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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026894
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】塗布装置及び塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 7/08 20060101AFI20220203BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20220203BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20220203BHJP
   F16N 13/02 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B05C7/08
B05C11/10
B05D3/12 A
B05D7/22 H
B05D3/00 B
B05D1/28
B05D1/26
F16N13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130569
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】大森 太志
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓実
【テーマコード(参考)】
4D075
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC01
4D075AC52
4D075AC62
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC93
4D075AC95
4D075BB56X
4D075BB56Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA15
4D075DA19
4D075EA05
4D075EA37
4F042AA13
4F042AA27
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB02
4F042CB10
4F042EA12
4F042EA22
4F042EA27
(57)【要約】
【課題】筒状部材の内壁に粘性流体を塗布する。
【解決手段】塗布装置は、筒状部材の内壁に塗布される粘性流体を保持空間に保持する保持部と、筒状部材の内部で保持部が筒状部材の延伸方向に移動するように、保持部と筒状部材とを相対移動させる移動部と、保持部が保持している粘性流体を筒状部材の内壁に向かって加圧する加圧手段と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材の内壁に塗布される粘性流体を保持空間に保持する保持部と、
前記筒状部材の内部で前記保持部が前記筒状部材の延伸方向に移動するように、前記保持部と前記筒状部材とを相対移動させる移動部と、
前記保持部が保持している前記粘性流体を前記筒状部材の内壁に向かって加圧する加圧手段と、
を備える、塗布装置。
【請求項2】
前記加圧手段は、前記保持部と前記筒状部材とが相対移動していない状態で前記粘性流体を加圧可能である、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記保持空間を形成する一対の壁部であって、少なくとも一方が前記筒状部材の延伸方向に移動可能な一対の前記壁部を有し、
前記加圧手段は、前記一対の壁部の内の少なくとも一方の壁部を移動させて2つの壁部間の距離を小さくするものである、請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記一方の壁部は、前記筒状部材の延伸方向における断面のうちの少なくとも一部において、当該壁部の進行方向に向かって前記壁部と前記筒状部材の内壁との距離が大きくなるように傾斜した傾斜面を有する、請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記一方の壁部は、前記筒状部材の内壁と対向する面に設けられた凹部を有する、請求項3又は4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記加圧手段は、エアシリンダで前記一方の壁部を移動させる、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記保持部には、前記保持空間と前記保持空間の外部とを通じさせる粘性流体流路が形成されており、
前記加圧手段は、前記粘性流体を前記筒状部材の内壁に向かって加圧するように、前記粘性流体流路を介して前記保持空間に前記粘性流体を供給する、請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記保持部は、前記筒状部材の延伸方向に直交する方向に凹み、前記内壁との間に前記保持空間を形成する凹部を有し、
前記保持部の前記凹部を形成する面において前記粘性流体流路が開口する、請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記筒状部材を固定する固定部を備え、
前記移動部は、固定された前記筒状部材に対して前記保持部を移動させる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記移動部は、前記保持部に接続し、前記保持部に接続する部分を含む少なくとも一部に対して前記筒状部材の延伸方向に前記保持部に向かって力が加えられる状態では力を前記保持部に伝達して前記保持部を移動させ、力が加えられていない状態では屈曲可能となる、押し部材を有する、請求項9に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記粘性流体はグリスである、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項12】
前記グリスの供給源から供給源ポンプによって第1圧力が加えられて送り出された前記グリスが供給される収容部と、
前記収容部に収容された前記グリスを、前記第1圧力よりも小さな第2圧力を加えて送り出して前記保持空間に供給する供給部と、を備える、請求項11に記載の塗布装置。
【請求項13】
筒状部材の内壁に塗布される粘性流体を保持する保持空間を形成する一対の壁部であって、前記筒状部材の延伸方向に接近可能な前記一対の壁部を有する保持部と、
前記筒状部材の内部で前記保持部が前記筒状部材の延伸方向に移動するように、前記保持部と前記筒状部材とを相対移動させる移動部と、
を備える、塗布装置。
【請求項14】
