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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027032
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220203BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020130795
(22)【出願日】2020-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174942
【弁理士】
【氏名又は名称】平方 伸治
(72)【発明者】
【氏名】児玉 匠
(72)【発明者】
【氏名】浦田 昇尚
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301GG08
5H301GG09
5H301KK02
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】最適な経路を生成することができる移動体を提供すること。
【解決手段】移動体1は、移動体1の標準的な経路を生成する標準経路生成部、及び、所定の特殊状況での経路を生成する特殊経路生成部を有する経路生成部と、移動体1の状況が特殊状況に相当するか否かを判断するための条件を記憶する記憶部と、移動体1の状況が特殊状況に相当しない場合には標準経路生成部を選択し、移動体の状況が特殊状況に相当する場合には特殊経路生成部を選択する選択部と、選択部で選択された経路生成部によって生成された経路に基づいて、移動体1を制御する移動制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発点から目的地まで自律的に移動する移動体において、
前記移動体の標準的な経路を生成する標準経路生成部、及び、所定の特殊状況での経路を生成する特殊経路生成部を有する経路生成部と、
前記移動体の状況が前記特殊状況に相当するか否かを判断するための条件を記憶する記憶部と、
前記移動体の状況が前記特殊状況に相当しない場合には前記標準経路生成部を選択し、前記移動体の状況が前記特殊状況に相当する場合には前記特殊経路生成部を選択する選択部と、
前記選択部で選択された経路生成部によって生成された経路に基づいて、前記移動体を制御する移動制御部と、
を備えることを特徴とした移動体。
【請求項2】
前記経路生成部は、
前記標準経路生成部として、前記出発点から前記目的地までの全体的な経路を生成するグローバルプランナと、自律移動中に局所的な経路を生成するローカルプランナと、を有し、かつ、
前記特殊経路生成部として、自律移動中に前記特殊状況での局所的な経路を生成する特殊ローカルプランナを有する、
請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記特殊経路生成部として、前記出発点から前記目的地までの前記特殊状況での全体的な経路を生成する特殊グローバルプランナを有する、
請求項2に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体を自律的に移動させるための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1は、出発点から目的地まで経路に沿って自律的に移動する車両を開示している。この車両では、自律移動に先立って、出発点から目的地までの全体的な経路が生成される。例えば、出発点及び目的地のみがプロットされ、その間の経路は、車両の処理能力又は移動能力に基づいて自動的に生成される。自律移動の際には、車両は、デジタルマップ中における自己位置の特定に基づいて、経路に沿って目的地まで移動する。しかしながら、目的地における目標の位置/姿勢と、実際の位置/姿勢とは、異なり得る。したがって、特許文献1では、目的地に到着すると、車両は停止する。続いて、車両は、センサによって目的地における環境のデータを検出する。続いて、目的地における目標の車両の位置/姿勢に対して割り当てられたデータと、センサによって検出される実際のデータと、が比較される。続いて、実際のデータが所定の許容範囲に収まるように、車両の位置/姿勢が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9244463号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような移動体は、特殊な状況においては(特許文献1では、目的地へのアプローチ)、一般的な状況で使用される経路生成方法では最適な経路を生成できない場合がある。したがって、例えば特許文献1では、このような状況で車両が停止される。この場合、車両の位置決めに追加の時間が必要とされる。
