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特開2022-26884エンジン状態推定装置、エンジン状態推定方法、およびエンジン状態推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026884
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】エンジン状態推定装置、エンジン状態推定方法、およびエンジン状態推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
F02D45/00 364E
F02D45/00 364Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130558
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】川谷 聖
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真
(72)【発明者】
【氏名】笹島 己喜朗
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭一郎
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA04
3G384AA06
3G384AA26
3G384BA03
3G384BA07
3G384BA13
3G384DA04
3G384FA11Z
3G384FA14Z
3G384FA45Z
3G384FA47Z
3G384FA53Z
3G384FA54Z
3G384FA56Z
3G384FA85Z
3G384FA86Z
(57)【要約】
【課題】安定した精度でエンジンの状態を推定することのできるエンジン状態推定装置を提供する。
【解決手段】エンジン200の状態を推定するエンジン状態推定装置100は、エンジン200が吸入して燃焼部に供給する空気の密度に関するパラメータの測定データを取得する空気密度測定データ取得部110と、空気密度測定データと、エンジン200の特性を表すエンジンモデルに入力される燃焼部への燃料供給量Uとに基づいてエンジン200の状態を推定する状態推定部120とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と燃料とを燃焼させて動力を発生させる燃焼部と、吸入した空気の圧力を高めて前記燃焼部に供給する過給器とを備えるエンジンの状態を推定するエンジン状態推定装置であって、
前記過給器が吸入する空気および前記過給器が前記燃焼部に供給する圧縮空気の少なくとも一つの密度に関するパラメータの測定データを取得する空気密度測定データ取得部と、
前記空気密度測定データと、前記エンジンの特性を表すエンジンモデルに入力される前記燃焼部への燃料供給量とに基づいて前記エンジンの状態を推定する状態推定部と
を備えるエンジン状態推定装置。
【請求項2】
前記エンジンは、定格回転数が毎分1000回転以下の船舶用のエンジンである
請求項1に記載のエンジン状態推定装置。
【請求項3】
前記状態推定部は、前記空気密度測定データを前記エンジンモデルに入力して前記エンジンの状態を推定する
請求項1または2に記載のエンジン状態推定装置。
【請求項4】
前記状態推定部は、
前記エンジンモデルに基づいて前記空気密度測定データの推定値である空気密度推定データを計算する計算部と、
前記空気密度推定データと前記空気密度測定データとの差分が小さくなるように、前記エンジンモデルを補正するエンジンモデル補正部と
を備える請求項1または2に記載のエンジン状態推定装置。
【請求項5】
前記空気密度測定データの測定器は、前記過給器が吸入する空気が流通する吸気管に設けられる
請求項1から4のいずれかに記載のエンジン状態推定装置。
【請求項6】
前記空気密度測定データの測定器は、前記圧縮空気を収容する給気収容部に設けられる
請求項1から5のいずれかに記載のエンジン状態推定装置。
【請求項7】
前記空気密度測定データは、前記過給器が吸入する空気および前記圧縮空気の温度および圧力の少なくとも一つの測定データである
請求項1から6のいずれかに記載のエンジン状態推定装置。
【請求項8】
前記空気密度測定データは、前記過給器が吸入する空気の温度の測定データである
請求項7に記載のエンジン状態推定装置。
【請求項9】
前記エンジンは、前記圧縮空気を冷却する冷却器を備え、
前記空気密度測定データは、前記冷却器によって冷却された圧縮空気の圧力の測定データである
請求項7または8に記載のエンジン状態推定装置。
【請求項10】
前記エンジンは、前記圧縮空気を冷却する冷却器を備え、
前記空気密度測定データは、前記冷却器の冷却媒体の温度の測定データである
請求項1から9のいずれかに記載のエンジン状態推定装置。
【請求項11】
前記状態推定部は、前記燃焼部において回転動力を発生させる回転駆動部の回転数の測定データに基づいて前記エンジンの状態を推定する