筒状部材の内部で保持部によって保持された粘性流体を、前記筒状部材の内壁に向かって加圧しつつ前記保持部が前記筒状部材の延伸方向に移動するように前記保持部と前記筒状部材とを相対移動させることによって前記内壁に塗布する工程を備える、塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被塗布部材にグリスなどの粘性流体を塗布する塗布装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された塗布装置が知られている。特許文献1に記載された塗布装置は、グリスが充填されたシリンダ内にピン状の被塗布部材を出し入れすることによって、ピン状の被塗布部材にグリスを塗布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-264034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒状の部材の内壁に粘性流体を塗布することが求められる場合がある。例えば、シリンダの内部を他の部材が移動する際の摩擦抵抗を減らすために、シリンダの内壁にグリスを塗布することが求められる場合がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、筒状部材の内壁に粘性流体を塗布することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による塗布装置は、
筒状部材の内壁に塗布される粘性流体を保持空間に保持する保持部と、
前記筒状部材の内部で前記保持部が前記筒状部材の延伸方向に移動するように、前記保持部と前記筒状部材とを相対移動させる移動部と、
前記保持部が保持している前記粘性流体を前記筒状部材の内壁に向かって加圧する加圧手段と、
を備える。
【0007】
本発明による塗布装置において、
前記加圧手段は、前記保持部と前記筒状部材とが相対移動していない状態で前記粘性流体を加圧可能であってもよい。
【0008】
本発明による塗布装置において、
前記保持部は、前記保持空間を形成する一対の壁部であって、少なくとも一方が前記筒状部材の延伸方向に移動可能な一対の前記壁部を有し、
前記加圧手段は、前記一対の壁部の内の少なくとも一方の壁部を移動させて2つの壁部間の距離を小さくするものであってもよい。
【0009】
本発明による塗布装置において、
前記一方の壁部は、前記筒状部材の延伸方向における断面のうちの少なくとも一部において、当該壁部の進行方向に向かって前記壁部と前記筒状部材の内壁との距離が大きくなるように傾斜した傾斜面を有してもよい。
【0010】
本発明による塗布装置において、
前記一方の壁部は、前記筒状部材の内壁と対向する面に設けられた凹部を有してもよい。
【0011】
本発明による塗布装置において、
前記加圧手段は、エアシリンダで前記一方の壁部を移動させてもよい。
【0012】
本発明による塗布装置において、
前記保持部には、前記保持空間と前記保持空間の外部とを通じさせる粘性流体流路が形成されており、
前記加圧手段は、前記粘性流体を前記筒状部材の内壁に向かって加圧するように、前記粘性流体流路を介して前記保持空間に前記粘性流体を供給してもよい。
【0013】
本発明による塗布装置において、
前記保持部は、前記筒状部材の延伸方向に直交する方向に凹み、前記内壁との間に前記保持空間を形成する凹部を有し、
前記保持部の前記凹部を形成する面において前記粘性流体流路が開口してもよい。
【0014】
本発明による塗布装置は、
前記筒状部材を固定する固定部を備え、
前記移動部は、固定された前記筒状部材に対して前記保持部を移動させてもよい。
【0015】
本発明による塗布装置において、
前記移動部は、前記保持部に接続し、前記保持部に接続する部分を含む少なくとも一部に対して前記筒状部材の延伸方向に前記保持部に向かって力が加えられる状態では力を前記保持部に伝達して前記保持部を移動させ、力が加えられていない状態では屈曲可能となる、押し部材を有してもよい。
【0016】
本発明による塗布装置において、
前記粘性流体はグリスであってもよい。
【0017】
本発明による塗布装置は、
前記グリスの供給源から供給源ポンプによって第1圧力が加えられて送り出された前記グリスが供給される収容部と、
前記収容部に収容された前記グリスを、前記第1圧力よりも小さな第2圧力を加えて送り出して前記保持空間に供給する供給部と、を備えてもよい。
【0018】
本発明による塗布装置は、
筒状部材の内壁に塗布される粘性流体を保持する保持空間を形成する一対の壁部であって、前記筒状部材の延伸方向に接近可能な前記一対の壁部を有する保持部と、
前記筒状部材の内部で前記保持部が前記筒状部材の延伸方向に移動するように、前記保持部と前記筒状部材とを相対移動させる移動部と、
を備える。
【0019】
本発明による塗布方法は、
筒状部材の内部で保持部によって保持された粘性流体を、前記筒状部材の内壁に向かって加圧しつつ前記保持部が前記筒状部材の延伸方向に移動するように前記保持部と前記筒状部材とを相対移動させることによって前記内壁に塗布する工程を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、筒状部材の内壁に粘性流体を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態における、塗布装置の構成例を示す断面図である。
図2】本実施形態における、塗布装置を用いた塗布方法を示す断面図である。
図3】本実施形態における、塗布装置を用いた塗布方法を示す断面図である。
図4】変形例1における、塗布装置の構成例を示す断面図である。
図5】変形例2における、塗布装置の構成例を示す断面図である。
図6】変形例3における、塗布装置の構成例を示す断面図である。
図7】変形例4における、塗布装置の構成例を示す断面図である。
図8】変形例4における、保持部の構成例を示す断面図である。
図9】変形例4における、保持部の構成例を示す断面図である。
図10】変形例4における、保持部の構成例を示す断面図である。
図11】変形例5における、塗布装置の構成例を示す断面図である。
図12】変形例6における、塗布装置の構成例を示す断面図である。
図13】変形例6における、押し部材の構成例を示す断面図である。
図14】変形例6における、塗布装置を用いた塗布方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、塗布装置10の構成例を示す断面図である。図2は、図1の塗布装置10を用いて筒状部材90の内壁91に粘性流体80を塗布しているときの塗布装置10を、粘性流体80及び筒状部材90とともに示す断面図である。
【0023】
筒状部材90に塗布される粘性流体80は、後述する保持部によって保持され、筒状部材90に塗布することができる程度の粘性を有する限り、特に限られない。粘性流体80は、例えばグリスである。ここで、グリス(grease)は、JIS K 2220:2013の記載によって定義される。すなわち、グリスとは、原料基油中に増ちょう剤を分散して半固体又は固体状にしたものである。グリス以外の粘性流体80としては、例えば接着剤や塗料が挙げられる。
