面11aに集光するようにZ方向に沿ってレーザ照射部3を相対移動させる第2処理と、第2処理の後に、測定用レーザ光LAが第1面11aに集光したときの変位センサ9の変位の測定値(ハイトセット電圧)をアクチュエータ8の基準電圧と関連付ける第3処理と、を実行することとなる。
【0067】
続く工程では、レーザ照射部3をラインAに移動させる(工程S27)。より具体的には、工程S27では、制御部6は、駆動部4,5を制御することによって、レーザ照射部3をX方向及びY方向に沿って移動させ、レーザ照射部3をラインA上に配置する。
【0068】
その後、実際にレーザ加工を行う(工程S28、加工工程)。すなわち、制御部6は、基準電圧を中心にアクチュエータ8を駆動させることにより、Z方向についてのレーザ光Lの集光点Cの位置を第1面11aの変位に応じて調整しながら、X方向に沿うラインAに沿って集光点Cを相対移動させ、ラインAに沿って対象物11のレーザ加工を行う加工処理を実行する。このとき、制御部6は、既に取得している変位情報とラインA上の加工位置とに基づいて、当該加工位置での変位に応じてアクチュエータ8を駆動することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、まず、Z方向についての対象物11の第1面11aの変位を示す変位情報が取得される。その後、取得された変位情報に基づいて、対象物11の第1面11aの変位の中心値を含む変位の一部の範囲である中心範囲の特定の値と、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧と、が関連付けられる。そして、その基準電圧を中心にアクチュエータ8を駆動させることにより、Z方向についてのレーザ光Lの集光点Cの位置を対象物11の第1面11aの変位に応じて調整しながら、X方向に沿うラインAに沿って集光点Cを相対移動させ、ラインAに沿って対象物11のレーザ加工(追従加工)が行われる。このため、追従加工の際に、少なくともアクチュエータ8の可動範囲の中心よりも下側又は上側のみが使用されることが避けられる。よって、例えば一律に対象物11の中心での第1面11aの変位量(Z軸高さ)とアクチュエータ8の基準電圧とが関連づけられる場合と比較して、追従加工の可能範囲が狭められることを抑制可能である。
【0070】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、特定値は、第1面11aの変位の中心値であってもよい。この場合、追従加工において、アクチュエータ8の可動範囲RAの中心よりも下側及び上側が均等に使用されることとなる。よって、追従加工の可能範囲が狭められることが確実に抑制される。
【0071】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、レーザ照射部3と一体的に移動するように設けられており、対象物11に向けて測定用レーザ光LAを出射すると共に測定用レーザ光LAの反射光LRを入力することにより、第1面11aの変位を測定して変位情報を取得するための変位センサ9を備えている。このため、変位センサ9を用いて対象物11の第1面11aの変位を示す変位情報を取得可能である。
【0072】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置1では、制御部6は、変位センサ9によって、連続的に第1面11aの変位を測定して変位情報を取得する。このため、対象物11の第1面11aの実際の変位により一致した変位情報を取得可能である。
【0073】
さらに、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、レーザ照射部3及び変位センサ9を、対象物11に対してZ方向に沿って相対移動させるための駆動部4,5を備えている。そして、制御部6は、関連付け処理において、駆動部4,5の制御によって、第1面11aの変位が特定値となる第1位置にレーザ照射部3及び変位センサ9を移動させる第1処理と、第1処理の後に、駆動部4,5の制御によって、測定用レーザ光LAが第1面11aに集光するようにZ方向に沿ってレーザ照射部3及び変位センサ9を相対移動させる第2処理と、第2処理の後に、測定用レーザ光LAが第1面11aに集光したときの変位センサ9の変位の測定値(ハイトセット電圧値)を基準電圧と関連付ける第3処理と、を実行する。このように、関連づけ処理では、対象物11の第1面11aの変位の実際の測定値を特定値として、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧に関連づけることができる。