【0005】
本開示は、上記のような課題を考慮して、最適な経路を生成することができる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、出発点から目的地まで移動する移動体において、移動体の標準的な経路を生成する標準経路生成部、及び、所定の特殊状況での経路を生成する特殊経路生成部を有する経路生成部と、移動体の状況が特殊状況に相当するか否かを判断するための条件を記憶する記憶部と、移動体の状況が特殊状況に相当しない場合には標準経路生成部を選択し、移動体の状況が特殊状況に相当する場合には特殊経路生成部を選択する選択部と、選択部で選択された経路生成部によって生成された経路に基づいて、移動体を制御する移動制御部と、を備える移動体である。
【0007】
この移動体は、標準的な経路を生成する標準経路生成部に加えて、所定の特殊状況での経路を生成する特殊経路生成部を有する。移動体の状況が特殊状況に相当しない場合(つまり、通常の状況)には、標準経路生成部が経路を生成し、移動体の状況が所定の特殊状況に相当する場合には、特殊経路生成部が経路を生成する。したがって、移動体の状況に応じて標準経路生成部と特殊経路生成部とが互いに切り替えられる。よって、移動体の状況に応じて最適な経路を生成することができる。
【0008】
経路生成部は、標準経路生成部として、出発点から目的地までの全体的な経路を生成するグローバルプランナと、自律移動中に局所的な経路を生成するローカルプランナと、を有してもよく、かつ、特殊経路生成部として、自律移動中に特殊状況での局所的な経路を生成する特殊ローカルプランナを有してもよい。この場合、移動中の特殊状況において、標準的な局所経路を生成するローカルプランナに代えて、特殊ローカルプランナによって経路が生成される。したがって、移動しながら特殊状況における経路が生成されるため、移動体の位置決めのための時間を短縮することができる。
【0009】
移動体は、特殊経路生成部として、出発点から目的地までの特殊状況での全体的な経路を生成する特殊グローバルプランナを有してもよい。この場合、移動体の状況に応じて最適な全体的な経路を生成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、最適な経路を生成することができる移動体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る移動体を示す概略的な側面図である。
図2】実施形態に係る移動体が移動する領域を示す概略的な平面図である。
図3】制御装置の構成を示す概略的なブロック図である。
図4】特殊状況の一例を示す概略図である。
図5】特殊状況の一例を示す概略図である。
図6】特殊状況の一例を示す概略図である。
図7】移動体の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る移動体を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺は変更されている場合がある
【0013】
図1は、実施形態に係る移動体を示す概略的な側面図であり、図2は、実施形態に係る移動体が移動する領域を示す概略的な平面図である。図2を参照して、本実施形態では、移動体1が、1つ又は複数の工作機械50を具備する工場100内を移動する。他の実施形態では、移動体1は、工場以外の他の領域内を移動してもよい(例えば、倉庫)。工場100は、1つ又は複数の工作機械50と、1つ又は複数のストッカ60と、1つ又は複数のテーブル70と、メイン制御装置200と、を具備している。工場100は、他の構成要素を更に具備していてもよい。
【0014】
例えば、工作機械50は、マシニングセンタであることができる。工作機械50は、マシニングセンタ以外の他の工作機械であってもよい。例えば、工作機械50は、工具TによってワークWを加工するための主軸51と、複数の工具Tを格納するためのツールマガジン52と、を備えている。工作機械50は、他の構成要素を更に備えていてもよい。例えば、ストッカ60は、ワークW又は他の物品(例えば、工具)を保管することができる。例えば、テーブル70上には、工具T又は他の物品(例えば、ワーク)が置かれることができる。メイン制御装置200は、工場100のいくつかの構成要素と有線で又は無線で通信可能に接続されており、これらの構成要素のいくつかを制御するように構成されている。例えば、メイン制御装置200は、PLC(Programmable Logic Controller)、PC(Personal Computer)、サーバー、又は、タブレット等を含むことができる。メイン制御装置200は、プロセッサ、記憶部、表示装置、及び、入力装置等の構成要素を有することができる。