【0024】
粘性流体80が塗布される筒状部材90は、筒状であれば特に限られない。筒状部材90は、円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。本実施形態においては、筒状部材90が円筒状である場合について説明する。図1に示すように、筒状部材90は内壁91を有する。粘性流体80は、内壁91に塗布される。筒状部材90の長さ、すなわち筒状部材90の延伸方向d1における筒状部材90の寸法は、例えば1m以上である。筒状部材90は、例えば、筒状部材90の延伸方向に沿って筒状部材90の内部を他の部材が移動する、シリンダである。この場合、シリンダの内部を他の部材が移動する際の摩擦抵抗を減らすために、筒状部材90の内壁にグリスを塗布することが求められる。シリンダは、例えば、鉄道車両用のドアの開閉に用いられる空気式シリンダである。
【0025】
次に本実施形態の塗布装置10について説明する。塗布装置10は、粘性流体80を保持する保持部1と、保持部1と筒状部材90とを相対移動させる移動部2と、保持部1が保持している粘性流体80を筒状部材90の内壁91に向かって加圧する加圧手段3と、を備える。
【0026】
保持部1は、保持空間1cに粘性流体80を保持する。本実施形態の保持部1は、筒状部材90の内壁91との間に、粘性流体80を保持する保持空間1cを形成する。一例として、保持部1は、保持空間1cを形成する壁部を有する。図1及び図2に示す例において、保持部1は、保持空間1cを形成する一対の壁部1a、1bを有する。この場合、保持部1のうち壁部1a、1bが、筒状部材90の内壁91との間に保持空間1cを形成する。一例として、保持空間1cは、内壁91に沿って、内壁91の周方向を周回するように形成される。保持空間1cが形成されることによって、図2に示すように保持空間1cに粘性流体80が保持される。
【0027】
保持部1は、筒状部材90の延伸方向d1から観察した場合の輪郭が、筒状部材90の延伸方向d1から観察した内壁91の輪郭と略同一となる形状を有する。本実施形態において、保持部1の壁部1a、1b、及び筒状部材90の内壁91の輪郭は、ともに円形である。本実施形態の第1の壁部1aは、円柱状となっている。また、第2の壁部1bは、後述する傾斜面1dを有する円錐台形状となっている。
【0028】
内壁91に塗布される粘性流体80の量の調整のために、図2に示すように、保持部1と筒状部材90との間にはクリアランスが設けられていてもよい。すなわち、保持部1の最大幅は、筒状部材90の内径よりも小さくてもよい。図2に示す例においては、筒状部材90の延伸方向d1に垂直な方向d2において、第1の壁部1aの最大幅w2及び第2の壁部1bの最大幅w3は、ともに筒状部材90の内径w4よりも小さくなっている。図2に示す例において、保持空間1cは、クリアランスを除いて、保持空間1cの外部の空間から離間している。
【0029】
加圧手段3は、保持部1が保持している粘性流体80を、筒状部材90の内壁91に向かって加圧する手段である。本実施形態において、加圧手段3は、壁部1a、1bの少なくとも一部を、保持空間1cの容積を減少させるように移動させることによって保持空間1c内の粘性流体80を加圧する。一例として、壁部1a、1bの少なくとも一部は、保持空間1cの容積を減少させるように、壁部1a、1bの他の部分に対して筒状部材90の延伸方向d1に移動可能である。なお、塗布装置10に関する説明において、「筒状部材90の延伸方向d1」とは、図2に示すように保持部1が筒状部材90の内部に挿入されて保持空間1cが形成されているときの、筒状部材90の延伸方向d1を意味する。
【0030】
一例として、一対の壁部1a、1bの少なくとも一方は、筒状部材90の延伸方向d1に移動可能となっている。具体的には、塗布装置10は、固定軸51と、固定軸51の一端に接続されている固定部材52とを備えている。図1及び図2に示す例において、塗布装置10は2本の固定軸51を備えている。第1の壁部1aは、固定軸51のうち、固定部材52が接続されている一端とは反対側に位置する他端に接続されている。そして、第2の壁部1bは、固定軸51に沿って移動可能なように、固定軸51に取り付けられている。図2に示すように、保持部1を筒状部材90の内部に挿入した状態において、固定軸51は、筒状部材90の延伸方向d1に延びている。
【0031】
この場合、第2の壁部1bは、固定軸51に沿って筒状部材90の延伸方向d1に移動することによって、第1の壁部1aに対して移動可能である。すなわち、一対の壁部1a、1bのうち第2の壁部1bが、筒状部材90の延伸方向d1に移動可能となっているといえる。そして、加圧手段3は、一対の壁部1a、1bの内の少なくとも一方の壁部を移動させて2つの壁部1a、1b間の距離を小さくする。本実施形態では、加圧手段3は、第2の壁部1bを移動させて2つの壁部1a、1b間の距離を小さくする。加圧手段3によって2つの壁部1a、1b間の距離を小さくすることで、保持空間1cの容積を減少させることができる。加圧手段3は、一対の壁部1a、1bの内の一方の壁部1b(第2の壁部1b)を移動させ、保持空間1cの容積を減少させることによって、粘性流体80を筒状部材90の内壁91に向かって加圧する。本実施形態において、加圧手段3は、一対の壁部1a、1bの内の一方の壁部1b(第2の壁部1b)を押すことによって、粘性流体80を筒状部材90の内壁91に向かって加圧する。具体的には、第2の壁部1bが押されることによって、第2の壁部1bが第1の壁部1aに接近し、保持空間1cの容積が減少する。保持空間1cの容積が減少することによって、保持空間1cに保持されている粘性流体80が加圧される。粘性流体80を加圧することによって、筒状部材90の内壁91に粘性流体80を密着させることができる。
【0032】
本実施形態の加圧手段3は、エアシリンダ4で一方の壁部1b(第2の壁部1b)を移動させるものである。この場合、加圧手段3は、一方の壁部1b(第2の壁部1b)を押すエアシリンダ4を有する。エアシリンダ4は、第2の壁部1bを押すことで移動させる。図1及び図2に示す例において、エアシリンダ4は、一端において固定部材52に接続され、他端において第2の壁部1bに接続されている。エアシリンダ4の動作によって、第2の壁部1bと固定部材52との距離w1が変化する。このため、固定軸51を介して固定部材52と接続されており、固定部材52との相対的な位置関係が固定されている第1の壁部1aと第2の壁部1bとの距離も、エアシリンダ4の動作によって変化する。例えば、エアシリンダ4の動作によって距離w1が大きくなることで、第1の壁部1aと第2の壁部1bとが接近する。
【0033】
また、加圧手段3によって移動させられる一方の壁部1b(第2の壁部1b)は、筒状部材90の延伸方向d1における断面のうちの少なくとも一部において、傾斜面1dを有する。傾斜面1dは、当該壁部1b(第2の壁部1b)の進行方向に向かって壁部1b(第2の壁部1b)と筒状部材90の内壁91との距離が大きくなるように傾斜したものである。
