(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026892
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】毛髪の染色方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20220203BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20220203BHJP
A61K 8/14 20060101ALI20220203BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20220203BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220203BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61K8/55
A61Q5/06
A61K8/14
A61Q5/12
A61Q19/00
A61Q5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130567
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228729
【氏名又は名称】日本サーファクタント工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(72)【発明者】
【氏名】三園 武士
(72)【発明者】
【氏名】米山 佳志
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC262
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC662
4C083AC692
4C083AD042
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD442
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB01
4C083BB07
4C083CC04
4C083CC33
4C083CC36
4C083CC50
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD45
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE26
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】本発明は、染毛剤組成物に対してその染毛性能を向上する効果を有する染毛用前処理組成物を、染毛前の毛髪にあらかじめ処理し、その後、染毛剤組成物を塗布する毛髪の染色方法を提供する。
【解決手段】1種又は2種以上の両親媒性化合物を必須成分として含有するベシクル組成物を含有した染毛用前処理組成物を用いることで、染毛剤組成物の種類を問わずにその毛髪染色効果を向上させ、さらに毛髪にダメージを与えることなく毛髪を染毛できる方法を提供することにある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種また2種以上の両親媒性化合物を含むベシクル組成物を含有する染毛用前処理組成物を毛髪に塗布する工程、その後、染毛剤組成物を塗布する毛髪の染色方法。
【請求項2】
両親媒性化合物が、レシチンまたはその誘導体、界面活性剤から選択される請求項1に記載の毛髪の染色方法。
【請求項3】
ベシクル組成物を0.001質量%~20質量%含有する染毛用前処理組成物を用いた請求項1又は2に記載の毛髪の染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベシクル組成物及びこれを含有した染毛用前処理組成物を用いる、毛髪の染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の染色分野で使用される染毛剤組成物は、永久染毛剤と半永久染毛剤に分類され、永久染毛剤には酸化染毛剤、半永久染毛剤には、ヘアカラーシャンプー、ヘアカラートリートメント、ヘアカラーリンス、ヘアニキュア、酸性カラーがある。染色剤としては、酸化染料中間体とそのカプラー、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料、天然染料、分散染料が挙げられる。染毛剤組成物は、染色剤によって使用する染料が異なるが、その最も求められている点は、毛髪への染色能力(染毛性能)の向上と毛髪にダメージを与えない点である。
【0003】
さらに従来、染毛性能を向上させるためには、染毛剤組成物中の染料の配合量を増加させればよいとされているが、これは組成物としての安定性、及び組成物としてのコスト的な観点から好ましくない。例えば、特許文献1では疎水性フィルム形成ポリマーによる染毛効果の向上が記載されているが、処理時に毛髪を加温する工程を挟むなど工程を煩雑化させる必要があり、実使用面において好ましくないものであった。