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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026914
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ウイルス用除菌剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/08 20060101AFI20220203BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220203BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A01N59/08 A
A01P1/00
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130598
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】517440737
【氏名又は名称】株式会社ミズタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100115842
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 正則
(72)【発明者】
【氏名】水谷 基秀
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011AA04
4H011BB18
4H011BC03
4H011BC18
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】新型コロナウイルス等のウイルスや細菌の除菌効果を備えるとともに、除菌効果を長い間維持することができることに加え、安全・無害でかつ取り扱いがしやすいため、容器等に収容して、携帯用の除菌剤としても適するウイルス用除菌剤を提供すること。
【解決手段】本発明に係るウイルス用除菌剤は、有効塩素濃度が一定以上の次亜塩素酸水と、含有量が一定以上の所定の界面活性剤という、新型コロナウイルス等のウイルスや細菌の除菌効果を備えた成分を混合した混合体からなるので、これらのウイルス等の除菌効果を有するとともに、仮に次亜塩素酸水が失活し、除菌効果がなくなったないしは弱まった場合であっても、失活した分を界面活性剤が補うため、除菌効果を長い間維持することができる。加えて、構成成分及びその分解物が安全・無害であり、かつ取り扱いがしやすいため、容器等に収容して携帯用の除菌剤として用いるのにも適する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸水と、下記(A)~(I)からなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含んだ混合体からなり、有効塩素濃度が80ppm以上であることを特徴とするウイルス用除菌剤。
[界面活性剤:各成分最後の( )内は除菌剤全体に対する含有量を示す。]
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2質量%以上)
(B)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1質量%以上)
(C)アルキルグリコシド(0.1質量%以上)
(D)アルキルアミンオキシド(0.05質量%以上)
(E)塩化ベンザルコニウム(0.05質量%以上)
(F)塩化ベンゼトニウム(0.05質量%以上)
(G)塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01質量%以上)
(H)純石けん分(脂肪酸カリウム(0.24質量%以上))
(I)純石けん分(脂肪酸ナトリウム(0.22質量%以上))
【請求項2】
前記界面活性剤が、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(除菌剤全体に対して0.2質量%以上)であることを特徴とする請求項1に記載のウイルス用除菌剤。
【請求項3】
前記次亜塩素酸水が、次亜塩素酸ナトリウムを水に入れて混合し、希塩酸を添加した混合体であって、pHが5.0~6.5であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウイルス用除菌剤。
【請求項4】
容量が50~500mlの容器に収容されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のウイルス用除菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス用除菌剤に関する。さらに詳しくは、新型コロナウイルスの除菌に適するウイルス用除菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2019年冬より流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)については、パンデミック(感染症の大流行)の発生が懸念されており、空間に浮遊する可能性があるウイルスや細菌等による感染対策が重要性を増している。したがって、企業や家庭、その他の公衆が集合する場所等において、事前に各自が十分な対策を講じておくことが重要となっている。