請求項1から10のいずれかに記載のエンジン状態推定装置。
【請求項12】
前記状態推定部は、前記エンジンの負荷がその最大負荷の50%以下の場合に前記エンジンの状態を推定する
請求項1から11のいずれかに記載のエンジン状態推定装置。
【請求項13】
空気と燃料とを燃焼させて動力を発生させる燃焼部と、吸入した空気の圧力を高めて前記燃焼部に供給する過給器とを備えるエンジンの状態を推定するエンジン状態推定方法であって、
前記過給器が吸入する空気および前記過給器が前記燃焼部に供給する圧縮空気の少なくとも一つの密度に関するパラメータの測定データを取得する空気密度測定データ取得ステップと、
前記空気密度測定データと、前記エンジンの特性を表すエンジンモデルに入力される前記燃焼部への燃料供給量とに基づいて前記エンジンの状態を推定する状態推定ステップと
を備えるエンジン状態推定方法。
【請求項14】
空気と燃料とを燃焼させて動力を発生させる燃焼部と、吸入した空気の圧力を高めて前記燃焼部に供給する過給器とを備えるエンジンの状態を推定するエンジン状態推定プログラムであって、
前記過給器が吸入する空気および前記過給器が前記燃焼部に供給する圧縮空気の少なくとも一つの密度に関するパラメータの測定データを取得する空気密度測定データ取得ステップと、
前記空気密度測定データと、前記エンジンの特性を表すエンジンモデルに入力される前記燃焼部への燃料供給量とに基づいて前記エンジンの状態を推定する状態推定ステップと
をコンピュータに実行させるエンジン状態推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの状態推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンは船舶、自動車、航空機等で広く利用されているが、環境問題への意識の高まりもあって、近年さらなる高効率化が求められており、そのための様々な技術の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-307800号公報
【特許文献2】特開2015-222074号公報
【特許文献3】特開2015-3658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一例として、特許文献1に開示されているようなエンジンのパラメータのシミュレーション技術が知られている。特許文献1は、エンジンのパラメータとして吸気管内の圧力波の同調周波数を所定の演算モデルを使ってシミュレーションするものである。しかしながら、エンジンはその動作や状態が時々刻々と変化するものであり、同じ演算モデルを使用してシミュレーションを行ったとしても、その精度にばらつきが生じるという問題があった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、安定した精度でエンジンの状態を推定することのできるエンジン状態推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のエンジン状態推定装置は、空気と燃料とを燃焼させて動力を発生させる燃焼部と、吸入した空気の圧力を高めて燃焼部に供給する過給器とを備えるエンジンの状態を推定するエンジン状態推定装置であって、過給器が吸入する空気および過給器が燃焼部に供給する圧縮空気の少なくとも一つの密度に関するパラメータの測定データを取得する空気密度測定データ取得部と、空気密度測定データと、エンジンの特性を表すエンジンモデルに入力される燃焼部への燃料供給量とに基づいてエンジンの状態を推定する状態推定部とを備える。
【0007】
この態様では、過給器が吸入する空気および過給器が圧力を高めて燃焼部に供給する圧縮空気の少なくとも一つの密度に関するパラメータを測定し、それを用いてエンジンの状態の推定を行う。このパラメータは、燃焼部における燃焼で使用される空気の密度を表すものであり、数あるエンジン関連のパラメータの中でも、エンジンの動作ないし状態に与える影響が特に大きい。そのため、このパラメータが変動すると、エンジンの状態が大きく変動し、状態推定の精度が大きくばらつく要因となる。本発明では、このようにエンジンの状態への影響が大きいパラメータを空気密度測定データとして測定し、状態推定に利用することができるので、安定した精度でエンジンの状態推定を行うことができる。
【0008】
本発明の別の態様は、エンジン状態推定方法である。この方法は、空気と燃料とを燃焼させて動力を発生させる燃焼部と、吸入した空気の圧力を高めて燃焼部に供給する過給器とを備えるエンジンの状態を推定するエンジン状態推定方法であって、過給器が吸入する空気および過給器が燃焼部に供給する圧縮空気の少なくとも一つの密度に関するパラメータの測定データを取得する空気密度測定データ取得ステップと、空気密度測定データと、エンジンの特性を表すエンジンモデルに入力される燃焼部への燃料供給量とに基づいてエンジンの状態を推定する状態推定ステップとを備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定した精度でエンジンの状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るエンジン状態推定装置の構成を示す模式図である。
