(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026856
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】調理システム及び加熱処理方法
(51)【国際特許分類】
A47J 39/02 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A47J39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130519
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】591190128
【氏名又は名称】株式会社下村漆器店
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】下村 昭夫
【テーマコード(参考)】
4B066
【Fターム(参考)】
4B066AA05
4B066AA11
4B066BB20
4B066BC01
4B066BC09
4B066BD18
(57)【要約】
【課題】 食事の調理から食後の食器及び食べ残した食材の殺菌処理までを効率的に行う調理システムを提供する。
【解決手段】 調理システム1は、食器を配膳トレイに載せた状態で加熱する加熱調理器と、前記加熱調理器によって食後の食器を再加熱させる再加熱制御部と、前記再加熱制御部により再加熱されたか否かを示す再加熱情報を出力する出力部とを有し、前記加熱調理器は、前記食器の温度を検知する温度センサを含み、前記再加熱制御部は、前記温度センサにより検知された温度が既定温度以上となっている時間を既定継続時間以上となるように再加熱させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器を配膳トレイに載せた状態で加熱する加熱調理器と、
前記加熱調理器によって食後の食器を再加熱させる再加熱制御部と、
前記再加熱制御部により再加熱されたか否かを示す再加熱情報を出力する出力部と
を有する調理システム。
【請求項2】
前記加熱調理器は、前記食器の温度を検知する温度センサを含み、
前記再加熱制御部は、前記温度センサにより検知された温度が既定温度以上となっている時間を既定継続時間以上となるように再加熱させる
請求項1に記載の調理システム。
【請求項3】
加熱調理器が、食器を配膳トレイに載せた状態で加熱し調理する調理ステップと、
食後の食器及び配膳トレイを前記加熱調理器に下膳する下膳ステップと、
前記加熱調理器が、下膳された食器を再加熱する再加熱ステップと
を有する加熱処理方法。
【請求項4】
前記調理ステップにおいて、複数の配膳トレイを同時に加熱調理し、
前記下膳ステップにおいて、複数の配膳トレイと、これらの配膳トレイに載せられた複数の食器とを前記加熱調理器内に収容し、
前記再加熱ステップにおいて、複数の配膳トレイに載せられた複数の食器を同時に再加熱する
請求項3に記載の加熱処理方法。
【請求項5】
前記加熱調理器は、各食器の温度を検知する温度センサを含み、
前記再加熱ステップにおいて、前記温度センサの検知結果に基づいて、複数の食器それぞれの温度が既定温度以上となるように再加熱する
請求項4に記載の加熱処理方法。
【請求項6】
複数の食器それぞれについて、既定温度以上の状態で既定継続時間以上再加熱されていたか否かを示す情報を出力する出力ステップ
をさらに有する請求項5に記載の加熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理システム及び加熱処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、板状体上の所定の位置に載置される複数の食器を前記板状体下かつ各前記食器に対応させて配置される電磁誘導コイルが発する電磁波を利用して前記各食器を電磁誘導加熱し前記各食器内に配置される食材の調理を行う複数の調理機と、前記調理機と通信ネットワークを介して接続され前記調理機の調理制御を行う調理制御装置と、を含む遠隔調理システムであって、前記調理制御装置が、食事被提供者に提供する複数の料理の組み合わせである食事の内容と、前記食事の調理を行うときに、前記電磁誘導コイルに流す電流の大きさを時系列情報として規定する加熱制御規則を識別する加熱制御規則識別情報と、を対応付けて記憶する第1記憶手段と、ユーザの操作に基づき、前記食事の内容及び前記食事の調理を行わせる前記調理機を識別する調理機識別情報を受け付ける第1受付手段と