【0034】
本実施形態において、壁部1b(第2の壁部1b)の進行方向とは、第2の壁部1bが加圧手段3によって保持空間1cの容積が減少するように移動させられる際に、第2の壁部1bが進行する方向である。また、壁部1b(第2の壁部1b)と筒状部材90の内壁91との距離とは、筒状部材90の延伸方向d1に直交する方向d2に沿った第2の壁部1bと内壁91との距離である。筒状部材90の延伸方向d1における断面とは、筒状部材90の内部に挿入された状態の保持部1を、筒状部材90の方向d2における中心を通り且つ筒状部材90の延伸方向d1に平行な面で切断した断面である。第2の壁部1bは、筒状部材90の延伸方向d1における断面のうち、少なくとも一つの断面において傾斜面1dを有する。第2の壁部1bは、筒状部材90の延伸方向d1における任意の断面において傾斜面1dを有してもよい。本実施形態の第2の壁部1bは、筒状部材90の延伸方向d1に延びる軸線を有する円錐台形状を有し、このため、筒状部材90の延伸方向d1における任意の断面において傾斜面1dを有する。
【0035】
図2に示す例において、傾斜面1dは、筒状部材90の延伸方向d1に対して傾斜している。また、傾斜面1dは、保持部1が筒状部材90内に配置された際に、第2の壁部1bと内壁91との距離が、右側から左側に向かって大きくなるように傾斜している。
【0036】
移動部2は、筒状部材90の内部で保持部1が筒状部材90の延伸方向d1に移動するように、保持部1と筒状部材90とを相対移動させる部分である。移動部2の形態は、保持部1と筒状部材90とを相対移動させることができる限り、特に限られない。一例として、塗布装置10は、筒状部材90を固定する固定部70を備え、移動部2は、固定された筒状部材90に対して保持部1を移動させる。なお、図2図12及び図14以外の図において、固定部70の図示は省略している。この場合、移動部2は、保持部1を筒状部材90に対して移動させる。移動部2が、固定部70によって固定された筒状部材90に対して保持部1を移動させることの作用効果について説明する。筒状部材90は、塗布装置10のうち、保持部1などの、粘性流体80を塗布するために筒状部材90に対して相対移動させる必要がある部分よりも、重く、長くなっていることが想定される。この場合に、筒状部材90を動かす必要がなくなるため、塗布に要する作業負担を低減することができる。
【0037】
図1及び図2に示す例において、移動部2は、固定部材52のうち、エアシリンダ4及び固定軸51が接続されている側とは反対側に接続された、固定軸51の延伸方向に延びる棒状部材21を有する。この場合、図2のように保持部1が筒状部材90の内部に挿入された状態で、塗布装置10の使用者が棒状部材21を把持し、棒状部材21を筒状部材90の延伸方向d1に沿って移動させることにより、保持部1を筒状部材90に対して移動させることができる。移動部2は、保持部1を筒状部材90の内部に挿入するときに用いられてもよい。
【0038】
図示はしないが、移動部2は、棒状部材21とともに、棒状部材21が筒状部材90の延伸方向d1に沿って移動するように駆動する、モータ等の動力源を有していてもよい。移動部2がモータを有する場合、保持部1を、より一定の速度で移動させることができる。また、図示はしないが、移動部2は、筒状部材90を保持部1に対して移動させるものであってもよい。
【0039】
次に、上述の塗布装置10を用いた粘性流体80の塗布方法について説明する。まず、粘性流体80を保持部1にセットする。本実施形態においては、図3に示すように、保持部1を筒状部材90の内部に挿入した際に粘性流体80が保持空間1cに保持されるように、粘性流体80を保持部1に付着させる。粘性流体80は、例えば保持部1のうち保持空間1cを区画する面に付着されてもよいし、固定軸51のうち一対の壁部1a、1bの間に位置する部分に付着されてもよい。
【0040】
次に、粘性流体80がセットされた状態で、保持部1を筒状部材90の内部に挿入する。
【0041】
そして、保持部1に保持された粘性流体80を加圧する。本実施形態においては、図2に示すように、一対の壁部1a、1bを筒状部材90の延伸方向d1に接近させることによって、粘性流体80を加圧する。そして、筒状部材90の内部で保持部1によって保持された粘性流体80を、筒状部材90の内壁91に向かって加圧しつつ保持部1が筒状部材90の延伸方向d1に移動するように保持部1と筒状部材90とを相対移動させることによって内壁91に塗布する工程を行う。
【0042】
加圧手段3によって粘性流体80に加わる圧力及び移動部2が保持部1と筒状部材90とを相対移動させる速度は、内壁91に塗布される粘性流体80の厚みが、より一定となるように調整される。一例として、加圧手段3によって粘性流体80に加わる圧力及び移動部2が保持部1と筒状部材90とを相対移動させる速度のいずれも、時間変化を小さく抑えるように調整される。
【0043】
粘性流体80を内壁91に塗布する工程は、筒状部材90の保持部1を挿入する側の一端から他端へと、保持部1を一方向に移動させて終了してもよい。また、保持部1を筒状部材90の一端から他端へと移動させた後、他端から一端へと移動させてもよい。また、保持部1を、筒状部材90の一端と他端との間を複数回往復させてもよい。
【0044】
本実施形態の塗布装置10の作用効果について説明する。筒状部材90の内壁91に粘性流体80を塗布する際に、粘性流体80をムラなく塗布することは、従来困難であった。内壁91に粘性流体80を塗布する方法としては、筒状部材90に、筒状部材90に挿入可能な形状の部材に粘性流体80を付着させ、該部材を筒状部材90に挿入して塗布することが考えられる。しかしながら、この場合、内壁91に粘性流体80をムラなく塗布できるか否かが、塗布を行う者のカンやコツに依存してしまう。
【0045】
これに対し、本実施形態の塗布装置10は、保持空間1cに保持されている粘性流体80を、加圧手段3を用いて内壁91に向かって加圧することによって、粘性流体80を内壁91に密着させることができる。このため、ムラなく粘性流体80を塗布することができる。特に、内壁91の周方向において、ムラなく粘性流体80を塗布することができる。また、移動部2を用いて、筒状部材90の内部で保持部1が筒状部材90の延伸方向d1に移動するように、保持部1と筒状部材90とを相対移動させることによって、保持空間1cに保持されている粘性流体80を、筒状部材90の延伸方向d1に移動させることができる。これによって、筒状部材90の延伸方向d1において、ムラなく粘性流体80を塗布することができる。特に、粘性流体80を、内壁91の周方向及び筒状部材90の延伸方向d1において均一に塗布することも可能となる。一例として、内壁91に、保持部1と筒状部材90との間に設けられたクリアランスに対応する厚さの粘性流体80を、均一に塗布することができる。
【0046】