図2】4ストロークエンジンの構成を示す模式図である。
図3】2ストロークエンジンの構成を示す模式図である。
図4】空気密度測定データがエンジンの出力に及ぼす影響を示す図である。
図5】空気密度測定データがエンジンの燃費に及ぼす影響を示す図である。
図6】空気密度測定データがエンジン内を流通する気体の温度に及ぼす影響を示す図である。
図7】空気密度測定データがエンジン内を流通する気体の圧力に及ぼす影響を示す図である。
図8】第2実施形態に係るエンジン状態推定装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態のエンジン状態推定装置は、エンジンの特性を表す数学モデルを用いてエンジンの状態を推定する。数あるエンジン関連のパラメータの中でも、エンジンの出力や燃費に及ぼす影響が大きい燃料燃焼用の空気の温度や圧力を測定し、状態推定に利用することにより、推定精度を向上させることができる。
【0013】
図1は、第1実施形態に係るエンジン状態推定装置100の構成を示す模式図である。エンジン状態推定装置100は、エンジン200の状態を推定する装置であり、空気密度測定データ取得部110と、状態推定部120を備える。
【0014】
エンジン状態推定装置100の各部の説明を行う前に、その状態推定対象であるエンジン200について、図2および図3を参照して説明する。
【0015】
図2は、エンジン200の一例としてのいわゆる4ストロークエンジンを示す模式図である。後述するように4ストロークエンジンとは、吸気、圧縮、燃焼、排気の四つの行程からなる1サイクルが、ピストンの四回の上下動(二回の上昇と二回の下降)によって行われるエンジンである。
【0016】
エンジン200は、空気と燃料とを混合し燃焼させて動力を発生させる燃焼部210と、吸入した空気の圧力を高めて燃焼部210に供給する過給器240を備える。過給器240は、いわゆるターボチャージャであり、燃焼部210での燃焼後に排出される気体により回転するタービン242と、軸243によってタービン242と同軸上で結合されて連動して回転するコンプレッサ241を備える。
【0017】
コンプレッサ241は、一端が外気(大気)に開放され、他端が燃焼部210に連通された給気路220内の一端側に設けられ、その回転により外気を吸入すると同時に圧縮する。コンプレッサ241によって圧縮されて圧力が高まった空気は給気路220を通じて燃焼部210に供給され、そこでの燃料の燃焼に使用される。給気路220は、外気に開放された一端からコンプレッサ241が吸入する空気が流通する吸気管221と、コンプレッサ241が燃焼部210に供給する圧縮空気が流通する給気管222と、他端側の燃焼部210に近い位置に設けられて圧縮空気を収容する給気収容部としての給気レシーバ223とを備える。また、コンプレッサ241で圧縮された空気の温度上昇による膨張を防止するために、給気管222を流通する圧縮空気を冷却する冷却器である給気クーラ224が給気管222の途中に設けられている。これにより、給気クーラ224を流通する間に冷却されて給気レシーバ223に収容される圧縮空気の温度は一定範囲内に保たれている。
【0018】
タービン242は、一端が燃焼部210に連通され、他端が外気(大気)に開放された排気路230内の他端側に設けられる。燃焼部210での燃焼後に排出される気体は、その勢いでタービン242を回転させた後、排気路230の他端から外気に放出される。排気路230は、一端側の燃焼部210に近い位置に設けられて燃焼部210での燃焼後に排出される気体を収容する排気収容部としての排気レシーバ231と、排気レシーバ231からタービン242へ向かう排気が流通する排気管232と、タービン242を通過した後の他端から外気に放出されるまでの排気が流通するタービン出口管233とを備える。
【0019】
燃焼部210は、空気による燃料の燃焼が起こる燃焼室211と、燃焼室211内に1燃焼当たりの燃料供給量Uにより指定される量の燃料を供給する燃料供給ノズル212と、給気レシーバ223からの空気の燃焼室211への供給を制御する吸気弁213と、燃焼室211から排気レシーバ231への気体の排出を制御する排気弁214と、燃焼室211における燃料の燃焼に応じて直線上に駆動されるピストン215と、ピストン215の直線上の運動に伴って回転駆動される回転駆動部としてのクランクシャフト216と、一端がピストン215に固定され他端がクランクシャフト216に固定されてピストン215の直線運動をクランクシャフト216の回転運動に変換するコネクティングロッド217を備える。なお、上記では燃料供給ノズル212により燃料を燃焼室211内に直接供給する構成としたが、ガソリン等の揮発性の高い燃料を使用する場合は、給気レシーバ223あるいは給気管222内に燃料を噴射し、空気と混合した状態で燃焼室211内に供給してもよい。