さらに、染毛性を向上させるためには酸化剤やアルカリ剤を使用するため、毛髪の染色にムラがあったり、染毛後に毛髪がダメージを受けてしまい、コシやハリが失われ、毛髪全体がごわついたり、指通り等の毛髪の感触が失われてしまうことが多くあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、毛髪を染色する前に、ベシクル組成物を含有する染毛用前処理組成物を用いることで染毛性効果を向上させ、毛髪染色後においても毛髪の感触向上や毛髪にダメージを与えない点などの毛髪染色方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、1種又は2種以上の両親媒性化合物を必須成分として含有するベシクル組成物を含有した染毛用前処理組成物を染毛前毛髪に適用することで、毛髪の染毛性の向上効果及び毛髪染色後の毛髪に優れた感触向上が得られることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、毛髪の染毛性能向上及び毛髪の感触を向上させる効果を有する。また本発明の方法は、染毛剤組成物の種類に関わらず、本発明の効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明に係わるベシクル組成物を含有した染毛用前処理組成物について詳述する。さらに本発明のベシクル組成物を含有した染毛用前処理組成物を用いた毛髪染色方法についても詳述する。
【0009】
本発明に係わるベシクル組成物は、1種又は2種以上の両親媒性化合物からなり、両親媒性化合物とは、リン脂質及びその誘導体、界面活性剤が挙げられる。さらに、前記成分とともにポリオールと水もベシクル組成物に配合される。リン脂質及びその誘導体としては、レシチン、水添レシチン、水酸化レシチン、リゾレシチン、水添リゾレシチン等が挙げられ、市販品として、NIKKOL レシノールS-10、NIKKOL レシノールS-10EX、NIKKOL レシノール SH50、NIKKOL レシノール WS50、NIKKOL レシノール LL-20などがあげられる。また、界面活性剤として、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤からなり、特にその種類は問わない。
【0010】
非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポりオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸エステル、アルキルリン酸エステル塩、アルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル塩、アシルアミノ酸、アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤は、アルキルアンモニウム塩、アミドアミン等が挙げられる。好ましいものは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アシルアミノ酸塩、アルキルアンモニウム塩が挙げられる。本発明に係わる界面活性剤を構成している脂肪酸には、炭素数6~22の直鎖型、分岐型、不飽和型であり、例えば、カプロン酸、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。さらにポリグリセリン脂肪酸エステルとは、炭素数6~22の脂肪酸から選択される1種以上の脂肪酸と重合度5~20であるポリグリセリンとをエステル化したものからなるものが挙げられる。また、本発明に係る界面活性剤を構成するオキシエチレン基の平均付加モル数は、1~200であり、ポリオキシプロピレン基の平均付加モル数は、1~50であり、アルキル基及びアシル基には、炭素数1~30をもつ直鎖型、分岐型、不飽和型のものが挙げられる。
【0011】
ポリオールは、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは、グリセリン、1,3-ブチレングリコール等である。
【0012】
本発明のベシクル組成物の両親媒性化合物とポリオールの配合比率は特に限定されるものではないが、両親媒性化合物/ポリオール=0.01~1.0であり、好ましくは0.05~0.7であり、より好ましくは0.1~0.4である。
【0013】
ベシクルの調製方法は、両親媒性化合物とポリオールを高温で混合均一化した後、水に分散させ、撹拌することでベシクルを調製することができ、撹拌方法については特に限定されないが、超音波、高圧ホモミキサー、ホモミキサー等で撹拌することでベシクルを調製することができる。本発明に係るベシクル組成物のベシクルの形成は、クライオ電子顕微鏡で観察し、確認できた。
【0014】
本発明の染毛方法は、1種又は2種以上の両親媒性化合物を含むベシクル組成物を含有した染毛用前処理組成物を染毛前の毛髪に塗布し、その後、染毛剤組成物を使用した際にその染毛染色性能の向上、及び毛髪の感触向上に優れることを特徴とする方法である。
【0015】
本発明の染毛方法では、毛髪を加温することなく室温で実施することができ、さらに本発明に係わるベシクル組成物を含有した染毛用前処理組成物を使用することにより、従来の染毛剤組成物よりも短時間で毛髪をムラなく明瞭に染色することができる。
【0016】
本発明に係る染毛用前処理組成物中に含有するベシクル組成物の含有量は、特に限定されるものではないが、0.001~20質量%であり、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%である。
【0017】
本発明に係わるベシクル組成物を含有した染毛用前処理組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、水溶性及び/又は油溶性の有効成分を配合することができる。さらにその他各種成分、油性成分、高級アルコール、脂肪酸、極性脂質、保湿成分、抗菌成分、粘度調整剤、紫外線吸収剤、色素、香料、抗酸化剤なども配合することができる。
【0018】