、前記食事の内容と対応付けられる前記加熱制御規則識別情報を前記第1記憶手段から抽出する第1抽出手段と、前記第1受付手段が受け付けた前記調理機識別情報で識別される前記調理機に対し、前記第1抽出手段が抽出した前記加熱制御規則識別情報を通知する通知手段と、を有し、前記第1受付手段が受け付けた調理機識別情報で識別される調理器が、前記加熱制御規則識別情報と、前記加熱制御規則識別情報で識別される前記加熱制御規則と、を対応付けて記憶する第2記憶手段と、前記通知手段による通知に含まれる前記加熱制御規則識別情報を受け付ける第2受付手段と、前記第2受付手段が受け付けた前記加熱制御規則識別情報と対応付けられる前記加熱制御規則を前記第2記憶手段から抽出する第2抽出手段と、前記第2抽出手段が抽出した前記加熱制御規則に基づいて、前記調理機の所定位置に設置される前記板状体下に配置される前記電磁誘導コイルに電流を流すことによって前記板状体上の前記食機を電磁誘導加熱し前記食事の調理を行う調理手段と、を有することを特徴とする遠隔調理システムが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、 非導電性の材料により作製され、かつ、各室内空間が断熱状態に隔てられた複数の収容室11を備えた外側容器1と同じく非導電性材料にて作製され、内部に食品Fを収容可能であって、かつ、前記外側容器1内の選択される収容室11の開空部に落し込んで装着される複数の内側容器2と前記外側容器1内の選択される収容室11の底部に配置される電磁誘導発熱体3とを含んで構成され、前記外側容器1における電磁誘導発熱体3が配置された収容室11に所定量の水Wを注入して前記電磁誘導発熱体3を電磁調理器Eにより誘導加熱したとき、発熱した電磁誘導発熱体3により加熱された熱水或いは水蒸気が当該内装された内側容器2'を間接的に加熱して、外側容器1に装着された全ての内側容器2の中、電磁誘導発熱体3で加熱された内側容器2'に収容された食品だけを選択的に加熱・保温可能とすることを特徴とする電磁誘導加熱式の食品加熱保温容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2016/121624号公報
【特許文献2】特開2010-183933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、食事の調理から食後の食器及び食べ残した食材の殺菌処理までを効率的に行う調理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る調理システムは、食器を配膳トレイに載せた状態で加熱する加熱調理器と、前記加熱調理器によって食後の食器を再加熱させる再加熱制御部と、前記再加熱制御部により再加熱されたか否かを示す再加熱情報を出力する出力部とを有する。
【0007】
好適には、前記加熱調理器は、前記食器の温度を検知する温度センサを含み、前記再加熱制御部は、前記温度センサにより検知された温度が既定温度以上となっている時間を既定継続時間以上となるように再加熱させる。
【0008】
本発明に係る加熱処理方法は、加熱調理器が、食器を配膳トレイに載せた状態で加熱し調理する調理ステップと、食後の食器及び配膳トレイを前記加熱調理器に下膳する下膳ステップと、前記加熱調理器が、下膳された食器を再加熱する再加熱ステップとを有する。
【0009】
好適には、前記調理ステップにおいて、複数の配膳トレイを同時に加熱調理し、前記下膳ステップにおいて、複数の配膳トレイと、これらの配膳トレイに載せられた複数の食器とを前記加熱調理器内に収容し、前記再加熱ステップにおいて、複数の配膳トレイに載せられた複数の食器を同時に再加熱する。
【0010】
好適には、前記加熱調理器は、各食器の温度を検知する温度センサを含み、前記再加熱ステップにおいて、前記温度センサの検知結果に基づいて、複数の食器それぞれの温度が既定温度以上となるように再加熱する。
【0011】
好適には、複数の食器それぞれについて、既定温度以上の状態で既定継続時間以上再加熱されていたか否かを示す情報を出力する出力ステップをさらに有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、食事の調理から食後の食器及び食べ残した食材の殺菌処理までを効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】調理システム1の全体構成を例示する図である。
【