【0020】
上記の構成において、エンジン200は以下のサイクルで駆動される。ここで、エンジン200は前サイクル以前の駆動もしくは多気筒の燃焼による駆動によって動作状態にあるものとし、回転を続けるクランクシャフト216の動作に応じてピストン215が上昇と下降を繰り返すものとする。
【0021】
(1)吸気:吸気弁213が開き、排気弁214が閉じ、ピストン215が下降することで、給気レシーバ223から燃焼室211に空気が供給される。
(2)圧縮:吸気弁213が閉じ、ピストン215が上昇することで、燃焼室211内の空気が圧縮される。
(3)燃焼:燃料供給ノズル212から燃焼室211内に1燃焼当たりの燃料供給量Uにより指定される量の燃料が供給され、圧縮された空気の中で燃焼される。これによって動力が発生し、ピストン215が下降する。
(4)排気:排気弁214が開き、ピストン215が上昇することで、燃焼後の気体が燃焼室211から排気レシーバ231に排出される。
【0022】
図3はエンジン200の他の例としてのいわゆる2ストロークエンジンの燃焼部を示す模式図である(図2と対応する構成要素については同一の符号を付して適宜説明を省略する)。2ストロークエンジンでは、ピストンの四回の上下動で1サイクルが完了する図2の4ストロークエンジンと異なり、ピストンの1回の上昇と1回の下降の合計2回の上下動で1サイクルが完了する。
【0023】
2ストロークエンジンの燃焼部210は、上述の4ストロークエンジンと同様に、燃焼室211における燃料の燃焼によってピストン215を直線上に駆動し、それをクランクシャフト216の回転動力に変換するものである。両タイプのエンジンにおいて主要な構造はほとんど共通であるが、2ストロークエンジンでは、燃焼部210においてクランクシャフト216を収容するクランクケース218と燃焼室211を連結する掃気路219が設けられている点が一つの違いである。
【0024】
ピストン215が下降している図示の状態において、クランクケース218、掃気路219、燃焼室211、排気路230を通る経路は気体が流通可能となっており、クランクケース218内の新しい空気が、掃気路219を通じて燃焼室211に流入するとともに、その勢いで燃焼後の気体を排気路230に排出する(掃気)。
【0025】
それに続いてピストン215が上昇すると、掃気路219および排気路230を閉塞し、燃焼室211が密閉されてその圧力が上昇する。そして、高圧になった燃焼室211内に燃料供給ノズル212から燃料を供給することにより燃焼が引き起こされ、ピストン215を再び下降させる動力が発生する。一方、ピストン215の上昇時にはクランクケース218と給気路220が連通し、新しい空気が給気路220からクランクケース218内に流入する。このように、ピストン215の上昇時には、燃焼室211における燃焼とクランクケース218への給気が同時に行われる。
【0026】
以上のように、2ストロークエンジンにおいては、ピストン215の一回の下降と一回の上昇の合計2ストロークで1サイクルが完了する。このような2ストロークエンジンにおいて、図2に示される過給器240を使用すると、ピストン215上昇時におけるクランクケース218への給気と、ピストン215下降時における燃焼室211への掃気の圧力を高めることができる。
【0027】
なお、2ストロークエンジンとしては、特許文献2に開示されているような構成のものを使用してもよい。この2ストロークエンジンでは、図3についての上記の説明と同様に、ピストン(41:特許文献2中の符号(以下同じ))が下降している状態において、給気レシーバ223に対応する掃気レシーバ(2)、クランクケース218および掃気路219に対応する掃気口(17)、燃焼室211に対応するシリンダ(1)、排気路230に対応する排気ダクト(6)を通る経路は気体が流通可能となっており、掃気レシーバ内の新しい空気が、掃気口を通じてシリンダに流入するとともに、その勢いで燃焼後の気体を排気ダクトに排出する掃気動作が行われる。また、このような構成において過給器240を使用すると、掃気レシーバ内の掃気の圧力を高めることができる。
【0028】
本実施形態は、船舶用、車両用、航空機用等の用途を問わず、上記のような様々なタイプのエンジン200に対して適用することができるが、特に定格回転数が毎分1000回転以下の船舶用のエンジンに対して使用するのが好適である。一般的に、船舶用のエンジンは車両用のエンジンと比較して上記のような低い定格回転数で駆動される。そして、特に大型の船舶においては、エンジンで発生された動力が船舶の実際の動きに反映されるまでに時間を要するため、正確なエンジン駆動が求められる。このように、船舶用のエンジンにおいては、エンジンの状態を高精度に推定して正確な駆動を行う要請が強く、本実施形態のエンジン状態推定装置100を使用するのが好ましい。