【0003】
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するには、いわゆる3つの密(密閉・密集・密接。「3密」と略される。)を避けて、手指消毒とマスク着用の励行に帰結する。かかる背景の中、手指消毒に関しては、帰宅後等の手洗い励行に反映されるが、日常生活や社会生活においては、ウィズ(With)コロナの生活様式とは必ずしもなっていないのが現状である。
【0004】
例えば、通勤・通学時に電車を降りた時、何か物体に触れた時、買い物の際に紙幣や硬貨に触れた時に、その都度手洗い等を行って除菌することが必要であるが、このような手洗い等を行うことは難しい。その都度の除菌のためには、除菌剤をあらかじめ各自で持参することが望ましく、各自が携帯可能な携帯用除菌剤の提供が求められる。
【0005】
ここで、新型コロナウイルス等のウイルスや細菌等に効果があるとされている除菌剤の成分としては、例えば、エタノール(エチルアルコール:COH)が挙げられる。エタノールは、新型コロナウイルスの除菌に対しては純度が70%以上のものが必要と考えられる一方、かかる純度のエタノールは危険物であり、携帯用として常時持ち歩くのは適さない。
【0006】
また、かかる純度のエタノールは脱脂力が非常に高いため、使用者の手指の皮膚を荒らしてしまい、使いにくいという問題があった。さらに、エタノールは揮発性が高く、一瞬でドライアップするので、十分な手指消毒ができず、除菌効果が得られないというのが現状であった。さらに、アルコールは、水が多いところの除菌には不向きであると言われており、柔軟に利用可能なものではなかった。
【0007】
他の成分として、アルコールジェルからなる除菌剤は、ジェル特有のベトベト感やヌルヌル感を嫌う使用者もあり、また、手を洗い直さないといけない場合もあるため、取り扱いにくいという問題があった。加えて、市販されるアルコールジェルは、有効成分となるアルコールの含有量が少ない場合もあり、新型コロナウイルス等の除菌効果を発揮しないこともあった。
【0008】
このような成分に対して、次亜塩素酸ナトリウムを水で希釈し、さらに希塩酸等でpHを調整することで得られる次亜塩素酸水は、有効塩素濃度を一定以上とすることにより、次亜塩素酸の除菌作用により、新型コロナウイルス等のウイルスや細菌(病原菌等を含む。以下同じ。)等の除菌剤として機能すると考えられている。
【0009】
溶媒となる水はもちろんのこと、次亜塩素酸ナトリウム、希塩酸等の塩酸、次亜塩素酸水は、いずれも厚生労働省により食品添加物として定められている成分であり、加えて、次亜塩素酸水は、除菌後にすぐに水に戻るため、人体だけでなく環境にも安全・無害の除菌剤となる(例えば、特許文献1等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-100717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
かかる次亜塩素酸水は、新型コロナウイルス等のウイルスや細菌に対する除菌効果が期待でき、かつ、各自が携帯するにあたっても安全・無害な薬剤である。しかしながら、次亜塩素酸水は光や紫外線に弱く、また、熱にも弱いため、これらの影響で次亜塩素酸が分解して、失活する(効力がなくなる、ないしは弱くなる。)場合があった。加えて、次亜塩素酸水は、塩分が多いため、所定期間の経過で失活してしまう場合があるため、使用している間に有効性が低下してしまうという問題があり、携帯用除菌剤として使用する場合も含め、改善が求められていた。
【0012】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、新型コロナウイルス等のウイルスや細菌等の除菌効果を備えるとともに、除菌効果を長い間維持することができることに加え、安全・無害でかつ取り扱いがしやすいため、容器等に収容して、携帯用の除菌剤としても適するウイルス用除菌剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、本発明に係るウイルス用除菌剤は、
次亜塩素酸水と、下記(A)~(I)からなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含んだ混合体からなり、有効塩素濃度が80ppm以上であることを特徴とする。
[界面活性剤:各成分最後の( )内は除菌剤全体に対する含有量を示す。]
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2質量%以上)
(B)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1質量%以上)
(C)アルキルグリコシド(0.1質量%以上)
(D)アルキルアミンオキシド(0.05質量%以上)
(E)塩化ベンザルコニウム(0.05質量%以上)
(F)塩化ベンゼトニウム(0.05質量%以上)
(G)塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01質量%以上)