図2】(a)は、配膳トレイ50と配膳トレイ50上に載せられる食器52を例示する図であり、(b)は、配膳トレイ50上面を例示する図であり、(c)は、調理器5における配膳トレイ50載置部位の透視図を例示する図である。
【
図3】(a)は、調理制御装置3の機能構成を例示する図であり、(b)は、調理器5の機能構成を例示する図である。
【
図4】(a)は、献立を例示する図であり、(b)は、各料理に関連付けられた加熱制御規則識別情報と配膳トレイ内位置IDを例示する図であり、(c)は、加熱制御規則識別情報に関連付けられた加熱制御規則を例示する図である。
【
図5】(a)配膳トレイ識別情報(配膳トレイID)に関連付けられた食器52の食器識別情報(食器ID)、及び温度センサ54の識別情報(温度センサID)を例示する図である。
【
図6】調理システム1における、再加熱処理(S10)を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
病院・老人ホームにおいて、感染症に罹患した人がいた場合、院内感染、または集団感染を引き起こす可能性があるため、入院食や、老人ホームで提供される食事には、感染症対策が必要である。具体的には、食後の食器の消毒剤による除菌が行われる。しかし、消毒剤による消毒は露出している食器表面の消毒にすぎず、食べ残した食材については、食材の内部をも除菌することは難しい。
【0015】
そこで、本発明は、食事の調理を行う調理器を利用し、食材の調理だけでなく、食後の食器及び食べ残した食材の内部まで殺菌を行うことで、感染症対策を行うものである。
【0016】
本実施形態の調理システム1について説明する。
図1は、調理システム1の全体構成を例示する図である。
図1に例示するように、調理システム1は、調理制御装置3、1つ以上の調理器5、及びユーザ端末7を含み、ネットワーク9を介して互いに接続している。
調理器5は、食器52を配膳トレイ50に載せた状態で加熱する。具体的には、食器52内の食材を加熱し、食事の調理を行う装置である。調理器5は、各食器52の温度を検知する温度センサ54を含む。
調理制御装置3は、コンピュータ端末であり、ユーザ端末7から通知された調理指示に応じて、調理器5で行われる調理の実行指示を行う装置である。
調理器5は、地理的に離れた場所に位置する調理制御装置3から通知される制御指示に基づいて調理を行う。調理器5は、本発明に係る加熱調理器の一例である。
ユーザ端末7は、例えば、管理栄養士等が操作を行って調理制御装置3へアクセスし、食事被提供者へ提供する献立を作成したり、作成した献立に従った食事の調理指示を調理器5へ送信したりする機能を備える。
【0017】
図2(a)は、配膳トレイ50と配膳トレイ50上に載せられる食器52を例示する図である。
調理器5は、平らな形状を成す板状体である配膳トレイ50を収納及び設置することが可能であり、
図2(a)に例示するように、配膳トレイ50上に複数の食器52を載せ、配膳トレイ50下且つ各食器52に対応させ配置される電磁誘導コイル502が発する電磁波を利用して各食器52を電磁誘導加熱し、各食器52内に配置された食材の調理を行う。
【0018】
図2(b)は、配膳トレイ50上面を例示する図であり、
図2(c)は、調理器5における配膳トレイ50載置部位の透視図を例示する図である。
図2(b)に例示するように、配膳トレイ50上には、各食器52を載せる位置が分かるように、目印500が付されている。また、
図2(c)に例示するように、調理器5は、配膳トレイ50の下であって、配膳トレイ50上の各食器52を載せる位置を示す目印500の下位置に、各食器52を電磁誘導加熱するための電磁誘導コイル502を備えている。
【0019】
また、配膳トレイ50上に載せる食器52は、陶製の器の下面に誘導加熱可能な磁性体が貼付される形態や、2層構造で構成され、このうち内側層が誘導加熱可能で且つ熱伝導率の高いステンレス等の金属で形成され、外側層が高い耐熱性を有するとともに内側層よりも熱伝導率の低い樹脂で形成される形態である。なお、配膳トレイ50上に載せる食器52は、誘導加熱可能な食器であれば、これら以外の形態であっても良い。
【0020】
渦巻状のコイルである電磁誘導コイル502に高周波の電流を流すと、電磁誘導の法則に従って電磁誘導コイル502の周辺に磁力線が発生し、磁力線が食器(金属)を通過するときに、食器52の内部に無数の渦電流を発生させる。渦電流が流れるとき、食器52内の金属において電気抵抗熱が発生し、この熱を利用して食器52に配置された食材の調理を行う。なお、食器52の温度の調整は、電磁誘導コイル502に流す電流の大きさを変化させることにより行う。