ここで、本実施形態の加圧手段3は、保持部1と筒状部材90とが移動部2によって相対移動している状態で粘性流体80を加圧可能である。このため、保持部1と筒状部材90とを相対移動させながら、粘性流体80を内壁91に向かって加圧することができる。これによって、例えば保持部1と筒状部材90との相対移動と粘性流体80の加圧とを交互に繰り返すことで粘性流体80を塗布する場合よりも、塗布に要する時間を短縮することができる。
【0047】
また、本実施形態の加圧手段3は、保持部1と筒状部材90とが相対移動していない状態で粘性流体80を加圧可能である。図1及び図2に示す加圧手段3は、保持部1と筒状部材90とが相対移動していない状態であっても、第1の壁部1aと第2の壁部1bとを筒状部材90の延伸方向d1に接近させることによって、保持空間1cの容積を減少させて粘性流体80を加圧することができる。この場合、保持部1と筒状部材90とが相対移動していない状態であっても、加圧手段3を用いて粘性流体80を内壁91に向かって加圧し、粘性流体80を内壁91に密着させることができる。これによって、例えば保持部1と筒状部材90との相対移動と、粘性流体80の加圧とを、交互に繰り返す塗布方法によっても、粘性流体80を塗布することができる。また、内壁91に、特に粘性流体80の塗布を十分に行うべき部分がある場合に、当該部分に保持空間1cが形成された状態で保持部1と筒状部材90との相対移動を停止させて粘性流体80を加圧することによって、当該部分に重点的に粘性流体80を塗布することができる。
【0048】
また、加圧手段3によって移動させられる第2の壁部1bが傾斜面1dを有することによって、以下の効果が得られる。第2の壁部1bを加圧手段3によって移動させ、第1の壁部1aに対して接近させることによって、粘性流体80が傾斜面1dと内壁91との間に浸入する。ここで、傾斜面1dと内壁91との間の距離は、筒状部材90の延伸方向d1において粘性流体80が浸入していく側に向かって小さくなる。このため、第2の壁部1bを加圧手段3によって移動させる際に、粘性流体80を、より狭い隙間へと浸入させて、粘性流体80の圧力を、より効率よく高めることができる。なお、粘性流体80を加圧する効果を、より高めるためには、傾斜面1dの、筒状部材90の延伸方向d1に対する角度θは、45°以下であることが好ましく、5°以上10°以下であることがさらに好ましい。
【0049】
また、加圧手段3がエアシリンダ4を含むことによって、以下の効果が得られる。エアシリンダ4は、自身のストローク変化によらず、一定、または比較的変化の少ない押し力を発生させることができる。すなわち、図2の距離w2の大小に関わらず、比較的一定の押し力で、第2の壁部1bを押すことができる。このため、塗布の開始直後など、保持空間1cに多量の粘性流体80が充填されており、距離w2が小さくなっている状態なのか、塗布が進んで保持空間1cの粘性流体80が減少し、距離w2が大きくなっている状態なのかに関わらず、比較的一定の押し力で、第2の壁部1bを押すことができる。これによって、塗布の進行度に応じた保持空間1cの寸法の変化に関わらず、粘性流体80を比較的一定の力で加圧できる。以上より、内壁91に塗布される粘性流体80の厚みにばらつきが生じるのを防ぐことができる。
【0050】
以上の通り、具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0051】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0052】
(変形例1)
壁部1a、1bのうち、加圧手段3によって移動させられる一方の壁部1b(第2の壁部1b)は、筒状部材90の内壁91と対向する面に設けられた凹部1eを有してもよい。図4は、変形例1における塗布装置10を用いて筒状部材90の内壁91に粘性流体80を塗布しているときの塗布装置10を、粘性流体80及び筒状部材90とともに示す断面図である。図4に示す例において、第2の壁部1bは、内壁91と対向する面として、傾斜面1dと、内壁91に平行な平行面1oとを有している。そして、凹部1eは、傾斜面1dに設けられている。図示はしないが、凹部1eは、第2の壁部1bの平行面1oに設けられていてもよい。一例として、凹部1eは、溝である。凹部1eは、特に筒状部材90の延伸方向d1に延伸する保持部1の軸線L1を中心とした周囲を周回する、環状の溝である。第2の壁部1bが凹部1eを有することによって、粘性流体80に、一度凹部1eに浸入してから内壁91に向かって出ていくような流れを生じさせ、粘性流体80を、より強く内壁91に密着させることができる。また、粘性流体80の一部が凹部1e内に溜まるようになる。このため、塗布が進むうちに保持空間1c内の粘性流体80が切れてしまうことを抑制できる。また、第2の壁部1bが凹部1eを有することによって、内壁91と、第2の壁部1bの内壁91に対向する面との間の狭い隙間に浸入して圧力の高まった粘性流体80の一部が、凹部1eに浸入する。このため、内壁91と、第2の壁部1bの内壁91に対向する面との間に一時的に多量の粘性流体80が浸入した場合に、粘性流体80の一部を凹部1eに流すことができる。これによって、内壁91と、第2の壁部1bの内壁91に対向する面との間において、粘性流体80の圧力が一時的に高まることを抑制できる。以上より、粘性流体80の圧力が、内壁91と、第2の壁部1bの内壁91に対向する面との間において比較的一定となり、内壁91に塗布される粘性流体80の厚みを、より均一にすることができる。
【0053】
また、第1の壁部1aは、筒状部材90の延伸方向d1に対して傾斜した傾斜面1fを有する。傾斜面1fは、保持空間1cを区画する面の一部となっている。また、傾斜面1fは、方向d2に沿った第1の壁部1aと内壁91との距離が、第2の壁部1bの進行方向とは逆方向(図4の右側)に向かって大きくなるように傾斜している。また、保持部1は、筒状部材90の延伸方向d1における一方の端部1mに、筒状部材90の延伸方向d1に対して傾斜した傾斜面1gを有する。図4に示す例においては、保持部1のうち第1の壁部1aが、傾斜面1gを有する。第1の壁部1aが傾斜面1gを有することによって、保持部1と筒状部材90とを相対移動させる際に、保持部1の筒状部材90に対する摩擦抵抗が低減される。傾斜面1gは、保持部1の一方の端部1mと他方の端部1nとの両方に設けられていてもよい。傾斜面1gの、筒状部材90の延伸方向d1に対する角度は、例えば10°である。
【0054】
(変形例2)