【0029】
なお、船舶としては、例えば特許文献3に開示されている構成のものに、本実施形態のエンジン200を使用することができる。すなわち、船舶の推進力を発生させる主機関(10:特許文献3中の符号(以下同じ))として本実施形態のエンジン200を使用し、そこで発生した動力が駆動軸を介してプロペラ(14)に伝達されることで、プロペラ(14)が回転して船舶の推進力が生まれる。
【0030】
上記のような構成のエンジン200において、燃料の燃焼に使用される気体は次の経路を流通する。外気→吸気管221→コンプレッサ241→給気管222→給気レシーバ223→燃焼部210(燃焼室211)→排気レシーバ231→排気管232→タービン242→タービン出口管233→外気。
【0031】
本実施形態では上記の気体の流通経路の各所に空気の密度に関するパラメータ、具体的には圧力、温度等のパラメータを測定するセンサが設置可能である。図示されるように、センサの設置位置はS0~S2の次の三カ所に分類される。
S0:吸気管221内
S1:給気管222内
S2:給気レシーバ223内
【0032】
吸気管221内のセンサ設置位置S0には、コンプレッサ241が吸入する外気の圧力、温度を測定するセンサが設置可能である。吸気管221内のセンサ設置位置S0は、安定した測定を可能とするために、吸気管221の外気に開放された開放端およびコンプレッサ241の入口から所定距離を離した位置とするのが好ましい。外気への開放端に近すぎると外気の突発的な変化に測定データが影響されやすくなってしまい、またコンプレッサ241の入口に近すぎると回転するコンプレッサ241が発生させる気流の影響により測定環境が安定しない可能性がある。
【0033】
給気管222内のセンサ設置位置S1には、コンプレッサ241が圧力を高めて燃焼部210に供給する圧縮空気の圧力、温度を測定するセンサが設置可能である。温度に関しては、圧縮空気の温度を直接的に測定してもよいし、圧縮空気を冷却する給気クーラ224による冷却温度、すなわち冷却水等の冷媒の温度を間接的に測定してもよい。なお、給気クーラ224による冷却温度が一定で、給気管222内の圧縮空気の温度が一定とみなせる場合は、センサ設置位置S1で温度を測定する重要性は低いので、圧力を測定するのが好ましい。
【0034】
また、給気管222内のセンサ設置位置S1は、安定した測定を可能とするために、コンプレッサ241の出口から所定距離を離した位置とするのが好ましい。さらに好ましくは、給気クーラ224よりも後段で、圧縮空気が十分に冷却された後の位置とすれば、より安定した測定が可能である。特に、給気クーラ224による冷却温度が一定とみなせる場合は、圧縮空気の温度も一定とみなすことができるので、圧力のみの測定によって給気管222内の圧縮空気の状態を高精度に把握することができる。
【0035】
給気レシーバ223内のセンサ設置位置S2には、燃焼部210に供給される圧縮空気の圧力、温度を測定するセンサが設置可能である。上記の給気管222と同様に、給気クーラ224による冷却温度が一定で、給気レシーバ223内の圧縮空気の温度が一定とみなせる場合は、センサ設置位置S2で温度を測定する重要性は低いので、圧力を測定するのが好ましい。
【0036】
また、給気レシーバ223内のセンサ設置位置S2は、安定した測定を可能とするために、給気管222からの圧縮空気の流入口および燃焼部210への圧縮空気の流出口から所定距離を離した位置とするのが好ましい。これにより、これらの箇所で発生しうる変則的な気流の影響を避けて安定した測定が可能となる。さらに、給気クーラ224による冷却温度が一定とみなせる場合は、給気レシーバ223内の圧縮空気の温度も一定とみなすことができるので、圧力のみの測定によって給気レシーバ223内の圧縮空気の状態を高精度に把握することができる。
【0037】
以上で説明した三つのセンサ設置位置S0~S2で測定可能なパラメータは、燃焼部210における燃焼で使用される空気の密度を表すものであり、後述するようにエンジン状態推定装置100によるエンジン200の状態を推定するために用いられる。ここで、三つのセンサ設置位置S0~S2の全てにセンサを設置する必要はなく、少なくとも一つにセンサを設置すれば、エンジン200の状態を推定することができる。一方、S0~S2のうち複数のセンサ設置位置にセンサを設置した場合や、一つのセンサ位置に種類の異なる複数のセンサを設置した場合は、そこから得られる複数の測定データに基づき、エンジン200の状態推定の精度を向上させることができる。
【0038】
図1に戻り、エンジン200の状態推定を行うエンジン状態推定装置100の各部(空気密度測定データ取得部110、状態推定部120)について説明する。
【0039】
空気密度測定データ取得部110は、センサ設置位置S0~S2で測定された各種の空気密度測定データを取得する。具体的には、コンプレッサ241が吸入する外気の測定データをセンサ設置位置S0(吸気管221内)から取得し、コンプレッサ241が圧力を高めて燃焼部210に供給する空気の測定データをセンサ設置位置S1(給気管222内)、S2(給気レシーバ223内)から取得する。