【0021】
図3(a)は、調理制御装置3の機能構成を例示する図である。
図3(a)に例示するように、調理制御装置3には、調理制御プログラム30がインストールされると共に、献立データベース600(献立DB600)、及び加熱制御情報データベース610(加熱制御情報DB610)、及び再加熱情報データベース620(再加熱情報DB620)が構成される。調理制御プログラム30は、加熱情報受信部300、加熱指示部302、再加熱指示受信部304、再加熱制御部306、再加熱判定部308、及び出力部310を有する。
【0022】
加熱情報受信部300は、ユーザの操作に基づいて、食材を加熱する情報を受信する。食材を加熱する情報は、献立と、調理を行わせる調理器5を識別する調理器識別情報(調理器ID)とを含む。献立は、
図4(a)に例示するように、食事被提供者に提供する複数の料理の組み合わせである。さらに、
図4(b)に例示するように、献立の構成要素である個別の料理は、その属性と、各料理を調理するための加熱制御規則を識別する加熱制御規則識別情報と、配膳トレイ50上の各料理の載置場所を示す配膳トレイ50上位置識別情報(配膳トレイ内位置ID)が対応付けられている。献立、及び各料理に関連付けられた加熱制御規則識情報と配膳トレイ内位置IDは、献立DB600に格納される。食材を加熱する情報には、配膳トレイ50を識別する配膳トレイ識別情報をさらに含めてもよい。
【0023】
加熱情報受信部300は、献立と対応づけられる加熱制御規則識別情報を抽出する。
図4(c)に例示するように、加熱制御規則識別情報は、それぞれの加熱制御規則を識別するための情報であり、加熱制御規則とは、食事被提供者に提供する複数の料理の組み合わせである食事の内容(献立)と、食器52内の食材を調理するときに、電磁誘導コイル502に流す電流の大きさを時系列情報として規定したものである。加熱制御規則識別情報は、加熱制御情報DB610に格納される。
【0024】
加熱指示部302は加熱情報受信部300により特定された、調理器識別情報により識別された調理器5に対し、通知された献立に関連付けられた加熱制御規則識別情報と、配膳トレイ内IDとを通知する。
【0025】
再加熱指示受信部304は、ユーザの操作に基づいて、ユーザ端末7から再加熱指示情報を受信する。再加熱指示情報とは、再加熱を実施する調理器5を識別する調理器識別情報である。これに加え、例えば、再加熱指示情報には、調理器5に下膳されて載置された配膳トレイIDを含めてもよい。
【0026】
再加熱制御部306は、ユーザ端末7から受信した再加熱指示情報に基づいて、調理器5によって食後の各食器52を再加熱させる。さらに、再加熱制御部306は、温度センサ54により検知された温度が既定温度以上となっている時間を既定継続時間以上となるように複数の食器52及び食べ残しを再加熱させる。具体的には、再加熱制御部306は、調理器5内に下膳され、載置されたすべての配膳トレイ50に載せられた複数の食器52それぞれについて、再加熱判定部308により再加熱が完了していると判定されるまで再加熱を調理器5へ指示する。
【0027】
再加熱判定部308は、各温度センサ54により検知された温度が80℃以上となっている時間が10分間以上継続しているか否かを判定する。具体的には、温度計測部702により計測された各食器52の温度が80℃以上となっている時間が10分間以上継続しているか否かを判定する。より具体的には、温度計測部702により通知された全ての食器52の再加熱が完了しているか否かを判定する。また、再加熱指示情報に配膳トレイIDを含む場合は、再加熱判定部308は、調理器5内に載置された全ての配膳トレイIDに対応づけられた全ての温度センサ54について、再加熱が完了しているか否かを判定する。
【0028】
出力部310は、再加熱制御部306により再加熱されたか否かを示す再加熱情報を出力する。具体的には、出力部310は、複数の食器52それぞれについて、既定温度以上の状態で既定継続時間以上再加熱されていたか否かを示す情報を出力する。より具体的には、出力部310は、ユーザ端末7へ再加熱情報を表示、再加熱情報の印刷、予め設定されたメールアドレスへ再加熱情報を送信、または再加熱情報をCD-ROM、DVD-ROM、USBメモリなどの記録媒体へ記録する。さらに、出力部310は、これらの再加熱情報の出力方法を複数組み合わせて通知してもよい。
【0029】
図3(b)に例示するように、調理器5には、調理器プログラム70がインストールされている。調理器プログラム70は、加熱部700、及び温度計測部702を有する。