(H)純石けん分(脂肪酸カリウム(0.24質量%以上))
(I)純石けん分(脂肪酸ナトリウム(0.22質量%以上))
【0014】
本発明に係るウイルス用除菌剤は、前記した本発明において、前記界面活性剤が、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(除菌剤全体に対して0.2質量%以上)であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るウイルス用除菌剤は、前記した本発明において、前記次亜塩素酸水が、次亜塩素酸ナトリウムを水に入れて混合し、希塩酸を添加した混合体であって、pHが5.0~6.5であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るウイルス用除菌剤は、前記した本発明において、容量が50~500mlの容器に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るウイルス用除菌剤は、有効塩素濃度が一定以上の次亜塩素酸水と、含有量が一定以上の所定の界面活性剤という、新型コロナウイルス等のウイルスや細菌等の除菌効果を備えた成分を混合した混合体からなるので、これらのウイルス等の除菌効果を有するとともに、仮に次亜塩素酸水が失活し、除菌効果がなくなるないしは弱まった場合であっても、失活して低下した分を界面活性剤が補うため、除菌効果を長い間維持することができる。加えて、本発明に係る除菌剤は、構成成分及びその分解物が安全・無害であり、かつ取り扱いがしやすいため、容器等に収容して携帯用の除菌剤として用いるのにも適する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(I)ウイルス用除菌剤:
以下、本発明に係るウイルス用除菌剤の一態様について説明する。なお、本発明における「除菌」とは、狭義の細菌、真菌(以下、「細菌等」とする場合もある。)だけでなく、「ウイルス」を除去する効果を含み、「除菌剤」とは、新型コロナウイルス等のウイルス等を含む細菌等の除菌、殺菌、滅菌、消毒等の諸効果を奏する剤という意味を含む。
【0019】
本発明に係るウイルス用除菌剤(以下、単に「除菌剤」とする場合もある。)は、次亜塩素酸水と、後記する所定の界面活性剤を少なくとも1種を含んだ混合体からなる。
【0020】
(I-1)次亜塩素酸水:
本発明の除菌剤を構成する次亜塩素酸水(次亜塩素酸水溶液、次亜塩素酸含有水とも呼ばれる。)としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を水に入れて混合し、希塩酸等の酸を添加した混合体を得る方法を用いることにより製造することができる。この場合、希塩酸等の酸の添加は次亜塩素酸のpH調整を兼ねるものである。反応式の一例(塩酸を添加した場合。)を以下に示す。
【0021】
(反応式の一例)
NaClO+HO+HCl→HOCl
【0022】
次亜塩素酸含有水の調製にあっては、従来公知の水道水、精製水、イオン交換水、RO水等といった、除菌剤等の薬剤の溶媒として一般的に使用される水を用いることができる。また、次亜塩素酸ナトリウムは、食品の除菌に使用される食品添加物として認められているものであり、一般的に入手できるものを用いることができる。
【0023】
次亜塩素酸ナトリウムを水で希釈して得られる次亜塩素酸水も食品の除菌に使用される食品添加物であり、一般的に入手できるものを用いることができる。なお、pH調整等のために添加される塩酸(希塩酸等。)も、食品添加物であり、一般的に入手できるものを用いることができる。
【0024】
なお、次亜塩素酸水の製造は、次亜塩素酸ナトリウムと水と塩酸(希塩酸等。)を一緒に添加せずに、水に次亜塩素酸ナトリウムを添加し、両者を均一に混合した後、塩酸(希塩酸等。)を添加し、再度均一に混合することが好ましい。このようにすることにより、次亜塩素酸ナトリウムと塩酸の反応による塩素ガスの発生を極力抑えることができる。また、これとは逆に、水に対して塩酸(希塩酸等。)を添加し、均一に混合した後、次亜塩素酸ナトリウムを添加し、再度均一に混合するようにしてもよい。なお、酸(pH調整を兼ねる。)としては、前記した塩酸(希塩酸等。)のほかの公知の酸を使用することができるが、飲料水に適用することに鑑みれば、希塩酸等の塩酸や、後記するクエン酸、クエン酸ナトリウム等を使用することが好ましい。
【0025】
一般に、次亜塩素酸ナトリウムを水に入れて混合して得られる次亜塩素酸水は、pHが7.0~8.0程度となると考えられるが、本発明のウイルス用除菌剤で用いられる次亜塩素酸水は、希塩酸等を添加することで、pHが5.0~6.5程度の微酸性の水溶液として製造されることが好ましい。次亜塩素酸水のpHをこのようにすれば、次亜塩素酸(HOCl)による高い除菌効果が期待できる。
【0026】
一方、pHが5.0を下回ると、人体に有害な塩素ガスが発生する場合があるため好ましくない。また、pHが6.5を上回ると、次亜塩素酸(HOCl)の存在率が低下し、有効塩素存在率が低下する場合があるため、こちらも好ましくない。次亜塩素酸水のpHは、5.5~6.0程度とすることが特に好ましい。
【0027】