[第2実施形態]
【0074】
引き続いて、レーザ加工装置及びレーザ加工方法の第2実施形態について説明する。ここでは、対象物11の厚さは、
図10の(a)に示されるように、中心11cを含む中央部分で一定であり、且つ、中央部分から外縁に向けて一定の割合で漸減されている。すなわち、対象物11の第1面11aの変位量(Z軸高さ)は、中央部分において一定であり、中央部分から外縁に向かうにつれて漸減する。また、ラインAは、一方の外縁から中央部分を通り他方の外縁に至るように直線状に設定されている。
【0075】
このような対象物11に対して、中心11cにおいてハイトセットを行ってハイトセット電圧を取得すると共に、そのハイトセット電圧とアクチュエータ8の基準電圧とを関連付ける場合がある。この場合、アクチュエータ8の可動範囲RAの中心値Aоは、第1面11aの変位の上限値に設置されることとなる。したがって、この場合には、ラインAに沿った追従加工を行おうとすると、アクチュエータ8が可動範囲RAの中心値Aоよりも下側(例えば伸びる側)のみで駆動されることとなり、例えば対象物11の一方の外縁から距離Pfに至るまでの間、及び、距離Pgから対象物11の他方の外縁に至るまでの間の範囲で、変位センサ電圧VDがアクチュエータ8の可動範囲RAを越えることとなり、追従加工が困難となる。
【0076】
これに対して、本実施形態では、以下のように追従加工を行う。
図11は、第2実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
図11に示されるように、本実施形態に係るレーザ加工方法では、まず、制御部6が、対象物11の第1面11aの変位を示す変位情報を取得する(工程S31)。制御部6は、第1実施形態と同様にトレースを行うことにより変位情報を取得することも可能であるが、ここでは、対象物11の形状が既知であり、外部からの入力により変位情報を取得するものとする。
【0077】
続いて、工程S21と同様にアライメントを行う(工程S32)。続いて、レーザ照射部3を対象物11の中心11c上に移動させる(工程S33)。より具体的には、この工程S33では、制御部6は、駆動部4,5を制御することにより、レーザ照射部3を対象物11に対してX方向及びY方向に相対移動することにより、レーザ照射部3を対象物11の中心11c上に移動させる。上述したように、対象物11の中心11cは、第1面11aの変位が上限値となる第2位置である。
【0078】
続いて、工程S25と同様に、第2位置においてハイトセットを行う(工程S34)。より具体的には、工程S34では、制御部6は、レーザ照射部3が第2位置に配置された状態で、測定用レーザ光LAが対象物11の第1面11aに集光するように駆動部4,5を駆動し、レーザ照射部3をZ方向に沿って相対移動させ、測定用レーザ光LAの集光点を対象物11に対してZ方向に沿って相対移動させる。そして、制御部6は、測定用レーザ光LAの集光点が第1面11aに一致したときの変位センサ電圧VDの値であるハイトセット電圧を取得する。
【0079】
続いて、工程S26と同様に、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧を設定する(工程S35)。すなわち、この工程S35では、制御部6は、アクチュエータ8の基準電圧と工程S34で取得されたハイトセット電圧とを関連付ける。これにより、アクチュエータ8が、第1面11aの変位の上限値を中心に駆動されることとなる。このため、続く工程では、制御部6が、可動範囲RAのオフセットを行う(工程S36)。
【0080】
より具体的には、この工程S36では、制御部6は、駆動部4,5を制御することにより、レーザ照射部3をZ方向に沿って相対移動させる。ここでは、制御部6は、測定用レーザ光LAの集光点が第1面11aよりも第2面11b側に移動するように、レーザ照射部3をZ方向に沿って相対移動させる。その状態において、制御部6は、変位センサ電圧VDを取得する。この変位センサ電圧VDは、
図12に示されるように、工程S34で取得されたハイトセット電圧Vоから下側にオフセットされたオフセット値Veである。