加熱部700は、加熱指示部302により通知された加熱制御規則識別情報、配膳トレイ50上位置識別情報に基づいて、調理器5の所定位置に設置される配膳トレイ50下に配置される電磁誘導コイル502に電流を流すことにより配膳トレイ50上の食器52を電磁誘導加熱し、食事を調理する。
【0030】
温度計測部702は、配膳トレイ50下に設置される温度センサ54によって、各食器52、及び食器52内に配置される食材の温度を計測する。具体的には、温度センサ54は、配膳トレイ50の各食器52を載せる位置毎、または各食器52の底等に設置される。温度計測部702は、配膳トレイ50周辺(トッププレート上、及び食器52の底等)の温度を計測し、その計測値及び食器52内の食材の種類・量等に基づいて、食器52内で調理されている食材、及び下膳後の再加熱による各食器52及び食器52内の食べ残しの食材の温度を予測する。温度計測部702は、計測した温度を調理制御装置3へ通知する。
【0031】
図5(a)に例示するように、配膳トレイ識別情報(配膳トレイID)には、載せられる食器52の食器識別情報(食器ID)、及び各食器52の温度を計測する温度センサ54の識別情報(温度センサID)が関連付けられている。
【0032】
図5(b)は、各食器52の再加熱情報を例示する表である。
図5(b)に例示するように、再加熱情報は、調理器5に載置された配膳トレイ50に載せられた各食器52の再加熱が完了したか否かの情報を含む。各食器52についての再加熱情報の成否が分かるため、調理器5または食器52の不具合や、空焚きなどにより再加熱に失敗した食器52を特定することができる。再加熱に失敗したとは、すなわち殺菌が完了していないことを示すため、殺菌が完了していない食器52を特定し、個別に殺菌を行うことが可能である。
【0033】
図6は、食事の再加熱処理(S10)を説明するフローチャートである。
ステップ100(S100)において、加熱情報受信部300は、ユーザの操作に基づいて、献立、調理を行わせる調理器5を識別する調理器識別情報(調理器ID)、及び配膳トレイ識別情報(ID)を受け付ける。
ステップ105(S105)において、加熱情報受信部300は、S100において受け付けた献立と対応付けられる加熱制御規則識別情報を抽出する。さらに、加熱情報受信部300は、各料理に対応づけられる配膳トレイ上位置識別情報を抽出する。加熱指示部302は、調理器識別情報で識別される調理器5に対し、抽出した加熱制御規則識別情報、及び配膳トレイ上位置識別情報を通知する。
【0034】
ステップ110(S110)において、加熱指示部302に通知された加熱制御規則識別情報、及び配膳トレイ上位置識別情報に基づいて、調理器5の加熱部700は、汚染作業区域(汚染している食品等を取り扱う場所)において、食器52に配置された食材を、食器52を配膳トレイ50に載せた状態で加熱し、調理する。調理器5には、複数の複数の配膳トレイ50が載置され、調理器5は、複数の配膳トレイ50上の食材を同時に加熱調理する。
温度計測部702は、食器52内に配置される食材の温度を間接的に計測し、食材の温度と目標温度との差異が所定値以下となるよう、加熱部700は、加熱調理を実施する。
【0035】
ステップ115(S115)において、調理の完了した複数の配膳トレイ50が配膳される。
ステップ120(S120)において、食後の配膳トレイ50に食器52を載せ、調理器5へ下膳する。具体的には、食後の複数の配膳トレイ50とこれらの配膳トレイ50に載せられた複数の食器52とは、調理器5内に収容される。下膳された配膳トレイ50を載置する調理器5は、汚染作業区域に設置される。
【0036】
ステップ125(S125)において、ユーザの操作に基づいて、再加熱指示受信部304は、再加熱を行う調理器5を識別する調理器識別情報(調理器ID)、及び配膳トレイ識別情報(配膳トレイID)を受け付ける。再加熱指示受信部304が受信した情報に基づいて、再加熱制御部306は、調理器識別情報で識別される調理器5に対し、再加熱を指示する。
ステップ130(S130)において、調理器5の加熱部700は、汚染作業区域において、複数の配膳トレイ50に載せられた複数の食器52を同時に再加熱する。
【0037】
ステップ135(S135)において、温度計測部702は、各食器52に関連付けられた温度センサ54により、再加熱された各食器52、及び食器52内の食べ残された食材の温度を計測する。温度計測部702は、計測した各食器52の温度を調理制御装置3へ通知する。