【0040】
エンジン200の状態を推定する状態推定部120は、エンジン200の特性を表すエンジンモデルに基づいてエンジン200の状態に関するパラメータである状態変数を計算する計算部121を備える。計算部121のエンジンモデルは、熱効率、動力伝達効率、動特性、過給器効率、外乱影響等のエンジン200の諸特性を数学的にモデル化したものであり、燃焼部210に供給される1燃焼当たりの燃料供給量U、燃焼部210において回転動力を発生させるクランクシャフト216の回転数の測定データNe等を入力データとして計算を行い、エンジン200の各状態変数の推定値をエンジン状態推定結果として出力する。後述するように、本実施形態では、燃料供給量Uと回転数Neに加え、空気密度測定データ取得部110で取得された空気密度測定データもエンジンモデルに入力することで、高精度にエンジン200の状態を推定することができる。なお、エンジンモデルを構成する方法は様々なものが考えられるが、簡単な例としては、入力である燃料供給量U、回転数Ne、空気密度測定データ等に対して、出力である
エンジン200の各状態変数の推定値を対応づけたテーブルとして構成することができる。
【0041】
状態推定部120で推定可能なエンジン200の状態変数は、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0042】
燃焼部210の動作に関するパラメータ:
・クランクシャフト216の回転数(燃焼部210の回転数Ne)
過給器240の動作に関するパラメータ:
・コンプレッサ241、タービン242、軸243の回転数(過給器240の回転数Ntc)
なお、本実施形態では、回転数Neは測定データとして取得されるため、状態推定部120での推定を行う必要はない。
【0043】
以下はエンジン200の状態変数のうち、空気密度測定データ取得部110が測定データとして取得可能なものである。本実施形態では、このように測定データとして取得される状態変数については、状態推定部120での推定を行う必要はない。
コンプレッサ241が吸入する外気に関するパラメータ(吸気管221内S0で測定可能):
・外気の圧力(外気圧Pa)
・外気の温度(外気温Ta)
コンプレッサ241が圧力を高めて燃焼部210に供給する圧縮空気(給気)に関するパラメータ(給気管222内S1、給気レシーバ223内S2で測定可能):
・給気の圧力(給気圧Pb/掃気動作を行う2ストロークエンジンにおいては掃気圧Psとも表記される)
・給気の温度(給気温Tb/掃気動作を行う2ストロークエンジンにおいては掃気温Tsとも表記される)
・給気クーラ224の冷却水の温度(冷却水温Tw)
【0044】
上記の他、エンジン200内の各部を流通する気体に関するパラメータ:
・吸気管221、給気管222、給気レシーバ223内の流量
・排気レシーバ231、排気管232、タービン出口管233内の圧力、温度、流量
【0045】
上記の各パラメータを利用してエンジンモデルで計算可能なエンジン200の各種性能:
・エンジン200が発生させる動力に関する性能(トルク、出力等)
・エンジン200の燃料消費に関する性能(単位時間当たりの燃料消費量(以下、燃費と略す)、単位時間および単位出力当たりの燃料消費率、燃料の単位容量当たりの進行距離等)
【0046】
上記の各状態変数は、いずれも適当なセンサを設けることにより測定可能であるが、実際のエンジン200ではコストや設置上の制約により全ての状態変数を測定するのは現実的ではない。そのため、本実施形態では、回転数Neと、状態推定部120での推定精度の向上に用いられる一部の空気密度測定データのみを測定し、それ以外の状態変数は状態推定部120が推定値を計算する構成としている。
【0047】
なお、エンジン200への駆動入力である1燃焼当たりの燃料供給量Uは、燃焼部210の回転数Neの測定データに基づいて設定される。すなわち、燃焼部210の目標回転数をNe0としたときに、測定値であるNeと目標値であるNe0の差分が演算され、その差分が小さくなるような1燃焼当たりの燃料供給量Uが所定のテーブルやアルゴリズムに基づいて設定される。
【0048】
続いて、本発明者が実験を通じて見出した、空気密度測定データを用いた状態推定精度の向上技術について説明する。図4図7は、空気密度測定データである外気温Ta、外気圧Pa、冷却水温Twがエンジン200の様々な状態変数に及ぼす影響について実験した結果を示すものである。具体的には、図4は出力に及ぼす影響を、図5は燃費に及ぼす影響を、図6は、給気管222内のコンプレッサ241の出口付近の温度(コンプレッサ出口温度Tc)、給気レシーバ223内の掃気温Ts、排気レシーバ231内の排気温Texのそれぞれに及ぼす影響を、図7は、給気レシーバ223内の掃気圧Ps、排気レシーバ231内の排気圧Pex、タービン出口管233内の圧力(タービン出口圧力P0)のそれぞれに及ぼす影響を示すものである。それぞれの実験では、エンジン200の負荷を変化させながら測定を行っており、各図において、エンジン200の負荷が最大負荷の50%、75%、85%、100%のそれぞれの場合の結果が別々に示されている。