【0081】
そして、制御部6は、そのオフセット値Veと、アクチュエータ8の基準電圧値とを関連付ける。すなわち、変位センサ9の変位センサ電圧VDがオフセット値Veであるときに、アクチュエータ8に基準電圧が付与されるように(すなわち、アクチュエータ8の伸縮量が基準電圧に応じた量となるように)、基準電圧を設定する。オフセット値Veは、対象物11の第1面11aの変位の中心値に対応する値であり、例えばハイトセット電圧Vоの1/2の値である。
【0082】
このように、制御部6は、以上の工程S34~S36にわたって、変位情報に基づいて、第1面11aの変位の中心値を含む変位の一部の範囲である中心範囲の特定値(ここではハイトセット電圧Vоのオフセット値Ve)と、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧と、を関連付ける関連付け処理を実行することとなる。また、本実施形態に係るレーザ加工方法では、以上の工程S34~S36にわたって、変位情報に基づいて、変位の中心値を含む変位の一部の範囲である中心範囲の特定値と、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧と、を関連付ける関連付け工程を実施することとなる。上記の例は、特定値を中心値とした例である。
【0083】
さらに、制御部6は、以上の工程S34~S36にわたって、関連付け処理として、駆動部4,5の制御によって、第1面11aの変位が上限値となる第2位置にレーザ照射部3を移動させる第4処理と、第4処理の後に、駆動部4,5の制御によって、第2位置において測定用レーザ光LAが第1面11aに集光するようにZ方向に沿ってレーザ照射部3を相対移動させる第5処理と、第5処理の後に、測定用レーザ光LAが第1面11aに集光したときの変位センサ9の変位の測定値(ハイトセット電圧Vо)にオフセット量を加味したオフセット値(オフセット値Veに対応する変位の値)が中心範囲に含まれるようにオフセット量を設定し、当該オフセット値Veを特定値として基準電圧と関連付ける第6処理と、を実行することとなる。
【0084】
これにより、
図12に示されるように、アクチュエータ8の可動範囲RAがオフセットされることとなる。よって、アクチュエータ8は、ラインAに沿った追従加工の際に、可動範囲RAのうちの中心値Aоよりも下側(例えば延びる側)、及び、可動範囲RAのうちの中心値Aоよりも上側(例えば縮む側)の両方で駆動されることとなり、アクチュエータ8が停止されて追従加工が困難となる範囲が縮小される(ここでは0となる)。
【0085】
続く工程では、制御部6が、工程S27と同様に、レーザ照射部3をラインAに移動させる(工程S37)。その後、工程S28と同様に、実際にレーザ加工を行う(工程S38、加工工程)。すなわち、制御部6は、基準電圧を中心にアクチュエータ8を駆動させることにより、Z方向についてのレーザ光Lの集光点Cの位置を第1面11aの変位に応じて調整しながら、X方向に沿うラインAに沿って集光点Cを相対移動させ、ラインAに沿って対象物11のレーザ加工を行う加工処理を実行する。このとき、制御部6は、既に取得している変位情報とラインA上の加工位置とに基づいて、当該加工位置での変位に応じてアクチュエータ8を駆動することができる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、追従加工の可能範囲が狭められることを抑制可能である。また、本実施形態では、関連づけ処理において、対象物11の第1面11aの変位の実際の測定値(ハイトセット電圧Vо)からオフセットされたオフセット値(オフセット値Veに対応する値)を特定値として、アクチュエータ8の駆動電圧の基準電圧に関連づけることができる。
【0087】
なお、上記の例では、ハイトセットを行う第2位置を、第1面11aの変位が上限値となる位置とした。しかし、第2位置は、対象物11の形状や変位の基準の設定に応じて、第1面11aの変位が下限値となる位置とされてもよい。
【0088】