ステップ140(S140)において、再加熱判定部308は、再加熱を指示された調理器5に載置された食器52の全ての温度センサにより計測された温度が80℃以上を10分間継続しているか否かを判定する。具体的には、再加熱指示受信部304が受信した配膳トレイIDに関連付けられた全ての温度センサ54において、80℃以上が10分間以上継続していた場合に(S140:Yes)、食器52及び食べ残しの殺菌が完了したと判定し、食事の再加熱処理(S10)は、S150へ移行し、全ての食器52において、80℃以上が10分間以上継続していなかった場合に(S140:No)、食事の再加熱処理(S10)は、S145へ移行する。
【0038】
ステップ145(S145)において、再加熱を所定の時間実施しても温度が上がらない場合(例えば、調理器5の不具合により再加熱が一部完了できない場合)、または、調理を実施した配膳トレイ50に関連付けられる温度センサ54から温度の計測通知がない場合(配膳トレイ50に関連付けられた食器52が全て配膳トレイ50上に載せられておらず、再加熱に失敗した食器52が存在する場合)(S145:Yes)に、出力部310は、再加熱に失敗した食器52を記録する。食事の再加熱処理(S10)は、S150へ移行し、それ以外の場合は(S145:No)、S135へ移行し、再加熱制御部306は、調理器5への再加熱指示を継続する。
【0039】
ステップ150(S150)において、出力部310は、再加熱の結果である再加熱情報を出力する。具体的には、出力部310は、配膳トレイ50に関連付けられる食器52それぞれについて、再加熱が完了しているか否かの再加熱情報を、ユーザ端末7へ表示、印刷、予め登録されているメールアドレスへ送信、又は記録媒体へ記録する。S145において、調理器の5の不具合、または、空焚きにより再加熱できていない食器52が存在する場合に、出力部310は、その旨を通知する。
【0040】
以上説明したように、調理システム1によれば、調理器5により調理を実施するだけでなく、調理後に提供された食事の下膳後の殺菌処理をも実施することができる。加熱することにより、食器52、及び食べ残した料理の表面だけでなく、食材の内部まで殺菌が可能である。
また、加熱により温められるのは食器52及び食材であるため、配膳トレイ50自体は熱くならず、配膳、又は再加熱後に取り出す場合にも手で持つことができる。
そして、調理システム1によれば、再加熱情報を記録しているため、感染症対策を実施していることを視覚化することができる。
【0041】
上記実施形態では、再加熱指示情報に配膳トレイ識別情報(配膳トレイID)を含め、再加熱判定部308は、配膳トレイIDに関連付けられた食器52の再加熱がすべて完了したか否かを判定しているが、これに限定されず、例えば、調理を実施した配膳トレイIDを記録しておき、再加熱判定部308は、調理を実施した配膳トレイIDに関連付けられた食器52の再加熱がすべて完了したか否かを判定してもよい。
【0042】
上記実施形態では、調理器5は、複数の配膳トレイ50を収納することができる形態について説明したが、これに限定されず、1つの配膳トレイ50しか収納できない形態であっても良い。
【0043】
(変形例)
上記実施形態では、調理器5は、各食器52を電磁誘導加熱するための電磁誘導コイル502を備え、電磁誘導コイル502が発する電磁波を利用して各食器52を電磁誘導加熱し、各食器52内に配置された食材の調理を行っているが、これに限定されず、例えば、調理器5は、スチームにより、各食器52内に配置された食材の調理を行ってもよい。
具体的には、調理器5は、食材の調理の際には配膳トレイ50に載せられた各料理毎に加熱温度、及び加熱時刻を調節してスチームを用いて調理を実施する。より具体的には、調理器5は、スチームと冷気とを組み合わせて加熱温度を調節し、食材の調理を行う。
【0044】
一方で、下膳された配膳トレイ50を再加熱する場合、すなわち、再加熱制御部306により再加熱を指示された調理器5は、スチームのみを利用して加熱温度80℃以上が10分間以上継続するようにする。これにより、食器52及び食べ残しの殺菌を行う。また、変形例における調理器5は、調理された料理を温め直す際にも、スチームのみを利用して加熱する。
【0045】
調理器5がスチームを利用した加熱を行うことにより、食器52及び食べ残した食材を直接加熱することができるため、より殺菌効果の確実性が増す。また、スチームを利用した加熱調理では、食材の水分を残し乾燥も防ぐことができる。
【符号の説明】
【0046】
1…調理システム
3…調理制御装置
5…調理器
7…ユーザ端末
9…ネットワーク