【0015】
工場100は、1つ又は複数の壁80によって仕切られている。移動体1は、壁80によって仕切られた床の上を移動する。例えば、移動体1は、工作機械50、ストッカ60、及び、テーブル70の間で自律的に移動し、これらの間でワークW、工具T、又は、他の物品を搬送するように構成されている。メイン制御装置200は、目的地を含む指令を移動体1に送信してもよく、移動体1は、メイン制御装置200からの指令に基づいて工場100内を移動してもよい。
【0016】
図1を参照して、上記のような工場100内を移動する移動体1は、出発点から目的地まで自律的に移動するように構成されている。移動体1は、例えば、AGV(Automated Guided Vehicle)であることができる。例えば、移動体1は、本体11と、1つ又は複数の車輪12と、1つ又は複数のロータリエンコーダ13と、アーム14と、センサ15と、カメラ16と、制御装置20(ローカル制御装置とも称され得る)と、を備えている。移動体1は、他の構成要素を更に備えていてもよい。
【0017】
本体11に取り付けられた各車輪12は、例えば、サーボモータ等の駆動装置によって回転させられることができ、各車輪12の回転数を検出するために、ロータリエンコーダ13が各車輪12に対して設けられている。ロータリエンコーダ13は、制御装置20と有線で又は無線で通信可能に接続されており、検出した回転数を制御装置20に送信する。例えば、アーム14は、多軸多関節型ロボットであることができ、本体11に取り付けられている。アーム14は、工具T又はワークW等の物品を保持するためのハンドやグリッパ、チャック等を含むことができる。アーム14には、カメラ16が設けられている。カメラ16は、制御装置20と有線で又は無線で通信可能に接続されており、制御装置20によって制御されることができる。例えば、カメラ16は、CMOSカメラ又はCCDカメラを含むことができ、カラーカメラ又は白黒カメラであることができる。例えば、カメラ16は、取得した画像を制御装置20に送信してもよく、制御装置20は、カメラ16によって取得された画像に基づいて、アーム14の駆動装置に対して指令を送信してもよい。
【0018】
例えば、センサ15は、本体11に取り付けられることができる。センサ15は、移動体1の他の位置に取り付けられてもよい(例えば、アーム14)。センサ15は、移動体1の周囲の物体を検出するように構成されている。具体的には、センサ15は、移動体1から周囲の物体までの距離を測定するように構成されている。例えば、センサ15は、レーザセンサであることができる。センサ15は、制御装置20と有線で又は無線で通信可能に接続されており、制御装置20によって制御されることができる。センサ15は、測定されたデータを制御装置20に送信する。
【0019】
図4図6は、特殊状況の一例を示す概略図であり、また、センサ15からのデータに基づいて得られる点群データ及び画像データの例を示している。図4図6は、工場100内の同じ区画を示している。
【0020】
図4は、画像データ120を示している。図4において、黒四角は、自律移動に先立って制御装置20によって生成される画像データ120のうち、物体が存在する領域の各格子120iを示し、白丸は、自律移動中にセンサ15によって測定されるスキャン点群の各点110jを示す。なお、図4では、物体が存在しない領域、及び、センサ15によって未観測の領域の格子は示されていないが、画像データ120は、そのような物体が存在しない領域及び未観測の領域の格子のデータも含む。
【0021】
図5及び図6は、点群データ110を示している。図5及び図6において、黒丸は、自律移動に先立って制御装置20に記憶される点群データ110の各点110iを示し、白丸は、自律移動中にセンサ15によって測定されるスキャン点群の各点110jを示す。
【0022】