なお、新型コロナウイルスについては現時点では不明な部分もあるが、一般に、次亜塩素酸ナトリウムを水で希釈しただけの状態(pHが7.0~8.0程度。)では、ウイルスや病原菌の細胞膜は破れにくく、十分な除菌効果を得ることができないと考えられる。一方、pHが5.0~6.5程度の微酸性次亜塩素酸水によれば、後記する次亜塩素酸の濃度(有効塩素濃度)が一定以上であることと相俟って、次亜塩素酸(HOCl)が細胞膜を酸化して損傷を与え、破壊させ、除菌効果を奏することができると推定される。
【0028】
本発明に係るウイルス除菌剤において、次亜塩素酸水における有効塩素濃度(後記するが、ウイルス除菌剤における有効塩素濃度と同意。)は、ウイルスの除菌効果の観点から、80ppm(0.008%(0.008質量%))以上とする(1ppm=0.0001%(0.0001質量%)より。以下同じ。)。濃度が80ppmより低いと、除菌効果が発揮されない場合がある。
【0029】
次亜塩素酸水の有効塩素濃度は、80~300ppmとすることが好ましい。有効塩素濃度が300ppmを超えると、安定性に欠け、成分の分離等が生じる場合がある。有効塩素濃度は、95~200ppmとすることがさらに好ましく、99~200ppmとすることが特に好ましい。
【0030】
なお、本発明のウイルス用除菌剤は、次亜塩素酸水と併用される界面活性剤の含有量が少なく(除菌剤全体の2.0質量%以下が好ましく、好ましくは1.0質量%以下。)となると考えてよく、これは、界面活性剤に任意成分を加えても上限で除菌剤全体の0.5質量%程度が増えるくらいと考えられる。)、濃度も低いので、前記した次亜塩素酸水の濃度(有効塩素濃度)とウイルス用除菌剤の濃度(有効塩素濃度)は、概ね同視することができる。よって、本発明にあっては、前記した次亜塩素酸水の濃度(有効塩素濃度)の範囲は、そのまま除菌剤の濃度(有効塩素濃度)の範囲として考えてよい。また、次亜塩素酸水のpHとウイルス用除菌剤のpHも同様であり、次亜塩素酸水のpHの範囲は、そのまま除菌剤のpHの範囲として考えてよい。
【0031】
(I-2:界面活性剤)
本発明に係るウイルス用除菌剤は、前記した次亜塩素酸水と、下記(A)~(I)からなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含み、前記した次亜塩素酸水と混合した混合体として、本発明のウイルス用除菌剤を構成する。
【0032】
前記した次亜塩素酸水は、光や紫外線に弱く、また、熱にも弱いため、これらの影響で次亜塩素酸が分解して、失活する(効力がなくなる、あるいは弱くなる。)場合がある。また、塩分が多いため、ある程度時間が経つと失活してしまう場合がある。なお、次亜塩素酸水が分解しても、水と若干の塩分が生じるだけで、人体や環境に有害な分解物が生じることはない。
【0033】
一方、前記した所定の界面活性剤も、ウイルス用除菌剤全体に対して( )内に示した含有量とすることで、新型コロナウイルス等のウイルスを含む除菌効果が認められるため、次亜塩素酸水と混合して併用して使用することで、仮に次亜塩素酸水が失活した場合であっても、本発明の除菌剤の除菌効果を持続させるために役立つことになり、除菌効果を長い間維持することができる。
【0034】
除菌剤に添加する界面活性剤としては、下記(A)~(I)からなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を含むようにすればよく、これらの界面活性剤は、いずれも人体や環境に安全・無害であり、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、下記の界面活性剤における(○○質量%以上)については、ウイルス用除菌剤に対する含有量(質量%)の下限の値である。
【0035】
[使用可能な界面活性剤]
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2質量%以上)
(B)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1質量%以上)
(C)アルキルグリコシド(0.1質量%以上)
(D)アルキルアミンオキシド(0.05質量%以上)
(E)塩化ベンザルコニウム(0.05質量%以上)
(F)塩化ベンゼトニウム(0.05質量%以上)
(G)塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01質量%以上)
(H)純石けん分(脂肪酸カリウム(0.24質量%以上))
(I)純石けん分(脂肪酸ナトリウム(0.22質量%以上))
【0036】
本発明にあっては、前記した(A)~(I)の界面活性剤のうち、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルを、除菌剤全体に対して0.2質量%以上含有することが好ましい。界面活性剤として0.2質量%以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、アルコールエトキシレートとも表記される。)を選択することにより、かかる非イオン性界面活性剤は、コロナウイルス等のウイルスの除菌効果が確実に発揮されることが期待できるとともに、乳化力、浸透力及び分散力に優れ、生物分解性もよいという特性を付与することができる。かかる(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの除菌剤に対する含有量は、除菌剤全体に対して0.2~2.0質量%とすることが好ましく、0.2~1.0質量%とすることがさらに好ましく、0.2~0.5質量%とすることが特に好ましい。なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの構造式を、下記式(X)に示す。