【0049】
それぞれの図においては、外気温Ta、外気圧Pa、冷却水温Twが、各々想定される環境条件の変動範囲内で変化したときに、各図で対象とする状態変数が変化した割合がグラフとして示されている。例えば、出力を対象とする図4の外気温Taを見ると、負荷100%のときに約-1.2%の影響があるが、これは外気温Taが想定範囲内で下限のときの出力に対して、外気温Taが想定範囲内で上限のときの出力が約1.2%小さくなっていることを意味する。同様に、燃費を対象とする図5の外気温Taを見ると、負荷50%のときに約1.5%の影響があるが、これは外気温Taが想定範囲内で下限のときの燃費に対して、外気温Taが想定範囲内で上限のときの燃費が約1.5%大きくなっていることを意味する。
【0050】
以上の実験結果のうち、エンジン200の重要指標である出力と燃費に関する図4図5によれば、三つの空気密度測定データのうち、外気温Taが突出して出力と燃費に大きな影響を及ぼすことが分かる。したがって、外気温Taをセンサ設置位置S0で測定し、空気密度測定データ取得部110を介して状態推定部120に供給することにより、状態推定部120は出力と燃費を高精度に推定することができる。
【0051】
エンジン200内を流通する気体の温度に関する図6によれば、コンプレッサ出口温度Tcに対する影響は外気温Taが最も大きく(次いで冷却水温Tw)、掃気温Tsに対する影響は冷却水温Twが最も大きく、排気温Texに対する影響は外気温Taが最も大きい(次いで冷却水温Tw)ことが分かる。
また、エンジン200内を流通する気体の圧力に関する図7によれば、掃気圧Psに対する影響は外気温Taが最も大きく(次いで冷却水温Tw)、排気圧Pexに対する影響は外気温Taが最も大きく(次いで冷却水温Tw)、タービン出口圧力P0に対する影響は外気圧Paが最も大きいことが分かる。
したがって、外気温Ta(センサ設置位置S0)、外気圧Pa(センサ設置位置S0)、冷却水温Tw(センサ設置位置S1)をそれぞれ測定し、空気密度測定データ取得部110を介して状態推定部120に供給することにより、状態推定部120はそれぞれの空気密度測定データによる影響が大きい状態変数を高精度に推定することができる。
【0052】
なお、上記では三つの空気密度測定データに関して実験を行ったが、ここで得られた示唆はその他の空気密度測定データにも以下のように適用することができる。
【0053】
図4図5で示された出力と燃費への影響は外気温Taが最大であったが、これは外気の状態がエンジン200の基本動作、すなわち燃焼部210での燃料の燃焼と動力の発生に直接的に影響するためであると考えられる。つまり、外気はコンプレッサ241に吸入されて燃焼部210に供給されるので、外気の状態がエンジン200の出力と燃費に及ぼす影響が大きいと理解される。
【0054】
一方、図4図5において、外気の状態を表すもう一つのパラメータである外気圧Paが出力と燃費に及ぼす影響はほとんど見られない。これは、想定される外気圧Paの変動の範囲内では出力と燃費にほとんど影響しないからであると考えられる。
【0055】
以上のような外気がコンプレッサ241により吸入圧縮され、給気管222および給気レシーバ223に入ると、今度はその圧力である給気圧Pbないし掃気圧Psが出力および燃費に影響を及ぼす主要なパラメータになると考えられる。なぜなら、給気管222の途中に設けられた給気クーラ224によって給気温Tbないし掃気温Tsは一定範囲内に冷却されるため、燃焼部210に供給される空気の密度は主に圧力によって決まるからである。したがって、給気クーラ224が設けられたエンジン200においては、冷却された空気の給気圧Pbないし掃気圧Psを空気密度測定データとして測定し、空気密度測定データ取得部110を介して状態推定部120に供給することにより、状態推定部120は出力と燃費を高精度に推定することができる。一方、給気クーラ224が設けられないエンジン200においては、外気温Taと同様に、給気温Tbないし掃気温Tsが引き続き出力と燃費に大きな影響を及ぼすと考えられるので、これらを測定することにより出力と燃費を高精度に推定することができる。
【0056】
以上をまとめると、エンジン200の重要指標である出力と燃費の推定精度を向上させるためには、以下の空気密度測定データを利用するのが好ましい。
・外気温Ta
・給気圧Pbないし掃気圧Ps
・給気温Tbないし掃気温Ts(給気クーラ224が設けられない場合)
【0057】
図4図7から得られた上記のような知見は、各空気密度測定データと各状態変数との関係を表す情報として、計算部121のエンジンモデルに予め組み込んでおくのが好ましい。このようなエンジンモデルによれば、測定された各空気密度測定データに応じて、図4図7で示されるような影響度を加味して各状態変数の計算を高精度に行うことができる。