図5を参照して、先ず、移動体1の制御装置20は、センサ15を使用して、工場100内において移動体1が移動すべき領域の点群データ110を取得することができる。「点群データ」とは、センサ15によって測定される点110iの集合を含む。点群データ110は、工場100内の物体の表面の形状を表すことができる(図4図6では、工作機械50及び壁80の形状)。例えば、オペレータは、自律移動に先立って、工場100内において移動体1を手動で移動させることができる。この間に、センサ15は、例えば所定のインターバルで、工場100内の物体(例えば、工作機械50、ストッカ60、テーブル70及び壁80等)を検出する。全ての時点におけるデータ(点110i)を合成することによって、移動体1が移動した全ての領域内にある物体の形状(点群データ110)を表すことができる。点群データ110の各点110iは、例えば、工場100内のある原点に対する座標値(例えば、x座標及びy座標)で示されることができる。点群データ110は、センサ15によって検出されない領域(物体が存在しない領域(例えば、床上の空いた空間))のデータを含まない。点群データ110の精度は、センサ15の分解能に依存する。点群データ110は、制御装置20の記憶部40(図3参照。詳しくは後述)に記憶されることができる。
【0023】
図4を参照して、続いて、移動体1の制御装置20は、上記の点群データ110に基づいて、工場100内において移動体1が移動すべき領域の画像データ120を生成することができる。「画像データ」は、点群データ110に基づいて、物体が存在する領域、物体が存在しない領域、及び、センサ15によって未観測の領域を判定し、各領域を所定のサイズの格子で表現することによって、生成されることができる。画像データ120の各格子120iは、例えば、工場100内のある原点に対する座標値(例えば、x座標及びy座標)で示されることができる。画像データ120の精度は、格子の細かさに依存する。図3を参照して、画像データ120も、制御装置20の記憶部40に記憶されることができる。
【0024】
図1を参照して、制御装置20は、本体11に設けられている。制御装置20は、移動体1のいくつかの構成要素と有線で又は無線で通信可能に接続されており、これらの構成要素を制御するように構成されている。
【0025】
図3は、制御装置の構成を示す概略的なブロック図である。例えば、制御装置20は、プロセッサ30(例えば、1つ又は複数のCPU等)と、記憶部40(例えば、1つ又は複数のハードディスクドライブ、ROM(read only memory)及び/又はRAM(random access memory)等)と、インターフェース45(例えば、I/Oポート等)と、を有することができる。制御装置20は、表示装置(例えば、液晶ディスプレイ及び/又タッチパネル等)、及び、入力装置(例えば、マウス、キーボード及び/又タッチパネル等)等の他の構成要素を更に有してもよい。制御装置20の構成要素は、バスによって互いに接続されることができる。例えば、制御装置20は、PLC又はPC等を含むことができる。
【0026】
例えば、プロセッサ30は、経路生成部31と、選択部32と、移動制御部33と、を含むことができる。プロセッサ30は、他の機能部を有していてもよい。例えば、プロセッサ30のこれらの機能部は、記憶部40に記憶されたプログラムをプロセッサ30で実行することによって実現されてもよい。例えば、経路生成部31は、グローバルプランナ31aと、ローカルプランナ31bと、特殊ローカルプランナ31cと、を含むことができる。これらのうち、グローバルプランナ31a及びローカルプランナ31bは、移動体1の標準的な経路を生成する標準経路生成部として機能し、特殊ローカルプランナ31cは、記憶部40に記憶された所定の特殊状況での移動体1の経路を生成する特殊経路生成部として機能する。
【0027】
具体的には、例えば、プロセッサ30は、工場100のメイン制御装置200から目的地を含む指令を受け取り、記憶部40に記憶された画像データ120から対応する目的地の座標値を得ることができる。グローバルプランナ31aは、自律移動に先立って、画像データ120上において、出発点の座標値(例えば、現在の位置、又は、メイン制御装置200によって指令される位置)から目的地の座標値までの全体的な経路を生成する。
【0028】
ローカルプランナ31bは、自律移動中、センサ15からのデータ(スキャン点群)110jを画像データ120と比較して、画像データ120上において自己位置を推定し、グローバルプランナ31aによって生成された全体的な経路に沿うように、移動体1が実際に走行する局所的な経路(全体的な経路のうちの一部)を画像データ120上で生成する。例えば、ローカルプランナ31bは、センサ15からのデータに基づいて障害物が検出されたときには障害物を避けるように、局所的な経路を生成する。
【0029】
また、自律移動中、選択部32は、センサ15からのデータ110jを画像データ120と比較して、移動体1の状況が、記憶部40に記憶された特殊状況のための条件を満たすか否かを、例えば、所定のインターバルで判定する。選択部32は、移動体1の状況が特殊状況に相当しないと判定される場合には、ローカルプランナ31bを選択し、移動体1の状況が特殊状況に相当すると判定される場合には、特殊ローカルプランナ31cを選択する。