上述の実施形態及び変形例では、加圧手段3がエアシリンダ4を有し、エアシリンダ4が壁部1a、1bの一部を移動させる例について説明した。しかしながら、加圧手段3の形態は、これに限られない。図5は、変形例2における塗布装置10の構成例を示す断面図である。図5に示す例において、加圧手段3は、引張ばね6を有している。引張ばね6は、一端において第1の壁部1aに接続され、他端において第2の壁部1bに接続されている。この場合、壁部1a、1b同士の距離が広げられ、引張ばね6が延ばされた状態で、壁部1a、1b同士の間に粘性流体80を充填することによって、引張ばね6の復元力によって壁部1a、1b同士を接近させて粘性流体80を加圧することができる。また、図示はしないが、加圧手段3は、一端において第2の壁部1bに接続され、他端において固定部材52に接続されている圧縮ばねを有していてもよい。この場合、圧縮ばねの復元力によって壁部1a、1b同士を接近させて粘性流体80を加圧することができる。また、図示はしないが、加圧手段3は、塗布装置10の使用者が壁部1a、1b同士を接近させるように壁部1a、1bを押すための、壁部押し部材を有していてもよい。壁部押し部材は、例えば、第2の壁部1bを第1の壁部1aに接近させるように押すために、第2の壁部1bに設けられた、棒状の部材である。この場合、塗布装置10の使用者は、壁部押し部材を把持し、壁部押し部材を筒状部材90の延伸方向d1に沿って移動させることにより、第2の壁部1bを第1の壁部1aに対して移動させることができる。
【0055】
(変形例3)
加圧手段3は、粘性流体80を筒状部材90の内壁91に向かって加圧するように、保持空間1cに粘性流体80を供給してもよい。この場合、加圧手段3は、保持空間1cの容積を超える体積の粘性流体80を、保持空間1cに供給可能である。図6は、変形例3における塗布装置10の構成例を、筒状部材90とともに示す断面図である。なお、図6においては粘性流体80の図示は省略している。具体的には、加圧手段3は、粘性流体80に圧力を加えて保持空間1cに送り出すポンプ71を有する。図示はしないが、加圧手段3は、粘性流体80に圧力を加えて保持空間1cに送り出すシリンダを有していてもよい。
【0056】
また、保持部1には、保持空間1cと保持空間1cの外部とを通じさせる粘性流体流路1hが形成されている。図6に示す例においては、第2の壁部1bに、粘性流体流路1hが形成されている。そして、加圧手段3は、粘性流体80を、粘性流体流路1hを介して保持空間1cに供給する。図6に示す例において、加圧手段3は、粘性流体80を送り出すポンプ71と粘性流体流路1hとを接続する管部72を有する。この場合、ポンプ71から送り出された粘性流体80は、管部72及び粘性流体流路1hをこの順に通って保持空間1cに供給される。
【0057】
加圧手段3が保持空間1cに粘性流体80を供給すると、保持空間1c内の粘性流体80の量が増えるために、保持空間1c内における粘性流体80の圧力が上昇する。この場合、粘性流体80は、内壁91の面を含む保持空間1cを区画している面に向かって加圧された状態となる。このため、加圧手段3を用いて保持空間1cに粘性流体80を供給することでも、粘性流体80が内壁91に向かって加圧されている状態を形成することができる。また、特に、粘性流体80に圧力を加えて保持空間1cに送り出すポンプ71を用いることによって、保持空間1c内における粘性流体80の圧力を効率よく上昇させることができる。
【0058】
(変形例4)
上述の実施形態及び各変形例では、保持部1が壁部1a、1bを有し、壁部1a、1bの少なくとも一部が保持空間1cの容積を減少させるように移動する例について説明した。しかしながら、保持部1の形態は、これに限られない。図7は、変形例4における塗布装置10の構成例を、筒状部材90とともに示す断面図である。なお、図7においては粘性流体80の図示は省略している。図7に示す例において、保持部1は、一体の部材である。
【0059】
図7に示す例において、保持部1は、内壁91との間に保持空間1cを形成する凹部1kを有する。図7に示す例においても、保持空間1cは、クリアランスを除いて、保持空間1cの外部の空間から離間している。この場合、保持空間1cは、保持部1のうち凹部1kを形成する面と内壁91とによって区画された、容積の変化しない空間となる。凹部1kは、筒状部材90の内壁91の周方向に沿って環状に形成されている。
【0060】
保持部1が凹部1kを有し、凹部1kによって保持空間1cが形成されていることの作用効果について説明する。仮に、上述の一対の壁部1a、1bによって保持空間1cを形成する場合、保持空間1cを粘性流体80で満たし、保持空間1c内で粘性流体80を加圧するためには、方向d2における筒状部材90の中心付近にも粘性流体80を供給する必要がある場合がある。これに対し、凹部1kによって保持空間1cを形成する場合、筒状部材90の中心付近は保持空間1cとはならず、保持空間1cが内壁91の周辺に集中して形成される。このため、保持空間1cを満たすために必要な粘性流体80の量を小さくしつつ、保持空間1c内で粘性流体80が加圧された状態を形成することができる。
【0061】
また、凹部1kによって保持空間1cを形成することで、保持部1を一体の部材として形成することができる。この場合、保持空間1cは、容積の変化しない空間となる。このため、粘性流体80を筒状部材90の内壁91に向かって加圧するように保持空間1cに粘性流体80を供給する場合に、保持空間1c内の粘性流体80の圧力の上昇に応じて保持空間1cが広がってしまうことが抑制される。これによって、保持空間1cへ粘性流体80を供給する方法による粘性流体80の加圧を、より効率よく行うことができる。
【0062】
図7に示す例では、保持部1の凹部1kを形成する面において粘性流体流路1hが開口する。そして、図7に示す塗布装置10においても、加圧手段3が保持空間1cに粘性流体80を供給することによって、粘性流体80が内壁91に向かって加圧されている状態を形成することができる。
【0063】
図7に示す例において、凹部1kは、方向d2に沿った保持部1と内壁91との距離が、筒状部材90の延伸方向d1において一側から他側に向かうにつれて小さくなるように傾斜した第1傾斜面1iを有する。また、方向d2に沿った保持部1と内壁91との距離が、筒状部材90の延伸方向d1において他側から一側に向かうにつれて小さくなるように傾斜した第2傾斜面1jを有する。
【0064】
凹部1kが第1傾斜面1i及び第2傾斜面1jを有することによって、以下の効果が得られる。移動部2を用いて保持部1と筒状部材90とを相対移動させると、粘性流体80が、第1傾斜面1iと内壁91との間、又は第2傾斜面1jと内壁91との間に浸入する。ここで、第1傾斜面1iと内壁91との間、及び第2傾斜面1jと内壁91との間の距離は、筒状部材90の延伸方向d1において、保持部1と筒状部材90とを相対移動させる際に粘性流体80が浸入していく側に向かって小さくなる。このため、保持部1と筒状部材90とを相対移動させることで、粘性流体80をより狭い隙間へと浸入させて、粘性流体80の圧力を、より効率よく高めることができる。
【0065】