【0058】
なお、図4図7を通じて、エンジン200の負荷が最大負荷の50%といった低い負荷の場合に、各気体密度測定データの各状態変数への影響が大きく出る傾向があることが分かる。これはエンジン200が低負荷で稼働しているときは、エンジン200内外の様々な変化の影響を受けやすくなっているためと考えられる。したがって、状態推定部120は、エンジン200の低負荷稼働時、例えば最大負荷の50%以下での稼働時に気体密度測定データを用いてエンジン200の状態を推定するのが好ましい。一方、気体密度測定データによる影響が比較的小さい高負荷稼働時、例えば最大負荷の50%よりも高い負荷での稼働時には、気体密度測定データを用いずに状態推定を行ってもよいし、状態推定自体の頻度を低下させてもよい。
【0059】
上記のようなエンジン状態推定装置100が出力するエンジン状態推定結果は、例えば以下の用途に使用することができる。
エンジン状態推定結果は、エンジン200の各種制御に使用することができる。本実施形態によれば、エンジン200の状態推定精度を向上させることができるので、それに伴って制御の精度も向上させることができる。
エンジン状態推定結果は、エンジン200の監視や劣化診断に使用することができる。エンジンの異常を的確に特定して迅速な対処を行うことができる。
【0060】
図8は、第2実施形態に係るエンジン状態推定装置100の構成を示す模式図である。図1に示される第1実施形態に係るエンジン状態推定装置100とは、状態推定部120の構成のみが異なる。状態推定部120は、計算部121と、エンジンモデル補正部122を備える。
【0061】
計算部121は、燃料供給量Uと回転数Neを入力データとして、エンジン200の特性を表すエンジンモデルに基づき、エンジン200の状態変数の推定値を計算し、エンジン状態推定結果として出力する。本実施形態では、第1実施形態とは異なり、空気密度測定データが計算部121のエンジンモデルに入力されず、後段のエンジンモデル補正部122に供給される。その代わりに、計算部121は、上記のエンジンモデルに基づく計算の中で、気体密度測定データの推定値である空気密度推定データを計算する。第1実施形態の中で説明したように、外気圧Pa、外気温Ta、給気圧Pb/掃気圧Ps、給気温Tb/掃気温Ts、冷却水温Tw等の空気密度に影響する測定データはいずれもエンジン200の状態変数であるため、計算部121はエンジン状態推定結果を求める通常の計算の中で気体推定データを求めることができる。
【0062】
エンジンモデル補正部122は、計算部121から供給される空気密度推定データと空気密度測定データ取得部110から供給される空気密度測定データとの差分が小さくなるように、計算部121におけるエンジンモデルを補正する。ここで、推定値である空気密度推定データと実測値である空気密度測定データの間に差分がある場合は、その推定値の算出の基礎となったエンジンモデルが実際のエンジン200の特性から乖離しているため、エンジンモデル補正部122によってエンジンモデルを補正し、実際のエンジン200の特性に近づけようとするものである。理想的には空気密度推定データと空気密度測定データの差分が常にゼロになれば、エンジンモデルが実際のエンジン200の特性を正確に表すことになる。このような補正によってエンジンモデルは実際のエンジン200の特性をよりよく反映したものとなるため、エンジン状態推定の精度を向上させることができる。特に本実施形態では、エンジン200の出力や燃費といった各状態変数への影響が大きい空気密度測定データを用いることで、効果的にエンジンモデルの補正を行うことができる。
【0063】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0064】
実施形態では、空気密度測定データとして温度または圧力を例示したが、空気の密度に関する他のパラメータを測定してもよい。例えば、気体の濃度、密度、成分量が挙げられる。
【0065】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0066】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0067】
100・・・エンジン状態推定装置、110・・・空気密度測定データ取得部、120・・・状態推定部、121・・・計算部、122・・・エンジンモデル補正部、200・・・エンジン、210・・・燃焼部、220・・・給気路、221・・・吸気管、222・・・給気管、223・・・給気レシーバ、224・・・給気クーラ、230・・・排気路、231・・・排気レシーバ、232・・・排気管、233・・・タービン出口管、240・・・過給器、241・・・コンプレッサ、242・・・タービン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8