【0030】
記憶部40に記憶される特殊状況は、様々な状況を含み得る。図4を参照して、例えば、特殊状況は、移動体1が目的地150から所定の距離d内にあることを含む。また、例えば、特殊状況は、狭い通路を移動すること、及び/又は、物体(例えば、ストッカ60又は他の棚)の下方に潜り込んでその物体を搬送すること、を含むことができる。本開示では、移動体1が目的地150から所定の距離d内にあることを、特殊状況の一例として説明する。したがって、記憶部40は、移動体1の状況が特殊状況に相当するか否かを判断するための条件として、距離dを記憶することができる。
【0031】
図3を参照して、移動体1の状況が特殊状況に相当すると判定される場合(本実施形態では、移動体1が目的地150から距離d内にある場合)には、選択部32は、特殊ローカルプランナ31cを選択する。図5を参照して、この場合、特殊ローカルプランナ31cは、センサ15からのデータ110jを点群データ110と比較して、点群データ110上において自己位置を推定し、移動体1が実際に走行する局所的な経路を点群データ110上で生成する。
【0032】
図3を参照して、移動制御部33は、自律移動中、選択部32によって選択された経路生成部31(ローカルプランナ31b又は特殊ローカルプランナ31c)によって生成された局所的な経路に基づいて、移動体1を制御する。図6を参照して、例えば、移動制御部33は、生成された経路に沿って移動体1が移動するように、移動体1の移動量(例えば、x方向の速度Vx、y方向の速度Vy、及び、xy平面における移動体1の中心周りの回転方向の速度Vθ)を算出する。図3を参照して、移動制御部33は、算出された移動体1の移動量に基づいて、各車輪12の回転数を算出し、インターフェース45を介して、各車輪12の駆動回路17に対して算出された回転数を送信する。なお、駆動回路17は、制御装置20に含まれてもよい。
【0033】
例えば、プロセッサ30による移動体1の上記のような移動制御は、ロボット用に開発された様々なオペレーティングシステムに基づいて実現されることができる(例えば、米国のオープンソースロボティクス財団によって管理されるROS(Robot Operating System))。
【0034】
記憶部40は、上記の点群データ110、画像データ120、及び、移動体1の状況が特殊状況に相当するか否かを判断するための条件(例えば、目的地からの所定の距離d)を記憶する。また、記憶部40は、所定の目的地名と、その目的地の座標値(画像データ120における座標値及び点群データ110における座標値)と、を関連付けて記憶していてもよい。また、記憶部40は、プロセッサ30によって実行される様々なプログラムを記憶している。記憶部40は、その他の様々なデータを記憶することができる。
【0035】
続いて、移動体1の動作について説明する。
【0036】
上記のように、自律移動に先立って、制御装置20は、センサ15を使用して、工場100内において移動体1が移動すべき領域の点群データ110を取得し、取得した点群データ110に基づいて、移動体1が移動すべき領域の画像データ120を生成する。
【0037】
図7は、移動体の動作を示すフローチャートであり、移動体が出発点から目的地まで自律的に移動する場合を説明する。例えば、動作は、移動体1が目的地を受信すると開始する。例えば、移動体1は、目的地名を含む指令をメイン制御装置200から受信することができる。
【0038】
プロセッサ30は、目的地名に対応する座標値(画像データ120における座標値)を記憶部40から読み込む(ステップS100)。続いて、グローバルプランナ31aは、画像データ120上において、出発点から目的地までの全体的な経路を生成する(ステップS102)。続いて、選択部32は、移動体1が目的地150から所定の距離d内にあるか否かを判定する(ステップS104)。図4を参照して、例えば、選択部32は、センサ15からのデータ110jを画像データ120と比較して、画像データ120上において自己位置を推定し、推定された移動体1の位置(座標値Ix’,Iy’,Iθ’)が、目的地150における移動体1の目標の位置(座標値Ix,Iy,Iθ)から所定の距離d内にあるか否かを判定することができる。
【0039】