【0037】
(ポリオキシエチレンアルキルエーテルの構造式)
2m+1-O-(CH-CH-O)-H ……(X)
ここで、mは、アルキル基の炭素数であり、一般に12~15(通常の製品は12程度。)、nは、エチレンオキシドの付加モル数であり、通常の製品は10程度である。また、m=12、n=10とした場合の分子量は626.9となると考えられる。
【0038】
それ以外の界面活性剤のウイルス用除菌剤に対する含有量の範囲は以下のとおりである。これらはいずれも、除菌剤全体に対する含有量(質量%)である。
(B)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:
(好ましい範囲=0.1~1.0質量%、特に好ましい範囲=0.1~0.2質量%)
(C)アルキルグリコシド:
(好ましい範囲=0.1~1.0質量%、特に好ましい範囲=0.1~0.2質量%)
(D)アルキルアミンオキシド:
(好ましい範囲=0.05~0.5質量%、特に好ましい範囲=0.05~0.1質量%)
(E)塩化ベンザルコニウム:
(好ましい範囲=0.05~0.5質量%、特に好ましい範囲=0.05~0.1質量%)
(F)塩化ベンゼトニウム:
(好ましい範囲=0.05~0.5質量%、特に好ましい範囲=0.05~0.1質量%)
(G)塩化ジアルキルジメチルアンモニウム:
(好ましい範囲=0.01~0.5質量%、特に好ましい範囲=0.01~0.05質量%)
(H)純石けん分(脂肪酸カリウム(0.24質量%以上))
(好ましい範囲=0.24~2.0質量%、特に好ましい範囲=0.24~0.5質量%)
(I)純石けん分(脂肪酸ナトリウム(0.22質量%以上))
(好ましい範囲=0.22~2.0質量%、特に好ましい範囲=0.22~0.5質量%))
【0039】
本発明のウイルス用除菌剤には、さらに必要に応じて、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、任意成分、例えば、pH調整剤、他の除菌成分、分散剤、天然抽出物、前記以外の界面活性剤、可溶化剤、酵素、染料、消泡剤、起泡剤、防腐剤、香料、腐食抑制剤等を適宜添加することができる。任意成分は、上限で除菌剤全体の0.5質量%程度とすることが好ましい。
【0040】
任意成分の一部の具体例を挙げると、pH調整剤としては、例えば、酸成分として、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、安息香酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、ホスホノブタントリカルボン酸、リン酸等及びその塩が挙げられ、クエン酸及びその塩(クエン酸ナトリウム等。)を使用することが好ましい。前記した成分はその1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
また、pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン等が挙げられる。これらの成分もその1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
本発明のウイルス用除菌剤を製造する方法としては、特に制限はなく、必須となる次亜塩素酸水及び所定の界面活性剤、並びに必要により添加される任意成分等の各成分を混合、撹拌する等の通常の方法により簡便に製造することができる。
【0043】
(II)ウイルス用除菌剤の使用方法等:
ウイルス用除菌剤は、例えば、手指等の人体において除菌が必要な部位に塗布したり、ドアノブ等の除菌が必要な物品、部材等に塗布したり、除菌が必要な空間に噴霧したりする等、除菌が必要とされるあらゆる箇所に塗布、噴霧等することにより適用することができる。
【0044】
本発明に係るウイルス用除菌剤は、例えば、容量が好ましくは50~500mlの容器に収容されて、使用者が携帯する携帯用除菌剤として使用してもよい。容器に収容された携帯用除菌剤とすることにより、通勤・通学時に電車を降りた時、何かの物に触れた時、買い物時に紙幣や硬貨に触れた時等のその都度に必要箇所に塗布等ができ、除菌が可能となる。なお、容器の容量は、50~100mlとすることが特に好ましいが、これらは一例であり、かかる範囲には限定されない。
【0045】
容器は、図示しない噴射部を備え、スプレー噴射が可能な容器としてもよく、その場合は、耐圧仕様の容器とすることが好ましい。また、容器に除菌剤とともに不燃性ガス等を一緒に充填して、いわゆるエアゾールとして使用してもよい。また、容器は、遮光性(紫外線防止)とすることで、次亜塩素酸水の安定保存を可能として、除菌剤の失活を防止し、除菌効果を維持することができる。
【0046】