また、変位センサ9がレーザ光Lと同軸に構成される場合、変位センサ電圧VDが第1面11aのZ軸高さの変化に対して非線形となる場合がある。上記の工程S36では、そのように変位センサ電圧VDが非線形の場合の一例である。これに対して、例えば変位センサ9がレーザ光Lと別軸に構成される場合等であって、変位センサ電圧VDが第1面11aのZ軸高さの変化に対して線形である場合等のZ軸高さに対する変位センサ電圧VDの特性が既知である場合には、工程S36において、実際にレーザ照射部3をZ方向に移動させることなく、既知の変位センサ電圧VDの特性に基づいてオフセット値Veを求めることができる。
[第3実施形態]
【0089】
引き続いて、レーザ加工装置及びレーザ加工方法の第3実施形態について説明する。
図13は、第3実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。なお、ここでは、対象物11に対して、Z方向からみたときに互いに平行に延びる直線上の複数のラインAが設定されている。
【0090】
図13に示されるように、ここでは、第1実施形態と同様に、工程S41~S48を実施する。工程S41~S48の内容は、それぞれ、工程S21~S28と同様である。ただし、工程S42では、複数のラインAのうちの一のラインAに対して工程S22と同様にトレースを行うことにより、当該一のラインAに沿っての対象物11の第1面11aの変位情報を取得する(工程S43)。また、工程S45では、当該一のラインAでの変位情報に基づいて、工程S25と同様にハイトセットを行い、工程S46では工程S26と同様に基準電圧を設定する。そして、工程S47では、工程S27と同様に、当該一のラインA上にレーザ照射部3を移動させて、工程S48では、工程S28と同様に当該一のラインAに対してレーザ加工を行う。
【0091】
その後、制御部6が、当該一のラインA(直前に加工が完了したラインA)が、複数のラインAのうちの最後のラインAであるか否かの判定を行う(工程S49)。工程S49の判定の結果、当該一のラインAが最後のラインAである場合(工程S49:YES)、処理を終了する。一方、工程S49の判定の結果、当該一のラインAが最後のラインAでない場合(工程S49:NO)、制御部6が、駆動部4,5を制御することにより、レーザ照射部3をX方向及びY方向に相対移動させ、レーザ照射部3を別のラインAに移動させる(工程S50)。
【0092】
その後、工程S42に戻り、当該別のラインAを対象として、工程S42以降の工程を再度実施する。このように、本実施形態では、複数のラインAのそれぞれに対して、変位情報を取得し、ハイトセットを行い、基準電圧を設定する。したがって、第1実施形態と同様の効果に加えて、それぞれのラインAに沿った対象物11の第1面11aの変位により適した追従加工が可能となる。
[第4実施形態]
【0093】
これに対して、
図14に示される第4実施形態では、工程S49の判定の結果、当該一のラインAが最後のラインAでない場合(工程S49:NO)、制御部6が、駆動部4,5を制御することにより、レーザ照射部3をX方向及びY方向に相対移動させ、レーザ照射部3を別のラインAに移動させる(工程S50)。その後、工程S48に戻り、当該別のラインAを対象として、工程S48を再度実施する。すなわち、本実施形態では、一のラインAのトレースで取得した変位情報、ハイトセット電圧、基準電圧を用いて、別のラインAの追従加工を行う。したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、変位情報及びハイトセット電圧の取得や基準電圧の設定にかかる時間を短くすることができる。
[第5実施形態]
【0094】
引き続いて、第5実施形態に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法について説明する。
図15は、第5実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
図15に示されるように、ここでは、第1実施形態と同様に、工程S61~S63を実施する。工程S61~S63の内容は、それぞれ、工程S21~S23と同様である。
【0095】
その後、対象物11の第1面11aの変位がアクチュエータ8の可動範囲RAを超過するか否かの判定を行う(工程S64)。より具体的には、この工程S64では、制御部6が、変位情報(変位センサ電圧VD)とアクチュエータ8の可動範囲RAとの比較に基づいて、アクチュエータ8の可動範囲RAが変位を超過するか否かの判定を行う判定処理を実行する。
【0096】