図7に示す例において、粘性流体流路1hは、保持部1の凹部1kを形成する面のうち、第1傾斜面1iと第2傾斜面1jとが接続する部分において開口している。特に、粘性流体流路1hは、第1傾斜面1iと第2傾斜面1jとが接続する部分のうち、異なる2箇所において開口している。これによって、粘性流体流路1hは、全体として略T字型の形状となっている。粘性流体流路1hが、第1傾斜面1iと第2傾斜面1jとが接続する部分において開口していることによって、粘性流体80を、開口から保持空間1c内に、より均等に供給することができる。このため、保持空間1c内において、粘性流体80の加圧を、より均等に生じさせることができる。また、図示はしないが、粘性流体流路1hは、保持部1の凹部1kを形成する面のうち、筒状部材90の延伸方向d1における凹部1kの中心に位置する部分において開口していてもよい。この場合でも、粘性流体80を、開口から保持空間1c内に、より均等に供給することができる。このため、保持空間1c内において、粘性流体80の加圧を、より均等に生じさせることができる。
【0066】
図8図9及び図10は、凹部1kを有する保持部1の他の一例を示す断面図である。なお、図8図9及び図10に示す例においては、粘性流体流路1hなどの図示は省略して、保持部1の外形状のみを示している。凹部1kは、図9及び図10に示すように、筒状部材90の延伸方向d1に直交する面を中心として線対称な外形状を有してもよい。また、凹部1kは、図7及び図8に示すように、筒状部材90の延伸方向d1に直交する面を中心として線対称とならない外形状を有してもよい。凹部1kが、筒状部材90の延伸方向d1に直交する面を中心として線対称な外形状を有する場合には、以下の効果が得られる。保持部1に筒状部材90の内部を往復させることによって粘性流体80を塗布する場合に、往路と復路とにおいて、第1傾斜面1i、第2傾斜面1jの作用によって得られる粘性流体80を加圧する効果の大きさを等しくすることができる。このため、往路と復路とでの保持部1と筒状部材90との相対移動の速度を等しくすれば、内壁91に塗布される粘性流体80の量を、往路と復路とにおいて等しくすることができる。
【0067】
第1傾斜面1i、第2傾斜面1jの、筒状部材90の延伸方向d1に対する角度は、第1傾斜面1i、第2傾斜面1jの作用によって得ようとする粘性流体80を加圧する効果の大きさに応じて適宜選択される。例えば、図8に示すように、第1傾斜面1iの角度が45°以下であり、第2傾斜面1jの角度が45°より大きくてもよい。また、図9に示すように、第1傾斜面1iの角度及び第2傾斜面1jの角度がともに45°以下であってもよい。また、図10に示すように、第1傾斜面1iの角度及び第2傾斜面1jの角度がともに45°より大きくてもよい。粘性流体80を加圧する効果を、より高めるためには、1傾斜面1i及び第2傾斜面1jの、筒状部材90の延伸方向d1に対する角度は、45°以下であることが好ましく、5°以上10°以下であることがさらに好ましい。
【0068】
(変形例5)
上述の実施の形態及び各変形例では、塗布装置10が、保持部1が保持している粘性流体80を内壁91に向かって加圧する加圧手段3を備える例について説明した。しかしながら、塗布装置10の形態は、これに限られない。図11は、変形例5における塗布装置10を用いて筒状部材90の内壁91に粘性流体80を塗布しているときの塗布装置10を、粘性流体80及び筒状部材90とともに示す断面図である。図11に示す塗布装置10は、第2の壁部1bを移動させる部分や、保持空間1cに粘性流体80を供給する手段などの、上述した粘性流体80を内壁91に向かって加圧する加圧手段3を備えていない。特に、図11に示す塗布装置10は、保持部1と筒状部材90とが相対移動していない状態で粘性流体80を加圧可能な手段を備えていないといえる。
【0069】
図11に示す塗布装置10は、内壁91に塗布される粘性流体80を保持する保持空間1cを形成する一対の壁部1a、1bを有する保持部1と、保持部1と筒状部材90とを相対移動させる移動部2とを備える。一対の壁部1a、1bは、筒状部材90の延伸方向d1に接近可能である。図11に示す例において、第2の壁部1bは、固定軸51に沿って筒状部材90の延伸方向d1に移動することによって、第1の壁部1aに対して移動可能である。しかしながら、塗布装置10は、第2の壁部1bを移動させる加圧手段3を有しない。一例として、第2の壁部1bは、固定軸51に対して固定可能である。このような塗布装置10によっても、保持部1が粘性流体80を保持している状態で、移動部2によって保持部1と筒状部材90とを相対移動させることで、内壁91に粘性流体80を塗布できる。
【0070】
図11に示す塗布装置10を使用した粘性流体80の塗布方法の一例について説明する。まず、第1の壁部1aと第2の壁部1bとの間に粘性流体80を配置する。次に、塗布装置10の使用者が、第1の壁部1a及び第2の壁部1bに粘性流体80が十分密着する程度に、手で第2の壁部1bを第1の壁部1aに接近させ、第2の壁部1bを固定軸51に対して固定する。次に、保持部1を筒状部材90の内部に挿入し、移動部2を用いて保持部1と筒状部材90とを相対移動させる。これによって、図11に示すように、内壁91に粘性流体80を塗布することができる。
【0071】
図11に示す塗布装置10において、保持部1が一対の壁部1a、1bを有することの作用効果について説明する。保持部1に筒状部材90の内部を往復させることによって粘性流体80を塗布する場合について考える。この場合に、往路および復路のいずれにおいても、一対の壁部1a、1bによって粘性流体80を保持されるため、往路および復路のいずれにおいても粘性流体80を塗布することができる。
【0072】
(変形例6)
移動部2は、屈曲可能な押し部材22を有していてもよい。図12は、変形例6における塗布装置10の構成例を示す断面図である。なお、図12に示す例においては、押し部材22の具体的な構造の図示は省略している。図12に示す塗布装置10の移動部2は、保持部1に接続する押し部材22を有する。図12に示す例において、押し部材22は、棒状部材21、固定部材52及び固定軸51を介して、保持部1のうち第1の壁部1aに接続している。また、押し部材22は、棒状部材21、固定部材52及びエアシリンダ4を介して、保持部1のうち第2の壁部1bに接続している。
【0073】
押し部材22は、保持部1に接続する部分を含む少なくとも一部に対して筒状部材90の延伸方向d1に保持部1に向かって力が加えられる状態では保持部1に力を伝達して、保持部1を移動させる。
【0074】
図12に示す例においては、移動部2が、押し部材22の一部を挟んで対向して配置される複数のローラ23を有する。図12に示す例において、移動部2は一対のローラ23を有する。ローラ23は、押し部材22のうちローラ23によって挟まれる一部よりも保持部1側に位置する部分に対して筒状部材90の延伸方向d1に保持部1に向かって力が加わるように、押し部材22を駆動する。この場合、押し部材22のうちローラ23によって挟まれる一部よりも保持部1側に位置する部分は、ローラ23によって力が加えられている状態となる。この場合、押し部材22は、ローラ23によって加えられる力を保持部1に伝達して、保持部1を移動させる。
【0075】