前記の性能を維持すべく、容器を構成する材料としては、樹脂材料を用いることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル樹脂を用いることができる。また、容器を構成する材料として、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)、スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)等の熱可塑性樹脂や、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂等を用いることもできる。さらに、前記した樹脂等の2種以上を組み合わせた樹脂組成物や、いわゆる繊維強化プラスチック(FRP)、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック等を使用してもよい。
【0047】
なお、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のポリエステル樹脂は、通気性を有するため、収容される除菌剤の変質を防止するため、容器の内面にフッ素樹脂等の非通気性材料をコーティングすることがより好ましい。
【0048】
ここで、次亜塩素酸水には、紫外線に接すると成分が分解して水に戻る性質がある。このため、容器は、耐紫外線材料からなるものとすることが好ましい。例えば、ポリエステル樹脂に酸化チタンや遮光剤等を配合させたものなどを用いてもよいが、次亜塩素酸水は酸化チタンにより分解され得るため、酸化チタンは容器の内層の表面に現れないように、容器の内層を形成することが好ましい。また、容器を構成する材料に白色顔料等の顔料を添加して、耐紫外線性ないしは遮光性等を付与してもよい。
【0049】
ウイルス用除菌剤を収容する容器の製造方法としては特に制限はなく、前記した樹脂材料を従来公知の成形方法(ブロー成形法、射出成形法等。)を用いることにより、簡便に製造することができる。
【0050】
(III)発明の効果:
以上説明したように、本発明に係るウイルス用除菌剤は、有効塩素濃度が一定以上の次亜塩素酸水と、含有量が一定以上の所定の界面活性剤という、新型コロナウイルス等のウイルスや細菌等の除菌効果を備えた成分を混合した混合体からなるので、これらのウイルス等の除菌効果を有するとともに、仮に次亜塩素酸水が失活し、除菌効果がなくなるないしは弱まった場合であっても、失活して低下した分を界面活性剤が補うため、除菌効果を長い間維持することができる。加えて、本発明に係る除菌剤は、構成成分及びその分解物が安全・無害であり、かつ取り扱いがしやすいため、容器等に収容して携帯用の除菌剤として用いるのにも適する。
【0051】
(IV)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0052】
例えば、本発明に係るウイルス用除菌剤を構成する次亜塩素酸水(次亜塩素酸水溶液)の製造方法について、水で希釈された次亜塩素酸ナトリウムに希塩酸を添加する方法を挙げて説明した。一方、次亜塩素酸水(次亜塩素酸水溶液)を製造するには、かかる方法以外を用いてもよく、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)を有隔膜電界槽で電気分解して、陽極側から得られる次亜塩素酸を水溶液としてもよい。あるいは、塩酸を無隔膜電界槽で電気分解して、陰極側から得られる次亜塩素酸を水溶液としてもよい。そして、次亜塩素酸水をこれら以外の方法で製造するようにしても問題はない。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例0053】
以下、実施例等に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
ウイルス用除菌剤の製造:
下記の(1)及び(2)に示した方法を用いて、本発明に係るウイルス用除菌剤を製造した。
【0055】
(1)次亜塩素酸水の製造:
次亜塩素酸ナトリウムをRO水で希釈して、pH調整のために希塩酸を混合して、pHを5.8とした、有効塩素濃度が100ppm(0.01質量%)の次亜塩素酸水を得た。
【0056】
(2)ウイルス用除菌剤の製造:
(1)で得られた次亜塩素酸水に、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル(原液)を、質量比で、次亜塩素酸水/ポリオキシエチレンアルキルエーテル=100/0.5で混合、撹拌することにより、実施例1のウイルス用除菌剤(pH=5.8)を得た(除菌剤全体に対して、有効塩素濃度が100ppm×100/100.5(=約99.50ppm)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量が0.5質量%×100/100.5(=約0.4975質量%)となる。)。
【0057】
(2)で得られたウイルス用除菌剤を、容量が50mlのポリエチレンテレフタレート樹脂(白色顔料を添加。)を構成材料とする、噴射部を備えた白色容器に収容して、携帯用のウイルス用除菌剤とした。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、例えば、新型コロナウイルス等のウイルスや各種細菌等を除菌・消毒等するための除菌剤を提供する手段として有利に使用することができ、産業上の利用可能性は高いものである。