そして、工程S64の判定の結果、対象物11の第1面11aの変位がアクチュエータ8の可動範囲RAを超過する場合(工程S64:NO)に、制御部6は、その旨を報知する報知処理を実行する(工程S70)。制御部6は、報知の一例として、入力受付部に警告を表示させることができる。その後、処理を終了する。一方、工程S64の判定の結果、変位が可動範囲RAを超過しない場合には(工程S64:YES)、工程S65~S69を実施する。工程S65~S69は、第1実施形態の工程S24~S28と同様である。このように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、対象物11の第1面11aの変位がアクチュエータ8の可動範囲RAを超過する場合を認識することが可能となる。
[第6実施形態]
【0097】
引き続いて、第6実施形態に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法について説明する。本実施形態は、
図16に示されるように、対象物11の第1面11aの変位(変位センサ電圧VD)が、アクチュエータ8の可動範囲RAを大きく超過する場合に対応するためのものである。本実施形態では、
図17に示されるように、工程S71~S74が実施される。工程S71~S74は、第5実施形態の工程S61~S64と同様である。そして、工程S74の判定の結果、対象物11の第1面11aの変位がアクチュエータ8の可動範囲RAを超過しない場合には、第1実施形態の工程S24~S28と同様に、工程S75~S79を実施する。
【0098】
一方、工程S74の判定の結果、対象物11の第1面11aの変位がアクチュエータ8の可動範囲RAを超過する場合(工程S74:NO)、
図18に示されるように、ラインAのうちの第1面11aの変位が下限値となる位置、すなわち、変位センサ電圧VD及び第1面11aのZ軸高さが下限値となる位置を含む一の下限領域を抽出する(工程S81)。ここでは、制御部6は、
図16に示されるように、変位センサ電圧VDが下限値となる位置Pmを含み、位置Pmでの第1面11aのZ軸高さを可動範囲RAの下限値としたときに可動範囲RAに含まれる変位となるラインAの一部の領域を、当該一の下限領域として抽出する。ここでは、当該一の下限領域は、ラインAのうちの位置Phに至るまでの領域である。
【0099】
続いて、制御部6は、抽出した当該一の下限領域を対象にして、工程S82~工程S85にてハイトセット、基準電圧の設定、及び、追従加工を行う。これらの工程S82~工程S85の具体的な内容は、対象がラインAの全体でなく一の下限領域とされる点を除いて、第1実施形態の工程S25~S28と同様である。一例として、工程S82では、当該一の下限領域内において、第1面11aの変位が第1面11aの変位の範囲の中心値となる第1位置でのハイトセットが行われる。以上により、ラインAのうちの当該一の下限領域のみが加工される。
【0100】
続いて、
図19に示されるように、ラインAの未加工領域から、別の下限領域を抽出する(工程S86)。すなわち、工程S86では、制御部6は、ラインAの未加工領域のうち、第1面11aの変位が下限値となる位置、すなわち、変位センサ電圧VD及び第1面11aのZ軸高さが下限値となる位置を含む別の下限領域を抽出する。ここでは、制御部6は、
図16に示されるように、未加工領域のうちで変位センサ電圧VDが下限値となる位置Phを含み、位置Phでの第1面11aのZ軸高さを可動範囲RAの下限値としたときに可動範囲RAに含まれる変位となるラインAの残部の領域を、当該別の下限領域として抽出する。ここでは、当該別の下限領域は、ラインAのうちの位置Ph以降の領域である。
【0101】
続いて、制御部6は、抽出した当該別の下限領域を対象にして、工程S87~工程S89にてハイトセット、基準電圧の設定、及び、追従加工を行う。これらの工程S87~工程S89の具体的な内容は、対象がラインAの全体でなく別の下限領域とされる点を除いて、第1実施形態の工程S25~S28と同様である。一例として、工程S86では、当該別の下限領域内において、第1面11aの変位が第1面11aの変位の範囲の中心値となる第1位置でのハイトセットが行われる。以上により、ラインAのうちの当該別の下限領域がさらに加工される。
【0102】