図7を参照して、ステップS104において、移動体1が目的地150から所定の距離d内にないと判定された場合(NO)、選択部32は、ローカルプランナ31bを選択する(ステップS106)。続いて、ローカルプランナ31bは、局所的な経路を生成する(ステップS108)。ローカルプランナ31bは、センサ15からのデータ110jを画像データ120と比較して、画像データ120上において自己位置を推定し、グローバルプランナ31aによって生成された全体的な経路に沿うように、移動体1が実際に走行する局所的な経路を画像データ120上で生成する。続いて、移動制御部33は、局所的な経路に基づいて移動量を算出する(ステップS110)。例えば、移動制御部33は、x方向の速度Vx、y方向の速度Vy、及び、xy平面における回転方向の速度Vθを算出することができる。続いて、算出された移動量に基づいて各車輪12が回転され、移動体1が移動する(ステップS112)。
【0040】
続いて、プロセッサ30は、移動体1が目的地150に到着したか否かを判定する(ステップS114)。図4を参照して、例えば、プロセッサ30は、センサ15からのデータ110jを画像データ120と比較して、画像データ120上における自己位置を推定し、移動体1の位置(座標値Ix’,Iy’,Iθ’)が、目的地150における移動体1の位置(座標値Ix,Iy,Iθ)から所定の閾値内であるか否かを判定することができる。
【0041】
図7を参照して、ステップS114において移動体1が目的地150に到着したと判定された場合(YES)、一連の動作は終了する。ステップS114において移動体1が目的地150に到着していないと判定された場合(NO)、プロセッサ30は、ステップS104に戻る。
【0042】
ステップS104において、移動体1が目的地150から所定の距離d内にあると判定された場合(YES)、選択部32は、特殊ローカルプランナ31cを選択する(ステップS116)。これによって、経路生成部31が、ローカルプランナ31bから特殊ローカルプランナ31cに切り替えられる。続いて、特殊ローカルプランナ31cが、目的地への局所的な経路を生成する(ステップS118)。特殊ローカルプランナ31cは、センサ15からのデータ110jを点群データ110と比較して、点群データ110上における自己位置を推定し、移動体1が実際に走行する局所的な経路を点群データ110上で生成する。その後、プロセッサ30は、ステップS110~S114を実行する。なお、S114では、図5を参照して、例えば、プロセッサ30は、センサ15からのデータ110jを点群データ110と比較して、点群データ110上における自己位置を推定し、移動体1の位置(座標値Px’,Py’,Pθ’)が、目的地150における移動体1の位置(座標値Px,Py,Pθ)から所定の閾値内であるか否かを判定することができる。
【0043】
以上のような移動体1は、標準的な経路を生成するローカルプランナ31bに加えて、所定の特殊状況での経路を生成する特殊ローカルプランナ31cを有する。移動体1の状況が特殊状況に相当しない場合(つまり、通常の状況)には、ローカルプランナ31bが経路を生成し、移動体1の状況が特殊状況に相当する場合には、特殊ローカルプランナ31cが経路を生成する。したがって、移動体の状況に応じてローカルプランナ31bと特殊ローカルプランナ31cとが互いに切り替えられる。よって、移動体1の状況に応じて最適な経路を生成することができる。
【0044】
また、移動体1では、経路生成部31が、標準経路生成部として、出発点から目的地までの全体的な経路を生成するグローバルプランナ31aと、自律移動中に局所的な経路を生成するローカルプランナ31bと、を有しており、かつ、特殊経路生成部として、自律移動中に特殊状況での局所的な経路を生成する特殊ローカルプランナ31cを有している。したがって、移動中の特殊状況において、標準的な局所経路を生成するローカルプランナ31bに代えて、特殊ローカルプランナ31cによって経路が生成される。したがって、移動しながら特殊状況における経路が生成されるため、移動体1の位置決めのための時間を短縮することができる。
【0045】
移動体の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解するだろう。
【0046】
例えば、上記の実施形態では、経路生成部31は、特殊経路生成部として、特殊ローカルプランナ31cを有している。他の実施形態では、追加的に又は代替的に、経路生成部31は、特殊経路生成部として、特殊グローバルプランナを有していてもよい。特殊グローバルプランナは、移動体1の状況が記憶部40に記憶された特殊状況に相当する場合に、グローバルプランナ31aに代えて、自律移動に先立って、出発点から目的地150までの全体的な経路を生成してもよい。例えば、特殊状況は、出発点から目的地150までの間に、狭い通路又は蛇行した通路が存在することであり得る。この場合、特殊グローバルプランナは、移動体1がオペレータ及び他の移動体を妨げることを防止するために、グローバルプランナ31aと比較して、可能な限り直線的な経路を生成するように構成されることができる。