本発明に係わるベシクル組成物を含有した染毛用前処理組成物は、特にその剤形(クリームタイプ、乳液タイプ、液状タイプ、エアゾールタイプ、泡状タイプ)には限定されるものではないが、例えば、化粧水、乳液、美容液、ヘアシャンプー、ヘアクリーム、ヘアコンディショナー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアジェル、ヘアパックなどのタイプが挙げられ、本発明を染毛前の毛髪に適用することで染毛性能が向上し、さらに染色後の毛髪の感触を改善させる効果や毛髪にダメージを与えない効果を発揮する。
【0019】
本発明に係わる染毛剤組成物としては、特に限定されることはないが、永久染毛剤の酸化染毛剤、半永久染毛剤としてカラーシャンプー、カラートリートメント、カラーリンス、ヘアニキュア、酸性カラー等が挙げられるが、本発明においては、染毛剤組成物に含有される染料の種類や剤形に関わらず、本発明品は染毛性能を向上、染色後の毛髪の感触を改善させる効果や毛髪にダメージを与えない効果を発揮する。
【0020】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。以下の各本発明に係わるベシクル組成物及び比較組成物の配合量は質量%を示す。
【実施例0021】
本発明に係わるベシクル組成物を毛髪に塗布し、染色工程を評価した。
1. 実験方法:永久染毛剤(2剤式酸化染毛剤)を使用した場合
表1記載のベシクル組成物(1~4)と比較組成物(1、2、3)の各組成物を各100gに対して染毛前毛髪1gを室温で5分間浸漬させた。5分後、毛髪を取り出し、タオルドライにより余分な水分を取り除いた。その後、染毛剤組成物(2剤式酸化染毛剤)を3g毛髪に塗布し、毛髪表面に均一に馴染ませた後、室温で30分間静置させ、その後、毛髪表面に残存した染毛剤組成物を取り除くためにシャンプー洗浄し、水洗した後、タオルドライとドライヤーにより毛髪を乾燥させ、毛髪の染まり具合いと毛髪の感触を評価した。
さらに、染毛剤組成物(2剤式酸化染毛剤)3gを何も処理していない毛髪に塗布し、毛髪表面に均一に馴染ませた後、室温で30分間静置させ、その後、毛髪表面に残存した染毛剤組成物を取り除くためにシャンプー洗浄し、水洗した後、タオルドライとドライヤーにより毛髪を乾燥させ、その後、表1記載のベシクル組成物(1~4)と比較組成物(1、2、3)の各組成物を各100gに対して染毛後毛髪1gを室温で5分間浸漬させた。5分後、毛髪を取り出し、タイルドライにより余分な水分を取り除いた。その後、毛髪の染まり具合と毛髪の感触を評価した。これらの結果を表2に示した。
2.実験方法:半永久染毛剤(カラートリートメント)を使用した場合
表1記載のベシクル組成物(1~4)と比較品組成物(1、2、3)の各組成物を各100gに対して染毛前毛髪1gを室温で5分間浸漬させた。5分後、毛髪を取り出し、タイルドライにより余分な水分を取り除いた。その後、染毛剤組成物(カラートリートメント)を3g毛髪に塗布し、毛髪表面に均一に馴染ませた後、室温で30分間静置させ、その後、毛髪表面に残存した染色剤組成物を取り除くためにシャンプー洗浄し、水洗した後、タオルドライとドライヤーにより毛髪を乾燥させ、毛髪の染まり具合いと毛髪の感触を評価した。
さらに、染毛剤組成物(カラートリートメント)3gを何も処理していない毛髪に塗布し、毛髪表面に均一に馴染ませた後、室温で30分間静置させ、その後、毛髪表面に残存した染毛剤組成物を取り除くためにシャンプー洗浄し、水洗した後、タオルドライとドライヤーにより毛髪を乾燥させ、その後、表1記載のベシクル組成物(1~4)と比較組成物(1、2、3)の各組成物を各100gに対して染毛後毛髪1gを室温で5分間浸漬させた。5分後、毛髪を取り出し、タイルドライにより余分な水分を取り除いた。その後、毛髪の染まり具合と毛髪の感触を評価した。これらの評価結果を表3に示した。
【0022】
(評価基準)
毛髪を浸漬させる組成物として精製水を使用した比較組成物1で処理した毛髪を基準として、染毛効果の優位性(毛髪の染まり具合)を目視観察により評価した。
◎:基準と比べて明瞭に染毛効果を確認でき、ムラなく染毛できている
〇:基準と比べて染毛効果を確認できる
△:基準と比べて染毛効果がほぼ同等である。
×:基準と比べて染毛効果が劣っており、染毛にムラがある
【0023】
(評価基準)
染毛処理する前の毛髪を基準として、毛髪の感触(ツヤ、ハリ、指通り)を評価した。
◎:染毛処理する前の毛髪以上に毛髪の感触向上が確認できた。
〇:毛髪処理する前の毛髪と同等の感触であった。
△:毛髪処理する前の毛髪よりも少し感触が劣っていた。
×:毛髪処理する前よりもさらに毛髪の感触が劣っていた。ダメージを受けていた。
【0024】
3. 結果
表2及び表3の結果から、染毛前に本発明に係わるベシクル組成物を適用した本発明の方法が比較組成物及び比較方法よりも染毛効果に優れていることを確認した。さらに染毛前にベシクル組成物を予め毛髪に塗布することで、毛髪の感触を良好に保つことができていることを確認した。従来の市販品である永久染毛剤及び半永久染毛剤を使用しても本発明の方法は、優れた効果を得ていることから、染毛剤組成物の種類は問わずに使用できることが確認できた。本発明の方法を用いたほうが、毛髪の染色がより向上し、染毛の色も濃く、ムラが無くなっていた。また、組成物にはベシクルが形成されているものを用いることで優れた染毛効果向上と毛髪の感触向上、毛髪へのダメージを与えないことに関係していることが判明した。
【0025】
【0026】
【0027】
以下に本発明に係わるベシクル組成物を含有する染毛用前処理組成物の応用例を示す。配合量は質量%である。実施例3~5はいずれも実施例1及び実施例2の評価方法により毛髪の染毛性効果向上と毛髪感触の向上、染色時間の短縮が認められた。