その後、制御部6は、ラインAの全ての領域(すなわちラインAの全体)の加工が完了したから否かの判定を行う(工程S90)。工程S90の判定の結果、ラインAの全ての領域の加工が完了している場合(工程S90:YES)、処理を終了する。一方、工程S90の判定の結果、ラインAの全ての領域の加工が完了していない場合(工程S90:NO)、工程S86以降の工程を再度実施する。
【0103】
以上のように、本実施形態では、1つのラインAを、アクチュエータ8の可動範囲RAに含まれる複数の領域に分けて追従加工を行う。すなわち、本実施形態では、制御部6は、工程S74の判定(判定処理)の結果が、第1面11aの変位がアクチュエータ8の可動範囲RAを超過する場合には、第1面11aの変位が可動範囲RAに含まれるようにラインAを複数の部分(複数の下限領域)に分割すると共に、それぞれの部分に対して関連付け処理及び加工処理を実行することとなる。このため、本実施形態によれば、追従加工の可能範囲が拡大される(上記の例では、第1面11aの全ての領域で追従加工が可能となる)。
[変形例]
【0104】
以上の実施形態は、本発明の一側面を説明したものである。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されることなく任意に変形され得る。
【0105】
例えば、上記実施形態では、制御部6が、変位情報(変位センサ電圧VD)を取得するために、変位センサ9によって連続的に第1面11aの変位を測定する例を挙げた。しかしながら、
図20の(a)に示されるように、制御部6は、変位センサ9によって、対象物11の第1面11a内の複数の箇所Kにおいて離散的に変位を測定して変位情報を取得してもよい。この場合、制御部6は、複数の箇所Kのそれぞれの変位(変位に対応するそれぞれの変位センサ電圧VD)の中央値とアクチュエータ8の基準電圧とを関連付けることができる。
【0106】
また、制御部6は、
図20の(b)に示されるように、ラインAの形状によらずに、変位センサ9を用いて渦巻き状に第1面11aの変位を測定して変位情報を取得してもよい。この場合、得られた変位情報に基づいて、その変位(変位に対応する変位センサ電圧VD)の中央値とアクチュエータ8の基準電圧とを関連付けることができる。
【0107】
さらに、上記の例では、
図21の(a)に示されるように、アクチュエータ8の可動範囲RAのうちのハイトセット電圧と関連付けられる基準電圧に対応する位置を、中心値Aоとした。すなわち、アクチュエータ8に対して、ハイトセット電圧に相当する基準電圧が付与されたときのアクチュエータ8の伸縮量が、可動範囲RAの中心値Aоとなるようにされていた。この場合、中心値Aоから可動範囲RAの下限値Acまでの範囲Rcと、中心値Aоから可動範囲RAの上限値Aeまでの範囲Reとは同等となる。
【0108】
しかし、
図21の(b)に示されるように、アクチュエータ8の可動範囲RAの中心値Aоから可動範囲RAの上限値Ae側(或いは下限値Ac側)にオフセットした値A1を基準電圧に関連付けてもよい。この場合、範囲Rcが範囲Reよりも広く(或いは狭く)なる。この場合、制御部6は、関連付け処理の後に、基準電圧を含む可動範囲RAでアクチュエータ8を駆動させることにより、Z方向についてのレーザ光Lの集光点Cの位置を第1面11aの変位に応じて調整しながら、X方向に沿うラインAに沿って集光点Cを相対移動させ、ラインAに沿って対象物11のレーザ加工を行う加工処理を実行することとなる。そして、この場合の基準電圧は、可動範囲RAの中心に対してオフセットされている。
【0109】
さらに、上記の第1~6実施形態は、任意に組み合わせることができる。例えば、第3実施形態及び第4実施形態では、対象物11に対して複数の直線状のラインAが設定されている場合に、その複数のラインAにわたって追従加工を行う例を挙げている。これに対して、例えば第1実施形態においても、対象物11に対して複数の円形状のラインAが設定され、その複数の円形状のラインAにわたって追従加工を行うように、第3実施形態及び第4実施形態の各工程を適用することできる。
【符号の説明】
【0110】
1…レーザ加工装置、2…ステージ(支持部)、4,5…駆動部(第1移動部、第2移動部)、6…制御部、8…アクチュエータ、9…変位センサ、11…対象物、11a…第1面、11b…第2面、11c…中心、33…集光レンズ、A…ライン、L…レーザ光、LA…測定用レーザ光(測定光)、LR…反射光。