【0047】
また、上記の実施形態では、特殊ローカルプランナ31cが選択される特殊状況は、移動体1が目的地150から所定の距離d内にあることとして説明されている。他の実施形態では、例えば、特殊状況は、狭い通路を移動すること、及び/又は、物体(例えば、ストッカ60又は他の棚)の下方に潜り込んでその物体を搬送することであってもよい。例えば、特殊状況が狭い通路を移動することである場合、特殊ローカルプランナ31cは、標準のローカルプランナで移動中に、移動方向に狭い通路(壁間が閾値より狭い)が存在する場合、特殊ローカルプランナ31cへ切り替え、通路内を移動する移動経路を生成する。また、例えば、特殊状況が物体の下方に潜り込んでその物体を搬送することである場合、特殊ローカルプランナ31cは、標準のローカルプランナで移動中に、物体(ストッカ60など)の保管場所に近づいた際、スキャン点群内にあらかじめ登録しておいた物体の形状と一致する点列が存在するか探索し、存在する場合は特殊ローカルプランナ31cへ切り替え、その物体内に潜り込む移動経路を生成する。
【符号の説明】
【0048】
1 移動体
15 センサ
31 経路生成部
31a グローバルプランナ(標準経路生成部)
31b ローカルプランナ(標準経路生成部)
31c 特殊ローカルプランナ(特殊経路生成部)
32 選択部
33 移動制御部
40 記憶部
110 点群データ
110j センサからのデータ
120 画像データ
150 目的地
d 所定の距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の一態様は、出発点から目的地まで自律的に移動する移動体において、移動体から周囲の物体までの距離を測定することによって該移動体の周囲の物体を検出するセンサと、移動体の移動経路を生成する経路生成部であって、移動体の標準的な経路である移動体の出発点から目的地までの全体的な経路を生成するグローバルプランナと、センサからのデータに基づいて障害物が検出されたときには該障害物を回避するように局所的な経路を生成するローカルプランナと、目的地から所定の距離内へ移動体が接近した状況、狭い通路内へ移動する状況、又は物体の下方に潜り込んでその物体を搬送する状況を含む特殊状況での経路を生成する特殊ローカルプランナとを有する経路生成部と、移動体の状況が特殊状況に相当するか否かを判断するための条件を記憶する記憶部と、グローバルプランナで生成した経路を移動中にセンサからのデータに基づいて移動体の状況を判定し、移動体の状況が記憶部の特殊状況に相当しない場合にはローカルプランナを選択し、移動体の状況が記憶部の特殊状況に相当する場合には特殊ローカルプランナを選択する選択部と、選択部で選択されたローカルプランナ又は特殊ローカルプランナによって生成された経路に基づいて、移動体を制御する移動制御部と、を備え、選択部でローカルプランナと特殊ローカルプランナとを切り替える移動体である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発点から目的地まで自律的に移動する移動体において、
前記移動体から周囲の物体までの距離を測定することによって該移動体の周囲の物体を検出するセンサと、
前記移動体の移動経路を生成する経路生成部であって、
前記移動体の標準的な経路である前記移動体の前記出発点から前記目的地までの全体的な経路を生成するグローバルプランナと、
前記センサからのデータに基づいて障害物が検出されたときには該障害物を回避するように局所的な経路を生成するローカルプランナと、
前記目的地から所定の距離内へ前記移動体が接近した状況、狭い通路内へ移動する状況、又は物体の下方に潜り込んでその物体を搬送する状況を含む特殊状況での経路を生成する特殊ローカルプランナとを有する経路生成部と、
前記移動体の状況が前記特殊状況に相当するか否かを判断するための条件を記憶する記憶部と、
前記グローバルプランナで生成した経路を移動中に前記センサからのデータに基づいて前記移動体の状況を判定し、前記移動体の状況が前記記憶部の前記特殊状況に相当しない場合には前記ローカルプランナを選択し、前記移動体の状況が前記記憶部の前記特殊状況に相当する場合には前記特殊ローカルプランナを選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記ローカルプランナ又は前記特殊ローカルプランナによって生成された経路に基づいて、前記移動体を制御する移動制御部と、
を備え、前記選択部で前記ローカルプランナと前記特殊ローカルプランナとを切り替えることを特徴とした移動体。