また、押し部材22は、力が加えられていない状態では屈曲可能となる。図12に示す例において、押し部材22のうち、ローラ23によって挟まれる一部を基準として保持部1側とは反対側に位置する部分は、ローラ23によって力が加えられていないために、屈曲可能となっている。そして、図12に示す例において、移動部2は、押し部材22のうち、ローラ23によって挟まれる一部を基準として保持部1側とは反対側に位置する部分をガイドするガイド部24を有し、押し部材22の一部は、ガイド部24に沿って屈曲している。
【0076】
押し部材22の具体的な構造について説明する。図13は、押し部材22の具体的な構造の一例を示す図である。図13に示す押し部材22は、直列に接続されている複数のリンク要素25を有する。リンク要素25は、接続されている一方と他方とが互いに対して回転可能となっている。図13に示す例において、複数のリンク要素25は、接続されている一方と他方とが互いに対して回転可能となるように、回転軸26において接続されている。そして、押し部材22は、複数のリンク要素25が直線状に並んだ状態から、複数のリンク要素25の互いに対する回転によって、一方向のみに屈曲可能となっている。
【0077】
押し部材22を用いて保持部1を移動させる方法について説明する。まず、一対のローラ23が、押し部材22のうちローラ23によって挟まれる一部を保持部1に向けて送り出すように回転する。これによって、図14に示すように、押し部材22のうちローラ23によって挟まれる一部よりも保持部1側に位置する部分が保持部1に向かって押し出されて、保持部1が移動する。保持部1が移動することで、図14に示すように、内壁91に粘性流体80が塗布される。このとき、押し部材22のうちローラ23によって挟まれる一部よりも保持部1側に位置する部分は、直線状の形状を維持する。また、図14に示す状態の保持部1を筒状部材90の内部から取り出すとき(図14の右側に移動させるとき)には、ローラ23が、押し部材22のうちローラ23によって挟まれる一部を保持部1側とは反対側に向けて送り出すように回転する。これによって、押し部材22を駆動し、押し部材22によって保持部1を引っ張って、筒状部材90の内部から保持部1を取り出すことができる。このときも、押し部材22のうちローラ23によって挟まれる一部よりも保持部1側に位置する部分は、直線状の形状を維持する。図12及び図14に示す状態の両方において、押し部材22のうちガイド部24の屈曲箇所に位置する部分は、ガイド部24に沿って屈曲する。
【0078】
押し部材22が屈曲可能であることの効果について説明する。仮に、移動部2が屈曲しない棒である場合、筒状部材90の内部に保持部1及び移動部2を挿入しようとする際に、少なくとも筒状部材90の長さと移動部2の長さとを合計した長さ以上の幅を有する作業スペースが必要となってしまう。これに対し、押し部材22が屈曲可能であることによって、より小さな作業スペースにて、内壁91への粘性流体80の塗布を行うことができる。
【0079】
また、塗布装置10は、図示しない粘性流体80の供給源から、供給源ポンプ61によって第1圧力が加えられて送り出された粘性流体80が供給される収容部62を備える。塗布装置10は、収容部62の粘性流体80を、第1圧力よりも小さな第2圧力を加えて送り出して、保持部1の保持空間1cを形成する部分に供給する供給部63を備える。特に、粘性流体80としてグリスを塗布する場合に、塗布装置10は、図示しないグリスの供給源から、供給源ポンプ61によって第1圧力が加えられて送り出されたグリスが供給される収容部62を備える。この場合、塗布装置10は、グリスの供給源、及び供給源ポンプ61を備えていてもよい。また、グリスの供給源は、例えばグリスを収容するペール缶である。塗布装置10は、収容部62に収容されたグリスを、第1圧力よりも小さな第2圧力を加えて送り出して保持空間1cに供給する供給部63を備える。供給部63は、例えば収容部62に収容された粘性流体80を押し出すシリンダである。供給部63として用いられるシリンダとしては、例えば電動シリンダが挙げられる。
【0080】
図12に示す例において、塗布装置10は、第1管64を備え、供給源ポンプ61から送り出された粘性流体80は、第1管64を介して収容部62に供給される。また、塗布装置10は、第2管65を備え、収容部62から送り出された粘性流体80は、第2管65を介して、保持部1の保持空間1cを形成する部分に供給される。図12に示す例において、供給部63は、保持部1が筒状部材90に挿入されていないときに、保持部1の保持空間1cを形成する部分に粘性流体80を供給する。
【0081】
図示はしないが、供給部63は、保持部1が筒状部材90に挿入されているときにも、保持部1の保持空間1cを形成する部分に粘性流体80を供給可能であってもよい。例えば、保持部1に粘性流体流路1hを形成し、粘性流体流路1hに第2管65を接続することによって、保持部1が筒状部材90に挿入されているときにも、保持部1の保持空間1cを形成する部分に粘性流体80を供給可能となる。この場合、供給部63を用いて保持空間1c内の粘性流体80の量を増加させ、保持空間1c内における粘性流体80の圧力を上昇させてもよい。すなわち、供給部63を、保持空間1cに粘性流体80を供給することで粘性流体80を加圧する加圧手段3として用いてもよい。
【0082】
ペール缶などの供給源から粘性流体80を送り出す供給源ポンプ61には、特に粘性の大きな粘性流体80を送り出すために、高い圧力を加えることが求められる場合がある。特に、粘性流体80がグリスである場合、グリスは粘性が大きいため、供給源ポンプ61には、特に高い圧力を加えることが求められる。このように、粘性流体80の粘性が大きい場合、特に粘性流体80がグリスである場合でも、供給源ポンプ61から送り出されて収容部62に供給された粘性流体80を、供給部63により第1圧力よりも低い第2圧力を加えて送り出すことで、保持部1に供給される粘性流体80の圧力を調整することができる。また、供給源ポンプ61を用いて粘性流体80を送り出す場合に、粘性流体80に気泡が生じる場合がある。この場合においても、供給源ポンプ61から送り出された粘性流体80を、一度収容部62に収容することによって、収容部62において粘性流体80の気泡を十分に減少させ、気泡が減少した粘性流体80を保持部1に供給することができる。
【0083】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 保持部
1a、1b 壁部
1c 保持空間
1d 傾斜面
1e 凹部
1h 粘性流体流路
1k 凹部
2 移動部
22 押し部材
23 ローラ
25 リンク要素
3 加圧手段
4 エアシリンダ
10 塗布装置
61 供給源ポンプ
62 収容部
63 供給部
70 固定部
71 ポンプ
80 粘性流体
90 筒状部材
91 内壁
図1
図2
図3
図4
図5
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図14